説明

粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板およびその製造方法、ならびに溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体およびその製造方法

【課題】溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の表面に樹脂を接触させた場合に、良好な密着性を付与することができる粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を提供すること。
【解決手段】Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有し、かつ前記めっき層の表面において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%である溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を準備する。この溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬して、めっき層の表面に平均深さが0.01μm以上で、かつめっき層の膜厚に対する平均深さの割合が80%以下のピットを複数形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板およびその製造方法、ならびに前記粗面化めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属と樹脂とを一体化する技術として、接着剤によって接着させる方法が知られている。また、近年、アルミニウム合金を挿入した射出成形金型に熱可塑性樹脂を射出することで、アルミニウム合金と熱可塑性樹脂とを接合させる方法(インサート射出成形接着法)が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3の方法では、アルミニウム合金の表面を所定の水溶液などで処理して、アルミニウム合金の表面に微細な凹凸を形成することで、接合性を向上させている。
【0003】
一方、亜鉛をエッチングできる酸を配合した塗料を亜鉛系めっき鋼板に塗布して、塗膜密着性に優れた被覆亜鉛系めっき鋼板を製造する技術が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−027018号公報
【特許文献2】特開2004−050488号公報
【特許文献3】特開2005−342895号公報
【特許文献4】特開平11−181333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本発明者の予備実験によれば、特許文献1〜3に記載の水溶液で溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を浸漬処理し、熱可塑性樹脂成形体との複合体を製造したところ、めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体との接合性は十分なものではなかった。また、特許文献4に記載の酸で溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を浸漬処理し、熱可塑性樹脂成形体との複合体を製造しても、めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体との接合性は十分なものではなかった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の表面に樹脂を接触させた場合に、良好な密着性を付与することができる粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と樹脂とが接合された複合体であって、樹脂の密着性に優れた複合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の表面を酸化性の酸性水溶液で処理することで、アンカー効果による密着性の向上に寄与できるピットを鋼板表面に形成できることを見出し、さらに検討を加えて本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明の第一は、以下の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板に関する。
[1]Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有し;前記めっき層の表面には、前記めっき層表面からの平均深さが0.01μm以上で、かつ前記めっき層の膜厚に対する前記めっき層表面からの平均深さの割合が80%以下のピットが形成されており;前記ピットが形成される前の前記めっき層の表面において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%であり;前記めっき層の見かけ表面積Sに対する実表面積Sの比率S/Sは、3.1以上である、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板。
[2]前記ピットが形成される前の前記めっき層表面の酸化皮膜の平均厚みDに対する前記ピットが形成された後の前記めっき層表面の酸化皮膜の平均厚みDの比率D/Dは、1.0超である、[1]に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板。
【0010】
本発明の第二は、以下の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の製造方法に関する。
[3]Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有し、かつ前記めっき層の表面において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%である溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を準備するステップと;前記溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬するステップと;を有する、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の製造方法。
[4]前記酸化性の酸性水溶液は、Fe3+を含む、[3]に記載の製造方法。
[5]前記酸化性の酸性水溶液は、塩化第二鉄水溶液である、[3]に記載の製造方法。
【0011】
本発明の第三は、以下の複合体に関する。
[6][1]または[2]に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と、成形収縮率が1.1%以下の熱可塑性樹脂の成形体とが接合された複合体。
[7]前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂およびパーフルオロ系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、[6]に記載の複合体。
【0012】
本発明の第四は、以下の複合体の製造方法に関する。
[8][1]または[2]に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を射出成形金型に挿入するステップと;前記射出成形金型に、成形収縮率が1.1%以下の熱可塑性樹脂を射出して、前記粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の表面に前記熱可塑性樹脂の成形物を接合するステップと;を有する、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体の製造方法。
[9]前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂およびパーフルオロ系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、[8]に記載の複合体の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、その表面に樹脂を接触させた場合に、良好な密着性を付与することができる粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を提供することができる。したがって、本発明によれば、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と樹脂とが接合された複合体であって、樹脂の密着性に優れた複合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、粗面化処理前の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層表面を示す電子顕微鏡写真である。図1Bは、粗面化処理前の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図2】図2Aは、塩化第二鉄水溶液で浸漬処理を行った後の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層表面を示す電子顕微鏡写真である。図2Bは、塩化第二鉄水溶液で浸漬処理を行った後の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図3】図3Aは、塩酸で浸漬処理を行った後の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層表面を示す電子顕微鏡写真である。図3Bは、塩酸で浸漬処理を行った後の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層断面を示す電子顕微鏡写真である。
【図4】図4Aは、浸漬処理前のめっき層の深さ方向のAESプロファイルである。図4Bは、塩化第二鉄水溶液で浸漬処理を行った後のめっき層の深さ方向のAESプロファイルである。図4Cは、塩酸で浸漬処理を行った後のめっき層の深さ方向のAESプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板
本発明の粗面化めっき鋼板は、めっき層表面に複数のピット(溝、穴)が形成されている溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板である。
【0016】
基材となる溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の下地鋼としては、低炭素鋼や中炭素鋼、高炭素鋼、合金鋼などが使用される。良好なプレス成形性が必要とされる場合は、低炭素Ti添加鋼、低炭素Nb添加鋼などの深絞り用鋼板が下地鋼として好ましい。
【0017】
溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有する。Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を形成している各相(Al相、Zn相およびZnMg相)は、それぞれ不規則な大きさおよび形状をしており、互いに入り組んでいる(図1Aおよび図1B参照)。三元共晶組織中のAl相は、Al−Zn−Mgの三元系平衡状態図における高温でのAl”相(Znを固溶するAl固溶体であり、少量のMgを含む)に由来するものである。この高温でのAl”相は、常温では通常は微細なAl相と微細なZn相に分離して現れる。三元共晶組織中のZn相は、少量のAlを固溶し、場合によってはさらにMgを固溶するZn固溶体である。三元共晶組織中のZnMg相は、Zn−Mgの二元系平衡状態図におけるZnが約84重量%の点付近に存在する金属間化合物相である。
【0018】
めっき層表面における三元共晶組織の面積率は高いほど好ましい。本発明の粗面化めっき鋼板では、めっき層表面においてZnMg相および/またはZn相が除去されてピットが形成されているが、めっき層表面を電子顕微鏡などで観察すれば三元共晶組織とその他の相とは容易に区別することができる。たとえば、めっき浴中のAlの濃度を低くすることで三元共晶組織の面積率を高くすることが可能であり、Alを4質量%以下とすることで三元共晶組織の面積率をほぼ100%とすることができる。
【0019】
また、めっき層の表面全体において、Al相の面積率は5〜45面積%であり、Zn相の面積率は50〜80面積%であり、ZnMg相の面積率は5〜25面積%である(図1A参照)。各相の面積率は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いてめっき層表面を分析することで測定できる。本発明の粗面化めっき鋼板では、めっき層表面においてZnMg相および/またはZn相が除去されてピットが形成されているが(後述)、めっき層の断面を電子顕微鏡などで観察すれば除去された部分の相を推定することができる(図2B参照)。
【0020】
本発明の粗面化めっき鋼板のめっき層の表面には、複数のピットが形成されている(図2Aおよび図2B参照)。ここで「ピット」とは、めっき層の表面に対する凹部を広く意味し、溝状の凹部や穴状の凹部を含む。これらのピットは、アンカー効果により樹脂との密着性を向上させる。すなわち、本発明の粗面化めっき鋼板の表面に樹脂を接触させた場合、樹脂の一部がこれらのピット内に入り込むため、アンカー効果により樹脂との密着性が向上する。
【0021】
ピットのめっき層表面からの平均深さは、0.01μm以上、かつめっき層の膜厚に対して80%以下が好ましい。ピットの平均深さが0.01μm未満の場合、アンカー効果が不十分なため、樹脂との接合性を十分に向上させることができない。一方、ピットの平均深さがめっき層の膜厚に対して80%超の場合、下地鋼が露出しやすくなるため、裸耐食性が低下するおそれがある。ピットの平均深さは、例えばめっき層の断面を電子顕微鏡などで観察することで測定できる。
【0022】
本発明の粗面化めっき鋼板は、めっき層の表面に多数のピットが形成されているため、めっき層の見かけ表面積Sに対してめっき層の実表面積Sが大きい。ここで、「見かけ表面積」とは、ピットが形成されていないと仮定した場合のめっき層表面の表面積をいう。たとえば、めっき層の表面形状が長方形の場合は、縦の長さ×横の長さで求められる面積が「見かけ表面積」である。また、「実表面積」とは、見かけ表面積に加えてピット内部の表面積も含む実際の表面積である。樹脂との接合性を向上させる観点からは、めっき層の見かけ表面積Sに対する実表面積Sの比率S/Sは、3.1以上が好ましく、5.6以上がより好ましい。表面積の比率S/Sが3.1未満の場合、アンカー効果が不十分なため、樹脂との接合性を十分に向上させることができない。実表面積は、例えばBET法で求めることができる。
【0023】
また、本発明の粗面化めっき鋼板は、複数のピットが形成される前の酸化皮膜の平均厚みDに対する複数のピットが形成された後の酸化皮膜の平均厚みDの比率D/Dが1.0超であることが好ましい。すなわち、本発明の粗面化めっき鋼板の酸化皮膜の平均厚みDは、ピットが形成される前の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の酸化皮膜の平均厚みDよりも大きいことが好ましい。酸化皮膜の平均厚みの比率D/Dが1.0以下の場合、裸耐食性が不十分となるおそれがある。酸化皮膜の平均厚みは、オージェ電子分光法(AES)により測定することができる。
【0024】
本発明の粗面化めっき鋼板は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
【0025】
2.粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の製造方法
本発明の粗面化めっき鋼板の製造方法は、1)基材となる溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を準備する第1のステップと、2)準備した溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬する第2のステップとを有する。
【0026】
第1のステップでは、基材となる溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を準備する。
【0027】
前述の通り、基材となる溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有するものが好ましい。また、めっき層の表面全体において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%であるものが好ましい。
【0028】
三元共晶組織を含むめっき層を有する溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、例えばAlが2.5〜22質量%、Mgが0.05〜20.0質量%、残部が実質的にZnの合金めっき浴を用いた溶融めっき法で製造されうる。このとき、下地鋼とめっき層との密着性を向上させるために、下地鋼とめっき層との界面におけるAl−Fe合金層の成長を抑制できるSiを0.005〜2.0質量%の範囲でめっき浴に添加することが好ましい。また、外観および耐食性に悪影響を与えるZn11Mg相の生成および成長を抑制するために、Ti、B、Ti−B合金、Ti含有化合物またはB含有化合物をめっき浴に添加してもよい。これらの化合物の添加量は、Tiが0.001〜0.1質量%の範囲内となるように、Bが0.001〜0.045質量%の範囲内となるように設定することが好ましい。TiまたはBを過剰量添加すると、めっき層に析出物を成長させる原因となりうる。
【0029】
第2のステップでは、第1のステップで準備した溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬する。この工程により、めっき層の表面においてAl相に隣接するZnMg相および/またはZn相が選択的(優先的)に除去され、めっき層の表面にピットが形成される。
【0030】
酸化性の酸性水溶液は、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層のZnMg相および/またはZn相を選択的(優先的)に溶解しうるものであれば特に限定されない。そのような水溶液の例には、塩化第二鉄(FeCl)水溶液などのFe3+を含む水溶液が含まれる。
【0031】
本発明者らの予備実験によれば、ZnやAlなどを溶解する際に一般的に使用される塩酸(塩化水素水溶液)で浸漬処理を行うと、ZnMg相およびZn相の選択的な溶解は観察されず、めっき層表面が一様に溶解してしまった。その結果、アンカー効果を期待できるピットは形成されなかった(図3参照)。また、裸耐食性を向上させる酸化皮膜の膜厚の増大(後述)も観察されなかった(図4C参照)。このことからわかるように、本発明の製造方法では、酸化性の酸性水溶液(例えば、塩化第二鉄水溶液)を用いて浸漬処理を行うことが重要である。
【0032】
処理液として塩化第二鉄水溶液を使用する場合、塩化第二鉄の濃度は、0.1〜2.0mol/Lの範囲内が好ましい。塩化第二鉄の濃度が0.1mol/L未満の場合、十分な深さのピットを形成することができず、樹脂との接合性を十分に向上させることができない。一方、塩化第二鉄の濃度が2.0mol/L超の場合、ZnMg相およびZn相以外の部分(例えば、Al相)も溶解させてしまうため、アンカー効果を期待できるピットを形成することができない。
【0033】
また、処理液として塩化第二鉄水溶液を使用する場合、塩化第二鉄水溶液の液温は、室温〜80℃の範囲内が好ましい。液温が80℃を超えると、加水分解によるものと推定される水酸化鉄(III)/Fe(OH)の沈殿が発生し、処理液の組成が変化してしまうからである。
【0034】
また、処理液として塩化第二鉄水溶液を使用する場合、浸漬時間は、180秒以下が好ましい。浸漬時間が180秒を超えると、ZnMg相およびZn相以外の部分(例えば、Al相)も溶解させてしまうため、アンカー効果を期待できるピットを形成することができない。
【0035】
前述の通り、酸化性の酸性水溶液に浸漬すると、めっき層の表面においてAl相に隣接するZnMg相および/またはZn相が除去され、複雑な形状のピットが形成される(図2参照)。浸漬処理前後のめっき層をオージェ電子分光法(AES)により分析したところ、浸漬処理で除去されていない部位において、浸漬処理により酸化皮膜の膜厚が増加していることがわかった。このことから、Al相に隣接するZnMg相およびZn相が選択的に除去されるのは、酸化性の酸性水溶液中では、めっき層の電位が卑な部位[(卑)ZnMg>Zn>Al(貴)]ほど水溶液に溶解しやすくなるためと推察される。
【0036】
なお、第2のステップでは、めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬する代わりに、めっき鋼板の表面に酸化性の酸性水溶液を塗布しても同様の効果を得られる。しかしながら、めっき鋼板の形状によっては、鋼板表面と水溶液との接触程度に差異が生じてしまうため、浸漬処理によりピットを形成することが好ましい。
【0037】
以上の手順により、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層の表面に良好な密着性を付与可能な複雑な形状のピットを形成して、本発明の粗面化めっき鋼板を製造することができる。このようにして製造された本発明の粗面化めっき鋼板は、処理前よりも酸化皮膜が厚いため、より優れた裸耐食性を発揮することができる。
【0038】
3.粗面化めっき鋼板と樹脂との複合体
本発明の複合体は、本発明の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と樹脂組成物とが接合されている複合体である。
【0039】
樹脂組成物に接合される鋼板は、上述の本発明の粗面化めっき鋼板である。本発明の粗面化めっき鋼板は、めっき層の表面に多数のピットを有しているため、接合面において樹脂がピット内に入り込み、アンカー効果により鋼板と樹脂組成物とが強固に接合されている。
【0040】
鋼板に接合される樹脂組成物は、特に限定されず、接合方法に応じて適宜選択すればよい。たとえば、射出成形法により接合させる場合、樹脂組成物は、結晶性の熱可塑性樹脂および非結晶性の熱可塑性樹脂のどちらを含んでいてもよい。結晶性の熱可塑性樹脂の例には、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂などが含まれる。非結晶性の熱可塑性樹脂の例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、パーフルオロ系樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルなど)が含まれる。
【0041】
また、塗布法により接合させる場合、樹脂の例には、ポリウレタン樹脂、アクリル系共重合体樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ポリヒドロキシポリエーテル樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリアミン樹脂、ポリフェニレン樹脂、およびこれらの樹脂の付加物もしくは縮合物が含まれる。
【0042】
樹脂組成物が射出成形法により接合される場合、熱可塑樹脂組成物の成形収縮率は、1.1%以下であることが好ましい。成形収縮率は、射出成形時に使用した金型の樹脂流入部の容積Aに対し、射出成形後に固化した樹脂の容積Bを測定し、「(A−B)/A×100(%)」として求めることができる。
【0043】
熱可塑樹脂組成物の成形収縮率は、樹脂の種類によっても調整されうるが、例えばフィラーを添加することによっても調整されうる。フィラーの例には、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド樹脂などの繊維系フィラー;カーボンブラック、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、シリカ、タルク、ガラス、粘土、リグニン、雲母、石英粉、ガラス球などの粉フィラー;炭素繊維やアラミド繊維の粉砕物などが含まれるが、特に限定されない。熱可塑性樹脂組成物におけるフィラーの含有量は、5〜60質量%の範囲内が好ましく、10〜40質量%の範囲内がより好ましい。
【0044】
熱可塑樹脂組成物の成形収縮率は、結晶性樹脂と非結晶性樹脂とを混合することによっても調整されうる。一般的に、結晶性樹脂の方が、非結晶性樹脂よりも成形収縮率が大きいので、非結晶性樹脂の混合比率を高めれば、成形収縮率も低減されうる。
【0045】
本発明の複合体は、特に限定されないが、例えば以下の方法により製造されうる。
【0046】
4.粗面化めっき鋼板と熱可塑性樹脂の成形体との複合体の製造方法
本発明の複合体は、1)射出成形法、または2)塗布法により製造することができる。
【0047】
1)射出成形法
本発明の複合体は、本発明の粗面化めっき鋼板を射出成形金型に挿入した後、熱可塑性樹脂組成物を射出成形金型内に射出することで製造されうる。
【0048】
まず、本発明の粗面化めっき鋼板を射出成形金型に挿入する。次いで、射出成形金型内に、高温の熱可塑性樹脂組成物を高圧で射出する。このとき、射出成形金型にガス抜きを設けて、樹脂組成物が円滑に流れるようにすることが好ましい。前述の通り、本発明の粗面化めっき鋼板のめっき層の表面には複数のピットが形成されており、高温の熱可塑性樹脂組成物はピットが形成された表面に接触する。射出成形金型の温度は、使用する樹脂の融点近傍であることが好ましい。射出された熱可塑性樹脂が、粗面化めっき鋼板のピットの内部に侵入しやすくするためである。
【0049】
射出終了後、金型を開き離型して複合体を得る。射出成形により得られた複合体は、成形後にアニール処理をして、成形収縮による内部歪みを解消することが好ましい。
【0050】
2)塗布法
本発明の複合体は、樹脂組成物(塗料)を本発明の粗面化めっき鋼板の表面に塗布した後、乾燥させることでも製造されうる。
【0051】
まず、樹脂組成物(塗料)を準備する。塗布される樹脂組成物は、溶媒で希釈されていてもよいし、硬化前の樹脂であってもよい。
【0052】
樹脂組成物(塗料)を塗布する方法は、特に限定されない。塗布法方の例には、ロール法やスプレー法、浸漬法などが含まれる。また、乾燥方法および乾燥条件も、溶媒が揮発し、塗膜が形成されれば特に限定されないが、50〜250℃の範囲内で乾燥させることが好ましい。
【0053】
以上の手順により、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板のめっき層の表面に樹脂組成物を接合させて、本発明の複合体を製造することができる。このようにして製造された本発明の複合体は、樹脂がめっき層のピットに入り込むため、優れた接合性を発揮することができる。
【0054】
以下、本発明を実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0055】
1.粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の作製
板厚0.8mmのSPCCを基材として、片面あたりのめっき付着量が80〜85g/m(めっき膜厚13〜14μm)の溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を作製した。このとき、Zn−Al−Mgめっき浴中のMg濃度を変化させて、めっき層表面のAl相、ZnMg相およびZn相の面積率をそれぞれ異なるものとした。また、めっき層表面のAl/Zn/ZnMgの三元共晶組織の面積率が0%の比較材として、片面あたりのめっき付着量が82g/mの溶融Znめっき鋼板(めっき材No.5)を準備した。
【0056】
表1に、各めっき鋼板(めっき材No.1〜No.6)のめっき層表面のAl相、ZnMg相およびZn相の面積率ならびにめっき付着量を示す。各相の面積率は、電子線マイクロアナライザ(EPM−810;株式会社島津製作所)を用いてめっき層表面を3000倍で面分析を行い、Al検出領域をAl相とし、Mg検出領域をZnMg相とし、残部をZn相として算出した。
【表1】

【0057】
各めっき鋼板をアルカリ脱脂(pH12、液温60℃、浸漬時間1分間)した後、表2に示す組成の水溶液に表2に示す条件(液温、時間)で浸漬して、各めっき鋼板の表面にピットを形成した。浸漬処理を終えた各めっき鋼板を流水で洗浄した後、熱風乾燥機で乾燥させた。
【表2】

【0058】
浸漬処理を終えた各めっき鋼板(実施例1〜16、比較例1〜10)について、形成されたピットの平均深さ、めっき層の厚さに対するピットの平均深さの割合、めっき層の見かけ表面積Sに対する実表面積Sの比率S/S、浸漬処理前のめっき層表面の酸化皮膜の平均厚みDに対する浸漬処理後の酸化皮膜の平均厚みDの比率D/Dを求めた。ピットの平均深さおよびめっき層の厚さに対するピットの平均深さの割合は、FE−SEM(S−4000;株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いてめっき層の断面を2000〜10000倍で観察し、めっき層の厚さを測定するとともに、めっき層表面から垂直方向にピットの深さを測定することで求めた。また、表面積の比率S/Sは、全自動ガス吸着量測定装置(オートソーブ−1−C/VP/TCD/MS;カンタクローム社)を用いて定量法によりKrガスの吸着量を測定し、浸漬処理前後のめっき層の表面積を測定することで求めた。酸化皮膜の平均厚みの比率D/Dは、オージェ電子分光装置(JAMP−9500F;日本電子株式会社)を用いてめっき層の深さ方向のプロファイルを得ることで求めた。より具体的には、オージェ分析のプロファイルにおいて、分析時間0秒の点(めっき層表面)から、酸素のピークが亜鉛のピークと重なる点までを酸化皮膜として、酸化皮膜の平均厚みの比率D/Dを求めた。
【0059】
表3に、浸漬処理を終えた各めっき鋼板(実施例1〜16、比較例1〜10)についての、めっき材の種類、粗面化処理の条件、ピットの平均深さ、表面積の比率S/S、酸化皮膜の平均厚みの比率D/Dを示す。
【表3】

【0060】
図1は、実施例8のめっき鋼板の、浸漬処理前のめっき層表面(図1A)およびめっき層断面(図1B)を示す写真(SEM像)である。また、図2は、実施例8のめっき鋼板の、浸漬処理後のめっき層表面(図2A)およびめっき層断面(図2B)を示す写真(SEM像)である。これらの写真から、塩化第二鉄水溶液で浸漬処理をすることにより、Al部に近接するZnMg部(図2Bの「*」を参照)およびZn部を溶解させて、めっき層表面にピットを形成できることがわかる。
【0061】
図3は、比較例8のめっき鋼板の、浸漬処理後のめっき層表面(図3A)およびめっき層断面(図3B)を示す写真(SEM像)である。これらの写真から、塩酸で浸漬処理をした場合は、ZnMg部およびZn部だけでなくAl部も溶解させてしまうため、めっき層表面にピットを形成できないことがわかる。
【0062】
図4Aおよび図4Bは、実施例8のめっき鋼板の、浸漬処理前のめっき層の深さ方向のAESプロファイル(図4A)および浸漬処理後のめっき層の深さ方向のAESプロファイルである(図4B)。また、図4Cは、比較例8のめっき鋼板の浸漬処理後のめっき層の深さ方向のAESプロファイルである。図4Aおよび図4Bから、塩化第二鉄水溶液で浸漬処理をすることにより、酸化皮膜が厚くなることがわかる。一方、図4Cから、塩酸で浸漬処理をしたときは、酸化皮膜が厚くならないことがわかる。
【0063】
2.接合性試験および裸耐食性試験
(1)接合性試験
粗面化処理を終えた各めっき鋼板(実施例1〜16、比較例1〜10)から、幅30mm×長さ100mmの試験片を切り出した。また、表4に示す組成の熱可塑性樹脂組成物を射出成形装置に充填し、表4に示す温度で溶融させた。
【表4】

【0064】
表4に示される各樹脂について、ポリエチレンは、ニポロンハード1000(融点134℃;東ソー株式会社)を使用した。また、ポリプロピレンは、ノバテックPP MA1B(融点170℃;日本ポリプロ株式会社)を使用した。アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンは、テクノABS130(融点91℃;テクノポリマー株式会社)を使用した。ポリエチレンテレフタレートは、ライナイト530(融点230℃;デュポン株式会社)を使用した。ポリブチレンテレフタレートは、ジュラネックス2002(融点228℃;ポリプラスチックス株式会社)を使用した。ポリカーボネートは、ユーピロンGS−2030MR2(融点250℃;三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社)を使用した。ポリアセタールは、TPS−POM NC(融点163℃;東洋プラスチック精工株式会社)を使用した。テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルは、フルオンPFA P−65P(融点310℃、旭硝子株式会社)を使用した。ポリフェニレンサルファイドは、フォートロン0220A9(融点280℃;ポリプラスチックス株式会社)を使用した。
【0065】
射出成形金型に試験片(実施例1〜16、比較例1〜10)を挿入し、溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を射出成形金型内に射出した。射出成形金型内の熱可塑性樹脂組成物を流入させる部分の容積は、幅30mm×長さ100mm×厚さ4mmであり、幅30mm×長さ30mmの領域でめっき層と熱可塑性樹脂組成物とが接触している。熱可塑性樹脂組成物を射出成形金型内に射出した後、熱可塑性樹脂組成物を固化させて、試験片と熱可塑性樹脂の成形体との複合体を得た。
【0066】
得られた各複合体について、引張り試験を行い、引張り速度100mm/分で破断したときの強度を測定した。剥離強度が2.0kN以上の場合を「◎」、1.5kN以上2.0kN未満の場合を「○」、1.0kN以上1.5kN未満の場合を「△」、1.0kN未満の場合を「×」と評価した。
【0067】
(2)裸耐食性試験
粗面化処理を終えた各めっき鋼板(実施例1〜16、比較例1〜10)から、幅30mm×長さ100mmの試験片を切り出した。各試験片の端面にシールを施し、JIS Z2371に準拠して35℃のNaCl水溶液を試験片に4時間噴霧した。NaCl水溶液の噴霧を終えた後、各試験片の表面を観察し、白錆の発生面積率により各試験片の裸耐食性を評価した。このとき、白錆の発生面積率が10面積%未満の場合を「◎」、10面積%以上20面積%未満の場合を「○」、20面積%以上50面積%未満の場合を「△」、50面積%以上の場合を「×」と評価した。
【0068】
(3)結果
接合性試験および裸耐食性試験の結果を表5に示す。
【表5】

【0069】
実施例1〜16の試験片は、ピットの平均深さが0.01μm以上であり、かつめっき層の厚さに占めるピットの平均深さの割合が80%以下であるため、接合性について良好な評価が得られた。また、実施例1〜16の試験片は、酸化皮膜の厚みの比率D/Dが1.0超であるため、裸耐食性について良好な評価が得られた。これに対し、比較例1〜6の試験片は、ピットの平均深さが0.01μm未満であるため、接合性について良好な評価が得られなかった。また、比較例10の試験片は、ヒットの平均深さは0.01μm以上であるものの、めっき層の表面積の比率S/Sが3.1未満であるため、接合性について良好な評価が得られなかった。また、比較例7〜9の試験片は、酸化皮膜の厚みの比率D/Dが1.0以下であるため、裸耐食性について良好な評価が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板は、樹脂との密着性に優れているため、例えば各種電子機器、家庭用電化製品、医療機器、自動車車体、車両搭載用品、建築資材などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有し、
前記めっき層の表面には、前記めっき層表面からの平均深さが0.01μm以上で、かつ前記めっき層の膜厚に対する前記めっき層表面からの平均深さの割合が80%以下のピットが形成されており、
前記ピットが形成される前の前記めっき層の表面において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%であり、
前記めっき層の見かけ表面積Sに対する実表面積Sの比率S/Sは、3.1以上である、
粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板。
【請求項2】
前記ピットが形成される前の前記めっき層表面の酸化皮膜の平均厚みDに対する前記ピットが形成された後の前記めっき層表面の酸化皮膜の平均厚みDの比率D/Dは、1.0超である、請求項1に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板。
【請求項3】
Al/Zn/ZnMgの三元共晶組織を含むめっき層を有し、かつ前記めっき層の表面において、Al相は5〜45面積%であり、Zn相は50〜80面積%であり、ZnMg相は5〜25面積%である溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を準備するステップと、
前記溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を酸化性の酸性水溶液に浸漬するステップと、
を有する、粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記酸化性の酸性水溶液は、Fe3+を含む、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記酸化性の酸性水溶液は、塩化第二鉄水溶液である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と、成形収縮率が1.1%以下の熱可塑性樹脂の成形体とが接合された複合体。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂およびパーフルオロ系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項6に記載の複合体。
【請求項8】
請求項1に記載の粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板を射出成形金型に挿入するステップと、
前記射出成形金型に、成形収縮率が1.1%以下の熱可塑性樹脂を射出して、前記粗面化溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板の表面に前記熱可塑性樹脂の成形物を接合するステップと、
を有する、溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板と熱可塑性樹脂成形体とが接合された複合体の製造方法。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール系樹脂およびパーフルオロ系樹脂からなる群から選択される1種以上を含む、請求項8に記載の複合体の製造方法。

【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−157579(P2011−157579A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−19062(P2010−19062)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000004581)日新製鋼株式会社 (1,178)
【Fターム(参考)】