説明

粘度指数向上剤および潤滑油組成物

【課題】 従来よりも改善された粘度指数向上効果を有する粘度指数向上剤を見出すことである。
【解決手段】 一般式(1)で表されるビニル単量体(a)を必須構成単量体としてなるビニル重合体(A)からなる粘度指数向上剤、;該粘度指数向上剤、並びに希釈剤および/または他の添加剤からなる潤滑油用粘度指数向上剤組成物;並びに、該粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.03〜30重量%含有する潤滑油組成物;である。
【化3】


式中、R1は水素原子または炭素数1〜32のアルキル基、R2は炭素数1〜32のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上剤に関する。さらに詳しくは(ポリ)オキシアルキレン基を含有するアクリル酸エステル系単量体を構成単量体とする重合体からなる粘度指数向上剤およびそれを含む潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の気運が高まり、自動車の省燃費性がより一層要求されてきている。省燃費化の1つの手段として潤滑油の低粘度化による摩擦損失の低減が挙げられる。しかしながら、単に低粘度化すると液漏れや焼き付きといった問題が生じてくる。この問題を解決するには、一般に粘度指数を上げることが必要とされ、高温での粘度を高く保持し、低温での粘度を低くする手段として粘度指数向上剤の添加が効果的であり、従来から多く用いられてきた(特許文献−1参照)。
【特許文献−1】特開平9−3131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の粘度指数向上剤では、最近の省燃費の要求に対応しにくく、さらに粘度指数向上効果の大きい粘度指数向上剤が求められている。
本願発明の課題は、従来よりも改善された粘度指数向上効果を有する粘度指数向上剤を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
一般式(1)で表されるビニル単量体(a)を必須構成単量体としてなるビニル重合体(A)からなる粘度指数向上剤、;該粘度指数向上剤、並びに希釈剤および/または他の添加剤からなる潤滑油用粘度指数向上剤組成物;並びに、該粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.5〜30重量%含有する潤滑油組成物;である。
【0005】
【化2】

【0006】
式中、R1は水素原子または炭素数1〜32のアルキル基、R2は炭素数1〜32のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数を表す。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果が従来のものよりも改善されている。
本発明の粘度指数向上剤は、剪断安定性が従来のものよりも改善されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明における一般式(1)で示される単量体(a)において、R1は水素原子または炭素数1〜32、好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜4のアルキル基であり、粘度指数向上効果の観点から、R1としては特に水素原子または炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
アルキル基としては、直鎖または分岐のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、エイコシル基およびテトラコシル基などが挙げられる。
2は、炭素数1〜32、好ましくは10〜32、さらに好ましくは10〜24のアルキル基であり、上記のR1で挙げた基と同様の基が挙げられ、特に好ましいのは炭素数10〜24の分岐アルキル基である。
また、R1とR2の組み合わせにおいて好ましいのは、粘度指数向上効果の観点から、R2が炭素数10〜32のアルキル基で、R1が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である組み合わせである。
Aは炭素数2〜4のアルキレン基であり、具体的にはエチレン基、1,2−および1,3−プロピレン基、1,2−、1,3−および1,4−ブチレン基が挙げられる。これらのうち好ましいものはエチレン基および1,2−プロピレン基である。
【0009】
nは1〜200の整数であり、好ましくは1〜20の整数、さらに好ましくは1〜10の整数である。
【0010】
ビニル単量体(a)の製造は、以下の(1)、(2)および必要により(3)の反応を行うことにより達成することができる。
(1)α−ヒドロキシメチル化反応;
[α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルの製造]
アクリル酸アルキルエステルとホルムアルデヒドとを三級アミンの存在下に反応させることにより、α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルを得る(たとえば、特開昭61−134353号公報、米国特許第4654432号明細書、特開平5−70408号公報)。
(2)α−ヒドロキシメチル基へ(ポリ)オキシアルキレン基の導入;
α−ヒドロキシメチルアクリル酸アルキルエステルのヒドロキシル基に、炭素数2〜4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド等)を開環付加反応させる(公知のアルカリまたは酸触媒が使用できる)。
(3)(ポリ)オキシアルキレン基の末端水酸基のアルコキシ化反応;
アルキルハロゲン化物を用いてWilliamsonのエーテル化反応を行う。
(a)の具体例としては、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ドデシルエステル、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸2−デシルテトラデシルエステル、α−{メトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ドデシルエステル、α−{メトキシプロピル(ポリオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸トリデシルエステル、α−{エトキシエチル(ポリオキシエチレンオキシプロピレン)オキシメチル}アクリル酸テトラデシルエステル、およびα−{ブトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸−2−デシルテトラデシルエステルなどが挙げられる。
【0011】
ビニル重合体(A)は、(a)のみから構成される単独ビニル重合体、または(a)以外の他の単量体(b)を構成単量体としてなるビニル共重合体のいずれでもよい。
基油への溶解性の観点から好ましいのは共重合体であり、共重合体を構成する(b)としては例えば下記のものが挙げられる。なお、(b)は1種でも2種以上の併用でもよい。
【0012】
(b1);(メタ)アクリル酸エステル
(メタ)アクリル酸アルキルエステル(b1−1)、
(メタ)アクリル酸アルケニルエステル(b1−2)、
(ポリ)アルキレングリコールまたはそのモノアルキルエーテルのモノ(メタ)アクリル酸エステル(b1−3)、
(メタ)アクリル酸シクロアルキルもしくはシクロアルキルアルキルエステル(b1−4)などが挙げられる。
【0013】
(b1−1)を構成するアルキル基としては炭素数1〜30の直鎖、または分岐のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基である。(b1−1)の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル、(メタ)アクリル酸2−デシルテトラデシルおよび(メタ)アクリル酸テトラコシルなどが挙げられる。
【0014】
(b1−2)を構成するアルケニル基としては、炭素数1〜30の直鎖または分岐のアルケニル基が含まれる。(b1−2)の具体例としては、(メタ)アクリル酸ブテニルエステル、(メタ)アクリル酸オクテニルエステル、(メタ)アクリル酸デセニルエステル、(メタ)アクリル酸ドデセニルエステル、(メタ)アクリル酸オレイルエステルなどが挙げられる。
【0015】
(b1−3)を構成する(ポリ)アルキレングリコールもしくはそのモノアルキルエーテルを構成するアルキレン基としては、炭素数が2〜20のアルキレン基、例えばエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、2−ブチレン基、イソブチレン基、1,1−ジフェニルエチレン基およびシクロヘキシレン基などが挙げられる。好ましくは、炭素数2〜6のアルキレン基である。またモノアルキルエーテルを構成するアルキル基としては炭素数が1〜20の直鎖または分岐アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基であり、前述のアルキル基が挙げられる。(ポリ)アルキレングリコールにおけるアルキレングリコールの単位の数は好ましくは1〜50、さらに好ましくは1〜20である。(b1−3)の具体例としては、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数9)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数18)モノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノメタクリレート、ポリエチレングリコール(エチレングリコールの単位数6)モノメチルエーテルモノメタクリレート、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテルモノメタクリレート、ポリプロピレングリコール(プロピレングリコールの単位数3)モノブチルエーテルモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0016】
(b1−4)の具体例としては、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸デカヒドロナフチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチルエチルなどが挙げられる。
【0017】
(b2);(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸のエステル
(メタ)アクリル酸以外の不飽和モノカルボン酸[クロトン酸など]の炭素数1〜30のアルキル、シクロアルキルもしくはアラルキルエステル、ならびに不飽和ジカルボン酸[マレイン酸、フマール酸、イタコン酸など]の炭素数1〜24のアルキルジエステル[マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチルなど]が挙げられる。
【0018】
(b3);脂肪族ビニル系炭化水素
例えば、炭素数2〜30のアルケン[エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、1−ヘプテン、4-メチルペンテン−1,1−ヘキセン、ジイソブチレン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびその他のα−オレフィンなど]、炭素数4〜18のアルカジエン[好ましくは炭素数4〜5のブタジエン、イソプレン、その他1,4−ペンタジエン、1,6−ヘキサジエンおよび1,7−オクタジエンなど]などが挙げられる。
【0019】
(b4);アルキルアルケニルエーテル
炭素数1〜30の直鎖または分岐アルキル基を有するアルキルビニルエーテル、アルキル(メタ)アリルエーテル、アルキルプロペニルエーテルおよびアルキルイソプロペニルエーテルなどが挙げられ、好ましくは炭素数1〜24のアルキル基である。具体的には、アルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アルキル(メタ)アリルエーテルとしては、メチルアリルエーテル、エチルアリルエーテル、n−ブチルアリルエーテルなどが挙げられる。
これらのうちで好ましいものは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルアリルエーテルおよびエチルアリルエーテルである。
【0020】
(b5);脂肪酸ビニルエステル
脂肪酸としては、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状もしくは脂環基を有する脂肪酸が挙げられ、飽和または不飽和のいずれであってもよい。また、直鎖状と分岐状など2種以上の併用であってもよい。好ましくは炭素数1〜24、さらに好ましくは1〜18のアルキル基を有する脂肪酸である。具体的には、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ヘキサン酸ビニル、ヘプタン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、n−オクタン酸ビニル、オレイン酸ビニル、リノール酸ビニル、リノレン酸ビニル、シクロヘキサン酸ビニル、シクロオクタン酸ビニルおよびデカヒドロナフチル酸ビニルが挙げられる。
【0021】
(b6);ビニルケトン類
炭素数1〜8のアルキルもしくはアリールのビニルケトン[メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなど]が挙げられる。
【0022】
(b7);脂環基(炭素数5〜24)含有炭化水素系ビニルモノマー
例えば、シクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン、エチリデンビシクロヘプテン、ピネン、リモネンおよびインデンなどが挙げられる。
【0023】
(b8);芳香族ビニル系炭化水素
例えば、スチレン、その他置換スチレン(置換基の炭素数1〜18)[アルキル置換スチレン(好ましくはα−メチルスチレン、ビニルトルエン、その他2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレンなど)、シクロアルキル置換スチレン(シクロヘキシルスチレンなど)、アリール置換スチレン(フェニルスチレンなど)、アラルキル置換スチレン(ベンジルスチレンなど)、アシル基置換スチレン(アセトキシスチレンなど)、フェノキシ基置換スチレン(フェノキシスチレンなど)など]、ジビニル置換芳香族炭化水素[好ましくはジビニルベンゼン、その他ジビニルトルエンおよびジビニルキシレンなど]、ビニルナフタレンなどが挙げられる。
【0024】
(b9);窒素原子含有単量体
(b9−1);1〜3級アミノ基含有ビニルモノマー
例えば、アミノアルキル(炭素数1〜8)(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミド[アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N−アミノエチル(メタ)アクリルアミドなど]およびこれらのモノおよびジアルキル(炭素数1〜6)置換体[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレートなど]、複素環窒素含有ビニルモノマー[モルホリノエチル(メタ)アクリレート、4−ビニルピリジン、2−ビニルピリジン、ビニルイミダゾール、N−ビニルピロール、N−ビニルチオピロリドン、アミノカルバゾール、アミノチアゾール、アミノインドール、アミノピロール、アミノイミダゾール、アミノメルカプトチアゾールおよびこれらの塩など]、モノおよびジ(メタ)アリルアミンなどが挙げられる。
【0025】
(b9−2);4級アンモニウムカチオン基含有ビニルモノマー
例えば、ジアルキル(炭素数1〜4)アミノアルキル(炭素数2〜8)(メタ)アクリレートもしくは(メタ)アクリルアミドの4級化物[ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどの4級化物]、およびジアリルアミンなどの4級化物が挙げられ、4級化剤としてメチルクロライド、ジメチル硫酸、ベンジルクロライド、ジメチルカーボネートなどの炭素数1〜12のアルキルもしくはアラルキル基を有する化合物を用いて4級化したものが例示される。
【0026】
(b9−3);アミド基含有ビニル単量体
非置換もしくはモノアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド、[(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−i−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−およびi−ブチル(メタ)アクリルアミドなど]、ジアルキル(炭素数1〜4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジn−ブチル(メタ)アクリルアミド]、N−ビニルカルボン酸アミド[N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−n−およびi−プロピオニルアミド、N−ビニルヒドロキシアセトアミド]などが挙げられる。
【0027】
(b9−4);ニトリル基含有単量体
例えば、(メタ)アクリロニトリルおよびシアノスチレンなどが挙げられる。
【0028】
(b9−5);ニトロ基含有単量体
例えば、4−ニトロスチレンなどが挙げられる。
【0029】
(b10);ヒドロキシル基含有ビニル単量体
例えば、芳香族ビニル単量体[p−ヒドロキシスチレンなど]、ビニルアルコール(酢酸ビニル単位の加水分解により形成される)、炭素数3〜12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1−オクテノール、1−ウンデセノールなど]、炭素数4〜12のアルケンジオール[1−ブテン−3−オール、2−ブテン−1−オール、2−ブテン−1,4−ジオールなど]、ヒドロキシアルキル(炭素数1〜6)アルケニル(炭素数3〜10)エーテル[2−ヒドロキシエチルプロペニルエーテルなど]などが挙げられる。
【0030】
(b11);ハロゲン含有ビニル単量体
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル、ハロゲン化スチレン(モノおよびジクロルスチレン、テトラフルオロスチレンおよび塩化アリルなど)などが挙げられる。
【0031】
(b12);アニオン性単量体
(b12−1);カルボキシル基含有ビニル単量体
モノカルボン酸基含有ビニル単量体、例えば、不飽和モノカルボン酸[(メタ)アクリル酸、α−メチル(メタ)アクリル酸、クロトン酸、桂皮酸など]、不飽和ジカルボン酸のモノアルキル(炭素数1〜8)エステル[マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステルなど]など;ジカルボン酸基含有ビニル単量体、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸およびアコニット酸などが挙げられる。
【0032】
(b12−2);スルホン酸基含有ビニル単量体
炭素数2〜6のアルケンスルホン酸[ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸など]、炭素数6〜12の芳香族ビニル基含有スルホン酸[α−メチルスチレンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルエステル系単量体[スルホプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸など]、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド系単量体[2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]、スルホン酸基と水酸基を含有するビニル単量体[3−(メタ)アクリルアミド−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、3−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸など]、アルキル(炭素数3〜18)アリルスルホコハク酸エステル[ドデシルアリルスルホコハク酸エステルなど]などが挙げられる。
【0033】
(b12−3);硫酸エステル基含有ビニル単量体
例えば、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)モノ(メタ)アクリレートの硫酸エステル、ポリ(n=2〜30)オキシアルキレン(エチレン、プロピレン、ブチレン:単独、ランダム、ブロックでもよい)ビスフェノールAモノ(メタ)アクリレートの硫酸エステルなどが挙げられる。
【0034】
(b12−4);燐酸基含有ビニル単量体
例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキル(炭素数2〜6)燐酸モノエステル[(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートなど]、(メタ)アクリロイルオキシアルカン(炭素数2〜4)ホスホン酸[2−アクリロイルオキシエタンホスホン酸など]などが挙げられる。
【0035】
(b)のうち、好ましいのは(b1)、(b2)、(b7)、(b8)、(b9)およびそれらの2種以上の併用であり、さらに好ましいのは(b1)、(b2)およびそれらの2種以上の併用であり、特に好ましいのは(b1−1)およびそれらの2種以上の併用である。
【0036】
(b1−1)のうちの2種以上の併用の場合の好ましい組み合わせは、以下の(i)または(ii)である。
(i);炭素数8〜24、さらに好ましくは炭素数12〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上(b1−1−1)、および炭素数1〜4の直鎖もしくは分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの1種以上(b1−1−2)[(b1−1−2)のうち特に好ましくは(メタ)アクリル酸メチル]との組み合わせであり、比率(b1−1−1)/(b1−1−2)は、好ましくは1/99〜98/2重量比、さらに好ましくは5/95〜90/10重量比である。
(ii);炭素数8〜24、さらに好ましくは炭素数12〜24の直鎖もしくは分岐のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの2種以上の組み合わせ。
【0037】
(A)が(b)から誘導される単位を含む場合の(A)の重量に基づく(a)から誘導される単位の割合は、好ましくは1〜50重量%(以下において特に限定しない限り%は重量%を表す)、さらに好ましくは1〜40%、特に好ましくは2〜35%である。
(a)から誘導される単位が1%以上であれば粘度指数向上効果と剪断安定性に優れている点で好ましく、50%以下であれば基油への溶解性に優れている点で好ましい。
【0038】
(A)の重量平均分子量は、好ましくは3,000〜500,000、さらに好ましくは5,000〜300,000、特に好ましくは8,000〜100,000である。ここで重量平均分子量はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算分子量として測定されたものであり、以下Mwと略記する。
【0039】
(A)の具体例としては、例えば、
(1) α−{メトキシエチル(ポリオキシエチレン、n=6)オキシメチル}アクリル酸トリデシルエステル3%/メタクリル酸ヘキサデシル20%/メタクリル酸テトラデシル25%/メタクリル酸ドデシル52%からなる共重合体、
(2):α−{メトキシプロピル(ポリオキシプロピレン、n=5)オキシメチル}アクリル酸ドデシルエステル8%/メタクリル酸ヘキサデシル17%/メタクリル酸テトラデシル25%/メタクリル酸ドデシル34%/メタクリル酸メチル16%からなる共重合体、などが挙げられる。
【0040】
(A)を製造する方法は、従来から知られているラジカル重合方法でよく、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法等が挙げられる。これらのうち、好ましくは溶液重合法であり、通常、溶剤中で、開始剤存在下で(a)、必要によりさらに(b)をラジカル重合することにより製造できる。溶剤としては、例えば高沸点溶剤として溶剤精製油、イソパラフィンを含有するおよび/または水素化分解による高粘度指数油、炭化水素系合成油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油など)、エステル系合成油、ナフテン油等が挙げられる。有機溶剤としては、例えば炭化水素系溶剤(ペンタン、ヘキサン等)、芳香族系溶剤(トルエン、キシレン等)、アルコール系溶媒(イソプロピルアルコール、オクタノール、ブタノール等)、ケトン系溶媒(メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等)、アミド系溶媒(N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等)、スルホキシド系溶媒(ジメチルスルホキシド等)、およびこれらの2種以上の併用が挙げられる。
開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤、有機ハロゲン化合物開始剤からなる群より選ばれる開始剤である。
アゾ系開始剤としては、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩(例えば塩酸塩など)、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2′−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミドなどが挙げられる。
過酸化物系開始剤としては無機過酸化物[例えば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなど]、有機過酸化物[例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、コハク酸パーオキサイド、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、ラウリルパーオキシドなど]が挙げられる。
レドックス系触媒としては、アルカリ金属の亜硫酸塩もしくは重亜硫酸塩(例えば、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸アンモニウムなど)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、アスコルビン酸などの還元剤とアルカリ金属の過硫酸塩、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、有機過酸化物など酸化剤との組合せよりなるものなどが挙げられる。
また、重合には連鎖移動剤を添加してもよく、例えばメルカプタン類(n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノールなど)、チオカルボン酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸など)、2級アルコール類(イソプロパノ−ルなど)、アミン類(ジブチルアミンなど)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウなど)などが挙げられる。
【0041】
重合制御の方法は、断熱重合法、温度制御重合法が挙げられる。反応温度としては、好ましくは30〜140℃、さらに好ましくは50〜130℃、特に好ましくは70〜120℃である。また、熱による重合開始の方法の他に、放射線、電子線、紫外線などを照射して重合を開始させる方法を採ることもできる。好ましいものは温度制御した溶液重合法である。
さらに、共重合としては、ランダム付加重合または交互共重合のいずれでもよく、またグラフト共重合またはブロック共重合のいずれでもよい。
【0042】
本発明における潤滑油用粘度指数向上剤組成物は、本発明の粘度指数向上剤、ならびに希釈剤および/または他の添加剤からなるものである。
【0043】
希釈剤で溶解・希釈することにより基油への溶解が容易になる点で好ましい。希釈剤としては、後述の基油と同様のもの、および前述の(A)の製造法において挙げた溶剤と同様のものが使用でき、(A)の重合工程で使用した溶剤を除去せずにそのまま残しておいてもよい。希釈剤としては、好ましくは溶剤精製油、イソパラフィンを含有するおよび/または水素化分解による粘度指数100〜160の高粘度指数油、炭化水素系合成油(ポリα−オレフィン系合成潤滑油など)、エステル系合成油、ナフテン油である。
(A)からなる粘度指数向上剤が希釈剤に溶解しにくい場合は、加熱(好ましくは40〜150℃)して溶解することが好ましい。
希釈剤を使用する場合の潤滑油用粘度指数向上剤組成物中の(A)の濃度は好ましくは1%以上、さらに好ましくは10〜90%、特に好ましくは30〜80%である。
【0044】
潤滑油用粘度指数向上剤組成物中の他の添加剤としては、前述の(a)を構成単量体として含まず、前述の(b)から選ばれる1種以上の単量体から構成される重合体(B)が例示される。(B)を構成する単量体としては、前述の(b)のうち、好ましくは(b1)、(b2)、(b7)、(b8)、(b9)およびそれら2種以上の併用であり、さらに好ましくは(b1−1)、(b1−2)、(b2)およびそれら2種以上の併用であり、特に好ましくは(b1−1)およびそれら2種以上の併用である。
(B)を使用する場合の(B)/(A)の重量比は、好ましくは0〜10/1、さらに好ましくは0.1〜3/1である。
【0045】
本発明の潤滑油用粘度指数向上剤組成物は、さらに他の任意成分として、例えば清浄剤(スルフォネート系、サリシレート系、フェネート系、ナフテネート系などのCaやMg塩、炭酸カルシウム)を本発明の(A)に重量に基づいて0〜20%好ましくは0.1〜10%、分散剤(コハク酸イミド系;ビスタイプ、モノタイプ、ボレートタイプ、マンニッヒ縮合物系など)を0〜20%、好ましくは0.2〜10%、抗酸化剤(ジンクジチオフォスフェート、アミン系;ジフェニルアミン、ヒンダードフェノール系、チオリン酸亜鉛、トリアルキルフェノールなど)を0〜5%好ましくは0.1〜3%、摩擦改質剤(長鎖脂肪酸系;オレイン酸、長鎖脂肪酸エステル;オレイン酸エステル、長鎖アミン系:オレイルアミンなど、長鎖アミド;オレアミドなど)を0〜5%、好ましくは0.1〜1%、摩擦摩耗調整剤(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメイト、ジンクジアルキルジチオフォスフェートなど)を0〜5%好ましくは0.1〜3%、極圧剤(硫黄リン系、硫黄系、リン系、クロル系など)を0〜20%、好ましくは0.1〜10%、消泡剤(シリコーン油、金属石けん、脂肪酸エステル、リン酸エステルなど)を2〜1000ppm、好ましくは10〜700ppm、抗乳化剤(4級アンモニウム塩、硫酸化油、リン酸エステルなど)を0〜3%、好ましくは0〜1%、腐食防止剤(ベンゾトリアゾール、1,3,4−チオジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカルバメートなど)を0〜3%、好ましくは0〜2%含有してもよい。
【0046】
他の任意成分を含む場合、潤滑油用粘度指数向上剤組成物の重量に基づく他の任意成分の合計の重量は、好ましくは0〜50%、さらに好ましくは0〜30%、さらに好ましくは0〜15%である。
【0047】
本発明の潤滑油組成物は、基油と粘度指数向上剤、または、基油、潤滑油用粘度指数向上剤組成物および必要により任意成分からなるものであるが、(B)または任意成分は、潤滑油用粘度指数向上剤組成物として基油に配合してもよいが、それぞれを別にして基油に配合してもよい。その場合の配合の順序は特に限定されない。
【0048】
本発明の粘度指数向上剤が添加される基油としては特に限定されないが、100℃における動粘度が1〜15mm2/s、好ましくは2〜5mm2/sであり、その粘度指数は通常80以上、好ましくは100以上、さらに好ましくは105〜180である。このような基油に本発明の粘度指数向上剤を配合した潤滑油組成物は、粘度指数がさらに高くなり省燃費性が良好となる。
【0049】
また、本発明の粘度指数向上剤が添加される基油の曇点(JIS K2269−1993年)は−5℃以下が好ましい。さらに好ましくは−15℃〜−60℃である。基油の曇点がこの範囲であるとワックスの析出量が少なく低温粘度が良好である。基油としては、溶剤精製油、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油、炭化水素系合成潤滑油(ポリαオレフィン系合成潤滑油)、エステル系合成潤滑油、ナフテン油などが挙げられる。これらのうち好ましくは、イソパラフィンを含有するおよびまたは水素化分解による高粘度指数油である。
【0050】
本発明の潤滑油組成物は、基油に対して、粘度指数向上剤を共重合体(A)に換算して好ましくは0.5〜30%添加して製造される。
【0051】
潤滑油組成物がエンジン油の場合には、100℃の動粘度が3〜10mm2/sの基油に、(A)として0.5〜15%が添加されることが好ましい。
ギヤ油の場合には100℃の動粘度が3〜10mm2/sの基油に3〜30%が添加されることが好ましい。
自動変速機油(ATF、ベルトCVT油)の場合には100℃の動粘度が2〜6mm2/sの基油に2〜25%が添加されことが好ましい。
トラクション油の場合には100℃の動粘度が1〜5mm2/sの基油に0.5〜15%が添加されることが好ましい。
作動油の場合には100℃の動粘度が1〜10mm2/sの基油に0.5〜25%が添加されることが好ましい。
【0052】
また、(B)を使用する場合は、(A)と(B)の合計量が基油に対して好ましくは1〜35%、さらに好ましくは2〜30%である。
【0053】
本発明の粘度指数向上剤は、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用など)、変速機油[ギア油(工業用、自動車用)、自動変速機油(オートマチックトランスミッション油、トロイダルCVT油、ベルトCVT油)]、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、トラクション油、グリースなどに幅広く好適に用いることができる。
【0054】
また、本発明における重合体(A)は、粘度指数向上剤としての用途以外に、摩擦調整剤、摩耗防止剤、分散剤、流動性向上剤および酸化防止剤などとしても用いることができる。
これらのうち好ましいのは摩擦調整剤もしくは流動性向上剤としての使用であり、さらに好ましくは摩擦調整剤としての使用である。
摩擦調整剤としての使用範囲は、上記のエンジン油、変速機油、自動変速機油、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油、トラクション油、グリースなどであり、特に、変速機油、さらに好ましくは自動変速機油、特に好ましくは、スリップ制御機構を有する自動変速機用のオ−トマチックトランスミッション油、ベルトCVT油への使用であり、省燃費性に優れる。
【0055】
<実施例>
以下に実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の%および部は重量%および重量部を表す。
(GPCによる重量平均分子量の測定法)
装置 : 東洋曹達製 HLC−802A
カラム : TSK gel GMH6 2本
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.5重量%のTHF溶液
溶液注入量 : 200μl
検出装置 : 屈折率検出器
標準 : ポリスチレン
【0056】
(低温粘度の試験方法)
JPI−5S−26−85の方法で−40℃の粘度を測定した。
【0057】
(粘度指数の試験方法)
JIS−K−2283の方法で行った。
【0058】
(剪断安定性の試験方法)
剪断安定性試験による動粘度の低下率の測定:
鉱物油(100℃動粘度=2.99mm2/s、40℃動粘度=11.5mm2/s、粘度指数=115)に重合体を溶解し、その溶液の100℃動粘度が5.5±0.1mm2/sになるよう重合体の添加量を調整して、重合体の鉱物油溶液を得る。
該溶液について、JASO M347−95に準拠して、試験時間8時間での100℃の動粘度の低下率を求める。
【0059】
製造例1
[α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ドデシルエステルの製造]:
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製反応容器に、アクリル酸ドデシル240部(1モル部)、37%ホルムアルデヒド水溶液(メタノール含有量7%)122部(1.5モル部)、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)7部(63ミリモル部)、メトキシハイドロキノン0.03部及びアセトニトリル200部を仕込み、均一混合した後、80〜82℃で1時間反応させた。この反応液を40℃に冷却し、濃塩酸でpH5.0に調整した後、トルエン200部で抽出した。ついで、抽出物からトルエンを留去して、α−ヒドロキシメチルアクリル酸ドデシル(HMDA)の粗生成体を得た。
HMDAの粗生成体295部を、さらに石油エーテル60部を用いて不純物を3回抽出除去して精製した。(純度95.5%)。
加熱撹拌装置および冷却器を備えたガラス製耐圧反応容器に、HMDA282部(1モル部)、三フッ化硼素(ジエチルエーテル錯体)0.7部およびメトキシハイドロキノン0.05部を混合し、60℃に調整した後、60℃でエチレンオキシド132部(3モル部)を滴下して反応させることにより、α−{ヒドロキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸ドデシル(n=3)(OHMDA)を得た。
【0060】
製造例2
[α−{メトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸2−デシルテトラデシルエステルの製造]:
アクリル酸ドデシル240部の代わりにアクリル酸2−デシルテトラデシル408部(1モル)を使用する以外は製造例1と同様にして、α−{メトキシエチル(ポリオキシエチレン)オキシメチル}アクリル酸2−デシルテトラデシルエステル(n=3)(OHM2DTA)を得た。
【0061】
実施例1〜8、および比較例1〜4;
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、および窒素吹き込み管を備えた反応容器に、トルエン25部を仕込み、別のガラス製ビーカーに、表1に記載の単量体を合計100部、連鎖移動剤としてドデシルメルカプタン(DMと略記)を表2に記載の量、およびラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル:ADVNと略記)0.5部仕込み、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに仕込んだ。
反応容器の気相部の窒素置換を行った後に密閉下85℃で4時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、得られたポリマーを130℃、3時間、減圧下でトルエンを除去し共重合体(A−1)〜(A−8)、および(X−1)〜(X−4)を得て、これらを粘度指数向上剤とした。得られた共重合体のMwを表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例9〜16、比較例5〜8
共重合体(A−1)〜(A−8)、および(X−1)〜(X−4)のそれぞれ65部を鉱物油(溶剤精製油:100℃動粘度2.4mm2/s)35部にそれぞれ混合溶解させて、潤滑油用粘度指数向上剤組成物を作製した。
撹拌混合装置の付いたステンレス製容器に、得られる潤滑油組成物の100℃の動粘度が5.5±0.1(mm2/s)になり、かつ潤滑油組成物の合計が100部になるように(A−1)〜(A−8)、(X−1)〜(X−4)の潤滑油用粘度指数向上剤組成物と基油(100℃の動粘度:3.0mm2/s、粘度指数:115)をそれぞれ添加し、本発明の潤滑油組成物および比較例の潤滑油組成物を作製した。
得られた潤滑油組成物の、粘度指数の測定結果、および剪断安定性試験による動粘度の低下率の測定結果を表2に示す。
【0064】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物は、従来のPMA系粘度指数向上剤を使用した潤滑油組成物と比べ粘度指数が改良でき、かつ、剪断安定性、低温粘度、耐金属疲労、耐摩耗性にも優れることから今後の自動車の省燃費性の要求に対応できる。従って、駆動系潤滑油(マニュアルトランスミッション油、デファレンシャルギヤ油、オートマチックトランスミッション油、ベルトCVT油など)、作動油(機械の作動油、パワーステアリング油、ショックアブソーバー油など)、エンジン油(ガソリン用、ディーゼル用等)、トラクション油に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表されるビニル単量体(a)を必須構成単量体としてなるビニル重合体(A)からなる粘度指数向上剤。
【化1】

(式中、R1は水素原子または炭素数1〜32のアルキル基、R2は炭素数1〜32のアルキル基、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、nは1〜200の整数を表す。)
【請求項2】
一般式(1)におけるR2が炭素数10〜32のアルキル基で、R1が水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である請求項1記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
(A)がさらに他のビニル単量体(b)を構成単量体としてなるビニル共重合体である請求項1または2記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
(A)が、(A)の重量に基づいて1〜50重量%のビニル単量体(a)から構成されてなるビニル重合体である請求項1〜3のいずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項5】
(A)の重量平均分子量が3,000〜500,000である請求項1〜4のいずれか記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の粘度指数向上剤、並びに希釈剤および/または他の添加剤からなる潤滑油用粘度指数向上剤組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか記載の粘度指数向上剤を潤滑油組成物の重量に基づいて0.5〜30重量%含有する潤滑油組成物。

【公開番号】特開2006−233048(P2006−233048A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50489(P2005−50489)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】