説明

粘度調整剤

【課題】粘度指数向上性および増粘効果に優れ、流動点降下剤の作用を阻害しにくい粘度調整剤を提供すること。
【解決手段】エチレンに由来する単量体単位の含有量が0〜30モル%であり、炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量が3〜50モル%であり、さらに下記(1)、(2)および(3)を満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粘度調整剤および、該粘度調整剤の含有量が0.1〜10重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.9〜90重量%である潤滑油組成物。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量が20万〜100万であること
(2)分子量分布が1〜4であること
(3)JIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量が30J/g以下であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘度指数向上性および増粘効果に優れ、流動点降下剤の作用を阻害しにくい粘度調整剤に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油等の用途に用いられる石油製品には、使用環境による温度変化に伴う粘度変化の抑制(粘度指数の向上)や、使用目的に応じた粘度の付与(増粘効果)等の特性を与える目的で粘度調整剤が配合される。また、粘度調整剤には、潤滑油等が剪断を受けたときの粘度低下を抑制する性能(剪断安定性)が必要とされる。近年では、従来のポリメタクリレートやポリイソブチレンに代わって、これら要求特性のバランスの観点で優れるエチレン−α−オレフィン共重合体が粘度調節剤として用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粘度指数向上能と剪断安定性を有するシンジオタクティシティーの高い炭素数8〜20の高級α−オレフィンとエチレンとの共重合体が記載されている。特許文献2には、低温特性と高温での潤滑性のバランスに優れる潤滑油組成物が得られるエチレン・α−オレフィン共重合体からなる潤滑油用粘度調整剤が記載されている。また、特許文献3には、低温特性と高温での潤滑性のバランスに優れる潤滑油組成物が得られるエチレン・α−オレフィン共重合体からなる潤滑油用粘度調整剤が記載されている。
【0004】
また、潤滑油等には、低温において潤滑油等に含有されるワックス分が結晶固化して流動性を失うのを抑制する目的で流動点降下剤を添加するが、特許文献1に記載の粘度調節剤は、流動点降下剤を併用した場合に流動点降下剤の効果を阻害するという問題があり、特許文献2および特許文献3に記載の粘度調節剤は、潤滑油基材への溶解性が低いために少量の添加量で十分な増粘効果が得られるとはいえず、また粘度指数向上性も十分ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2005−200448号公報
【特許文献2】特開2002−356692号公報
【特許文献3】特開2002−356693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる状況において本発明が解決しようとする課題、即ち本発明の目的は、粘度指数向上性および増粘効果に優れ、流動点降下剤の作用を阻害しにくい粘度調整剤、および該性能を有する潤滑油組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、エチレンに由来する単量体単位の含有量が0〜30モル%であり、炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量が3〜50モル%であり、さらに下記(1)、(2)および(3)を満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粘度調整剤(ただし、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体全体を100モル%とする)および、該粘度調整剤の含有量が0.1〜10重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.9〜90重量%である潤滑油組成物(ただし、潤滑油組成物全体を100重量%とする)である。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量(Mw)が20万〜100万であること
(2)分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であること
(3)JIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量が30J/g以下であること
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘度指数向上性および増粘効果に優れ、流動点降下剤の作用を阻害しにくい粘度調整剤、および該性能を有する潤滑油組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の粘度調節剤は、以下に述べるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む。
【0010】
本発明の粘度調節剤に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体は、炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する単量体単位を含有する。炭素原子数4〜20のα−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1―ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセンの直線状α−オレフィンや8−メチル−1−ノネン、7−メチル−1−デセン、6−メチル−1−ウンデセン、6,8−ジメチル−1−デセンなどの分岐を有するα−オレフィンが挙げられる。これらのうちで好ましくは1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテンであり、特に好ましくは1−ブテンである。
【0011】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量は3〜50モル%であり、好ましくは3〜30モル%であり、より好ましくは4〜18モル%である。炭素原子数4〜20のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量が3モル%未満であると、潤滑油基材等への溶解性が十分でない場合があり、また、50モル%を超えると、剪断安定性が十分でない場合がある。
【0012】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体のエチレンに由来する単量体単位の含有量は0〜30モル%であり、好ましくは5〜20モル%であり、より好ましくは13〜18モル%である。
【0013】
エチレンに由来する単量体単位の含有量が30モル%を超えると、本発明の粘度調整剤の潤滑油基材への溶解性が十分でないか、または、溶解できても潤滑油組成物がゲル化する場合がある。
【0014】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体は、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−へキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘプテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体、プロピレン−エチレン−ノネン共重合体、プロピレン−エチレン−1−デセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ウンデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ドデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−トリデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−テトラデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ペンタデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキサデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘプタデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクタデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ノナデセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−エイコセン共重合体、プロピレン−エチレン−8−メチル−1−ノネン共重合体、プロピレン−エチレン−7−メチル−1−デセン共重合体、プロピレン−エチレン−6−メチル−1−ウンデセン共重合体、プロピレン−エチレン−6,8−ジメチル−1−デセン共重合体であり、好ましくはプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ペンテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−へキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘプテン共重合体であり、特に好ましくはプロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体である。2種以上のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を併用してもよい。
【0015】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量(Mw)は20万〜100万であり、好ましくは25万〜60万であり、より好ましくは30万〜50万である。また、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1〜4であり、好ましくは1.5〜3であり、より好ましくは1.8〜2.5である。
【0016】
重量平均分子量(Mw)が20万未満であると、潤滑油等に添加した場合に十分な増粘効果が得られず、したがって十分な粘度指数向上性が得られない場合がある。一方、重量平均分子量(Mw)が100万を超えると、剪断安定性が低下する場合がある。また、分子量分布(Mw/Mn)が4を超えると、同じ重量平均分子量(Mw)であっても剪断安定性が低下する場合がある。
【0017】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体のJIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量は、潤滑油基材に流動点降下剤と併用した場合、流動点降下剤の効果を阻害しにくいという観点から30J/g以下である。好ましくは、JIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量は1J/g以下である。
【0018】
結晶融解熱量が30J/gを超えると、潤滑油組成物中でプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体が結晶化することによって流動点降下剤の作用が十分に得られないことがある。
【0019】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体のSαβ/Sααは特に限定されないが、好ましくは0.50を超え3.00以下である。Sαβ/Sααがこの範囲を外れると、流動点降下剤の作用が十分に得られない場合がある。ここで、Sαβ/Sααとは、核磁気共鳴装置を用いて、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出される値である。具体的には、13C NMRスペクトルのSαα部(45〜48ppm)とSαβ部(34〜37ppm)のピーク面積比より算出される。このようにして算出されたSαβ/Sααは、一般にα−オレフィンの1,2付加反応に続いて2,1付加反応が起こる割合、またはα−オレフィンの2,1付加反応に続いて1,2付加反応が起こる割合を示す尺度と考えられている。したがってこのSαβ/Sααが大きいほど、α−オレフィンの結合方向が不規則であることを示している。
【0020】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体のrr/(mm+mr+rr)×100[%]は特に限定されないが、好ましくは50%未満である。rr/(mm+mr+rr)×100[%]が50%以上であると、粘度指数向上性能が十分でない場合がある。ここで、rr/(mm+mr+rr)とは、シンジオタクティシティーの割合であり、立体規則性の程度を示す指標である。本明細書におけるシンジオタクティシティーはトリアッド(連続する3個の構成単位の相対的立体配座関係の存在割合)を用いる。rr/(mm+mr+rr)は、核磁気共鳴装置を用いて、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出される。具体的には、13C NMRスペクトルのPαα部(19.7〜22ppm)を用い、低磁場(高周波数)側よりmm、mr、rrと帰属され、ピーク面積比より算出される。
【0021】
本発明に用いられるプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。これらの中でも好ましくは、メタロセン系錯体や非メタロセン系錯体などの錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等であり、該錯体系触媒としては、たとえば特開昭58−19309号公報、特開昭60−35005号公報、特開昭60−35006号公報、特開昭60−35007号公報、特開昭60−35008号公報、特開昭61−130314号公報、特開平3−163088号公報、特開平4−268307号公報、特開平9−12790号公報、特開平9−87313号公報、特開平10−508055号公報、特開平11−80233号公報、特表平10−508055号公報などに記載のメタロセン系触媒;特開平10−316710号公報、特開平11−100394号公報、特開平11−80228号公報、特開平11−80227号公報、特表平10−513489号公報、特開平10−338706号公報、特開表11−71420号公報などに記載の非メタロセン系の錯体触媒を例示することができる。これらの中でも、入手容易性の観点から、メタロセン触媒が好ましく、その中でも好適なメタロセン触媒の例としては、シクロペンタジエン形アニオン骨格を少なくとも1個有し、C1対称構造を有する周期表第3族〜第12族の遷移金属錯体が好ましい。また、メタロセン触媒を用いた製造方法の特に好ましい例として、欧州特許出願公開第1211287号明細書の方法を例示することができる。
【0022】
本発明の粘度調整剤は、該プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の他に、必要に応じて他の成分を含有していてもよい。他の成分としては潤滑油等に一般的に用いられる添加剤であり、例えば、酸化防止剤、摩耗防止剤、清浄分散剤、流動点降下剤を挙げることができる。
【0023】
酸化防止剤としては、例えば、アミン化合物、フェノール化合物、リン化合物または硫黄化合物が挙げられる。
【0024】
摩耗防止剤としては、例えば、モリブデン化合物、ホウ素化合物、長鎖脂肪酸、脂肪酸エステル、高級アルコール、アルキルアミン、有機硫黄、リン化合物、有機ハロゲン化合物が挙げられる。
【0025】
清浄分散剤としては、例えば、有機金属化合物(アルキルスルホネート、金属フェネート、金属フォスファネート等)、コハク酸イミド、コハク酸エステル、ベンジルアミンが挙げられる。
【0026】
流動点降下剤としては、例えば、アルキルメタクリレート(共)重合体、アルキルアクリレート(共)重合体、アルキルナフテン縮合物、フマル酸エステル酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
【0027】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度調整剤および潤滑油基材を含有する組成物である。
【0028】
本発明で用いられる潤滑油基材は、用途などに応じて鉱物油、合成油から適宜選択すればよい。鉱物油にはパラフィン系、ナフテン系、中間基系などが挙げられ、一般に脱ワックス等の精製工程を経て用いられる。具体的には軽質ニュートラル油、中質ニュートラル油、重質ニュートラル油、ブライトストックなどが挙げられる。一般に0.5〜10%のワックス分を含む鉱物油が使用され、40℃における動粘度が10〜200cStのものが一般的に使用される。合成油には例えば、ポリα−オレフィン、α−オレフィンコポリマー、ポリブテン、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、シリコーンオイルなどが挙げられる。これらの潤滑油基材は、それぞれ単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができ、鉱物油と合成油とのブレンドが好ましく用いられる。
【0029】
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度調整剤の含有量が0.1〜10重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.9〜90重量%である組成物である(ただし、潤滑油組成物全体を100重量%とする)。好ましくは、粘度調整剤の含有量が0.3〜5重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.7〜95重量%であり、より好ましくは、粘度調整剤の含有量が0.3〜2重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.7〜98重量%である。粘度調整剤の含有量が0.1重量%未満であると、粘度調整剤を添加したことによる増粘効果が十分でない場合があり、10重量%を超えると、潤滑油組成物の剪断安定性が低下する場合がある。
【0030】
本発明の粘度調節剤または該粘度調節剤を含有する潤滑油組成物は、例えば、エンジン油、工業用作動油、真空ポンプ油、軸受油等の種々用途に用いることができる。
【0031】
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
1.重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の重量平均分子量(Mw)および分子量分布(Mw/Mn)は、単分散ポリスチレンを標準試料としてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した。測定装置としてはWaters社製150C/GPCを用い、溶出温度を140℃とし、使用カラムとしては昭和電工社製Sodex Packed ColumnA−80M(2本)、分子量標準物質としてはポリスチレン(東ソー社製、分子量68−8,400,000)を用いた。得られたポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)から、これらの比(Mw/Mn)を分子量分布として求めた。測定サンプルは約5mgの重合体を5mlのo−ジクロロベンゼンに溶解し、約1mg/mlの濃度とした。得られたサンプル溶液の400μlをインジェクションした。溶出溶媒流速は1.0ml/minとし、屈折率検出器にて検出した。
【0033】
2.結晶融解熱量
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体の結晶融解熱量は示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。この結晶融解熱量については、示差走査熱量計、例えばセイコー電子工業社製DSC220Cを用い、以下の条件にて実施することにより得られた。試料約10mgを室温から30℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、昇温完了後5分間保持した。次いで、200℃から10℃/分の降温速度で−100℃まで降温し、降温完了後5分間保持した。次いで、−100℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温し、その際に観察されるピーク面積から結晶融解熱量を求めた。
【0034】
3.エチレンおよびα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量(単位:モル%)
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、1H NMRスペクトル、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C NMRスペクトルのプロピレン由来メチル炭素スペクトル強度と1−ブテン由来メチル炭素スペクトル強度の比からプロピレンと1−ブテンの組成比を算出し、次に、1HNMRスペクトルのメチン+メチレン由来水素スペクトル強度とメチル由来水素スペクトル強度の比からエチレン、プロピレンおよび1−ブテンの組成比を算出した。
【0035】
4.密度
JIS T 7112に従い、アニール処理有りで測定した。
【0036】
5.Sαβ/Sαα
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C NMRスペクトルのSαα部(45〜48ppm)とSαβ部(34〜37ppm)のピーク面積比より算出した。Sαβ/Sααが大きいほど、α−オレフィンの結合方向が不規則であることを示す。
【0037】
6.rr/(mm+mr+rr)×100[%]
核磁気共鳴装置(Bruker社製 商品名AC−250)を用いて、13C NMRスペクトルの測定結果に基づき算出した。具体的には、13C NMRスペクトルのPαα部(19.7〜22ppm)を用い、低磁場(高周波数)側よりmm、mr、rrと帰属し、ピーク面積比より算出した。rr/(mm+mr+rr)×100[%]が100%に近いほど、シンジオタクティシティーが高い。シンジオタクティシティーとは、側鎖の立体構造が規則的に制御されているもののうち、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものの割合である。rr/(mm+mr+rr)が100に近いほど、シンジオタクティック構造の結晶を形成しやすい。
【0038】
7.動粘度(単位:cSt=(mm2/s))、粘度指数
JIS K 2283に規定する動粘度試験方法に従い、40℃および100℃における動粘度を測定し、粘度指数を算出した。粘度指数が大きいほど、潤滑油組成物の粘度の温度依存性が小さい。
【0039】
8.剪断安定性(粘度低下率)
JPI−5S−29に規定する潤滑油剪断安定度試験方法に従い100℃における粘度低下率を測定した。粘度低下率が小さいほど剪断安定性が高い。
【0040】
9.流動点(単位:℃)
JIS K 2269に規定する石油製品の流動点試験方法に従い、恒温恒湿機中で降温過程において−2.5℃おきに潤滑油試料の入った容器を傾けて、容器を横にしても5秒間全く動かなくなったときの温度より2.5℃高い温度を流動点とした。流動性の確認は温度調整後約1時安定させた後に行なった。流動点が低いほど、低温でも固化しにくい。
【0041】
[ポリマー1]
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、エチレンとプロピレンと1−ブテンとを、分子量調節として水素を用い、以下の方法で連続的に共重合させて、本発明のポリマー1に当たるエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部から、重合溶媒としてのヘキサンを124L/時間の供給速度で、エチレンを1.60kg/時間の供給速度で、プロピレンを24.00kg/時間の供給速度で、1−ブテンを1.81kg/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
重合器の上部から、重合器中の反応混合物が100Lの量を保持するように、反応混合物を連続的に抜き出した。
重合器の下部から、重合触媒の成分として、ジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライドを0.005g/時間の供給速度で、トリフェニルメチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートを0.235g/時間の供給速度で、トリイソブチルアルミニウムを2.315g/時間の供給速度で、それぞれ連続的に供給した。
共重合反応は、重合器の外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることによって、45℃で行った。
重合器の上部から連続的に抜き出された反応混合物に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させた後、脱モノマー及び水洗浄をし、次いで、大量の水中でスチームによって溶媒を除去することによって、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得、これを80℃で1昼夜減圧乾燥した。該共重合体の生成速度は7.80kg/時間であった。
【0042】
[ポリマー2]
攪拌機を備えた100LのSUS製重合器中で、分子量調節剤として水素を用い、エチレン、プロピレンおよび1−ブテンを以下の方法で連続的に共重合させて、本発明のポリマー2に相当するエチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体を得た。
重合器の下部からヘキサンを33.9リットル/時間、エチレンを1.03kg/時間、プロピレンを13.26kg/時間、1−ブテンを8.02kg/時間の速度で連続的に供給した。一方、重合器上部から重合器中の重合液が100リットルとなるように連続的に重合液を抜き出した。重合用触媒の成分としてジメチルシリレン(テトラメチルシクロペンタジエニル)(3−tert−ブチル−5−メチル−2−フェノキシ)チタニウムジクロライド、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートおよびトリイソブチルアルミニウムをそれぞれ0.0201g/時間、0.1670g/時間および6.1783g/時間の速度で重合器下部から重合器中に連続的に供給した。共重合反応は、重合器外部に取り付けられたジャケットに冷却水を循環させることで54℃に制御して行った。重合器から抜き出した重合液に少量のエタノールを添加して重合反応を停止させ、脱モノマーおよび水洗浄後、大量の水中でスチームによって溶媒を除去して共重合体を取り出し、80℃で昼夜減圧乾燥した。以上の操作によって、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体が2.45kg/時間の速度で得られた。
得られたポリマーの性状を表1に示す。
【0043】
[ポリマー3]
ポリマー3として結晶性エチレン−1−ブテン共重合体(住友化学(株)製「エクセレンFX CX5501」)を用いた。
ポリマー3の性状を表1に示す。
【0044】
[実施例1]
日東高圧製オートクレーブ(商品名:QUICK・B)に、潤滑油基材としてコスモ石油製「コスモピュアオイルセーフティー32」を98重量%、粘度調節剤としてポリマー1を2重量%となるように投入し、常圧窒素流気下、150℃で加熱しながら2時間撹拌した。得られた混合物を、同一の潤滑油基材を用いて表2に示される濃度に希釈し、さらに流動点降下剤としてInfineum社製「V351」を添加して潤滑油基材/粘度調節剤/流動点降下剤=99.16/0.54/0.3(重量%)の潤滑油組成物を得た。潤滑油組成物の評価結果を表2に示す。
【0045】
[実施例2]
潤滑油基材と粘度調節剤の割合を表2に示す割合に変更し、粘度調節剤をポリマー1からポリマー2に変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した。潤滑油組成物の評価結果を表2に示す。
【0046】
[比較例1]
潤滑油基材と粘度調節剤の割合を表2に示す割合に変更し、粘度調節剤をポリマー1からポリマー3に変更した以外は、実施例1と同様にして潤滑油組成物を調製した。潤滑油組成物の評価結果を表2に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンに由来する単量体単位の含有量が0〜30モル%であり、炭素原子数4〜20のα−オレフィンから選ばれる少なくとも1種のα−オレフィンに由来する単量体単位の含有量が3〜50モル%であり、さらに下記(1)、(2)および(3)を満たすプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粘度調整剤(ただし、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体全体を100モル%とする)。
(1)ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定される重量平均分子量(Mw)が20万〜100万であること
(2)分子量分布(Mw/Mn)が1〜4であること
(3)JIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量が30J/g以下であること
【請求項2】
エチレンに由来する単量体単位の含有量が5〜20モル%である請求項1記載のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粘度調整剤(ただし、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体全体を100モル%とする)。
【請求項3】
JIS K 7122に従う示差走査熱量測定における−50℃〜200℃の範囲に観測される結晶融解熱量が1J/g以下である請求項1または2記載のプロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体を含む粘度調整剤。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の粘度調整剤の含有量が0.1〜10重量%であり、潤滑油基材の含有量が99.9〜90重量%である潤滑油組成物(ただし、潤滑油組成物全体を100重量%とする)。

【公開番号】特開2009−29983(P2009−29983A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197189(P2007−197189)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】