説明

粘弾性ポリウレタン発泡体

本発明は、粘弾性ポリウレタン発泡体を製造するためのポリエーテルポリオール組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエーテルポリオール組成物、そのようなポリエーテルポリオール組成物を用いた粘弾性ポリウレタン発泡体の製造方法、並びにそのようにして製造された粘弾性ポリウレタン発泡体及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粘弾性発泡体は、圧縮後にゆっくりと徐々に回復するという特徴がある。そのような物質は、従来技術において周知であり、エネルギー吸収特性の故に、非常に高く評価されている。粘弾性発泡体材料は、クッション材料(例えば、枕、シートカバー、マットレスなど)、吸音及び/又は振動減衰材料又は衝撃保護材として非常に広範な応用分野で使用されている。
【0003】
粘弾性発泡体の中では、ポリウレタンから製造された粘弾性発泡体が確かに最も重要である。その理由は、一方では、得られるポリウレタン発泡体のいくつかの物理的性質が、使用するポリオール及びイソシアネート成分及び場合により使用される助剤を選択することにより非常に精密に調節できるからであり、他方では、非常に複雑であり得るいかなる形状及び構造の発泡体も「イン・サイチュー」製造により(場合によっては現場で)製造することができるからである。
【0004】
ポリウレタンを製造する場合、通例、2つ又はそれ以上の液体流を合わせる。そのような液体流の混合により、重合が開始され、発泡体の場合には重合物質の発泡が起こる。重合及び成形は、多くの場合、典型的には液体状態である反応混合物の成形又は噴霧により1工程で行われる。加えて、ポリウレタンは、しばしばスラブ材の形状で製造され、スラブ材は、その後、所望の形状に切断される。
【0005】
ほとんどの場合、上記の液体流の一方は、多官能性有機イソシアネート成分(しばしば、「成分A」と称される)であり、他方は、イソシアネートに対して適当な反応性を有し、所望により更なる助剤を含み得る多官能性モノマー又は樹脂である。後者の混合物は、しばしば「成分B」と称され、典型的には1種又はそれ以上のポリオール成分を主成分として含む。
【0006】
特定の組成を有するポリウレタン発泡体を得るには、上記の液体流を、混合前に対応して調製する。通常、発泡は、成分Bに水を添加することにより行われ、水は、成分Aのポリイソシアネートと反応してアミンを形成し、COを放出するが、このCOが発泡用ガスとして機能する。水の使用に代えて又は加えて、揮発性不活性有機化合物又は不活性ガスもしばしば使用される。
【0007】
従来のポリウレタン発泡体の多くは、空間的に分離された異なる相の領域からなる、高い及び低いガラス転位温度(T)を有するブロックコポリマーである。ガラス転位温度は、それより上の軟質エントロピー弾性範囲(=ゴム弾性範囲)から、それより下の脆いエネルギー弾性範囲(=ガラス範囲)を分ける。ポリマーの異なる相におけるこのような高い及び低いガラス転位温度は、通常、材料を使用できる温度範囲を制限する。そのような物質のDMA(動的機械分析)スペクトルは、一般に、異なるガラス転位間の比較的平坦な領域(モジュラス平坦域)により特徴付けられる。
【0008】
そのような物質の低ガラス転位温度相は、(常にではないが)通例、低ガラス転位温度の「ブロック」(最初に生成され、後においてのみ重合に付される)に由来する。対照的に、高ガラス転位温度相は、通例、重合時に起こるウレタン基の生成に起因して、重合中にのみ生成する。低ガラス転位温度のブロック(しばしば、「ソフトブロック」とも称される)は、通常、液体から又はイソシアネート基に対して反応性である基を多数含む低融点オリゴマー樹脂から誘導される。ポリエーテルポリオールおよびポリエステルポリオールは、そのようなオリゴマー樹脂の例である。
【0009】
従来のポリウレタンでは、ハード(高ガラス転位温度)相およびソフト(低ガラス転位温度)相が、重合中に互いに向かって配列し、続いて自然に分離して、「バルクポリマー」内で形態学的に異なる相を形成する。従って、そのような物質は、「分相」(phase-separated)物質とも称される。
【0010】
これに関連して、粘弾性ポリウレタンは、上記の相分離が不完全にしか又は全く起こらないという意味で、特殊なケースである。
【0011】
(主として)連続気泡を有するポリウレタン発泡体におけるそのような「構造粘弾性」から区別されるのは、空圧効果による粘弾性である。すなわち、後者の場合、ほとんどの独立気泡(ほとんど開通部がない気泡)が、発泡体内に存在する。開通部のサイズの小ささの故に、圧縮後に空気はゆっくり再侵入し、その結果、低速の回復が起こる。
【0012】
空圧効果による粘弾性発泡体の例は、市販製品である CosypurTM および ElastoflexTM(Elastogran GmbH製)である。
【0013】
先行技術には、構造粘弾性を有するポリウレタン発泡体の製造方法が多数記載されており、そのほとんどは、ほぼ自由に選択できるイソシアネート成分に加えて、特別なポリエーテルポリオール組成物を共通して使用する。
【0014】
そのようなポリエーテルポリオールは、通例、エポキシド(例えば、エチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリン)自体の重合生成物、又は反応性水素原子を有する出発成分(分子)(例えば、水、アルコール、アンモニア又はアミン)に対する、エポキシドの混合物としての又は逐次の付加による生成物である。「出発分子」は、一般に、1〜6の官能価を有する。プロセス制御に依存して、そのようなポリエーテルポリオールは、ホモポリマー、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー又は異なるエポキシドの混合物により末端化されたポリマーであり得る。そのようなポリエーテルポリオールを特定するために、従来技術では、種々の特性が規定されている:
【0015】
i)ポリエーテルポリオールを合成するのに用いる出発分子に依存するヒドロキシ官能価;
ii)mg-KOH/g で示されるヒドロキシル基含量の指標であるOH価;
iii)開環により異なる(すなわち、1級又は2級)ヒドロキシ基を形成するエポキシドを用いる場合、一方で、ポリエーテルポリオール中の各エポキシドの割合を記述し、他方で、ポリエーテルポリオール中に存在するヒドロキシ基の合計数に対する1級又は2級ヒドロキシ基の割合を記述する;
iv)ポリエーテルポリオールのポリオキシアルキレン鎖の長さの指標である分子量(Mn又はMw)。
【0016】
上記の特性量は、下記式:
【数1】

により、相互に関連づけることができる。
【0017】
WO 01/32736 A1 は、粘弾性ポリウレタン発泡体を製造するためのポリエーテルポリオール組成物を記載しており、それは、下記の成分を含む:
【0018】
b1)2〜6の範囲の平均ヒドロキシ官能価を有し、EOがポリマー鎖の末端にある及び/又はポリマー鎖中にランダムに分布しており、合計EO含有量は少なくとも50質量%である、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリオール;
b2)2〜6の範囲の平均ヒドロキシ官能価を有し、EOがポリマー鎖の末端にある及び/又はポリマー鎖中にランダムに分布しており、合計EO含有量は20〜50質量%であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が少なくとも50%である、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリオール;
b3)2〜6の範囲の平均ヒドロキシ官能価を有し、EO含有量は10〜20質量%であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が少なくとも50%である、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンポリオール;
b4)100〜1200の範囲の平均分子量を有するポリアルキレングリコール;
ポリオールb1、b2、b3及びb4は、全ポリオールb1、b2、b3及びb4の合計質量に基づいて、以下の量で含まれている:b1:30〜85質量%、b2:5〜65質量%、b3:5〜40質量%、b4:0〜50質量%。
【0019】
WO 02/88211 A1 のポリエーテルポリオール組成物は、基本的にWO 01/32736 A1 に記載された組成物に基づいているが、更なる成分として、少なくとも120の分子量を有するポリオキシアルキレンモノオールを含んでいる。
【0020】
WO 02/77056 A1、WO 01/25305 A1 及び米国特許第5,420,170号も、粘弾性ポリウレタン発泡体の製造に用いる別のポリエーテルポリオール組成物を記載している。
【0021】
相分離が(構造)粘弾性ポリウレタン発泡体にはほとんど又は全く存在しない事実(上記参照)は、温度が典型的に約0℃〜約50℃の範囲にある単一の広いガラス転位温度範囲により、通常明らかになる。これにより、一般には、ポリウレタン発泡体の物理的性質が周囲温度に大きく依存することになる。
応用分野によって、そのような大きい温度依存性が好ましいこともあり、好ましくないこともある。
【0022】
米国特許第6,653,363号は、弾性の温度依存性が大きい粘弾性ポリウレタン発泡体を記載している。そのような発泡体は、例えば、負荷がかかった部分では体温により弾性が増加し、硬さと柔らかさとの快適な釣り合いが得られるマットレスの形状で使用される。
【0023】
しかしながら、ポリウレタン発泡体の物理的性質の温度依存性が小さいことが好ましいこともある。例えば、そのような発泡体は、乗物のシートに使用されることが想定されるが、これは、シートの周囲の温度が(例えばマットレスの場合とは異なり)比較的大きく変化するからである。
【0024】
そこで、米国特許第6,136,879号は、弾性の温度依存性が小さい軟質ポリウレタン発泡体を記載している。この目的は、本質的に、アルキルフェノールをプロピレンオキシド及び/又はエチレンオキシドと重合して得られる特別なポリオキシアルキレンモノオールの存在により達成される。しかしながら、これに関連して、物理的性質の温度依存性が小さい粘弾性ポリウレタン発泡体の可用性には言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】WO 01/32736 A1
【特許文献2】WO 02/88211 A1
【特許文献3】WO 02/77056 A1
【特許文献4】WO 01/25305 A1
【特許文献5】米国特許第5,420,170号
【特許文献6】米国特許第6,653,363号
【特許文献7】米国特許第6,136,879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の目的は、物理的性質、特に弾性の温度依存性が小さい粘弾性ポリウレタン発泡体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
第1の態様において、本発明の目的は、以下のポリエーテルポリオールを含んでなる、ポリウレタン組成物に使用するポリエーテルポリオール組成物により達成される:
(a)ヒドロキシ官能価が2であり、OH価が50〜65mg-KOH/g の範囲であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が40〜80%の範囲であり、プロピレンオキシド(PO)含有量が45〜55質量%であり、エチレンオキシド(EO)含有量が40〜55質量%である、ポリエーテルポリオール;
(b)ポリエーテルポリオール中のポリマー分散体であって、分散体のOH価が10〜30mg-KOH/g の範囲であり、ポリエーテルポリオールにおいて、ヒドロキシ官能価が3であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が70〜90%の範囲であり、PO含有量が70〜90質量%であり、EO含有量が10〜30質量%である、分散体;
(c)ヒドロキシ官能価が3であり、OH価が220〜290mg-KOH/g の範囲であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が少なくとも90%であり、PO含有量が2質量%までであり、EO含有量が少なくとも75質量%である、ポリエーテルポリオール;
(d)ヒドロキシ官能価が2であり、OH価が50〜70mg-KOH/g の範囲であり、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が0〜3%であり、PO含有量が少なくとも95質量%であり、EO含有量が3質量%までである、ポリエーテルポリオール。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のポリエーテルポリオールは、エポキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリン)自体を重合することにより、又はそのようなエポキシドを、場合によりエポキシド混合物として又は逐次的に、反応性水素原子を有する出発成分(例えば、水、アルコール、アンモニア又はアミン)に付加することにより、製造することができる。
上記エポキシドの中で、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドが特に好ましい。
【0029】
EO及びPOについての上記含有量は、ポリエーテルポリオールの製造中に導入されるエポキシドの(合計)質量に基づくものである。使用する出発分子(成分)の質量は考慮されない。
【0030】
ポリエーテルポリオールの合成に複数のエポキシドを使用する場合、ポリエーテルポリオールは、所望のオキシアルキレン基の任意の配列を有することができる。すなわち、ポリエーテルポリオールは、(1種のエポキシドのみを使用した場合)ホモポリマーであり、あるいは、コポリマー、ランダムコポリマー、キャップトポリマー又は1級ヒドロキシ基の所望の含有量を達成するために種々のエポキシドで末端化したポリマーであってよい。
【0031】
好ましくは、成分(a)〜(d)の質量割合は、(場合により互いに独立に)次のとおりである:(a)40〜60質量%;(b)10〜30質量%;(c)5〜20質量%;及び(d)10〜30質量%。質量%で示す割合は、ポリエーテルポリオール組成物の総質量に対する割合である。このような質量割合が好ましいのは、本発明のポリウレタン発泡体の物理的性質の温度依存性が特に小さくなるからである。
【0032】
本発明のポリエーテルポリオール組成物の成分(b)は、ポリマーの分散体である。
このような分散体は、ポリマー変性ポリオールとして知られており、ポリマー変性ポリエーテルポリオール、好ましくはグラフトポリエーテルポリオール、特にスチレン及び/又はアクリロニトリルに基づくグラフトポリエーテルポリオールを含む。このようなグラフトポリエーテルポリオールは、スチレン、アクリロニトリル又は好ましくはスチレンとアクリロニトリルとの混合物(例えば、90:10〜10:90、特に70:30〜30:70の質量比)を上記ポリエーテルポリオール中でイン・サイチュー重合することにより、有利に得ることができる。(なお、このような重合方法は、以下のような特許文献に記載されている:DE 11 11 394、DE 12 22 669、DE 11 52 536、DE 11 52 537、US 3,304,273、US 3,383,351、US 3,523,093、GB 1040452、GB 987618。これら特許文献の内容を参照することにより本明細書に組み込む。)
【0033】
上記の分散体は、例えば、3級アミノ基及び/又はメラミンを有するポリウレア、ポリヒドラジド、ポリウレタンをポリエーテルポリオールに分散させて得た分散体も包含する。(そのような分散体は、例えば、EP 0 011 752、US 4,304,708、US 4,374,209、DE 32 31 497 に記載されている。これら特許文献の内容を参照することにより本明細書に組み込む。)後者の場合、分散体は、通常、1〜50質量%、好ましくは35〜50質量%の分散された相を含む。
【0034】
成分(a)中の1級ヒドロキシ基の割合は、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対して、好ましくは50〜70%である。
【0035】
使用できる出発化合物には、例えば、コハク酸、アジピン酸、フタル酸及びテレフタル酸のようなジカルボン酸が含まれる。
【0036】
出発化合物として、例えば、アンモニア、若しくは場合により置換されていてもよい(N−モノアルキル、N,N−ジアルキル及び/又はN,N'−ジアルキル置換アミンなど)脂肪族アミン及び/又は芳香族アミンを使用することもできる。このようなアミンは、少なくとも1個の1級又は2級アミノ基を有しており、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノエタンのオリゴマー(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はペンタエチレンヘキサミン)、1,3−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,2−ジアミノヘキサン、1,3−ジアミノヘキサン、1,4−ジアミノヘキサン、1,5−ジアミノヘキサン、1,6−ジアミノベンゼン、2,3−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノトルエン、3,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,2'−ジアミノジフェニルメタン、2,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、若しくはアニリンとホルムアルデヒドとの酸触媒縮合により得られる芳香族アミンである。他の適する出発化合物には、アルカノールアミン(エタノールアミン、N−メチル−及びN−エチルエタノールアミンなど)、ジアルカノールアミン(ジエタノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミンなど)及びトリアルカノールアミン(トリエタノールアミンなど)が包含される。
【0037】
更に適する出発化合物は、2個以上のヒドロキシ基を有する化合物、例えば、水、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレン グリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びショ糖、ひまし油、変性大豆油である。出発化合物は、単独でも又は混合物としても使用し得る。
【0038】
本発明に従ってポリオール成分(a)〜(d)中で使用できるポリエーテルポリオールは、150〜12500g/molの範囲、好ましくは500〜6200g/molの範囲の分子量を有する。より好ましくは1,2−ジオール、特にプロピレングリコールが、成分(a)及び(d)中の出発分子として使用される。成分(b)及び(c)では、出発分子として、好ましくはトリオールが使用され、成分(b)の場合には好ましくはグリセリンが、成分(c)の場合には好ましくはトリメチロールプロパンが使用される。
【0039】
上記成分(a)〜(d)のさらに好ましい例は以下の生成物(一部は市販品)である:
成分(a):BayfitTM VP PU 10WF04 Additive VP PU 49WB50;
成分(b):HyperliteTM Polyol E-852、HyperliteTM Polyol 1650;
成分(b)に含まれるポリエーテルポリオール成分は、例えば、ArcolTM E-648-X であってよい;
成分(c):DesmophenTM VP PU 14791592、DesmophenTM VP PU 1657;
成分(d):DesmophenTM 3600 Z、DesmophenTM 2060 BD。
【0040】
第2の態様において、本発明の1つの目的は、
A)ポリイソシアネート成分;
B)本発明のポリエーテルポリオール組成物;
C)所望により、水、1種以上の触媒
を、場合により更なる助剤、充填剤及び/又は発泡剤を添加して、反応させる、粘弾性発泡体の製造方法により達成される。
【0041】
本発明によれば、用語「水」には、水放出錯体、付加物及び包接化合物も包含される。これに関連して、遊離水が好ましく、ポリエーテルポリオール成分Bに基づいて、0〜10質量%の範囲、好ましくは0.5〜3質量%の範囲の量で含まれ得る。
【0042】
場合により含まれる発泡剤として、ポリウレタン発泡体の発泡に通常使用される発泡剤が使用される。発泡剤の例は、アルカン(例えば、n−ペンタン、イソペンタン、イソペンタンとn−ペンタンの混合物、シクロペンタン、シクロヘキサン、ブタン異性体及び上記アルカンの混合物)、ハロゲン化化合物(例えば、ジクロロメタン、ジクロロモノフルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、ジフルオロエタン、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、テトラフルオロエタン (R134及びR134a)、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン (R356)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン (R245fa)、クロロジフルオロエタン、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、2,2−ジクロロ−2−フルオロエタン、ヘプタフルオロプロパン並びに六フッ化硫黄)、及び二酸化炭素である。
【0043】
好ましくは、二酸化炭素、シクロペンタン、n−ペンタン及びイソペンタンが、単独で又は混合物として、場合により水と混合して、使用される。更に、適する発泡剤には、カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、シュウ酸)、及び発泡工程でガスを放出する化学発泡剤(例えば、アゾ化合物)が包含される。好ましくは、そのような発泡剤は、水と組み合わせて使用される。
【0044】
場合により含まれる助剤及び添加剤として、パラフィン、パラフィン油、脂肪アルコール又はジメチルポリシロキサン、並びに顔料又は染料、耐老化安定剤及び耐候安定剤、可塑剤(例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジステアリル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジオクチル、リン酸トリクレシル、リン酸トリフェニルなど)、静真菌活性及び静菌活性物質、充填剤(例えば、硫酸バリウム、珪藻土、カーボンブラック、沈降白亜、ガラス繊維、LC繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、アラミド又はカーボン繊維)が包含され得る。使用できる発泡体安定剤、難燃剤、表面活性剤及び充填剤の更なる例は、US 2002/ 0165290 A1(その全内容を参照することにより本明細書に組み込む。)、特に段落[0033]、[0034]及び[0058]〜[0062]に記載されている。
【0045】
上記の助剤及び添加剤は、1種又はそれ以上の成分に混合することができ、あるいは、場合により使用される金型に導入することもできる。
【0046】
本発明の発泡体を製造するには、所望により、ポリオール成分Bとイソシアネート成分Aとの反応を促進する触媒を使用する。適当な触媒の例には、有機スズ化合物(有機カルボン酸のスズ(II)塩、例えば、酢酸スズ(II)、オクタン酸スズ(II)、エチルヘキサン酸スズ(II)及びラウリン酸スズ(II)など)、ジアルキルスズ(IV)塩(例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート及びジオクチルスズジアセテート)が包含される。適当な触媒の更なる例には、アミジン(例えば、2,3−ジメチル−2,4,5,6−テトラヒドロピリミジン)及びアミン(例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N',N'−テトラメチルブタンジアミン及び−エタンジアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルグアニジン、テトラメチルジアミノエチルエーテル、ビス(ジメチルアミノプロピル)尿素、ジメチルピペラジン、1,2−ジメチルイミダゾール、1−アザビシクロ[3.3.0]オクタン、並びに好ましくは1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、ビス (ジメチルアミノエチル)エーテル及びトリス(ジアルキルアミノアルキル)−s−ヘキサヒドロトリアジンが包含される。好ましくは、触媒成分は、少なくとも1種の脂肪族アミンを含む。
【0047】
また、アミノアルコールを触媒として使用してもよい。アミノアルコールの例には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン及びジエタノールアミンが包含される。N−(ジメチルアミノエチル)−N−メチルエタノールアミンが好ましい。
【0048】
複数の触媒を組み合わせて使用することもできる。
【0049】
本発明の製造方法において、ポリイソシアネート成分の量は、好ましくは、イソシアネート指数が70〜110の範囲、より好ましくは80〜100の範囲になるように選択される。このような狭い範囲においてのみ、得られる発泡体の温度依存性を非常に小さくできる。
【0050】
「単純な」ポリイソシアネート成分に加えて(すなわち、所望により混合して)、単純なポリイソシアネート成分と少なくとも1つのヒドロキシ基を有する有機化合物とのいわゆるプレ重合により得られる生成物も、本発明の製造方法において使用することができる。具体的には、1〜4個のヒドロキシ基及び60〜6500の分子量を有するポリオール又はポリエステルを挙げることができる。より好ましくは、本発明のポリエーテルポリオール組成物を用いたプレ重合により得られたプレポリマーを使用する。
【0051】
ポリイソシアネート成分Aとして、有機ジ−又はポリイソシアネートを、本発明の製造方法において使用する。そのようなジ−又はポリイソシアネートとして、Justus Liebigs Annalen der Chemie 1949, 562, 75〜136頁に記載されているような脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族及び複素環式ポリイソシアネート、例えば、式:
【化1】

(式中、nは、2〜4の整数、好ましくは2である。Qは、2〜18個、好ましくは6〜10個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基、4〜15個、好ましくは5〜10個の炭素原子を有する脂環式炭化水素基、又は8〜15個、好ましくは8〜13個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を表す。)
で示されるポリイソシアネートを使用することができる。
【0052】
DE-OS 28 32 253 に記載されているポリイソシアネートが好ましい。通例、工業的に容易に入手できるポリイソシアネート、例えば、2,4−及び2,6−トリレンジイソシアネート並びにこれら異性体の混合物(TDI)、アニリン−ホルムアルデヒド縮合とその後のホスゲン化により調製されるポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(MDI)、並びにカルボジイミド基、ウレタン基、アロファネート基、イソシアヌレート基、尿素基又はビウレット基を有するポリイソシアネート(変性ポリイソシアネート)、特に2,4−及び/又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくは4,4'−及び/又は2,4'−ジフェニルメタンジイソシアネートから誘導された変性ポリイソシアネートが、より好ましく使用される。
【0053】
特に、75〜85質量%のモノマー含有量を有するMDIを使用するのが有利であることが分かっている。MDIにおける全モノマー含有量の中のMDI−2,4'異性体の割合は、好ましくは8〜35質量%、より好ましくは15〜25質量%である。
【0054】
とりわけ、MDI並びに上記のモノマー又はモノマー異性体の割合は、物理的性質の小さい温度依存性の観点から、特に有利であることが分かっている。
【0055】
本発明のポリウレタン発泡体は、粘弾性がポリウレタン成分の特別な構造に基づいている上記種類の発泡体に包含される。すなわち、それは、空圧粘弾性ではない。第3の態様において、本発明の別の目的は、上記の方法により得られる粘弾性発泡体により達成される。どのような所望の形状を有する粘弾性発泡体製品も、例えば、反応射出成形により、又はポリウレタン発泡体のスラブ材から切断又は打抜きにより、製造することができる。
【0056】
第4の態様において、本発明の更なる目的は、本発明の粘弾性発泡体から製造された製品を、マットレス、枕、シートカバー、靴底、イアプラグ、保護服、保護機材又は遮音材として使用することにより達成される。
【実施例】
【0057】
BayfitTM、DesmophenTM 及び HyperliteTM ポリオール、並びに DesmodurTM イソシアネートは、Bayer Materialscience AG から販売されている。Niax SiliconeTM L-6164 は、Momentive Performance Materials Inc. から購入し、AddocatTM 触媒は、Rhein Chemie Rhemian GmbH から購入した。
【0058】
通常のスラブ材発泡体製造機を用い、以下のポリエーテルポリオール組成物を使用して、下記の物理的性質を有する本発明のポリウレタン発泡体を製造した。
【0059】
ポリエーテルポリオール組成物:
BayfitTM VP PU 10WF04 46.6重量部
HyperliteTM Polyol 1650 20.0重量部
DesmophenTM VP PU 1657 10.0重量部
DesmophenTM 3600 Z 23.4重量部
に、1.45重量部の水を添加し、以下の助剤:
Niax シリコーン安定剤 L-6164 2.00重量部
AddocatTM 108 触媒 0.25重量部
AddocatTM 105 触媒 0.70重量部
を添加し、ポリイソシアネート成分として
Desmodur VP PU 10WB32 21.2重量部
を使用。
【0060】
物理的性質:
スラブ高さ:22cm
底部圧縮: 10/mm
通気度(内部:加圧後):350mmWs
嵩密度(DIN EN ISO 3386-1-98に準拠):70.8kgm−3
引張強さ(DIN EN ISO 1798に準拠): 36kPa
破断時伸び(DIN EN ISO 1798に準拠):125%
圧縮硬さ40%(1回目負荷):2.25kPa
圧縮硬さ40%(4回目負荷):2.06kPa
圧縮硬さ40%(37℃、1回目負荷):2.34kPa
圧縮硬さ40%(37℃、4回目負荷):2.15kPa
湿式圧縮永久歪み(DIN EN ISO 1856-96に準拠):
ゼロ値:1.1%
40℃、湿度95%、22時間:0.8%
【0061】
このようにして得られた発泡体の温度依存性が小さいことは、関連するDMAスペクトル(図1)の分析から理解することができた。
【0062】
図1から理解できるように、tanδを温度(単位:℃)に対してプロットした場合、最大値は、非常に広い範囲で観察され、非常に広い温度範囲にわたって広がっている。
【0063】
対照的に、図2は、約700g/molの平均分子量Mwを有するポリオール混合物を用いた比較例についてのグラフである。この場合、tanδについて観察できる最大値は、本発明に従った実施例に比べ、実質的に狭く、実質的に狭い温度範囲にわたって広がっている。
【図1】

【図2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロキシ官能価が2であり、OH価が50〜65mg-KOH/g の範囲であり、第1のポリエーテルポリオール中での1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が40〜80%の範囲であり、プロピレンオキシド(PO)含有量が45〜55質量%であり、エチレンオキシド(EO)含有量が40〜55質量%である、第1のポリエーテルポリオール;
(b)第2のポリエーテルポリオール中のポリマー分散体であって、分散体のOH価が10〜30mg-KOH/g の範囲であり、第2のポリエーテルポリオールにおいて、ヒドロキシ官能価が3であり、第2のポリエーテルポリオール中での1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が70〜90%の範囲であり、PO含有量が70〜90質量%であり、EO含有量が10〜30質量%である、分散体;
(c)ヒドロキシ官能価が3であり、OH価が220〜290mg-KOH/g の範囲であり、第3のポリエーテルポリオール中での1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が少なくとも90%であり、PO含有量が2質量%までであり、EO含有量が少なくとも75質量%である、第3のポリエーテルポリオール;
(d)ヒドロキシ官能価が2であり、OH価が50〜70mg-KOH/g の範囲であり、階4のポリエーテルポリオール中での1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対する1級ヒドロキシ基の割合が0〜3%であり、PO含有量が少なくとも95質量%であり、EO含有量が3質量%までである、第4のポリエーテルポリオール
を含んでなる、ポリエーテルポリオール組成物。
【請求項2】
ポリエーテルポリオール組成物中の成分(a)の割合は40〜60質量%である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエーテルポリオール組成物中の成分(b)の割合は10〜30質量%である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
ポリエーテルポリオール組成物中の成分(c)の割合は5〜20質量%である請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
ポリエーテルポリオール組成物中の成分(d)の割合は10〜30質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
成分(b)中の分散されたポリマーはスチレン−アクリロニトリルポリマーである請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
該スチレン−アクリロニトリルポリマー分散体中のアクリロニトリルの割合は30〜40質量%である請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
分散体中のポリエーテルポリオールの割合は50〜65質量%である請求項6又は7に記載の組成物。
【請求項9】
成分(a)中の1級ヒドロキシ基の割合は、1級及び2級ヒドロキシ基の合計数に対して50〜70質量%である請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
成分(a)のポリエーテルポリオールは、出発分子としてのプロピレングリコールから誘導される請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
成分(b)のポリエーテルポリオールは、出発分子としてのグリセリンから誘導される請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
成分(c)のポリエーテルポリオールは、出発分子としてのトリメチロールプロパンから誘導される請求項1〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
成分(d)のポリエーテルポリオールは、出発分子としてのプロピレングリコールから誘導される請求項1〜12のいずれかに記載の組成物。
【請求項14】
A)ポリイソシアネート成分;
B)請求項1〜13のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物;
C)所望により、水、1種以上の触媒
を、場合により更なる助剤、充填剤及び/又は発泡剤を添加して、反応させる、粘弾性発泡体の製造方法。
【請求項15】
ポリイソシアネート成分の量は、イソシアネート指数が70〜110の範囲、好ましくは80〜100の範囲になるように選択される請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
プレ重合により得られたポリイソシアネート成分を使用する請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
プレ重合において請求項1〜13のいずれかに記載のポリエーテルポリオール組成物を使用する請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
75〜80質量%のモノマー含有量を有するMDIを含むポリイソシアネート成分を使用する請求項14〜17のいずれかに記載の製造方法。
【請求項19】
モノマー含有量の中のMDI−2,4'異性体の割合が8〜35質量%、好ましくは15〜25質量%であるポリイソシアネート成分を使用する請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
請求項14〜19のいずれかに記載の製造方法により製造された粘弾性発泡体。
【請求項21】
請求項20に記載の粘弾性発泡体からなる成形体。
【請求項22】
スラブ材の形状である請求項20に記載の粘弾性発泡体。
【請求項23】
マットレス、枕、シートカバー、靴底、イアプラグ、保護服、保護機材又は遮音材としての、請求項21に記載の成形体の使用。
【請求項24】
マットレス、枕、シートカバー、靴底、イアプラグ、保護服、保護機材又は遮音材としての、請求項21に記載の(切断された)スラブ材発泡体の使用。

【公表番号】特表2011−506697(P2011−506697A)
【公表日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538411(P2010−538411)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2008/010416
【国際公開番号】WO2009/080202
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】