説明

粘弾性食品片集合体及びその製造方法並びに粘弾性食品片集合体の製造装置

【課題】
手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の形状のまま、容易に分離することができる複数の粘弾性食品片が接合した粘弾性食品片集合体及びその製造方法並びに粘弾性食品片集合体の製造装置を提供する。
【解決手段】
糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地から得られる、複数の粘弾性食品片の周縁部が接合して集合体を形成している粘弾性食品片集合体であって、該粘弾性食品片集合体が、上記粘弾性食品片の周縁部の接合した部位で分離できることを特徴とする粘弾性食品片集合体により、達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の形状のまま、容易に分離することができる複数の粘弾性食品片が接合した粘弾性食品片集合体及びその製造方法並びに粘弾性食品片集合体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にソフトキャンディ、チューインガム等の粘弾性食品生地を、球形、円盤形、枕型、立方体、直方体、板状等の最終製品形状に成形する場合、エクストルーダー又はバッチフォーマー等を用いて粘弾性食品生地を押出した後、サイジング等によってロープ成形したものをスタンピング成形、ブロック成形、球断成形、カット成形する、或いはシート状に圧延成形したものをカット成形する等、目的のひとつの構成物による上記形状に成形する。通常、該粘弾性食品を食するときに手で分離することはなく、直接口中へ入れるものが殆どである。
【0003】
ところが中には、粘弾性食品を食べる時にも、1つずつ切り離し本物のフルーツや木の実を食べる気分を味わうことを目的とした、1つ1つのグミキャンディー等の菓子が複数集まって1つの菓子となっている集合体菓子が知られている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、該集合体菓子は、1つ1つの菓子すなわち各パーツをまず製造し、それらのパーツを、房状の軸や枝、木状の軸に係止させるもので、手工業的な製造工程が多くを占め、連続生産性の点で問題があった。また、該菓子を係止させる軸は可食性ではなく、該集合体菓子をまるごと食することはできなかった。
【0004】
一方、粘弾性食品ではなく、シュー菓子やメレンゲ菓子のようなベーキング菓子では、結着部分を容易に分離できる菓子を連続生産する製造方法が開示されている。
シュー菓子としては、2個以上のシュー生地を平板上で離して配置し、焼成時の膨張により互いが結着して成るものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
また、メレンゲ菓子としては、連続気泡したメレンゲ生地が2個以上の独立したノズル開口より平行に離して吐出した後焼成途中において結着して製造されるものが知られている(例えば、特許文献3参照)。
上記は、いずれもベーキング菓子生地を絞り出した直後或いは吐出した直後に、生地の膨張及び接着性によって結着するのではなく、ベーキングパウダーを含有或いは気泡した卵白を含有する生地が一定間隔離れた状態から、焼成することで生地内の空気の膨張及び生地表面の熱変化を利用して熱結着させるものである。
【0005】
他方、複数の食品用の押出機、回動自在に支承された本体部、駆動源、捻動機及びガイド体よりなる食品用成形装置によって成形され、混練されて押出される食品を複数ひねり合わせた成形品が知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、該成形品は、複数の押出機から押出された生地をそのまま機械的にひねり合わせることで複数本の食品を螺旋状に付着させるため、得られた食品をもとの複数の押出生地の形状のまま分離することは困難であり、また、ひねった状態の外観を楽しむもので分離することを楽しむものではなかった。他に、ひねるための駆動部は複雑で、連続生産過程では、うまくひねり合わせられず、商品化するには不適切な成形品も多数生産されることがあった。
【0006】
また、本発明者らは、ホバートミキサー等のエアレート専用装置を使用することなく、ニーダーのような混練機のみで簡便にまた効率よく生産することのできる、噛み応えと空気感のふたつの食感を同時に備えた新食感のソフトキャンディについて既に出願している
。(例えば、特許文献5参照)。しかしながら、該ソフトキャンディは、単数の吐出口から押出された生地を切断して得られたひとつの構成物による形状であるため、手で軽く引っ張っても、容易に分離することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−131078号公報
【特許文献2】特開2003−102387号公報
【特許文献3】特開2005−323531号公報
【特許文献4】特開昭61−5771号公報
【特許文献5】特願2010−263125号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に鑑みなされたものであって、その目的は、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の形状のまま、容易に分離することができる複数の粘弾性食品片が接合した粘弾性食品片集合体及びその製造方法並びに粘弾性食品片集合体の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地から得られる、複数の粘弾性食品片の周縁部が接合して集合体を形成している粘弾性食品片集合体であって、該粘弾性食品片集合体が、上記粘弾性食品片の周縁部の接合した部位で分離できることを特徴とする粘弾性食品片集合体により、上記目的を達成する。
【0010】
好ましくは、乳化剤のHLBが2〜11である。さらに好ましくは、糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地を、ノズルの複数の吐出口から同時に押出し、該吐出口から押出した直後に生じる各粘弾性食品生地の膨張と接着性によって、該各粘弾性食品生地の周縁部が接合して形成された粘弾性食品生地集合体を切断して得られる。
【0011】
好ましくは、下記工程を順次備えてなる粘弾性食品片集合体の製造方法により、上記目的を達成する。
(1)糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地を調製する工程
(2)上記粘弾性食品生地を、複数の吐出口を有するノズルによって押出す工程
(3)上記押出した複数の粘弾性食品生地の押出し直後に生じる膨張と接着性によって、各粘弾性食品生地の周縁部を接合させて粘弾性食品生地集合体を形成する工程
(4)上記粘弾性食品生地集合体を、上記ノズルの吐出口からの押出し方向に対し、垂直方向に切断して粘弾性食品片集合体を得る工程
【0012】
さらに好ましくは、複数の吐出口を有し粘弾性食品生地を押出すノズルであって、該ノズルの各吐出口が、押出し直後に生じる各粘弾性食品生地の膨張と接着性によって、各粘弾性食品生地の周縁部を接合させて粘弾性食品生地集合体を形成するよう配設された押出し成形手段と、該粘弾性食品生地集合体を、該ノズルの吐出口からの押出し方向に対し、垂直方向に切断する切断手段と、該切断手段の下流方向に筒状に配置されており、切断して得られた粘弾性食品片集合体に結着防止粉末を被覆する被覆手段とからなる粘弾性食品片集合体の製造装置により、上記目的を達成する。
【0013】
すなわち、本発明者らは、上記特許文献5のソフトキャンディを製造する過程において、ソフトキャンディ生地が有する粘弾性かつ含気性から、単数の吐出口から押出された生地が押出し直後から膨張することに注目し、得られるソフトキャンディは、従来のひとつ
の構成物による形状だけでなく、新たな形状に成形することが可能であると考え、鋭意検討を行った。その結果、驚くべきことに、ソフトキャンディ生地にさらに乳化剤を含有させ、該生地を複数の吐出口から押出すと、押出し直後に該ソフトキャンディ生地特有の膨張と接着性によって、各吐出された生地の周縁部同士が接合したソフトキャンディ生地集合体が形成されることを見出した。そして、該ソフトキャンディ生地集合体を切断して得られるソフトキャンディ片集合体は、そのままの状態では分離することなく複数のソフトキャンディ片の集合体で構成された形状を保っているが、手で軽く引っ張ると、各ソフトキャンディ片の周縁部の接合した部位から、ソフトキャンディ片の形状のまま、分離面が滑面状に容易に分離でき、ソフトキャンディ片の構成の仕方によっては、複雑で外観から視覚的なインパクトや楽しさを与えることのできる新たなソフトキャンディの形状に成形できることを見出した。そこで、ソフトキャンディだけでなく、チューインガム等の粘弾性を有する粘弾性食品生地について、さらに検討したところ、糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地を用いると、同じような効果が得られることを見出し、本発明に到達した。
【発明の効果】
【0014】
本発明の粘弾性食品片集合体は、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の周縁部の接合している部位(接合部位)から、粘弾性食品片の形状のまま、分離面が、引っ張られて千切れたような粗面になることなく、滑面状に容易に分離できる。
粘弾性食品片の形状のまま容易に分離できるため、例えば、ぶどうの房形状の粘弾性食品片集合体からひと粒ずつ実形状の粘弾性食品片をもぐというように、粘弾性食品片集合体の形状を工夫することによって、本物の果物を食べる気分を味わいながら楽しんで食べることができる。
従来の粘弾性食品の成形方法では製造することのできなかった複雑な形状に成形することができるため、その外観から視覚的なインパクトや楽しさを与えることができる。
粘弾性食品片のみで集合体を構成することができるため、まるごと食することができる。
本発明の粘弾性食品片集合体は、複雑で分離容易な集合体形状であるにもかかわらず、連続生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の粘弾性食品片集合体の一例を示す図 (a)上断面図 (b)(a)のA−A´方向から見た斜視図
【図2】本発明の粘弾性食品片集合体の他の一例を示す図 (a)上断面図 (b)(a)のA−A´方向から見た斜視図
【図3】本発明の粘弾性食品片集合体の他の一例を示す図 (a)上断面図 (b)(a)のA−A´方向から見た斜視図
【図4】本発明の粘弾性食品片集合体の他の一例を示す図 (a)上断面図 (b)(a)のA−A´方向から見た斜視図
【図5】本発明の粘弾性食品片集合体の他の一例を示す図 (a)上断面図 (b)(a)のA−A´方向から見た斜視図
【図6】図1の粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図
【図7】図2の粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図
【図8】図3の粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図
【図9】図4の粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図
【図10】図5の粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図
【図11】本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置全体の側面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の粘弾性食品片集合体は、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の形状のまま
、容易に分離することができる。すなわち、本発明の粘弾性食品片集合体は、ひとつの構成物からなる形状ではなく、複数の粘弾性食品片の周縁部同士が接合部位によって接合して集合体を形成しているため、手で軽く引っ張るだけで、各粘弾性食品片の接合部位が容易に分離し、粘弾性食品片の形状のまま、分離面が、引っ張られて千切れたような粗面になることなく、滑面状に分離することができる。なお、「容易に分離」とは、粘弾性食品片集合体中の異なる粘弾性食品片をそれぞれ持って、反対方向に、幼児のような弱い力で引っ張るだけでも粘弾性食品片同士が分離することをいう。また、ここでいう「接合」とは、接着剤のような別の原料成分を用いずに、粘弾性食品片同士を押し付けることによって離れないように接触させた状態に着けることを指す。
【0017】
また、本発明に係る粘弾性食品とは、粘弾性かつ含気性の性質を有する固形食品であり、ノズル内の押圧により一旦圧縮されるものの、吐出口から押出された開放空間で再び膨張し、軽い接着性を有する。具体的には、例えばソフトキャンディ、チューインガム等が挙げられる。これらの中でも、ソフトキャンディは、一般的なソフトキャンディ用の押出し成形機を用いて製造できる点で好適である。
【0018】
この粘弾性食品片集合体を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の粘弾性食品片集合体の一例を示す図で、円形の粘弾性食品片2が3個接合した集合体であり、(a)は上断面図、(b)は(a)のA−A´方向から見た斜視図である。また、図2〜5はそれぞれ、図1とは異なる態様を示す本発明の粘弾性食品片集合体の一例である。図2はぶどうの房状の粘弾性食品片集合体1であり、ぶどうの実状の粘弾性食品片2bが複数個接合し、さらにぶどうの枝状の粘弾性食品片2aに接合した形状となっている。図3は輪切り状の柑橘系果実形状の粘弾性食品片集合体1であり、果実の外皮状の粘弾性食品片2aの内側に、複数の内皮状の粘弾性食品片2bが接合した形状となっている。図4はパイナップルの外観形状の粘弾性食品片集合体1であり、葉の粘弾性食品片2aに、複数の果実外皮状の粘弾性食品片2bが接合した形状となっている。図5は輪切り状のパイナップル形状の粘弾性食品片集合体1であり、複数の果実の粘弾性食品片2同士が接合した形状となっている。
図1〜5において、粘弾性食品片集合体1は、粘弾性食品片2(2、2a、2b)の周縁部(図示せず)が、接合部位3において接合することにより、粘弾性食品片2の集合体1として構成される。また、粘弾性食品片集合体1は、粘弾性食品片2がすべて水平に並んだ状態で接合しており、粘弾性食品片2同士がねじれたり、上下或いは斜に接合することはない。さらに、粘弾性食品片集合体1は、図1(b)、図2(b)、図3(b)、図4(b)及び図5(b)で示すようにふくらみのある立体形状となっており、これは、後述するノズル6(図11)から、押出し直後に生じる粘弾性食品生地の膨張及び粘弾性食品生地集合体7の切断面の膨張によってふくらみを生じるためである。
本発明の粘弾性食品片集合体の形状は、図1の円形3個による集合体や図2のぶどうの房状、図3の輪切りした柑橘系果実状の形状、図4のパイナップルの外観形状、図5の輪切りしたパイナップル形状の他に、例えば、バナナの実と皮等の果物や、花冠(花弁の集合体)、クローバー等の植物の形状等が挙げられ、これらの形状は、外観だけでなく、もいだりちぎったりというような分離する動作がさらに喫食時の楽しみに直結する形状である点で好適である。
【0019】
図6は図1の、図7は図2の、図8は図3の、図9は図4の、図10は図5の、粘弾性食品片集合体を成形する場合のノズル吐出口断面図であり、粘弾性食品片集合体1を成形するために、粘弾性食品片2の数に見合う数のノズル吐出口4で構成されている。
【0020】
次に、本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置全体を、図11を用いて説明する。該製造装置は、押出し成形手段9、切断手段10、被覆手段11とからなる。また、押出し成形手段9は、ホッパー20、押出し手段21、ノズル6を備えており、該ノズル6の内部
には、図6〜10で示したような複数のノズル吐出口4が形成されている。
最初に、押出し成形手段9では、粘弾性食品生地5をホッパー20に投入し、駆動スクリュー等の押出し手段21によってノズル6から押出し、該ノズル6内に形成されている複数のノズル吐出口4からの押出し直後に生じる各粘弾性食品生地5´の膨張と接着性によって、各粘弾性食品生地5´の周縁部同士を接合させて粘弾性食品生地集合体7を形成する。すなわち、粘弾性食品生地5´は、複数のノズル吐出口4から押出された複数の粘弾性食品生地で、周縁部が接合する前の粘弾性食品生地を指し、粘弾性食品生地集合体7は、該粘弾性食品生地5´の周縁部同士が接合した生地集合体を指す。なお、該ノズル吐出口4は、下向き(地面に対し垂直方向)に配置されていることが、粘弾性食品生地集合体の変形を防止できる、切断後の粘弾性食品片集合体同士の結着を防止できる点で好適である。
【0021】
次に、上記粘弾性食品生地集合体7を、押出し成形手段9に続けて配置されている切断手段10において、ノズル吐出口4から押出し方向Lに対し垂直方向に駆動しているカッター8によって切断することで、粘弾性食品片集合体1を成形する。なお、該粘弾性食品片集合体1のカッター8による切断面は、もとの粘弾性食品生地5´の性質により、切断直後に膨張するため、ふくらみのある立体形状となる。
【0022】
上記粘弾性食品片集合体1は、次の被覆手段11に自然落下する。被覆手段11は、切断手段10の下流方向に筒状に配置されており、筒状の内部に結着防止粉末を散布する散布手段(図示せず)を備えている。粘弾性食品片集合体1は、被覆手段11の中を通過すると散布手段により、結着防止粉末が被覆される。該結着防止粉末は、例えば、コーンスターチ、タピオカ澱粉等の澱粉、粉糖、セルロース、微粒二酸化ケイ素等が挙げられる。これらの中でもコーンスターチは、得られた粘弾性食品片集合体同士の結着を防止する、また比較的安価である点で好適に用いられる。なお、被覆手段11は、筒状の流路と、結着防止粉末を該流路内で噴霧、対流、飛散等させる散布手段とを備えていればよい。
【0023】
さらに、好適には以下の搬送手段を用いることができる。被覆された粘弾性食品片集合体1は、被覆手段11の下流方向に配置されたコンベア等の搬送手段12よりM方向に搬送される。さらに、好ましくは、この搬送手段12中に振動フィーダー(図示せず)を配置すると、被覆された粘弾性食品片集合体1から、余分な結着防止粉末を除去できる点で好適である。
【0024】
次に、本発明の粘弾性食品片集合体は、糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地から得られる。
まず、上記糖類は、単糖類(ブドウ糖、果糖、キシロース等)、二糖類以上の多糖類(ショ糖、乳糖、麦芽糖、異性化乳糖、トレハロース、オリゴ糖、デキストリン、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、水飴、澱粉等)、糖アルコール(キシリトール、マルチトール、還元パラチノース、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール、還元乳糖、還元水飴等)等が挙げられ、単独でも複数組合せて用いてもよい。これらの中でも、好ましくは糖アルコールを用いることが、さらに好ましくはキシリトール及びマルチトール、キシリトール及び還元パラチノースを組合せて用いることが、エアレート専用装置を使用することなく、ニーダーのような混練機のみで簡便に生産できる点、押出し直後に粘弾性食品生地が膨張する点で好適である。また、ショ糖は粘弾性食品片集合体の経日による硬化を調整できる点、風味を良好にする点で好適に用いられる。
【0025】
糖類の含有量は、粘弾性食品片集合体全体重量中、35〜98重量%であることが、押出し直後の粘弾性食品生地の膨張や、粘弾性食品片集合体の風味の点で好ましい。すなわち、35重量%より少ないと風味が損なわれる傾向があり、98重量%を超えると押出し直後の膨張率が低下し、複数の粘弾性食品片の接着性が悪くなる傾向がある。
【0026】
上記ゼラチンは、由来、原料処理方法は特に問わず、牛、豚、鳥、魚等から得られたもの、酸処理、アルカリ処理されたもの等いずれを用いてもよいが、好ましくは、酸処理された豚由来のゼラチンが、押出し直後の粘弾性食品生地の膨張の点で望ましい。さらに、比較的高ブルーム(250ブルーム以上)のものが、やはり押出し直後の粘弾性食品生地の膨張の点で好適である。
またゼラチン含有量は、固形分換算で粘弾性食品片集合体全体重量中、1〜5重量%であることが、押出し直後の粘弾性食品生地の膨張や、連続生産性の点で好ましい。1重量%より少ないと、押出し直後の粘弾性食品生地の膨張率が低下する傾向があるため接着性が悪くなり、5重量%を超えると弾力が強くなる傾向があるため粘弾性食品生地集合体の切断が困難になり連続生産性に影響を与える。
【0027】
上記乳化剤は、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられ、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の接合部位が容易に分離し、粘弾性食品片の形状のまま分離できる点で重要である。これらの中でも、ショ糖脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルは、上記効果に加え、風味の点でも好適に用いられる。
さらに、乳化剤のHLBは2〜11であることが、粘弾性食品片の接合部位が容易に分離し、粘弾性食品片の形状のまま分離できる点で好ましい。HLBが2より低いと、粘弾性食品片同士の接着性が強くなる傾向があるため、分離はできるものの幼児の力では分離しにくくなり、HLBが11より高いと、接合部位で分離でき、分離面は滑面状であるものの、粘弾性食品片自体が伸長し、粘弾性食品片の形状が崩れる傾向がある。
上記とは別に、HLBが3前後の乳化剤を添加すると成形機への付着や咀嚼時の歯への付着が防止される点で好適である。
次に、乳化剤の含有量は、粘弾性食品片集合体全体重量中、0.2〜5重量%であることが、容易に分離する、風味及び食感の点で好ましい。0.2重量%より少ないと容易に分離することが困難となる傾向があり、5重量%を超えると、乳化剤臭が生じたり、硬い食感となる傾向がある。
【0028】
本発明の粘弾性食品片集合体には、本願の目的を損なわない範囲であれば、適宜選択した副原料を用いてもよい。
例えば、油脂、酸味料(酒石酸、クエン酸等)、高甘味度甘味料、安定剤、着香料、着色料、乾燥果実、種実類、各種風味原料(茶類、コーヒー、ココア、ハーブ類、蜂蜜、果汁等)、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、美肌成分(コラーゲン、ヒアルロン酸等)、ガムベース等が挙げられる。これらは単独でも複数組合せて用いてもよい。これらの中でも、着色料を用いると、元の食品を想起することができて、視覚的なインパクトや楽しさがあり、より一層本物の食品を食べる気分を味わいながら楽しんで食べることができる点で好ましい。
【0029】
本発明の粘弾性食品片集合体は、例えば、次のように製造する。
まず、ゼラチンを除く原料をニーダーに投入し、加温する。次に予め水で膨潤したゼラチンを加え、ゼラチンが全体に均一に分散する程度まで攪拌混合して粘弾性食品生地を調製する。
次いで、得られた粘弾性食品生地を、上述の本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置に投入し、目的の粘弾性食品片集合体形状に成形する。
【0030】
上記のようにして成形された粘弾性食品片集合体は、ひとつの構成物による形状ではなく、複数の粘弾性食品片の各周縁部が接合部位によって接合して集合体を形成しているため、手で軽く引っ張るだけで、粘弾性食品片の接合部位が容易に分離し、粘弾性食品片の形状のまま、分離面が引っ張られて千切れたような粗面になることなく、滑面状に分離す
ることができる。
容易に分離するためには、好ましくは、レオメーターによる引っ張り強度(粘弾性食品片集合体の一端を固定し、対角の一端を1mm/sで引っ張ったときに接合部位で分離するのに必要な最大荷重値)が、300g以上3500g未満であることが望ましい。300gより低いと粘弾性食品片の集合体で構成された形状を保つことができず、すなわち接着性が悪く接合部位から自然に分離する可能性があり、3500g以上になると幼児のような弱い力では分離することができなくなる。
【0031】
本発明の粘弾性食品片集合体を製品化する際には、適宜包装体で包装すればよい。好ましくは、包装体の材質が、アルミ、アルミ蒸着、ガラス蒸着等の防湿性があり、密封可能な材質であることが、包装後、粘弾性食品片集合体が吸湿や乾燥しない点で好適である。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例及び比較例を用いて例示する。
【0033】
<実施例1〜10、比較例1>
ゼラチンを除く表1に示す成分をニーダーに投入し、55℃になるまで加温した。次に予め水で膨潤したゼラチン(275ブルーム)を加え攪拌混合し、ソフトキャンディ生地を得た。次いで、得られたソフトキャンディ生地を、図7のノズル吐出口を有する本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置(図11)に投入し、図2のようなぶどうの房形状の粘弾性食品片集合体に成形した。
【0034】
【表1】

【0035】
<実施例11>
ゼラチンを除く表1に示す成分をニーダーに投入し、55℃になるまで加温した。次に予め水で膨潤したゼラチン(320ブルーム)を加え攪拌混合し、チューインガム生地を得た。次いで、得られたチューインガム生地を、図8のノズル吐出口を有する本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置(図11)に投入し、図3のような輪切りした柑橘系果実形状の粘弾性食品片集合体に成形した。
【0036】
<実施例12、13>
実施例1と同じように行ってソフトキャンディ生地を得た。次いで得られたソフトキャンディ生地を、各々図9(実施例12)及び図10(実施例13)のノズル吐出口を有する本発明の粘弾性食品片集合体の製造装置(図11)に投入し、図4のパイナップルの外観形状(実施例12)及び図5の輪切り状のパイナップル形状(実施例13)の粘弾性食品片集合体に成形した。
【0037】
以上のようにして得られた粘弾性食品片集合体を、分離状態、風味、食感について、専門パネラー5名で評価した結果と、製造中の製造装置への付着性及び連続生産性を評価した結果を、合わせて表1に示す。なお、分離状態の指標である引っ張り強度は、株式会社サン科学製レオメーターCR−500DXを用いて、上述の通り測定した。
【0038】
以上の結果から、実施例はいずれの評価も概ね良好であった。特に実施例1〜3及び12、13は全ての評価について大変良好で、手で軽く引っ張るだけで、ソフトキャンディ片の接合部位が容易に分離し、分離面も滑面であるため、ソフトキャンディ片のまま分離することができた。実施例7も実施例1〜3及び12、13と同様の評価結果であったが、分離状態では総合的には高評価としたが、パネラーによってはソフトキャンディ片集合体全体がやや伸長し、極僅かではあるが引っ張るときに抵抗力を感じたものもいた。
実施例1、4〜8から、乳化剤のHLBが分離状態に影響を与え、乳化剤の中でもグリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステルは、分離状態や風味の点で好適であることが理解できる。
また、実施例1、9、10から、乳化剤を含有しているので分離したときの分離面は滑面となるが、含有量が少ないと分離状態とともに装置への付着性に影響があり、含有量が多いと乳化剤臭により風味が悪くなり、食感は硬くなるといった影響があることがわかった。
また、実施例11のチューインガムは、製造装置への付着が極僅かにあったが製造には支障がなく、分離状態をはじめ他の評価はすべて大変良好であった。
【0039】
これに対し比較例1は、接合部位で分離はするが、分離面は千切れたような粗面となり、ソフトキャンディ片がそのままの形をとどめていなかった。また、製造時ではソフトキャンディ生地が製造装置に付着し、操業が途中中断したりして、連続生産はできなかった。このことから、乳化剤を添加することで、本発明の粘弾性食品片集合体の分離状態や連続生産性に好影響を与えることが理解できる。
【符号の説明】
【0040】
1 粘弾性食品片集合体
2 粘弾性食品片
3 接合部位
4 ノズル吐出口
5 粘弾性食品生地
6 ノズル
7 粘弾性食品生地集合体
8 カッター
9 押出し成形手段
10 切断手段
11 被覆手段
12 搬送手段
20 ホッパー
21 押出し手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地から得られる、
複数の粘弾性食品片の周縁部が接合して集合体を形成している粘弾性食品片集合体であって、
該粘弾性食品片集合体が、上記粘弾性食品片の周縁部の接合した部位で分離できることを特徴とする粘弾性食品片集合体。
【請求項2】
乳化剤のHLBが2〜11である請求項1記載の粘弾性食品片集合体。
【請求項3】
糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地を、ノズルの複数の吐出口から同時に押出し、該吐出口から押出した直後に生じる各粘弾性食品生地の膨張と接着性によって、該各粘弾性食品生地の周縁部が接合して形成された粘弾性食品生地集合体を切断して得られる請求項1又は2記載の粘弾性食品片集合体。
【請求項4】
下記工程を順次備えてなる請求項1乃至3の何れか1項に記載の粘弾性食品片集合体の製造方法。
(1)糖類、ゼラチン及び乳化剤を含有する粘弾性食品生地を調製する工程
(2)上記粘弾性食品生地を、複数の吐出口を有するノズルによって押出す工程
(3)上記押出した複数の粘弾性食品生地の押出し直後に生じる膨張と接着性によって、各粘弾性食品生地の周縁部を接合させて粘弾性食品生地集合体を形成する工程
(4)上記粘弾性食品生地集合体を、上記ノズルの吐出口からの押出し方向に対し、垂直方向に切断して粘弾性食品片集合体を得る工程
【請求項5】
複数の吐出口を有し粘弾性食品生地を押出すノズルであって、該ノズルの各吐出口が、押出し直後に生じる各粘弾性食品生地の膨張と接着性によって、各粘弾性食品生地の周縁部を接合させて粘弾性食品生地集合体を形成するよう配設された押出し成形手段と、
該粘弾性食品生地集合体を、該ノズルの吐出口からの押出し方向に対し、垂直方向に切断する切断手段と、
該切断手段の下流方向に筒状に配置されており、切断して得られた粘弾性食品片集合体に結着防止粉末を被覆する被覆手段とからなる請求項1乃至3の何れか1項に記載の粘弾性食品片集合体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−74874(P2013−74874A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−26133(P2012−26133)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成23年8月10日 インターネットアドレス「http://www.kracie.co.jp/release/10007384_3833.html」に発表
【出願人】(393029974)クラシエフーズ株式会社 (64)
【Fターム(参考)】