説明

粘性物用シュート

【課題】粘性が高く付着力の強い塊状粘性物を、乾燥炉等の所望の機器へ導くための粘性物用シュートを得る。
【解決手段】塊状粘性物の搬送経路に設けられて、搬送経路の上流側の機器から落下する前記塊状粘性物を所望の機器へ供給する粘性物用シュート1であって、塊状粘性物が衝突するシュート内面が布・フェルト9で形成されていることを特徴とする粘性物用シュート。また、布・フェルトを支持する支持部材と布・フェルトにおけるシュート内面とが接触しないようにしたことを特徴とする粘性物用シュート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば下水汚泥などの粘性物を小片にした塊状粘性物の搬送経路に設けられて、上流側の機器から排出される塊状粘性物を所望の機器に供給する粘性物用シュートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、汚泥などを造粒・乾燥(炭化)処理して燃料として利用する技術が開発されている。このような技術における通常のプロセスは、粘性物を破砕・粉体化させながら含水率20〜60%程度に乾燥した後、球状・円筒状に成型・小片化(造粒)し、必要により炭化処理を行うというものである(特許文献1)。
このように粘性物を造粒・乾燥(炭化)処理する方法としては、粘性物を先に乾燥し、その後に小片化(造粒)するのが一般的である。
しかしながら、乾燥し、その後小片化し、さらに炭化処理を行なうのは効率的でない。
【0003】
効率的でないにも拘わらず上記のようにされているのには、以下のような理由がある。
粘性物を先に小片化し、これを乾燥・炭化処理を行うには、小片化した粘性物をロータリーキルンなどの乾燥炉に投入する必要がある。そのためには、粘性物を小片に切断した後、切断された粘性物を受け止めるシュートを介して乾燥炉の入口に導くことになるが、粘性物が未乾燥の状態ではシュートに落下した時点でシュート内面に付着したり、形が崩れたりして小片化の状態を保持して乾燥炉に投入するのは難しい。
よって、先に小片化した粘性物をロータリーキルンで乾燥して小片化したままの乾
燥物を得ようとする場合には、粘性物を小片化してロータリーキルンなどの乾燥炉の入口に投入するためのシュートが必要とされる。
【0004】
ところで、付着性の高い原料を扱うシュートに関し、付着性の高い原料の落下経路に高分子樹脂ライナーを取り付けて原料の付着を防止することが特許文献2に開示されている。
【特許文献1】特開2000−265186号公報
【特許文献2】特開2002−316707号公報([0005]参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
含水率が70%〜90%の汚泥や粘土などの粘性物で、数mm〜50mm程度の大きさに小片化したものを、例えば特許文献2に記載されたシュート表面に高分子樹脂ライナーを取り付けものに落下させると、粘性物がシュート内面に付着してしまい円滑に乾燥炉に導入することができず、また粘性物を連続して落下させると粘性物同士が結合して小片状態を維持できなくなってしまうという問題がある。
このように、従来の付着防止方法を施したシュートでは本願が対象としているような粘性物を乾燥炉に導くことはできない。
【0006】
本発明はかかる課題を解決するためになされたものであり、粘性が高く付着力の強い塊状粘性物を、乾燥炉等の所望の機器へ導くための粘性物用シュートを得ることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る粘性物用シュートは、塊状粘性物の搬送経路に設けられて、該搬送経路の上流側の機器から落下する前記塊状粘性物を所望の機器へ供給する粘性物用シュートであって、前記塊状粘性物が衝突するシュート内面が布またはフェルトで形成されていることを特徴とするものである。
【0008】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、布またはフェルトを支持する支持部材を備えてなり、布またはフェルトにおけるシュート内面と支持部材とが接触していないことを特徴とするものである。
【0009】
(3)また、上記(2)に記載のものにおいて、支持部材を有底枠体または枠体から形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明においては、塊状粘性物が衝突するシュート内面を布またはフェルトで形成したので、シュート内面に衝突した塊状粘性物がシュート内面に付着することなく、また塊状粘性物の形が大きく崩れることなく所望の機器へ導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施の形態1]
図1は本発明の一実施の形態に係る粘性物用シュートの説明図である。図1においては、粘性物用シュート1を、粘性物3を排出する機械装置5に設置した状態を示している。なお、図中において、粘性物用シュート1の一部を丸で囲み、丸で囲んだ部分を拡大して示している。
本実施の形態に係る粘性物用シュート1は、金属製またはプラスチック製の矩形状の板7の表面に布またはフェルト9(以下、「布・フェルト9」と表記する。)を張ったものである。
なお、粘性物用シュート1が高温雰囲気の場所に設置される場合には、板7の表面に張る布・フェルト9は耐熱性のものが好ましい。
【0012】
図2は、上記のように構成された本実施の形態に係る粘性物用シュート1の作用を説明する説明図である。
図2(a)に示すように、粘性物用シュート1を所定の角度に傾斜させた状態で小片化(数mm〜50mm程度)した粘性物3をシュート内面の上方から落下させると、図2(b)に示すように、粘性物3はシュート内面に付着することなく、またその形状が大きく崩れることなく下方へと案内され、例えば図示しないキルンの投入口に導かれる。このように、小片化した粘性物3がシュート内面に付着しない主な理由は、布・フェルト9は空隙率が大きく、接触面積が小さいことによる。また、粘性物3の形が崩れにくい主な理由は、布・フェルト9には弾力があるので、落下した粘性物3の運動エネルギーがその弾力によって吸収されることによる。
【0013】
以上のように、本実施の形態の粘性物用シュート1によれば、含水率が70%〜90%の汚泥や粘土のような粘性物3を、数mm〜50mm程度の大きさに小片化したものであっても、その形状を崩さないでキルンなどの乾燥炉の投入口へ導くことができる。
したがって、このような粘性物用シュート1を用いることで、従来はできないとされた先に小片化した粘性物3をロータリーキルンで乾燥して小片化したままの乾燥物を得ることも可能になる。
【0014】
[実施の形態2]
図3は本発明の実施の形態2に係る粘性物用シュートを説明するための斜視図である。また、図4は図3の矢視A−A断面図である。
本実施の形態に係る粘性物用シュート10は、シュートの軸方向(粘性物3が落下する方向)に直交する断面がコ字状に形成された有底枠体11に布・フェルト9を張ったものである。実施の形態1との相違点は、実施の形態1においては、布・フェルト9からなるシュート内面と板とが接触していたが、本実施の形態では布・フェルト9を張る板が断面コ字状の有底枠体11であるため、布・フェルト9からなるシュート内面とこれを支持する板材とが接触することなくこれらの間に隙間13が形成されている点である。
【0015】
図5は本実施の形態に係る粘性物用シュート10の作用を説明する説明図であり、図3の矢視B−B断面を示している。
図5(a)に示すように、粘性物用シュート10を所定の角度に傾斜させた状態で小片化(数mm〜50mm程度)した粘性物3をシュート内面の上方から落下させると、図5(b)に示すように、粘性物3がシュート内面に衝突したときにシュート内面が変形し、粘性物3の有する運動エネルギーを吸収する。つまり、実施の形態1の場合には布・フェルト9の有する弾性により粘性物3の有する運動エネルギーを吸収するものであったが、本実施の形態では布・フェルト9自体の有する弾性に加えて、布・フェルト9の変形によっても粘性物3の有する運動エネルギーを吸収するので、運動エネルギーの吸収効果がより高い。したがって、シュート内面に落下した粘性物3はシュート内面に付着することなく、また形状が大きく崩れることなく下方へと案内される。
【0016】
なお、布・フェルト9の張り方具合、すなわち布・フェルト9を枠体に張るときの張力は特に限定されないが、強く張りすぎるよりも、少し緩めに張るのが好ましい。もっとも、粘性物3が衝突したときに、布・フェルト9が枠体側に当接しない程度の張力にするのが好ましい。
【0017】
上記の実施の形態2においては、布・フェルト9を支持する支持枠を断面コ字状の有底枠体に形成することにより、布・フェルト9におけるシュート内面と支持枠とが当接しないようにした例を示したが、布・フェルト9におけるシュート内面とこれを支持する支持部材とが当接しないようにする態様としてはこの例に限られず、例えば支持部材を矩形の枠体から形成するようにしてもよい。
【0018】
[実施の形態3]
上記の実施の形態1、2においては、粘性物用シュート1、10を傾斜配置し、粘性物を一旦粘性物用シュート1、10のシュート内面に衝突させて乾燥炉などに導入するというものであった。
しかし、本発明に係る粘性物用シュートはこれに限られるものではなく、図6に示すように、粘性物用シュート15をほぼ垂直配置される筒状体から形成し、筒状体を形成する周壁に布・フェルト9を張ってこれをシュート内面とする場合も含む。この場合には、上流側の機器から落下する粘性物3は必ずしもシュート内面に衝突するものではないが、衝突した粘性物3はシュート内面に付着することなく下流側の機器に導入される。
【0019】
シュート内面に布・フェルト9が張ってない場合には、シュート内面が垂直に近い場合であっても粘性物がシュート内面に付着し、場合によっては付着した粘性物に後から落下する粘性物がさらに付着して徐々に巨大化し、粘性物用シュート15を閉塞してしまうこともある。
これに対して、実施の形態3に示すように、周壁に布・フェルト9を張るようにすれば、シュート内面に衝突した粘性物3がシュート内面に付着することがないので、閉塞の心配がない。
なお、本実施の形態における周壁の態様としては、実施の形態2で示したように、布・フェルト9とこれを支持する板材が接触しないような態様にしてもよい。
【0020】
なお、上記の実施の形態1、2においては、粘性物を小片化(数mm〜50mm程度)にする例を挙げたが、これは実施の形態1、2においては粘性物を小片化(数mm〜50mm程度)した場合であってもこのような形状を維持して所望の機器に導入できることを示したものであり、本発明の対象とする粘性物が上記のように小片化(数mm〜50mm程度)したものに限定する趣旨ではない。この意味で、実施の形態3で対象とする粘性物も小片化(数mm〜50mm程度)したものに限定されないのはいうまでもない。
【実施例】
【0021】
本発明の効果を確認するため、実施の形態1、2に係る粘性物用シュート1、10と、比較例としてフッ素樹脂加工を施した金属製のシュート内面のものとを用い、粘性物として、含水率が70%〜90%の汚泥を数mm〜50mm程度に小片化したものを上記のシュートに落下させ、落下後の状態を比較した。
比較の結果を表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
表1に示すように、実施の形態1、2のものにおいては、含水率が70%〜90%の汚泥を数mm〜50mm程度に小片化したものであっても、その形状をほぼ維持したまま所望の機器へ投入できることを確認した。
なお、表1におけるシュート内面への付着「無し」とは、落下した粘性物がそのままシュート内面に付着せずにスムーズに下方に案内されるような状態を意味し、シュート内面への付着「有り」とは落下した粘性物がそのままシュート内面に付着してしまい、粘性物を連続して落下させることができないような状態をいう。
また、表1における形の崩れ「無し」とは、落下した粘性物がほぼそのままの形状を維持してスムーズに下方に案内されるような状態を意味し、形の崩れ「少し有り」とは落下した粘性物が多少変形しつつもスムーズに下方に案内されるような状態を意味し、形の崩れ「有り」とは落下した粘性物が大きく変形してしまう状態をいう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る粘性物用シュートの説明図である。
【図2】図1に示した粘性物用シュートの作用を説明する説明図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る粘性物用シュートの説明図である。
【図4】図3の矢視A−A断面図である。
【図5】図3に示した粘性物用シュートの作用を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施の形態3に係る粘性物用シュートの説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 粘性物用シュート
3 粘性物
5 機械装置
7 板
9 布・フェルト
10 粘性物用シュート
11 有底枠体
13 隙間
15 粘性物用シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塊状粘性物の搬送経路に設けられて、該搬送経路の上流側の機器から落下する前記塊状粘性物を所望の機器へ供給する粘性物用シュートであって、前記塊状粘性物が衝突するシュート内面が布またはフェルトで形成されていることを特徴とする粘性物用シュート。
【請求項2】
布またはフェルトを支持する支持部材を備えてなり、布またはフェルトにおけるシュート内面と前記支持部材とが接触していないことを特徴とする請求項1に記載の粘性物用シュート。
【請求項3】
支持部材を有底枠体または枠体から形成したことを特徴とする請求項2に記載の粘性物用シュート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−18382(P2010−18382A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179794(P2008−179794)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】