説明

粘着シート、該粘着シートを備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法

【課題】プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートにおいて、良好な耐湿性及び耐熱性を有する離型材層を備えることで、粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる粘着シート、該粘着シートを備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】プリント配線板20を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シート10であって、粘着シート10は、離型材層11と、離型材層11に積層される粘着剤層12とからなり、離型材層11は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙11bと、耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルム11aとを備えると共に、耐湿性離型フィルム11aを、耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さい剥離強度で耐熱性離型紙11bの上方に積層してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートにおいて、良好な耐湿性及び耐熱性を有する離型材層を備える粘着シート、該粘着シートを備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の電子機器の内部に配設されるプリント配線板においては、半田を介して電子部品を実装すると共に、粘着シートを介して電子機器の筐体等に接着固定されることで使用されるものがある。
このようなプリント配線板に用いられる粘着シートは、離型処理が施された耐熱性の紙からなる離型材層に粘着剤層を積層(塗布)させて形成されるものが一般的である。またプリント配線板の所定領域に貼り付けられた状態で半田リフロー工程を行い、その後に離型材層を剥離することで、電子機器の筐体等に粘着剤層を介してプリント配線板を貼り付けるものが一般的である。
このような粘着シートを備えるフレキシブルプリント配線板を示す従来技術として、例えば下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−97520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、粘着剤付きフレキシブルプリント配線板とその製法に関する発明で、製品を重ねても製品同士が粘着するというトラブルが発生することを防止できるメリットがある。
しかしこのような従来の粘着シートは、単層の紙だけで離型材層を形成する構成であったことから、特に湿潤な環境下において、紙が吸湿することで粘着シートに寸法変化が生じるという問題があった。
また吸湿による寸法変化が粘着シートに生じた場合、特に半田を介して電子部品を実装するプリント配線板においては、半田リフロー前後で粘着シートが大きく収縮することで、プリント配線板から粘着シートが剥がれるという問題があった。或いは半田リフロー前後で粘着シートが大きく収縮することで、電子部品実装後にプリント配線板を他の部材に良好に接着固定することができないという問題があった。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートにおいて、良好な耐湿性及び耐熱性を有する離型材層を備えることで、粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる粘着シート、該粘着シートを備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粘着シートは、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートであって、該粘着シートは、離型材層と、該離型材層に積層される粘着剤層とからなり、前記離型材層は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙と、耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムとを備えると共に、該耐湿性離型フィルムを、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で前記耐熱性離型紙の上方に積層してあることを第1の特徴としている。
【0007】
上記本発明の第1の特徴によれば、粘着シートは、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートであって、該粘着シートは、離型材層と、該離型材層に積層される粘着剤層とからなり、前記離型材層は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙と、耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムとを備えると共に、該耐湿性離型フィルムを、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で前記耐熱性離型紙の上方に積層してあることから、耐湿性離型フィルムによって良好な耐湿性を実現することができる。また耐湿性離型フィルムだけを剥離させることで、耐熱性離型紙によって良好な耐熱性を実現することができる。
従って水分や熱によって粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる。
【0008】
また本発明の粘着シートは、上記本発明の第1の特徴に加えて、前記耐熱性離型紙は、グラシン紙からなることを第2の特徴としている。
【0009】
上記本発明の第2の特徴によれば、上記本発明の第1の特徴による作用効果に加えて、前記耐熱性離型紙は、グラシン紙からなることから、半田リフロー工程(一般的には、加熱工程におけるピーク温度が260℃、加熱時間が10秒程度)等の加熱工程にも耐えうる良好な耐熱性を備えた耐熱性離型紙とすることができる。
【0010】
また本発明の粘着シートは、上記本発明の第1又は第2の特徴に加えて、前記耐湿性離型フィルムは、ポリエチレンからなることを第3の特徴としている。
【0011】
上記本発明の第3の特徴によれば、上記本発明の第1又は第2の特徴による作用効果に加えて、前記耐湿性離型フィルムは、ポリエチレンからなることから、一段と良好な耐湿性を有すると共に、低コストの耐湿性離型フィルムとすることができる。
【0012】
また本発明のプリント配線板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つに記載の粘着シートを備えることを第4の特徴としている。
【0013】
上記本発明の第4の特徴によれば、プリント配線板は、上記本発明の第1〜第3の何れか1つに記載の粘着シートを備えることから、水分や熱によって粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができることで、筐体等の他の部材に良好に接着固定させることができるプリント配線板とすることができる。
【0014】
また本発明のフレキシブルプリント配線板の製造方法は、請求項4に記載のプリント配線板の製造方法であって、粘着シートを形成する工程と、プリント配線板を形成する工程と、前記プリント配線板に前記粘着シートを貼り付ける工程とを少なくとも備えると共に、粘着シートを形成する工程は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙の一面側に粘着剤層を積層する工程と、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で、前記耐熱性離型紙の他面側に耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムを積層する工程とを備えることを第5の特徴としている。
【0015】
上記本発明の第5の特徴によれば、フレキシブルプリント配線板の製造方法は、請求項4に記載のプリント配線板の製造方法であって、粘着シートを形成する工程と、プリント配線板を形成する工程と、前記プリント配線板に前記粘着シートを貼り付ける工程とを少なくとも備えると共に、粘着シートを形成する工程は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙の一面側に粘着剤層を積層する工程と、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で、前記耐熱性離型紙の他面側に耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムを積層する工程とを備えることから、耐湿性離型フィルムによって良好な耐湿性を実現することができる粘着シートを備えるプリント配線板を製造することができる。また耐湿性離型フィルムだけを剥離させることで、耐熱性離型紙によって良好な耐熱性を実現することができる粘着シートを備えるプリント配線板を製造することができる。
従って水分や熱によって粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができ、筐体等の他の部材に良好に接着固定させることができるプリント配線板を製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着シートによれば、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートにおいて、良好な耐湿性及び耐熱性を有する離型材層を備えることで、粘着シートに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる。
また本発明の粘着シートを備えるプリント配線板によれば、筐体等の他の部材に良好に接着固定させることができるプリント配線板とすることができる。
また本発明の粘着シートを備えるプリント配線板の製造方法によれば、筐体等の他の部材に良好に接着固定させることができるプリント配線板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る粘着シートを備えるプリント配線板の要部を示す平面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る粘着シートを備えるプリント配線板の要部を示す断面図で、(a)は図1のA−A線方向における断面図、(b)は図1のB−B線方向における断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る粘着シートを示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る粘着シート及び該粘着シートを備えるプリント配線板の製造方法を簡略化して示す断面図である。
【図5】従来の粘着シートを備えるプリント配線板の要部を示す断面図で、(a)は図1のA−A線方向と同一の方向の断面図、(b)は図1のB−B線方向と同一の方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の図面を参照して、本発明の実施形態に係る粘着シート、該粘着シートを備えるプリント配線板及び該プリント配線板の製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は本発明の実施形態であって、特許請求の範囲に記載の内容を限定するものではない。
【0019】
まず図1〜図3を参照して、本発明の実施形態に係る粘着シート10及び粘着シート10を備えるプリント配線板20を説明する。
【0020】
本発明の実施形態に係る粘着シート10は、図1、図2に示すように、プリント配線板20に貼り付けられて、図示しない電子機器の筐体等の他の部材にプリント配線板20を接着固定させるためのものである。
【0021】
この粘着シート10は、図2、図3に示すように、離型材層11と、粘着剤層12とから構成され、粘着剤層12を介してプリント配線板20の所定領域に貼り付けられている。
なお、ここで「所定領域」とは、プリント配線板20において、筐体等の別部材に粘着シート10を介して貼り付けられる領域のことを意味するものとする。
【0022】
前記離型材層11は、耐湿性及び耐熱性を備え、主として粘着剤層12の粘着性能を維持させるための保護層となるものである。
この離型材層11は、図2、図3に示すように、耐湿性離型フィルム11aと、耐熱性離型紙11bとから構成される。
【0023】
前記耐湿性離型フィルム11aは、耐湿性を有するフィルムで形成され、離型材層11の耐湿層を形成するものである。より具体的には、吸湿によって耐熱性離型紙11bに寸法変化が生じることを防止するためのものである。
なお本実施形態においては、耐湿性のフィルムとしてポリエチレンを用いる構成としてある。
またこの耐湿性離型フィルム11aには、耐熱性離型紙11bから一定の剥離強度で剥離できるような離型処理を施してある。より具体的には、図3に示すように、耐湿性離型フィルム11aに剥離剤11a−1をコーティングすると共に、耐熱性離型紙11bの他面側(上面側)の全面に剥離剤11a−1を介して耐湿性離型フィルム11aを積層させてある。
なお剥離剤11a−1としては、シリコーン系剥離剤や非シリコーン系剥離剤等を用いることができる。
また本実施形態においては、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度を、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さいものとしてある。
なお耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度は、0.01N/10mm〜0.3N/10mm程度とすることが望ましい。
また耐湿性離型フィルム11aの厚みは20μm程度とすることが望ましい。
また本実施形態においては、この耐湿性離型フィルム11aは、プリント配線板20に半田40を介して電子部品30を実装する半田リフロー工程の直前に耐熱性離型紙11bから剥離される。
なお図2においては、説明の便宜上、電子部品30の実装時には剥離されている耐湿性離型フィルム11aを図示するものとする。
【0024】
前記耐熱性離型紙11bは、耐熱性を有する紙で形成され、離型材層11の耐熱層を形成するものである。より具体的には、粘着剤層12の粘着性能が熱によって低下することを防止するための保護層となるものである。
なお本実施形態においては、耐熱性の紙として、半田リフロー工程におけるピーク温度に耐え得る耐熱性(具体的には、240℃−30秒〜260℃−10秒程度の耐熱性)を有するグラシン紙を用いる構成としてある。
またこの耐熱性離型紙11bには、粘着剤層12から一定の剥離強度で剥離できるような離型処理を施してある。より具体的には、図3に示すように、耐熱性離型紙11bに剥離剤11b−1をコーティングすると共に、耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)の全面に剥離剤11b−1を介して粘着剤層12を積層(塗布)させてある。
なお剥離剤11b−1としては、シリコーン系剥離剤や非シリコーン系剥離剤等を用いることができる。
また本実施形態においては、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度を、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度よりも大きいものとしてある。
なお粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度は、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度よりも大きく、0.1N/10mm〜0.5N/10mm程度とすることが望ましい。
また耐熱性離型紙11bの厚みは50μm〜115μm程度とすることが望ましい。
また本実施形態においては、耐熱性離型紙11bは、図示しない筐体等の他の部材にプリント配線板20を接着固定させる段階において粘着剤層12から剥離される。
【0025】
前記粘着剤層12は、図示しない筐体等の他の部材にプリント配線板20を接着固定させるための粘着剤で形成される層である。
この粘着剤層12は、既述したように、耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)の全面に剥離剤11b−1を介して積層(塗布)されている。
なお本実施形態においては、粘着剤としてアクリル系粘着剤を用いている。
また粘着剤層12の厚みは、30μm〜250μm程度とすることが望ましい。
【0026】
前記プリント配線板20は、図2に示すように、基材層21の片側に導電層22を備える、いわゆる片面プリント配線板であり、既述したように、粘着シート10を介して図示しない筐体等の他の部材に接着固定されることで使用されるものである。
また本実施形態においては、図2(b)に示すように、プリント配線板20の所定領域に半田40を介して電子部品30を実装してある。
なお、ここで「所定領域」とは、プリント配線板20において、電子部品30を実装する領域のことを意味するものとする。
【0027】
このプリント配線板20は、図2に示すように、基材層21と、導電層22と、絶縁層23とから構成される。
【0028】
前記基材層21は、プリント配線板20の基台となるものであり、絶縁性の樹脂フィルムで形成されている。
樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。例えばポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等、プリント配線板の基材層を形成する樹脂フィルムとして通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
また特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているものが望ましい。例えばポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムや、ポリエチレンナフタレートを好適に用いることができる。
また耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等、プリント配線板の基材層を形成する耐熱性樹脂として通常用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
なお基材層21の厚みは、12μm〜100μm程度とすることが望ましい。
【0029】
前記導電層22は、基材層21の表側に積層され、プリント配線板20の配線回路22aや端子22b等を構成する層である。
本実施形態においては、図1、図2(b)に示すように、導電層22の一部を、後述する絶縁層23の一部を開口してなる開口部23aから露出させることで、端子22b、電極22cとしてある。
【0030】
この導電層22は、基材層21に導電性金属箔をめっきを用いて積層したり(いわゆるアディティブ法)、基材層21に予め積層される導電性金属箔をエッチングしたり(いわゆるサブトラクティブ法)等の公知の形成方法を用いて形成することができる。
また導電性金属箔としては、銅(Cu)を用いることができる。勿論、銅(Cu)に限るものではなく、プリント配線板の導電層を形成する導電性金属箔として通常用いられるものであれば、如何なるものであってもよい。
なお導電層22の厚みは、12μm〜35μm程度とすることが望ましい。
【0031】
前記絶縁層23は、プリント配線板20の絶縁を確保するための層である。
この絶縁層23は、カバーレイやソルダーレジスト等からなり、フィルム状のカバーレイを基材層21及び導電層22に貼り付ける等、公知の形成方法を用いて形成することができる。
なお絶縁層23の厚みは、10μm〜50μm程度とすることが望ましい。
また絶縁層23の性状はフィルム状等、如何なる性状であってもよい。
また絶縁層23には、図1、図2(b)に示すように、導電層22を露出させて端子22b、電極22cを形成するための開口部23aを設けてある。
【0032】
前記電子部品30は、例えばチップコンデンサ等からなり、図2(b)に示すように、半田40を介して電極22cと電気接続されることで、プリント配線板20に実装されている。
なお電子部品30の数、実装位置等は本実形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【0033】
前記半田40は、電極22cと、電子部品30の電極(図示しない)とを電気接続させるためのものである。
【0034】
以上の構成からなる本発明の実施形態に係る粘着シート10及び粘着シート10を備えるプリント配線板20は、以下の効果を奏する。
耐熱性離型紙11bの他面側(上面側)の全面に耐湿性離型フィルム11aを積層させる構成とすることで、良好な耐湿性を有する離型材層11とすることができる。
また耐湿性離型フィルム11aを耐熱性離型紙11bの他面側(上面側)に積層すると共に、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度を、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さいものとすることで、耐湿性離型フィルム11aだけを容易に剥離させることできる。また耐湿性離型フィルム11aだけを剥離させることで、良好な耐熱性を有する離型材層11とすることができる。
より具体的には、プリント配線板20に半田を介して電子部品30を実装する半田リフロー工程を行うまでの段階においては、耐湿性離型フィルム11aを備えることで、吸湿によって耐熱性離型紙11bに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる。よって半田リフロー工程の直前に耐湿性離型フィルム11aを剥離させることで、半田リフロー工程に伴う加熱前後で耐熱性離型紙11bが大きく収縮することを防止することができ、粘着シート10に寸法変化が生じることを防止することができる。また同時に、熱によって粘着剤層12に粘着性能の低下が生じることを効果的に防止することができる。
従って水分や熱によって粘着シート10に寸法変化が生じることを防止できることで、プリント配線板20から粘着シート10が剥がれることを防止することができる。また図示しない筐体等の他の部材に粘着シート10を介してプリント配線板20を精度良く、良好に接着固定させることができる。
また耐湿性離型フィルム11aをポリエチレンで形成することで、一段と良好な耐湿性を有する共に、低コストの耐湿性離型フィルム11aとすることができる。
また耐熱性離型紙11bをグラシン紙で形成することで、半田リフロー工程(一般的には、加熱工程におけるピーク温度が260℃、加熱時間が10秒程度)等の加熱工程にも耐えうる良好な耐熱性を備えた耐熱性離型紙11bとすることができる。
また粘着剤層12をアクリル系粘着剤で形成することで、常温でも優れた接着性を有すると共に、軽い圧力で被着材に接着させることができる粘着剤層12とすることができる。
【0035】
これに対して従来の粘着シート100は、図5に示すように、単層の紙からなる耐熱性離型紙110bだけで離型材層110を形成するものが一般的であった。
よってこのような粘着シート100を備えると共に、半田400を介して電子部品300を実装する従来のプリント配線板200においては、半田リフロー工程を行うまでの段階において、吸湿によって耐熱性離型紙110bに寸法変化が生じる。よって半田リフロー前後で粘着シート100が大きく収縮し、プリント配線板200から粘着シート100が剥がれるという問題があった。またプリント配線板200を図示しない筐体等の他の部材に粘着シート100を介して精度良く、良好に接着固定させることができないという問題があった。
なお従来の粘着シート100を備えるプリント配線板200において、既述した本発明の実施形態に係る粘着シート10、プリント配線板20等と同一の部材、同一の機能を果たすものには、上2桁の番号及びアルファベットに同一なものを付し、詳細な説明は省略するものとする。
【0036】
よって本発明の実施形態に係る粘着シート10の構成とすることで、粘着シート10を備えると共に、半田40を介して電子部品30を実装するプリント配線板20において、半田リフローに伴う加熱前後で粘着シート10に寸法変化が生じることを効果的に防止することできる。
【0037】
次に図3、図4を参照して、本発明の実施形態に係る粘着シート10及び粘着シート10を備えるプリント配線板20の製造方法を説明する。
まず図3、図4(a)を参照して、粘着シート10を形成する。
より具体的には、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)に粘着剤層12を積層する工程により、耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)の全面に粘着剤層12を積層する。また耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さい剥離強度で、耐熱性離型紙11bの他面側(上面)に耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルム11aを積層する工程により、耐熱性離型紙11bの他面側(上面)の全面に耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルム11aを積層する。
更に具体的には、図示しない供給側ロールから、耐熱性離型紙11b(剥離剤11b−1をコーティング済み)を供給し、その途中で耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)にアクリル系粘着剤からなる粘着剤を塗布することで、耐熱性離型紙11bの一面側(下面側)に粘着剤層12を形成した後、図示しない巻取り側ロールで巻き取る。
そしてこの工程の前工程若しくは後工程において、耐熱性離型紙11bの他面側(上面側)にポリエチレンからなる耐湿性離型フィルム11a(剥離剤11a−1をコーティング済み)をラミネート加工を用いて積層する。この際、耐湿性離型フィルム11aの剥離強度が、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さくなるようにする。
以上の工程により、粘着シート10が形成される。
次に図4(b)を参照して、プリント配線板20を形成する。
より具体的には、アディティブ法やサブトラクティブ法等の公知の形成方法を用いて、基材層21と、基材層21に積層される導電層22と、導電層22に積層される絶縁層23とからなるプリント配線板20を形成する。
次に図4(c)を参照して、プリント配線板20に粘着シート10を貼り付ける工程により、プリント配線板20の所定領域に粘着剤層12を介して粘着シート10を貼り付ける。
次に図4においては図示していないが、プリント配線板20の所定領域に公知の方法(リフロー方式)を用いて半田40を介して電子部品30を実装する。
以上の工程を経て、図4(d)に示す本発明の実施形態に係る粘着シート10を備えるプリント配線板20が形成される。
なお図4(d)においては、説明の便宜上、電子部品30の実装時には剥離されている耐湿性離型フィルム11aを図示するものとする。
【0038】
このような構成からなる本発明の実施形態に係る粘着シート10及び粘着シート10を備えるプリント配線板20の製造方法は、以下の効果を奏する。
耐熱性離型紙11bの他面側(上面側)の全面に耐湿性離型フィルム11aを積層させる構成とすることで、良好な耐湿性を有する離型材層11とすることができる。従って水分によって耐熱性離型紙11bに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる粘着シート10を製造することができる。
また耐湿性離型フィルム11aを耐熱性離型紙11bの上面側に積層すると共に、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度を、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さいものとすることで、耐湿性離型フィルム11aだけを容易に剥離させることできる。また耐湿性離型フィルム11aだけを剥離させることで、良好な耐熱性を有する離型材層11を備える粘着シート10を製造することができる。従って熱によって寸法変化が生じることを効果的に防止することができる粘着シート10を製造することができる。
より具体的には、プリント配線板20に半田40を介して電子部品30を実装する半田リフロー工程を行うまでの段階においては、吸湿によって耐熱性離型紙11bに寸法変化が生じることを効果的に防止することができる。よって半田リフロー工程の直前に耐湿性離型フィルム11aを剥離させることで、半田リフロー工程に伴う加熱前後で耐熱性離型紙11bが大きく収縮することを防止することができ、粘着シート10に寸法変化が生じることを防止することができる。また同時に、熱によって粘着剤層12に粘着性能の低下が生じることを効果的に防止することができる。
従って、このような粘着シート10をプリント配線板20の所定領域に貼り付ける構成とすることで、プリント配線板20から粘着シート10が剥がれることを効果的に防止することができ、図示しない筐体等の他の部材に精度良く、良好に接着固定させることができるプリント配線板20を製造することができる。
また耐湿性離型フィルム11aをポリエチレンで形成することで、一段と良好な耐湿性を有すると共に、低コストの粘着シート10を製造することができる。
また耐熱性離型紙11bをグラシン紙で形成することで、半田リフロー工程(一般的には、加熱工程におけるピーク温度が260℃、加熱時間が10秒程度)等の加熱工程にも耐えうる良好な耐熱性を備えた耐熱性離型紙11bとすることができる。
また粘着剤層12をアクリル系粘着剤で形成することで、常温でも優れた接着性を有すると共に、軽い圧力で被着材に接着させることができる粘着シート10を製造することができる。
【0039】
なお実施形態においては、粘着シート10の構成を、耐熱性離型紙11bの上面に耐湿性離型フィルム11aを積層する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、耐熱性離型紙11bよりも上方に耐湿性離型フィルム11aを積層する構成であれば、耐熱性離型紙11bと耐湿性離型フィルム11aとの間に他の層を介在させるような構成としてもよい。但し、耐熱性離型紙11bに対する耐湿性離型フィルム11aの剥離強度を、粘着剤層12に対する耐熱性離型紙11bの剥離強度よりも小さいものとすることが必要である。
また本実施形態においては、耐湿性離型フィルム11aをポリエチレンで形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、耐湿性(具体的には、温度20℃〜90℃程度、湿度40%RH〜90%RH程度、時間24h〜90h程度の耐湿性)を備えるフィルムであれば、その材質は如何なるものを用いてもよい。例えばポリエステル等を用いることができる。
また本実施形態においては、耐熱性離型紙11bをグラシン紙で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、耐熱性(具体的には、240℃−30秒〜260℃−10秒程度の耐熱性)を備える紙であれば、如何なる紙を用いてもよい。例えば上質紙等を用いることができる。
また本実施形態においては、粘着剤層12をアクリル系粘着剤で形成する構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、常温で接着力を有する粘着剤か、或いは融点が半田リフロー工程におけるピーク温度(具体的には240℃〜260℃程度)以下の熱可塑性樹脂からなる粘着剤であれば、如何なる粘着剤を用いてもよい。例えばシリコーン系粘着剤等を用いることができる。但し、粘着剤層12を形成する粘着剤と、耐熱性離型紙11bを形成する紙との熱膨張率が一致するものを用いることが必要である。
また本実施形態においては、プリント配線板20を、基材層21の片側に導電層22を備える、いわゆる片面プリント配線板とする構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、基材層21の両側に導電層22を備える、いわゆる両面プリント配線板とする構成としてもよい。
またプリント配線板の種類も、フレキシブルプリント配線板、リジッドプリント配線板、リジッドフレキシブルプリント配線板等、各種プリント配線板を用いることができる。
また粘着シート10の外形、プリント配線板20への貼り付け位置等も本実施形態のものに限るものではなく、適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートにおいて、良好な耐湿性及び耐熱性を有する粘着シートを実現することができることから、プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートの分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0041】
10 粘着シート
11 離型材層
11a 耐湿性離型フィルム
11a−1 剥離剤
11b 耐熱性離型紙
11b−1 剥離剤
12 粘着剤層
20 プリント配線板
21 基材層
22 導電層
22a 配線回路
22b 端子
22c 電極
23 絶縁層
23a 開口部
30 電子部品
40 半田
100 粘着シート
110 離型材層
110b 耐熱性離型紙
120 粘着剤層
200 プリント配線板
210 基材層
220 導電層
220a 配線回路
220b 端子
220c 電極
230 絶縁層
230a 開口部
300 電子部品
400 半田

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント配線板を筐体等の他の部材に接着固定させるための粘着シートであって、該粘着シートは、離型材層と、該離型材層に積層される粘着剤層とからなり、前記離型材層は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙と、耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムとを備えると共に、該耐湿性離型フィルムを、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で前記耐熱性離型紙の上方に積層してあることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記耐熱性離型紙は、グラシン紙からなることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記耐湿性離型フィルムは、ポリエチレンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の粘着シートを備えることを特徴とするプリント配線板。
【請求項5】
請求項4に記載のプリント配線板の製造方法であって、粘着シートを形成する工程と、プリント配線板を形成する工程と、前記プリント配線板に前記粘着シートを貼り付ける工程とを少なくとも備えると共に、粘着シートを形成する工程は、耐熱性の紙からなる耐熱性離型紙の一面側に粘着剤層を積層する工程と、前記耐熱性離型紙の剥離強度よりも小さい剥離強度で、前記耐熱性離型紙の他面側に耐湿性のフィルムからなる耐湿性離型フィルムを積層する工程とを備えることを特徴とするプリント配線板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−246376(P2012−246376A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−118229(P2011−118229)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】