説明

粘着シートおよびその製造方法

【課題】 基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成して、空気溜まりやブリスターを防止または除去することのできる粘着シートの製造方法を提供する。
【解決手段】 工程材料1上に、基材2を構成する樹脂を含有する樹脂組成物を塗布するとともに、その樹脂組成物を発泡させ、製膜される基材2に発泡による貫通孔21を形成する。そして、その基材2の裏面側にプライマー層3および粘着剤層4を形成するとともに、基材2の貫通孔21からの気体を粘着剤層4の外側まで移動させることによって、粘着剤層4に貫通孔41を形成する。最後に、必要に応じて剥離材6を積層し、粘着シート7とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気溜まりやブリスターを防止または除去することのできる粘着シート、およびそのような粘着シートを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
粘着シートを手作業で被着体に貼付する際に、被着体と粘着面との間に空気溜まりができ、粘着シートの外観を損ねてしまうことがある。このような空気溜まりは、特に粘着シートの面積が大きい場合に発生し易い。
【0003】
空気溜まりによる粘着シート外観の不具合を解消するために、粘着シートを別の粘着シートに貼り替えることや、粘着シートを一度剥して貼り直すこと、あるいは粘着シートの膨れた部分に針で穴を開けて空気を抜いたりすることが行われている。しかしながら、粘着シートを貼り替える場合には、手間を要するだけでなく、コストアップを招いてしまい、また、粘着シートを貼り直す場合には、粘着シートが破れたり、表面に皺ができたり、粘着性が低下する等の問題が生じることが多い。一方、針で穴を開ける方法は粘着シートの外観を損ねるものである。
【0004】
空気溜まりの発生を防止するために、あらかじめ被着体または粘着面に水をつけてから貼付する方法があるが、窓に貼るガラス飛散防止フィルム、装飾フィルム、マーキングフィルム等の寸法の大きい粘着シートを貼付する場合には、多くの時間と手間を要している。また。手作業ではなく機械を使用して貼付することにより、空気溜まりの発生を防止する方法があるが、粘着シートの用途または被着体の部位・形状によっては、機械貼りが適用できないことがある。
【0005】
一方、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂材料は、加熱により、または加熱によらなくても、ガスを発生することがあるが、このような樹脂材料からなる被着体に粘着シートを貼付した場合には、被着体から発生するガスによって粘着シートにブリスター(ふくれ)が生じることとなる。
【0006】
上記のような問題を解決するために、特許文献1および特許文献2には、基材および粘着剤層に、それらを貫通する貫通孔を設けた粘着シートが提案されている。この粘着シートにおいては、貫通孔から空気やガスを外部に抜くことにより、粘着シートの空気溜まりまたはブリスターを防止する。
【特許文献1】特開平2−107682号公報
【特許文献2】実開平4−100235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記粘着シートでは、基材および粘着剤層に対して、刃型および孔型を使用して打ち抜き加工を施すか、加熱針を使用して穿孔加工を施すことにより貫通孔を形成していたが、基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成する方法は知られていなかった。
【0008】
本発明は、基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成して得られる、空気溜まりやブリスターを防止または除去することのできる粘着シート、かかる粘着シートの製造方法、およびその粘着シート製造方法に使用することのできる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と前記基材に積層された粘着剤層とを備え、前記基材および粘着剤層を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が複数形成されている粘着シートであって、前記粘着剤層の貫通孔は、前記基材の貫通孔からの気体が前記粘着剤層を通り抜けることによって所定の径を有するように形成されたものであることを特徴とする粘着シートを提供する(請求項1)。
【0010】
本明細書における「貫通し得る貫通孔」とは、常態では貫通していなくても、粘着シートを圧着等することにより、または発生ガスの圧力等により、実際に貫通するような貫通孔をいう。
【0011】
ここで、基材は単層であってもよいし、複数層からなってもよい。また、貫通孔は粘着シートにランダムに形成されていてもよいし、粘着シートの所定の位置に形成されていてもよい。なお、本明細書において、「シート」にはフィルムの概念、「フィルム」にはシートの概念が含まれるものとする。
【0012】
上記発明に係る粘着シート(請求項1)は、基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成することにより得られる。
【0013】
上記発明(請求項1)において、前記基材および粘着剤層における前記貫通孔の直径は0.1〜1000μmであり、孔密度は30〜50,000個/100cmであるのが好ましい(請求項2)。かかる発明(請求項2)によれば、エア抜け性に優れるとともに、十分な接着力を確保することのできる粘着シートが得られる。
【0014】
第2に本発明は、基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とからなり、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されている積層体を作製し、前記積層体における基材の裏面側に粘着剤層を形成するとともに、前記基材の貫通孔からの気体を前記粘着剤層の外側に移動させることにより、前記粘着剤層を厚さ方向に貫通する貫通孔を、所定の径を有するように前記粘着剤層に複数形成することを特徴とする粘着シートの製造方法を提供する(請求項3)。
【0015】
第3に本発明は、基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とからなり、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されている積層体を作製し、前記積層体における基材の裏面側に、前記基材の貫通孔に対応する位置に貫通孔を有するプライマー層または当該貫通孔を有しないプライマー層を形成し、前記プライマー層上に粘着剤層を形成するとともに、前記基材の貫通孔からの気体を前記粘着剤層の外側に移動させることにより、前記粘着剤層を厚さ方向に貫通する貫通孔を、所定の径を有するように前記粘着剤層に複数形成することを特徴とする粘着シートの製造方法を提供する(請求項4)。
【0016】
上記発明(請求項3,4)によれば、基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成して、空気溜まりやブリスターを防止または除去することのできる粘着シートを得ることができる。特に、後者の発明(請求項4)によれば、基材と粘着剤層との接着性を向上させることができるとともに、粘着剤層中の溶剤が基材に悪影響を与えることを防止することができる。
【0017】
上記発明(請求項3,4)においては、前記基材の貫通孔の直径を0.1〜1000μmとし、孔密度を30〜50,000個/100cmとするのが好ましい(請求項5)。
【0018】
また、上記発明(請求項3〜5)においては、基材を構成する樹脂を含有する樹脂組成物をガスバリア材上に塗布するとともに、前記樹脂組成物を発泡させ、製膜される基材に発泡による貫通孔を形成することにより、前記積層体を作製してもよいし(請求項6)、ガスバリア材を積層した基材に対して穴開け加工を施し、前記基材は貫通するが前記ガスバリア材は貫通しない穴を形成することにより、前記積層体を作製してもよいし(請求項8)、基材に対して穴開け加工を施して前記基材を貫通する貫通孔を形成し、次いで前記貫通孔を形成した基材とガスバリア材とを積層することにより、前記積層体を作製してもよい(請求項9)
【0019】
上記発明(請求項6)において、前記樹脂組成物は、発泡剤を含有することが好ましい(請求項7)。このように発泡剤を使用することにより、貫通孔形成の制御が容易になる。
【0020】
また、上記発明(請求項8,9)においては、前記穴開け加工がレーザ加工であることが好ましい(請求項10)。レーザ加工によれば、エア抜け性の良い微細な貫通孔を所定の位置に所望の孔密度で容易に形成することができる。ただし、貫通孔の形成方法はこれに限定されるものではなく、例えば、ウォータージェット、マイクロドリル、精密プレス、熱針、溶孔等によって形成してもよい。
【0021】
第4に本発明は、基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とを備え、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されていることを特徴とする粘着シート製造用の積層体を提供する(請求項11)。このような積層体によれば、基材の貫通孔からの気体を粘着剤層の外側まで移動させることにより、粘着剤層に貫通孔を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材、粘着剤層それぞれ別々に貫通孔を形成して、空気溜まりやブリスターを防止または除去することのできる粘着シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【0024】
本実施形態では、最初に、図1(a)〜(b)に示すように、ガスバリア材としての工程材料1の上に、基材2を構成する樹脂を含有する樹脂組成物を塗布するとともに、その樹脂組成物を発泡させ、製膜される基材2に発泡による貫通孔21を形成する。
【0025】
工程材料1としては、ガスバリア性を有するとともに、基材2との剥離性に優れ、さらに基材1の表面に所望の平滑性を付与し得る平滑度または表面粗さを有するものであれば、特に限定されるものではない。
【0026】
そのような工程材料1としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムの片面に、シリコーン系、ポリエステル系、アクリル系、アルキド系、ウレタン系、フッ素系等の剥離剤を塗工して剥離剤層を形成したものや、上質紙、グラシン紙等の各種紙や不織布に、樹脂の塗工やラミネートによってガスバリア層を形成し、さらにそのガスバリア層上に剥離剤層を形成したものなどを使用することができる。工程材料1の厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは25〜150μm程度である。
【0027】
基材2を構成する樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ハロゲン化ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、セルローストリアセテート等の樹脂が挙げられる。
【0028】
ここで、上記樹脂組成物の発泡は、発泡剤分散法、気体混入法、水/溶剤揮散法、化学反応法等によって行うことができるが、中でも発泡剤分散法によって行うのが好ましい。この場合、上記樹脂組成物は、基材2を構成する樹脂以外に、少なくとも発泡剤、そして通常は溶剤を含有し、その他必要に応じて、所望の添加剤、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤、熱安定剤、フィラー等を含有してもよい。
【0029】
発泡剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルフォニルヒドラジド等の有機系発泡剤、重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等の無機系発泡剤、マイクロカプセル等の1種または2種以上を使用することができる。
【0030】
発泡剤の粒径は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、特に0.5〜1500μmであるのが好ましい。かかる粒径を有する発泡剤を使用することによって、基材2に形成される貫通孔21の大きさ(直径)を、後述する好ましい範囲内にすることができる。
【0031】
上記樹脂組成物における発泡剤の含有量は、基材2を構成する樹脂の固形分100重量部に対して、0.1〜50重量部であるのが好ましく、特に1〜10重量部であるのが好ましい。発泡剤の含有量をこのように設定することにより、基材2に形成される貫通孔21の孔密度を、後述する好ましい範囲内にすることができる。
【0032】
上記樹脂組成物の粘度は、B型粘度計6rpmで100〜20,000mPa・sとするのが好ましい。樹脂組成物の粘度が上記範囲外にあると、発泡剤が発泡しても貫通孔21が形成され難い。
【0033】
樹脂組成物の塗布は常法によって行えばよく、例えば、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機を使用して塗布することができる。
【0034】
工程材料1上に塗布した樹脂組成物を乾燥させることにより、基材2が形成されるが、このとき樹脂組成物を加熱することによって発泡剤は発泡し、基材2に貫通孔21が形成される。加熱は2段階で行うのが好ましく、第1段階では発泡剤の発泡温度よりも低い温度で加熱して、樹脂組成物をある程度乾燥させ、第2段階では発泡剤の発泡温度よりも高い温度で加熱して、発泡剤を発泡させる。このように加熱を2段階で行うことにより、良好な形状の貫通孔21が形成され易くなる。
【0035】
上記のようにして製膜される基材2の厚さは、1〜500μmであるのが好ましく、特に3〜300μmであるのが好ましい。
【0036】
また、基材2に形成される貫通孔21の直径は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、特に、10〜1500μmであるのが好ましい。そして、貫通孔21の孔密度は、30〜100,000個/100cmであるのが好ましく、特に100〜50,000個/100cmであるのが好ましい。貫通孔21の直径および孔密度を上記の範囲とすることにより、後段で形成する粘着剤層が、エア抜け性が良好で、かつ十分な接着力を確保し得るものとなる。
【0037】
ここで、貫通孔21の基材2表面における孔径が40μm以下であると、貫通孔21の孔自体(貫通孔21の内部空間)が肉眼では見えなくなり得るため、特に得られる粘着シートの外観において貫通孔21の孔自体が見えないことが要求されるような場合には、貫通孔21の基材2表面における孔径の上限を40μmとするのが好ましい。
【0038】
なお、発泡剤の発泡により基材2に形成される孔には、基材2の表面側(工程材料1との接触面側)において樹脂の薄膜(気泡膜)が存在し、基材2を完全には貫通しないものがあるが、粘着シートを圧着等することにより、または発生ガスの圧力等により、気泡膜が破れて実際に基材2を貫通するものもあるため、かかる孔も貫通孔21に含まれるものとする。
【0039】
本実施形態における基材2の貫通孔21は、樹脂組成物の発泡によって形成されるものであるため、基材2にてランダムに形成される。
【0040】
本実施形態では、次に、図1(c)に示すように、上記基材2の上にプライマーを塗布し、基材2の貫通孔21に対応する位置に貫通孔31ができるようにプライマー層3を形成する。
【0041】
具体的には、基材2の貫通孔21に存在する空気をプライマー層3の外側に移動させることにより、プライマー層3に所定の径を有する貫通孔31を形成するか、基材2の貫通孔21の部分にプライマー層3が形成されないように、プライマーを塗工する。
【0042】
基材2の貫通孔21に存在する空気のプライマー層3外側への移動は、例えば、プライマー層3を形成した基材2を加熱することにより行うことができる。この加熱によって、基材2の貫通孔21に存在していた空気は膨張し、プライマー層3を退けて外側に出る。なお、基材2の表面側には、ガスバリア性を有する工程材料1が積層されているため、貫通孔21内の膨張した空気はプライマー層3側だけに移動する。このようにして、プライマー層3にて空気が通過した部分が、プライマー層3の貫通孔31となる。プライマー層3に形成される貫通孔31の直径および孔密度は、基材2の貫通孔21の直径および孔密度と概ね一致する。
【0043】
なお、プライマーを塗布した時に、基材2の貫通孔21に対応する位置に、所定の径(直径:0.1μm)未満の貫通孔31が形成された場合であっても、上記のように基材2の貫通孔21からの気体を通過させることにより、プライマー層3の貫通孔31の径は、基材2の貫通孔21の径と略同じ大きさまで拡大され得る。
【0044】
プライマーとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、アミノエチル化樹脂等を使用することができる。
【0045】
プライマー層3の厚さは、0.05〜5μmであるのが好ましく、特に0.1〜3μmであるのが好ましい。
【0046】
プライマー層3を形成するには、プライマー層3を構成する材料と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によって基材2上に塗布すればよい。
【0047】
ここで、プライマーの塗布剤の粘度は、B型粘度計6rpmで3000mPa・s以下とするのが好ましく、特に1〜1500mPa・sとするのが好ましい。プライマーの塗布剤の粘度が高過ぎると、前述したプライマー層3における気体の移動を妨げるおそれがあり、またプライマー層3に貫通孔31が形成されたとしても、貫通孔31の開口部周辺が盛り上がり、プライマー層3の表面平滑性が低くなるおそれがある。
【0048】
上記のようなプライマー層3を形成することにより、粘着剤層との接着性を向上させることができるとともに、粘着剤層中の溶剤が基材2に悪影響を与えることを防止することができる。
【0049】
次いで、図1(d)に示すように、上記プライマー層3の上に粘着剤を塗布し、粘着剤層4(未乾燥状態)を形成する。粘着剤の種類としては、粘着剤層4に貫通孔41が形成され得る材料であれば特に限定されるものではなく、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系等のいずれであってもよい。また、粘着剤はエマルジョン型、溶剤型または無溶剤型のいずれであってもよく、熱架橋または電離放射線架橋等の架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。
【0050】
粘着剤層4の厚さ(乾燥時)は、1〜300μmであるのが好ましく、特に3〜100μmであるのが好ましいが、粘着シートの用途等に応じて適宜変更することができる。
【0051】
粘着剤層4を形成するには、粘着剤層4を構成する粘着剤と、所望によりさらに溶媒とを含有する塗布剤を調製し、ロールコーター、ナイフコーター、ロールナイフコーター、エアナイフコーター、ダイコーター、バーコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等の塗工機によってプライマー層3上に塗布すればよい。
【0052】
ここで、粘着剤の塗布剤の粘度は、B型粘度計6rpmで20,000mPa・s以下とするのが好ましく、特に200〜5000mPa・sとするのが好ましい。粘着剤の塗布剤の粘度が高過ぎると、後述する粘着剤中の気体の移動を妨げるおそれがあり、また粘着剤層4に貫通孔41が形成されたとしても、貫通孔41の開口部周辺が盛り上がり、粘着剤層4の表面平滑性が低くなるおそれがある。
【0053】
なお、図1(d)では、粘着剤層4において基材2の貫通孔21(およびプライマー層3の貫通孔31)に対応する位置のいくつかには、基材2の貫通孔21の径よりも小さい径を有する貫通孔41pが形成されているが、かかる貫通孔41pは、粘着剤の塗工時に形成されなくてもよいし、基材2の貫通孔21に対応する位置の全てに形成されてもよい。
【0054】
続いて、図1(e)に示すように、基材2の貫通孔21およびプライマー層3の貫通孔31に存在する空気を、粘着剤層4の外側まで移動させることにより、粘着剤層4に貫通孔41を形成する。これにより、基材2の貫通孔21、プライマー層3の貫通孔31および粘着剤層4の貫通孔41からなる、基材2、プライマー層3および粘着剤層4を貫通する貫通孔5が形成される。
【0055】
粘着剤中での気体の移動(上昇)は、気体の浮力によって自然に行わせてもよいし、粘着剤層4を形成した基材2を加熱し、粘着剤層4を乾燥させることにより行わせてもよい。気体は、粘着剤中を移動するときに、粘着剤を退けながら粘着剤層4の外側に出るため、気体が通過した部分が粘着剤層4の貫通孔41となる。
【0056】
粘着剤層4を形成した基材2を加熱した場合、基材2の貫通孔21およびプライマー層3の貫通孔31に存在する空気が膨張し、粘着剤層4を移動する気体の量が増えるため、より効率的に貫通孔41を形成することができる。この加熱温度や加熱パターン等を変化させることにより、粘着剤層4に形成される貫通孔41の大きさ(直径)を制御することができる。加熱温度は、常温〜150℃の範囲内とするのが好ましい。
【0057】
なお、基材2の表面側には、ガスバリア性を有する工程材料1が積層されているため、基材2の貫通孔21内およびプライマー層3の貫通孔31内の膨張した空気は粘着剤層4側だけに移動し、効率良く貫通孔41を形成することができる。
【0058】
粘着剤層4に形成される貫通孔41の直径および孔密度は、基材2の貫通孔21の直径および孔密度と略同じであるのが好ましいが、次の範囲内であれば異なっていてもよい。すなわち、貫通孔41の直径は0.1〜2000μmであるのが好ましく、特に0.5〜1500μmであるのが好ましい。貫通孔41の直径が0.1μm未満であると、気体が貫通孔41を通過し難く、貫通孔41の直径が2000μmを超えると、粘着剤層4の接着力が低下するおそれがある。
【0059】
貫通孔41の孔密度は、30〜100,000個/100cmであるのが好ましく、特に100〜50,000個/100cmであるのが好ましい。貫通孔41の孔密度が30個/100cm未満であると、気体が抜け難く、貫通孔41の孔密度が100,000個/100cmを超えると、粘着剤層4の接着力が低下するおそれがある。
【0060】
粘着剤層4の貫通孔41と基材2の貫通孔21との孔密度の比(粘着剤層4の貫通孔41の孔密度/基材2の貫通孔21の孔密度)は、0.3〜1であるのが好ましく、0.6〜1であるのが特に好ましく、1であるのが最も好ましい。粘着剤層4の貫通孔41と基材2の貫通孔21との孔密度の比が0.3未満であると、基材2の貫通孔21の孔密度から予想されるエア抜け性能が十分に得られなくなるおそれがある。
【0061】
なお、粘着剤の塗工時に粘着剤層4に形成された貫通孔41pの径(基材2の貫通孔21の径よりも小さい)は、上記のような基材2の貫通孔21からの気体の通過によって、所望の大きさまで拡大され得る。
【0062】
最後に、必要に応じて、図1(f)に示すように、粘着剤層4の粘着面に剥離材6を積層して本実施形態の粘着シート7とする。この粘着シート7は、工程材料1と、基材2と、プライマー層3と、粘着剤層4と、剥離材6とが積層されてなり、基材2、プライマー層3および粘着剤層4を貫通する貫通孔5がランダムに形成されている。
【0063】
なお、工程材料1は、通常、粘着シート7の製造終了後または粘着シート7の貼付前に基材2から剥離され、剥離材6は、粘着シート7の使用時に、粘着剤層4から剥離される。
【0064】
以上の本実施形態では、プライマー層3に貫通孔31を形成した後、粘着剤層4を形成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、貫通孔31を形成することなくプライマー層3を形成するとともに(プライマー層3は未乾燥状態)、粘着剤層4を形成し、その後、基材2の貫通孔21に存在する空気を粘着剤層4の外側まで移動させることにより、プライマー層3および粘着剤層4に所定の径を有する貫通孔31,41を形成するようにしてもよい。
【0065】
また、粘着シート7においてプライマー層3は省略してもよいし、その場合、基材2の裏面に電子線を照射したりコロナ放電処理を施したりして、当該面を改質して粘着剤層4との密着性を高めてもよい。
【0066】
〔第2の実施形態〕
図2は、本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【0067】
本実施形態では、最初に、図2(a)〜(b)に示すように、基材2Aの表面側にガスバリア材としての保護シート8を貼着する。
【0068】
本実施形態における基材2Aの材料としては、樹脂フィルム、金属フィルム、金属を蒸着させた樹脂フィルム、紙、不織布、それらの積層体等が挙げられる。
【0069】
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂;ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル等の成分を含む熱可塑性エラストマーなどの樹脂からなるフィルム、発泡フィルム、またはそれらの積層フィルム等を使用することができる。これらの樹脂フィルムは、無機フィラー、有機フィラー、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含むものであってもよい。
【0070】
また、紙としては、例えば、上質紙、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等を使用することができる。
【0071】
なお、上記材料の表面には、例えば、印刷、印字、塗料の塗布、転写シートからの転写、蒸着、スパッタリング等の方法による装飾層が形成されていてもよいし、かかる装飾層を形成するための易接着コート、あるいはグロス調整用コート等のアンダーコート層が形成されていてもよいし、ハードコート、汚染防止コート等のトップコート層が形成されていてもよい。また、それら装飾層、アンダーコート層またはトップコート層は、上記材料の全面に形成されていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0072】
基材2Aの厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは3〜300μm程度であるが、目的とする粘着シートの用途に応じて適宜変更することができる。
【0073】
保護シート8としては、基材2Aに対して貼着・剥離可能であるとともに、ガスバリア性を有するものであれば、特に限定されるものではない。このような保護シート8としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムの片面に再剥離性粘着剤層を形成したものや、上質紙、グラシン紙等の各種紙や不織布に、樹脂の塗工やラミネートによってガスバリア層を形成し、さらにそのガスバリア層上に再剥離性粘着剤層を形成したものなどを使用することができる。保護シート8の厚さは、通常10〜200μm程度であり、好ましくは25〜150μm程度である。
【0074】
次に、図2(c)に示すように、保護シート8を貼着した基材2Aに対して穴開け加工を施し、基材2Aのみに貫通孔21を形成する。本製造方法では、基材2Aの裏面側(保護シート8非貼着側)からレーザを照射するレーザ加工によって、基材2Aに貫通孔21を形成する。レーザ加工によれば、所望の径を有する貫通孔21を基材2Aの所望の位置(エア抜け性を付与したい位置)に所望の孔密度で容易に形成することができる。ただし、本発明ではレーザ加工に限定されず、溶孔、熱針、マイクロドリル、精密プレス、ウォータージェット等によって基材2Aに貫通孔21を形成してもよい。
【0075】
レーザ加工に利用するレーザの種類は特に限定されるものではなく、例えば、炭酸ガス(CO)レーザ、TEA−COレーザ、YAGレーザ、UV−YAGレーザ、エキシマレーザ、半導体レーザ、YVOレーザ、YLFレーザ等を利用することができる。
【0076】
基材2Aに形成する貫通孔21の直径は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、特に、10〜1500μmであるのが好ましい。また、貫通孔21の孔密度は、30〜100,000個/100cmであるのが好ましく、特に100〜50,000個/100cmであるのが好ましい。貫通孔21の直径および孔密度を上記の範囲とすることにより、後段で形成する粘着剤層が、エア抜け性が良好で、かつ十分な接着力を確保し得るものとなる。
【0077】
ここで、貫通孔21の基材2A表面における孔径が40μm以下であると、貫通孔21の孔自体(貫通孔21の内部空間)が肉眼では見えなくなり得るため、特に得られる粘着シートの外観において貫通孔21の孔自体が見えないことが要求されるような場合には、貫通孔21の基材2A表面における孔径の上限を40μmとするのが好ましい。
【0078】
なお、本実施形態では、レーザ加工は基材2Aの裏面側から施すが、レーザ加工によって貫通孔21を形成する場合、貫通孔21には先細りのテーパがつくことが多いため、貫通孔21の孔径は基材2Aの裏面側側よりも基材2Aの表面側の方が小さくなり、したがって、粘着シートの表面にて貫通孔21が目立ち難くなり、粘着シートの外観を良好に保つことができる。
【0079】
また、レーザ加工によって貫通孔21を形成する場合、貫通孔21の開口部周縁には、熱による溶融物、いわゆるドロスが形成されることがあるが、基材2Aの表面に保護シート8が積層されていることにより、ドロスは基材2Aに形成され難くなり、粘着シートの外観をより良好に保つことができる。
【0080】
次いで、前述した第1の実施形態に係る粘着シートの製造方法と同様にして、図2(d)〜(f)に示すように、上記基材2Aの裏面に粘着剤層4を形成するとともに、その粘着剤層4に貫通孔41を形成する。これにより、基材2Aの貫通孔21および粘着剤層4の貫通孔41からなる、基材2Aおよび粘着剤層4を貫通する貫通孔5が形成される。そして、必要に応じて粘着剤層4の粘着面に剥離材6を積層し、本実施形態の粘着シート7Aとする。この粘着シート7Aは、保護シート8と、基材2Aと、粘着剤層4と、剥離材6とが積層されてなり、基材2Aおよび粘着剤層4を貫通する貫通孔5が所定の位置に所定の孔密度で形成されている。
【0081】
なお、保護シート8は、通常、粘着シート7の製造終了後または粘着シート7の貼付前に基材2Aから剥離され、剥離材6は、粘着シート7の使用時に、粘着剤層4から剥離される。
【0082】
以上の本実施形態では、保護シート8を貼着した基材2Aに対して穴開け加工を施したが、基材2Aに対して穴開け加工を施した後、粘着剤層4を形成する前に保護シート8を貼着してもよく、また、保護シート8および基材2Aの代わりに第1の実施形態における工程材料1および基材2を使用してもよい。さらに、本実施形態でも、第1の実施形態のように基材2と粘着剤層4との間にプライマー層3を設けてもよいし、基材2Aの裏面に電子線を照射したりコロナ放電処理を施したりして、当該面を改質して粘着剤層4との密着性を高めてもよい。
【0083】
〔粘着シートの使用〕
粘着シート7,7Aを被着体に貼付する際には、工程材料1または保護シート8を基材2から剥離するとともに、剥離材6を粘着剤層4から剥離し、露出した粘着剤層4の粘着面を被着体に密着させるようにして、粘着シート7,7Aを被着体に押圧する。このとき、被着体と粘着剤層4の粘着面との間の空気は、粘着シート7,7Aに形成された貫通孔5から基材2,2A表面の外側に抜けるため、被着体と粘着面との間に空気が巻き込まれ難く、空気溜まりができることが防止される。仮に空気が巻き込まれて空気溜まりができたとしても、その空気溜まり部または空気溜まり部を含んだ空気溜まり部周辺部を再圧着することにより、空気が粘着シート7,7Aの貫通孔5から基材2,2A表面の外側に抜けて、空気溜まりが消失する。このような空気溜まりの除去は、粘着シート7,7Aの貼付から長時間経過した後でも可能である。
【0084】
また、粘着シート7,7Aを被着体に貼付した後に、被着体からガスが発生したとしても、そのガスは粘着シート7,7Aの貫通孔5から基材2,2A表面の外側に抜けるため、粘着シート7,7Aにブリスターが生じることが防止される。
【0085】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0087】
〔実施例1〕
塩化ビニル樹脂100重量部と、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系)2.5重量部と、ポリエステル系可塑剤(旭電化工業社製,アデカサイザーPN260)25重量部と、フタル酸エステル系可塑剤(チッソ社製,DOP)10重量部と、着色剤(大日精化工業社製,VTSK9311ブラック)20重量部と、熱安定剤(Ba/Zn系)3重量部と、溶剤(ブチルセロソルブ)25重量部と、溶剤(ゴードー溶剤社製,スーパーゾール#1500)25重量部と、発泡剤(アゾジカルボンアミド,永和化成工業社製,FE−788,粒径:約10μm)6重量部とを混合し、基材の塗布剤(粘度:4000mPa・s)とした。なお、塗布剤の粘度は、B型粘度計6rpmで測定した値である(以下同じ)。
【0088】
工程材料として、片面を剥離処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製,U4Z−50,厚さ:50μm)を用意した。その工程材料の剥離処理面に、上記基材の塗布剤を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、140℃で1分間、さらに190℃で2分間乾燥させて黒色不透明の基材を形成した。このとき、基材には、基材表面側(工程材料側)の直径10〜40μm、基材裏面側の直径10〜200μmの貫通孔が、約40,000個/100cmの孔密度で形成された。なお、貫通孔の直径は、走査型電子顕微鏡(日立製作所社製,S−2360N形)を使用して測定した(以下同じ)。
【0089】
アクリル系溶剤型粘着剤(リンテック社製,PK)の塗布剤(粘度:2000mPa・s)を、粘着剤層の乾燥後の厚さが約15μmになるように、ナイフコーターにより上記基材の裏面(工程材料のない側の面)に塗布して粘着剤層を形成し、90℃で1分間加熱して粘着剤層を乾燥させた。この結果、粘着剤層には、直径10〜250μmの貫通孔が約40,000個/100cmの孔密度で形成された。
【0090】
そして、上記粘着剤層に、ポリエチレンテレフタレートシートの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離材(リンテック社製,PET3811)の剥離処理面を重ねて貼合し、これを粘着シートとした。
【0091】
〔実施例2〕
ポリカーボネート系ウレタン樹脂(大日精化工業社製,レザミン8820)100重量部と、着色剤(大日精化工業社製,VTSK9311ブラック)20重量部と、発泡剤(アゾジカルボンアミド,永和化成工業社製,FE−788,粒径:約10μm)6重量部とを混合し、基材の塗布剤(粘度:4000mPa・s)とした。
【0092】
実施例1と同じ工程材料の剥離処理面に、上記基材の塗布剤を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、130℃で2分間乾燥させて黒色不透明の基材を形成した。このとき、基材には、基材表面側(工程材料側)の直径10〜40μm、基材裏面側の直径30〜300μmの貫通孔が、約20,000個/100cmの孔密度で形成された。
【0093】
次いで、プライマーとしてのポリウレタン樹脂(第一工業製薬社製,スーパーフレックス107M)100重量部と、イソプロピルアルコールおよび水を重量比70:100で混合した溶媒170重量部とを混合したプライマーの塗布剤(粘度:20mPa・s)を、乾燥後の厚さが約1μmになるように、ナイフコーターにより上記基材の裏面に塗布してプライマー層を形成し、60℃で1分間加熱してプライマー層を乾燥させた。この結果、プライマー層には、直径30〜300μmの貫通孔が約20,000個/100cmの孔密度で形成された。
【0094】
実施例1と同じアクリル系溶剤型粘着剤を、粘着剤層の乾燥後の厚さが約15μmになるように、ナイフコーターにより上記プライマー層上に塗布して粘着剤層を形成し、90℃で1分間加熱して粘着剤層を乾燥させた。この結果、粘着剤層には、直径20〜350μmの貫通孔が約20,000個/100cmの孔密度で形成された。
【0095】
そして、上記粘着剤層に、実施例1と同じ剥離材の剥離処理面を重ねて貼合し、これを粘着シートとした。
【0096】
〔実施例3〕
発泡剤を添加しない以外、実施例1と同様にして基材の塗布剤を調製し、実施例1と同じ工程材料の剥離処理面に、上記基材の塗布剤を乾燥後の厚さが50μmになるようにナイフコーターによって塗布し、140℃で1分間、さらに190℃で2分間乾燥させて黒色不透明の基材を形成した。
【0097】
得られた積層体(工程材料+基材)に対し、基材裏面側(工程材料のない側)からCOレーザを照射して、深さ52〜70μm、基材表面側(工程材料側)の直径が約30μm、基材裏面側の直径が約70μmの貫通孔を2500個/100cmの孔密度で形成した。
【0098】
実施例1と同じアクリル系溶剤型粘着剤を、粘着剤層の乾燥後の厚さが約15μmになるように、ナイフコーターにより上記基材の裏面に塗布して粘着剤層を形成し、90℃で1分間加熱して粘着剤層を乾燥させた。この結果、粘着剤層には、直径60〜150μmの貫通孔が約2500個/100cmの孔密度で形成された。
【0099】
そして、上記粘着剤層に、実施例1と同じ剥離材の剥離処理面を重ねて貼合し、これを粘着シートとした。
【0100】
〔実施例4〕
基材としての黒色不透明の塩化ビニルフィルム(リンテック社製,FP M5071クロ,厚さ:50μm)に対してCOレーザを照射して、直径30〜40μmの貫通孔を2500個/100cmの孔密度で形成した。その基材の表面側に、再剥離性の保護シート(パナック社製,HT25SCBA,厚さ:28μm)を積層した。
【0101】
実施例1と同じアクリル系溶剤型粘着剤を、粘着剤層の乾燥後の厚さが約15μmになるように、ナイフコーターにより上記基材の裏面に塗布して粘着剤層を形成し、90℃で1分間加熱して粘着剤層を乾燥させた。この結果、粘着剤層には、直径35〜80μmの貫通孔が約2500個/100cmの孔密度で形成された。
【0102】
そして、上記粘着剤層に、実施例1と同じ剥離材の剥離処理面を重ねて貼合し、これを粘着シートとした。
【0103】
〔比較例1〕
実施例1で使用した基材の塗布剤に発泡剤を添加しない以外、実施例1と同様にして基材を形成するとともに粘着シートを作製した。この粘着シートにおける粘着剤層には、貫通孔は形成されなかった。
【0104】
〔比較例2〕
実施例4で使用した基材に貫通孔を形成しない以外、実施例4と同様にして粘着シートを作製した。この粘着シートにおける粘着剤層には、貫通孔は形成されなかった。
【0105】
〔試験例〕
実施例および比較例で得られた粘着シートについて、以下のようにして空気溜まり消失性試験を行った。
【0106】
空気溜まり消失性試験:50mm×50mmに裁断し、工程材料または保護シートおよび剥離材を剥した粘着シートを、直径15mm、最大深さ1mmの部分球面形の窪みを有する70mm×70mmのメラミン塗装板に貼付し(窪みと粘着シートとの間には空気溜りが存在する)、その粘着シートをスキージにより圧着し、空気溜まりが除去できるか否かを確認した。その結果、粘着シートがメラミン塗装板の凹部に追従して空気溜まりが除去されたものを○、粘着シートがメラミン塗装板の凹部に追従せずに空気溜まりが除去されなかったもの(空気溜まりが小さくても残存したものを含む)を×で表す。
【0107】
各試験の結果を表1に示す。
【表1】

【0108】
表1から明らかなように、実施例で得られた粘着シートは、空気溜まりが容易に除去され得た。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、空気溜まりやブリスターが発生し易い粘着シートであって、良好な外観および十分な接着力を必要とする粘着シートに好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る粘着シートの製造方法を示す断面図である。
【符号の説明】
【0111】
1…工程材料(ガスバリア材)
2,2A…基材
3…プライマー層
4…粘着剤層
21,31,41,5…貫通孔
6…剥離材
7,7A…粘着シート
8…保護シート(ガスバリア材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と前記基材に積層された粘着剤層とを備え、前記基材および粘着剤層を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が複数形成されている粘着シートであって、
前記粘着剤層の貫通孔は、前記基材の貫通孔からの気体が前記粘着剤層を通り抜けることによって所定の径を有するように形成されたものであることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記基材および粘着剤層における前記貫通孔の直径は0.1〜1000μmであり、孔密度は30〜50,000個/100cmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とからなり、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されている積層体を作製し、
前記積層体における基材の裏面側に粘着剤層を形成するとともに、前記基材の貫通孔からの気体を前記粘着剤層の外側に移動させることにより、前記粘着剤層を厚さ方向に貫通する貫通孔を、所定の径を有するように前記粘着剤層に複数形成する
ことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項4】
基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とからなり、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されている積層体を作製し、
前記積層体における基材の裏面側に、前記基材の貫通孔に対応する位置に貫通孔を有するまたは有しないプライマー層を形成し、
前記プライマー層上に粘着剤層を形成するとともに、前記基材の貫通孔からの気体を前記粘着剤層の外側に移動させることにより、前記粘着剤層を厚さ方向に貫通する貫通孔を、所定の径を有するように前記粘着剤層に複数形成する
ことを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項5】
前記基材の貫通孔の直径を0.1〜1000μmとし、孔密度を30〜50,000個/100cmとすることを特徴とする請求項3または4に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項6】
基材を構成する樹脂を含有する樹脂組成物をガスバリア材上に塗布するとともに、前記樹脂組成物を発泡させ、製膜される基材に発泡による貫通孔を形成することにより、前記積層体を作製することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂組成物は、発泡剤を含有することを特徴とする請求項6に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項8】
ガスバリア材を積層した基材に対して穴開け加工を施し、前記基材は貫通するが前記ガスバリア材は貫通しない穴を形成することにより、前記積層体を作製することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
【請求項9】
基材に対して穴開け加工を施して前記基材を貫通する貫通孔を形成し、次いで前記貫通孔を形成した基材とガスバリア材とを積層することにより、前記積層体を作製することを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の粘着シートの製造方法。
【請求項10】
前記穴開け加工がレーザ加工であることを特徴とする請求項8または9に記載の粘着シートの製造方法。
【請求項11】
基材と前記基材の表面側に積層されたガスバリア材とを備え、前記基材を貫通するまたは貫通し得る貫通孔が前記基材に複数形成されていることを特徴とする粘着シート製造用の積層体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−1951(P2006−1951A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−176393(P2004−176393)
【出願日】平成16年6月15日(2004.6.15)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】