説明

粘着シート及びそれを用いた電子部品製造方法。

【課題】粘着シート及びそれを用いた電子部品製造方法を提供する。
【解決手段】基材層の片面に有機バインダー、帯電防止剤、及び摩擦低減剤を含有する帯電防止層を有し、他方の面に粘着層を有する粘着シート及びそれを用いた電子部品製造方法。粘着シートは摩擦帯電を抑制し、滑り性に優れ、粘着テープを充分かつ均一にエキスパンドできるなどの特徴を有するため、半導体ウエハ又は回路基板材上に回路パターンを形成してなる電子部品集合体をダイシングして、電子部品とする電子部品製造方法に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シート及びそれを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子部品の製造において、半導体ウエハ又は回路基板材上等に回路パターンを形成してなる、通称「ワーク」と呼ばれる電子部品集合体を固定し、ダイヤモンドなどの砥粒を備えたダイシングブレードでチップごとにダイシングされ、洗浄、乾燥後、エキスパンドし、チップごとにピックアップする方法が知られている(特許文献1〜4参照)。
【0003】
電子部品集合体としては、単に半導体ウエハ又は回路基板材上に回路パターンを形成してなる電子部品集合体だけでなく、例えばエポキシ樹脂で封止された封止樹脂パッケージ、具体的にはボール・グリッド・アレイ(BGA)、チップ・サイズ・パッケージ(CSP)、スタック・メモリー・モジュール、システム・オン・モジュール等が用いられることがある。
【0004】
近年、PDA、携帯電話、及びフラッシュメモリー等の小型電子機器の普及により、チップサイズが微小化する傾向にあり、ダイシンング用の粘着シートには摩擦帯電を抑制し、滑り性に優れ、粘着テープを充分かつ均一にエキスパンドできることが求められていた。
【0005】
【特許文献1】特開平07−026223公報
【特許文献2】特開平08−215932公報
【特許文献3】特開平09−007976号公報
【特許文献4】特開2001−152106公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は粘着シート及びそれを用いた電子部品製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は基材層の片面に粘着層を有し、他方の面に帯電防止剤及び摩擦低減剤を含有する帯電防止層を有する粘着シート及びそれを用いた電子部品製造方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の帯電防止層は摩擦帯電を抑制し、滑り性に優れ、粘着テープを充分かつ均一にエキスパンドできるという効果を奏する。
【0009】
本明細書において(メタ)アクリレートとはアクリレート及びメタアクリレートの総称を意味する。同様に(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物も「メタ」を有する化合物と、持たない化合物の総称である。
【0010】
本明細書において、単量体単位とは単量体に由来する構造単位を意味する。本明細書の部及び%は、特に記載がない限り質量基準とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(摩擦低減剤)
粘着シートは基材層の片面に粘着層を有し、他方の面に摩擦低減剤を含有する帯電防止層を有する。
【0012】
摩擦低減剤は特に限定されないが、粘着シートとエキスパンド装置の摩擦係数を低下させる物質であり、例えばシリコーン樹脂、及びフッ素樹脂、(変性)シリコーン油等が挙げられる。これらの摩擦低減剤は複数の成分の混合物として使用してもよい。特にシリコーン系グラフト共重合体は帯電防止層との相溶性が良く、帯電防止性とエキスパンド性のバランスが図れるため好ましい。
【0013】
シリコーン系グラフト共重合体としては、シリコーン分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基またはスチリル基等のビニル基を有する単量体(以下、「シリコーン系単量体」という)と、(メタ)アクリル系単量体、スチレン等のビニル基を有する単量体等を重合してなるビニル重合体等が挙げられる(例えば特開2000-080135号公報等参照)。
【0014】
シリコーン系グラフト共重合体に用いる(メタ)アクリル系単量体としては、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸等が挙げられ、アルキル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0015】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、及びイソボルニル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
変性ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、エチレンオキシド変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート及びラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
シリコーン系単量体と他のビニル基を有する単量体との割合は特に限定されないが、シリコーン系グラフト共重合体100質量部中、シリコーン系単量体15〜50質量部とすることが好ましい。シリコーン系単量体含有量が少ないと、エキスパンド時に粘着シートが充分かつ均一に伸びない場合があり、過剰だとコスト増の原因となる場合がある。
【0019】
摩擦低減剤の配合量は特に限定されないが、有機バインダー100質量部に対して、0.1〜30質量部とすることが好ましく、5〜20質量部とすることがより好ましい。摩擦低減剤の配合量が少ないと粘着シートを充分にエキスパンドすることができず、過剰に添加すると帯電防止効果が低下することがある。
【0020】
(帯電防止剤)
帯電防止剤は特に限定されないが、四級アミン塩単量体等が挙げられる。
【0021】
四級アミン塩単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、及びp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物等が挙げられ、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好適に用いられる。
【0022】
帯電防止剤の配合量は特に限定されないが、有機バインダー100質量部に対して、0.01〜30質量部とすることが好ましい。帯電防止剤の配合量が不足すると帯電防止効果が発揮されず、過剰だと基材層と帯電防止層の密着性が低下する場合がある。
【0023】
(有機バインダー)
有機バインダーは特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ塩化ビニル系、メラニン系、ポリイミド系、及びシリコーン系等が挙げられる。
【0024】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体とは、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を有するビニル化合物の重合体である。(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、官能基含有単量体、スチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バーサテイク酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等に由来する単量体単位を有しても良い。
【0025】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体として、(メタ)アクリル酸エステル単量体と官能基含有単量体の共重合体を好適に使用することが出来る。
【0026】
官能基含有単量体とは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、スルホン酸基、スルファミン酸基、(亜)リン酸エステル基等の官能基を有する単量体である。
【0027】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(1)帯電防止剤や摩擦低減剤との相溶性が良い、 (2)帯電防止層と基材層の密着性を強化することができるなどの理由から、有機バインダーとして好適に用いられる。
【0028】
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル単量体は複数の成分を併用してもよい。
【0029】
ヒドロキシル基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0030】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、アクリルアミドN−グリコール酸、及びケイ皮酸等が挙げられる。
【0031】
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル等が挙げられる。
【0032】
アミド基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。アミノ基を有する単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどがある。メチロール基を有する単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミド等が挙げられる。官能基含有単量体は複数の成分を併用してもよい。
【0033】
(メタ)アクリル酸エステル系重合体には、上記以外の単量体として、例えばスチレン、ビニルトルエン、酢酸アリル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、バーサテイク酸ビニル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等を適宜使用することができる。
【0034】
帯電防止層中に、各種添加剤、例えば硬化剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤、無機潤滑材等を適宜添加してもよい。
【0035】
帯電防止層を形成する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで基材層上に直接塗布する方法や、凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で印刷する方法等が挙げられる。
【0036】
形成された帯電防止層の厚さは、乾燥後の厚みで0.1〜20μmであることが好ましい。薄いと帯電防止効果が発揮されず、過剰に塗布しても更なる効果が期待できず、不経済である。
【0037】
基材層の厚み及び素材は特に限定されない。基材層の材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エチレンビニルアルコール、ポリウレタン、アイオノマー、ポリアミド、ポリイミド、及びPET等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は複数の樹脂の溶融混合物、共重合体、及び多層シートであってもよい。基材層は複数の樹脂層を有してもよい。
【0038】
基材層は、コロナ放電やアンカーコート等の処理を施して、粘着剤層や帯電防止層との密着性を向上させることができる。
【0039】
(粘着剤)
粘着剤は特に限定されないが、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することができる。
【0040】
粘着剤中に、各種添加剤、例えば粘着付与剤、硬化剤、可塑剤、光重合性化合物、光開始剤、発泡剤、重合禁止剤、老化防止剤、充填剤等を適宜添加してもよい。
【0041】
粘着剤層を形成する方法は特に限定されず、例えば、グラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、ナイフコーター、又はロールコーター等のコーターで基材層上に直接塗布する方法や、凸板印刷、凹板印刷、平板印刷、フレキソ印刷、オフセット印刷、又はスクリーン印刷等で印刷する方法等が挙げられる。粘着剤層の厚みは特に限定されず、乾燥後の厚みで1〜100μm程度のものが好適に用いられる。
【0042】
粘着シートは、電子部品の製造工程である、ダイシング工程、バックグラインド工程において使用可能であり、ダイシング工程において電子部品集合体の貼着用に好適に用いられる。
【実施例】
【0043】
(使用材料)
有機バインダーA:メチルメタクリレートとn−ブチルメタクリレートの共重合体、市販品。
有機バインダーB:ポリエステル系樹脂バインダー(日本合成化学社製ポリエスターWR−961)。
帯電防止剤:ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物(四級アミン系ビニル単量体)、市販品。
摩擦低減剤A:シリコーン分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系オリゴマ系単位30質量部を含有する、及びアクリル系ビニル単位70質量部を重合してなるシリコーン系グラフト共重合体、市販品。
摩擦低減剤B:シリコーン油(東芝シリコーン社製TSF451―1M)。
アクリル系粘着剤:2−エチルヘキシルアクリレート96質量%及び2−ヒドロキシエチルアクリレート4質量%の共重合体、市販品。
硬化剤:トルエンジイソシアネート、市販品。
基材:厚さ100μmのポリエチレン製シート、市販品。
【0044】
実施例1の粘着シートは下記の処方により製造した。
(帯電防止層)
有機バインダーA100質量部、帯電防止剤10質量部、摩擦低減剤A10質量部を混合した溶液をグラビアコーターで塗布し、厚さ1μmの帯電防止層を形成した。
【0045】
(粘着剤)
粘着剤層はアクリル系粘着剤を100質量部、硬化剤3質量部を配合したものを用いた。
【0046】
(粘着シートの製造)
粘着シートは基材層の片面に厚さ1μmの帯電防止層を設け、その裏面に厚さ20μmの粘着剤層を塗布した。
【0047】
(実施例2〜5)
実施例2:実施例1の処方において、摩擦低減剤Aの配合量を0.05質量部にした。
実施例3:実施例1の処方において、帯電防止層における帯電防止剤の配合量を、有機バインダー100質量部に対して0.005質量部に変更した。
実施例4:実施例1の処方において、摩擦低減剤Aを摩擦低減剤Bに変更した。
実施例5:実施例1の処方において、有機バインダーAを有機バインダーBにした。
【0048】
(比較例)
比較例1:実施例1の処方において、摩擦低減剤Aを配合しなかったものである。
比較例2:実施例1の処方において、帯電防止剤を配合しなかったものである。
【0049】
(評価方法)
チップ間隔、伸びの均一性、エキスパンド性:回路パターンを形成した5インチのシリコンウェハに粘着シートを気泡が入らないように貼り付け、10分放置後に5mm□にダイシングした。エキスパンド装置(HUGLE社製ELECTRONICS HS−1800)により、引き落とし量20mm、引き落とし速度20mm/秒、加温条件40℃×1分で十分にエキスパンドした後、粘着シートの中央部と端部それぞれ任意の5カ所でMD方向とTD方向それぞれのチップ間隔を測定した。
◎:チップ間隔が800μm以上。
○:チップ間隔が500μm以上。
×:チップ間隔が500μm未満。
【0050】
動摩擦係数:粘着シートの帯電防止層の動摩擦係数を、JIS K 7125に準じて測定した。
温度:23℃
湿度:50%
使用機器:摩擦測定器TR−2(東洋精機製作所製)
【0051】
帯電防止性:粘着シートの帯電防止層の表面抵抗率を、JIS K 6911に準じて測定した。
温度:23℃
湿度:50%
使用機器:エレクトロメーター(アドバンテスト社R8340A)及びレジスティビティ・チャンバ(アドバンテスト社R12704A)。
【0052】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の粘着シートは摩擦帯電を抑制し、滑り性に優れ、粘着テープを充分かつ均一にエキスパンドできる等の特徴を有するため、半導体ウエハ又は回路基板材上に回路パターンを形成してなる電子部品集合体をダイシングして電子部品とする電子部品製造方法に適する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の片面に有機バインダー、帯電防止剤、及び摩擦低減剤を含有する帯電防止層を有し、他方の面に粘着剤層を有する粘着シート。
【請求項2】
帯電防止剤が四級アミン塩単量体である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
摩擦低減剤が有機バインダー100質量部に対して、0.1〜30質量部である請求項1又は請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
摩擦低減剤がシリコーン系グラフト共重合体である請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項5】
四級アミン塩単量体が、有機バインダー100質量部に対して、0.01〜30質量部である請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項6】
有機バインダーが、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体である請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の粘着シートを用いた電子部品製造方法。


【公開番号】特開2007−99984(P2007−99984A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293686(P2005−293686)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】