説明

粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法

【課題】 周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板が損傷するのを防ぐことのできる粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法を提供する。
【解決手段】 微粘着性の粘着シート20と、半導体用サポート板2に接着層3を介して接着され、周縁部4以外の領域に複数のチップ5を備えた半導体ウェーハ1とを含み、粘着シート20に半導体ウェーハ1のチップ5を対向させて粘着し、半導体ウェーハ1から半導体用サポート板2を剥離し、半導体ウェーハ1の残留した接着層3に粘着テープ12を粘着して剥離することで、接着層3を除去する取り扱い方法で、粘着シート20をシリコーンゴム層21とシリコーンゲル層22との積層により形成して粘着シート20の表面にシリコーンゲル層22を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップオンウェーハに代表される半導体ウェーハ等の取り扱いに使用される粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハには様々な種類があるが、近年、半導体の三次元積層化技術に資するチップオンウェーハが注目されている。この種の半導体ウェーハ1は、図4や図5に示すように、半導体用サポート板2上に接着層3で接着されて強度や剛性が確保され、周縁部(周縁から半径内方向に2.5〜3mm程度の部分)4以外の領域に複数のチップ5が並べて実装される。複数のチップ5が並べて実装されたら、フラックスが印刷され、複数のハンダボールが搭載されてハンダリフロー装置に供されるが、製造作業の便宜を図る観点から、フラックスの印刷前に保持具である粘着シート11に移し替えられる(特許文献1、2参照)。
【0003】
この場合の取り扱い作業は、先ず、シート用支持板10に粘着した単層の粘着シート11上に薄い半導体ウェーハ1の複数のチップ5を対向させて粘着(図6参照)し、半導体ウェーハ1から半導体用サポート板2を剥離する。この際、半導体ウェーハ1は、粘着シート11に複数のチップ5が粘着するものの、粘着シート11に不要な周縁部4が隙間をおいて対向する。また、接着層3は、半導体用サポート板2の剥離にかかわらず、少なくともその大部分が半導体ウェーハ1に残留する。
【0004】
半導体ウェーハ1から半導体用サポート板2を剥離したら、半導体ウェーハ1の残留した接着層3上に半導体ウェーハ1に略対応する大きさの粘着テープ12を粘着(図7参照)し、この粘着テープ12をその周縁の端部、すなわち図8に示す剥離開始箇所13から引き上げて剥離することにより、半導体ウェーハ1に残留した接着層3を粘着テープ12と共に除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006‐32488号公報
【特許文献2】特開2002‐324767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来における半導体ウェーハ1の取り扱いは、以上のようになされ、粘着シート11に薄い半導体ウェーハ1の不要な周縁部4が隙間をおいて単に対向し、粘着しない非粘着の浮いたままの状態なので、接着層3に粘着した粘着テープ12を引き上げて剥離しようとすると、粘着テープ12の剥離開始箇所13における半導体ウェーハ1の周縁部4も共に引き上げられ、その結果、薄い半導体ウェーハ1にストレスが作用して図8に示すクラック6が生じ、後の製造工程に重大な支障を来たすという問題がある。
【0007】
本発明は上記に鑑みなされたもので、周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板が損傷するのを防ぐことのできる粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明においては上記課題を解決するため、周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板の凹凸面に粘着する粘着シートであって、
エラストマー層と変形可能な微粘着性のゲル層とを積層構造に備え、表面にゲル層を配置して基板の凹凸面に着脱自在に粘着するようにしたことを特徴としている。
なお、エラストマー層をシリコーンゴム層とし、ゲル層をシリコーンゲル層とすることができる。
【0009】
また、本発明においては上記課題を解決するため、微粘着性の粘着シートと、半導体用サポート板に接着層を介して接着され、周縁部以外の領域に凹凸を備えた半導体ウェーハとを含み、粘着シートと半導体ウェーハの凹凸とを対向させて粘着し、半導体ウェーハから半導体用サポート板を取り外し、半導体ウェーハに残留した接着層に粘着テープを粘着して剥離することにより、半導体ウェーハから残留した接着層を除去する半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
粘着シートをエラストマー層と変形可能なゲル層との積層により形成して粘着シートの表面にゲル層を配置し、粘着シートと半導体ウェーハの凹凸と粘着する際、粘着シートのゲル層に少なくとも粘着テープの剥離開始箇所における半導体ウェーハの周縁部を粘着することを特徴としている。
【0010】
なお、粘着シートのエラストマー層をシリコーンゴム層としてシート用支持板に粘着し、ゲル層をシリコーンゲル層とすることができる。
また、半導体ウェーハから半導体用サポート板をレーザ照射により取り外すことができる。
【0011】
ここで、特許請求の範囲における周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板には、少なくとも回路パターンや電子部品等を備えた配線基板や半導体ウェーハ等が含まれる。基板が半導体ウェーハの場合、少なくともφ100、150、200、300、450mmのチップオンウェーハが該当する。また、粘着シートのエラストマー層とゲル層とは、積層構造であれば、枚数を特に問うものではなく、二層構造、三層構造、多層構造等とすることができる。半導体用サポート板やシート用支持板は、ガラス製、樹脂製、金属製を特に問うものではない。
【0012】
本発明によれば、粘着シートのゲル層に基板の凹凸面を粘着すると、ゲル層が基板との接触に伴い、基板の凹凸面の形状に追従して変形し、凹凸を損なうことなく、基板の凹凸面に略隙間なく接触する。したがって、基板の周縁部等の自由な動きや反り等を規制することができる。
【0013】
また、本発明によれば、粘着シートのゲル層に半導体ウェーハの凹凸を対向させて粘着すると、ゲル層が半導体ウェーハとの接触に伴いその対向面の形状に追従して変形し、少なくとも粘着テープの剥離開始箇所における半導体ウェーハの周縁部に粘着する。このゲル層の変形した粘着により、半導体ウェーハの周縁部の自由な動きを規制することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板が損傷するのを有効に防ぐことができるという効果がある。
また、粘着シートのゲル層を柔らかいシリコーンゲル層とすれば、ゲル層にシリコーンの耐熱性や自己吸着性等を付与することができる他、優れた形状追従性をも得ることができる。
【0015】
また、本発明によれば、接着層に粘着した粘着テープを剥離する場合に、粘着テープの剥離開始箇所における半導体ウェーハの周縁部が引き上げられ、半導体ウェーハにクラックが生じるのを有効に防ぐことができるという効果がある。
さらに、粘着シートのエラストマー層をシリコーンゴム層としてシート用支持板に粘着すれば、エラストマー層に優れた耐熱性、耐候性、難燃性等を付与することができ、しかも、粘着シートの撓み等を防いで移し替え作業の便宜を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態におけるシート用支持板と粘着シートとを模式的に示す斜視説明図である。
【図2】本発明に係る粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における粘着シートに半導体ウェーハの複数のチップを粘着した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図3】本発明に係る粘着シート及び半導体ウェーハの取り扱い方法の実施形態における半導体ウェーハの接着層に粘着テープを粘着した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図4】半導体ウェーハとその複数のチップを模式的に示す説明図である。
【図5】半導体ウェーハが半導体用サポート板に接着された状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図6】粘着シートに半導体ウェーハの複数のチップを粘着した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図7】半導体ウェーハの接着層に粘着テープを粘着した状態を模式的に示す部分断面説明図である。
【図8】半導体ウェーハにクラックが生じた状態を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における半導体ウェーハの取り扱い方法は、図1ないし図3に示すように、剛性を有するシート用支持板10に粘着される積層構造の粘着シート20と、半導体用サポート板2に接着層3を介して接着され、複数のチップ5を備えた半導体ウェーハ1とを含み、チップ5を有する半導体ウェーハ1を半導体用サポート板2から粘着シート20に移し替える場合に、粘着シート20表面のシリコーンゲル層22に少なくとも粘着テープ12の剥離開始箇所13における半導体ウェーハ1の周縁部4を粘着するようにしている。
【0018】
シート用支持板10は、少なくとも半導体ウェーハ1の大きさ以上の大きさに形成される。このシート用支持板10は、例えば表裏両面がそれぞれ平坦な平面円形のガラス板からなり、表面に粘着シート20が着脱自在に粘着される。
半導体用サポート板2は、例えば表裏両面が平坦な平面矩形のガラス板からなり、表裏いずれかの片面に接着剤の塗布により薄い接着層3が積層形成されており、この接着層3に薄い半導体ウェーハ1が接着される。
【0019】
半導体ウェーハ1は、例えば薄く撓みやすいφ200mm、厚さ100μm以下のシリコンウェーハからなり、半導体用サポート板2の接着層3に接着されて強度や剛性が確保された後、不要な周縁部4を除く領域に複数のチップ5が縦横に並べて実装されることにより、チップオンウェーハとされる。
【0020】
粘着シート20は、図1に示すように、シート用支持板10の表面に粘着される薄いシリコーンゴム層21と、このシリコーンゴム層21の平坦な表面に積層して接着される変形可能で柔軟なシリコーンゲル層22とを一体的な二層構造に備え、表面にシリコーンゲル層22が配置されて半導体ウェーハ1のチップ5が実装されたチップ面7に着脱自在に粘着する。
【0021】
シリコーンゴム層21は、優れた可撓性、耐熱性、耐候性、難燃性、微粘着性等を有し、粘着シート20のハンドリング性に資するよう機能する。また、シリコーンゲル層22は、例えばシリコーンゴム層21の表面に未硬化のシリコーンゲルが塗布されて硬化することで平坦なシートに形成され、シリコーンの耐熱性や自己吸着性等を有する他、優れた形状追従性を発揮する。
【0022】
上記において、チップ5を有する半導体ウェーハ1を半導体用サポート板2から粘着シート20に移し替える場合には、先ず、シート用支持板10に粘着した粘着シート20の微粘着性のシリコーンゲル層22上に薄い半導体ウェーハ1の複数のチップ5を対向させてやや強く粘着(図2参照)し、半導体ウェーハ1から半導体用サポート板2を剥離して接着層3を露出させる。
【0023】
この際、シリコーンゲル層22は、図2に示すように、半導体ウェーハ1の圧接に伴いそのチップ面7の形状に追従して凹凸に変形し、粘着テープ12の剥離開始箇所13における半導体ウェーハ1の周縁部4や他の周縁部4に略隙間なく粘着し、半導体ウェーハ1の周縁部4の自由な動きを予め規制する。また、半導体用サポート板2の剥離方法は、特に限定されるものではないが、例えばレーザ照射法を採用すれば、半導体用サポート板2を適切、かつ簡単に剥離することができる。
【0024】
半導体ウェーハ1から半導体用サポート板2を剥離したら、半導体ウェーハ1の残留した接着層3上に半導体ウェーハ1のサイズ以上、好ましくは半導体ウェーハ1のサイズよりもやや大き目の粘着テープ12を粘着し、この粘着テープ12をその周縁の端部、すなわち剥離開始箇所13から徐々に引き上げて剥離(図3参照)すれば、半導体ウェーハ1に残留した接着層3を粘着テープ12と共に除去することができる。
【0025】
粘着テープ12としては、例えばポリエチレンテレフタレート、セロファン、塩化ビニル樹脂等からなるフィルムの片面にアクリル系、ウレタン系、シリコーン系、合成ゴム系、天然ゴム系、あるいはこれらの混合系の粘着剤が積層された市販のタイプを使用することができるが、残留した接着層3の素材に応じて選択すれば良い。接着層3の除去された半導体ウェーハ1は、その後、フラックスが印刷され、複数のハンダボールが搭載されてハンダリフロー装置に供されることとなる。
【0026】
上記によれば、粘着テープ12の剥離開始箇所13に該当する半導体ウェーハ1の周縁部4と粘着シート20のシリコーンゲル層22とを粘着して一体化するので、粘着テープ12を引き上げて剥離する際、粘着テープ12の剥離開始箇所13における半導体ウェーハ1の周縁部4が共に引き上げられることがない。したがって、薄い半導体ウェーハ1にストレスが作用してクラック6が生じ、後の製造工程に重大な支障を来たすのを有効に抑制防止することができる。
【0027】
また、粘着シート20のゲル層としてシリコーンゲル層22を選択するので、シリコーンゴム層21に対する接着強度を向上させることができる。また、半導体ウェーハ1の全周縁部4にシリコーンゲル層22が略くまなく粘着するので、半導体ウェーハ1の姿勢が傾くことなく非常に安定する。したがって、移し替え作業時における半導体ウェーハ1の安全性等の向上が期待できる。さらに、シリコーンゲル層22が半導体ウェーハ1のチップ面7に追従して変形するので、チップ5の損傷を招くこともない。
【0028】
なお、上記実施形態の半導体用サポート板2やシート用支持板10は、平面矩形や円形でも良いが、何らこれに限定されるものではなく、平面多角形等としても良い。また、半導体用サポート板2は、半導体ウェーハ1とは別のシリコンウェーハ製の板としても良い。また、粘着シート20のシリコーンゲル層22に半導体ウェーハ1のチップ面7を対向させて粘着するのではなく、複数の電子部品を実装した配線基板やガラス基板等を粘着しても良い。
【0029】
また、上記実施形態では粘着シート20にシリコーンゴム層21を使用したが、自己粘着性を有するフッ素ゴム等のエラストマー層を用いることもできる。さらに、上記実施形態ではシリコーンゴム層21の表面に未硬化のシリコーンゲルを塗布して硬化させることで平坦なシリコーンゲル層22を形成したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、シリコーンゴム層21の表面に、硬化したシリコーンゲル層22を接着剤や接着層を介して積層接着することもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 半導体ウェーハ
2 半導体用サポート板
3 接着層
4 周縁部
5 チップ(凹凸)
6 クラック
7 チップ面(凹凸面)
10 シート用支持板
11 粘着シート
12 粘着テープ
13 剥離開始箇所
20 粘着シート
21 シリコーンゴム層(エラストマー層)
22 シリコーンゲル層(ゲル層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周縁部以外の領域に凹凸を備えた基板の凹凸面に粘着する粘着シートであって、エラストマー層と変形可能な微粘着性のゲル層とを積層構造に備え、表面にゲル層を配置して基板の凹凸面に着脱自在に粘着するようにしたことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
エラストマー層をシリコーンゴム層とし、ゲル層をシリコーンゲル層とした請求項1記載の粘着シート。
【請求項3】
微粘着性の粘着シートと、半導体用サポート板に接着層を介して接着され、周縁部以外の領域に凹凸を備えた半導体ウェーハとを含み、粘着シートと半導体ウェーハの凹凸とを対向させて粘着し、半導体ウェーハから半導体用サポート板を取り外し、半導体ウェーハに残留した接着層に粘着テープを粘着して剥離することにより、半導体ウェーハから残留した接着層を除去する半導体ウェーハの取り扱い方法であって、
粘着シートをエラストマー層と変形可能なゲル層との積層により形成して粘着シートの表面にゲル層を配置し、粘着シートと半導体ウェーハの凹凸と粘着する際、粘着シートのゲル層に少なくとも粘着テープの剥離開始箇所における半導体ウェーハの周縁部を粘着することを特徴とする半導体ウェーハの取り扱い方法。
【請求項4】
粘着シートのエラストマー層をシリコーンゴム層としてシート用支持板に粘着し、ゲル層をシリコーンゲル層とした請求項3記載の半導体ウェーハの取り扱い方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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