説明

粘着シート

【課題】偏光板や位相差板等の光学部材に適用した場合に、全光線透過率等といった光学的特性を十分に満たしつつ、応力緩和性、ひいては光漏れ防止性に優れるとともに、耐久性にも優れた粘着剤層を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】基材と、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、前記環状分子に1つ以上の反応性基を有し、かつ、前記直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるポリロタキサン(A)を含有する粘着剤組成物により形成される粘着剤層と、を有し、前記粘着剤層の破断伸度が300%以上であり、かつ、ヘイズ値が30%以下であり、前記粘着シートの、測定温度を80℃とした以外はJIS Z0237に準拠した保持力が、70,000秒後の前記粘着シートのずれ量として1000μm以下である粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途に適した、応力緩和性及び耐久性に優れる粘着剤層を有する粘着シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、液晶パネルにおいては、偏光板や位相差板をガラス基板等に接着するのに粘着剤組成物から形成された粘着剤層が使用されることが多い。しかし、偏光板や位相差板等の光学部材は熱等により収縮し易いため、熱履歴により収縮が生じ、その結果、該光学部材に積層されている粘着剤層がその収縮に追従できずに、界面で剥がれ(いわゆる浮き、剥がれ)を生じたり、光学部材の収縮時の応力に起因して光学部材の光学軸がずれることによる光漏れ(いわゆる白抜け)が生じるといった問題が指摘されている。
【0003】
これを防止するための方法としては、(1)粘着力が高く、かつ、形態安定性に優れた粘着剤層を偏光板等の光学部材に貼り合せることにより光学部材の収縮自体を抑えこむ方法、あるいは、(2)光学部材の収縮時の応力が小さい粘着剤層を用いる方法、が挙げられる。(1)の方法としては、特許文献1に示されているように貯蔵弾性率の高い粘着剤層を用いることが有効である。一方、(2)の方法としては、変形に柔軟に対応できる応力緩和性に優れた粘着剤層を用いることが有効である。しかし、従来、このような応力緩和性に優れた粘着剤層を形成しようとした場合、該粘着剤層中の架橋密度を極端に低くしたりする必要があった。そうすると粘着剤層自体の強度が低下し、耐久性が悪化するといった問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2〜4では、粘着剤層の架橋密度を極端に低くする代わりに可塑剤、流動パラフィン、ウレタンエラストマー等をアクリル系粘着剤に添加することにより、得られる粘着剤組成物を適度に柔らかくして粘着剤層に応力緩和性を付与し、それによって光漏れ防止性及び耐久性を得ようとしている。
【0005】
しかしながら、可塑剤または流動パラフィンを添加した粘着剤組成物により形成される粘着剤層においては、経時により可塑剤や流動パラフィンがブリードアウトしてしまい、液晶セルが汚染されるなど、様々な問題が生じていた。また、ウレタンエラストマーを添加した粘着剤組成物においては、その他の成分との相溶性の点からウレタンエラストマーの添加量が限られているため、応力緩和性の改善は不十分であり、また、アクリル系粘着剤とウレタンエラストマーとの相溶性によっては白濁等の問題が生じていた。このように、従来の技術では、光学部材用の粘着剤組成物から形成される粘着剤層の光漏れ防止性及び耐久性を根本的に改善することは困難であった。
【0006】
一方、特許文献5では、粘着剤に、ポリロタキサン、および所望によりイソシアナート系化合物を配合した粘着剤組成物が提案されている。
【特許文献1】特開2006−235568号公報
【特許文献2】特開平5−45517号公報
【特許文献3】特開平9−137143号公報
【特許文献4】特開2005−194366号公報
【特許文献5】特開2007−224133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記粘着剤組成物から形成される粘着剤層は、ポリロタキサンによって優れた応力緩和性を有するものの、光学部材用としては全光線透過率といった光学的特性や耐久性が不十分であった。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、偏光板や位相差板等の光学部材に適用した場合に、全光線透過率等といった光学的特性を十分に満たしつつ、応力緩和性、ひいては光漏れ防止性に優れるとともに、耐久性にも優れた粘着剤層を有する粘着シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、基材と、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、前記環状分子に1つ以上の反応性基を有し、かつ、前記直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるポリロタキサン(A)を含有する粘着剤組成物により形成される粘着剤層と、を有する粘着シートであって、前記粘着剤層の破断伸度が300%以上であり、かつ、ヘイズ値が30%以下であり、前記粘着シートの、測定温度を80℃とした以外はJIS Z0237に準拠した保持力が、70,000秒後の前記粘着シートのずれ量として1000μm以下であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0010】
上記発明(発明1)に係る粘着シートは、粘着剤層が上記ポリロタキサン(A)を含有するとともに、上記物性を満たすことで、偏光板や位相差板等の光学部材に適用した場合に、全光線透過率等といった光学的特性を十分に満たしつつ、応力緩和性、ひいては光漏れ防止性に優れるとともに、耐久性にも優れる。
【0011】
上記発明(発明1)において、前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを共重合することによって得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を含有することが好ましい(発明2)。
【0012】
上記発明(発明2)において、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、共重合体中の反応性基含有モノマーの割合が0.01〜15質量%となるように(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを共重合して得られる共重合体であることが好ましい(発明3)。
【0013】
上記発明(発明2,3)において、前記粘着剤組成物は、前記ポリロタキサン(A)が有する反応性基および前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が有する反応性基と反応可能な反応性基を有する架橋剤(C)をさらに含有することが好ましい(発明4)。
【0014】
上記発明(発明4)においては、前記ポリロタキサン(A)の反応性基に対する前記架橋剤(C)の反応性基の当量比が0.1〜5であり、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基に対する前記架橋剤(C)の反応性基の当量比が0.001〜2であることが好ましい(発明5)。
【0015】
上記発明(発明1〜5)においては、前記粘着剤層のゲル分率が20〜90%であることが好ましい(発明6)。
【0016】
上記発明(発明1〜6)においては、前記ポリロタキサン(A)の反応性基がヒドロキシ基、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基がヒドロキシ基、前記架橋剤(C)の反応性基がイソシアナート基であることが好ましい(発明7)。
【0017】
上記発明(発明1〜7)においては、前記基材が剥離シートからなってもよいし(発明8)、前記基材が光学部材からなってもよいし(発明9)、前記基材が偏光板又は位相差板からなってもよい(発明10)。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、偏光板や位相差板等の光学部材に適用した場合に、全光線透過率等といった光学的特性を十分に満たしつつ、応力緩和性、ひいては光漏れ防止性に優れるとともに、耐久性にも優れた粘着剤層を有する粘着シートが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、基材と、その基材上に粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層とを有しており、該粘着剤層の基材と接していない側の面は剥離シートを有していてもよいし、有していなくてもよい。なお、基材と粘着剤層との間には、他の層が介在していてもよい。
【0020】
上記粘着シートにおいては、
(1)粘着剤層の破断伸度が300%以上であり、
(2)粘着剤層のヘイズ値が30%以下であり、
(3)粘着シートの保持力が80℃、70,000秒後のずれ量として1000μm以下である
ことを要件とする。
【0021】
上記要件(1)は、応力緩和性に富む、いわゆる伸びる粘着剤層であることを示すものである。一方、上記要件(3)は、応力緩和性の乏しい、いわゆる硬い粘着剤層では満たすこととなるが、従来の応力緩和性に富む粘着剤層では、凝集破壊等により落下してしまうため、当該保持力(ずれ量)は測定不能となる。すなわち、従来の粘着剤層では、上記要件(1)及び(3)の両方を同時に満たす粘着剤層は存在しなかった。ここで上記要件(1)及び(3)の両方を同時に満たすということは、可動性を有するポリロタキサン(A)を架橋点とすることにより、ある一定量までは伸びるが、一定量まで伸びた後は、いわゆる硬い粘着剤層のような凝集力を有することを示す。
【0022】
上記要件(2)は、ポリロタキサン(A)と他の成分(特に後述する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B))との相溶化の性能を規定するものであり、本要件を満たすことによりポリロタキサン(A)が多すぎることによる粘着性能への悪影響を防止することができる。
【0023】
粘着シートが上記要件全てを満たすことで、該粘着シートを偏光板や位相差板等の光学部材に適用した場合に、該粘着シートは、全光線透過率等といった光学的特性を十分に満たしつつ、応力緩和性、ひいては光漏れ防止性に優れるとともに、耐久性にも優れるものとなる。
【0024】
(1)破断伸度
粘着剤層の破断伸度は300%以上であり、好ましくは500%以上である。粘着剤層の破断伸度が300%以上であると、該粘着剤層は、応力緩和性及び耐久性の両者に優れたものとなる。粘着剤層の破断伸度の測定方法は、後述する試験例に記載する通りである。
【0025】
(2)ヘイズ値
粘着剤層のヘイズ値は、ポリロタキサン(A)が他の成分(特に後述する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B))と相溶化している程度を示すものであり、ポリロタキサン(A)の割合が多すぎると高い値を示す傾向にある。本実施形態における粘着剤層のヘイズ値は、通常30%以下であり、好ましくは25%以下であり、特に好ましくは0〜6%である。
【0026】
粘着剤層のヘイズ値が30%を越えると、ポリロタキサン(A)の他の成分への相溶化が妨げられることにより粘着性能に悪影響を与え、粘着シートの耐久性が低下する場合がある。一方、粘着剤層のヘイズ値が30%以下であると、粘着シートが耐久性を備えるとともに、粘着剤層の透明度が高く、光学部材への適用に好適なものとなる。例えば、本粘着シートによって、高精細で視認性の高いディスプレイが得られる。なお、ヘイズ値が30%を超えると、粘着剤層が白濁することがあり、その場合には、ディスプレイの視認性を低下させることとなる。
【0027】
ここで、粘着剤層の全光線透過率は、良好な視認性を得る観点から70%以上であることが好ましく、特に85%以上であることが好ましい。粘着剤層がかかる物性を有することで、液晶パネル、液晶ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等用の光学部材として好適なものとなる。
【0028】
(3)保持力(ずれ量)
本粘着剤層は、十分な応力緩和性を有するにもかかわらず、測定温度80℃という過酷な条件においても落下しないことに最大の特徴を有している。この特徴を数値で表すと、粘着シートの保持力は、ずれ量として、1000μm以下であり、好ましくは800μm以下であり、特に好ましくは650μm以下である。また、ずれ量の下限値としては、ずれなくても構わないが、本粘着剤層においては応力緩和性が発現することにより、通常100μm以上であり、200μm以上であることが好ましい。ここで、保持力とは、測定温度を80℃とした以外はJIS Z0237に準拠した保持力であり、ずれ量は、70,000秒後の粘着シートのずれ量である。なお、測定温度を80℃としたのは、従来の応力緩和性に優れた粘着剤層(従来の応力緩和性に優れた粘着剤層では、落下してしまう)との相違が最も明確となるからである。
【0029】
粘着シートの保持力が、ずれ量として1000μm以下であると、該粘着シートは、耐久性に優れたものとなる。また、粘着シートの保持力が、ずれ量として100μm以上であると、該粘着シートは、応力緩和性に優れ、ひいては光漏れ防止性に優れたものとなる。
【0030】
粘着剤層及び粘着シートが上記の破断伸度および保持力を満たすために、粘着剤層を形成する粘着剤組成物は、
A.少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、環状分子が1つ以上の反応性基を有し、かつ、直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるポリロタキサン(A)
を必須成分とし、
B.(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを共重合することによって得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)、特に共重合体中の反応性基含有モノマー(該モノマー由来の構成単位)の割合が0.01〜15質量%となるように、(メタ)アクリル酸エステルと上記反応性基含有モノマーとを共重合することによって得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体
をさらに含有することが好ましく、
C.(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が有する反応性基およびポリロタキサン(A)が有する反応性基と反応可能な反応性基を有する架橋剤(C)
をさらに含有することが特に好ましい。以下、上記3成分(A)〜(C)を含有する粘着剤組成物を主体として説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0031】
ここで、ポリロタキサン(A)が有する反応性基をR、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が有する反応性基をR、架橋剤(C)が有する反応性基をRとする。
【0032】
上記粘着剤組成物は、図1に示すような、反応性基Rを有する少なくとも2つの環状分子Tの開口部に直鎖状分子Lが貫通し、その直鎖状分子Lの両末端にブロック基BLを有してなるポリロタキサン(A)と、反応性基Rを有する(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)と、反応性基Rおよび反応性基Rと反応し得る官能基Rを有する架橋剤(C)とを配合することにより得ることができる。
【0033】
この粘着剤組成物を用いることで、ポリロタキサン(A)の環状分子と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とが架橋剤(C)を介して間接的に結合してなる粘着剤層が得られる。かかる粘着剤層においては、環状分子Tがポリロタキサン(A)の直鎖状分子L上を自由に移動するため、粘着剤層が応力緩和性に富んだものとなる。
【0034】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中の反応性基Rを有する反応性基含有モノマー(該モノマー由来の構成単位)の割合は、0.01〜15質量%であることが好ましく、0.1〜10質量%であることがより好ましく、0.5〜5質量%であることが特に好ましい。反応性基含有モノマーの割合が0.01質量%未満の場合、ミクロに捉えて反応性基含有モノマーが全く導入されていない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が多く発生することにより、上記物性値を得られないおそれがある。また、反応性基含有モノマーの割合が15質量%を超える場合、ポリロタキサン(A)を介さず(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)同士が直接に結合することが多くなったり、架橋部分が密集することによりポリロタキサン(A)を介した可動性による応力緩和性を十分に得られないおそれがある。
【0035】
ポリロタキサン(A)の反応性基Rに対する架橋剤(C)の反応性基Rの当量比は、0.1〜5であることが好ましく、0.5〜2であることが特に好ましい。該当量比が0.1未満の場合、加熱等により架橋を行っても架橋されないポリロタキサン(A)が多く存在するため、耐熱環境下で未架橋のポリロタキサン(A)が遊離して、粘着剤層が白濁したり発泡を生じやすくなり、耐久性が低下する場合もある。一方、該当量比が5を超える場合、ポリロタキサン(A)の一つの環状分子Tの多数の反応性基Rに対して各々別の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が結合することにより、ポリロタキサン(A)全体として架橋点となるのではなく、環状分子Tそのものが架橋点となってしまい、架橋点の可動性が失われ、結果、形成される粘着剤層が応力緩和性の低いものとなり、光漏れ防止性や耐久性が低下する場合がある。
【0036】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基Rに対する架橋剤(C)の反応性基Rの当量比は、0.001〜2であることが好ましく、0.005〜1であることがより好ましく、0.1〜0.5であることが特に好ましい。該当量比が0.001未満の場合、加熱等により架橋を行っても架橋されない(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が多く存在するため、形成される粘着剤層が耐熱環境下で発泡を生じやすくなり、耐久性が低下する場合もある。一方、該当量比が2を超える場合、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)1分子中の多数の反応性基Rが各々多方向から架橋されることにより、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の可動性が制限され、結果、形成される粘着剤層が応力緩和性の低いものとなり、光漏れ防止性や耐久性が低下する場合がある。
【0037】
なお、ポリロタキサン(A)の反応性基Rおよび(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基Rの合計量に対する、架橋剤(C)の反応性基Rの当量比は、通常0.001〜2であり、好ましくは0.05〜1であり、特に好ましくは0.1〜0.5である。
【0038】
上記破断伸度と保持力を同時に満たすためには、ポリロタキサン(A)を含有する粘着剤組成物により粘着剤層を形成することが好ましいが、一方において、ポリロタキサン(A)がその他の成分との間で非相溶化して粘着性能に悪影響を与え、それにより耐久性を低下させている可能性があった。そこで、検討した結果、上記へイズ値を満たすことにより、ポリロタキサン(A)が過剰量存在することによるその他成分との間での非相溶化を有効に防止することにより、耐久性の低下を防げることを見出した。
【0039】
粘着剤組成物により形成される粘着剤層が、上記へイズ値を満たすためには、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対するポリロタキサン(A)の配合量を上記破断伸度および保持力を満たす限りにおいて低減することが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対するポリロタキサン(A)の配合量が多過ぎると非相溶化するおそれがあり、その場合には粘着性能に悪影響を与え、結果として、耐久性を低下させる原因となる。
【0040】
このような観点から(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対するポリロタキサン(A)の配合量は、質量比で0.000001〜10であることが好ましく、0.00001〜5であることがより好ましく、0.0001〜2であることが特に好ましい。
【0041】
上記粘着剤組成物の架橋後のゲル分率(該粘着剤組成物により形成される粘着剤層のゲル分率)は、20〜90%であることが好ましく、特に40〜79%であることが好ましく、さらには60〜75%であることが好ましい。ゲル分率が20%未満であると、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)及びポリロタキサン(A)の架橋が不十分となり、また、耐熱環境下で発泡が生じ易くなり、それらの結果、耐久性が低下する場合がある。一方、ゲル分率が90%を超えると、ポリロタキサン(A)に基づく架橋点の可動性が制約されることにより、応力緩和性が低下し、光漏れ防止性が悪化する場合がある。
【0042】
粘着剤組成物が上記条件を満たすことで、ポリロタキサン(A)の過剰な添加による光学的特性の低下を防止し、さらにポリロタキサン(A)の環状分子Tが、貫通している直鎖状分子L上を可動する程度の自由度を確保し、かつ、ポリロタキサン(A)と(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との架橋により適度な架橋密度を維持することができる。これにより、得られる粘着剤層は、全光線透過率等の光学的特性に優れるとともに、十分な強度と優れた応力緩和性を発現し、それにより耐久性及び光漏れ防止性に優れたものとなる。
【0043】
A.ポリロタキサン
上記ポリロタキサン(A)は、従来公知の方法(例えば特開2005−154675に記載の方法)によって得ることができる。
【0044】
ポリロタキサン(A)の直鎖状分子Lは、環状分子Tに包接され、共有結合等の化学結合でなく機械的な結合で一体化することができる分子または物質であって、直鎖状のものであれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子L上で環状分子Tが移動可能であれば、直鎖状分子Lは分岐鎖を有していてもよい。
【0045】
ポリロタキサン(A)の直鎖状分子Lとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリテトラヒドロフラン、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリエチレン、ポリプロピレン等が好ましく、これらの直鎖状分子Lは、粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0046】
ポリロタキサン(A)の直鎖状分子Lの数平均分子量は、3,000〜300,000であることが好ましく、特に10,000〜200,000であることが好ましく、さらには20,000〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が3,000未満であると、環状分子Tの直鎖状分子L上での移動量が小さくなり、粘着剤層の応力緩和性が十分に得られないおそれがある。また、数平均分子量が300,000を超えると、ポリロタキサン(A)の溶媒への溶解性や(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)との相溶性が悪くなるおそれがある。
【0047】
ポリロタキサン(A)の環状分子Tは、上記直鎖状分子Lと包接可能で、上記直鎖状分子L上で移動可能であれば、特に限定されない。なお、本明細書において、「環状分子」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子L上で移動可能であれば、環状分子Tは完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0048】
ポリロタキサン(A)の環状分子Tとしては、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン等の環状ポリマー、あるいは、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく挙げられる。上記環状ポリマーの具体例としては、クラウンエーテルまたはその誘導体、カリックスアレーンまたはその誘導体、シクロファンまたはその誘導体、クリプタンドまたはその誘導体等が挙げられる。
【0049】
環状分子Tとしては、上記のなかでも、比較的入手が容易であり、かつ、ブロック基BLの種類を多数選択できるため、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリンが好ましく、さらにα−シクロデキストリンが好ましい。これらの環状分子Tは、ポリロタキサン(A)中または粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0050】
環状分子Tとしてシクロデキストリンを使用する場合、該シクロデキストリンは、ポリロタキサン(B)の溶解性を向上させることのできる置換基が導入されたものであってもよい。好ましい置換基としては、例えば、アセチル基、アルキル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基等の他、ポリエステル鎖、オキシエチレン鎖、アルキル鎖、アクリル酸エステル鎖等が挙げられる。置換基の数平均分子量は、100〜10,000が好ましく、特に400〜2,000が好ましい。
【0051】
上記置換基のシクロデキストリンのヒドロキシ基への導入率(置換度)は、10〜90%であることが好ましく、特に30〜70%であることが好ましい。導入率が10%未満では、ポリロタキサン(B)の溶解性の向上が十分でなく、導入率が90%を超えると、ポリロタキサン(B)の反応性基Rの含有率が低くなり、ポリロタキサン(B)が上記共重合体(A)または架橋剤(C)と十分に反応できなくなるおそれがある。また、後述するように置換基に反応性基を有する場合であっても、導入率が90%を超えると立体障害の関係から導入量の制御が困難となるおそれがある。
【0052】
ポリロタキサン(B)の環状分子Tが有する反応性基Rは、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等が好ましく、粘着剤組成物が酸性側にもアルカリ側にも偏らず、反応により着色等が生じにくく、さらに結合の安定性に優れることから、特にヒドロキシ基が好ましい。これらの反応性基Rは、ポリロタキサン(B)中で2種以上混在していてもよい。なお、反応性基Rは環状分子Tに直接に結合していなくてもよい。すなわち、上記置換基を介して上記反応性基Rが存在していてもよい。さらには、反応性基Rを介して異なる2種類以上の置換基を結合し、そのうちのいずれかの置換基に反応性基Rを有していてもよい。このような態様をとることにより、環状分子Tからの距離を調節して環状分子Tとの立体障害を回避した上で反応性基Rを有する嵩高い置換基を導入したり、環状分子Tとの立体障害を回避した上で反応性基を起点として重合を行い、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、またはこれらのオリゴマー鎖を置換基とし、かつ、該置換基に反応性基Rを1つ以上有する置換基を導入することもできる。
【0053】
以上を具体的に説明すると、例えば、シクロデキストリンそのものに存在するヒドロキシ基は反応性基Rであるし、該ヒドロキシ基にヒドロキシプロピル基を付加した場合には、ヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基も反応性基Rに含まれる。さらには、該ヒドロキシプロピル基のヒドロキシ基を介してε−カプロラクトンの開環重合を行った場合、該開環重合により得られたポリエステル鎖の反対側末端にはヒドロキシ基が形成される。この場合、該ヒドロキシ基も反応性基Rに含まれる。
【0054】
なお、ポリロタキサン(B)の相溶性と反応性を両立する観点から、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、またはこれらのオリゴマー鎖を置換基とし、かつ、該置換基に反応性基を1つ以上有する態様の置換基が環状分子Tに導入されていることが特に好ましい。該置換基の導入率は、上記置換基の導入率で述べたとおりである。
【0055】
上記反応性基Rの環状分子Tへの導入率は、4〜90%であることが好ましく、特に20〜70%であることが好ましい。導入率が4%未満では、ポリロタキサン(A)が上記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)または架橋剤(C)と十分に反応できなくなるおそれがある。一方、導入率が90%を超えると、同一の環状分子Tにおいて多数の架橋が生じるため環状分子T自体が架橋点となり、ポリロタキサン(A)全体としての架橋点の効果を発揮できなくなり、結果、粘着剤層の十分な応力緩和性が確保できなくなるおそれがある。
【0056】
ポリロタキサン(A)のブロック基BLは、環状分子Tが直鎖状分子Lにより串刺し状になった形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
【0057】
具体的には、ポリロタキサン(A)のブロック基BLは、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等、あるいは、数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子の主鎖または側鎖等が好ましく、これらのブロック基BLは、ポリロタキサン(A)中または粘着剤組成物中で2種以上混在していてもよい。
【0058】
上記の数平均分子量1,000〜1,000,000の高分子としては、例えば、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリアクリル酸エステル等が挙げられる。
【0059】
上記粘着剤組成物におけるポリロタキサン(A)の配合量は、好ましくは、ポリロタキサン(A)の反応性基Rに対する架橋剤(C)の反応性基R当量比、粘着剤組成物により形成される粘着剤層のゲル分率、およびヘイズ値が前述した範囲内になるように適宜調整されるが、通常、粘着剤組成物の固形分中、0.05〜30質量%、好ましくは0.3〜20質量%の配合量となる。
【0060】
環状分子Tが直鎖状分子Lにより串刺し状に包接される際に環状分子Tが最大限に包接される量を100%とした場合、環状分子Tは好ましくは0.1〜60%、より好ましくは1〜50%、特に好ましくは5〜40%の量で直鎖状分子Lに串刺し状に包接される。
【0061】
なお、環状分子Tの最大包接量は、直鎖状分子の長さと環状分子の厚さとにより、決定することができる。例えば、直鎖状分子がポリエチレングリコールであり、環状分子がα−シクロデキストリン分子の場合、最大包接量は、実験的に求められている(Macromolecules 1993, 26, 5698-5703 参照)。
【0062】
B.(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の構成単位である(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、シクロアルキル(メタ)アクリレート等の脂環式化合物を官能基として有する(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族化合物を官能基として有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、特に好ましくはアルキル基の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の構成単位である反応性基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等の反応性基Rとを分子内に有するモノマーである。これらの反応性基Rは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)中で2種以上混在していてもよい。これらの反応性基Rの中でも、粘着剤組成物が酸性側にもアルカリ側にも偏らず、耐腐食性に優れ、さらに、粘着剤組成物より形成される粘着剤層の架橋の安定性が高いことから、ヒドロキシ基が特に好ましい。したがって、反応性基含有モノマーとしては、好ましくは反応性基Rがヒドロキシ基であるヒドロキシ基含有不飽和化合物が用いられる。
【0064】
ヒドロキシ基含有不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有アクリレート等が好ましく、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、上記のような(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを常法で共重合することにより得られるが、これらモノマーの他にも少量(例えば10質量%以下、好ましくは5質量%以下)の割合で、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン等が共重合されてもよい。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の質量平均分子量は、GPC(Gel Permeation Chromatography)換算値で、100,000〜3,000,000であることが好ましく、特に500,000〜2,000,000であることが好ましい。質量平均分子量が100,000未満では、粘着剤層の応力緩和性及び耐久性が十分でなくなるおそれがある。一方、質量平均分子量が3,000,000を超えると、ポリロタキサン(A)との相溶性が悪くなり、粘着剤層の全光線透過率等の光学的特性が低下したり、応力緩和性が十分に確保できなくなるおそれがある。
【0067】
また、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のガラス転移温度(Tg)は、50℃以下であることが好ましく、特に30℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)が50℃を超えると、ポリロタキサン(A)との相溶性が悪くなり、粘着剤層の十分な応力緩和性が発現されないおそれがある。
【0068】
上記粘着剤組成物における(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の配合量は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基Rと架橋剤(C)の反応性基Rの当量比、および該粘着剤組成物より形成される粘着剤層のゲル分率が前述した範囲内になるように適宜調整されるが、通常、粘着剤組成物の固形分中、70〜99.5質量%、好ましくは75〜99質量%の配合量となる。
【0069】
C.架橋剤
架橋剤(C)は、ポリロタキサン(A)が有する反応性基Rおよび(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が有する反応性基Rと反応可能な反応性基Rを有する二官能以上の化合物であれば特に限定されない。
【0070】
架橋剤(C)が有する官能基Rは、例えば、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基等が好ましく、特にイソシアナート基が好ましい。これらの官能基Rは、架橋剤(C)中で2種以上混在していてもよい。
【0071】
ポリロタキサン(A)の反応性基Rがヒドロキシ基、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基Rがヒドロキシ基、架橋剤(C)の反応性基Rがイソシアナート基であると、反応が容易で制御可能な速度で進行するため、反応性基Rと反応性基Rとの反応性のバランスをとりやすい。また、それらの反応性基を有する化合物は、汎用性が高く、材料の種類が豊富で入手も容易でありコストも低く抑えることができる。
【0072】
架橋剤(C)としては、例えば、キシリレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、それらのアダクト体(例えばトリメチロールプロパンアダクト体)等のイソシアナート系化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、それらのアダクト体等のエポキシ系化合物、N,N−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、それらのアダクト体等のアジリジン系化合物等が挙げられ、中でもイソシアナート系化合物が好ましい。
【0073】
上記粘着剤組成物における架橋剤(C)の配合量は、好ましくは、ポリロタキサン(A)の反応性基Rに対する架橋剤(C)の反応性基Rの当量比、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基Rに対する架橋剤(C)の反応性基Rの当量比、および上記粘着剤組成物により形成される粘着剤層のゲル分率が前述した範囲内になるように適宜調整されるが、通常、粘着剤組成物の固形分中、0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%の配合量となる。
【0074】
D.シランカップリング剤
上記粘着剤組成物は、上記成分(A)〜(C)以外の成分として、所望により、シランカップリング剤(D)を含有してもよい。粘着剤組成物がシランカップリング剤(D)を含有することにより、得られる粘着剤層と、ガラス基板等の無機材料との接着性を向上させることができる。
【0075】
シランカップリング剤(D)としては、特に限定されるものではないが、上記成分(A)〜(C)との相溶性が良好であり、上記粘着剤組成物が光学用途の場合には、光透過性を有するものが好ましい。
【0076】
シランカップリング剤(D)の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物;3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物;3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート基含有ケイ素化合物;3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0077】
シランカップリング剤(D)の添加量は、上記成分(A)〜(C)の合計量100質量部に対し、0.001〜10質量部の範囲が好ましく、特に0.005〜5質量部の範囲が好ましい。
【0078】
上記粘着剤組成物として最も好ましいものは、ポリロタキサン(A)として、環状分子Tがヒドロキシ基を反応性基Rとして有するα−シクロデキストリンであり、直鎖状分子Lがポリエチレングリコールであり、ブロック基BLがアダマンタン基であるポリロタキサンを使用し、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)として、ブチルアクリレートとヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体(反応性基R:ヒドロキシ基)を使用し、架橋剤(C)として、キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンアダクト体(反応性基R:イソシアナート基)を使用したものである。
【0079】
上記粘着剤組成物は、80〜150℃程度の温度で加熱することにより架橋し、粘着剤層を形成することができる。この粘着剤層においては、ポリロタキサン(A)の環状分子Tと(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)とが架橋剤(C)を介して間接的に結合しており、環状分子Tがポリロタキサン(A)の直鎖状分子L上を自由に移動するため、粘着剤層が応力緩和性に優れたものとなる。該粘着剤層は、応力緩和性を維持しながら全光線透過率等の光学的特性に優れ、かつ耐久性のあるものとなる。
【0080】
上記基材としては、特に制限は無く、通常の粘着シートの基材シートとして用いられているものは全て使用できる。例えば、レーヨン、アクリル、ポリエステル等の繊維を用いた織布または不織布;上質紙、グラシン紙、含浸紙、コート紙等の紙類;アルミ、銅等の金属箔;ウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体等の発泡体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリウレタンフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルム;これらの2種以上の積層体などを挙げることができる。プラスチックフィルムは、一軸延伸または二軸延伸されたものでもよい。
【0081】
また、基材は、剥離シートや光学部材であってもよい。
上記剥離シートとしては、例えばグラシン紙、クレーコート紙、クラフト紙、上質紙などの紙類やそれら紙類にポリエチレン樹脂などをラミネートしたラミネート紙、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィンなどのプラスチックフィルムからなるシート基材に、フッ素樹脂やシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布し、熱硬化や紫外線硬化などによって剥離層を設けたものなどが挙げられる。
【0082】
一方、光学部材としては、例えば、偏光板(偏光フィルム)、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム等が挙げられる。中でも偏光板(偏光フィルム)または位相差板(位相差フィルム)は、収縮し易く、一般的な被着体、例えば液晶パネルの基板等と比較して寸法変化が大きいため、上記粘着剤層を形成する対象として好適である。
【0083】
光学部材の厚さは、その種類によっても異なるが、通常10μm〜500μmであり、好ましくは50μm〜300μmである。
【0084】
基材シート上に粘着剤層を形成するには、基材シートに粘着剤組成物を含む溶液(以下「粘着剤溶液」と称することがある。)を直接塗布して粘着剤層を設けてもよいし、剥離シート上に粘着剤溶液を塗布して粘着剤層を設けたのち、これを基材シートに貼着し、該粘着剤層を基材シートに転写してもよい。
【0085】
ここで、粘着剤組成物を希釈して粘着剤溶液とするための溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0086】
このようにして調製された粘着剤溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。さらに、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤、帯電防止剤、拡散剤等、各種添加剤を添加して粘着剤溶液とすることができる。なお、粘着剤溶液を得るに際して、溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着剤組成物がコーティング可能な粘度等であれば、溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着剤組成物がそのまま粘着剤溶液と同様に取り扱われる。
【0087】
粘着剤溶液を塗布する方法には、例えばロールコーティング法、ナイフコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、スプレーコーティング法等の従来公知の方法が適用可能である。これらの方法によって粘着剤溶液を塗布した後、熱風乾燥等の手段で溶媒を除去するとともに、加熱等によって粘着剤組成物が反応し架橋されることにより、上記粘着剤層を形成することができる。粘着剤層の厚さは、特に制限されず、用途に応じて適宜選定されるが、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
【0088】
本粘着シートは、粘着シートの基材または粘着シートが貼着される被着体の寸法変化が大きい場合であっても、その寸法変化によって生じ得る応力を粘着剤層で吸収・緩和することができ、したがって長期にわたって被着体から剥がれ難いものとなる。
【0089】
上記粘着剤層が形成された光学部材において、その粘着剤層の光学部材が積層されていない側の面には、必要に応じて剥離シートを積層することができる。上記粘着剤層が形成された光学部材が該剥離シートを有する場合には、該剥離シートを剥して、該剥離シートがない場合には、そのまま粘着剤層を介して、ガラス基板、光学樹脂基板等に接着され、例えば液晶パネル、液晶ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー用ディスプレイ等を構成する。上記粘着剤組成物によって得られる粘着剤層は、全光線透過率等の光学的特性及び応力緩和性に優れ、かつ十分な架橋密度を有するため、ディスプレイとしての画像表示性に優れながら光漏れ防止性及び耐久性にも優れる。
【0090】
シート状光学部材、例えば偏光板(偏光フィルム)、位相差板(位相差フィルム)等のシート状光学部材は、一般的に寸法変化が大きいが、光学部材を有する本発明の粘着シートによれば、シート状光学部材の寸法変化によって生じ得る応力を粘着剤層で吸収・緩和することができ、したがって長期にわたって基板等から剥がれ難いものとなる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0092】
〔実施例1〕
ポリロタキサン(A)として、
直鎖状分子L:ポリエチレングリコール(質量平均分子量35000)
環状分子T:ヒドロキシプロピル基を導入した後、ε−カプロラクトンをグラフト重合したα−シクロデキストリン(ヒドロキシプロピル置換度:48%,ε−カプロラクトンの重合投入量:〔ε−カプロラクトン〕/〔ヒドロキシ基〕=3.9,環状分子Tの包接量:25%)
ブロック基BL:アダマンタン基
からなる修飾ポリロタキサンを、Soft Mater., 2008, 4, 245-249に記載されている方法と同様にして作製した。得られたポリロタキサン(A)のヒドロキシ基量は、1.4mmol/gであった。
【0093】
上記ポリロタキサン(A)6質量部と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)として、ブチルアクリレート単位98.5質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート単位1.5質量%からなる質量平均分子量180万のアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤(C)として、キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンアダクト体(綜研化学社製,TD−75;3官能性,分子量698,固形分75質量%)4質量部と、シランカップリング剤(D)として、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,KBM403)0.2質量部とを混合した粘着剤組成物を、メチルエチルケトンにより固形分濃度12%の溶液となるように希釈し、これを粘着剤溶液とした。
【0094】
なお、上記粘着剤組成物において、ポリロタキサン(A)のヒドロキシ基に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は1.5であり、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のヒドロキシ基に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は1であった。ここで、ポリロタキサン(A)のヒドロキシ基量は、JIS K0070に基づいて測定した値である。
【0095】
上記粘着剤溶液を、片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理したポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面にナイフコーターによって塗工し、90℃で1分間乾燥させて厚さ25μmの粘着剤層を形成した。
【0096】
上記粘着剤層上に、偏光板(トリアセチルセルロースフィルム/ポリビニルアルコールフィルム/トリアセチルセルロースフィルム(視野角拡大機能を含む)の3層積層体,厚さ:200μm)を積層して、偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを得た。
【0097】
〔実施例2〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対する架橋剤(C)の当量比が0.5となるように架橋剤(C)及びポリロタキサン(A)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0098】
〔実施例3〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対する架橋剤(C)の当量比が0.2となるように架橋剤(C)及びポリロタキサン(A)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0099】
〔実施例4〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対する架橋剤(C)の当量比が0.1となるように架橋剤(C)及びポリロタキサン(A)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして粘着剤付きの偏光板を作製した。
【0100】
〔実施例5〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対する架橋剤(C)の当量比が0.01となるように架橋剤(C)及びポリロタキサン(A)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0101】
〔実施例6〕
ポリロタキサン(A)に対する架橋剤(C)の当量比が2となるように架橋剤(C)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0102】
〔実施例7〕
ポリロタキサン(A)に対する架橋剤(C)の当量比が4となるように架橋剤(C)及び(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の配合量を調整した以外は、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0103】
〔比較例1〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)として、ブチルアクリレート単位98.5質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート単位1.5質量%からなる質量平均分子量180万のアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤(C)として、キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンアダクト体(綜研化学社製,TD−75)4質量部と、シランカップリング剤(D)として、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学社製,KBM403)0.2質量部とを混合した粘着剤組成物を、メチルエチルケトンにより固形分濃度12%の溶液となるように希釈し、これを粘着剤溶液とした。
【0104】
なお、上記粘着剤組成物において、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のヒドロキシ基に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は1であった。
【0105】
得られた粘着剤溶液を使用する以外、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0106】
〔比較例2〕
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)に対する架橋剤(C)の当量比が0.05となるように架橋剤(C)の配合量を調整した以外は、比較例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0107】
〔比較例3〕(特開2007−224133の実施例6に対応)
ポリロタキサン(A)として、
直鎖状分子L:ポリエチレングリコール(平均重量分子量35000)
環状分子T:α−シクロデキストリン
ブロック基BL:アダマンタン基
からなるポリロタキサンのシクロデキストリンの水酸基を、ジメチルアセトアミド/塩化リチウム溶媒中、ジメチルアミノピリジン(触媒)存在下で、無水酢酸によりアセチル化したポリロタキサンを、特開2007−224133の実施例6と同様にして作製した。得られたポリロタキサン(A)のヒドロキシ基量は、2.1mmol/gであった。
【0108】
上記ポリロタキサン(A)5質量部と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)として、ブチルアクリレート単位80質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート単位20質量%からなる質量平均分子量80万のアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤(C)として、キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンアダクト体(綜研化学社製,TD−75)2.5質量部とを混合した粘着剤組成物を、メチルエチルケトンにより固形分濃度12%の溶液となるように希釈し、これを粘着剤溶液とした。
【0109】
なお、上記粘着剤組成物において、ポリロタキサン(A)に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は0.8、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のヒドロキシ基に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は0.05であった。
【0110】
〔比較例4〕(特開2007−224133の実施例7に対応)
比較例3で得たポリロタキサン(A)20質量部と、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)として、ブチルアクリレート単位80質量%および2−ヒドロキシエチルアクリレート単位20質量%からなる質量平均分子量80万のアクリル酸エステル共重合体100質量部と、架橋剤(C)として、キシリレンジイソシアナートのトリメチロールプロパンアダクト体(綜研化学社製,TD−75)10質量部とを混合した粘着剤組成物を、メチルエチルケトンにより固形分濃度12%の溶液となるように希釈し、これを粘着剤溶液とした。
【0111】
なお、上記粘着剤組成物において、ポリロタキサン(A)に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は0.8、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)のヒドロキシ基に対する架橋剤(C)のイソシアナート基の当量比は0.2であった。
【0112】
得られた粘着剤溶液を使用する以外、実施例1と同様にして偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを作製した。
【0113】
〔試験例〕
(1)保持力の測定
実施例及び比較例で調製した粘着剤組成物を、片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理したポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、易接着ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡社製,PET50A4300,厚さ:50μm)とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
【0114】
測定温度を80℃とした以外はJIS Z0237の保持力の測定法に準じて、70,000秒後の上記粘着シートのずれ量(μm)を測定した。結果を表1に示す。
【0115】
(2)破断伸度の測定
実施例及び比較例で調製した粘着剤組成物を、片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理したポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃ で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、別のポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801)の剥離処理面とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
【0116】
上記粘着シートにおける粘着剤層の合計厚さが1mmとなるように、かつ両面最表層の剥離シートのみが残るように上記粘着剤層を複数層積層し、23℃、湿度50%の雰囲気下で2週間放置した。その後、上記粘着剤層を複数層積層した粘着シートから10mm幅×100mm長のサンプルを切り出し、両面最表層に積層された剥離シートを剥し、サンプル測定範囲が10mm幅×500mm長になるようにサンプルをセットし、23℃、50%RH環境下で引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用いて引張速度10mm/minで破断伸度(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0117】
(3)全光線透過率及びヘイズ値の測定
実施例及び比較例で使用した粘着剤溶液を、片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理したポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が25μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET100A4300)の易接着処理面とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
【0118】
得られた粘着シートから剥離シートを剥離除去して、JIS K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製,NDH−2000)を用いて、拡散透過率(Td%)及び全光線透過率(Tt%)を測定した。また、ヘイズ値(%)を、下記式にて算出した。結果を表1に示す。
ヘイズ値=Td/Tt×100
【0119】
(4)ゲル分率の測定
実施例及び比較例で使用した粘着剤溶液を、片面をシリコーン系剥離剤により剥離処理したポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3811)の剥離処理面に乾燥後の塗布厚が20μmとなるように塗布し、100℃で1分間加熱し、粘着剤層を形成した。その粘着剤層と、別のポリエチレンテレフタレート剥離シート(リンテック社製,SP−PET3801)の剥離処理面とを貼り合わせて、粘着シートを得た。
【0120】
上記粘着シートを23℃、湿度50%の雰囲気下で1週間放置した後、その粘着シートから約0.1gの粘着剤を取り出してテトロンメッシュ(#400)に包み、酢酸エチルを溶剤としたソックスレー抽出装置(東京硝子器械社製,脂肪抽出器)による還流で粘着剤の非ゲル分を抽出し、初期の質量との比よりゲル分率を算出した。結果を表1に示す。
【0121】
(5)耐久性試験
実施例及び比較例で得られた偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを、裁断装置(荻野精機製作所社製,スーパーカッター PN1−600)により233mm×309mmの大きさに裁断して、無アルカリガラス(コーニング社製,1737,厚さ:0.7mm)の片面に貼合し、オートクレーブ(栗原製作所社製)中にて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧し、光学積層体を得た。
【0122】
得られた光学積層体を、以下の各耐久条件の環境下に投入した。
<耐久条件>
1.60℃・相対湿度90%
2.80℃・ドライ
3.−20℃←→60℃の各30分のヒートショック試験を200サイクル
【0123】
投入から200時間後に、10倍率ルーペを用いて光学積層体について観察を行い、次の判定基準で耐久性を評価した。結果を表2に示す。
○:4辺全てにおいて、外周端部から0.6mm以上の部分に欠点がないもの
×:4辺の少なくとも1辺において、外周端部から0.6mm以上の部分に浮き、剥がれ、発泡、スジなどの0.1mm以上の大きさの粘着剤の外観異常(欠点)があるもの
【0124】
(6)光漏れ性試験
実施例及び比較例で得られた偏光板に粘着剤層が形成された粘着シートを、裁断装置(荻野精機製作所社製,スーパーカッター PN1−600)により233mm×309mmの大きさに裁断して、無アルカリガラス(コーニング社製,1737,厚さ:0.7mm)の両面に貼合し、オートクレーブ(栗原製作所社製)中にて、0.5MPa、50℃、20分間の条件で加圧し、光学積層体を得た。なお、上記貼合は、無アルカリガラスの表裏において、該光学積層体の両面の偏光板の偏光軸がクロスニコル状態になるように行った。
【0125】
得られた光学積層体を80℃で200時間放置した後、23℃、相対湿度50%の環境下に2時間放置して、以下に示す方法で光漏れ性を評価した。
【0126】
大塚電子社製のMCPD−2000を用い、光学積層体における図2に示す各領域(A領域,B領域,C領域,D領域,E領域)の明度を測定した。そして、明度差ΔLを、式
ΔL=[(b+c+d+e)/4]−a
(ただし、a、b、c、dおよびeは、それぞれA領域、B領域、C領域、D領域およびE領域のあらかじめ定められた測定点(各領域の中央部1箇所)における明度である。)で求め、これを光漏れ性とした。ΔLの値が小さいほど光漏れが少ないことを示す。結果を表2に示す。
【0127】
【表1】

【0128】
【表2】

【0129】
表1から明らかなように、実施例の粘着剤層及び粘着シートは、耐久性、光漏れ性及び光学的特性のいずれにおいても優れていた。
【0130】
一方、比較例1は、保持力は本発明の範囲内となるものの、破断伸度が小さい、いわゆる従来の硬い粘着剤層に相当するものである。このような比較例1では、実施例と同じ(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を使用したにも関わらず、耐久性及び光漏れ防止性において不十分なものであった。
【0131】
また、比較例2は、破断伸度が本発明の範囲内となるものの、保持力の測定では落下してしまう、いわゆる従来の応力緩和性に富んだ柔らかい粘着剤層に相当するものである。このような比較例2でも、同じ(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を使用した実施例と比べると、耐久性及び光漏れ防止性が不十分であった。
【0132】
比較例3は、特開2007−224133に開示された実施例のうち、常温での保持力の測定におけるずれ量が最も小さかった実施例6に対応するものである。比較例3では破断伸度が本発明の範囲外であり、耐久性及び光漏れ防止性ともに不十分なものであった。
【0133】
そこで、保持力を上げる観点から比較例3と同様の系でポリロタキサンの含有量を増やしたのが比較例4であり、上記文献の実施例7に相当する。比較例4は、破断伸度、保持力(ずれ量)ともに本発明の範囲内であるが、ヘイズ値が本発明の範囲外となるものである。比較例4の結果から、へイズ値が本発明を満たさない場合にも耐久性及び光漏れ防止性が不十分であることが分かる。
【0134】
すなわち、特開2007−224133の実施例に開示されている各種成分の割合を変更することによっては、本発明の粘着剤層を有する粘着シートには達し得ないことは明らかであり、そのような粘着剤層では本発明の効果を得ることができないことが比較例3及び比較例4より明確である。
【0135】
なお、上記実施例においては、本発明の要件を満たすために所定の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を使用しており、その点において上記文献の実施例とは相違する。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本発明の粘着シートは、粘着性を有する偏光板や位相差板として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの粘着剤層を形成する粘着剤組成物を示す概念図である。
【図2】光学積層体における光漏れ性試験の測定領域を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、少なくとも2つの環状分子の開口部に直鎖状分子が貫通し、前記環状分子に1つ以上の反応性基を有し、かつ、前記直鎖状分子の両末端にブロック基を有してなるポリロタキサン(A)を含有する粘着剤組成物により形成される粘着剤層と、を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層の破断伸度が300%以上であり、かつ、ヘイズ値が30%以下であり、
前記粘着シートの、測定温度を80℃とした以外はJIS Z0237に準拠した保持力が、70,000秒後の前記粘着シートのずれ量として1000μm以下である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを共重合することによって得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)は、共重合体中の反応性基含有モノマーの割合が0.01〜15質量%となるように(メタ)アクリル酸エステルと反応性基含有モノマーとを共重合して得られる共重合体であることを特徴とする請求項2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記粘着剤組成物は、前記ポリロタキサン(A)が有する反応性基および前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)が有する反応性基と反応可能な反応性基を有する架橋剤(C)をさらに含有することを特徴とする請求項2または3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記ポリロタキサン(A)の反応性基に対する前記架橋剤(C)の反応性基の当量比が0.1〜5であり、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基に対する前記架橋剤(C)の反応性基の当量比が0.001〜2である
ことを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着剤層のゲル分率が20〜90%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項7】
前記ポリロタキサン(A)の反応性基がヒドロキシ基、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(B)の反応性基がヒドロキシ基、前記架橋剤(C)の反応性基がイソシアナート基であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項8】
前記基材が剥離シートからなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項9】
前記基材が光学部材からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着シート。
【請求項10】
前記基材が偏光板又は位相差板からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の粘着シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−138259(P2010−138259A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315011(P2008−315011)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【出願人】(505136963)アドバンスト・ソフトマテリアルズ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】