説明

粘着シート

【課題】巻回体等からの巻戻し性が良好で、且つ、優れた帯電防止性を有する、表面保護フィルム等に好適な、粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の粘着シートは、背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)を含み、該背面層(A)と該粘着剤層(C)が最外層である粘着シートであって、該背面層(A)が、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーを、7〜50重量%の含有割合で含み、該背面層(A)が、離型剤を、2〜20重量%の含有割合で含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関する。より詳細には、背面層と基材層と粘着剤層を含み、該背面層と該粘着剤層が最外層である粘着シートであって、巻回体等からの巻戻し性が良好で、且つ、優れた帯電防止性を有する、表面保護フィルム等に好適な、粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルム等に用いられる粘着シートは、主としてプラスチック材料により構成されている。このため、電気絶縁性が高く、摩擦や剥離の際に静電気が発生する。このような粘着シートを偏光板などの光学部材の表面保護フィルムとして用いると、剥離する際に静電気が発生してしまう。このようにして生じた静電気が残ったままの光学部材を液晶パネルに組み込んで液晶に電圧を印加すると、液晶分子の配向が損失し、液晶パネルに欠損が生じてしまうという問題が生じる。また、静電気が発生すると、埃やクズを吸引してしまうという問題も生じる。
【0003】
そこで、粘着シートに各種帯電防止処理を施すことが検討されている。
【0004】
粘着シートの粘着剤に低分子の界面活性剤を添加し、粘着剤中から界面活性剤を被着体に転写させて帯電防止を行う方法が報告されている(特許文献1参照)。しかし、このような方法においては、添加した低分子の界面活性剤が粘着剤表面にブリードし易く、被着体への汚染が懸念される。したがって、低分子の界面活性剤を添加した粘着剤を光学部材用表面保護フィルムに適用した場合には、特に、光学部材の光学特性を損なうという問題が生じる。
【0005】
帯電防止剤として導電性フィラーを用いる方法が報告されている(特許文献2参照)。しかし、導電性フィラーを用いると、透明性が損なわれるため、光学部材用表面保護フィルムとして用いる粘着シートには適用が好ましくないという問題が生じる。
【0006】
最近、帯電防止剤として、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーである高分子型帯電防止剤が提案されている。
【0007】
高分子型帯電防止剤を用いた粘着シートとして、高分子型帯電防止剤を含む帯電防止層と基材層との積層体を二層共押出しによって準備し、該積層体の基材層側にアクリル系粘着剤を塗布して粘着剤層を形成することによって得られる粘着シートが報告されている(特許文献3参照)。しかし、粘着剤層を塗布により形成しなければならないため、製造コストが高いという問題がある。また、巻回体等からの巻戻し性に劣るという問題がある。
【0008】
高分子型帯電防止剤を用いた粘着シートとして、高分子型帯電防止剤を含む基材層と中間層とスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体系粘着剤層とを三層共押出しして得られる粘着シートが報告されている(特許文献4参照)。しかし、巻回体等からの巻戻し性に劣るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−165460号公報
【特許文献2】特開2007−9135号公報
【特許文献3】特開2008−174727号公報
【特許文献4】特開2010−59218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、巻回体等からの巻戻し性が良好で、且つ、優れた帯電防止性を有する、表面保護フィルム等に好適な、粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の粘着シートは、
背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)を含み、該背面層(A)と該粘着剤層(C)が最外層である粘着シートであって、
該背面層(A)が、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーを、7〜50重量%の含有割合で含み、
該背面層(A)が、離型剤を、2〜20重量%の含有割合で含む。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層(C)のアクリル板に対する、測定温度23℃、剥離速度10m/分、剥離角度180度での初期粘着力が、0.8〜4N/20mmである。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記粘着剤層(C)がポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0014】
好ましい実施形態においては、本発明の粘着シートは、上記背面層(A)の形成材料(a)と上記基材層(B)の形成材料(b)と上記粘着剤層(C)の形成材料(c)を含む形成材料組成物を共押出成形して一体化させて得られる。
【0015】
好ましい実施形態においては、本発明の粘着シートは、表面保護フィルムである。
【0016】
好ましい実施形態においては、本発明の粘着シートは、光学部材用表面保護フィルムである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、巻回体等からの巻戻し性が良好で、且つ、優れた帯電防止性を有する、表面保護フィルム等に好適な、粘着シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪≪A.粘着シート≫≫
本発明の粘着シートは、背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)を含み、該背面層(A)と該粘着剤層(C)が最外層である粘着シートである。本発明の粘着シートは、背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)のみから形成された3層の積層体であっても良いし、背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)と他の任意の少なくとも1層から形成された4層以上の積層体であっても良い。
【0020】
背面層(A)は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層(B)は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。粘着剤層(C)は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。
【0021】
図1は、本発明の好ましい実施形態による粘着シートの概略断面図である。図1において、粘着シート100は、背面層(A)10と基材層(B)20と粘着剤層(C)30を備える。
【0022】
本発明の粘着シートの厚みは、用途に応じて、任意の適切な厚みに設定し得る。本発明の粘着シートの厚みは、好ましくは5μm〜200μmであり、より好ましくは10μm〜100μmであり、さらに好ましくは20μm〜60μmである。
【0023】
本発明の粘着シートは、好ましくは、共押出成形によって一体に形成されたものである。すなわち、本発明の粘着シートは、好ましくは、上記背面層(A)の形成材料(a)と上記基材層(B)の形成材料(b)と上記粘着剤層(C)の形成材料(c)を含む形成材料組成物を共押出成形して一体化させて得られる。
【0024】
本発明の粘着シートは、任意の適切な用途に用い得る。本発明の粘着シートは、巻回体等からの巻戻し性が良好で、且つ、優れた帯電防止性を有するので、好ましい用途としては、表面保護フィルムが挙げられ、より好ましい用途としては、光学部材用表面保護フィルムである。
【0025】
本発明の粘着シートは、10m/分の巻戻し力が、好ましくは0.6N/20mm以下であり、より好ましくは0.55N/20mm以下であり、さらに好ましくは0.5N/20mm以下であり、特に好ましくは0.45N/20mm以下であり、最も好ましくは0.4N/20mm以下である。本発明の粘着シートは、好ましくは、上記のように、巻回体等からの巻戻し性が非常に優れている。このため、例えば、ロール体等として各種用途に広く展開することが可能となる。巻戻し力の測定方法の詳細は後述する。
【0026】
本発明の粘着シートは、背面層(A)の表面抵抗値が、好ましくは1×1014Ω/□未満であり、より好ましくは1×1013Ω/□以下であり、さらに好ましくは1×1012Ω/□以下であり、特に好ましくは1×1011Ω/□以下である。本発明の粘着シートは、好ましくは、上記のように、帯電防止性が非常に優れている。このため、摩擦や剥離の際に静電気が発生し難く、埃やクズの吸引を効果的に抑制し得る。表面抵抗値の測定方法の詳細は後述する。
【0027】
本発明の粘着シートは、測定温度23℃、剥離速度10m/分、剥離角度180度の条件下における、粘着剤層(C)のアクリル板に対する初期粘着力が、好ましくは0.8〜4N/20mmであり、より好ましくは1〜3.5N/20mmであり、さらに好ましくは1.2〜3N/20mmであり、特に好ましくは1.5〜2.5N/20mmである。本発明の粘着シートは、上記のように、粘着剤層(C)のアクリル板に対する初期粘着力が適度な大きさを有しているので、十分な貼着・容易な剥離をいずれも行い易く、各種用途に広く展開することが可能となる。初期粘着力の測定方法の詳細は後述する。
【0028】
≪A−1.背面層(A)≫
背面層(A)は、好ましくは、シート状やフィルム状に形成できる熱可塑性樹脂を含む。耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する点で、背面層(A)は、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。背面層(A)が可とう性を有することにより、ロール状に容易に巻き取ることができ、各種の加工を簡便に行い得る。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、プロピレンまたはプロピレン成分とエチレン成分からなるプロピレン系樹脂、エチレンと極性モノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂としては、より具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。これらの中でも、背面層(A)としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などの、エチレン成分を含む樹脂が好ましい。
【0031】
背面層(A)の樹脂成分は、1種のみの樹脂成分から構成されていても良いし、2種以上の樹脂成分から構成されていても良い。
【0032】
背面層(A)は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。背面層(A)が2層以上の積層体である場合には、それらの各層は、溶融共押出しによって相互に貼着されたものであることが好ましい。
【0033】
背面層(A)は、高分子型帯電防止剤であるポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーを含む。このようなブロックポリマーを含むことによって、背面層(A)に優れた帯電防止性を付与し得る。
【0034】
このようなブロックポリマーのポリオレフィンのブロックは、好ましくは、背面層(A)を形成する樹脂中に均一に分散するための機能を担う。また、このようなブロックポリマーの親水性ポリマーのブロックは、好ましくは、背面層(A)の帯電を防止する機能を担う。このようなブロックポリマーを含むことにより、背面層(A)中に該ブロックポリマーが均一に分散でき、安定した帯電防止性が発現でき、且つ、透明性の高い背面層(A)が形成できる。このようなブロックポリマーを用いることにより、水洗、水拭き等の処理を行っても、背面層(A)の帯電防止性の低下がほとんどなく、安定した帯電防止性が発現できる。また、このようなブロックポリマーを用いることにより、背面層(A)の透明性を高められるので、本発明の粘着シートは、光学部材の表面保護フィルムとして有用なものとなる。
【0035】
ブロックポリマーを構成するポリオレフィンのブロックとは、好ましくは、α−オレフィンの重合体または共重合体である。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、3−メチルヘキセン−1などが挙げられる。
【0036】
ポリオレフィンのブロックは、親水性ポリマーのブロックと、好ましくは、化学的に結合される。このような結合としては、例えば、エステル結合、アミド結合、エーテル結合、ウレタン結合、イミド結合などが挙げられる。このような結合を介して繰り返し交互にポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックとが結合することによって、ブロックポリマーとなり得る。ポリオレフィンのブロックの分子末端は、親水性ポリマーのブロックの分子末端官能基と反応し得る官能基で変性されていることが好ましい。このような官能基としては、例えば、カルボン酸基、水酸基、アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基、エポキシ基などが挙げられる。このような官能基としては、好ましくは、カルボン酸基である。
【0037】
ポリオレフィンのブロックは、両末端変性されたポリオレフィンのブロックのみであっても良いし、片末端変性されたポリオレフィンのブロックのみであっても良いし、これらの混合物であっても良い。
【0038】
ポリオレフィンのブロックの数平均分子量は、好ましくは800〜50000、より好ましくは1000〜30000、さらに好ましくは2000〜20000、特に好ましくは2500〜10000である。
【0039】
親水性ポリマーのブロックの親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエーテル、ポリエーテル含有親水性ポリマー、カチオン性ポリマー、アニオン性ポリマーなどが挙げられる。
【0040】
ポリエーテルとしては、例えば、ポリエーテルジオール、ポリエーテルジアミン、これらの変性物などが挙げられる。
【0041】
ポリエーテルの数平均分子量は、好ましくは150〜20000、より好ましくは300〜20000、さらに好ましくは1000〜15000、特に好ましくは1200〜8000である。
【0042】
ポリエーテル含有親水性ポリマーとしては、例えば、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルアミドイミド、ポリエーテルジオールのセグメントを有するポリエーテルエステル、ポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルアミド、ポリエーテルジオールまたはポリエーテルジアミンのセグメントを有するポリエーテルウレタンなどが挙げられる。
【0043】
ポリエーテル含有親水性ポリマーの数平均分子量は、好ましくは800〜50000、より好ましくは1000〜30000である。
【0044】
カチオン性ポリマーとしては、例えば、非イオン性分子鎖で隔てられた、好ましくは2〜80個、より好ましくは3〜60個のカチオン性基を分子内に有するポリマーが挙げられる。
【0045】
カチオン性ポリマーの数平均分子量は、好ましくは500〜20000、より好ましくは1000〜15000、さらに好ましくは1200〜8000である。
【0046】
アニオン性ポリマーとしては、例えば、スルホニル基を有するジカルボン酸と、ジオールまたはポリエーテルとを必須構成単位とし、かつ一分子内に、好ましくは2〜80個、より好ましくは3〜60個のスルホニル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。
【0047】
アニオン性ポリマーの数平均分子量は、好ましくは500〜20000、より好ましくは1000〜15000、さらに好ましくは1200〜8000である。
【0048】
背面層(A)に含まれ得るブロックポリマーは、好ましくは、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックを、任意の適切な方法によって重合することで製造し得る。例えば、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックを、減圧下、200〜250℃で重合反応を行うことにより、製造することができる。
【0049】
背面層(A)に含まれ得るブロックポリマーの数平均分子量は、背面層(A)に効果的に帯電防止性を付与する観点から、好ましくは2000〜60000、より好ましくは5000〜40000、さらに好ましくは8000〜30000である。
【0050】
背面層(A)に含まれ得るブロックポリマーは、例えば、特開2001−278985号公報、特開2003−48990号公報などに記載の方法で製造することができる。
【0051】
背面層(A)に含まれ得るブロックポリマーは、例えば、三洋化成工業社製の「ペレスタット」シリーズとして入手できる。例えば、三洋化成工業社製の「ペレスタット」シリーズにおける300、303、230などが挙げられる。
【0052】
背面層(A)中の、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーの含有割合は、7〜50重量%であり、好ましくは7〜40重量%、さらに好ましくは8〜35重量%、特に好ましくは9〜30重量%、最も好ましくは10〜25重量%である。背面層(A)中の、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーの含有割合が、7重量%未満では、背面層(A)に効果的に帯電防止性を付与することができないおそれがある。背面層(A)中の、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーの含有割合が、50重量%を超えると、背面層(A)の外観が悪化するおそれがある。
【0053】
背面層(A)中には、帯電防止性をさらに向上させる見地から、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩を含有させることができる。
【0054】
アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩の合計の含有割合は、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーに対して、好ましくは0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%である。
【0055】
背面層(A)中には、離型剤が含まれる。
【0056】
離型剤としては、例えば、脂肪酸アミド系離型剤、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型剤等が挙げられる。より剥離性とブリードアウトによる汚染性のバランスに優れた剥離層を形成し得るという観点からは、好ましくは脂肪酸アミド系離型剤であり、より好ましくは長鎖アルキル系離型剤である。背面層(A)中の離型剤の含有割合は、好ましくは2〜20重量%、より好ましくは2〜15重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
【0057】
背面層(A)の厚さは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μm、さらに好ましくは2〜70μm、特に好ましくは2〜50μm、最も好ましくは2〜30μmである。
【0058】
背面層(A)には、他の任意の適切な添加剤が含まれていても良い。このような添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0059】
≪A−2.基材層(B)≫
基材層(B)は、好ましくは、シート状やフィルム状に形成できる熱可塑性樹脂を含む。耐熱性および耐溶剤性を有すると共に可とう性を有する点で、基材層(B)は、好ましくはポリオレフィン系樹脂である。基材層(B)が可とう性を有することにより、ロール状に容易に巻き取ることができ、各種の加工を簡便に行い得る。
【0060】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、プロピレンまたはプロピレン成分とエチレン成分からなるプロピレン系樹脂、エチレンと極性モノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0061】
ポリオレフィン系樹脂としては、より具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体などが挙げられる。
【0062】
基材層(B)は、1層のみであっても良いし、2層以上の積層体であっても良い。基材層(B)が2層以上の積層体である場合には、それらの各層は、溶融共押出しによって相互に貼着されたものであることが好ましい。
【0063】
基材層(B)には、任意の適切な添加剤が含有され得る。このような添加剤としては、例えば、充填剤、顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、滑剤、アンチブロッキング剤などが挙げられる。
【0064】
基材層(B)の厚みは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜250μm、さらに好ましくは15〜200μm、特に好ましくは20〜150μmである。基材層(B)の厚みが5μm未満の場合、剥離時に基材層(B)が破れたり裂けたりするおそれがある。基材層(B)の厚みが300μmを超える場合、基材層(B)のコシが大きくなりすぎて貼付後に浮き等が発生しやすいおそれがある。
【0065】
≪A−3.粘着剤層(C)≫
粘着剤層(C)は、粘着剤を構成する材料からなる層であれば、任意の適切な層を採用し得る。本発明の効果を十分に発現するためには、このような粘着剤層(C)は、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む。粘着剤層(C)中のポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種の含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
【0066】
このようなポリオレフィン系樹脂としては、任意の適切なポリオレフィン系樹脂を採用し得る。このようなポリオレフィン系樹脂としては、例えば、非晶性ポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0067】
非晶性ポリオレフィン系エラストマーとしては、例えば、エチレンプロピレンゴム、エチレンとα−オレフィンからなるエラストマー、粘着性を発現するポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。好ましくは、アタクチックポリプロピレンなどのポリプロピレン系樹脂が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂は、使用温度領域でゴム弾性を有するものであれば、任意の適切なポリプロピレン系樹脂を採用し得る。
【0068】
ここで、非晶性ポリオレフィン系エラストマーとは、結晶構造を有しない非晶性を有する。非晶性を有することの確認方法としては、例えば、n−ヘプタンへの溶解性試験が挙げられる。具体的には、非晶性ポリオレフィン系エラストマーをn−ヘプタンに10重量%の濃度で溶解させ、その溶解度を測定し、その際、実質的に完全溶解した場合を100%とした場合に、溶解度90%以上となるものを、非晶性を有するものとする。
【0069】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体などが挙げられる。
【0070】
α−オレフィンとしては、例えば、1−ブテン、1−ぺンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−へキセンなどが挙げられる。これらの中でも、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンが好ましい。α−オレフィンは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0071】
ポリプロピレン系樹脂としては、好ましくは、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体が挙げられる。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、好ましくは、メタロセン触媒を用いて、プロピレンと1−ブテンとを共重合することによって得ることができる。メタロセン触媒を用いた共重合によって得られる非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体は、狭い分子量分布(例えば、2以下)を示す。このような狭い分子量分布を示す非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を用いれば、低分子量成分のブリードを防止し得る。
【0072】
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体におけるプロピレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは80〜99モル%であり、より好ましくは85〜99モル%であり、さらに好ましくは90〜99モル%である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体におけるプロピレン由来の構成単位の含有割合がこのような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れた粘着剤層(C)を得ることができ、本発明の効果をより一層効果的に発現することができる。
【0073】
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における1−ブテン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは1〜15モル%であり、より好ましくは1〜10モル%である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体における1−ブテン由来の構成単位の含有割合がこのような範囲であれば、靭性と柔軟性とのバランスに優れた粘着剤層(C)を得ることができ、本発明の効果をより一層効果的に発現することができる。
【0074】
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の共重合構造としては、任意の適切な共重合構造を採用し得る。このような共重合構造としては、例えば、ブロック共重合体、ランダム共重合体などが挙げられる。
【0075】
非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは200000以上であり、より好ましくは200000〜500000であり、さらに好ましくは200000〜300000である。非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体の重量平均分子量(Mw)がこのような範囲であれば、適切な粘着力を有する粘着剤層(C)を得ることができ、本発明の効果をより一層効果的に発現することができる。
【0076】
粘着剤層(C)が非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体を含む場合、粘着剤層(C)の粘着力を調整するために、粘着剤層(C)がさらに結晶性ポリプロピレン系樹脂を含んでいても良い。粘着剤層(C)が結晶性ポリプロピレン系樹脂を含有することにより、粘着剤層(C)の粘着力を適度に低下させ、貯蔵弾性率を増加させることができる。粘着剤層(C)がさらに結晶性ポリプロピレン系樹脂を含む場合、粘着剤層(C)中の結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合は、所望とする粘着力および貯蔵弾性率に応じて任意の適切な含有割合に設定され得る。このような結晶性ポリプロピレン系樹脂の含有割合としては、好ましくは、非晶質プロピレン−(1−ブテン)共重合体と結晶性ポリプロピレン系樹脂との合計重量に対して、好ましくは0〜50重量%であり、より好ましくは0〜40重量%であり、さらに好ましくは0〜30重量%である。
【0077】
スチレン系樹脂としては、好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、溶融押出によりフィルム成形し得る限りにおいて、任意の適切なスチレン系熱可塑性エラストマーを採用し得る。スチレン系熱可塑性エラストマーとは、少なくとも1種のスチレン系モノマーを少なくとも含む単量体成分を用いて得られるエラストマーをいう。スチレン系熱可塑性エラストマーは、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0078】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(SEB)等のスチレン系AB型ジブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、SBSの水素添加物(スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS))、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS)、SISの水素添加物(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEPS))、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体(SIBS)等のスチレン系ABA型トリブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン(SBSB)等のスチレン系ABAB型テトラブロック共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレン−ブタジエン−スチレン(SBSBS)等のスチレン系ABABA型ペンタブロック共重合体;これら以上のAB繰り返し単位を有するスチレン系マルチブロック共重合体;などのスチレン系ブロック共重合体が挙げられる。また、スチレン−ブタジエンラバー(SBR)等のスチレン系ランダム共重合体のエチレン性二重結合を水素添加した水素添加物も挙げられる。
【0079】
スチレン系ブロック共重合体中におけるスチレンブロック構造の含有割合は、好ましくは5〜40重量%であり、より好ましくは7〜30重量%であり、さらに好ましくは9〜20重量%である。スチレンブロック構造の含有割合が5重量%より少ない場合、粘着剤層(C)の凝集力不足による糊残りが発生しやすくなる。スチレンブロック構造の含有割合が40重量%より多い場合、粘着剤層(C)が硬くなり、粗面に対して良好な接着性を得ることができないおそれがある。
【0080】
スチレン系ブロック共重合体がエチレン−ブチレンブロック構造を有する場合、エチレン−ブチレンブロック構造中におけるブチレン由来の構成単位の含有割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは70〜90重量%である。ブチレン由来の構成単位の含有割合がこのような範囲であれば、濡れ性および接着性に優れ、粗面に対しても良好に接着し得る粘着剤層(C)を得ることができる。
【0081】
粘着剤層(C)は、必要に応じて、任意の適切な他の成分を含有し得る。他の成分としては、例えば、粘着付与剤;軟化剤;老化防止剤;オレフィン系樹脂;シリコーン系樹脂;液状アクリル系共重合体;ポリエチレンイミン;脂肪酸アミド;リン酸エステル;ヒンダードアミン系光安定剤;紫外線吸収剤;耐熱安定化剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン等の充填剤または顔料;その他の添加剤;などが挙げられる。粘着剤層(C)に含有され得る他の成分の種類、数および量は、目的に応じて適切に設定され得る。他の成分の量は、粘着剤層(C)全体に対して、好ましくは5重量%以下であり、より好ましくは1重量%以下である。
【0082】
粘着付与剤は、粘着力の向上に有効である。粘着剤層(C)が粘着付与剤を含有する場合、粘着剤層(C)中の粘着付与剤の含有割合は、凝集力の低下による糊残りの発生の防止を考慮し、任意の適切な含有割合に設定され得る。粘着剤層(C)中の粘着付与剤の含有割合は、粘着剤層(C)の樹脂成分に対して、好ましくは1〜60重量%であり、より好ましくは3〜50重量%であり、さらに好ましくは4〜45重量%であり、特に好ましくは5〜40重量%である。
【0083】
粘着付与剤としては、例えば、炭化水素系粘着付与剤、テルペン系粘着付与剤、ロジン系粘着付与剤、フェノール系粘着付与剤、エポキシ系粘着付与剤、ポリアミド系粘着付与剤、エラストマー系粘着付与剤、ケトン系粘着付与剤などが挙げられる。粘着剤層(C)中の粘着付与剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0084】
炭化水素系粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂(例えば、キシレン樹脂等)、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(例えば、スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロン−インデン系樹脂などが挙げられる。
【0085】
テルペン系粘着付与剤としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体等のテルペン系樹脂;テルペン系樹脂を変性(例えば、フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性等)した変性テルペン系樹脂(例えば、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等);などが挙げられる。
【0086】
ロジン系粘着付与剤としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン等の未変性ロジン(生ロジン);未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(例えば、水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;などが挙げられる。
【0087】
フェノール系粘着付与剤としては、例えば、レゾール型またはノボラック型のアルキルフェノールなどが挙げられる。
【0088】
粘着付与剤は、オレフィン樹脂や熱可塑性エラストマーとのブレンド物として市販されているものであっても良い。
【0089】
軟化剤は、粘着力の向上に有効である。粘着剤層(C)が軟化剤を含有する場合、粘着剤層(C)中の軟化剤の含有割合は、任意の適切な量を採用し得る。粘着剤層(C)中の軟化剤の含有割合が大きくなりすぎると、高温や屋外暴露時での糊残りが増加する傾向にあることから、粘着剤層(C)中の軟化剤の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0090】
軟化剤としては、例えば、低分子量のジエン系ポリマー、ポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエンやそれらの誘導体などが挙げられる。該誘導体としては、例えば、片末端または両末端にOH基やCOOH基を有するものなどが挙げられる。具体的には、水添ポリブタジエンジオール、水添ポリブタジエンモノオール、水添ポリイソプレンジオール、水添ポリイソプレンモノオールなどが挙げられる。粘着力の向上をより抑制するためには、水添ポリブタジエンや水添ポリイソプレン等のジエン系ポリマーの水添物やオレフィン系軟化剤などが好ましい。具体的には、クラレ社製の「クラプレンLIR−200」などが挙げられる。粘着剤層(C)中の軟化剤は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。
【0091】
軟化剤の分子量は、任意の適切な量に設定し得る。軟化剤の分子量が小さくなりすぎると、粘着剤層(C)からのブリードによる汚染の原因となるおそれがあり、一方、軟化剤の分子量が大きくなりすぎると、接着力の向上効果が乏しくなる傾向があることから、軟化剤の数平均分子量は、好ましくは5000〜100000であり、より好ましくは10000〜50000である。
【0092】
粘着剤層(C)の厚みは、好ましくは1〜50μm、より好ましくは2〜40μm、さらに好ましくは3〜20μmである。
【0093】
粘着剤層(C)の表面には、例えば、コロナ放電処理、紫外線照射処理、火炎処理、プラズマ処理、スパッタエッチング処理などの、粘着性の制御や貼付作業性等を目的とした表面処理を必要に応じて施すこともできる。
【0094】
粘着剤層(C)には、必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレータなどを仮着して保護することもできる。
【0095】
≪≪B.粘着シートの製造方法≫≫
本発明の粘着シートは、背面層(A)の形成材料(a)と基材層(B)の形成材料(b)と粘着剤層(C)の形成材料(c)を含む形成材料組成物を共押出成形して一体化させて得ることができる。
【0096】
背面層(A)の形成材料(a)には、好ましくは、ポリオレフィン系樹脂、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマー、離型剤が含まれ得る。背面層(A)の形成材料(a)は、好ましくは、1)これらの材料をタンブルミキサー、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサーなどの混合機でドライブレンドして混合する方法、2)これらの材料をドライブレンドした後、押出機で溶融混合してペレット化する方法、3)これらの材料のマスターバッチをあらかじめ作製しておき、該マスターバッチをポリオレフィン系樹脂等と上記混合機でドライブレンドして混合する方法、などが挙げられる。
【0097】
共押出成形の方法は、各層の形成材料についてそれぞれ押出し機および共押出し用ダイを用いて、インフレーション法、Tダイ法などに準じて行うことができる。この共押出成形により、各形成材料由来の各層が一体化して積層体となる。
【0098】
本発明の粘着シートを製造する際には、上記の共押出成形によって一体化させて得られた積層体に、電離放射線を照射しても良い。具体的には、例えば、得られた積層体には、ロール状に巻き取る前、もしくは、ロール状に巻き取った後に再び巻戻した状態において、電離放射線を照射しても良い。電離放射線の照射は、好ましくは、窒素などの不活性ガス雰囲気下にて行う。電離放射線としては、例えば、X線、γ線、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。照射した際の反応活性種の生成率が高い点や、照射対象物への浸透が深い点などから、電離放射線としては、電子線が好ましい。電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。電離放射線の照射は、積層体の片側から照射しても良いし、両側から照射しても良い。工程の簡略化という点において、電離放射線の照射は、ロール状に巻き取る前に積層体を電離放射線照射装置に誘導して電離放射線を照射することが好ましい。電離放射線の照射線量は、層間密着性の向上と粘着シートの物性維持の観点より、好ましくは10〜500kGyであり、より好ましくは10〜400kGyであり、さらに好ましくは10〜300kGyである。電離放射線の加速電圧については、粘着シートに用いられる樹脂の種類や粘着シートの厚さに応じて適宜選定し得る。電離放射線の加速電圧は、通常、50〜300kVの範囲が好ましい。電離放射線は、1回の照射でも良く、複数回(好ましくは2回)の照射でも良い。
【実施例】
【0099】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例等における、試験および評価方法は以下のとおりである。また、部は重量部を意味する。また、%は、重量%を意味する。
【0100】
<重量平均分子量の測定>
以下の条件でGPC測定を行った。
測定装置:東ソー社製、型式「HLC−8120GPC」
カラム:東ソー社製、TSKgel SuperHZM−H/HZ4000+HZ3000+HZ2000を直列に接続して使用した。
カラムサイズ:各々、内径6.0mm×長さ15.0cm
カラム温度:40℃
流速:0.6mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
サンプル注入量:20μL
検出器:RI(示差屈折計)
標準試料:ポリスチレン
【0101】
<表面抵抗値の測定>
温度23℃、湿度50%RHの雰囲気下、抵抗率計(三菱化学アナリティック製、ハイレスタUP MCP−HT450型)を用い、JIS−K−6911に準じて測定を行った。
【0102】
<巻戻し力の測定>
JIS−Z−0237(2009)の「高速巻戻し力」に準拠して、ロール状に巻回した粘着シートを試験試料とし、巻戻し力測定装置を用いて、巻戻し力を測定した。なお、以下の条件については、JIS−Z−0237(2009)記載の条件に変更して測定し、得られた測定値を巻戻し力とした。
測定温度:23℃
測定湿度:50%RH
試験片の幅:20mm
引張速度:10m/分
【0103】
<初期粘着力の測定>
ロール状に巻回した粘着シートを5層巻戻し、外側のテープを切り捨てた後、該粘着シートを長さ300mm、幅20mmにくりだし、試験試料とした。
被着体としてアクリル板(三菱レーヨン社製、アクリライトL)を用い、線圧78.5N/cm、速度0.3m/分にて被着体に貼付し、これを23℃、湿度50%RHの雰囲気下に30分間放置した。その後、同雰囲気下で、万能引張試験機(島津製作所製 オートグラフAG−IS)を用いて、剥離速度10m/分、剥離角度180度の条件で、被着体から粘着シートを剥離し、このときの剥離力を測定した。3サンプル測定し、その平均値を初期粘着力とした。
【0104】
〔製造例1〕:剥離剤の製造
エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、商品名「エバールE−171B」、エチレン構造単位:44モル%)100重量部とオクタデシルイソシアネート(保土谷化学工業社製、商品名「ミリオネートO」)310重量部を、トルエン2000重量部に分散し、2時間還流しながら、途中、還流装置から水分を分離除去した。その後、40℃まで冷却して、ジメチルスルホキシドを300重量部加えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対するイソシアネート基の当量比が0.7となるようにオクタデシルイソシアネート(保土谷化学工業社製、商品名「ミリオネートO」)を撹拌しながら滴下し、120℃で4時間反応させた。この反応の間、系中の残存イソシアネート基を赤外分光光度計で定量(2260cm−1付近)し、その残存分が消失した時点をもって終点とした。
反応終了後、反応液に340重量部の水を加えて、反応液を分液した。トルエン層である反応液を110℃で1時間共沸脱水した後、この反応液を、密閉型加圧濾過機(東洋製作所製、滅菌濾過機)を用いて、30℃で加圧濾過した。得られた濾液を5000重量部のメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。この沈殿物を濾別後、メタノールで洗浄し、遠心分離し、乾燥粉砕して、目的の剥離剤363重量部を得た。
得られた剥離剤中に含まれる不純物の合計含量は0.4重量%で、重量平均分子量は1.13×10であった。なお、剥離剤中に含まれる不純物の合計含量(重量%)、および、剥離剤の重量平均分子量の算出方法については、下記の通りである。
剥離剤中に含まれる不純物の合計含量は、GPC法を用いて測定した。装置は東ソー社製「TSKgel」(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:0.6ml/分、濃度:1.0mg/ml、カラム:superHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000、検出器:RI(装置内蔵))を使用し、得られた分子量分布図において、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)以下の成分のピーク面積の割合を百分率で表した値とした。
また、剥離剤の重量平均分子量は、上記剥離剤中に含まれる不純物の合計含量と同様にして得られた分子量分布図において、ポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)よりも高分子量の成分についての重量平均分子量である。
【0105】
〔実施例1〕
剥離剤と、エチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂(日本ポリエチレン製、ノバテックLV440、d=0.936、MFR=2.0)と、ポリエチレン系樹脂(日本ポリエチレン製、ノバテックLC720、d=0.922、MFR=9.4)と、ペレスタット230(三洋化成製、MFR=12)を、表1に記載の配合比率で、2軸押出機(L/D=51.5、押出機温度180〜200℃、スクリュー回転数100rpm)にて押出した後、水浴で冷却後にペレット化を行い、得られたペレットを背面層の形成材料とした。
ポリエチレン(東ソー製、ペトロセン186R)を基材層の形成材料とした。
ポリオレフィン系粘着樹脂(住友化学社製、タフセレンH5002)を粘着剤層の形成材料とした。
上記の各形成材料を、3種3層インフレーション成形法(ブロー比2.0、引取速度10m/分)によってダイス温度180℃にて共押出しし、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(1)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0106】
〔実施例2〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(2)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0107】
〔実施例3〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(3)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0108】
〔実施例4〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(4)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0109】
〔実施例5〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(5)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0110】
〔実施例6〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(6)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0111】
〔比較例1〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C1)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0112】
〔比較例2〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C2)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0113】
〔比較例3〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C3)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0114】
〔比較例4〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C4)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0115】
〔比較例5〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C5)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0116】
〔比較例6〕
剥離剤とエチレン−酢酸ビニル共重合体系樹脂とポリエチレン系樹脂とペレスタット230と界面活性剤型帯電防止剤(花王株式会社製、エレストマスターLL−10)の配合比率を表1に示すように変えた以外は実施例1と同様に行い、背面層/基材層/粘着剤層の積層構造を有する粘着シート(C6)を得た。
背面層の厚みは3μm、基材層の厚みは30μm、粘着剤層の厚みは5μmであった。
結果を表2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明で得られる粘着シートは、表面保護フィルムとして有用である。また、視認性を必要とする光学部材用表面保護フィルムにおいて好ましく用いられる。
【符号の説明】
【0120】
100 粘着シート
10 背面層(A)
20 基材層(B)
30 粘着剤層(C)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面層(A)と基材層(B)と粘着剤層(C)を含み、該背面層(A)と該粘着剤層(C)が最外層である粘着シートであって、
該背面層(A)が、ポリオレフィンのブロックと親水性ポリマーのブロックからなるブロックポリマーを、7〜50重量%の含有割合で含み、
該背面層(A)が、離型剤を、2〜20重量%の含有割合で含む、
粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤層(C)の、アクリル板に対する、測定温度23℃、剥離速度10m/分、剥離角度180度での初期粘着力が、0.8〜4N/20mmである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層(C)がポリオレフィン系樹脂およびスチレン系樹脂から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記背面層(A)の形成材料(a)と前記基材層(B)の形成材料(b)と前記粘着剤層(C)の形成材料(c)を含む形成材料組成物を共押出成形して一体化させて得られる、請求項1から3までのいずれかに記載の粘着シート。
【請求項5】
表面保護フィルムである、請求項1から4までのいずれかに記載の粘着シート。
【請求項6】
光学部材用表面保護フィルムである、請求項5に記載の粘着シート。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−1830(P2013−1830A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135082(P2011−135082)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】