説明

粘着シート

【課題】接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる粘着シートを提供する。
【解決手段】基材の少なくとも片面に粘着剤層13を有する粘着シート16であって、上記基材が、熱収縮性フィルム15であり、上記粘着剤層が、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)を含有するアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有する粘着剤組成物。(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー:0〜40重量%

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、剥離時には、容易に剥離でき、接合部を分離・解体できる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々な用途に粘着テープ又はシート(「テープ又はシート」を、単に「テープ」又は「シート」と称する場合がある)が活用されている。粘着シートの代表例としては、アクリル系粘着剤組成物(アクリル系感圧接着剤組成物)を用いて形成された粘着剤層(感圧接着剤層)を備えるアクリル系粘着シート(アクリル系感圧性接着シート)が挙げられる。
【0003】
また、近年では、環境意識の高まりから、上記粘着シートが用いられる分野において、省資源やリサイクルが求められることが多くなってきている。例えば、アクリル系粘着シートは、自動車、機械、電化製品、建材等の分野において、歩留まり向上、工程でのリワーク、リサイクル、作業性等の点から、金属系被着体に対する優れた接着性と易剥離性との両立が特に求められている。
【0004】
アクリル系粘着シートとしては、例えば、接合時には高い接着力と接着信頼性を有するアクリル系粘着シートとして、気泡と中空微小球状体を含有し且つ界面活性剤を含有する粘弾性組成物であって、上記界面活性剤が、分子中にオキシC2-3アルキレン基及びフッ素化炭化水素基を有するフッ素系化合物であることを特徴とする気泡含有粘弾性組成物より形成されている感圧接着剤層を有しているアクリル系感圧性接着シートが知られている(特許文献1参照)。該アクリル系感圧性接着シートは、剥がす際に、容易に剥離することができないという問題があった。
【0005】
あるいは、アクリル系粘着シートとしては、例えば、剥がす際には容易に剥がすことができるアクリル系粘着シートとして、アルキル基の炭素数が4〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分単量体とし、カルボキシル基含有ラジカル重合性単量体が全単量体の0.5〜20重量%共重合されてなるアクリル系ポリマー100重量部に対して、エポキシ系架橋剤0.5〜20重量部とポリイソシアネート化合物0.1〜5重量部を配合してなる粘着剤組成物から形成される粘着剤層を有するアクリル系粘着シートが知られている(特許文献2参照)。該アクリル系粘着シートは、接合時の接着力と接着信頼性が低いという問題があった。
【0006】
これらのアクリル系粘着シートは、被着体に対する優れた接着性と易剥離性との両立は困難であった。
【0007】
さらに被着体からの剥離を容易にするため、粘着剤層中に熱膨張性微小球を配合し、剥離時に加熱することで粘着剤層を発泡させて剥離させること(特許文献3参照)、または基材に熱収縮性フィルムを用い、剥離時に加熱することで粘着シートを収縮させて剥離させること(特許文献4、5参照)、さらにはこれらの方法を組み合わせること(特許文献6〜10参照)が知られている。
【0008】
しかしながら特許文献3〜10に記載の粘着シートにおいては、主に剥離性を課題として挙げており、粘着シートとしての粘着特性や接着信頼性(特に特に耐反撥性と保持力)については何ら検討されていない。また粘着剤層についても、アクリル系粘着剤といった広範な記載しかされておらず、具体的な組成と接着特性や接着信頼性との関係については記載されていない。また被着体に対する優れた接着性と易剥離性との両立についての検討もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−22189号公報
【特許文献2】特開2001−247832号公報
【特許文献3】特開2009−120808号公報
【特許文献4】特開2000−319600号公報
【特許文献5】特開2001−200220号公報
【特許文献6】特開昭61−78887号公報
【特許文献7】特開平3−63381号公報
【特許文献8】特開平4−8782号公報
【特許文献9】特開2010−254789号公報
【特許文献10】特表2011−500902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる粘着シートを提供することにある。
さらに、本発明の他の目的は、特に金属系被着体に対して、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、基材として熱収縮性フィルムを用い、粘着剤層を構成する粘着剤組成物に、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)を下記の含有率で含むモノマー混合物を構成成分として含有するアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有させることにより、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を有し、且つ、接合部を分離・解体する際には、加熱により接着力が低下して、容易に分離・解体できる粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成させた。
(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%
(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%
(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー(前記(a2)は除く):0〜40重量%
(上記含有率(重量%)は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の各モノマーの含有率を示す)
【0012】
すなわち、本発明は、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着シートであって、
上記基材が、熱収縮性フィルムであり、
上記粘着剤層が、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)を下記の含有率で含むモノマー混合物を構成成分として含有するアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有する粘着剤組成物より構成されていることを特徴とする粘着シートを提供する。
(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%
(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%
(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー(前記(a2)は除く):0〜40重量%
(上記含有率(重量%)は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の各モノマーの含有率を示す)
【0013】
上記熱膨張性微粒子の含有量は、上記モノマー混合物100重量部に対して10〜200重量部であることが好ましい。
【0014】
上記(a2)は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン及びN−ビニル−2−カプロラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーであることが好ましい。
【0015】
上記(a3)は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と第3級炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と単環又は多環の脂環式炭化水素の環を構成する炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0016】
上記(a3)は、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーであることが好ましい。
【0017】
上記熱収縮フィルムは、70〜180℃のいずれかの温度において5%以上収縮する熱収縮フィルムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の粘着シートは、上記構成を有しているので、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持性)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる。特に、金属系被着体に対して、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を有し、且つ、接合部を分離・解体する際には、加熱により接着力が低下して、容易に分離・解体できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、作製例1の第一工程を示す概略断面図である。
【図2】図2は、作製例1の第二工程を示す概略断面図である。
【図3】図3は、作製例1の第三工程を示す概略断面図である。
【図4】図4は、作製例1で得られた粘着剤層を示す概略断面図である。
【図5】図5は、作製例1の第四工程を示す概略断面図である。
【図6】図6は、作製例1で得られた粘着シートを示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明の粘着シートの別例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(基材)
本発明の粘着シートは、基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着シートであって、基材が、熱収縮性フィルムであることを特徴とする。
【0021】
熱収縮フィルムは、延伸フィルムの分子配向に基づく内部応力等を利用して、加熱によって少なくとも任意の一軸方向に対し収縮が生じるフィルムである。本発明においては、特に70〜180℃のいずれかの温度において(例えば80℃、170℃等)、下記測定方法で評価される主収縮方向に対する収縮率が5%以上である熱収縮フィルムを用いることが望ましい。収縮率は8%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましく、20%以上であることが特に好ましい(通常90%以下)。収縮率が5%以上であれば、粘着剤層を被着体から引き剥がす力が働き、効率的に剥離することができる。一方収縮率が5%未満であると変形量が少なく効率的に剥離することが出来ない場合がある。
(収縮率の測定方法)
任意のサイズ(例えば20mm×20mm程度)の正方形状(一辺は流れ方向に対して平行になるように)に切り取った熱収縮フィルムを熱風乾燥機の中に投入し、所定の温度で4分間加熱処理し、加熱処理前後のフィルムの各4辺のサイズを測定し、以下に示す式で各4辺の収縮率を算出する。最も収縮率の大きい辺の収縮率の値を主収縮方向の収縮率とする。
収縮率(%)=[(収縮前の寸法−収縮後の寸法)/収縮前の寸法]×100
【0022】
なお本発明の粘着シートにおいて用いうる熱収縮フィルムは、前記のとおり70〜180℃のいずれかの温度において収縮すれば用いることができるが、より効率よく粘着シートを剥離するためには、後述する熱膨張性微粒子の膨張する温度において収縮することが望ましい。すなわち本発明の粘着シートは、基材である熱収縮フィルムが加熱によって収縮することにより粘着剤層を変形させ、被着体から剥離する作用と、熱膨張性微粒子が膨張及び/又は発泡することにより粘着剤層が膨張変形して、粘着剤層表面が凹凸状の形状に変形し、接着力が低下乃至喪失する作用との相乗効果により剥離するものである。従って熱収縮フィルムの収縮と、熱膨張性微小球の膨張は同じタイミングで起こることが好ましく、より具体的には熱膨張性微小球の膨張温度(あるいは発泡温度)において、熱収縮フィルムが5%以上収縮していることが好ましく、10%以上収縮していることがより好ましい。
【0023】
上記熱収縮フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、例えば、10〜500μmが好ましく、より好ましくは12〜200μm、さらに好ましくは15〜100μmである。なお、熱収縮フィルムは単層の形態を有していてもよく、また、複層の形態を有していてもよい。また、熱収縮フィルムには、必要に応じて、背面処理、帯電防止処理、下塗り処理などの各種処理が施されていてもよい。
【0024】
本発明の熱収縮フィルムを構成する材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリノルボルネン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。本発明においては、特にポリエステル樹脂製の熱収縮フィルムを用いることが望ましい。ポリエステル樹脂製の熱収縮フィルムは粘着剤層との接着力(投錨力)が高く、下塗り処理を必要としないという利点がある。
【0025】
また、上記熱収縮フィルムは、市販品が利用されてもよい。上記熱収縮フィルムの市販品としては、特に限定されないが、例えば商品名「スペースクリーン(東洋紡社製)、商品名「ファンシーラップ」(グンゼ社製)、商品名「トレファン」(東レ社製)、商品名「アートン」(JSR社製)、商品名「ゼオノア」(日本ゼオン社)、商品名「サンテック」(旭化成社製)などを用いることができる。
【0026】
(粘着剤層)
本発明の粘着シートにおいて用いられる粘着剤層は、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)を下記の含有率で含むモノマー混合物を構成成分として含有するアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有する粘着剤組成物より構成されていることを特徴とする。
(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%、
(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%、
(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー(前記(a2)は除く):0〜40重量%
(上記含有率(重量%)は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の各モノマーの含有率を示す)
本明細書において、上記粘着剤組成物を「本発明の粘着剤組成物」と称する場合がある。また、本発明の粘着剤組成物により構成される粘着剤層を、「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。
【0027】
なお、「粘着剤組成物」には、「粘着剤を構成するための組成物」の意味を含むものとする。また、「モノマー混合物」は「モノマー成分のみの混合物」を意味する。さらに本発明の粘着剤組成物は、「熱膨張性微粒子含有粘着剤組成物」と称する場合がある。
【0028】
また、本発明の粘着シートにおいて用いられる粘着剤層は、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)由来の構成単位を下記の含有率で含むアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有する粘着剤組成物より構成されていることを特徴とする。
(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%、
(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%、
(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー(前記(a2)は除く):0〜40重量%
(上記含有率(重量%)は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の各モノマーの含有率を示す)
【0029】
本願において、「エチレン性不飽和結合」とは、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合を意味する。また、エチレン性不飽和結合を有する基としては、特に限定されないが、例えば、ビニル基、ビニリデン基、アリル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。さらに、本願において、「単官能」とはエチレン性不飽和結合を分子内に1つ有することを意味し、「多官能」とはエチレン性不飽和結合を分子内に2つ以上有することを意味する。
【0030】
「ホモポリマーとした時のガラス転移温度(Tg)」とは、「当該モノマーの単独重合体のガラス転移温度(Tg)」を意味し、あるモノマー(「モノマーX」と称する場合がある)のみをモノマー成分として形成される重合体のガラス転移温度(Tg)を意味する。具体的には、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc,1989年)に数値が挙げられている。なお、上記文献に記載されていない単独重合体のガラス転移温度(Tg)は、例えば、以下の測定方法により得られる値をいう。すなわち、温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマーX100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部及び重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液を剥離ライナー上に流延塗布し、乾燥して厚み約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルをアルミニウム製のオープンセルに約1〜2mg秤量し、温度変調DSC(商品名「Q−2000」 ティー・エイ・インスツルメント社製)を用いて、50ml/minの窒素雰囲気下で昇温速度5℃/minにて、ホモポリマーのReversing Heat Flow(比熱成分)挙動を得る。JIS−K−7121を参考にして、得られたReversing Heat Flowの低温側のベースラインと高温側のベースラインを延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点の温度をホモポリマーとした時のガラス転移温度(Tg)とする。
【0031】
本発明の粘着剤層は、アクリル系共重合体を少なくとも含むアクリル系粘着剤層であることが好ましい。なお、アクリル系共重合体の構成成分であるモノマー混合物は、分子中に(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(アクリル系モノマー)をモノマー成分全量(100重量%)に対して40重量%以上(より好ましくは50重量%以上)含むことが好ましい。
【0032】
上記アクリル系共重合体は、上記モノマー成分(モノマー単位)を公知乃至慣用の重合方法により重合することにより、得ることができる。このような重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法、活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられる。中でも、粘着剤層の透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましく、より好ましくは活性エネルギー線重合方法である。
【0033】
本発明の粘着剤層は、アクリル系共重合体及び熱膨張性微粒子を少なくとも含有する本発明の粘着剤組成物により構成される。また、本発明の粘着剤層は、本発明の粘着剤層を形成する組成物を用いることにより得られる。本発明の粘着剤層を形成する組成物は、いずれの形態を有していてもよく、例えば、エマルション型、溶剤型(溶液型)、活性エネルギー線硬化型、熱溶融型(ホットメルト型)などが挙げられる。中でも、溶剤型の組成物や活性エネルギー線硬化型の組成物が好ましく挙げられ、活性エネルギー線硬化型の組成物が特に好ましく挙げられる。
【0034】
上記の溶剤型の組成物としては、アクリル系共重合体を必須成分として含む組成物が好ましく挙げられる。また、上記活性エネルギー線硬化型の組成物としては、アクリル系共重合体の構成成分であるモノマー混合物又はその部分重合物を必須成分として含む組成物が好ましく挙げられる。中でも、本発明の粘着剤層を形成する組成物としては、生産性の点、環境への影響の点、厚さのある粘着剤層の得やすさの点より、アクリル系共重合体の構成成分であるモノマー混合物又はその部分重合物を必須成分として含む活性エネルギー線硬化型の組成物であることが好ましい。
【0035】
本発明の粘着剤層におけるアクリル系共重合体の含有量は、特に限定されないが、接着信頼性の点より、本発明の粘着剤層全量(全重量、100重量%)に対して、33重量%以上(例えば33〜91重量%)であることが好ましく、より好ましくは40重量%以上(例えば40〜87重量%)である。例えば、本発明の粘着剤層がモノマー混合物又はその部分重合物を必須成分として含む組成物により形成される場合、モノマー混合物又はその部分重合物の割合は、特に限定されないが、この組成物の合計量(100重量%)に対して、33重量%以上(例えば33〜91重量%)が好ましく、より好ましくは40重量%以上(例えば40〜87重量%)である。
【0036】
本発明の粘着剤層は、アクリル系共重合体を少なくとも含む。上記アクリル系共重合体は、その構成成分として、上記モノマー混合物を含有する。つまり、上記アクリル系共重合体は、構成するモノマー成分として、(a1)、(a2)及び(a3)を含有していてもよい。
【0037】
(a1)は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーである。(a1)はいわゆる単官能モノマーである。
【0038】
(a1)としては、例えば、下記表1に示すものが挙げられる。なお、上記モノマー混合物において、(a1)は、単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【表1】

【0039】
中でも、(a1)は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が−20℃未満である炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーがより好ましく、さらにより好ましくはホモポリマーとした時のガラス転移温度が−40℃未満である炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーである。
【0040】
具体的には、(a1)は、n−ブチルアクリレート、sec−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレートが好ましく、より好ましくはn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレートである。
【0041】
本発明の粘着剤層が含有するアクリル系共重合体を構成するモノマー成分全量(全重量、100重量%)中の(a1)の含有率は、特に限定されないが、主のモノマー成分であるので、30重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%である。
【0042】
上記モノマー混合物において、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の(a1)の含有率は、主のモノマー成分であるので、40〜90重量%であり、好ましくは50〜87重量%であり、より好ましくは60〜80重量%である。(a1)の含有率が40重量%未満であると、粘着剤組成物により構成される粘着剤層において、例えば常温(23±2℃)や低温度(例えば、−40〜−10℃)の環境下での初期の貼り合わせ性(初期接着力)などの接着特性が十分に発揮されない不具合を生じる場合がある。一方、含有率が90重量%を超えると、(a2)及び(a3)の不足により、接着力、耐反撥性、凝集性などが不足する場合がある。
【0043】
(a2)は、分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。(a2)は、分子内に少なくとも1つの窒素原子を有するモノマーであり、窒素原子を1つ有していても良いし、2つ以上有していても良い。また(a2)は、エチレン性不飽和結合を分子内に1つ有することから、単官能モノマーである。(a2)は(a1)の共重合性成分である。なお、上記モノマー混合物において、(a2)は、単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。本発明においては、モノマーとして(a2)を用いることで、アクリル系共重合体に適度な極性を付与できることより、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離可能な粘着シートを得ることができる。
【0044】
(a2)は、特に限定されないが、N−ビニル環状アミド、(メタ)アクリルアミド類からなる群より選択される少なくとも1のモノマーが好ましい。
【0045】
N−ビニル環状アミドとしては、例えば、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
【化1】

(式(1)中、R1は2価の有機基を示す。)
【0046】
なお、式(1)において、R1は、好ましくは飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数3〜5のアルキレン基等である。
【0047】
上記N−ビニル環状アミドとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロールなどが挙げられる。
【0048】
また、(メタ)アクリルアミド類としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。N−アルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド等が挙げられる。さらに、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドのようなアミノ基含有(メタ)アクリルアミドなども挙げられる。次に、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(n−ブチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ(t−ブチル)(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0049】
さらには、上記(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルロイルモルフォリン、(メタ)アクリロイルピロリドン、(メタ)アクリロイルピロリジン等のN−アクリロイル基を有する環状(メタ)アクリルアミドも挙げられる。
【0050】
さらにまた、上記(メタ)アクリルアミド類としては、炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有するN−ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーが挙げられる。該炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有するN−ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、例えば、下記式(2)で示される化合物が挙げられる。
【化2】

(式(2)中、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3は炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を示し、R4は水素原子又は炭素数1〜10の飽和炭化水素基を示す。)
【0051】
なお、式(2)において、R3は、直鎖状の鎖状構造を有していてもよく、分岐鎖状の鎖状構造を有していてもよい。
【0052】
上記炭素数1〜4のヒドロキシアルキル基を有するN−ヒドロキシルアルキル(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(1−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)アクリルアミド、N−(4−ヒドロキシブチル)メタクリルアミド、N−メチル−N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0053】
さらに、上記N−ビニル環状アミド及び上記(メタ)アクリルアミド類以外の(a2)としては、例えば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基を有するモノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド骨格を有するモノマー;N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド等のイタコンイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミド等のスクシンイミド系モノマー等が挙げられる。
【0054】
(a2)は、本発明の粘着剤組成物により構成される粘着剤層(本発明の粘着剤層)の接着信頼性と柔軟性とのバランスの取りやすさの点から、N−ビニル−2−ピロリドンやN−ビニル−2−カプロラクタム;炭素数が1〜4(より好ましくは1又は2)のN−アルキル基を一個または二個有する(メタ)アクリルアミド(例えば、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等のN,N−ジアルキルアクリルアミド);N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)アクリルアミドなどが好ましい。特に、(a2)は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタムが好ましい。
【0055】
上記モノマー混合物において、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の(a2)の含有率は、5〜40重量%であり、好ましくは10〜40重量%であり、より好ましくは15〜30重量%である。(a2)の含有率を上記範囲内とすることで、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離することができる。一方、含有率が5重量%未満であると、粘着剤組成物により構成された粘着剤層や該粘着剤層を有する粘着シートにおいて、加工性が悪くなる、接着信頼性が発揮しにくくなるなどの不具合を生じる場合がある。一方、含有率が40重量%を超えると、粘着剤組成物により構成された粘着剤層や該粘着剤層を有する粘着シートにおいて、柔軟性が低下する、タックが低下するなどの不具合を生じる場合がある。なお、柔軟性の低下は、接着信頼性(特に耐反撥性)の低下をまねくおそれがある。
【0056】
(a3)は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1のエチレン性不飽和結合を有するモノマーである。(a3)には、上記(a2)は含まれない。(a3)は、エチレン性不飽和結合を分子内に1つ有することから、単官能モノマーである。なお、上記モノマー混合物において、(a3)は、単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【0057】
上記モノマー混合物において、(a3)としては、例えば、下記表2に示すものが挙げられる。なお、上記モノマー混合物において、(a3)は、単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【表2】

【0058】
中でも、(a3)は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が10℃以上である、分子内に1のエチレン性不飽和結合を有するモノマー(上記(a2)は除く)がより好ましく、さらにより好ましくはホモポリマーとした時のガラス転移温度が15℃以上である、分子内に1のエチレン性不飽和結合を有するモノマー(上記(a2)は除く)である。
【0059】
また、(a3)は、分子内に被着体との間で相互作用を生じさせる構造(例えば、酸性基など)を有しないことや粘着剤組成物により構成される粘着剤層の弾性や柔軟性を調整することから、「ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と第3級炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマー」や、「ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と単環又は多環の脂環式炭化水素の環を構成する炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマー」が好ましい。
【0060】
具体的には、(a3)は、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレート、フルフリルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノメタクリレート等を用いることができる。本発明においては、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノールモノアクリレートが好ましく、さらに、tert−ブチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレートが特に好ましい。
【0061】
上記モノマー混合物において、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の(a3)の含有率は、0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%であり、より好ましくは5〜20重量%である。モノマー混合物中に(a3)を含有させることで、粘着剤組成物により構成された粘着剤層や該粘着剤層を有する粘着シートにおいて、被着体に対する接着力を向上させることができる。一方、(a3)の含有率が40重量%を超えると、粘着剤組成物により構成された粘着剤層や該粘着剤層を有する粘着シートにおいて、柔軟性が低下する、タックが低下するなどの不具合を生じる場合がある。なお、柔軟性の低下は、接着信頼性(特に耐反撥性)に低下をまねくおそれがある。
【0062】
上記モノマー混合物では、本発明の粘着シートの効果を損なわない範囲で、(a1)、(a2)及び(a3)と共に、共重合性モノマー(a4)を含んでいてもよい。(a4)には、上記(a1)、上記(a2)、上記(a3)及び後述の多官能モノマーは含まれない。(a4)は、分子内に1のエチレン性不飽和結合を有する単官能モノマーである。また、上記モノマー混合物において、(a4)は、単独で含まれていてもよいし、2種以上組み合わせて含まれていてもよい。上記モノマー混合物における(a4)の含有量は、特に限定されないが、本発明の効果を損なわない範囲で選択されることが好ましい。
【0063】
本発明において、接合時の接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持性)、及び、被着体からの剥離時の剥離・解体性を共に高いレベルで発揮できる粘着剤層を得る点から、上記モノマー混合物では、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の(a1)の含有率が40〜90重量%であり、(a2)の含有率が5〜40重量%であり、(a3)の含有率が3〜30重量%であることが好ましい。
【0064】
上記モノマー混合物は、その一部を重合させた部分重合物として使用してもよい。部分重合物は、上記モノマー混合物に含まれるモノマー成分のうち1又は2以上のモノマー成分が部分的に重合している組成物のことをいう。上記モノマー混合物の部分重合物は、その重合率により、粘性を有するシロップ状のことがある。
【0065】
上記モノマー混合物の部分重合物は、上記モノマー混合物に含まれるモノマー成分の一部を重合させることにより得られる。例えば、モノマー混合物の部分重合物は、酸素との接触を避けて活性エネルギー線(特に紫外線)をモノマー混合物に照射することにより得られる。
【0066】
上記モノマー混合物の部分重合物の重合率は、特に限定されないが、本発明の粘着剤層を形成する組成物を取り扱いや塗工に適した粘度とする点から、2〜40重量%が好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。
【0067】
上記部分重合物の重合率は、以下のようにして求められる。部分重合物の一部をサンプリングして、試料とする。該試料を精秤しその重量を求めて、「乾燥前の部分重合物の重量」とする。次に、試料を130℃で2時間乾燥して、乾燥後の試料を精秤しその重量を求めて、「乾燥後の部分重合物の重量」とする。そして、「乾燥前の部分重合物の重量」及び「乾燥後の部分重合物の重量」から、130℃で2時間の乾燥により減少した試料の重量を求め、「重量減少量」(揮発分、未反応モノマー重量)とする。
得られた「乾燥前の部分重合物の重量」及び「重量減少量」から、下記式より、部分重合物の重合率(重量%)を求める。
部分重合物の重合率(重量%)=[1−(重量減少量)/(乾燥前の部分重合物の重量)]×100
【0068】
本発明の粘着剤組成物は、上記モノマー混合物を構成成分として含有するアクリル系共重合体に加えて、熱膨張性微粒子を少なくとも含有する。例えば、本発明の粘着剤層を形成する組成物は、上記モノマー混合物又はその部分重合物に加えて、熱膨張性微粒子を少なくとも含有していてもよい。熱膨張性微粒子は、熱により体積が膨張する微粒子のことをいう。なお、本発明の粘着剤組成物では、熱膨張性微粒子が、単独で又は2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【0069】
上記熱膨張性微粒子は、特に限定されないが、マイクロカプセル化されている熱膨張性微粒子が好ましい。このようなマイクロカプセル化されている熱膨張性微粒子としては、例えば、イソブタン、プロパン、ペンタンなどの加熱により容易にガス化して膨脹する物質を、弾性を有する殻内に内包させた微小球(「熱膨張性微小球」と称する場合がある)が挙げられる。
【0070】
上記熱膨張性微小球の殻は、熱可塑性物質、熱溶融性物質、熱膨脹により破裂する物質などで形成されることが好ましい。また、熱膨張性微小球の殻を形成する物質としては、例えば塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスルホンなどが挙げられる。熱膨張性微小球は、慣用の方法、例えば、コアセルベーション法、界面重合法などにより製造される。
【0071】
また、上記熱膨張性微小球は、市販品が利用されてもよい。上記熱膨張性微小球の市販品としては、特に限定されないが、例えば商品名「マツモトマイクロスフェアF−30」「マツモトマイクロスフェアF−50」「マツモトマイクロスフェアF−80S」「マツモトマイクロスフェアF−85」(松本油脂製薬株式会社製);商品名「エクスパンセルDu シリーズ」(エクスパンセル社製)などが挙げられる。中でも、商品名「エクスパンセル 051Du40」(エクスパンセル社製)がより好ましい。
【0072】
上記熱膨張性微粒子(特に、熱膨張性微小球)の平均粒径は、特に限定されないが、分散性や薄層形成性などの点から、1〜80μmが好ましく、より好ましくは3〜50μmである。
【0073】
さらに、上記熱膨張性微粒子(特に、熱膨張性微小球)は、本発明の粘着剤組成物により構成される粘着剤層において、加熱処理による接着力の低下を効率よく生じさせる点から、体積膨張率が5倍以上、特に10倍以上となるまで破裂しない強度を有するものが好ましい。なお、低い体積膨張率で破裂する熱膨張性微粒子(例えば、5倍未満の体積膨張率で破裂する熱膨張性微粒子など)やマイクロカプセル化されていない熱膨張剤(熱発泡剤)を用いた場合には、粘着剤組成物により構成される粘着剤層において加熱処理を行っても、粘着剤層と被着体との接触面積を十分に減少させることができず、良好な剥離性が得られにくい。なお、体積膨張率は下記の式により求められる。
体積膨張率=(加熱後の熱膨張性微小球の体積)/(加熱前の熱膨張性微小球の体積)
【0074】
本発明の粘着剤組成物において、上記熱膨張性微粒子(特に、熱膨張性微小球)の含有量は、その種類によっても異なり、特に限定されないが、アクリル系共重合体100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、より好ましく10〜125重量部であり、さらに好ましくは15〜100重量部であり、特に好ましくは20〜80重量部である。熱膨張性微粒子の含有量が5重量部未満であると、粘着剤組成物により構成される粘着剤層において、加熱処理による粘着剤層と被着体との接触面積の減少が不十分になりやすい。また、200重量部を超えると、粘着剤組成物により構成される粘着剤層の凝集破壊が生じやすくなる。
【0075】
なお、本発明の粘着シートにおいては、前記モノマー混合物はアクリル系共重合体にほぼ100%変換されるので(すなわち重合率が100%)、モノマー混合物100重量部は、粘着剤層中のアクリル系共重合体100重量部に対応する。従って、例えば、本発明の粘着剤層がモノマー混合物又はその部分重合物を必須成分とする組成物により形成される場合、上記熱膨張性微粒子(特に、熱膨張性微小球)の含有量は、モノマー混合物100重量部に対して、5〜200重量部が好ましく、より好ましく10〜125重量部であり、さらに好ましくは15〜100重量部であり、特に好ましくは20〜80重量部である。
【0076】
さらに、本発明の粘着剤層を形成する組成物には、熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤が含有されていてもよい。例えば、本発明の粘着剤層を形成する組成物には、上記モノマー混合物又はその部分重合物、及び、上記熱膨張性微粒子の他に、重合開始剤が含有されていてもよい。本発明の粘着剤層を形成する組成物が熱重合開始剤や光重合開始剤などの重合開始剤を含有していると、該組成物により粘着剤層を形成する際に、熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用することができるので、熱膨張性微粒子が混合された形態で該組成物を硬化させて粘着剤層を得ることができる。つまり、このような組成物によれば、熱膨張性微粒子が安定して含有された構造を有する粘着剤層を容易に得ることができる。特に、本発明の粘着剤層を形成する組成物は後述のように光重合開始剤を含有することが好ましいので、このような組成物によれば、活性エネルギー線を用いた重合反応(光硬化反応)を利用して、熱膨張性微粒子が安定して含有された構造を有する粘着剤層を得ることができる。なお、重合開始剤は、単独で又は2種以上組み合わせて含まれていてもよい。
【0077】
特に、粘着剤層を形成する組成物による粘着剤層形成時の硬化時間を短くすることができる点から、上記重合開始剤は光重合開始剤が好ましい。
【0078】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などが挙げられる。
【0079】
具体的には、ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASFジャパン社製)などが挙げられる。α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン (商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(商品名「ダロキュア1173」、BASFジャパン社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商品名「イルガキュア2959」、BASFジャパン社製)などが挙げられる。α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モリフォリノプロパン−1−オン(商品名「イルガキュア907」、BASFジャパン社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商品名「イルガキュア369」、BASFジャパン社製)などが挙げられる。アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商品名「ルシリン TPO」、BASFジャパン社製)などが挙げられる。ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3´−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0080】
本発明において、上記重合開始剤の含有量は、その種類によっても異なり、特に限定されないが、光重合開始剤の場合、上記モノマー混合物100重量部に対して、0.001〜5重量部が好ましく、より好ましく0.01〜5重量部であり、さらにより好ましくは0.05〜3重量部である。上記光重合開始剤の含有量が0.001重量部未満であると、重合反応に要する時間が長くなる場合があり、一方、5重量部を超えると、粘着剤層において、アクリル系共重合体の分子量の低下を生じ、粘着特性のバラツキを生じるおそれがある。
【0081】
さらにまた、本発明の粘着剤層を形成する組成物は、粘着剤層の弾性や柔軟性を調整したり、該粘着剤層の凝集力を上げて、接着力を向上させる点から、分子内にエチレン性不飽和結合を2以上有するモノマーを含有することが好ましい。また、粘着剤層の発泡性の点からも分子内にエチレン性不飽和結合を2以上有するモノマーを含有することが好ましい。なお、本願では、「分子内にエチレン性不飽和結合を2以上有するモノマー」を「多官能モノマー」と称する場合がある。
【0082】
上記多官能モノマーは、上記(a2)及び上記(a3)には含まれない。
【0083】
また、上記多官能モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2つ以上有し、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合が(メタ)アクリロイル基中のエチレン性不飽和結合であるモノマーが好ましい。本願では、「分子内にエチレン性不飽和結合を2以上有し、少なくとも1のエチレン性不飽和結合が(メタ)アクリロイル基中のエチレン性不飽和結合であるモノマー」を「多官能(メタ)アクリレート」と称する場合がある。なお、該多官能(メタ)アクリレートでは、分子内のエチレン性不飽和結合が全て(メタ)アクリロイル基中のエチレン性不飽和結合であってもよい。
【0084】
上記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12−ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、末端に(メタ)アクリロイル基を複数個有する反応性ハイパーブランチポリマー(例えば、商品名「CN2300」「CN2301」「CN2320」、SARTOMER社製など)などが挙げられる。
【0085】
本発明の粘着剤層を形成する組成物において、上記多官能モノマーの含有量は、特に限定されない。具体的には、例えば、本発明の粘着剤層を形成する組成物が、上記モノマー混合物又はその部分重合物を少なくとも含む組成物であり、上記多官能(メタ)アクリレートを含有する場合、その含有量は、上記モノマー混合物100重量部に対して、5重量部以下(例えば0.001〜5重量部)が好ましく、より好ましくは3重量部以下(例えば0.001〜3重量部)であり、さらにより好ましくは1重量部以下(例えば0.001〜1重量部)である。多官能(メタ)アクリレートの含有量が多すぎると(例えば5重量部を超えると)、粘着剤層の柔軟性が損なわれ、特に粘着剤層の耐反撥性に悪影響を及ぼすおそれがある。なお、多官能(メタ)アクリレートの含有量が少なすぎると、粘着剤層において十分な凝集力が得られず、粘着剤層の接着信頼性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0086】
なお、本発明の粘着剤層を形成する組成物では、上記多官能モノマー(特に多官能(メタ)アクリレート)は、後述で記載の粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層、本発明の粘着剤層)の溶剤不溶分(ゲル分率)が所望の溶剤不溶分になるように適宜調整して含有されることが好ましい。
【0087】
さらにまた、本発明の粘着剤層は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含有されていてもよい。つまり、本発明の粘着剤層を形成する組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、添加剤が含有されていてもよい。添加剤は、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤などの架橋剤;ロジン誘導体樹脂、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノール樹脂などの粘着付与剤;可塑剤;充填剤;老化防止剤;界面活性剤などが挙げられる。なお、本発明の粘着剤組成物では、添加剤が2種以上含有されていてもよい。
【0088】
本発明の粘着剤層を形成する組成物は、その取り扱い上、塗工に適した粘度(通常、B型粘度計における粘度測定において、測定温度:25℃の条件で測定された粘度として、0.3〜40Pa・s)に、調整されてもよい。
【0089】
本発明の粘着剤層を形成する組成物は、上記粘度を得る点から、上記モノマー混合物の部分重合物を含有することが好ましい。また、増粘用ポリマーが配合されていてもよい。
【0090】
本発明の粘着剤層を形成する組成物の作製方法としては、特に限定されないが、例えば、上記モノマー混合物又はその部分重合物に、熱膨張性微粒子、必要に応じて添加される成分(例えば、上記光重合開始剤、上記多官能(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー、添加剤など)を配合することが挙げられる。
【0091】
本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物が(a2)をモノマー成分として含むので、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる粘着剤層を構成できる。また、接着特性にすぐれる粘着剤層を構成できる。(a2)は、粘着剤層の接着力や凝集力の向上に寄与するためである。
【0092】
このため、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、(a1)の共重合性モノマーとして、酸性基含有モノマー(例えば、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマー;スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマーなどのカルボキシル基以外の酸性基(スルホン酸基、リン酸基など)を含有するモノマー等)を実質的に含有しなくても、被着体への良好な接着力を発揮しつつ、加熱によって被着体から易剥離できる粘着剤層を構成できる。なお、上記の「実質的に含有しない」とは、上記モノマー混合物において、全く含有しないか、あるいはその含有量がモノマー成分全量100重量部に対して0.1重量部以下であることをいう。
【0093】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、分子内に少なくとも1の窒素原子と1のエチレン性不飽和結合とを有するモノマー(a2)をモノマー成分として含有するので被着体(特に金属系被着体)に対して経時での接着力上昇が生じにくい粘着剤層を構成できる。さらにまた、被着体(特に金属系被着体)に対しての腐食が生じにくい粘着剤層を構成できる。(a2)は、分子内に被着体との間で相互作用を生じさせる構造(例えば、上記酸性基など)を有しないためである。なお、「金属系被着体」とは、金属を素材として構成される被着体の意味である。
【0094】
なお、酸性基含有モノマーを実質的に含有する粘着剤組成物により構成される粘着剤層を金属系被着体に貼付すると、被着体との間での相互作用(例えば、酸成分と金属との間の水素結合など)により、経時で接着力が上昇し、被着体からの剥離や接合部の分離・解体が困難となる場合がある。また、金属系被着体において、酸成分による腐食が生じる場合がある。
【0095】
さらに、本発明の粘着剤組成物は、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、(a2)に加えて、(a3)を含有することで、より経時での接着力上昇が生じにくい粘着剤層を形成できる。
【0096】
本発明の粘着剤組成物が接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を維持しつつ、被着体から剥がす際には容易に剥離して、容易に接合部を分離・解体できる粘着剤層を構成できるのは、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、(a2)とともに(a3)をモノマー成分として含むことにもよる。(a3)は、(a2)の効果を高める成分であるためである。
【0097】
本発明の粘着剤組成物は熱膨張性微粒子を含有するので、本発明の粘着剤組成物により構成される粘着剤層(本発明の粘着剤層、熱膨張性微粒子含有粘着剤層)は、被着体へ貼付後、加熱されると、加熱による熱膨張性微粒子の発泡に伴う粘着剤層と被着体との接触面積の減少が生じて、(i)接着力が容易に低下する特性(剥離性、易剥離性)及び(ii)接合部の解体性(分離性)を発揮する。すなわち、本発明の粘着剤組成物は、剥離の際には加熱により容易に剥離・解体できる粘着剤層を構成できる。本願では、(i)及び(ii)の特性をまとめて、「剥離・解体性」と称する場合がある。
【0098】
なお、上記粘着剤組成物が、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、(a1)の代わりに、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が0℃を超える、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有していると、粘着剤組成物により構成される粘着剤層の接着力及び接着信頼性が低下し、剥離・解体性との両立ができなくなる。
【0099】
また、上記粘着剤組成物が、アクリル系共重合体の構成成分として含有するモノマー混合物において、(a1)の代わりに、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が0℃を超える、炭素数1〜3のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー又はホモポリマーとしたときのガラス転移温度が0℃を超える、炭素数12を超えるアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含有していると、粘着剤組成物により構成される粘着剤層の接着力及び接着信頼性が低下し、剥離・解体性との両立ができなくなる。
【0100】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、上記粘着剤組成物(熱膨張性微粒子含有粘着剤組成物、本発明の粘着剤組成物)により構成される粘着剤層である。また、本発明の粘着剤層は、熱膨張性微粒子を含有する粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層)である。本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層は、ベースポリマーとして、上記モノマー混合物又はその部分重合物によるポリマーを含有する。
【0101】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)の溶剤不溶分(ゲル分率)は、特に限定されないが、50〜99重量%が好ましく、より好ましくは60〜95重量%である。溶剤不溶分が50重量%より低くなると、熱膨張性微粒子の発泡による粘着剤層の被着体からの剥離が困難となる場合がある。また、溶剤不溶分が99重量%より高くなると、粘着剤層の濡れ性が悪くなり、接着が困難となる場合がある。
【0102】
粘着剤層の溶剤不溶分は、粘着剤層中の「溶剤不溶成分の割合」を指し、以下の「粘着剤層の溶剤不溶分の測定方法」により算出される値である。なお、粘着剤層の溶剤不溶分には、溶剤に不溶の熱膨張性微粒子も含まれる。
【0103】
粘着剤層の溶剤不溶分の測定方法
粘着剤層を約1g採取し、これを試料とする。該試料を精秤し、その重量を求めて、「浸漬前の粘着剤層の重量」とする。次に、試料を酢酸エチル40gに7日間浸漬した後、酢酸エチルに不溶解な成分(不溶解部分)を全て回収し、回収した全不溶解部分を130℃で2時間乾燥させてから、その重量を求めて、「不溶解部分の乾燥重量」とする。そして、得られた数値を以下の式に代入して算出する。
粘着剤層の溶剤不溶分(重量%)=[(不溶解部分の乾燥重量)/(浸漬前の粘着剤層の重量)]×100
【0104】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)の厚みは、使用目的や加熱による粘着力の低減性などに応じて適宜選択されるが、表面の平滑性を保持するため、熱膨張性微粒子(特に熱膨張性微小球)の最大粒径以上とすることが好ましい。また、本発明の粘着剤層において良好な剥離・解体性を得る点からは、粘着剤層の厚みが大きくなるほど粘着剤層中の熱膨張性微粒子の絶対量が増えるので、本発明の粘着剤層の厚みは大きいほうが好ましい。しかし、本発明の粘着剤層の厚みを大きくすると、粘着剤層中の熱膨張性微粒子の絶対量が増える結果粘着剤層中の接着成分の割合が減少するので、粘着剤層における接着力や接着信頼性が低下するおそれがある。
【0105】
よって、本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)の厚みは、特に限定されないが、粘着剤層における接着信頼性と剥離・解体性との両立を図る点から、1〜500μmが好ましく、より好ましくは10〜300μmであり、さらにより好ましくは30〜250μmである。なお、本発明の粘着剤層は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。
【0106】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、より具体的には、剥離フィルムや基材等の適当な支持体上に、本発明の粘着剤層を形成する組成物を塗布して組成物層を得て、次に、該組成物層を、必要に応じて乾燥や硬化(例えば、熱や活性エネルギー線による硬化)させることにより形成される。なお、活性エネルギー線による硬化(光硬化)を利用する場合には、光重合反応は空気中の酸素に阻害されるので、例えば、組成物層上に剥離フィルム(セパレーター)を貼り合わせること、窒素雰囲気下で光硬化させること等により、酸素を遮断することが好ましい。
【0107】
特に、本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、熱膨張性微粒子が安定して含有された構造を得る点からは、重合開始剤(光重合開始剤や熱重合開始剤などの重合開始剤)を含有する上記組成物(本発明の粘着剤層を形成する組成物)により、熱や活性エネルギー線による硬化反応を利用して、形成されることが好ましい。また、本発明の粘着剤層は、厚みのある粘着剤層を得る点からは、光重合開始剤を含有する上記組成物により、活性エネルギー線による硬化反応を利用して、形成されることが好ましい。
【0108】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、熱膨張性微粒子を含有することにより、加熱による熱膨張性微粒子の発泡によって、接着力が容易に低下する特性(易剥離性)を有する。
【0109】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、様々な素材の被着体に対して、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を維持しつつ、剥離の際には加熱により良好な剥離・解体性を発揮する。また、接着特性に優れる。
【0110】
本発明の粘着シートに設けられる粘着剤層(本発明の粘着剤層)は、特に、金属系被着体に対しても、接合時には高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性)を維持しつつ、剥離の際には加熱により良好な剥離・解体性を発揮する。また、金属系被着体に対しても、接着特性に優れる。
【0111】
(粘着シート)
本発明の粘着シートは、基材である熱収縮性フィルムの少なくとも片面に、上記粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層、本発明の粘着剤層)を少なくとも有する。本発明の粘着シートは、上記粘着剤層を有するので、被着体に対する接合時には、高い接着力と接着信頼性(特に耐反撥性と保持力)を維持しつつ、剥離時には、加熱による熱膨張性微粒子の発泡と基材の収縮によって接着力(接着強度、接着強さ)が極端に低下する特性を有する。
【0112】
特に、本発明の粘着シートは、金属系被着体に対しても、高い接着力を有し、且つ、剥離時には、加熱による熱膨張性微粒子の発泡と基材の収縮によって接着力が容易に低下する特性を有する。また、金属系被着体に対しても、接着特性に優れる。
【0113】
本発明の粘着シートは、再剥離を目的とした粘着シートでもある。また、本発明の粘着シートは、加熱発泡型再剥離性粘着シートでもある。
【0114】
本発明の粘着シートの形態は、特に限定されないが、ロール状に巻回された形態であってもよく、シートが積層された形態であってもよい。すなわち、本発明の本発明の粘着シートは、シート状、フィルム状、テープ状などの形態を有することができる。あるいは特定の形状に打ち抜き加工されたものであっても良く、裁断加工されたものであってもよい。
【0115】
なお、ロール状に巻回された形態の粘着シートは、粘着面を後述の剥離フィルムにより保護した状態でロール状に巻回された形態を有していてもよい。また、ロール状に巻回された形態の粘着シートは、後述の基材を有するタイプである場合、基材の片面側に形成された剥離処理層(背面処理層)により粘着面を保護した状態でロール状に巻回された形態を有していてもよい。なお、基材の片面側に剥離処理層を形成させる際に用いられる剥離処理剤(剥離剤)としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤などが挙げられる。
【0116】
また、本発明の粘着シートは、粘着シートの両面側が粘着面となっている両面粘着シートであってもよいし、粘着シートの片面側のみが粘着面となっている片面粘着シートであってもよい。なお、本発明の粘着シートは、2つの部材同士を貼り合わせる点からは、両面粘着シートであることが好ましい。
【0117】
また、本発明の粘着シートは、発熱層を有していてもよい。本発明の粘着シートが発熱層を有していると、被着体から剥がす際に、発熱層を発熱させることにより熱膨張性微粒子を発泡させることが可能となり、被着体に対する接着力を低下させることができる。
【0118】
本発明の粘着シートにおいて発熱層を設ける場合、発熱層の粘着シート全体に占める位置は、少なくとも一方の面が上記粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層、本発明の粘着剤層)による面となる限り特に限定されない。
【0119】
上記発熱層は、特に限定されないが、面状発熱体が好ましい。面状発熱体は、通電することによって発熱し、形状が平板状やシート状の発熱素子を少なくとも有する。形状が平板状やシート状の発熱素子としては、例えば、金属箔、金属板、シート状グラファイトカーボン、カーボン粉末又は金属粉末などを含むシート状の材料などが挙げられる。また、面状発熱体は、形状が平板状やシート状の発熱素子を被覆する電気絶縁性シートを含んでいてもよい。
【0120】
上記発熱層の厚みは、特に限定されないが、10〜300μmが好ましく、より好ましくは10〜150μmである。
【0121】
また、本発明の粘着シートは、本発明の効果を損なわない範囲で、例えば、中間層、下塗り層、上記粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層、本発明の粘着剤層)以外の粘着剤層などの他の層を有していてもよい。
【0122】
上記粘着剤層(熱膨張性微粒子含有粘着剤層、本発明の粘着剤層)以外の粘着剤層としては、例えば、熱膨張性微粒子を含有しない粘着剤層である熱膨張性微粒子非含有粘着剤層が挙げられる。該熱膨張性微粒子非含有粘着剤層は、例えば、公知の粘着剤(例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、ウレタン系粘着剤、フッ素系粘着剤、エポキシ系粘着剤など)を用いて、公知の粘着剤の形成方法を利用して形成される。なお、上記熱膨張性微粒子非含有粘着剤層の厚みは、特に限定されず、粘着シートの使用目的や使用方法などに応じて、適宜選択される。
【0123】
本発明の粘着シートの厚みは、特に限定されないが、基材の片面に粘着剤層を設けた粘着シートの場合、11〜1100μmが好ましく、より好ましくは30〜500μmである。また基材の両面に粘着剤層を設けた粘着シートの場合、15〜1700μmが好ましく、より好ましくは50〜1000μmである。
【0124】
さらに、本発明の粘着シートは、粘着面を保護する目的で、使用時まで剥離フィルム(セパレーター)により保護されていてもよい。また、本発明の粘着シートの作製の際に、剥離フィルムが用いられていてもよい。本発明の粘着シートの作製の際に剥離フィルムは必ずしも用いられなくてもよいが、光重合反応は空気中の酸素等により反応が阻害されるので、剥離フィルムで表面を被覆し酸素との接触を防止するために、作製の際に剥離フィルムが用いられることが好ましい。なお、本発明の粘着シートの利用時には、剥離フィルムは剥がされる。
【0125】
上記剥離フィルムは、特に限定されないが、例えば、剥離処理剤(離型処理剤)により少なくとも一方の面が剥離処理(離型処理)された基材の他、フッ素系ポリマー(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン・フッ化ビニリデン共重合体等)からなる低接着性基材や、無極性ポリマー(例えば、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂)からなる低接着性基材などが挙げられる。なお、低接着性基材では両面が剥離面として利用され、一方、剥離処理された基材では剥離処理された面が剥離面として利用される。剥離フィルムは、公知乃至慣用の方法により形成される。
【0126】
上記剥離処理剤により少なくとも一方の面が剥離処理された基材における基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのオレフィン系樹脂フィルム;ポリ塩化ビニルフィルム;ポリイミドフィルム;ナイロンフィルムなどのポリアミドフィルム;レーヨンフィルムなどのプラスチック系基材フィルム(合成樹脂フィルム)などが挙げられる。また、上質紙、和紙、クラフト紙、グラシン紙、合成紙、トップコート紙などの紙類から構成される紙系基材も挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルムなどのポリエステルフィルムが好ましい。
【0127】
上記剥離処理剤により少なくとも一方の面が剥離処理された基材における剥離処理剤としては、特に限定されないが、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などが挙げられる。剥離処理剤は、単独で又は2種以上組み合わせて用いられる。
【0128】
上記剥離フィルムの厚みは、特に限定されない。また、上記剥離フィルムは、単層、積層の何れの形態を有していてもよい。
【0129】
本発明の粘着シートの作製方法は、特に限定されないいが、公知乃至慣用の方法により作製されてもよい。例えば、上記熱収縮フィルムの少なくとも一方の面側に、本発明の粘着剤層を形成する組成物を塗布し組成物層を得てから、該組成物層を硬化して、上記粘着剤層(本発明の粘着剤層)を得ることにより形成される。また、上記剥離フィルムに本発明の粘着剤層を形成する組成物を塗布し組成物層を得てから、該組成物層を硬化して、上記粘着剤層(本発明の粘着剤層)を得て、上記熱収縮フィルムの少なくとも一方の面側に上記粘着剤層(本発明の粘着剤層)を転写することにより形成されてもよい。
【0130】
剥離フィルムや基材上に粘着剤組成物を塗布する際に用いられる塗工方法や塗工方法は、特に限定されないが、後述の塗工方法や後述の塗布具を用いてもよい。
【0131】
本発明の粘着剤層を形成する組成物の硬化方法は、特に限定されないが、作業性、省エネルギー性、比較的厚い粘着剤層を得ることができる点から、活性エネルギー線を用いる光硬化が好ましい。なお、活性エネルギー線としては、上記のように、特に限定されないが、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や紫外線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。活性エネルギー線の照射エネルギーやその照射時間は、モノマー成分の反応を生じさせることができればよく、特に限定されない。活性エネルギー線の照射の好ましい態様としては、例えば、例えば、波長300〜400nmにおける照度1〜200mW/cm2である紫外線の光量400〜4000mJ/cm2の照射が挙げられる。
【0132】
上記硬化方法として活性エネルギー線による光硬化を用いる場合、本発明の粘着シートの接着力などの接着特性を調整する点から、活性エネルギー線の照射方法が適宜選択されてもよい。上記硬化方法として活性エネルギー線による光硬化を用いて、粘着シートの接着力などの接着特性を調整する手法の具体例としては、特開2003−13015号公報に開示された方法が挙げられる。特開2003−13015号公報には、活性エネルギー線の照射を複数段階に分割して行い、それにより粘着性能を更に精密に調整する方法が開示されている。より具体的には、(i)活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線の照度を、照度:30mW/cm2以上の光照射を行う第一段階と、第一段階より低い温度の光照射を行い実質的に重合反応を完了させる第二段階とに分割して行う方法、(ii)紫外線の照射を、照度:30mW/cm2以上の光照射を行う第一段階と、ついで第一段階より低い照度の光照射を行い重合率を少なくとも70重量%にする第二段階、ついで照度:30mW/cm2以上の光照射を行い実質的に重合反応を完了させる第三段階とに分割して行う方法などが挙げられる。なお、重合率は、上記部分重合物の重合率の場合と同様の方法で算出される。
【0133】
上記第一段階に用いられる紫外線の照射装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハイドランプなどが挙げられる。また、上記第二段階に用いられる紫外線の照射装置としては、例えば、ケミカルランプ、ブラックライトランプなどが挙げられる。
【0134】
以下に、熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層を設けた両面タイプの粘着シートの好ましい作製例を必要に応じて図面を参照しつつ説明する。なお、本発明の粘着シートの作製方法は、この作製例に限定されない。以下、熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層を設けた粘着シートの好ましい作製例を「作製例1」と称する場合がある。
【0135】
図1〜3には、作製例1の第一工程、第二工程及び第三工程が、それぞれ、示されている。図4には、作製例1により得られる熱膨張性微粒子含有粘着剤層(本発明の粘着剤層)が示されている。図5は、作製例1の第四工程が示されている。図6は、作製例1により得られる粘着シートが示されている。図1〜6において、1aは作製例1の第一工程を示し、1bは作製例1の第二工程を示し、1cは作製例1の第三工程を示し、1dは作製例1の第四工程を示している。また、図1〜6において、11は熱膨張性微粒子含有組成物層であり、12は剥離フィルム(セパレーター)であり、13は熱膨張性微粒子含有粘着剤層であり、14は活性エネルギー線であり、15は熱収縮フィルムであり、16は粘着シートである。
【0136】
作製例1の第一工程は、剥離フィルム12の剥離処理された面に熱膨張性微粒子含有組成物を塗布し、熱膨張性微粒子含有組成物層11を形成させる工程である(図1参照)。熱膨張性微粒子含有組成物は、熱膨張性微粒子含有粘着剤層(本発明の粘着剤層)を形成する組成物である。この工程により、剥離フィルム12の剥離処理された面上に、熱膨張性微粒子含有組成物層11が形成されたシートが得られる。
【0137】
作製例1の第一工程において、剥離フィルム12の剥離処理された面に熱膨張性微粒子含有組成物を塗布する際に用いられる塗工方法は、特に限定されないが、例えば、例えば、スロットダイ法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、ディップ法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などが挙げられる。また、剥離フィルム12の剥離処理された面に熱膨張性微粒子含有組成物を塗布する際には、一般的に用いられている塗布具が、特に限定なく用いられる。このような塗布具は、例えば、リバースコーター、グラビアコーターなどのロールコーター;カーテンコーター;リップコーター;ダイコーター;ナイフコーターなどが挙げられる。
【0138】
作製例1の第二工程は、上記第一工程で作製されたシートの熱膨張性微粒子含有組成物層11側に、剥離フィルム12を剥離処理面が接する形態で貼り合わせる工程である(図2参照)。この工程により、熱膨張性微粒子含有組成物層11の両面側に剥離フィルム12を有するシート(剥離フィルム12/熱膨張性微粒子含有組成物層11/剥離フィルム12の層構成を有するシート)が得られる。
【0139】
作製例1の第二工程では、粘着剤層を形成する組成物の光硬化の際には光硬化反応(光重合反応)を阻害する酸素との接触を抑制することが好ましいので、剥離フィルム12を貼り合わせことにより、酸素を遮断している。
【0140】
なお、作製例1では、酸素との接触を抑制する方法は特に限定されないので、剥離フィルムを用いて酸素を遮断する方法の他に、活性エネルギー線を照射する環境を不活性ガス(例えば窒素ガスなど)雰囲気下とする方法が用いられていてもよい。つまり、作製例1の第二工程では、剥離フィルム12を貼り合わせる代わりに、不活性ガス(例えば窒素ガスなど)を用いて、活性エネルギー線を照射する環境を不活性ガス雰囲気下とすることにより、酸素による光重合反応の阻害を抑制してもよい。なお、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下で活性エネルギー線14を用いて熱膨張性微粒子含有組成物層11を光硬化させる場合、熱膨張性微粒子含有組成物層11を剥離フィルム12を用いて被膜しなくてもよい。
【0141】
上記酸素との接触を防止する方法として活性エネルギー線を照射する環境を不活性ガス雰囲気下とする方法を用いる場合、不活性ガス雰囲気下ではできるだけ酸素が存在しないことが好ましく、例えば、酸素濃度で5000ppm以下であることが好ましい。
【0142】
なお、熱膨張性微粒子含有組成物層11中の溶存酸素が多い場合には、ラジカル発生量が抑制され、重合(光重合)が十分に進行せず、得られるポリマーの重合率、分子量及び分子量分布に悪影響を及ぼすことがある。このため、熱膨張性微粒子含有組成物層11を形成する前に、熱膨張性微粒子含有組成物に不活性ガスによるバブリング処理を行ってもよい。
【0143】
作製例1の第三工程は、第二工程で得られたシートに、シートの両面側から、活性エネルギー線14を照射する工程である(図3参照)。この工程では、熱膨張性微粒子含有組成物層11に剥離フィルム12を介して活性エネルギー線14が照射されるので、熱膨張性微粒子含有組成物層11は光硬化して、熱膨張性微粒子含有粘着剤層13になる。なお、第二工程で得られたシートにおいて、熱膨張性微粒子含有組成物層11は、剥離フィルム12により、光硬化反応の阻害要因となる酸素と遮断されている。なお図3においてはシートの両面側から、活性エネルギー線14を照射しているが、片面からのみ活性エネルギー線14を照射しても良い。
【0144】
活性エネルギー線14としては、前記のとおり、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、中でも紫外線が好ましい。
【0145】
作製例1では、熱膨張性微粒子含有組成物層11を硬化させる場合、重合率が、90重量%以上となるように硬化させることが好ましい。また、未反応モノマーは、乾燥工程を設けることにより除去されてもよい。なお、重合率は、上記部分重合物の重合率の場合と同様の方法で算出される。
【0146】
図4は、作製例1により得られる膨張性微粒子含有粘着剤層13を示す。すなわち、前記第一工程から第三工程により、熱膨張性微粒子含有粘着剤13の両面側に剥離フィルム12を有するシート(剥離フィルム12/熱膨張性微粒子含有粘着剤層13/剥離フィルム12の層構成を有するシート)が得られる。
【0147】
作製例1の第四工程(1d)は、熱収縮フィルム15に第三工程で得られた膨張性微粒子含有粘着剤層13を貼り合わせる工程である(図5参照)。すなわち熱膨張性微粒子含有粘着剤層13の片面側の剥離フィルム12を剥離して粘着剤層面を露出し、当該粘着剤層面を熱収縮フィルム15の一面に接するよう貼り合わせる。同様にして熱収縮フィルム15の他面にも、熱膨張性微粒子含有粘着剤層13を貼り合わせる。この工程により、熱収縮フィルム15の両面に熱膨張性微粒子含有粘着剤層13を有する粘着シート16(剥離フィルム12/熱膨張性微粒子含有粘着剤層13/熱収縮フィルム15/熱膨張性微粒子含有粘着剤層13/剥離フィルム12の層構成を有するシート)が得られる。
【0148】
図6は、作製例1により得られる粘着シート16を示す。粘着シート16は、熱収縮フィルム15の両面側に熱膨張性微粒子含有粘着剤層13が形成された両面粘着シートである。なお作製例1においては、熱収縮フィルム15の両面側に設ける熱膨張性微粒子含有粘着剤層13は、同じ熱膨張性微粒子含有組成物から形成しても良いが、異なる熱膨張性微粒子含有組成物から形成しても良い。また本発明の粘着シートの効果を損なわない限り、熱膨張性微粒子含有粘着剤層とは異なる粘着剤層を設けても良い。
【0149】
このように、本発明の粘着シートは、剥離フィルムの剥離処理された面に熱膨張性微粒子含有組成物を塗布し、熱膨張性微粒子含有組成物層を形成させる第一工程、第一工程で形成された熱膨張性微粒子含有組成物層に剥離フィルムを剥離処理面が接する形態で貼り合わせる第二工程、活性エネルギー線を照射して熱膨張性微粒子含有粘着剤層を形成する第三工程、熱収縮フィルムの両面に熱膨張性微粒子含有粘着剤層を貼り合わせる第四工程を経て、作製されることが好ましい。
【0150】
なお熱膨張性フィルム15の表面には、膨張性微粒子含有粘着剤層13との投錨力を向上させるため、適宜な下塗り層を設けても良い。すなわち作製例1の第四工程において、熱収縮フィルム15に予め下塗り層を設けておき、その下塗り層面に第三工程で得られた膨張性微粒子含有粘着剤層13を貼り合わせても良い。図7には熱膨張性フィルム15の表面に下塗り層17を設けた粘着シート16を示している。
【0151】
本発明の粘着シートにおいて用いることのできる下塗り層としては、基材と粘着剤層との投錨力を高めることができ、特に、加熱処理後にも両層間の密着性を十分維持することができるものであれば特に限定されないが、例えば熱膨張性微小球を含まないアクリル系の粘着剤層が好適に用いることができる。下塗り層の厚さは特に限定されないが、通常1〜100μm程度、好ましくは10〜80μm、より好ましくは30〜70μm程度とすることができる。
【0152】
本発明の粘着シートにおいて、アルミニウム板に対する接着力(剥離角度180°、引張速度300mm/min、23℃の雰囲気下)は、特に限定されないが、8N/20mm以上(例えば8〜100N/20mm)であることが好ましく、より好ましくは10N/20mm以上(例えば10〜90N/20mm)であり、さらにより好ましくは15N/20mm以上(例えば15〜80N/20mm)である。180°引き剥がし接着強さが8N/20mm未満であると、被着体に対して十分な接着性を発揮できない場合がある。なお、該180°引き剥がし接着強さが大きすぎると(例えば100N/20mmを超えると)、剥離・解体性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0153】
本発明の粘着シートの接着力などの接着特性は、粘着剤層を構成する上記粘着剤組成の組成(本発明の粘着剤組成物の組成)、熱膨張性微粒子の種類や使用量、粘着剤層作製時の硬化方法(例えば、活性エネルギー線の照射方法)、粘着剤層の厚みなどを適宜選択することにより調整される。
【0154】
本発明の粘着シートにおいて、後述の実施例において記載する耐反撥性試験で求められる「浮き距離」は、特に限定されないが、10mm未満であることが好ましく、より好ましくは8mm未満であり、さらにより好ましくは5mm未満である。浮き距離が10mmを超えると、応力が長期でかかると、粘着シートが被着体から剥がれやすくなり、接着信頼性が低下するおそれがあるからである。
【0155】
なお、一般的に、粘着シートが被着体に貼付した状態で応力が長期でかかると、粘着シートにおいて被着体からの「ハガレ」、「浮き」、「部分的な剥離」、「ズレ」等の現象が生じることがあるが、本願にいう「耐反撥性」は上記現象の発生を抑制できる特性のことを意味する。
【0156】
本発明の粘着シートにおいて、後述の実施例において記載する保持力試験で求められる「ズレ距離」は、特に限定されないが、5.0mm未満であることが好ましく、1.0mm未満であることがより好ましく、0.5mm未満であることが更に好ましい。ズレ距離が1mmを超えると、粘着テープに長期間応力が加わった際に粘着テープが被着体から剥がれる恐れがあり、接着信頼性が低下する場合がある。
【0157】
本発明の粘着シートは、後述の実施例において記載する加熱解体性試験による評価が良好であることが好ましい。下記加熱解体性試験が不良であると、粘着シートを被着体から剥がす際に、加熱により、十分な剥離・解体性を発揮できないことがあるからである。
【0158】
本発明の粘着シートを被着体から剥がす際の加熱処理は、特に限定されず適宜な加熱手段を利用して行うことができる。例えば、ホットプレート、線加熱ヒーター(部分的に加熱できる接触式ヒーター)、熱風乾燥機、赤外線ランプ、近赤外線ランプ、エアードライヤー、加熱水などを用いた加熱処理が挙げられる。該加熱処理の温度は、熱膨張性微粒子の発泡開始温度以上である限り特に限定されないが、被着体の表面状態、熱膨張性微粒子の種類等、被着体の耐熱性、加熱方法(熱容量、加熱手段)に応じて、適宜設定される。より具体的な加熱処理は、例えば、温度:100〜250℃で、5〜90秒間、ホットプレートにより加熱すること、温度:100〜250℃で、5〜15分間、熱風乾燥機により加熱することなどが挙げられる。
【0159】
本発明の粘着シートが用いられる被着体としては、特に限定されないが、例えば、プラスチック系被着体、金属系被着体、繊維系被着体、紙系被着体、無機材料系被着体、複合材料系被着体(プラスチック(樹脂)、金属、繊維、紙、無機材料などの様々な素材のうち少なくとも2つの素材から構成される被着体)などが挙げられる。中でも、該被着体は、プラスチック系被着体、金属系被着体、プラスチック(樹脂)及び金属から構成される複合材料系被着体が好ましく挙げられる。
【0160】
上記プラスチック系被着体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ABS、アクリル樹脂、及び、これらの混合樹脂などが挙げられる。また、上記金属系被着体を構成する金属としては、特に限定されないが、例えば、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、クロム、マンガン、マグネシウム、亜鉛、スズ、チタン、及び、これらの合金(例えば、ステンレスなど)などが挙げられる。
【0161】
本発明の粘着シートが用いられる被着体の表面形状としては、特に限定されないが、例えば、平滑状、曲面状、平面と曲面が組み合わされた形状などが挙げられる。
【0162】
本発明の粘着シートは、上記特定モノマーを含むモノマー混合物を構成成分とするアクリル系共重合体を含有する粘着剤組成物(本発明の粘着剤組成物)中により構成されている粘着剤層(本発明の粘着剤層)を有するため、金属系被着体を含む様々な被着体に対して接着力などの接着特性に優れる。このため、本発明の粘着シートは、部材同士の接合用途や筐体と部材の接合用途などの接合用途に好適に用いられる。
【0163】
さらに本発明の粘着シートは、上記粘着剤層(本発明の粘着剤層)を有するので、接着信頼性に優れ、特に耐反撥性および保持性に優れる。このため、本発明の粘着シートは、被着体が曲面を有する場合に特に有効であり、曲面を有する部材同士の接合用途や曲面を有する筐体と曲面を有する部材の接合用途などに好適に用いられる。
【0164】
本発明の粘着シートは、上記熱収縮フィルムを基材とし、上記熱膨張性微小球を含有する粘着剤層(本発明の粘着剤層)を有するので、粘着シートを被着体から剥がす際には、加熱により容易に接着力を低下させることができ、剥離・解体できる。これは、熱収縮フィルムを基材として用いることにより、熱収縮フィルムが熱により収縮し、粘着剤層を変形させ被着体から引き剥がす力を与えるためである。また上記粘着剤層中の熱膨張性微粒子が熱により膨張及び/又は発泡することに伴い、熱膨張性微粒子含有粘着剤層が膨張変形して、熱膨張性微粒子含有粘着剤層表面が凹凸状の形状に変形し、接着力が低下乃至喪失するためである。
従って、本発明の粘着シートは、リワークやリサイクルが要求される用途に好適に用いられる。
【0165】
本発明の粘着シートは、接着力に優れ、さらに接着信頼性、特に耐反撥性と保持力に優れるので、自動車、機械部品、電化製品、建材等の各種分野の接合用途(例えば、部品と部品とを接合する用途、部品を筐体に固定する用途など)に好適に用いられる。中でも、本発明の粘着シートは、熱による剥離・解体性に優れるので、リサイクルやリワークが求められる接合用途で特に好適に用いられる。なお、本発明の両面粘着シートは、用途が上記用途に限定されるわけではなく、部材を半永久的に固定する用途にも用いられる。
【実施例】
【0166】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0167】
(評価)
実施例及び比較例について、下記の評価を行った。
【0168】
(接着力の評価)
実施例および比較例で作製した粘着シートを、幅:20mm、長さ:50mmの短冊形状に切り取り、接着力測定用サンプルとした。なお熱収縮フィルムの片面側に粘着剤層を設けた粘着シートの場合は、作製した粘着シートをそのまま使用した。一方熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層を設けた両面粘着シートの場合は、片方側の粘着剤層面の剥離フィルムを剥がし、露出した粘着面に表面が剥離処理されていないPETフィルムである商品名「ルミラーS−10 ♯50」、東レ株式会社製)を貼り合わせ、上記サイズに切り取り、接着力測定用サンプルとした。
【0169】
アルミニウム板(厚み0.5mm×幅100mm×長さ100mm)を、イソプロピルアルコールを染み込ませたクリーンウェスにて、10往復の擦り洗浄を行い、清浄なアルミ板を得た。
該清浄なアルミ板に、剥離フィルムを剥がして粘着面を露出させた上記測定用サンプルを、23℃の雰囲気下、2kgローラー、1往復の条件で圧着して、アルミ板に測定用サンプルを貼付した。そして、40℃雰囲気下で48時間のエージングを行った。
エージング後、23℃の雰囲気下で、引張試験機(装置名「引張圧縮万能試験機 TG−1kN」、ミネベア社製)を用いて、引張速度:300mm/minで、180°の剥離方向に測定用サンプルをアルミ板から引き剥がすことにより、180°引き剥がし接着強さを測定した。
そして、180°引き剥がし接着強さが8[N/25mm]以上の場合を良好(○)と評価し、180°引き剥がし接着強さが8[N/25mm]未満の場合を不良(×)と評価した。
【0170】
(加熱解体性の評価)
実施例および比較例で作製した粘着シートを、幅:20mm、長さ:20mmの正方形状に切り取り測定用サンプルとした。
アルミニウム板(厚み0.5mm×幅100mm×長さ50mm)を、イソプロピルアルコールを染み込ませたクリーンウェスにて、10往復の擦り洗浄を行い、清浄なアルミニウム板を得た。
該清浄なアルミニウム板に、剥離フィルムを剥がして粘着面を露出させた上記測定用サンプルを、23℃の雰囲気下、2kgローラー、1往復の条件で圧着して、アルミニウム板に測定用サンプルを貼付した。測定用サンプルが熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層を設けた両面粘着シートの場合は、片面側の粘着剤層面にアルミニウム板を貼付した後、もう一方の剥離フィルムを剥がして粘着面を露出させ、前記同様の方法でアルミニウム板を貼付した(すなわち2枚のアルミニウム板を接合するよう、両面粘着シートを貼り合わせた)。
そして、測定用サンプルは、23℃雰囲気下で1時間エージングを行い、加熱解体性評価用サンプルを得た。
測定用サンプルがアルミ板に貼着した状態を維持しつつ、加熱解体性評価用サンプルを熱風乾燥機に投入し、145℃で4分間加熱処理した。
加熱処理終了後の加熱解体性評価用サンプルの状態を確認し、下記基準により、加熱解体性を評価した。
良好(○):測定用サンプルがアルミニウム板から自然剥離している場合、又は、測定用サンプルをアルミ板から容易に剥離できる場合
不良(×):測定用サンプルがアルミニウム板から容易に剥離できない場合
【0171】
(耐反撥性の評価)
実施例および比較例で作製した粘着シートの耐反撥性を評価するため、以下の手順で反撥性試験用サンプルを作製した。
熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層を設けた両面粘着シートの場合は、一方の剥離フィルムBを剥離して粘着面を露出させ、アルミニウム板(幅:10mm×長さ:90mmのサイズのアルミニウム板、厚み:0.4mm)に貼り合わせ、耐反撥性試験用サンプルを得た。
熱収縮フィルムの片面側に粘着剤層を設けた粘着シートの場合は、熱収縮フィルム面に、後述する下塗り層を貼り合わせ、当該下塗り層を介してアルミニウム板(幅:10mm×長さ:90mmのサイズのアルミニウム板、厚み:0.4mm)に貼り合わせ、耐反撥性試験用サンプルを得た。
次に、耐反撥性試験用サンプルを、粘着シート側(剥離フィルムによる面側)を外側として、R50の曲率、すなわち、半径20mmの円の円周に沿うように湾曲させた。
湾曲後、耐反撥性試験用サンプルから剥離フィルムを剥がして粘着面を露出させた。次に、粘着面が露出した耐反撥性試験用サンプルを、アクリル板(透明、商品名「アクリライト」、三菱レイヨン株式会社製)に、ラミネーターを用いて浮きのないように圧着して、貼り合わせた。アクリル板に貼り合わせた耐反撥性試験用サンプルを室温(23℃)で7時間放置して、耐反撥性試験用サンプルの両端(長さ方向の両端)におけるアクリル板からの浮き距離(浮き上がった距離)を測定し、その値を合計した。そして、該合計値を「浮き距離」とした。
浮き距離が10mm未満の場合を良好(○)と評価し、10mm以上の場合を不良(×)と評価した。
【0172】
(保持力の評価)
前記接着力の評価で作製した接着力測定用サンプルと同様にして、保持力測定用サンプルとした(サイズのみ幅:10mm、長さ:100mmと変更した)。ベークライト板(幅:25mm、長さ:125mm、厚さ20mm)を、イソプロピルアルコールを染み込ませたクリーンウェスにて、10往復の擦り洗浄を行い、清浄なベークライト板を得た。
該清浄なアルミ板に、剥離フィルムを剥がして粘着面を露出させた上記測定用サンプルを、幅10mm、長さ20mmの接着面積が得られ、試験片の一部がはみ出す形態で、23℃の雰囲気下、2kgローラー、1往復の条件で圧着して、ベークライト板に測定用サンプルを貼付した。そして、60℃雰囲気下に30分保存した後、ベークライト板を60℃の環境下で垂下し、上記試験片の自由端(ベークライト板からはみ出した部分)に500gの荷重を付与した状態で、2時間放置した。2時間経過後の試験片の移動距離を確認し、移動距離が5mm未満の場合を良好(○)と評価し、移動距離が5mm以上の場合または落下した場合を不良(×)と評価した。
【0173】
(熱膨張性微粒子含有組成物Aの調製)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):70重量部、N−ビニルカプロラクタム(NVC):20重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):10重量部よりなるモノマー混合物100重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン株式会社製):0.05重量部、及び、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASFジャパン株式会社製):0.05重量部を、4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で粘度(BH粘度系No.5ローター、10rpm、温度30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、光重合させることにより、部分重合モノマーシロップ(モノマー混合物の部分重合物)を得た。なお、この部分重合モノマーシロップの重合率は、5.9重量%であった。
この部分重合モノマーシロップ:100重量部に、熱膨張性微粒子(発泡剤、商品名「EXPANCEL 051DU40」、エクスパンセル社):20重量部、及び、多官能(メタ)アクリレートとしての1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.04重量部を添加し、これらを均一に混合して、熱膨張性微粒子含有組成物Aを得た。
【0174】
(熱膨張性微粒子含有組成物Bの調製)
モノマー混合物として、ラウリルアクリレート(LA):80重量部、N−ビニルカプロラクタム(NVC):20重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Bを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、14重量%であった。
【0175】
(熱膨張性微粒子含有組成物Cの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):70重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP):20重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Cを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、8.5重量%であった。
【0176】
(熱膨張性微粒子含有組成物Dの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):70重量部、N−ビニルカプロラクタム(NVC):20重量部、tert-ブチルアクリレート(t−BA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Dを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、6.9重量%であった。
【0177】
(熱膨張性微粒子含有組成物Eの調製)
モノマー混合物として、ラウリルアクリレート(LA):75重量部、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP):15重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Eを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、12.6重量%であった。
【0178】
(熱膨張性微粒子含有組成物Fの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):60重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA):30重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Fを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、12.6重量%であった。
【0179】
(熱膨張性微粒子含有組成物Gの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):70重量部、N−ビニルカプロラクタム(NVC):20重量部、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Gを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、6.9重量%であった。
【0180】
(熱膨張性微粒子含有組成物Hの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):90重量部、イソボルニルアクリレート(IBXA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Hを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、11.7重量%であった。
【0181】
(熱膨張性微粒子含有組成物Iの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):75重量部、アクリル酸(AA):25重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Iを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、7.0重量%であった。
【0182】
(熱膨張性微粒子含有組成物Jの調製)
モノマー混合物として、2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):90重量部、アクリル酸(AA):10重量部よりなるモノマー混合物を用いた以外は、熱膨張性微粒子含有組成物Aと同様にして、熱膨張性微粒子含有組成物Jを得た。なお部分重合モノマーシロップの重合率は、6.9重量%であった。
【0183】
(下塗り層用組成物の調整)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA):90重量部、アクリル酸(AA):10重量部よりなるモノマー混合物100重量部、光重合開始剤としての1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(商品名「イルガキュア184」、BASFジャパン株式会社製):0.05重量部、及び、光重合開始剤としての2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商品名「イルガキュア651」、BASFジャパン株式会社製):0.05重量部を、4つ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下で粘度(BH粘度系No.5ローター、10rpm、温度30℃)が約15Pa・sになるまで紫外線を照射して、光重合させることにより、部分重合モノマーシロップ(モノマー混合物の部分重合物)を得た。なお、この部分重合モノマーシロップの重合率は、8重量%であった。
この部分重合モノマーシロップ:100重量部に、多官能(メタ)アクリレートとしての1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA):0.04重量部を添加し、これらを均一に混合して、下塗り層用組成物を得た。
【0184】
(剥離フィルムの使用例1)
剥離フィルムとして、一方の面がシリコーン系剥離処理剤で剥離処理されたポリエステルフィルム(商品名「MRN−38」、三菱樹脂株式会社製)を使用した。なお、この剥離フィルムを「剥離フィルムA」とした。
【0185】
(剥離フィルムの使用例2)
剥離フィルムとして、一方の面がシリコーン系剥離処理剤で剥離処理されたポリエステルフィルム(商品名「MRF−38」、三菱樹脂株式会社製)を使用した。なお、この剥離フィルムを「剥離フィルムB」とした。
【0186】
(下塗り層の作製)
下塗り層用組成物を、剥離フィルムBの剥離処理された面上に厚みが50μmとなるように塗布して下塗り層用組成物層を形成し、該下塗り層用組成物層上に剥離フィルムAの剥離処理された面を被せて、2枚の剥離フィルム間に下塗り層用組成物層を有するシートを得た。
該下塗り層用組成物層を有するシートに、照度:4mW/cm2、光量:1200mJ/cm2の条件にて紫外線照射を行い、下塗り層用組成物層を光硬化させ、下塗り層を作製した。
そして、剥離フィルムB/下塗り層/剥離フィルムAの下塗り層シートを得た。
【0187】
(実施例1)
熱膨張性微粒子含有組成物Aを、剥離フィルムBの剥離処理された面上に厚みが50μmとなるように塗布して熱膨張性微粒子含有組成物層Aを形成し、該熱膨張性微粒子含有組成物層A上に剥離フィルムAの剥離処理された面を被せて、2枚の剥離フィルム間に熱膨張性微粒子含有組成物層Aを有するシート(熱膨張性微粒子含有組成物層シート)を得た。
該熱膨張性微粒子含有組成物層シートに、照度:4mW/cm2、光量:1200mJ/cm2の条件にて紫外線照射を行い、熱膨張性微粒子含有組成物層Aを光硬化させ、粘着剤層A(粘着剤組成物により構成される層)を作製した。そして、粘着剤層の両面が剥離フィルムで保護された粘着剤層シートを得た。
なお、粘着剤層Aの溶剤不溶分は、79.8重量%であった。
【0188】
上記下塗り層シートから剥離フィルムAを剥離し、露出した下塗り層面を熱収縮フィルム(商品名「スペースクリーンS7200」、東洋紡社製、厚さ30μm、145℃における収縮率35%)の片面に貼り合わせ、熱収縮フィルムの片面に下塗り層を転写した。次に、下塗り層上のもう一方の剥離フィルムBを剥離した。
さらに上記粘着剤層シートの粘着剤層Aから剥離フィルムAを剥離し、露出した粘着面を、下塗り層を設けた熱収縮フィルムの下塗り層面に貼り合わせ、熱収縮フィルム/下塗り層/粘着剤層A/剥離フィルムBという構成の粘着シートを作製した。
【0189】
(実施例2)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Bを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Bを設けた粘着シートを作製した。
【0190】
(実施例3)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Cを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Cを設けた粘着シートを作製した。
【0191】
(実施例4)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Dを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Dを設けた粘着シートを作製した。
【0192】
(実施例5)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Eを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Eを設けた粘着シートを作製した。
【0193】
(実施例6)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Fを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Fを設けた粘着シートを作製した。
【0194】
(実施例7)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Gを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Gを設けた粘着シートを作製した。
【0195】
(比較例1)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Bを使用し、熱収縮フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS−10 ♯50」、東レ社製、厚さ50μm、80〜180℃での熱収縮率が1.5%以下)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮しないフィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Bを設けた粘着シートを作製した。
【0196】
(比較例2)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Hを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Hを設けた粘着シートを作製した。
【0197】
(比較例3)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Iを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Iを設けた粘着シートを作製した。
【0198】
(比較例4)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Jを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、熱収縮フィルムの片面に、下塗り層を介して粘着剤層Jを設けた粘着シートを作製した。
【0199】
【表3】

【0200】
(実施例8)
上記下塗り層シートから剥離フィルムAを剥離し、露出した下塗り層面を熱収縮フィルム(商品名「スペースクリーンS7200」、東洋紡社製、厚さ30μm)の一方の面に貼り合わせた。次に、上記下塗り層シートから剥離フィルムAを剥離し、露出した下塗り層面を、上記熱収縮フィルムの他方の面に貼り合わせた。そして、下塗り層上の2枚の剥離フィルムBを剥離して、熱収縮フィルムの両面に下塗り層が転写された構造物を得た。
さらに実施例1で作製した上記粘着剤層シートを2枚用いて、上記粘着剤層シートの剥離フィルムAを剥離し、露出した粘着剤層Aを上記構造物の下塗り層上に貼り合わせることを2回繰り返し、熱収縮フィルムの両面側に粘着剤層Aを設けた。そして、剥離フィルムB/粘着剤層A/下塗り層/熱収縮フィルム/下塗り層/粘着剤層A/剥離フィルムB、という構成の粘着シートを作製した。
【0201】
(実施例9)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Bを使用したこと(粘着剤層Aの代わりに粘着剤層Bを使用したこと)以外は、実施例8と同様にして、熱収縮フィルムの両面に、下塗り層を介して粘着剤層Bを設けた粘着シートを作製した。
【0202】
(比較例5)
熱膨張性微粒子含有組成物Aの代わりに熱膨張性微粒子含有組成物Bを使用したこと(粘着剤層Aの代わりに粘着剤層Bを使用したこと)、熱収縮フィルムの代わりにポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名「ルミラーS−10 ♯50」、東レ社製、厚さ50μm)を用いたこと以外は、実施例8と同様にして、熱収縮しないフィルムの両面に、下塗り層を介して粘着剤層Bを設けた粘着シートを作製した。
【0203】
【表4】

【0204】
実施例は、被着体に対して良好な接着力、接着信頼性(特に耐反撥性および保持力)を示すとともに、加熱することで容易に剥離(解体)することが可能であった。このため、リワークやリサイクル用途に用いることができる。
【0205】
熱収縮フィルムを用いなかった比較例1、5は、良好な接着信頼性(耐反撥性、保持性)を示したものの、加熱によって剥離することができなかった。粘着剤層として(a2)モノマーを構成成分としないアクリル系共重合体を用いた比較例2は、容易に剥離することが可能であったが、初期接着や接着信頼性(耐反撥性、保持性)の点で劣っていた。同じく(a2)モノマーを含まずアクリル酸を含む比較例3、4は、接着信頼性が良好であったが、加熱によって剥離することができなかった。
【符号の説明】
【0206】
1a 作製例1の第一工程
1b 作製例1の第二工程
1c 作製例1の第三工程
1d 作製例1の第四工程
11 熱膨張性微粒子含有組成物層
12 剥離フィルム
13 熱膨張性微粒子含有粘着剤層
14 活性エネルギー線
15 熱収縮フィルム
16 粘着シート
17 下塗り層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記基材が、熱収縮性フィルムであり、
前記粘着剤層が、下記モノマー(a1)、(a2)及び(a3)を下記の含有率で含むモノマー混合物を構成成分として含有するアクリル系共重合体、及び熱膨張性微粒子を含有する粘着剤組成物より構成されていることを特徴とする粘着シート。
(a1)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃未満である、炭素数4〜12のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートモノマー:40〜90重量%
(a2)分子内に少なくとも1つの窒素原子と、1つのエチレン性不飽和結合とを有するモノマー:5〜40重量%
(a3)ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、分子内に1つのエチレン性不飽和結合を有するモノマー(前記(a2)は除く):0〜40重量%
(上記含有率(重量%)は、(a1)、(a2)及び(a3)の合計量(100重量%)中の各モノマーの含有率を示す)
【請求項2】
前記熱膨張性微粒子の含有量が、前記モノマー混合物100重量部に対して10〜200重量部である請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記(a2)が、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン及びN−ビニル−2−カプロラクタムからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーである請求項1又は2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記(a3)が、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と第3級炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマー、又は、ホモポリマーとした時のガラス転移温度が0℃以上である、(メタ)アクリロイルオキシ基と単環又は多環の脂環式炭化水素の環を構成する炭素原子とが結合している構造を有する(メタ)アクリレートモノマーである請求項1〜3の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記(a3)が、tert−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート及びジシクロペンタニル(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも1のモノマーである請求項1〜4の何れか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記熱収縮フィルムが、70〜180℃のいずれかの温度において5%以上収縮する熱収縮フィルムである請求項1〜5の何れか1項に記載の粘着シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2013−47321(P2013−47321A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−110946(P2012−110946)
【出願日】平成24年5月14日(2012.5.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】