説明

粘着テープ又はシートの製造方法及び製造装置

【課題】薄層な粘着剤層を有機溶媒を用いずに形成する手段を提供すること。また、微細な発泡構造を安定的に有する薄層な発泡粘着テープ又はシートを製造する手段を提供すること。
【解決手段】粘着剤層を構成するポリマーを含む混合物と、ポリマーを架橋させるための架橋剤を、加圧下、臨界状態又は液体状態の不活性流体と共に混練した後、前記混練時の圧力よりも低圧力下の支持上に吐出、積層して粘着剤層を形成する。不活性流体の混合量が粘着剤組成物に対して2重量%未満では発泡構造は形成されず、2重量%以上では微細且つ安定して残存する発泡構造が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は厚みの薄い粘着剤層を備えた粘着テープ又はシート及び、微細な気泡を有する発泡粘着剤層を備えた発泡粘着テープ又はシートの製造方法に関する。本発明は又、厚みの薄い粘着剤層又は、微細な気泡構造を有する発泡粘着剤層を支持体上に設けた粘着テープ又はシートの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着テープや粘着シートの製造において、厚みの薄い粘着剤層を形成する方法としては、粘着剤組成物を溶剤で希釈して支持体に塗布するなど、溶剤を用いるのが一般的である。環境対策の観点からは溶剤を使用せず薄層化できるコーティング手法の開発が望まれている。
【0003】
一方、粘着テープや粘着シートの粘着剤層を微細な発泡構造とすることにより、見かけの弾性率を低下させて、初期粘着性、粗面接着性、耐反撥性などの特性を向上させたり、粘着剤使用量の低減により材料費を削減することが行われている。しかし、厚みの薄い粘着剤層に微細な発泡構造を形成させることは困難であり、形成できたとしても持続させることが難しく、厚みの薄い粘着剤層中に、安定して残存する微細な発泡構造を形成することは困難であった。このような問題を解決する発泡粘着テープ又はシート製造方法として、熱分解型化学発泡剤を粘着剤層中に含有させて加熱する方法(特許文献1参照)、粘着剤層中にマイクロカプセルのような微小中空粒子を混合する方法(特許文献2参照)などが知られている。しかしこれらの方法では、発泡剤や微小中空粒子が均一に分散しにくい、微細セルが得られにくい、発泡セル構造の制御が困難である、コスト高となるなどの多くの問題がある。
【0004】
その他、既存の粘着シートを高圧力の不活性ガス雰囲気下において粘着剤層中に該雰囲気ガスを溶解させた後、圧力を解放することで粘着剤層を発泡させる方法が開示されている(特許文献3、4参照)。しかしながら、この方法では、微細なセル構造を形成できるものの、粘着剤の塗工、乾燥といった従来の粘着シート製造工程に加えて、さらに発泡工程が必要となるため、工程が複雑となり、従来の粘着シートの製造コストに比べてコストアップは免れない。また、この発泡工程は主にバッチ式の圧力室内で行われるため、連続生産性という観点からは非常に不利である。
【0005】
また、発泡粘着剤層を構成するポリマーの単量体を含む混合物を、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体中で重合に付した後、得られた重合組成物を、前記圧力よりも低圧力下の支持体上に吐出、積層して発泡粘着剤層を形成させる方法が開示されている(特許文献5参照)。しかし、この方法では気泡が安定して残存しない。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−263278号公報
【特許文献2】特開平2−240182号公報
【特許文献3】特開平8−199125号公報
【特許文献4】特開2000−169803号公報
【特許文献5】特開2000−169802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、溶剤を使用せずに厚みの薄い粘着剤層を形成することができる粘着テープ又はシートの製造方法を提供することである。又、微細且つ安定な気泡を有する発泡粘着剤層を備えた発泡粘着テープ又はシートの製造方法を提供することである。さらに上記厚みの薄い粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートや、微細且つ安定な気泡を有する発泡粘着剤層を備えた発泡粘着テープ又はシートを、複雑な工程を経ることなく、生産効率よく製造できる製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた結果、粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物を、超臨界状態又は液体状態の不活性流体及び架橋剤と共に特定条件下で混練し、且つ特定条件下で支持体上に積層すると、不活性流体の混合量により、発泡構造を有しない厚みの薄い粘着剤層又は、微細且つ安定な気泡構造を有する発泡粘着剤層の何れかを任意に製造できることを見出した。又、このような方法で製造した発泡粘着剤層の気泡構造は、従来の方法により製造した発泡粘着剤の気泡に比べ微細であり、安定して残存する。本発明はこれらの知見に基づき完成されたものである。
【0009】
すなわち本発明は、粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートの製造方法であって、
(1)粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物と粘着剤組成物中のポリマーを架橋させるための架橋剤を、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体と共に混練する工程と、
(2)上記粘着剤組成物を、混練時の圧力よりも低圧力下の支持体上に吐出、積層して粘着剤層を形成する工程、
を含むことを特徴とする粘着テープ又はシートの製造方法である。
【0010】
本発明において、超臨界状態又は液体状態の不活性流体の混合量が粘着剤組成物の固形分に対して0.2重量%以上2重量%未満であると、粘着剤中に発泡構造がほとんど形成されず、厚みの薄い粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートを製造することができる。不活性流体の混合量が粘着剤組成物の固形分に対して2重量%以上では、不活性流体の気化により、平均気泡径100μm以下の気泡が粘着剤層中に形成された発泡粘着テープ又はシートを製造することができる。
【0011】
前記粘着剤層を構成するポリマーとして、例えばゴム系ポリマーやアクリル系ポリマーが挙げられる。また、前記不活性流体には二酸化炭素が含まれる。
【0012】
本発明は、また、粘着剤層を構成するポリマーを加圧下で前記超臨界状態または液体状態の不活性流体と混練させるための耐圧容器、該耐圧容器に超臨界状態又は液体状態の不活性流体を供給するための不活性流体供給手段、該耐圧容器に架橋剤を供給するための架橋剤供給手段、及び混練した粘着剤組成物を吐出するための吐出手段を有する発泡粘着テープ又はシート製造装置に係わるものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、厚みの薄い粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートを有機溶剤を用いることなく形成でき、従来必要であった粘着剤の加熱乾燥工程を省略することができる。また、不活性流体の混合量を調節することにより、厚みの薄い粘着剤層中に発泡構造を有する発泡粘着テープ又はシート、あるいは発泡構造を有しない、より厚みの少ない粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートの何れかを任意に製造することができる。本発明の発泡粘着テープ又はシートの製造に際しては、粘着剤の発泡と支持体上への積層を同時に行うことができ、製造工程は簡易である。得られる発泡粘着剤層の発泡構造は、微細であり、且つ安定に残存する。さらに、架橋剤を加圧下超臨界状態又は液体状態の不活性流体と共に混練するので、混練中に架橋反応が進行し、粘着剤組成物を支持体上に積層した後、架橋反応を促すための工程を設ける必要が無い。これにより、凝集力の高い粘着剤が簡易に得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の方法では、粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物と、該ポリマーを架橋させるための架橋剤を、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体と混練し、例えばスリットダイのような成形用出口オリフィスを有する金型から、前記混練時の圧力よりも低圧力下の支持体上に吐出、積層して粘着剤層を形成する。
【0015】
粘着剤層を構成するポリマーとしては、公知の粘着特性を有するポリマーを用いることができ、特に制限されない。例えば、ゴム系ポリマー、アクリル系ポリマーなどが例示できる。
【0016】
ゴム系ポリマーとしては例えば、天然ゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンなどの合成ゴム等が挙げられる。
【0017】
アクリル系ポリマーとしては、例えば、2種以上のアクリル酸エステルモノマーの共重合体、少なくともアクリル酸エステルモノマーと官能基含有不飽和モノマーとをモノマー成分とする共重合体などの、アクリル酸エステル共重合体が好ましい。前記アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレートなどのアクリル酸C1-10アルキルエステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
前記官能基含有不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸などの酸無水物;アクリルアミド、アクリロニトリル、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの窒素含有基(アミド基、シアノ基、アミノ基など)を有するモノマー;ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;グリシジルアクリレートなどのエポキシ基含有モノマー等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記以外のモノマー成分として、酢酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどのメタクリル酸エステルなどを含んでいてもよい。これらのモノマーを、公知の方法で重合に付し、適宜な粘着特性を有するポリマーとすればよい。
【0019】
粘着剤組成物には、上記ポリマーの他に、粘着剤に通常添加する添加剤、例えば、粘着付与樹脂、軟化剤、老化防止剤、充てん剤、着色剤などが含まれていてもよい。粘着剤組成物は予め調製し、ストランド状、ペレット状など適宜な状態に加工しておくとよい。
【0020】
本発明において使用する不活性流体としては、常温、常圧では気体であり且つ重合条件下で不活性な広範囲の物質を使用でき、その代表的な例として、ヘリウム、アルゴン等の希ガス類;窒素、二酸化炭素等の無機性ガス類などが挙げられる。これらの中でも、二酸化炭素は、超臨界状態又は液体状態において高分子材料に対する親和性が比較的高く、かつ環境への影響が少なく、コスト的にも有利であることから、最も好適に使用できる。
【0021】
超臨界状態または液体状態の不活性流体を粘着剤組成物と混練する際の圧力は、加圧下(特に高圧下)であればよく、用いる不活性流体の種類により、例えば1MPa〜40MPa程度の範囲から適宜選択できる。例えば、不活性流体として二酸化炭素などを使用する場合、圧力は5MPa〜40MPa程度の範囲が好ましい。
【0022】
また、混練温度も不活性流体の種類や使用する粘着剤組成物の種類に応じて適宜に選択できる。不活性流体として二酸化炭素などを使用する場合の温度は、例えば100℃〜200℃程度の範囲が好ましい。また、温度は、同一装置内で部分ごとに変化させてもよい。例えば、不活性流体として二酸化炭素などを用い、粘着剤組成物に天然ゴム系の混合物を用いる場合、混練部分の温度は120℃〜140℃、粘着剤組成物の吐出部分の温度は80〜100℃程度の範囲が好適である。
【0023】
本発明の粘着テープ及び粘着シートの製造方法においては、粘着剤組成物を架橋反応させるための架橋剤を注入し、混練する工程を有する。この架橋剤は、加圧下で超臨界状態又は液体状態の不活性流体と混練し、粘度を低減した粘着剤組成物に対し、高圧下で高圧ポンプを用いて注入するのが作業性の点から好ましい。ただし、粘着剤組成物に架橋剤を添加した後、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体と混練することもできる。この工程により粘着剤組成物中のポリマーに高分子量化、三次元化構造が形成されて凝集力が高まり、粘着特性が向上するだけでなく、粘着剤組成物中に微細な気泡を発生させて発泡層を形成させる場合、微細気泡発生後の粘着剤組成物の物性が微細気泡が固定化される方向にシフトするため、安定した微細発泡構造を形成できるようになる。
【0024】
架橋剤の種類は特に限定されず、公知の架橋剤の中から、用いる粘着剤組成物に適したものを選択して使用すればよい。例えば、カルボキシル基や水酸基を有するアクリル系ポリマーに対しては、この官能基と反応し得る多官能性化合物を用いることができる。このような化合物の例としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートなどのポリイソシアネート、ポリエポキシ化合物、各種金属塩、キレート化合物などを挙げることができる。架橋剤の使用量は、粘着剤を構成するポリマーの分子量等にもよるが、通常ポリマー100重量部に対して0.5〜20重量部の範囲とするのがよい。架橋剤の使用量が多すぎると、凝集力が高くなり、被着体との接着力が低下する。一般に、ポリマー分子量が大きいときは架橋剤の配合量を減らし、分子量が小さいときは架橋剤の配合量を増やすようにすると、良好な接着力が得られやすい。所望の特性が得られるように使用量を調節すればよい。
【0025】
本発明では、加圧下で不活性流体及び架橋剤と共に混練した粘着剤組成物を、前記混練時の圧力よりも低圧力下の支持体上に吐出し、積層して粘着剤層を形成する。支持体としては、粘着テープに通常用いられる支持体であればよく、例えば、和紙、クラフト紙などの紙類;不織布;ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル樹脂などからなるプラスチックフィルムなどが挙げられる。支持体の厚みは特に限定されず、取扱性等を考慮して適宜選択できる。粘着剤組成物を支持体上に積層する際の圧力は、前記混練時の圧力よりも低ければよく、特に制限されないが、操作性の点から大気圧が好ましい。
【0026】
本発明の粘着テープ及び粘着シートの製造方法においては、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体と混練することにより、粘着剤組成物の粘度を低減調整することができ、有機溶剤を用いることなしに厚みの薄い粘着剤層を形成することができる。さらに、不活性流体の混合量を調節することにより、微細な発泡構造を有する発泡粘着剤層又は、発泡構造ほをほとんど持たない、より厚みの少ない粘着剤層の何れかを任意に形成することができる。不活性流体の混合量を粘着剤組成物の固形分に対して2重量%以上とした場合には、粘着剤層中に微細な発泡構造を有する発泡粘着剤層を形成することができる。不活性流体の混合量を粘着剤組成物の固形分に対して0.2重量%以上2重量%未満とした場合には、粘着剤層中に気泡構造をほとんど有しない、より厚みの少ない(例えば15〜50μm)粘着剤層を形成することができる。
【0027】
本発明では、粘着テープ又はシートの接着面(粘着面)を保護するために、セパレータ(剥離ライナー)が用いられていてもよい。このようなセパレータとしては慣用の剥離紙などを使用できる。具体的には、例えば、剥離処理剤による剥離処理層を少なくとも一方の表面に有する基材の他、フッ素系ポリマーや無極性ポリマーからなる低接着性基材などを用いることができる。剥離処理剤としては特に限定されず、例えば、シリコーン系剥離処理剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤などを用いることができる。なお、セパレータの厚さや形成方法などは特に限定されない。
【0028】
本発明の粘着テープ及び粘着シートの製造方法においては、粘着剤の発泡は、加圧下で粘着剤組成物と混練された不活性流体が気泡核を形成し、粘着剤組成物を支持体上へ吐出した瞬間、この気泡核が圧力の低下により気泡に成長することによって起こる。したがって、本発明の方法によれば、粘着剤の積層と発泡を同時に行うことが可能であり、製造工程が簡略化される。また、粘着剤組成物と架橋剤を加圧下、高温で混練するため、混練中に架橋反応が進行する。この架橋構造を有する粘着剤組成物は、本発明の方法によれば支持体上に小さな厚みで積層することができ、凝集強く保持力に優れた粘着剤層を簡易に製造できる。
【0029】
本発明の方法は、粘着剤層を構成するポリマーを加圧下で混練するための耐圧容器(高圧装置)、該耐圧容器に超臨界状態又は液体状態の不活性流体を供給するための不活性流体供給手段、架橋剤を供給するための架橋剤供給手段、及び混練した粘着剤組成物を吐出するための吐出手段を有する粘着テープ又はシート製造装置により実施できる。
【0030】
図1は本発明の粘着テープ又はシート製造装置の一例を示す概略図である。図1において、1、2はそれぞれ、粘着剤層を構成するポリマーを加圧下で混練するための耐圧容器、該耐圧容器に粘着剤組成物を供給するためのホッパーである。耐圧容器1としては、加圧下で混練可能な容器であれば特に限定されず、バッチ式の圧力容器、耐圧性を有する押出装置等の何れであってもよい。耐圧容器1として押出装置を用いる場合は、ホッパー2から粘着剤組成物を連続的に供給することができる。図1において3、4はそれぞれ不活性流体ボンベ、不活性ガス精密供給装置である。これらに必要に応じて配管、バルブ等を配置して不活性流体供給手段を構成している。図1において5、6はそれぞれ架橋剤液用容器、液体高圧ポンプである。これらに必要に応じて配管、バルブ等を配置して架橋剤供給手段が構成されている。図1において7は粘着剤組成物を吐出するための吐出手段である。吐出手段7としては、例えば、Tダイ、フィッシュテールダイなどのダイスが挙げられるが、粘着剤を薄層で吐出できる構造のものであれば、特に限定されるものではない。吐出手段7は加熱できる構造であることが好ましい。図1において8、9、10はそれぞれ、支持体繰出部、セパレータ繰出部、巻取部である。支持体繰出部8から繰り出された支持体上に、吐出手段7により粘着剤組成物を塗布し、セパレータ繰出部9から繰り出されたセパレータにより粘着剤の粘着面を被覆保護する。支持体、粘着剤層、セパレータの三層よりなるセパレータ付き粘着テープ又はシートを巻取部10で巻きとり、巻回された形態の粘着テープ又シートを製造する。
【0031】
本発明において使用する耐圧装置1として、バッチ式の圧力容器を用いた場合は、さらに吐出手段開閉用のバルブを設置するのが好ましい。この場合、バルブを閉じた状態で粘着剤を調製した後、バルブの開放操作により、装置内外の圧力差を推進力として粘着剤を吐出手段7から吐出させ、発泡した粘着剤を支持体上に積層する。粘着剤の吐出速度はバルブの開閉度合いにより調整できる。
【0032】
耐圧装置1として耐圧押出装置を用いる場合は、例えば、粘着剤組成物と加圧された不活性流体とを連続的に供給して、耐圧押出装置内で粘着剤組成物を連続的に超臨界状態又は液体状態の不活性流体及び架橋剤と混練させ、これを押出装置先端に取り付けた吐出手段7より連続的に薄層に押出して、薄層化した粘着剤を支持体上に積層する。このように耐圧押出装置を用いる場合には、原料供給−混練−架橋−積層、又は原料供給−混練−架橋−発泡・積層の工程を一貫して行うことのできる連続生産プロセスが可能となるため、薄層粘着テープ又はシート製造装置あるいは発泡構造を有する薄層粘着テープ又は粘着シート製造装置として好適である。
【実施例】
【0033】
以下実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
(試験評価)
実施例及び比較例で作製した粘着テープを25mm幅に切り取り、ステンレス板上に1kgのローラー1往復で圧着し、室温で30分放置後、180°剥離試験を実施し、粘着テープの対ステンレス板接着力を評価した。また同じく25mm幅に切り取った粘着テープをステンレス板上に25mm×25mm面積となるように1kgのローラー1往復で圧着し、40℃中で30分間放置後2kgの荷重を吊り下げ、本発明の粘着テープの対ステンレス板保持力を評価した。評価結果をそれぞれ表1に示す。
【0035】
(粘着剤組成物の調製)
120℃に加温した容器容量5リットルの加圧式ニーダー中に天然ゴム(SVR:ムーニー粘度60ML(1+4)100℃)1.5kgを投入し40rpmの速度で2分間混練した。次に軟化点115℃の石油系樹脂1.5kgを3回に分割してトータル時間が15分間となるように投入し混練した。最後に軟化点30℃のテルペンフェノール系樹脂150gと、住友化学社製ゴム用老化防止剤、商品名「スミライザーNW」30gを投入し5分間混練し本発明に用いる粘着剤組成物を調製し、取り出した後引き伸ばして約φ15mmのストランド状に加工した。
【0036】
(実施例1)
スクリュー部分が4ゾーンから構成され、フィード部分から100℃、120℃、140℃、140℃に加熱したφ25mm、L/D30の単軸押出機に、140℃に加熱したフィッシュテールダイを設けた粘着剤塗工装置(図1参照)を用いて粘着テープを製造した。ホッパー部分から上記(粘着剤組成物の調製)で調製したストランド状の粘着剤組成物を投入し、20rpmの回転数で混練した。二酸化炭素を、L/Dが16の位置から炭酸ガス精密供給装置を用いて注入圧力が15MPaで、粘着剤組成物に対して1.4重量%となるように供給した。更にL/Dが19の位置からHDI系イソシアネート架橋剤を粘着剤組成物の固形分に対して1重量%となるように注入圧力20MPaで供給した。
フィッシュテールダイの先端から、100mm幅で50μm厚みのポリエステルフィルム上に30μmの厚みで吐出し、本発明の粘着テープを作製した。
【0037】
(比較例1)
架橋剤を注入しなかった以外は実施例1と同様の操作を行い、粘着テープを作製した。
【0038】
(実施例2)
スクリュー部分が4ゾーンから構成され、フィード部分から100℃、120℃、140℃、140℃に加熱したφ25mm、L/D30の単軸押出機に、140℃に加熱したフィッシュテールダイを設けた粘着剤塗工装置(図1参照)を用いて粘着テープを製造した。ホッパー部分から(粘着剤組成物の調製)で調製したストランド状の粘着剤組成物を投入し、20rpmの回転数で混練した。二酸化炭素を、L/Dが16の位置から炭酸ガス精密供給装置を用いて注入圧力15MPaで、粘着剤組成物に対して5重量%となるように供給した。更にL/Dが19の位置からHDI系イソシアネート架橋剤を粘着剤組成物の固形分に対して1重量%となるように注入圧力20MPaで供給した。
フィッシュテールダイの先端から100mm幅で50μm厚みのポリエステルフィルム上に100μmの厚みで吐出し、混練した超臨界状態の二酸化炭素を気化させ平均気泡径が40μmの発泡層を有する本発明の粘着テープを作製した。
作製した発泡粘着テープは24時間後も気泡が安定して粘着剤層に保持されていた。
【0039】
(比較例2)
架橋剤を注入しなかった以外は、実施例2と同様の操作を行い、平均気泡径が60μmの発泡層を有する本発明の粘着テープを作製した。
作製した発泡粘着テープは24時間後粘着剤層中の気泡がほとんど消失していた。
【0040】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の粘着テープ又はシート製造装置を表す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 耐圧容器(高圧装置)
2 ホッパー
3 不活性流体ボンベ
4 ガス精密供給装置
5 架橋剤用容器
6 液体高圧ポンプ
7 粘着剤組成物吐出手段
8 支持体繰出部
9 セパレータ繰出部
10 巻取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤層を備えた粘着テープ又はシートの製造方法であって、
(1)粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物と粘着剤組成物中のポリマーを架橋させるための架橋剤を、加圧下、超臨界状態又は液体状態の不活性流体と共に混練する工程と、
(2)上記粘着剤組成物を、混練時の圧力よりも低圧力下の支持体上に吐出、積層して粘着剤層を形成する工程、
を含むことを特徴とする粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項2】
超臨界状態又は液体状態の不活性流体の混合量が該粘着剤組成物の固形分に対して0.2重量%以上2重量%未満である請求項1記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項3】
粘着剤層が、超臨界状態又は液体状態の不活性流体の気化により平均気泡径100μm以下の気泡が形成された発泡層からなる請求項1記載の発泡粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項4】
該粘着剤組成物がゴム系及び/又はアクリル系ポリマーにより構成されている請求項1記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項5】
不活性流体が二酸化炭素である請求項1記載の粘着テープ又はシートの製造方法。
【請求項6】
粘着剤層を構成するポリマーを含む粘着剤組成物を加圧下で混練させるための耐圧容器、該耐圧容器に超臨界状態又は液体状態の不活性流体を供給するための不活性流体供給手段、該耐圧容器に架橋剤を供給するための架橋剤供給手段、及び混練した粘着剤組成物を吐出するための吐出手段を有する粘着テープ又はシート製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−36870(P2006−36870A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216760(P2004−216760)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】