説明

粘着テープ又はシート

【課題】実質的にDOP、DBPなどのフタル酸系可塑剤を用いずに、フタル酸系可塑剤を用いた粘着テープ又はシートと同等又はそれ以上の特性を備えたポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートを提供する。
【解決手段】ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤10〜40重量部が配合されて形成される基材層と、該基材層の片面に形成された粘着剤層とを有し、前記可塑剤は、SP値が9.0以上である可塑剤を少なくとも1種類含有するポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープ又はシートに関し、より詳細には、塩化ビニル系樹脂を基材として用いたポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)などを可塑剤として含むポリ塩化ビニル(PVC)系フィルムは、その優れた機械特性、つまり、PVCのもつ剛性と可塑剤による柔軟性とを併せもち、ステンレス、アルミニウムなどの各種鋼板の加工用表面保護材の基材層として利用されるだけではなく、ダイシング時に必要とされる振動吸収性、エキスパンド性、エキスパンド後の自己修復性などに優れた基材としてダイシング工程用の粘着テープの基材層として幅広く使用されている。
また、DOPなどのフタル酸系可塑剤は、PVC系フィルム及び粘着剤、特にアクリル系粘着剤との相性がよく、粘着テープの可塑剤として使用した場合、表面へのブリードが少なく、粘着特性を安定させる。また、低温(−10℃)から高温(50℃)までの温度変化においてもテープ機械物性の変化を最小限にとどめ、安定させることができる。
しかし、近年の環境への配慮の高まりにより、PVCの可塑剤であるDOP及びDBPなどフタル酸系可塑剤の使用を見直す動きが、欧州のREACH規制をもとに高まっている。
【0003】
そこで、これらの代替として、PVC系フィルムに、DINCH(ジイソノニルシクロヘキサンジカルボネート)及びTOTM(トリメリット酸−トリ−2エチルヘキシル)などの非フタル酸系の可塑剤又は高分子量タイプのポリエステル可塑剤等を使用することが提案されている(特許文献1〜3等参照)。
しかし、非フタル酸系の可塑剤は、アクリル系粘着剤との相溶性が悪く、粘着テープとした場合の安定性が悪く、可塑剤の表面析出が著しいという問題がある。このため、粘着テープ(ロール状又はシート状)において粘着力が不安定となり、DOPの代替としての使用は実用上困難である。
また、高分子量タイプのポリエステル可塑剤等は、PVC系粘着テープ中での移動が阻害されるため、表面への析出が抑制されるという利点はあるが、可塑化効果が現状のDOPなどのフタル酸系可塑剤と比べて異なるため、同様の機械物性を維持するのが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−84455号公報
【特許文献2】特開平4−57874号公報
【特許文献3】特開2001−302866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、実質的にDOP、DBPなどのフタル酸系可塑剤を用いずに、フタル酸系可塑剤を用いた粘着テープ又はシートと同等又はそれ以上の特性を備えたポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートは、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤10〜40重量部が配合されて形成される基材層と、該基材層の片面に形成された粘着剤層とを有し、
前記可塑剤は、SP値が9.0以上である可塑剤を少なくとも1種類含有することを特徴とする。
このようなポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートは、以下の1以上を備える。
SP値が9.0以上の可塑剤が、数平均分子量Mn800〜1500、重量平均分子量Mw800〜2000を有する低分子ポリエステル系可塑剤である。
低分子ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸ポリエステル系可塑剤である。
低分子ポリエステル系可塑剤が、イソノニル末端又はn−オクチル末端を有する。
可塑剤が、実質的にフタル酸2−ジエチルヘキシル及びフタル酸ジブチルフリーである。
粘着剤層が、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含み、SP値が8.9〜9.5に設定されてなる。
さらに、粘着剤層の表面にセパレータを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実質的にDOP、DBPなどのフタル酸系可塑剤を用いずに、フタル酸系可塑剤と同等又はそれ以上の特性を備えたポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート(以下、単に「粘着テープ」と記載することがある)は、基材層と、その片面に粘着剤層とを備える。基材層は、ポリ塩化ビニル系樹脂と少なくとも1種類の可塑剤のSP値が9.0以上である可塑剤とを含んで形成されている。
【0009】
本発明者らは、従来のような可塑剤を用いたポリ塩化ビニル基材層を粘着テープとした場合に、可塑剤が基材層の表面へブリードし、粘着特性が不安定になることを見出し、この現象について鋭意研究を行った。
その結果、粘着剤層の粘着剤の種類によって、可塑剤の基材層表面へのブリード現象に差異があること、また、可塑剤の基材層表面へのブリード現象が、可塑剤のSP値の大小に相関することを見出した。特に、ゴム系の粘着剤と比較してアクリル系粘着剤をPVC基材層に塗布して粘着テープとした場合に、可塑剤の基材層表面へのブリード現象が顕著となること、表面ブリードとPVC中の可塑剤のSP値との間の相関関係があることを見出した。
従来技術では、ポリ塩化ビニル系基材層に含有されるポリエステル可塑剤は、粘着剤層としてゴム系粘着剤を用いたものに限定されていた。
一方、アクリル系粘着剤を粘着剤層に用いたポリ塩化ビニル系基材層を備えた粘着テープにおいて、PVC中の可塑剤のSP値を調整することにより、可塑剤の基材層表面へのブリードを顕著に抑制することができることを新たに見出した。
また、従来、可塑剤の基材層表面へのブリードを抑えるために、ポリエステル系可塑剤などの分子量を大きくする手法は採られていた。
一方、SP値を調整することにより、分子量にかかわらず、可塑剤の基材層表面へのブリードを抑制することができることを新たに見出した。
さらに、可塑剤のSP値を調整することにより、分子量、種類等に拘束されることがなくなり、従来では達成しえなかったPVC基材層の機械物性を、フタル酸系可塑剤を用いずに、フタル酸系可塑剤と同等(例えば、広範な温度範囲の全てにわたって、粘性、弾性等の物理的特性がフタル酸系可塑剤を用いた場合と同様の挙動を示す)又はそれ以上で確保することができることを見出した。これは、今後のフタル酸系可塑剤の代替技術として大きな利点をもたらす。
【0010】
(基材層)
基材層は、ポリ塩化ビニル系樹脂と、少なくとも1種類の可塑剤とが配合されて形成されている。
ポリ塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルを主モノマー(モノマー成分のうちの主成分、すなわち50質量%以上を占めるモノマー)とする種々のポリマーを指す。つまり、塩化ビニルモノマーの単独重合体、塩化ビニルモノマーと種々のコモノマーとの共重合体が包含される。
コモノマーとしては、塩化ビニリデン;エチレン、プロピレン等のオレフィン(好ましくは炭素数2〜4のオレフィン);アクリル酸、メタクリル酸(以下、アクリルおよびメタクリルを「(メタ)アクリル」と総称する)、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有モノマーまたはその酸無水物(無水マレイン酸等);(メタ)アクリル酸エステル、例えば(メタ)アクリル酸と炭素数1〜10程度のアルコールアルキルまたはシクロアルキルアルコールとのエステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;スチレン、置換スチレン(α−メチルスチレン等)、ビニルトルエン等のスチレン系モノマー;アクリロニトリル;等が例示される。
ポリ塩化ビニルの平均重合度は、例えば、800〜1500程度、好ましくは1000〜1300程度が挙げられる。
【0011】
また、塩化ビニルモノマーの共重合体としては、ウレタン−塩化ビニル共重合体、エチレン−塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の塩化ビニル共重合体等が包含される。
塩化ビニルモノマー単独重合体、塩化ビニルモノマーの共重合体は、1種類のみで使用してもよいし、2種以上の混合物としてもよい。また、他の樹脂又はエラストマーとの混合物としてもよい。この場合、ポリ塩化ビニル及び共重合体として、塩化ビニルの重合割合が70質量%以上、より好ましくは90質量%以上であるものが好ましい。
【0012】
(基材層の可塑剤)
基材層に用いられる可塑剤としては、ポリ塩化ビニル系樹脂に対する可塑剤として通常用いられるものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、アジピン酸エステル系((株)ジェイプラス製D−620、D−620N、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル等)、トリメリット酸エステル系(大日本インキ(株)製W−700、トリメリット酸トリオクチル等)、リン酸エステル系(リン酸トリクレシル等)、クエン酸エステル系(アセチルクエン酸トリブチル等)、セバシン酸エステル系、アゼライン酸エステル系、マレイン酸エステル系、フタル酸エステル系、安息香酸エステル系、ポリエーテルエステル系、エポキシエステル系(エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等)、ポリエステル系(カルボン酸とグリコールからなる低分子ポリエステル等)等の可塑剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ただし、基材層に用いられる可塑剤のうち、少なくとも1種類は、溶解度パラメータ(SP値:Smallの式(1)により算出)が9.0以上であるものが適している。
ここで、可塑剤のSP値は、Smallの式である式(1)により概算した値を指す。
δp[(J/cm3)1/2]=ΣF/V (1)
(式中、δpは溶解度パラメータ、Fは分子間相互作用に関係した定数(表1に示すSmallの定数、置換基の種類に依存している)であり、Vはモル分子容である)
【0014】
【表1】

【0015】
SP値が9.0以上である可塑剤としては、具体的には、株式会社ADEKA製(アデカサイザーPN−7160、アデカサイザーPN−9302等)、株式会社ジェイプラス製(D−620、D620N等)、DIC株式会社製(W−230−H、W−225−EL、W−1040−S)などの各種アジピン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤が挙げられる。
【0016】
なかでも、SP値が9.0以上の可塑剤は、エステル/ポリエステル系可塑剤であることが好ましい。
エステル/ポリエステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸(又はフタル酸)とポリオールとを反応させたアジピン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤)が好ましい。ここでポリオールとは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコールが挙げられる。
アジピン酸エステル可塑剤又はフタル酸エステル系可塑剤は、末端に各種アルコールを有している。このようなアルコールは特に限定されないが、例えば、イソノニルアルコール、n−オクチルアルオール、2−エチルヘキシルアルコール等であるものが一般的である。末端の組成については、特性上、限定されるものではないが、反応の過程で生成される不純物の安全性を考慮して、イソノニルアルコール、n−オクチルアルコール等を用いたものがより現実的である。
【0017】
SP値が9.0以上の可塑剤は、例えば、数平均分子量Mn800〜1500程度であるものが好ましく、800〜1200程度、1000〜1200程度であるものがより好ましい。ここで、Mnは、例えば、GPCによって測定した値を意味する。
また、SP値が9.0以上の可塑剤は、例えば、重量平均分子量Mw800〜2000であるものが好ましく、800〜1500程度、1000〜1500程度であるものがより好ましい。Mwは、例えば、GPCによって測定した値を意味する。
なかでも、SP値が9.0以上の可塑剤は、Mn800〜1500及びMw800〜2000である低分子のエステル/ポリエステル系可塑剤であることがより好ましい。
【0018】
可塑剤は、ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、10〜40重量部配合することが適しており、機械物性を維持する観点から、10〜30重量部配合または20〜30重量部配合が好ましい。全可塑剤において、SP値が9.0以上である可塑剤の含有量は、0重量%より大であればよいが、例えば、70重量%以上が適しており、90重量%以上であることが好ましく、100重量%がより好ましい。
【0019】
基材層は、必要に応じて(例えば、屋外用途での使用に際して等)、安定剤、フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、老化防止剤、耐候安定剤等の当該分野で公知の添加剤を含んでいてもよい。
安定剤は、特に限定されるものではないが、バリウム−亜鉛系、スズ系、カルシウム−亜鉛系、カドミウム−バリウム系等の複合安定剤が挙げられる。
フィラーとしては、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラー等が挙げられる。
着色剤としては、白、黒、青、緑、赤等の各種顔料、染料等が挙げられる。なお、耐候処方として、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛などの各種耐候性の顔料を添加してもよい。
【0020】
基材層は、単層フィルムであってもよく、材料又は組成の異なるフィルムの積層体(多層フィルム)であってもよい。
その厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、例えば、30〜1000μm、好ましくは、50μm〜200μm程度が挙げられる。
基材層の表裏面、特に、上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の面には粘着剤との密着性を向上するために、慣用の表面処理、例えば、コロナ処理、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理などが施されていてもよい。
【0021】
(粘着剤層)
粘着剤層は、一般に粘着テープ等に用いられるものであれば特に限定されることなく、種々の粘着剤を利用して形成することができる。
粘着剤におけるベースポリマーは、例えば、ゴム系粘着剤〔天然ゴム系;天然ゴムにMMA(メタクリル酸メチル)などを適宜グラフと重合した変性天然ゴム;スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)などの合成ゴム〕、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)などのブロックポリマー;アクリル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤等公知の粘着剤を構成するベースポリマーの中から適宜選択することができる。なかでも、アクリル系粘着剤を構成するベースポリマーであるアクリル系重合体は、耐熱性、耐候性など種々の特性に優れ、アクリル系重合体を構成するモノマー成分の種類等を選択することにより、所望の特性を発現させることが可能であるため、好適に使用することができる。また、SP値の大きなアクリル系粘着剤を利用することにより、基材層中の可塑剤の基材層表面へのブリードをより効果的に抑制することができる。
【0022】
アクリル系粘着剤のベースポリマーであるアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマー成分として構成される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシルなどの(メタ)アクリル酸C1−20アルキルエステル(好ましくは(メタ)アクリル酸C1−12アルキルエステル、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸C1−8アルキルエステル)などが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種又は2種以上を選択して使用することができる。
【0023】
アクリル系重合体は、凝集力、耐熱性、架橋性などの改質を目的として、必要に応じて(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体成分に対応する単位を含んでいてもよい。このような単量体成分としては、例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;
ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;
【0024】
スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;
2−ヒドロキシエチルアクロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミドなどの(N−置換)アミド系モノマー;
【0025】
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの(メタ)アクリル酸アミノアルキル系モノマー;
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマー;N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系モノマー;
N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系モノマー;
【0026】
N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系モノマー;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、N−ビニルピロリドン、メチルビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリン、N−ビニルカルボン酸アミド類、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタムなどのビニル系モノマー;
アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノアクリレート系モノマー;
【0027】
(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有アクリル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチルグリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;
(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートなどの複素環、ハロゲン原子、ケイ素原子などを有するアクリル酸エステル系モノマー;
【0028】
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルジ(メタ)アクリレート、ヘキシルジ(メタ)アクリレートなどの多官能モノマー;
イソプレン、ジブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー;
ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー等が挙げられる。
これらの単量体成分は1種又は2種以上を使用することができる。
【0029】
アクリル系共重合体は、上述の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じてその他の単量体を公知適宜な方法により重合(例えば、乳化重合、溶液重合等)に付すことにより製造できる。
アクリル系共重合体の分子量等は特に制限されず、例えば、重量平均分子量は、150000〜2000000(例えば、20万〜200万、20万〜150万、100万〜200万程度)、好ましくは15万〜100万、さらに好ましくは30万〜100万の範囲が挙げられる。
【0030】
粘着剤は、エネルギー線重合性化合物を添加するか、ベースポリマーにエネルギー線重合性二重結合を導入すること等によって、エネルギー線硬化型粘着剤とすることができる。エネルギー線硬化型粘着剤を使用した粘着剤層は、エネルギー線照射前には十分な接着力を発現するが、エネルギー線照射後には接着力が著しく低下し、被着体にストレスを与えることなしに容易に剥離することが可能である。なお、エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線などが挙げられる。
【0031】
エネルギー線重合性化合物としては、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を分子中に2以上有する化合物を使用することができる。このような化合物としては、例えば、多官能アクリレート系化合物が挙げられる。
多官能アクリレート系化合物としては、例えば、1,4−ブチレンジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレートやポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの直鎖状脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート;シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートなどの脂環式基を有する脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの分岐鎖状脂肪族ポリオールの(メタ)アクリレート;これらの縮合物(ジトリメチロールプロパンテトラクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなど)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
エネルギー線重合性化合物として、例えば、ウレタンアクリレート系オリゴマーなどの多官能アクリレート系オリゴマーを使用してもよい。
ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば、ジイソシアネート化合物とポリオール化合物との反応により得られたウレタンオリゴマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを反応させて得られる。
ジイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、グリセリン等の多価アルコール類、前記多価アルコール類と、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マレイン酸などの脂肪族ジカルボン酸又はテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸との縮合反応により得られるポリエステル系ポリオール化合物;ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等のポリエーテル系ポリオール化合物;ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコール等のラクトン系ポリオール化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール等の多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネート等との脱アルコール反応により得られるポリカーボネート系ポリオール化合物が挙げられる。
【0034】
ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0035】
エネルギー線重合性化合物は、ベースポリマー100重量部に対して、例えば、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部、さらに好ましくは10〜45重量部の範囲で用いることができる。
【0036】
ベースポリマーにエネルギー線重合性二重結合を導入する方法としては、例えば、ベースポリマーであるアクリル系ポリマーを調製する際に、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基などの反応性官能基を有する共重合性モノマーを共重合させる方法が挙げられる。これにより、ベースポリマーに反応の基点となる官能基を導入し、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を有する多官能性モノマーあるいはオリゴマーを前記反応の基点となる官能基を介して結合させることができ、側鎖にエネルギー線重合性炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーを得ることができる。
【0037】
エネルギー線硬化型粘着剤は、必要に応じて光重合開始剤を含んでいてもよい。光重合開始剤はエネルギー線を照射することにより励起、活性化してラジカルを生成し、粘着剤層の効率的な重合硬化反応を促進する。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインアルキルエーテル系開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系開始剤;α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α’−ジメチルアセトフェノン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン等の芳香族ケトン系開始剤;ベンジルジメチルケタール等の芳香族ケタール系開始剤;チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系開始剤、ベンジル等のベンジル系開始剤、ベンゾイン等のベンゾイン系開始剤、α−ケトール系化合物(2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノンなど)、芳香族スルホニルクロリド系化合物(2−ナフタレンスルホニルクロリドなど)、光活性オキシム化合物(1−フェノン−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなど)、カンファーキノン、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド、アシルホスフォナートなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
粘着剤は、ベースポリマーとしてカルボキシル基などの酸性基を有するポリマーを使用し、中和剤を添加してベースポリマー中の酸性基の全部又は一部を中和することにより親水性を付与した親水性粘着剤としてもよい。親水性粘着剤は一般に被着体への糊残りが少なく、また、糊残りが生じた場合であっても、純水で洗浄することにより簡易に除去することができる。
酸性基を有するポリマーは、ベースポリマーを調製する際に上述のカルボキシル基含有モノマー等の酸性基を有する単量体を共重合することにより得られる。
中和剤としては、例えば、モノエチルアミン、モノエタノールアミンなどの1級アミン、ジエチルアミン、ジエタノールアミンなどの2級アミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N−メチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミンなどの3級アミン等、アルカリ性を示す有機アミノ化合物が挙げられる。
【0039】
粘着剤は、必要に応じて架橋剤を含んでいてもよい。
架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などの架橋剤を使用することができ、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤等を好適に使用することができる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、イソシアネート系架橋剤、グリシジルアミン系架橋剤、メラミン系架橋剤等が好ましい。
【0040】
イソシアネート系架橋剤としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等のトリレンジイソシアネート(コロネートーL(日本ポリウレタン製)、DESMODUR−L75(BAYER.A.G.製)等)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(ミリオネートMR−300(日本ポリウレタン製)等)、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられる。
【0041】
グリシジルアミン系架橋剤としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−グリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(TETRAD−C(日本ガス化学製))、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテル、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0042】
メラミン系架橋剤としては、ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂(スーパーベッカミンJ−820−60N(日本ポリウレタン製)、Luwipal012(BASF製))などが挙げられる。
架橋剤は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、0.05〜20重量部の範囲で添加することが好ましい。特に、ベースポリマーがアクリル系重合体である場合には、イソシアネート系架橋剤、グリシジルアミン系架橋剤、メラミン系架橋剤等を、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが適している。
【0043】
粘着剤層の厚みは特に制限されないが、1〜50μm、好ましくは1〜30μmが挙げられる。
粘着剤層は、可塑剤を含んでいることが好ましい。可塑剤としては、上述したものと同様のものが挙げられる。なかでも、SP値が9.0以上の可塑剤単独又はエポキシ系可塑剤との併用等が一般的である。
この場合の可塑剤の添加量は、粘着剤を構成するベースポリマー100重量部に対して、例えば、0〜100重量部が適しており、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは10〜60重量部である。
【0044】
粘着剤層は、さらに、必要に応じて、タッキファイヤー、安定剤、軟化剤、プロセスオイル、フィラー、滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、耐候安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤は、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0045】
(セパレータ)
セパレータ(剥離ライナーと記載することもある)としては、当該分野で通常使用されているものであれば、特に限定されることなく用いることができる。例えば、紙、ゴム;アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、鉄箔、ジュラルミン箔、錫箔、チタン箔、金箔などの各種金属箔;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミドなどの各種樹脂よりなるフィルム;ポリウレタンフォーム、ビニールフォーム、ポリエチレンフォーム、スチレンフォームなどの発泡体;不織布、織布、フェルト;ならびにこれらを高分子材料でラミネートしてなるフィルム等を基材として用いることができる。この基材の厚みは特に限定されず、例えば、5μm〜5mm、好ましくは30μm〜100μm程度である。
【0046】
また、上述した基材における粘着剤層と接する側の表面又は両面に、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂、低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ゴム系ポリマー、リン酸エステル系界面活性剤等の離型剤を層状に塗布するなど、当該分野で公知の離型処理を施したものを利用してもよい。
セパレータ/剥離ライナーは、粘着テープを被着体へ貼付する際の貼付操作性を向上させるために、直線状、波状、鋸歯状、ギザギザ状のスリット(所謂、背切り)を一本又は複数本入れてもよい。
セパレータ/剥離ライナーは、通常、粘着テープを形成した後、粘着剤層側に貼着することによって、セパレータ/剥離ライナー付き粘着テープを得ることができる。この粘着テープは、剥離ライナーに貼り付けてシート状態で保存、運搬等してもよいし、このような剥離ライナーを介して又は介さずにロール状に巻回して保存、運搬等してもよい。
【0047】
(粘着テープの製法)
本発明の粘着テープは、当該分野で公知の方法によって、基材層及び粘着剤層をそれぞれ単独で形成することができる。そのために、例えば、溶融押出成形法(インフレーション法、Tダイ法等)、溶融流延法、カレンダー法等を利用することができる。
特に、粘着剤層については、これらの方法の他、粘着剤をナイフコーター、ロールコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リバースコーターなど、適宜な方法で基材上に塗布することにより形成することができる。また、例えば、表面に離型処理を施したフィルムなど、適宜なキャスト用工程シート上に粘着剤層を形成し、この粘着剤層を基材層上に転写してもよい。さらに、単独で又は基材層とともに押出成形により別途形成してもよい。
基材層及び粘着剤層をそれぞれ単独で形成した場合には、当該分野で公知の方法によって、両者を積層することができる。さらに、基材層及び粘着剤層を、共押出法、ラミネート法(押出ラミネート法、接着剤を用いたラミネート法等)、ヒートシール法(外部加熱法、内部発熱法等)によって多層構造として形成してもよい。
【0048】
(粘着テープ)
本発明の粘着テープは、例えば、実質的にフタル酸2−ジエチルヘキシル及びフタル酸ジブチルからなる可塑剤がフリーの基材層を備えている。また、粘着剤層においても、これらの可塑剤がフリーであることが好ましい。ここでフリー又は実質的にフリーとは、基材層、好ましくは粘着剤層においても、添加剤としてこれらの化合物を用いないことを意味し、より好ましくは、定量分析において、重量基準で5000ppm以下であることを意味する。
このような特定の可塑剤がフリーを実現することにより、環境への配慮を確実にすることができ、欧州のREACH規制の動向にも合致する。
【0049】
本発明の粘着テープは、種々の用途に用いることができる。例えば、ステンレス及びアルミニウムなどの鋼板、光学装置又はフィルム、樹脂、ガラス等の加工(絞り、曲げ、穴あけなどの各種加工)時、保管時、運搬時などの表面保護、半導体プロセスにおけるウェハ等の固定用、半導体バックグラインド用、半導体ダイシング用、半導体パッケージ、ガラス、セラミックス等のダイシング用、これらプロセス時のウェハ又は回路面等の保護用に貼着する粘着テープ等として使用することができる。
【0050】
以下に、本発明のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートの実施例を詳細に説明する。
実施例1
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してアジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−7160;株式会社ADEKA製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−7160;株式会社ADEKA製、分子量:Mw=1600)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0051】
実施例2
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してアジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−9302;株式会社ADEKA製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−9302;株式会社ADEKA製、分子量:Mw=1600)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0052】
実施例3
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してアジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(D−620N:株式会社ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(D−620N:株式会社ジェイプラス製、分子量:Mw=1600)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0053】
実施例4
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してアジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−9401;株式会社ADEKA製、分子量:Mw=1600)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(アデカサイザーPN−9302;株式会社ADEKA製、分子量:Mw=1600)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。粘着剤層形成後、Si処理を施した38μmのPETフィルムと貼り合わせ、粘着テープを得た。
【0054】
比較例1
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDOP27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹枝:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、DOP60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0055】
比較例2
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してTOTM27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、TOTM60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0056】
比較例3
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してDINCH(ヘキサノールDINCH:BASF製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、DINCH(ヘキサノールDINCH:BASF製)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0057】
比較例4
重合度P=1050のPVC樹脂100重量部に対してアジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(D−623N;株式会社ジェイプラス製)27重量部を含んだ軟質PVCフィルム70μmを準備した。
アクリル共重合ポリマー(BA/AN/AA=85/15/2.5:Mw=800,000)100重量部、メラミン系架橋剤(ブタノール変性メラミンホルムアルデヒド樹脂:スーパーベッカミンJ−820−60N)日本ポリウレタン製))10重量部、アジピン酸系低分子ポリエステル可塑剤(D−623N:株式会社ジェイプラス製、分子量:Mw=3600)60重量部からなる粘着剤のトルエン溶液を調製した。
この粘着剤溶液を、PVCからなる基材層の片面に塗布し、130℃×90秒間乾燥して、10μmの粘着剤層をPVC表面に形成した。
【0058】
上記で得られた実施例及び比較例の粘着テープについて、以下の保存安定性及び機械的特性を評価した。それらの結果を表1及び2、表3及び表4に示した。
【0059】
(粘着力)
トルエンに浸漬し、超音波洗浄したSUS430BA板及びSUS304BA板に、粘着テープを線圧78N/cm、速度0.3m/分で貼り合わせした。粘着テープを20mm幅に切断し、0.3m/minと30m/minとの速度で初期粘着力を測定した。初期粘着力は、貼付後30分後に測定した。
【0060】
(自背面粘着力)
実施例及び比較例の各粘着テープの基材層の背面に、離型処理剤を、マイヤーバー#16で塗布し、この背面に粘着剤層貼り合せて作製した粘着テープを20mm幅に切断し、0.3と30m/minの速度で展開した時の抵抗力を測定した。
【0061】
(破断強度)
実施例及び比較例の各粘着テープを、10mm幅に切断し、−5℃の雰囲気化においてチャック間50mmで0.3m/minの速度で引っ張り、フィルムが破断した時の力を測定した。
【0062】
(破断伸び)
実施例及び比較例の各粘着テープを、10mm幅に切断し、−5℃の雰囲気化においてチャック間50mmで0.3m/minの速度で引っ張り、フィルムが破断した時の初期からの伸び率を測定した。
【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
【表4】

【0066】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明はステンレス、アルミニウムなどの鋼板の加工(絞り、曲げ、穴あけなどの各種加工)時、保管時、運搬時などの表面保護及び半導体ウェハの保護用又はダイシング工程用のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシートに関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、可塑剤10〜40重量部が配合されて形成される基材層と、該基材層の片面に形成された粘着剤層とを有し、
前記可塑剤は、SP値が9.0以上である可塑剤を少なくとも1種類含有することを特徴とするポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項2】
SP値が9.0以上の可塑剤が、数平均分子量Mn800〜1500、重量平均分子量Mw800〜2000を有する低分子ポリエステル系可塑剤である請求項1に記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項3】
低分子ポリエステル系可塑剤が、アジピン酸ポリエステル系可塑剤である請求項2に記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項4】
低分子ポリエステル系可塑剤が、イソノニル末端又はn−オクチル末端を有する請求項2又は3に記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項5】
可塑剤が、実質的にフタル酸2−ジエチルヘキシル及びフタル酸ジブチルフリーである請求項1〜4のいずれか1つに記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項6】
粘着剤層が、ベースポリマーとしてアクリル系ポリマーを含み、SP値が8.9〜9.5に設定されてなる請求項1〜5のいずれか1つに記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。
【請求項7】
さらに、粘着剤層の表面にセパレータを備える請求項1〜6のいずれか1つに記載のポリ塩化ビニル系粘着テープ又はシート。

【公開番号】特開2012−184369(P2012−184369A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−49753(P2011−49753)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【出願人】(501111382)
【Fターム(参考)】