説明

粘着テープ

【課題】場所による粘着力のばらつきが抑制され、粘着力の安定性が向上した極薄の粘着テープを提供する。
【解決手段】実施の形態に係る粘着テープ10は、基材層20、基材層20の両側にそれぞれ設けられた粘着剤層30a、粘着剤層30bを備える。基材層20の厚さに粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの厚さを合計した総厚は10μm以下である。粘着テープ10を構成する粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの厚さの平均値はそれぞれ3.5μm以下である。粘着剤層30の厚さの標準偏差は、粘着剤層30の厚さの平均値の25%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、特に、各種OA機器や電子部品の製造(組立)時に、筺体や部品の接合部において好適に使用される粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、デジタルカメラ、PDA(Personal Digital Assistant)等の携帯機器の小型化が進んでいる。そのため、搭載される各種電子部品についても小型化・薄型化が図られている。たとえば、携帯機器として代表的な機器である携帯電話は、構成される主要部品それぞれが積層化される傾向にある。通常、携帯電話の表示部分は、主にLCDモジュールとバックライトユニットとからなり、発光、反射、遮光、導光等の機能を発現させるために、各種シート状の部品が積層されている。そこで、これらの部品の組み立て(接合)に用いるための粘着テープが考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−105212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
携帯機器に搭載される電子部品の薄型化に伴い、さらなる極薄層構造を要求される部位には、厚さが10μm以下の極薄の粘着テープを用いることが求められている。しかし、従来の基材層と粘着剤層を有する極薄の粘着テープでは、場所によって粘着力にばらつきが生じ、安定した粘着性を得ることが困難であった。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材層と粘着剤層を有する粘着テープにおいて、場所による粘着力のばらつきが抑制され、粘着力の安定性が向上した極薄の粘着テープの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、粘着テープである。当該粘着テープは、基材層の厚さと粘着剤層の厚さの合計が10μm以下であり、粘着剤層の厚さの平均値が3.5μm以下であり、かつ、粘着剤層の厚さの標準偏差が前記粘着剤層の厚さの平均値の25%以下であることを特徴とする。
【0007】
この態様の粘着テープによれば、基材層と粘着剤層を含めた厚さが10μm以下でありながら、場所による粘着力のばらつきを抑制し、粘着力の安定性を向上させることができる。ひいては、従来の粘着テープでは接着が困難であった極薄層構造中の接着部位において接着信頼性を十分に得ることができ、携帯機器のさらなる小型化に寄与することができる。
【0008】
上記態様の粘着テープにおいて、基材層がプラスチック系基材であってもよい。粘着剤層がアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層であってもよい。粘着剤層が粘着付与樹脂を含有してもよい。粘着剤層がアクリル系ポリマーおよび粘着付与樹脂を含むアクリル系粘着剤層であり、粘着付与樹脂の含有量がアクリル系粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して、5〜50質量部であってもよい。粘着付与樹脂がロジン系粘着付与樹脂であってもよい。基材層の厚さと粘着剤層の厚さの合計が5μm未満であってもよい。また、基材層の両側に粘着剤層を有してもよい。上述したいずれかの態様の粘着テープは、携帯電子機器の部品固定用に用いられてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、極薄の粘着テープについて、場所による粘着力のばらつきを抑制し、粘着力の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。
【図2】実施の形態に係る粘着テープを製造する際に使用する塗工装置の概略図である。
【図3】実施の形態に係る粘着テープの製造に用いられる塗工装置による塗工液の吐出の様子を示す部分拡大図である。
【図4】実施例1、比較例1および比較例2の各粘着テープにおける粘着剤層の厚さの検出頻度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、実施の形態に係る粘着テープの一部断面図である。実施の形態に係る粘着テープ10は、基材層20、基材層20の両側にそれぞれ設けられた粘着剤層30a、粘着剤層30b(粘着剤層30aおよび粘着剤層30bを区別せず、粘着剤層30と呼ぶ場合がある)を備える。以下、実施の形態の粘着テープの構成について詳細に説明する。
【0012】
(基材層)
基材層20の材質としては、例えば、プラスチック材、紙材、繊維材(織布、不織布など)、金属材などが挙げられる。基材層20の材質としては、プラスチック材が好適である。すなわち、基材層20としては、プラスチックフィルム(プラスチック系基材)を好適に用いることができる。
【0013】
このようなプラスチック材(プラスチックフィルムの材質)としては、各種エンジニアリングプラスチック材を好適に用いることができる。具体的には、プラスチック材としては、例えば、ポリエステル[ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等]、オレフィン系樹脂[ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のα−オレフィンをモノマー成分とするオレフィン系樹脂等]、ポリエーテルスルホン(PES)(ポリエーテルサルホン)、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、アミド系樹脂[ポリアミド(ナイロン)、全芳香族ポリアミド(アラミド)等]、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエステルイミド、メタクリレート系樹脂[ポリメチルメタクリレート(PMMA)など]、スチレン系樹脂[ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)など]、ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール、ポリアリーレンエーテル(ポリフェニレンエーテルなど)、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリアリール、ポリウレタン類、ポリエーテルケトン類[ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトンなど]、ポリアクリル酸エステル類(ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリル酸エチルなど)、エポキシ系樹脂などが挙げられる。これらの素材(プラスチック材)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】
プラスチック材としては、厚さ精度、引張強度や加工性等の観点より、特に、ポリエステル(中でも、ポリエチレンテレフタレート)を好適に用いることができる。すなわち、基材層としては、特に、ポリエステルフィルム(中でも、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を好適に用いることができる。
【0015】
なお、基材層20の表面(特に、プラスチック材による基材層の表面)は、基材層20上に形成される粘着剤層30との密着性を高めるため、慣用の表面処理、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的又は物理的方法による酸化処理等が施されていてもよく、下塗り剤によるコーティング処理等が施されていてもよい。
【0016】
なお、基材層は、単層、積層のいずれの形態を有していてもよく、構造上の制約を受けない。
【0017】
(粘着剤層)
粘着剤層30を形成する粘着剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、スチレン−ジエンブロック共重合体系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、フッ素系粘着剤、クリープ特性改良型粘着剤、放射線硬化型粘着剤などの公知の粘着剤から適宜選択して用いることができる。粘着剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0018】
粘着剤としては、接着の信頼性の観点から、特にアクリル系粘着剤を好適に用いることができる。アクリル系粘着剤は、アクリル系ポリマーを粘着性成分(ベースポリマー)又は主剤とし、これに必要に応じて、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、可塑剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などの適宜な添加剤が含まれている。前記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを単量体主成分とし、これに必要に応じて前記(メタ)アルキルエステルに対して共重合が可能な単量体(共重合性単量体)を用いることにより調製されている。
【0019】
アクリル系粘着剤層は、特に限定するものではないが、たとえば、(メタ)アクリル系ポリマーおよび架橋剤を含有する粘着剤組成物からなることが好ましく、前述の(メタ)アクリル系ポリマーが、炭素数1〜14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分とすることがより好ましい。前述の(メタ)アクリル系ポリマーを構成する主成分の(メタ)アクリル系モノマーは、前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーであれば、特に制限はないが、好ましくは、炭素数が1〜12であり、より好ましくは、炭素数が2〜10である。炭素数が前述の範囲内にあるものを使用することにより、初期の接着性、冬場など低温雰囲気下での接着性を確保できる。また、炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを主成分とすることが、特に好ましい態様である。なお、前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー全量中において、前述の炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを40〜80質量%含有することが好ましく、より好ましくは50〜75質量%である。前述の炭素数1〜4のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを上記範囲で用いることにより、粘着剤の凝集力が向上し、使用後に剥離する際に糊残りを防止することができ、有効である。
【0020】
前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとして、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、secーブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。中でも、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0021】
本実施の形態において、前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、モノマー全体に対する前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%であることがより好ましい。90質量%を超えると、粘着剤の凝集力が著しく低下する場合があり、40質量%未満であると、初期接着性が低下する原因となり好ましくない。
【0022】
また、前述の(メタ)アクリル系ポリマーが、前述の炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー以外に、粘着テープ10の性能を損なわない範囲で、他のモノマー成分を含有してもよく、たとえば、ヒドロキシル基含有モノマーが用いることができる。前述のヒドロキシル基含有モノマーを使用することにより、架橋剤との架橋性が高くなり、糊残りを防止することができ、有効である。前述のヒドロキシル基含有モノマーとして、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートや、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが好適に用いられる。
【0023】
本実施の形態において、前述のヒドロキシル基含有モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、モノマー全体に対する前述のヒドロキシル基含有モノマーの含有量は、1〜30質量%が好ましく、2〜20質量%であることがより好ましく、3〜10質量%が特に好ましい。30質量%を超えると、初期接着性が低下する場合があり、1質量%未満であると、粘着剤の凝集力が著しく低下する原因となり、好ましくない。
【0024】
さらに、上記炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシル基含有モノマーと共重合可能なビニル系モノマーを含有することもできる。たとえば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点としてはたらく官能基を有する成分、並びに、その他のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーなどを適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0025】
上記スルホン酸基含有モノマーとしては、たとえば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などが挙げられる。
【0026】
上記リン酸基含有モノマーとしては、たとえば、2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートが挙げられる。
【0027】
上記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0028】
上記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0029】
上記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α−メチルスチレン、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0030】
上記カルボキシル基含有モノマーとしては、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などが挙げられる。中でも、特にアクリル酸、およびメタクリル酸が好ましく用いられる。
【0031】
上記酸無水物基含有モノマーとしては、たとえば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などが挙げられる。
【0032】
上記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−(メタ)アクリロイルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドなどが挙げられる。
【0033】
上記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0034】
上記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどが挙げられる。
【0035】
上記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0036】
上記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0037】
本実施の形態において、共重合可能なビニル系モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分全体において、10〜50質量%が好ましく、20〜40質量%であることがより好ましい。50質量%を超えると、初期接着性が低下する場合があり、10質量%未満であると、粘着剤の凝集力が著しく低下する場合があり好ましくない。
【0038】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、上記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下(通常−100℃以上)、好ましくは−10℃以下であり、より好ましくは−20℃以下である。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく被着体への濡れが不十分となり、被着体と粘着剤層30との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより上記範囲内に調整することができる。なお、ガラス転移温度(Tg)(℃)は、一般的な値を採用してよく、たとえば、Polymer Handbook Fourth Edition(J.Brandupら編、1999 John Wiley & Sons,Inc)VI章198項から253項に記載されている数値等を用いることができる。また、新規ポリマーの場合には、粘弾性測定法(剪断法、測定周波数:1Hz)における損失正接(tanδ)のピーク温度をガラス転移温度(Tg)として採用すればよい。
【0039】
このような上記(メタ)アクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知のラジカル重合法を適宜選択できる。また、得られる(メタ)アクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0040】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n−へキサン、トルエン、キシレン、メシチレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、水、各種水溶液などが用いられる。反応は窒素などの不活性ガス気流下で、通常、60〜80℃程度で、4〜10時間程度行われる。
【0041】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。
【0042】
本実施の形態に用いられる重合開始剤としては、たとえば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
上記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100質量部に対して、0.005〜1質量部であることが好ましく、0.02〜0.5質量部であることがより好ましい。
【0044】
また、本実施の形態においては、重合において連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、アクリル系ポリマーの分子量を適宜調整することができる。
【0045】
連鎖移動剤としては、たとえば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどが挙げられる。
【0046】
これらの連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100質量部に対して、0.01〜0.1質量部程度である。
【0047】
本実施の形態において用いられる粘着剤組成物は、上記の(メタ)アクリル系ポリマーを、架橋剤を用いて架橋することにより、より耐候性・耐熱性などに優れたものを得ることができ、有効である。本発明に用いられる架橋剤としては、上記の官能基含有(メタ)アクリル系モノマーの官能基と反応(結合形成)可能な官能基を少なくとも2つ以上分子内に有する化合物が用いられ、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などが用いることができる。
【0048】
このうち、イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、乳化型イソシアネートなどが挙げられる。
【0049】
より具体的なイソシアネート化合物としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、自己乳化型ポリイソシアネート(日本ポリウレタン工業製、商品名アクアネート200)などが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0050】
オキサゾリン化合物としては、たとえば、2−オキサゾリン、3−オキサゾリン、4−オキサゾリン、5−ケト−3−オキサゾリン、エポクロス(日本触媒製)などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0051】
エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X、三菱瓦斯化学製)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロへキサン(商品名TETRAD−C、三菱瓦斯化学製)、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジル−o−トルイジンなどのポリグリシジルアミン化合物などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0052】
メラミン系樹脂としてはヘキサメチロールメラミン、水溶性メラミン系樹脂などが挙げられる。
【0053】
アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU(相互薬工製)、商品名TAZM(相互薬工製)、商品名TAZO(相互薬工製)などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0054】
金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0055】
これらの架橋剤の含有量は、架橋すべき(メタ)アクリル系ポリマーとのバランスにより適宜選択される。(メタ)アクリル系ポリマーの凝集力により十分な耐候性、耐熱性を得るためには、上記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.1〜6質量部含有することが好ましく、0.2〜4質量部含有されていることがより好ましく、0.4〜2質量部含有されていることが特に好ましい。架橋剤の含有量が0.1質量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、溶剤不溶分率が低下する傾向があり、また、粘着剤層30の凝集力が小さくなり、糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が6質量部を超える場合、粘着剤層30の初期接着力が不足し、また、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体への濡れが不十分となって、剥がれの原因となる傾向がある。
【0056】
また、上記粘着剤組成物に粘着付与樹脂を添加してもかまわない。粘着付与樹脂としては特に限定されず、従来粘着剤に用いられているものを使用することができ、たとえば、ロジン系、テルペン系、炭化水素系、エポキシ系、ポリアミド系、エラストマー系、フェノール系、ケトン系等、の各種粘着付与樹脂を用いることができる。このような粘着付与樹脂は、単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。中でも、粘着付与樹脂としては、接着性、特に曲面接着性の観点からロジン系粘着付与樹脂が好ましく、特にロジンエステル類が好ましい、さらには、重合ロジンエステル樹脂が好ましい。
【0057】
具体的には、ロジン系粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等の未変性ロジン(生ロジン);これらの未変性ロジンを水添化、不均化、重合等により変性した変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン、その他の化学的に修飾されたロジン等);その他の各種ロジン誘導体;等が挙げられる。上記ロジン誘導体としては、例えば、未変性ロジンをアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、ロジンのエステル化物)、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)をアルコール類によりエステル化したもの(すなわち、変性ロジンのエステル化物)等のロジンエステル類;未変性ロジンや変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)を不飽和脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジン類;ロジンエステル類を不飽和
脂肪酸で変性した不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類;未変性ロジン、変性ロジン(水添ロジン、不均化ロジン、重合ロジン等)、不飽和脂肪酸変性ロジン類または不飽和脂肪酸変性ロジンエステル類におけるカルボキシル基を還元処理したロジンアルコール類;未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等のロジン類(特に、ロジンエステル類)の金属塩;ロジン類(未変性ロジン、変性ロジン、各種ロジン誘導体等)にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂;等が挙げられる。
テルペン系粘着付与樹脂としては、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体などのテルペン系樹脂;これらのテルペン系樹脂を変性(フェノール変性、芳香族変性、水素添加変性、炭化水素変性等)した変性テルペン系樹脂;等が挙げられる。上記変性テルペン樹脂としては、テルペン−フェノール系樹脂、スチレン変性テルペン系樹脂、芳香族変性テルペン系樹脂、水素添加テルペン系樹脂等が例示される。
【0058】
炭化水素系粘着付与樹脂としては、例えば、脂肪族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、脂肪族系環状炭化水素樹脂、脂肪族・芳香族系石油樹脂(スチレン−オレフィン系共重合体等)、脂肪族・脂環族系石油樹脂、水素添加炭化水素樹脂、クマロン系樹脂、クマロンインデン系樹脂等の各種の炭化水素系の樹脂が挙げられる。脂肪族系炭化水素樹脂としては、炭素数4〜5程度のオレフィンおよびジエンから選択される一種または二種以上の脂肪族炭化水素の重合体等が例示される。上記オレフィンの例としては、1−ブテン、イソブチレン、1−ペンテン等が挙げられる。上記ジエンの例としては、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン等が挙げられる。芳香族系炭化水素樹脂としては、炭素数8〜10程度のビニル基含有芳香族系炭化水素(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、インデン、メチルインデン等)の重合体等が例示される。脂肪族系環状炭化水素樹脂としては、いわゆる「C4石油留分」や「C5石油留分」を環化二量体化した後に重合させた脂環式炭化水素系樹脂;環状ジエン化合物(シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン、ジペンテン等)の重合体またはその水素添加物;芳香族系炭化水素樹脂または脂肪族・芳香族系石油樹脂の芳香環を水素添加した脂環式炭化水素系樹脂;等が例示される。
【0059】
ここに開示される技術では、軟化点(軟化温度)が凡そ80℃以上(好ましくは凡そ100℃以上)である粘着付与樹脂を好ましく使用し得る。かかる粘着付与樹脂によると、より高性能な(例えば、接着性の高い)粘着シートが実現され得る。粘着付与樹脂の軟化点の上限は特に制限されず、例えば凡そ170℃以下(典型的には凡そ160℃以下)とすることができる。軟化点が170℃よりも高すぎる粘着付与樹脂では、アクリル系重合
体との相溶性が低下傾向となることがあり得る。
【0060】
なお、粘着付与樹脂の軟化点は、環球法(例えばJIS K 5902に規定される環球法)によって測定された値として定義される。
【0061】
粘着剤層30における粘着付与樹脂の含有量は、特に制限されず、目的とする粘着性能(接着力等)に応じて適宜設定することができる。例えば、粘着剤層30中に含まれるアクリル系粘着剤の樹脂固形分100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜45質量部である。5質量部未満であると、粘着剤層14の接着力が不十分となるおそれがある。50質量部を超えると、被着体から粘着テープ10を剥がす際に、被着体から粘着テープ10をきれいに剥離させることができず、被着体上に糊が残ってしまうおそれがある。
【0062】
さらに上記粘着剤組成物は、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、界面活性剤、軟化剤、帯電防止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。また、これらの任意成分の配合量は、粘着テープの分野で通常用いられている使用量を用いることができる。
【0063】
(基材層および粘着剤層の厚さ)
実施の形態に係る粘着テープ10では、基材層20の厚さに粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの厚さを合計した総厚が10μm以下(例えば2〜10μm)であり、好ましくは5μm未満(例えば2〜4.9μm)であり、極薄構造中の接着部位に用いることができる。
【0064】
粘着テープ10を構成する粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの各々の厚さの平均値は粘着テープの総厚を考慮して、適宜選択することができ、粘着剤層の厚さの平均値は3.5μm以下(例えば1.0〜3.5μm)、好ましくは3.0μm以下(例えば1.0〜2.5μm)、さらに好ましくは2.0μm以下(例えば1.0〜1.8μm)である。なお、本明細書において、「粘着剤層の厚さの平均値」は、後述の方法により測定される値である。
【0065】
たとえば、粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの厚さの平均値がともに3.5μmの場合には、基材層20の厚さは3μm以下である。さらに、粘着剤層30aおよび粘着剤層30bの各々の厚さの標準偏差は、各々の粘着剤層の厚さの平均値の25%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。粘着剤層の厚さの標準偏差を25%以下とすることにより、総厚が10μm以下の極薄の粘着テープであっても、場所による粘着力のばらつきが抑制され、粘着力の安定性を向上させることができる。なお、「粘着剤層の厚さの標準偏差」は、後述の方法により測定される値である。
【0066】
また、基材層の両面に形成された2つの粘着剤層において、各粘着剤層(表面側の粘着剤層、裏面側の粘着剤層)の厚さについては、特に規定されず、用途に応じて適宜選択することができる。また、基材層の両面に形成された2つの粘着剤層の厚さは、同一であっても、異なっていてもよいが、同じ又はほぼ同じ厚さを選択する場合が多い。
【0067】
基材層の厚さとしては、粘着テープの総厚を考慮して、適宜選択することができ、例えば、6.5μm以下(例えば1.0〜6.5μm)、好ましくは5.0μm以下(例えば1.0〜5.0μm)、更に好ましくは3.0μm以下(例えば1.0〜3.0μm)である。なお、粘着テープ10の強度を保つ観点から、基材層20の厚さは1.0μm以上が好ましい。
【0068】
本実施の形態に係る粘着テープ10によれば、基材層20と粘着剤層30とを含む厚さが10μm以下(さらに好ましくは5μm未満)でありながら、場所による粘着力のばらつきを抑制し、粘着力の安定性を向上させることができる。ひいては、本実施の形態に係る粘着テープ10によれば、従来の粘着テープでは接着が困難であった極薄層構造中の接着部位において、接着信頼性を十分に得ることができる。
【0069】
なお、本実施の形態では、粘着テープ10は基材層の両側に粘着剤層が形成された両面粘着テープであるが、粘着剤層が基材層の片側にのみ形成された片面粘着テープであってもよい。
【0070】
(はく離ライナー)
本実施の形態に係る両面粘着テープ又はシートでは、使用時まで、粘着剤層の粘着面を保護するためのはく離ライナーを設けることができる。このようなはく離ライナーとしては、特に規定されず、公知のはく離ライナーから適宜選択して用いることができる。具体的には、はく離ライナーとしては、例えば、それ自体が剥離性の高いプラスチックフィルム[例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等)、ポロプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体またはランダム共重合体)の他、これらの混合物からなるポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;フッ素樹脂製フィルムなど]によるはく離ライナーであってもよいが、各種基材層(基材)の表面(片面又は両面)に、剥離処理層が形成された構成のはく離ライナーを好適に用いることができる。
【0071】
はく離ライナーの基材としては、プラスチックフィルムが好適に用いられるが、紙(例えば、和紙、洋紙、グラシン紙など)、不織布や布、発砲体、金属箔、各種基材による複合基材(例えば、金属蒸着プラスチックフィルムなど)などであってもよい。基材の厚さは、目的に応じて適宜選択できるが、一般には10〜500μm程度である。なお、はく離ライナーの基材のプラスチックフィルムの素材としては、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−プロピレン共重合体などのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリイミド;ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムのいずれであってもよい。
【0072】
また、剥離処理層は、はく離ライナーにおける剥離処理層を形成する剥離処理剤として公知または慣用の剥離処理剤(例えば、シリコーン系剥離剤、フッ素系剥離処理剤、長鎖アルキル系剥離処理剤など)により形成することができる。なお、剥離処理層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体等のエチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂によるポリオレフィン系フィルム;フッ素樹脂製フィルムを、前記基材層上に、ラミネート又はコーティングすることにより形成されていてもよい。はく離ライナーにおいて、剥離処理層は、前述のように、基材の片面又は両面に設けることができる。
【0073】
はく離ライナーとしては、粘着剤層に対する剥離力が、1N/50mm以下となるように調整することにより、接着作業(はく離ライナーの剥離作業)時に、両面接着テープ又はシートの変形を抑制又は防止することができ、作業性を向上させることができる。はく離ライナーや、その剥離力については、用途等に応じて適宜選択又は調整することができ、特に限定されない。
【0074】
本実施の形態の両面粘着テープ又はシートとしては、シート状のものが積層された積層体の形態を有していてもよく、ロール状に巻回された巻回体の形態を有していてもよい。例えば、はく離ライナーとして、両面が剥離処理面となっている1枚の長尺帯状のはく離ライナーを用い、そのはく離ライナーの一方の剥離処理面を、長尺帯状の両面粘着テープ又はシートにおける一方の粘着剤層の粘着面に重ね合わせて積層し、前記はく離ライナーの他方の剥離処理面を、他方の粘着剤層の粘着面に重ね合わせてロール状に巻回することにより、ロール状に巻回された形態を有する両面粘着テープ又はシートを作製することができる。また、はく離ライナーとしては、片面のみが剥離処理面となっている2枚の長尺帯状のはく離ライナーを用い、一方のはく離ライナーにより長尺帯状の両面粘着テープ又はシートにおける一方の粘着剤層の粘着面を保護し、他方のはく離ライナーにより他方の粘着剤層の粘着面を保護した状態で、ロール状に巻回することにより、ロール状に巻回された形態を有する両面粘着テープ又はシートを作製することができる。
【0075】
このようなロール状に巻回された形態を有する両面粘着テープ又はシートの長さとしては、長尺帯状の長さであれば特に制限されないが、通常、5m以上(好ましくは10m以上、更に好ましくは20m以上)である。
【0076】
(粘着テープの製造方法)
実施の形態に係る粘着テープは、たとえば、下記の工程(A)〜(C)を具備する製造方法により作製することができる。
工程(A):剥離ライナーの剥離処理面に、粘着剤を塗布して、剥離ライナー上に粘着剤層を形成する工程
工程(B):基材層の一方の表面に、剥離ライナー上に形成された粘着剤層を貼り合わせて、基材層上に第1の粘着剤層を形成する工程
工程(C):基材層の他方の表面に、粘着剤を塗布して、基材層上に第2の粘着剤層を形成する工程
【0077】
基材層や剥離ライナーなどの支持体に粘着剤を塗布する工程は、図2および図3に示す塗工装置を用いて行われる。
【0078】
具体的には、塗工装置1は、支持体2を搬送するための回転ドラム6と、回転ドラム6に沿って搬送される支持体2に塗工液(粘着剤)3を塗布するためのダイコーター4と、支持体2の流れ方向上流側の気圧PU(以下、上流側気圧ともいう)を大気圧(即ち、下流側気圧PD)よりも負圧にするためのバキュームボックス5とを備える。
【0079】
バキュームボックス5は、吸引ファン7に接続された排気ダクトによってその内部の気体が吸引されるように構成されており、支持体2とバキュームボックス5の先端との隙間、ダイコーター4とバキュームボックス5の先端との隙間、および吸引ファンの吸引風量等によって気圧PUが所定の負圧状態となるように制御される。
【0080】
一方、ダイコーター4は、支持体2の流れ方向上流側に配置された上流側ダイリップ41と、同じく流れ方向下流側に配置された下流側ダイリップ42とを備える。上流側ダイリップ41と下流側ダイリップ42との隙間から吐出された塗工液(粘着剤)が支持体2の上に塗工される。
【0081】
図2に示すような減圧手段を有する塗工装置を用いて基材層や剥離ライナーなどの支持体に粘着剤を塗布することにより、支持体上に形成される粘着剤層の厚さの平均値を3.5μm以下としつつ、粘着剤層の厚さの標準偏差を25%以下とすることができる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例に基づいて本実施の形態をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0083】
(粘着剤の調製)
n−ブチルアクリレート:70部と、アクリル酸2エチルヘキシル:27部と、アクリル酸:3部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート:0.1部とを、アゾビスイソブチロニトリル:0.2部を重合開始剤として、トルエン及び酢酸エチルの混合溶液[トルエン/酢酸エチル(質量比)=1/1]中で、6時間溶液重合を行って、重量平均分子量:50万のアクリル系ポリマーを得た。該アクリル系ポリマー:100部に、重合ロジンペンタエリスリトールエステル樹脂(商品名「ペンセルD125」荒川化学工業株式会社製;軟化点:125℃):30部と、イソシアネート系架橋剤(商品名「コロネートL」日本ポリウレタン工業社製):2部とを加えて、均一になるように撹拌して混合することにより、粘着剤(感圧性接着剤組成物;「粘着剤A」と称する場合がある)を調製した。
【0084】
(実施例1)
基材層として、ポリエステルフィルム(商品名「C660−2.0W」三菱化学ポリエステル社製;厚さ:2.0μm)の両面に、前述の粘着剤Aを用いて、厚さが1.5μmの粘着剤層をそれぞれ形成し、ロール状に巻き取って、ロール状に巻回された粘着テープ(両面粘着テープ、総厚:5.0μm、幅:480mm、巻き長さ:1000m)を作製した。なお、粘着剤Aを塗布する際には、上流側気圧PUを0.1〜2.0kPa減圧した。
【0085】
(実施例2)
基材層として、ポリエステルフィルム(商品名「SC75」SKC社製;厚さ:1.4μm)の両面に、前述の粘着剤Aを用いて、厚さが1.5μmの粘着剤層をそれぞれ形成し、ロール状に巻き取って、ロール状に巻回された粘着テープ(両面粘着テープ、総厚:4.4μm、幅:480mm、巻き長さ:1000m)を作製した。なお、粘着剤Aを塗布する際には、上流側気圧PUを0.1〜2.0kPa減圧した。
【0086】
(比較例1および比較例2)
比較例1および比較例2の各粘着テープは、基材層に厚さ2.0μmのポリエステルフィルムを使用し、基材層の両側に厚さが1.5μmになるように粘着剤層を形成した点で実施例1と共通するが、製造方法がそれぞれ異なる。
【0087】
比較例1および比較例2の粘着テープの作製方法は、上述した実施例1の粘着テープの製造方法に準じる。ただし、比較例1の粘着テープの作製方法では、粘着剤Aを塗布する際に減圧をしておらず、上流側気圧PUは大気圧である。また、比較例2の粘着テープの作製においては、図2に示す塗工装置を用いた塗工方法に代えて、ロールコートによる方法を適用した。
【0088】
(粘着剤層の厚さ評価)
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の各粘着テープの粘着剤層の厚さの平均値および粘着剤層の厚さの標準偏差を以下の手順により算出した。
(1)幅480mm×長さ1000mの粘着テープを、長さ方向に8区間に分け、各区間の幅方向を6分割して形成される48区画(1区画の粘着テープは、幅80mm×長さ125m)において、各区画毎に2カ所ずつ粘着テープの総厚さを測定する。粘着テープの総厚さは、1/10000μmリニアゲージ(D−10HS:株式会社尾崎製作所)を用いて測定する。
なお、粘着剤層の厚さの平均値および粘着剤層の厚さの標準偏差を算出する際の、粘着テープの総厚さ測定の点数は96点以上あればよい。
(2)上記(1)で測定された総厚さから基材層の厚さを減じて得られる値を2で割り、1層分の粘着剤層の厚さを算出する。
なお、上記算出方法により算出された粘着剤層の厚さは、走査型電子顕微鏡で観察した粘着剤層の厚さと同等であった。これにより、上記算出方法のように、基材層の厚さ公差(通常±0.2μm程度)を無視して粘着剤層の厚さを算出することの妥当性を確認した。
【0089】
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2の各粘着テープについて、96箇所の粘着剤層の厚さを上記算出方法にて算出した。図4は、実施例1、比較例1および比較例2の粘着テープにおける粘着剤層の厚さの検出頻度を示すグラフである。さらに、各粘着テープについて、粘着剤層の厚さの平均値Aおよび粘着剤層の厚さの標準偏差Bを算出した。また、得られた結果から、「粘着剤層の厚さの標準偏差B/粘着剤層の厚さの平均値A」で表される指標を算出した。得られた結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

表1に示すように、実施例1および実施例2の粘着テープにおける粘着剤層の厚さの平均値に対する標準偏差の比率は、比較例1および比較例2の粘着テープの場合に比べて顕著に低下していることが確認された。言い換えると、実施例1および実施例2の粘着テープでは、粘着剤層の厚さのばらつきが比較例1および比較例2の粘着テープに比べて大幅に低減されている。これにより、実施例1および実施例2の粘着テープは、層厚が10μm以下という極薄でありながら、場所による粘着力のばらつきを抑制する効果を奏する。
【符号の説明】
【0091】
1 塗工装置、2 支持体、3 塗工液、4 ダイコータ−、5 バキュームボックス、10 粘着テープ、20 基材層、30 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の厚さと粘着剤層の厚さの合計が10μm以下であり、
前記粘着剤層の厚さの平均値が3.5μm以下であり、
かつ、前記粘着剤層の厚さの標準偏差が前記粘着剤層の厚さの平均値の25%以下であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記基材層がプラスチック系基材であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記粘着剤層がアクリル系ポリマーを含むアクリル系粘着剤層である請求項1または2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層が粘着付与樹脂を含有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記粘着剤層がアクリル系ポリマーおよび粘着付与樹脂を含むアクリル系粘着剤層であり、
前記粘着付与樹脂の含有量が前記アクリル系粘着剤層の樹脂固形分100質量部に対して、5〜50質量部である請求項1に記載の粘着テープ。
【請求項6】
前記粘着付与樹脂がロジン系粘着付与樹脂である請求項4または5に記載の粘着テープ。
【請求項7】
基材層の厚さと粘着剤層の厚さの合計が5μm未満である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の粘着テープ
【請求項8】
基材層の両側に粘着剤層を有する請求項1乃至7のいずれか1項に記載の粘着テープ。
【請求項9】
携帯電子機器の部品固定用に用いられることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−162703(P2012−162703A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116220(P2011−116220)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】