説明

粘着フィルム巻回体

【課題】 姿態安定性に優れ、かつ、使用済みになった後の巻芯を簡易かつ高効率で廃棄処分できる粘着フィルム巻回体。
【解決手段】 円筒状の巻芯12に粘着フィルム14が巻回した粘着フィルム巻回体において、前記粘着フィルム巻回体の巻芯の内径rの50%変形時の圧縮荷重f[N/mm]と粘着フィルム巻回体の外径R[mm]とが、0.005≦f/R≦0.020 を満たすものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムが巻回されて形成された巻回体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば各種の物品の包装用、接着用として、また、ラベルとして、テープ状等のフィルムの片面又は両面に一様に粘着剤を塗布した粘着フィルムが広く利用されており、通常、巻回体として、保存、流通に供され、必要な長さだけ繰り出して使用されている。
このような粘着フィルム巻回体においては、その巻回体としての形状を保つべく、また、巻回体を製造する際の巻回す作業性の点から、通常、紙管等の巻芯が中心に用いられる。
特に、粘着フィルム巻回体においては、巻回後の残留応力等に起因して変形、潰れ等が生じることがある。このような変形が生じると使用等に際して支障が生じてしまうので、変形を防止する為、巻芯には高い剛性が要求され、紙管を用いる場合にも堅牢なものが利用されている。
また、粘着フィルム巻回体の姿態を安定に保持する為に種々の提案がなされている(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2004−269592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、巻芯を有する粘着フィルム巻回体においては、使用後には、巻芯は不要となり、廃棄処分する必要が生じる。
しかしながら、巻芯には高い剛性が要求されていることから、これを潰して小さく纏めることは困難で、嵩張りやすく、廃棄処分の妨げにもなるものであった。
【0004】
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、姿態安定性に優れ、かつ、使用済みになった後の巻芯を簡易かつ高効率で廃棄処分できる粘着フィルム巻回体を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粘着フィルム巻回体は、円筒状の巻芯に粘着フィルムが巻回した粘着フィルム巻回体において、前記粘着フィルム巻回体の巻芯の内径の50%変形時の圧縮荷重f[N/mm]と粘着フィルム巻回体の外径R[mm]とが次式を満たすことを特徴とするものである。
0.005≦f/R≦0.020
ここで、巻芯はその内径の50%変形時の圧縮荷重fが0.3〜3.0N/mmであることが望ましい。
また、巻芯の肉厚が0.3〜6.0mmであることが望ましい。
さらにまた、粘着フィルムは、フィルム上にその幅方向に対して部分的に粘着層が設けられていることが望ましく、特に、フィルムの片面上にその長さ方向に沿って帯状に粘着層が設けられ、フィルムの幅方向の長さwに対する、粘着層の幅方向の合計長さaの比(a/w)が、0.1〜0.7であることが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘着フィルム巻回体によれば、必要十分な姿態安定性をもち、使用性、外観性等において良好でありながら、使用済みになった巻芯を容易に小型化できて廃棄処分効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1は本発明の粘着フィルム巻回体の一例を示すもので、円筒状の巻芯12を中心にして、テープ状の粘着フィルム14が幾重にも巻回されて構成されている。
本発明においては、巻芯12の内径(内周縁の直径)rが50%になるように粘着フィルム巻回体10を圧縮変形させた時の圧縮荷重f[N/mm]と、粘着フィルム巻回体10の外径(外周縁の直径)R[mm]とが次式を満たすことが必要である。
0.005≦f/R≦0.020
ここで、圧縮荷重とは、図5に示すように、測定対象となる粘着フィルム巻回体10を測定台20上に横倒して固定し、粘着フィルム巻回体の上部から押圧板22を下降させて圧縮し、巻芯12の内径が負荷前の内径の半分になったときの荷重を測定するものである。
/Rが0.005以上であることにより、巻芯が粘着フィルムの巻回圧力に対して変形せず、粘着フィルム巻回体として、その形状を維持し、しかも、巻芯が50%変形するような外力が加わった後でも、その解放後に断面形状が復元し、使用に際して支障が生じることがない。他方、f/Rが0.020以下であることにより、粘着フィルムを全て繰り出して使用済みになって残った巻芯を人が手作業で簡易に握り潰して小型化することができる。この要件を満たす為には、例えば、巻芯の材質、厚み、構造等を適宜調整すればよい。
【0008】
巻芯12は、紙製、プラスチック製等、巻芯として利用でき且つ廃棄処分適性があれば、その材質は特に制限されるものではない。
さらに、巻芯の内径の50%変形時の圧縮荷重fは0.3〜3.0N/mmであることが望ましい。圧縮荷重fが0.3N/mm以上であることにより、姿態安定性が向上し、圧縮荷重fが3.0N/mm以下であることにより、手作業により容易に潰し易くなるからである。
巻芯の大きさについては、その目的等に応じて決められ、幅はこれに巻回する粘着フィルに応じ、太さは直径が1cmのものから1mのもの等が利用される。3〜20cmのものが広く利用される。
また、巻芯の肉厚tは0.3〜6.0mmであることが望ましい。巻芯は、上記要件を満たすものであれば、できるだけ薄い方が省資源、廃棄物削減等の理由から望ましく、実際上、この範囲のものが(特に紙管においては)適切かつ現実的だからである。
【0009】
粘着フィルム14は、フィルムの片面又は両面に粘着層が設けられて概略構成される。
フィルムの材質、大きさは、その粘着フィルムの用途等に応じて適宜選択される。材質としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、軟質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどが挙げられる。大きさについても、幅が2cm位のものから1m位のものが適用できる。5〜30cmのものが広く利用される。長さも、1m位から100mのもののように、特に限られない。
フィルムは単層の他、必要に応じて複数層から構成される。例えば、粘着層の設けられない側には、離型層等が設けられうる。また、フィルムには、必要に応じて、印刷や表面処理等も施される。
【0010】
粘着層に用いる粘着剤の種類や塗布量は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、その用途等に応じて決められる。例えば、シリコーン系、アクリル系、天然ゴム系、合成ゴム系(スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、イソプレンゴム、ポリイソブチレン、ブチルゴム等)など、若しくは、これらの混合系の各種の粘着剤が挙げられる。
粘着層の厚さは3−40μmが適当であり、10−30μmが好ましい。十分な粘着力を発揮させ易く、他方、粘着剤の凝集力が過剰にならず、巻芯が変形せず、粘着剤が粘着フィルムの全体に均一に設けられていない場合にでも、粘着剤のある場所とない場所とで巻径差が小さく、皺が生じにくいからである。
【0011】
上述した本発明の要件を満たす為には、フィルムに対する粘着層を設ける範囲、位置にを特定することが効果的である。即ち、フィルムの面の全面に設けるのではなく、その幅方向(繰り出し方向に対して垂直な方向)に対して部分的に粘着層を設ける。例えば、図2に示すように、フィルム14の両側縁近傍部分にその長さ方向に沿って帯状に粘着層16を設け、中央部分に粘着層のない部分を設けることで、フィルム14の幅方向に対して部分的に粘着層16を設ける。このように、粘着層16を全体に渡ってではなく、部分的に設けることにより、巻芯12が通常の巻芯に比して圧縮強さが小さくても、巻芯が潰れにくくなり、変形しにくくなる。その理由は明らかではないが、粘着フィルムは粘着層を設けることにより、僅かに可撓性が失われるようになるが、これが巻回体とした際には、その巻数に応じて可撓性の損失が増大する。そのようなものであると、巻回体にかかる外力、又は、粘着フィルムの内部応力が、巻芯に大きくかかり、巻芯の陥没、変形をもたらし易くなる。しかしながら、本発明のように、粘着層のない部分が確保されることにより、全体として粘着フィルムが柔軟になり、外力や内部応力を粘着フィルム自体が吸収し、巻芯への負荷が低減され、巻芯の陥没、変形が抑制されると共に、粘着フィルムが弾性復帰し、円筒状に維持され易くなるものと考えられる。
粘着層16は、その幅方向の長さwに対する、粘着層16の幅方向の長さa(複数箇所に分かれている場合はその合計:a=a1+a)の比(a/w)が、0.1〜0.7が好ましく、0.2〜0.5がより好ましく、0.3〜0.4が望ましい。下限値よりも小さいと、用途にもよるが、十分な粘着力が確保しづらくなり、上限値よりも大きいと巻芯の変形防止作用が小さくなるからである。
粘着層16は、図2に示す例のように、両側に2本設けるものに限られない。例えば、図3に示すように、両側縁部分を残して中央部分のみに1本の粘着層16を設けたり、また、図4に示すように、両側縁部分と中央部分を残して2本の粘着層16、16を設けたりすることができる。粘着層16の本数も3本以上であってもよく、また、帯状でなくても良い。
このような粘着層を設ける場所、幅等は、粘着フィルムを用いる目的、用途、必要な接着強度等を考慮して決められる。
【0012】
本発明の粘着フィルム巻回体を製造するのにも、特殊な工法は必要とせず、従来周知の方法を利用でき、安価かつ容易に製造できる。
【実施例】
【0013】
以下、本発明をより具体的に説明する。尚、圧縮荷重試験は「テンシロンRTC-1310A」エー・アンド・デー社製を用いて上記方法により行ったもので、その圧縮速度は、粘着フィルム巻回体について測定するときは50mm/分とし、巻芯について測定するときは10mm/分とした。
[実施例1]
内径が38mm、肉厚が0.6mm、幅が80mmの紙管を用意した。この紙管について、圧縮荷重を測定したところ、25%圧縮で0.33N/mm、50%圧縮で0.42N/mmであった。尚、この紙管は手作業で意図的に握り潰そうとすると容易に潰れるものであった。
また、図2に示すように、幅wが80mm、厚さが30μmのOPP製のテープ状フィルムの片面上に、その両側縁近傍部分に帯状(a=a=10mm a/w=0.25)の天然ゴム系粘着剤からなる粘着層16(塗布厚15μm)を設けた粘着フィルム14を準備した。
巻取装置を利用し、そのエアシャフトを上記紙管に挿入、固定し、エアシャフトを回転させて粘着フィルム14を紙管上に、その直径が、粘着層16が設けられている両側縁近傍部分において80mmになるように巻き取って粘着フィルム巻回体を製造した。
この粘着フィルム巻回体を観察したが、紙管に陥没はなく、全体として円筒状で使用に際して支障がなく、また、圧縮荷重試験後においても形状が復元し、良好なものであった。
【0014】
[実施例2、3]
粘着フィルム巻回体の外径を80mmから110mm(実施例2)又は140mm(実施例3)に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着フィルム巻回体を製造し、評価した。
これらの粘着フィルム巻回体の紙管に陥没はなく、全体として円筒状で使用に際して支障がなく、また、圧縮荷重試験後においても形状が復元し、良好なものであった。
[実施例4〜6]
内径が38mm、肉厚が3.0mm、幅が80mmの紙管を用意した。この紙管について、圧縮荷重を測定したところ、25%圧縮で0.77N/mm、50%圧縮で0.83N/mmであった。尚、この紙管は手作業で意図的に握り潰そうとすると容易に潰れるものであった。
この紙管を用いたこと以外は実施例1〜3と同様にして粘着フィルム巻回体を製造し、評価した。
これらの粘着フィルム巻回体を観察したが、紙管に陥没はなく、全体として円筒状で使用に際して支障がなく、また、圧縮荷重試験後においても形状が復元し、良好なものであった。
【0015】
[比較例1〜4]
粘着フィルムとして、幅wが80mm、厚さが30μmのOPP製のテープ状フィルムの片面上に、その両側縁近傍部分に帯状(a=a=35mm a/w=0.875)の天然ゴム系粘着剤からなる粘着層16(塗布厚50μm)を設けた粘着フィルム14を準備した。
この粘着フィルムを用いたこと以外は上記実施例1〜6と同様にして表1に示す各粘着フィルム巻回体を製造した。
これらの粘着フィルム巻回体は巻締まり圧力により巻芯が変形してしまった。
【0016】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の粘着フィルム巻回体は、各種の物品の包装用、接着用として、また、ラベルとして有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の粘着フィルム巻回体の一例を示す斜視図である。
【図2】粘着フィルムの部分平面図である。
【図3】粘着フィルムの他の例を示す部分平面図である。
【図4】粘着フィルムの他の例を示す部分平面図である。
【図5】圧縮荷重試験方法を説明する為の斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
10 粘着フィルム巻回体
12 巻芯
14 粘着フィルム
16 粘着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の巻芯に粘着フィルムが巻回した粘着フィルム巻回体において、前記粘着フィルム巻回体の巻芯の内径の50%変形時の圧縮荷重f[N/mm]と粘着フィルム巻回体の外径R[mm]とが次式を満たすことを特徴とする粘着フィルム巻回体。
0.005≦f/R≦0.020
【請求項2】
前記巻芯はその内径の50%変形時の圧縮荷重fが0.3〜3.0N/mmであることを特徴とする請求項1に記載の粘着フィルム巻回体。
【請求項3】
前記巻芯の肉厚が0.3〜6.0mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘着フィルム巻回体。
【請求項4】
前記粘着フィルムは、フィルム上にその幅方向に対して部分的に粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の粘着フィルム巻回体。
【請求項5】
前記粘着フィルムは、フィルムの片面上にその長さ方向に沿って帯状に粘着層が設けられ、フィルムの幅方向の長さwに対する、粘着層の幅方向の合計長さaの比(a/w)が、0.1〜0.7であることを特徴とする請求項4に記載の粘着フィルム巻回体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate