説明

粘着ラベル剥離剤組成物及び粘着ラベルの剥離方法

【課題】低臭気で、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないだけでなく、剥離性に優れた粘着ラベル剥離剤組成物を提供する。
【解決手段】グリコールエーテル系水溶性有機溶剤を20重量%以上と、水とを含有する粘着ラベル剥離剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベル剥離剤組成物及び粘着ラベルの剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粘着ラベル、テープ、シール等(以下、これらを総称して粘着ラベルという)は、表示、広告、内装等の幅広い分野で使用されている。しかしながら、一旦粘着したこれらの粘着ラベルを除去しようとする場合、元通りに剥がすことが困難となる。特に、粘着後しばらく放置された粘着ラベルは頑強に固着している場合が多く、通常の水洗い等の洗浄では除去できないことが多い。
【0003】
これを解決する手段として、芳香族系炭化水素類(キシレン、トルエン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等)、ハロゲン化炭化水素類、エチレングリコールエステル類、酢酸エステル類、低級アルコール類(メタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール等)等の有機溶剤を主成分とする剥離剤組成物が使用されている。しかしながら、有機溶剤を主成分とする剥離剤組成物では、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系糊のような疎水性粘着剤で粘着されたラベルの除去は容易であるが、でんぷん糊、ポリアクリル酸塩系糊等の水溶性粘着剤で粘着されたラベル等の剥離が困難であり、また、使用すると溶剤に伴う不快臭が残るという問題があった。さらに、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液が水質基準を超えてしまうことがあり、環境への負荷が大きいという問題点があった。
【0004】
そこで、水溶性粘着剤及び疎水性粘着剤を用いたいずれの粘着ラベルに対しても剥離性に優れ、使用しても不快臭を残さない粘着ラベル剥離剤組成物を提供する手段として、例えば特許文献1には主としてテルペノイドを、その他にカルボキシエチルチオコハク酸塩、界面活性剤及び水を含む粘着ラベル剥離剤組成物が、特許文献2にはテルペン化合物(主にリモネンやピネン)を含む粘着ラベル剥離剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−12597号公報
【特許文献2】特開2004−331927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で開示されているテルペン系炭化水素を含む剥離剤組成物のようにテルペン系炭化水素を大量に含む場合、臭いが強く作業時に不快感がある。さらに、洗浄対象物へ臭いが残留する可能性があり、好ましくない。また、テルペン系炭化水素は水に不溶であるため、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液により環境が汚染される。さらに、特許文献2で開示されている粘着ラベル剥離剤組成物において、主に配合されているN−メチル−2−ピロリドン溶剤は、海洋汚染防止法の有害液体物質に該当し、排水時に環境を汚染するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないだけでなく、低臭気で、剥離性に優れた粘着ラベル剥離剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の粘着ラベル剥離剤組成物では、グリコールエーテル系水溶性有機溶剤を20重量%以上と、水とを含有することを特徴とする。
【0009】
上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤を含有する粘着ラベル剥離剤組成物は、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないうえに、低臭気である。
さらに、上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤が20重量%以上含有されていると、剥離性に優れた粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
【0010】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤が、下記一般式(I)及び(II)からなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
(I)R−O−(C2mO)−R
(式中、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基、mは2又は3の整数、nは1〜3の整数を示す。)
(II)R−O−(C2pO)−H
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、pは2〜3の整数、qは1〜3の整数を示す。)
【0011】
上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤が、上記一般式(I)及び(II)からなる群から選択された少なくとも一種であると、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないだけでなく、低臭気で、剥離性に優れた粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
【0012】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、上記一般式(I)及び(II)で表されるR、R及びRの炭素数が4以下であることが望ましい。
上記一般式(I)及び(II)で表されるR、R及びRの炭素数が4以下であると、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系糊のような疎水性粘着剤の剥離性に特に優れた粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
【0013】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤が、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及び、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一種であることが望ましい。
上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤が含有されていると、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系糊のような疎水性粘着剤の剥離性に特に優れた粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
【0014】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、さらに増粘剤を含むことが望ましい。
上記粘着ラベル剥離剤組成物に上記増粘剤が含まれると、上記粘着ラベル剥離剤組成物がジェル状となり定着性が良くなる。例えば、粘着ラベルが貼着されている硬質材料(例えば、プラスチック板(ポリプロピレン製)のコンテナー等)の面が垂直であっても、上記粘着ラベル剥離剤組成物が短時間で垂れ落ちることがなく、上記粘着ラベル剥離剤組成物を上記粘着ラベル部分に長時間触れさせることができる。
【0015】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、さらにアルカリビルダーを含むことが望ましい。
上記粘着ラベル剥離剤組成物に上記アルカリビルダーが含まれると、粘着ラベルを剥離するのと同時に、粘着ラベルが粘着されている硬質材料(例えば、プラスチック板(ポリプロピレン製)のコンテナー等)の有機汚れを落とすことができる。
【0016】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、さらに界面活性剤を含むことが望ましい。
上記粘着ラベル剥離剤組成物に上記界面活性剤が含まれると、上記粘着ラベル剥離剤組成物の粘着ラベルへの浸透力が上がり、上記粘着ラベルが剥離しやすくなると同時に汚れも落ちやすくなる。また、上記粘着ラベル剥離剤組成物をスプレーして使用することができる。
【0017】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、さらに消泡剤を含むことが望ましい。
自動コンテナー洗浄機に硬質材料を投入しすすぐ際、すすぎ時に自動コンテナー洗浄機内で泡が発生し、自動コンテナー洗浄機が正常に作動しない場合がある。上記粘着ラベル剥離剤組成物に上記消泡剤が含まれると、泡立ちを抑え、かつ、泡切れを良くすることができる。
【0018】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物においては、上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤の濃度が30〜60重量%であることが望ましい。
上記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤の濃度が30〜60重量%であると、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないだけでなく、低臭気で、剥離性に優れた粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
【0019】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、pHが5〜9であることが望ましい。
pHが5〜9であると、万一皮膚に接触しても短時間で侵される心配がなく、危険性が少ない。
【0020】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、pHが9〜14であることが望ましい。
pHが9〜14であると、粘着ラベルを剥離するのと同時に、粘着ラベルが粘着されている硬質材料(例えば、プラスチック板(ポリプロピレン製)のコンテナー等)の有機汚れを落とすことができる。
【0021】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、粘度が1〜10000mPa・sであることが望ましい。
粘度が1〜10000mPa・sであると、上記粘着ラベル剥離剤組成物を粘着ラベル表面上に均一に塗り広げやすく、また、上記粘着ラベル剥離剤組成物を上記粘着ラベル部分に長時間触れさせることができる。
【0022】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、水溶性であることが望ましい。
粘着ラベル剥離剤組成物が水溶性であると、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ない粘着ラベル剥離剤組成物が得られる。
ここで、水溶性とは、調製した粘着ラベル剥離剤組成物を1%の水溶液(20℃)として、スターラー(300rpm)にかけて5分間撹拌した後、2層に分離していない状態となる性質をいう。
【0023】
本発明の硬質材料の表面からの粘着ラベルの剥離方法は、硬質材料の表面に貼り付けられた粘着ラベル上に本発明の粘着ラベル剥離剤組成物を滴下し、
1〜30分経過後に擦り落す、流水ですすぐ、又は、高圧の水や空気を吹き付けることによって粘着ラベルを剥離することを特徴とする。
【0024】
上記粘着ラベル上に上記粘着ラベル剥離剤組成物を滴下し、上記粘着ラベルに充分に浸透させるため、1〜30分放置する。その後、擦り落す、流水ですすぐ、又は、高圧の水や空気を吹き付けることで、上記粘着ラベルを痕跡なく、きれいに剥離することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないだけでなく、低臭気で、剥離性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は、グリコールエーテル系水溶性有機溶剤を20重量%以上と、水とを含有することを特徴とする。
グリコールエーテル系水溶性有機溶剤は、20〜80重量%含有されていることが望ましく、30〜60重量%含有されていることがより望ましい。
【0027】
グリコールエーテル系水溶性有機溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、又は、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらのグリコールエーテル系水溶性有機溶剤は、これらから選択される1種又は2種以上を混合して使用することができる。特に、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及び、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一種が含有されていることが望ましい。
【0028】
粘着ラベル剥離剤組成物には増粘剤が含まれていても良い。
増粘剤は、0.1〜2.0重量%含有されていることが望ましい。
増粘剤としては、デンプン系(カルボキシメチルデンプン)、セルロース系(ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アクリル系(カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム)等が挙げられる。特に、カルボキシビニルポリマー及び/又はその中和物が含有されていることが望ましい。または、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが含有されていることが望ましい。
【0029】
カルボキシビニルポリマーは酸性の増粘剤であるため、中和剤とともに粘着ラベル剥離剤組成物に含有されていることが望ましい。
中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ジイソプロパノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。特に、トリエタノールアミンが含有されていることが望ましい。
【0030】
粘着ラベル剥離剤組成物にはアルカリビルダーが含まれていても良い。
アルカリビルダーは、0.1〜20重量%含有されていることが望ましい。
アルカリビルダーとしては、炭酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、硫酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩等が挙げられる。特に、水酸化ナトリウムが含有されていることが望ましい。
【0031】
粘着ラベル剥離剤組成物には界面活性剤が含まれていても良い。
界面活性剤は、0.1〜20重量%含有されていることが望ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩などの陰イオン界面活性剤や、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、アルキルアルカノールアミド、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、ソルビタン脂肪酸エステルのアルキレンオキシド付加物などの非イオン界面活性剤が挙げられる。さらに、アルキルアミンオキシド、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型界面活性剤などの両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、これらから選択される1種又は2種以上を混合して使用することができる。
【0032】
粘着ラベル剥離剤組成物には消泡剤が含まれていても良い。
消泡剤は、0.01〜5重量%含有されていることが望ましい。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、有機系消泡剤が挙げられる。特に、シリコーン系消泡剤が含有されていることが望ましい。シリコーン系消泡剤が含有されている方が、粘着ラベル剥離剤組成物の安定性が良く、消泡性能も向上する。
シリコーン系消泡剤としては、シリコーンオイル、シリコーンコンパウンド、エマルジョン型シリコーン系消泡剤等が挙げられる。特に、エマルジョン型シリコーン系消泡剤が含有されていることが望ましい。
【0033】
粘着ラベル剥離剤組成物のpHは、5〜14であることが好ましく、5〜9であることがより好ましい。
【0034】
粘着ラベル剥離剤組成物の粘度は、1〜10000mPa・sであることが好ましく、1000〜5000mPa・sであることがより好ましい。
【0035】
本発明の粘着ラベル剥離剤組成物を使用して剥離する、本発明の粘着ラベルの剥離方法について説明する。
【0036】
本発明の粘着ラベルの剥離方法は、硬質材料の表面に貼り付けられた粘着ラベルだけでなく、硬質材料の表面から粘着ラベルを無理に剥がした際、表面に残された粘着剤層のみに対しても用いられる。
本発明の粘着ラベルの剥離方法は、文字の印刷又は記入に用いられる基材と、その基材上に形成されたアクリル系粘着剤層又はゴム系粘着剤層から構成される粘着ラベルに効果的である。
文字の印刷又は記入に用いられる基材としては、上質紙、クラフト紙、和紙等が挙げられる。
【0037】
硬質材料としては、金属、セラミック、プラスチック、ガラス、表面処理した木材等が挙げられる。
【0038】
硬質材料の表面に貼り付けられた粘着ラベルに対して、本発明の粘着ラベル剥離剤組成物を、そのままハケ、ローラー、フォーマー又はスプレーガン等で塗布する。
その後、1〜30分間なじませた後に、ヘラ、スポンジ、ウェス又はタワシ等で軽くこすることにより、硬質材料の表面から粘着ラベルを除去し、剥離の痕を残さずきれいに仕上げることができる。
または、自動コンテナー洗浄機に硬質材料を投入し流水ですすぐ、又は、高圧の水や空気を吹き付けることによって、硬質材料の表面から粘着ラベルを除去し、剥離の痕を残さずきれいに仕上げることができる。
【実施例】
【0039】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す組成からなる粘着ラベル剥離剤組成物を調製した。
実施例1では、エチレングリコールモノブチルエーテル20.0重量%を準備し、水80.0重量%と混合して、粘着ラベル剥離剤組成物を調製した。
【0040】
(pH及び粘度の測定)
粘着ラベル剥離剤組成物のpH及び粘度を測定した結果を表3に示す。
粘着ラベル剥離剤組成物の粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社 VISCOMETER TV−22)を用いて、20℃において1rpmの回転を付与して測定した。
【0041】
下記の通り、粘着ラベル剥離力、臭い、すすぎ時水溶性、すすぎ時泡立ち及び経時安定性を評価した結果を表3に示す。
(粘着ラベル剥離力の評価)
上質紙と(i)アクリル系粘着剤PW(リンテック社製)、(ii)アクリル系粘着剤PZ−2(リンテック社製)、又は、(iii)ゴム系粘着剤PV−2(リンテック社製)から構成される4cm×4cmの粘着ラベルをプラスチック板(ポリプロピレン製)に貼り付けて、室温で7日間以上保管した。その後、粘着ラベルが容易に剥離しないことをヘラでこすって確認し、調製した粘着ラベル剥離剤組成物を粘着ラベルの基材の上から0.2mL滴下し、ハケで塗り広げた。20分間放置して良くなじませた後、ヘラでこすり剥がし、剥離状態を目視にて次の2段階で評価した。
○:剥離し、痕跡もない
×:ほとんど剥離していない
【0042】
(臭いの評価)
調製した粘着ラベル剥離剤組成物の臭いを、3人のモニターにより嗅覚テストし、その結果を次の2段階で評価した。
○:ほとんど臭いなし
×:強烈な刺激臭あり
【0043】
(すすぎ時の水溶性の評価)
調製した粘着ラベル剥離剤組成物を1%の水溶液(20℃)として、スターラー(300rpm)にかけて5分間撹拌した後、状態を観察し、結果を次の2段階で評価した。
○:ほとんど分散する
×:2層に分離する
【0044】
(すすぎ時泡立ちの評価)
ドア型自動食器洗浄機(ホシザキJW650UF)に粘着ラベル剥離剤組成物を添加して、濃度を0.35%に調整後、1分間洗浄機を作動させた。その直後の泡立ちの状態を観察し、結果を次の2段階で評価した。
◎:泡立ちがほとんどない、又は、1cm未満
○:泡立ちが1〜5cm未満
【0045】
(経時安定性の評価)
調整した粘着ラベル剥離剤組成物を45℃で30日間保管した後、外観を観察した。
○:均一な状態を保っている
【0046】
(実施例2〜7)
実施例2〜7については、それぞれ表1に示す組成からなる粘着ラベル剥離剤組成物を調製した以外は、実施例1と同様に粘着ラベル剥離力、臭い、すすぎ時水溶性、すすぎ時泡立ち及び経時安定性の評価を行った。
【0047】
(比較例1〜3)
比較例1〜3については、それぞれ表2に示す組成からなる粘着ラベル剥離剤組成物を調製した以外は、実施例1と同様に粘着ラベル剥離力、臭い、すすぎ時水溶性、すすぎ時泡立ち及び経時安定性の評価を行った。
【0048】
【表1】

【0049】
【表2】

【0050】
【表3】

【0051】
表3の実施例1〜7の結果からわかるように、グリコールエーテル系水溶性有機溶剤と水とを含む本発明の粘着ラベル剥離剤組成物を用いた場合、アクリル系粘着剤PW、アクリル系粘着剤PZ−2又はゴム系粘着剤PV−2のいずれの粘着剤に対しても剥離性が優れるうえに、低臭気であることがわかる。また、すすぎ時の水溶性にも優れているので、粘着ラベルを除去した後に水で洗浄する際、廃液による環境への負荷が少ないと言える。さらに、本発明の粘着ラベル剥離剤組成物は経時安定性がある。
また、消泡剤を含む実施例5及び7では、すすぎ時の泡立ちが少ないことがわかる。
これに対して、有機溶剤からなる比較例1の粘着ラベル剥離剤組成物では、臭いが強く、非水溶性である。また、グリコールエーテル系水溶性有機溶剤の含有量が20重量%未満である比較例2及び3の粘着ラベル剥離剤組成物では、剥離性が劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコールエーテル系水溶性有機溶剤を20重量%以上と、
水とを含有することを特徴とする粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項2】
前記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤は、下記一般式(I)及び(II)からなる群から選択された少なくとも一種である請求項1に記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
(I)R−O−(C2mO)−R
(式中、R及びRは炭素数1〜6のアルキル基、mは2又は3の整数、nは1〜3の整数を示す。)
(II)R−O−(C2pO)−H
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基、pは2〜3の整数、qは1〜3の整数を示す。)
【請求項3】
前記一般式(I)及び(II)で表されるR、R及びRの炭素数が4以下である請求項2に記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項4】
前記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤は、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及び、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項5】
さらに増粘剤を含む請求項1〜4のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項6】
さらにアルカリビルダーを含む請求項1〜5のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項7】
さらに界面活性剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項8】
さらに消泡剤を含む請求項1〜7のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項9】
前記グリコールエーテル系水溶性有機溶剤の濃度が30〜60重量%である請求項1〜8のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項10】
pHが5〜9である請求項1〜9のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項11】
pHが9〜14である請求項1〜9のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項12】
粘度が1〜10000mPa・sである請求項1〜11のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項13】
水溶性である請求項1〜12のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物。
【請求項14】
硬質材料の表面に貼り付けられた粘着ラベル上に請求項1〜13のいずれかに記載の粘着ラベル剥離剤組成物を滴下し、
1〜30分経過後に擦り落す、流水ですすぐ、又は、高圧の水や空気を吹き付けることによって粘着ラベルを剥離する、硬質材料の表面からの粘着ラベルの剥離方法。

【公開番号】特開2012−201748(P2012−201748A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66175(P2011−66175)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000190736)株式会社ニイタカ (33)
【Fターム(参考)】