説明

粘着ラベル発行装置、及びプリンタ

【課題】構成の簡素化、及び低コスト化を図った上で、長期に亘って粘着ラベルを剥離可能な所定の粘着力を維持できるとともに、粘着ラベルを安定して搬送・保持できる粘着ラベル発行装置、及びプリンタを提供する。
【解決手段】感熱紙の感熱発色面の裏側に粘着層が設けられた粘着ラベルLを、粘着層側から加熱して粘着ラベルLの粘着力を発現させる粘着力発現ユニット4と、粘着力発現ユニット4の用紙搬送方向下流側に配置され、粘着ラベルLを搬送する搬送ユニット5と、を有する粘着ラベル発行装置において、搬送ユニット5は、粘着ラベルLにおける少なくとも一部が剥離可能な所定の粘着力で粘着保持された状態で搬送される搬送ベルト54を備え、搬送ベルト54は、粘着ラベルLにおける粘着層側の全面が載置可能な大きさに形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベルを発行する粘着ラベル発行装置、及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品のPOSラベルや物流・搬送ラベル、医療用ラベル、バゲッジタグ、瓶・缶類の表示ラベル等に用いられる粘着ラベル用のラベル用紙として、ライナー(セパレータ)を使用しないライナーレスタイプのラベル用紙が知られている。このライナーレスタイプのラベル用紙として、一般的には、ラベル記録面の表面にシリコン樹脂等の離型剤を塗布し、ラベルをロール状に巻回した時にラベル記録面の裏面に設けられた粘着剤層とラベル記録面とが貼り付かない、いわゆるシリコントップ型のラベル用紙がある。しかし、近年では、感熱発色タイプの記録面を有するラベルの裏面に、加熱により粘着性を発現する熱活性粘着剤層が設けられたラベル用紙が知られるようになっている。この熱活性粘着剤からなる粘着層を有するラベル用紙は、記録面を熱で発色させることによりバーコードや文字等を印字し、また、熱活性粘着剤層を加熱することで粘着力を発現させるようにしたものである。
【0003】
また、上述した熱活性粘着剤層が設けられたラベル用紙に加えて、ラベル用紙の粘着層表面を被膜層で覆うことで、ライナーを省略した構成のラベル用紙が提案されている。このラベル用紙によれば、ラベル裏面の被膜層に熱を加えることで前記被膜層を除去して粘着層を露出させることができ、その結果、粘着力を発現させることができる。
【0004】
上述した熱活性粘着材層を形成したラベル用紙、あるいは、粘着層表面を被膜層で覆ったラベル用紙を用い、粘着ラベルを発行する粘着ラベル発行装置としては、印字後の粘着ラベルにおける粘着層を加熱して粘着ラベルの粘着力を発現させる粘着力発現ユニットと、粘着力が発現した粘着ラベルを用紙搬送方向下流側へ搬送する搬送ユニットと、を備えた構成が知られている。
【0005】
上述した搬送ユニットには、バキュームや静電気により粘着ラベルを感熱発色面側から吸着することで、粘着層に触れずに搬送する方式(吸着方式)がある。しかしながら、上述した吸着方式では、構成の複雑化や、装置の大型化、装置コストの増加に繋がるという問題があった。
そこで、例えば特許文献1には、粘着層側を支持しながら粘着ラベルを用紙方向下流側へ搬送する方式(接触方式)が開示されている。具体的に、特許文献1に示す搬送ユニットは、用紙搬送方向に沿って間隔を空けて配置された一対のローラと、ローラ間に掛け渡された複数のOリングと、ローラの上方に配置されて、自重で垂れ下がる粘着ラベルの後端を引っ掛ける引っ掛かり部と、を備えている。Oリングは、例えば、フッ素系樹脂等、粘着ラベルとくっ付き難い材料(非粘着性の材料)により構成され、ローラの幅方向に沿って間隔を空けて配列されている。これにより、粘着ラベルとの間の粘着力及び接触面積を低減させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−159742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上述した粘着ラベル発行装置の搬送ユニットでは、粘着力が発現された粘着ラベルを安定して搬送するとともに、搬送ユニットの用紙搬送方向下流側において粘着ラベルをユーザーが取り出すまで安定して保持しておく必要がある。
しかしながら、上述した特許文献1の構成では、粘着ラベルを安定して搬送・保持することができないという問題がある。具体的に、搬送時においては、粘着ラベルはOリングと接触しているだけで、Oリング間では浮いた状態で搬送されるため、粘着ラベルが剥がれやすいという問題がある。この場合には、粘着ラベルを安定して搬送できず、紙詰まり(紙ジャム)等の原因となる。また、保持時においては、搬送ユニットにより下流端まで搬送された粘着ラベルは、Oリングの一部と引っ掛かり部との2点で接触しているだけなので、ユーザーが取り出す前に粘着ラベルが落下する等の虞がある。
【0008】
また、接触方式の搬送ユニットでは、使用し続けると、Oリングやローラ表面の汚れ、Oリングの磨耗、粘着ラベルと引っ掛かり部との接触等により、Oリングの表面にカスが堆積して非粘着性が低下する(粘着力が増加する)という問題がある。これに対して特許文献1の構成では、Oリングの伸縮作用により剥がれ落ちるとされているが、未だ不十分であり、長期に亘って粘着力の増加を抑制することが難しいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたものであって、構成の簡素化、及び低コスト化を図った上で、長期に亘って粘着ラベルを剥離可能な所定の粘着力を維持できるとともに、粘着ラベルを安定して搬送・保持できる粘着ラベル発行装置、及びプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る粘着ラベル発行装置は、感熱紙の感熱発色面の裏側に粘着層が設けられた粘着ラベルを、前記粘着層側から加熱して前記粘着ラベルの粘着力を発現させる粘着力発現ユニットと、前記粘着力発現ユニットの用紙搬送方向下流側に配置され、前記粘着ラベルを搬送する搬送ユニットと、を有する粘着ラベル発行装置において、前記搬送ユニットは、前記粘着ラベルにおける少なくとも一部が剥離可能な所定の粘着力で粘着保持された状態で搬送される搬送体を備え、前記搬送体は、前記粘着ラベルにおける前記粘着層側の全面が載置可能な大きさに形成されていることを特徴としている。
【0011】
この構成によれば、粘着ラベルにおける少なくとも一部を剥離可能な所定の粘着力で搬送体に粘着保持させた上で、粘着ラベルの全面を搬送体に載置した状態で搬送することで、粘着ラベルを安定して搬送することができる。そのため、粘着ラベルが搬送中にずれたり、落下したりすることを抑制して、紙ジャム等の発生を抑制できる。さらに、粘着ラベルの取出位置において、粘着ラベルの落下等を防止して、ユーザーが剥離するまで粘着ラベルを安定して保持しておくことができる。
また、粘着ラベルを搬送体に積極的に貼り付けた状態で搬送するため、粘着ラベルと搬送体との磨耗や、粘着ラベルと周辺部材との接触等を抑制できる。そのため、搬送体の載置面にカスが堆積するのを抑制でき、粘着ラベルと搬送体との間の粘着力を、長期に亘って所望の範囲内に抑制できる。
また、上述した吸着方式等に比べて構成の簡素化、及び低コスト化を図ることもできる。
【0012】
また、前記搬送ユニットは、複数の搬送ローラを備え、前記搬送体は、前記搬送ローラに掛け渡された無端状の搬送ベルトであることを特徴としている。
この構成によれば、粘着ラベルを搬送する搬送体として、無端状の搬送ベルトを採用することで、搬送ベルトを走行させ続けるだけで、粘着ラベルを連続的に搬送することができる。これにより、更なる構成の簡素化、及び低コスト化を図ることができる。
【0013】
また、前記搬送ユニットは、前記搬送ベルトを間に挟んで前記搬送ローラの反対側において、外周面が前記搬送ベルトに接触した状態で配置された対向ローラを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、搬送ベルトの載置面に載置された粘着ラベルが搬送ローラと対向ローラとの間を通過する際に、粘着ラベルの感熱発色面側から搬送ベルトに向けて粘着ラベルを押圧することができる。これにより、粘着ラベルを搬送ベルト上に確実に貼り付けることができるため、粘着ラベルをより一層安定して搬送・保持できる。
【0014】
また、前記搬送体は、シリコンゴムまたはフッ素ゴムからなることを特徴としている。
この構成によれば、粘着ラベルとの間に、剥離可能な所定の粘着力を付与した状態で粘着ラベルを粘着保持できる。
【0015】
また、前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面が、シリコン樹脂コーティング剤、またはフッ素樹脂コーティング剤によりコーティングされていることを特徴としている。
この構成によれば、粘着ラベルとの間に、剥離可能な所定の粘着力を付与した状態で粘着ラベルを粘着保持できる。
【0016】
また、前記粘着力発現ユニットは、前記粘着性ラベルの幅方向に沿って多数の発熱素子が配列された粘着力発現用サーマルヘッドを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、粘着力発現用サーマルヘッドを取り付けるだけなので、更なる構成の簡素化を図ることができる。また、発熱素子の発熱領域を制御することで、粘着ラベルの粘着層側に部分的に粘着力を発現させる等(いわゆる部分活性)、粘着ラベルの加熱領域を自由に設定できるため、利便性の向上を図ることができる。
【0017】
また、前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面には、凹凸部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、搬送体の載置面を平坦面に形成する場合に比べて、搬送体と粘着ラベルとの接触面積を低減できるので、取出位置において粘着ラベルが剥離し易くなる。また、凹凸部の凹部部分を起点にして粘着ラベルが剥離し易くなる。
【0018】
また、前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面は、弱粘着領域と、前記弱粘着領域よりも粘着力が強い強粘着領域と、が用紙搬送方向に沿って交互に形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、弱粘着領域を起点にして粘着ラベルを剥離し易くすることができる。
【0019】
また、本発明に係るプリンタは、上記本発明の粘着ラベル発行装置と、前記粘着ラベル発行装置の用紙搬送方向上流側に設置され、前記粘着ラベルを前記感熱発色面側から加熱して前記感熱発色面に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明の粘着ラベル発行装置を備えているため、構成の簡素化、及び低コスト化を図った上で、粘着ラベルを安定して搬送・保持できるとともに、長期に亘って粘着力の増加を抑制でき、信頼性の高いサーマルプリンタを提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る粘着ラベル発行装置、及びプリンタによれば、構成の簡素化、及び低コスト化を図った上で、粘着ラベルLを安定して搬送・保持できるとともに、長期に亘って粘着力の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態を説明するためのサーマルプリンタの模式図である。
【図2】搬送ユニットの概略斜視図である。
【図3】第2実施形態を説明するためのサーマルプリンタの模式図である。
【図4】搬送ベルトの他の構成を示す概略斜視図である。
【図5】搬送ベルトの他の構成を示す概略斜視図である。
【図6】搬送ベルトの他の構成を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、本発明のラベル発行装置をサーマルプリンタに搭載した構成について説明する。
[第一実施形態]
[サーマルプリンタ]
図1は、第1実施形態におけるサーマルプリンタの模式図である。
図1に示すサーマルプリンタ1は、粘着ラベル用のロール紙Rを使用し、そのロール紙Rから繰り出された帯状のラベル用紙Sにバーコードや価格等の印刷を行うと共に、そのラベル用紙Sを所望の長さの粘着ラベルLにカットして発行するラベルプリンタである。
なお、上述したロール紙Rは、筒状の芯材Pの外周面に帯状のラベル用紙Sを巻き付けた構成からなり、図示しないロール収容部の内側に軸回転可能に収容保持されている。また、ラベル用紙Sは、熱を加えると変色する特殊な記録紙(感熱紙)の裏面(感熱発色面の反対側の面)に熱活性粘着剤からなる粘着層が設けられた構成からなる。
【0023】
サーマルプリンタ1は、図1に示すように、ロール紙Rから繰り出されたラベル用紙Sの感熱発色面側(図1における上側)から加熱して感熱発色面に印字を行う印字ユニット2と、ラベル用紙Sを通過させて所望の長さの粘着ラベルLにカットするカッターユニット3と、カッターユニット3でカットされた粘着ラベルLを粘着層側(感熱発色面の裏側、つまり図1における下側)から加熱して粘着ラベルLの粘着力を発現させる粘着力発現ユニット4と、粘着力が発現した粘着ラベルLを搬送する搬送ユニット5と、を備えている。なお、上述した各構成品のうち、粘着力発現ユニット4及び搬送ユニット5により、本実施形態における粘着ラベル発行装置を構成している。
【0024】
[印字ユニット]
印字ユニット2は、粘着ラベルLの厚さ方向(図1中上下方向)で対向配置されたプラテンローラ20、及び印字用サーマルヘッド21を備えるサーマルプリント機構であり、ロール紙Rを収容する図示しないロール収容部の用紙搬送方向の下流側に配設されている。印字用サーマルヘッド21は、ラベル用紙Sの幅方向(図1中奥行方向)に沿って多数の発熱素子が配列されたラインヘッドであり、図示しないコイルバネ等によってプラテンローラ20側に押圧されて、プラテンローラ20の外周面に対して圧接されている。プラテンローラ20の一端側には図示しない従動ギアが固定されている。この従動ギアは、図示しないモータ等の駆動源によって駆動する歯車伝達機構に噛合しており、駆動源の動力が歯車伝達機構、及び従動ギアを介してプラテンローラ20に伝達される。この印字ユニット2では、プラテンローラ20と印字用サーマルヘッド21との間にラベル用紙Sを挟持した状態で、駆動源を駆動させてプラテンローラ20を回転させることで、ラベル用紙Sをロール紙Rから繰り出させて搬送することが可能である。なお、ラベル用紙Sは、感熱発色面を印字用サーマルヘッド21側に向けてプラテンローラ20と印字用サーマルヘッド21との間に通紙される。
【0025】
[カッターユニット]
カッターユニット3は、固定刃30、及び可動刃31を有する切断機構であり、印字ユニット2の用紙搬送方向の下流側に配設されている。固定刃30はラベル用紙Sの粘着層側に配設され、可動刃31はラベル用紙Sの感熱発色面側に配設されている。但し、固定刃30をラベル用紙Sの感熱発色面側に配設し、可動刃31をラベル用紙Sの粘着層側に配設しても構わない。可動刃31は、固定刃30に対して接近離間可能にスライド自在とされており、固定刃30との間でラベル用紙Sを上下に挟みこみながら切断することが可能とされている。
【0026】
また、カッターユニット3の用紙搬送方向の下流側には、カッターユニット3を通過したラベル用紙S(カッターユニット3によってカットされた粘着ラベルL)を粘着力発現ユニット4(用紙搬送方向の下流)に向けて搬送する中間搬送部33が設けられている。中間搬送部33は、粘着ラベルLの厚さ方向で対向配置された駆動ローラ34及び従動ローラ35を備え、これら駆動ローラ34及び従動ローラ35の間にラベル用紙Sが通紙される。なお、これら駆動ローラ34及び従動ローラ35の外周面のうち、少なくとも粘着ラベルLに接触する部分の材質は、シリコンゴムまたはフッ素ゴム等のゴム系材料が適している。
【0027】
駆動ローラ34は、モータ等を駆動源として駆動するローラであり、駆動ローラ34の一端側には図示しない従動ギアが固定されている。この従動ギアは図示しないモータ等の駆動源によって駆動する歯車伝達機構に噛合しており、駆動源の動力が歯車伝達機構及び従動ギアを介して駆動ローラ34に伝達される。また、駆動ローラ34の径方向外側には、駆動ローラ34に対して平行する回転自在の従動ローラ35が配設されており、この従動ローラ35の外周面は、駆動ローラ34の外周面に対してゴム弾性または図示しない板バネ等によって圧接されている。これにより、上述した駆動源を駆動させて駆動ローラ34を回転させることで、駆動ローラ34の回転に従動して従動ローラ35が駆動ローラ34の回転方向と逆方向に回転する。このとき、駆動ローラ34と従動ローラ35との間にラベル用紙Sが通されると、回転する駆動ローラ34及び従動ローラ35によってラベル用紙Sが送り出されて搬送される。また、駆動ローラ34はラベル用紙Sの感熱発色面側に配設され、従動ローラ35はラベル用紙Sの粘着層側に配設されている。但し、駆動ローラ34をラベル用紙Sの粘着層側に配設し、従動ローラ35をラベル用紙Sの感熱発色面側に配設しても構わない。
【0028】
[粘着力発現ユニット]
粘着力発現ユニット4は、粘着ラベルLの厚さ方向で対向配置されたプラテンローラ40及び粘着力発現用サーマルヘッド41を備えた構成からなり、中間搬送部33の用紙搬送方向の下流側に配設されている。粘着力発現用サーマルヘッド41は、ラベル用紙Sの幅方向に沿って多数の発熱素子が配列されたラインヘッドであり、図示しないコイルバネ等によってプラテンローラ40側に押圧されて、プラテンローラ40の外周面に対して圧接されている。プラテンローラ40の一端側には図示しない従動ギアが固定されている。この従動ギアは、図示しないモータ等の駆動源によって駆動する歯車伝達機構に噛合しており、駆動源の動力が歯車伝達機構及び従動ギアを介してプラテンローラ40に伝達される。この粘着力発現ユニット4では、プラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間に粘着ラベルLを挟み込ませた状態で、上述した駆動源を駆動させてプラテンローラ40を回転させることで、粘着ラベルLを搬送することが可能である。なお、粘着力発現ユニット4は、上述した印字ユニット2とほぼ同様の構成であるが、プラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との位置が印字ユニット2に対して反対になっており、粘着ラベルLは、感熱発色面をプラテンローラ40側に向けてプラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間に通紙される。
【0029】
また、上述した粘着力発現ユニット4における用紙搬送方向の下流側には、粘着ラベルLの後端部が粘着力発現ユニット4を通過したことを検出する光学センサ42が設けられている。この光学センサ42としては、反射型又は透過型のセンサであり、プラテンローラ40における用紙搬送方向下流側の近傍に配設されている。なお、ラベル用紙Sの後端部が粘着力発現ユニット4を通過したことを検出する検出手段としては、光学センサ19を用いる手段以外であってもよく、例えば、マイクロスイッチを用いたり、ラベル用紙Sの紙送り量を計算したりすることで検出することが可能である。
【0030】
[搬送ユニット]
搬送ユニット5は、粘着力発現ユニット4を通過したラベル用紙S(粘着力発現ユニット4により粘着力が発現した粘着ラベルL)を取り出し可能な位置まで搬送するとともに、搬送した粘着ラベルLをユーザーが取り出すまで保持しておくためのものであり、用紙搬送方向に沿って配列された複数の搬送ローラ51〜53と、各搬送ローラ51〜53に掛け渡された無端状の搬送ベルト54と、粘着ラベルLの厚さ方向で搬送ベルト54に対向配置された複数の対向ローラ55,56と、を備えている。
【0031】
各搬送ローラ51〜53のうち、用紙搬送方向上流側に配置された第1搬送ローラ51は、搬送ベルト54を回転可能(走行)に支持する従動ローラである。
各搬送ローラ51〜53のうち、第1搬送ローラ51の用紙搬送方向下流側に配置された第2搬送ローラ52は、図示しないモータ等を駆動源として搬送ベルト54を走行させるための駆動ローラである。第2搬送ローラ52は、軸方向の一端側に固定された図示しない従動ギアが、上述した駆動源によって駆動する歯車伝達機構に噛合している。これにより、駆動源の動力が歯車伝達機構及び従動ギアを介して第2搬送ローラ52に伝達される。
【0032】
各搬送ローラ51〜53のうち、第2搬送ローラ52の用紙搬送方向下流側に配置された第3搬送ローラ53は、搬送ベルト54を走行可能に支持する従動ローラである。第3搬送ローラ53は、搬送ローラ51,52の回転中心と、対向ローラ55,56の回転中心とを結ぶ仮想直線、及び粘着ラベルLの幅方向に直交する装置長さ方向(前後方向)に対して下方に配置されている。
【0033】
搬送ベルト54は、その内周面が上述した第1〜第3搬送ローラ51〜53の外周面に接触することで、張力が付与された状態で走行可能に支持されている。そして、第2搬送ローラ52の回転により、搬送ベルト54が走行することで、搬送ベルト54の走行に従動して第1搬送ローラ51、及び第3搬送ローラ53が回転するようになっている。搬送ベルト54は、粘着ラベルLの粘着層側が外周面(載置面)に粘着保持(仮貼り)された状態で走行することで、用紙搬送方向下流側に向けて粘着ラベルLを搬送するように構成されている。
【0034】
ここで、搬送ベルト54は、第1搬送ローラ51、及び第2搬送ローラ52間に掛け渡されて上述した装置長さ方向に沿って走行する貼付領域A1と、第2搬送ローラ52、及び第3搬送ローラ53間に掛け渡された取出領域A2と、第3搬送ローラ53、及び第1搬送ローラ51間に掛け渡された循環領域A3と、に区分される。
【0035】
貼付領域A1では、搬送ベルト54を間に挟んで第1搬送ローラ51の反対側に第1対向ローラ55が配置され、第2搬送ローラ52の反対側に第2対向ローラ56が配置されている。各対向ローラ55,56は、外周面が搬送ベルト54の外周面に接触しており、搬送ベルト54の走行に従動して搬送ローラ51〜53と逆方向に回転する。貼付領域A1を搬送される粘着ラベルLは、対向ローラ55,56により感熱発色面側から搬送ベルト54に向けて押圧されることで、装置長さ方向に沿って搬送されながら、搬送ベルト54の外周面に貼り付けられるようになっている。すなわち、粘着ラベルLは、搬送ベルト54に粘着保持されて、各搬送ローラ51,52及び各対向ローラ55,56間を通過可能に構成されている。なお、本実施形態において、粘着ラベルLは粘着層が下方を向いた状態で、搬送ベルト54に貼り付けられる。
【0036】
取出領域A2は、貼付領域A1で貼り付けられた粘着ラベルLを剥離して取り出す領域であり、その走行方向が用紙搬送方向下流側に向かうに従い貼付領域A1の走行方向に対して下方に傾斜した状態で走行する。なお、本実施形態のサーマルプリンタ1は、上述したロール収容部、印字ユニット2、カッターユニット3、中間搬送部33、及び粘着力発現ユニット4がケーシング内に収容される一方、搬送ユニット5全体はケーシングの排出口から外部に向けて舌片状に露出している。これにより、搬送ベルト54の外周面に粘着保持された粘着ラベルLをユーザーが剥離して取出せるようになっている。但し、搬送ユニット5は、少なくとも取出領域A2が、排出口から外部に向けて露出していれば構わない。
【0037】
なお、本実施形態の搬送ベルト54は、外周面と粘着ラベルLとの間に、粘着ラベルLを剥離可能な所定の粘着力(0.01N/mm〜0.1N/mm、好ましくは0.02N/mm〜0.05N/mm程度)が付与されるような非粘着材料により構成されている。この場合、シリコンゴム、やシリコン樹脂、フッ素ゴム等を用いることで、搬送ベルト54自体を非粘着材料により構成することが可能である。但し、本実施形態では、搬送ベルト54における少なくとも外周面(粘着ラベルLの載置面)が、上述した剥離可能な粘着力を有していればよいので、ゴム材料や樹脂材料により構成された無端状のベルトの外周面に、シリコン離型剤や、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の非粘着材料をコーティングしても構わない。なお、搬送ベルト54自体を非粘着性材料で構成するか、搬送ベルト54の外周面を非粘着材料でコーティングするか、は粘着ラベルLの粘着層との相性で判断することが可能である。粘着ラベルLの粘着層が比較的強い粘着力を有する場合は、コーティングにより非粘着材料を形成する方が優れた離型性を得ることができる。
【0038】
図2は搬送ユニットの概略斜視図である。
ここで、図1,2に示すように、本実施形態の搬送ベルト54は、幅が粘着ラベルLの幅よりも大きく形成されるとともに、搬送ベルト54の長さ(周長)が粘着ラベルLの長さ(用紙搬送方向に沿う長さ)よりも長く形成されている。すなわち、搬送ベルト54の外形は、粘着ラベルLの外形よりも大きく形成されており、粘着ラベルLにおける全面が粘着保持されるようになっている。本実施形態においては、搬送ベルト54における取出領域A2の外形が粘着ラベルLの外形よりも大きく形成されており、粘着ラベルLにおける全面が粘着保持されている。
【0039】
なお、図1に示すように、上述した印字ユニット2のプラテンローラ20に固定された図示しない従動ギアと、中間搬送部33の駆動ローラ34に固定された図示しない従動ギアと、粘着力発現ユニット4のプラテンローラ40に固定された図示しない従動ギアと、搬送ユニット50の第2搬送ローラ52に固定された図示しない従動ギアとは、共通の歯車伝達機構にそれぞれ噛合している。そして、印字ユニット2のプラテンローラ20、中間搬送部33の駆動ローラ34、粘着力発現ユニット4のプラテンローラ40、搬送ユニット50の第2搬送ローラ52は共通するモータ等を駆動源として互いに同期して駆動する。
【0040】
ただし、上述した各ローラ20,34,40,52がそれぞれ別々の駆動源を有し、それぞれが単独で駆動する構成であってもよい。例えば、中間搬送部33の用紙搬送方向上流側に配置された図示しないセンサによってラベル用紙Sを検出したり、上述したプラテンローラ20によるラベル用紙Sの紙送り量を計算したりすることで、ラベル用紙Sの前端部が駆動ローラ34に到達する直前に駆動ローラ34を駆動させてもよい。また、同様に、粘着力発現ユニット4のプラテンローラ40の用紙搬送方向上流側に設置された図示しないセンサによって粘着ラベルLを検出したりすることで、粘着ラベルLの前端部がプラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間に到達する直前にプラテンローラ40を駆動させてもよい。
【0041】
[サーマルプリンタの作動方法]
次に、上述した構成からなるサーマルプリンタ1の動作について説明する。
まず、サーマルプリンタ1の作動準備を行う。具体的には、図示しないロール収容部の内側にロール紙Rをセットし、そのラベル用紙Sの端部を印字ユニット2のプラテンローラ20と印字用サーマルヘッド21との間に差し込む。なお、印字ユニット2の用紙搬送方向上流側に搬送ローラがある場合には、その搬送ローラにラベル用紙Sの端部を掛ける。
【0042】
次に、サーマルプリンタ1を図示しない外部入力装置に接続し、その外部入力装置からサーマルプリンタ1にラベル発行指令と共にラベル情報を出力する。このラベル情報としては、例えば粘着ラベルLの長さ(印字データ量で代用可)、印字データ、加熱粘着力発現領域等がある。サーマルプリンタ1では、ラベル発行指令及びラベル情報を受けると、図示しないモータ等の駆動源が駆動し、その駆動源の動力が図示しない歯車伝達機構及び従動ギアを介してプラテンローラ20に伝達されてプラテンローラ20が回転する。これにより、プラテンローラ20と印字用サーマルヘッド21との間に挟まれたラベル用紙Sがカッターユニット3側に送り出されて、ロール紙Rからラベル用紙Sを繰り出しながらラベル用紙Sが用紙搬送方向に沿って搬送される。このとき、印字用サーマルヘッド21が駆動してラベル情報に応じた印字動作を実施する。これにより、ラベル用紙Sがプラテンローラ20と印字用サーマルヘッド21との間を通過する際に、ラベル用紙Sの感熱発色面にバーコードや文字等が順次印刷される。
なお、サーマルプリンタ1自体が入力部を備える場合には、図示しない外部入力装置に接続する必要はなく、上述した入力部からのラベル発行指令及びラベル情報に基づいて印字ユニット2を動作させてもよい。
【0043】
印字ユニット2を通過したラベル用紙Sは、カッターユニット3の固定刃30と可動刃31との間を通過した後、中間搬送部33に到達する。このとき、中間搬送部33の駆動ローラ34が上述した印字ユニット2のプラテンローラ20の駆動に同期して駆動して駆動ローラ34及び従動ローラ35がそれぞれ回転する。その結果、ラベル用紙Sが駆動ローラ34と従動ローラ35との間を通紙して送り出される。
【0044】
そして、粘着ラベルLの後端部となるラベル用紙Sのカット位置が、カッターユニット3の刃先位置に移動するまで繰り出されると、ラベル用紙Sの搬送を一時的に停止してカッターユニット3で粘着ラベルLの後端部となる箇所をカットして所望の長さサイズの粘着ラベルLを形成する。具体的には、まず、ラベル用紙Sのカット位置が固定刃30の刃先の位置まで移動した時点で、図示しない駆動源を停止してラベル用紙Sの搬送を一時停止する。ラベル用紙Sのカット位置が固定刃30の刃先の位置まで移動したことを検出する手段としては、図示しない光学センサやマイクロスイッチによってカット位置(粘着ラベルLの後端部)を検出したり、或いはラベル情報によるラベル長さ寸法とラベル用紙Sの紙送り量の計算値とに基づいて検出したりする。
【0045】
続いて、可動刃31を固定刃30側に移動させることで、固定刃30と可動刃31とによってラベル用紙Sをカットする。これにより、ラベル用紙Sから所望長さの粘着ラベルLが切り離される。
その後、図示しない駆動源を再駆動し、中間搬送部33の駆動ローラ34を回転させて、粘着ラベルLを粘着力発現ユニット4側に向けて搬送する。
【0046】
中間搬送部33により送り出された粘着ラベルLは、粘着力発現ユニット4のプラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間に挿入される。そして、プラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間に挟まれた粘着ラベルLが、搬送ユニット5側に送り出される。このとき、粘着力発現用サーマルヘッド41によって粘着ラベルLの粘着面が加熱されて粘着ラベルLの粘着力が発現する。
【0047】
そして、図1,2に示すように、プラテンローラ40と粘着力発現用サーマルヘッド41との間から送り出された粘着ラベルLは、図示しない排出口から排出されて搬送ユニット5に到達する。このとき、搬送ユニット5の第2搬送ローラ52が上述した各ローラ20,34,40の駆動に同期して駆動することで、搬送ベルト54が走行するとともに、これに従動して第1,3搬送ローラ51,53及び対向ローラ55,56がそれぞれ回転する。
そして、搬送ユニット5に到達した粘着ラベルLは、第1搬送ローラ51と第1対向ローラ55との間に引き込まれ、搬送ベルト54上を搬送されていく。この際、搬送ベルト54の貼付領域A1において、粘着ラベルLは、粘着力が発現した粘着層側を搬送ベルト54に向けた状態で、対向ローラ55,56により感熱発色面側から搬送ベルト54に向けて押圧されながら、用紙搬送方向の下流側へ搬送されていく(図1中矢印C1)。これにより、粘着ラベルLは、用紙搬送方向の下流側へ搬送されながら、前端部側から後端部側へ順次搬送ベルト54に貼り付けられていく。この際、上述したように搬送ベルト54は、粘着ラベルLよりも幅が広く形成されているため、粘着ラベルLは、幅方向の全域に亘って搬送ベルト54の外周面に貼り付けられることになる。
【0048】
その後、搬送ベルト54と対向ローラ55,56の間を通紙する粘着ラベルLは、搬送ベルト54に貼り付けられながら貼付領域A1を通過して、取出領域A2に向けて搬送される(図1中矢印C2)。そして、粘着ラベルLの後端部が貼付領域A1を通過することで、粘着ラベルLの長さ方向の全域が搬送ベルト54の外周面に貼り付けられる。そのため、粘着ラベルLは、全面が搬送ベルト54に粘着保持された状態で、取出領域A2に搬送される。
【0049】
そして、粘着ラベルLの全面が取出領域A2に到達した時点(貼付領域A1を通過した時点)で第2搬送ローラ52の回転を停止して、搬送ベルト54を停止する。具体的には、光学センサ42によって粘着ラベルLの後端部が通過したことを検出し、この検出結果と、貼付領域A1における用紙搬送方向の長さと、に基づいて搬送ベルト54の停止タイミングを算出する。
【0050】
これにより、取出領域A2において、粘着ラベルLの全面が搬送ベルト54に貼り付けられた状態で粘着保持される。そして、ユーザーは、搬送ベルト54の取出領域A2に粘着保持された粘着ラベルLを剥離して取り出す。この際、粘着ラベルLと搬送ベルト54とは、上述したように剥離可能な粘着力で粘着保持されているので、ユーザーにより粘着ラベルLを簡単に剥離することができる。
【0051】
このように、本実施形態では、粘着力が発現した粘着ラベルLにおける全面を剥離可能な所定の粘着力で粘着保持する搬送ベルト54を備える構成とした。
この構成によれば、粘着ラベルLの全面を搬送ベルト54に粘着保持させた状態で搬送することで、粘着ラベルLを安定して搬送することができる。そのため、粘着ラベルLが搬送中に剥がれるこがなく、紙ジャム等の発生を抑制できる。さらに、取出領域A2において、粘着ラベルLの落下等を防止して、ユーザーが剥離するまで粘着ラベルLを安定して保持しておくことができる。
しかも、本実施形態では、貼付領域A1において、粘着ラベルLを搬送ベルト54に積極的に貼り付けるため、粘着ラベルLと搬送ベルト54との磨耗や、粘着ラベルLと周辺部材との接触等を抑制できる。そのため、搬送ベルト54の表面にカスが堆積するのを抑制でき、粘着ラベルLと搬送ベルト54との間の粘着力を、長期に亘って所望の範囲内に抑制できる。
また、上述した吸着方式等に比べて構成の簡素化、及び低コスト化を図ることもできる。
【0052】
また、本実施形態では、粘着ラベルLを搬送する搬送体として、無端状の搬送ベルト54を採用したため、搬送ベルト54を走行させ続けるだけで、粘着ラベルLを連続的に搬送することができる。これにより、更なる構成の簡素化、及び低コスト化を図ることができる。
さらに、本実施形態では、搬送ベルト54を間に挟んで搬送ローラ51,52の反対側に対向ローラ55,56を配置したため、粘着ラベルLの感熱発色面側から搬送ベルト54に向けて粘着ラベルLの粘着層を押圧することができる。これにより、粘着ラベルLを搬送ベルト54上に確実に貼り付けることができるため、粘着ラベルLをより一層安定して搬送・保持できる。
【0053】
また、粘着力発現ユニット4として、多数の発熱素子を有する粘着力発現用サーマルヘッド41を採用することで、更なる構成の簡素化、及び装置の小型化を図ることができる。
そして、本実施形態によれば、構成の簡素化、及び低コスト化を図った上で、粘着ラベルLを安定して搬送・保持できるとともに、長期に亘って粘着力の増加を抑制できるため、信頼性の高いサーマルプリンタ1を提供することができる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態におけるサーマルプリンタの模式図である。上述した実施形態では、本実施形態では粘着層側を上方に向けた状態でラベル用紙Sを搬送する点で、上述した第1実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態のサーマルプリンタ100は、ロール紙Rから繰り出されたラベル用紙Sを感熱発色面側(図3における下側)から加熱して感熱発色面に印字を行う印字ユニット2と、ラベル用紙Sを通過させて所望の長さの粘着ラベルLにカットするカッターユニット3と、カッターユニット3でカットされた粘着ラベルLを粘着層側(感熱発色面の裏側、つまり図3における上側)から加熱して粘着ラベルLの粘着力を発現させる粘着力発現ユニット4と、粘着力が発現した粘着ラベルLを搬送する搬送ユニット105と、を備えている。なお、本実施形態における印字ユニット2、及び粘着力発現ユニット4は、第1実施形態に対してプラテンローラ20,40、及びサーマルヘッド21,41の上下位置がそれぞれ逆転して配置されている。
【0055】
搬送ユニット105は、用紙搬送方向に沿って配列された複数の搬送ローラ151〜155と、各搬送ローラ151〜155に掛け渡された無端状の搬送ベルト156と、搬送ベルト156に対向配置された複数の対向ローラ157,158と、搬送ベルト156に張力を付与するテンションローラ159と、を備えている。
【0056】
各搬送ローラ151〜155のうち、第1,3〜5搬送ローラ151,153〜155は、外周面が搬送ベルト156の内周面に接触して、搬送ベルト156を走行可能に支持する従動ローラであり、第2搬送ローラ152は、図示しないモータ等を駆動源として搬送ベルト156を走行させるための駆動ローラである。
【0057】
搬送ベルト156は、上述した各搬送ローラ151〜155に掛け渡され、その外周面上に粘着ラベルLが粘着保持された後、走行方向が逆方向に折り返されている。具体的に、搬送ベルト156は、用紙搬送方向において、第1搬送ローラ151、及び第2搬送ローラ152間に掛け渡されて装置長さ方向(搬送ローラ151,152の回転中心と、対向ローラ157,158の回転中心とを結ぶ仮想直線、及び粘着ラベルLの幅方向に直交する方向)に沿って走行する貼付領域A11と、第2搬送ローラ152、及び第3搬送ローラ153間に掛け渡された折り返し領域A12と、第3搬送ローラ153から第5搬送ローラ155間に掛け渡された取出領域A13と、第5搬送ローラ155、及び第1搬送ローラ151間に掛け渡された循環領域A14と、に区分される。
【0058】
貼付領域A11では、搬送ベルト156を間に挟んで第1搬送ローラ151の反対側に第1対向ローラ157が配置され、第2搬送ローラ152の反対側に第2対向ローラ158が配置されている。各対向ローラ157,158は、外周面が搬送ベルト156の外周面に接触しており、搬送ベルト156の走行に従動して搬送ローラ151,152と逆方向に回転する。貼付領域A11を搬送される粘着ラベルLは、対向ローラ157,158により感熱発色面側から搬送ベルト156に向けて押圧されることで、装置長さ方向に沿って搬送されながら、搬送ベルト156の外周面に貼り付けられるようになっている。すなわち、粘着ラベルLは、搬送ベルト156に粘着保持されて、各搬送ローラ151,152及び各対向ローラ157,158間を通過可能に構成されている。なお、本実施形態では、粘着層が上方を向いた状態で、粘着ラベルLが搬送ベルト156に貼り付けられる。
【0059】
折り返し領域A12では、第2搬送ローラ152の上方に第3搬送ローラ153が配置されており、搬送ベルト156の走行方向が、貼付領域A11の走行方向(装置長さ方向)に対して垂直方向(上方)に変更されている。
【0060】
取出領域A13では、第3搬送ローラ153から第5搬送ローラ155が側方に並んで配置されており、搬送ベルト156の走行方向が、折り返し領域A12の走行方向に対してさらに垂直方向(水平)に変更されている。すなわち、取出領域A13における走行方向は、貼付領域A11の走行方向と、逆方向に設定されている。また、取出領域A13における搬送ベルト156の外形は、粘着ラベルLの外形よりも大きく形成されており、粘着ラベルLにおける全面が粘着保持されるようになっている。
【0061】
循環領域A14では、テンションローラ159が搬送ベルト156を外周面から内側に向けて押し付けている。テンションローラ159は搬送ベルト156を案内するガイドローラの機能を有しており、搬送ベルト156の走行に従動して回転するようになっている。
【0062】
この構成によれば、粘着力発現ユニット4において粘着力が発現され、搬送ユニット105に到達した粘着ラベルLは、第1搬送ローラ151と第1対向ローラ158との間に引き込まれ、搬送ベルト156上を搬送されていく。この際、貼付領域A11において、粘着ラベルLは、対向ローラ157,158により搬送ベルト156に押し付けられながら搬送されることで、搬送ベルト156に粘着保持される。
続いて、粘着ラベルLは、折り返し領域A12において、上方に向けて搬送された後(図2中矢印C11)、取出領域A13において、貼付領域A11とは反対側に向けて折り返すように搬送される(図2中矢印C12)。
【0063】
そして、粘着ラベルLの全面が取出領域A13に到達した時点(折り返し領域A12を通過した時点)で第2搬送ローラ152の回転を停止して、搬送ベルト156を停止する。これにより、取出領域A13において、粘着ラベルLの全面が搬送ベルト156に貼り付けられた状態で粘着保持される。そして、ユーザーは、搬送ベルト156の取出領域A13に粘着保持された粘着ラベルLを剥離して取り出す。
【0064】
このように、本実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の効果を奏するとともに、装置長さ方向に対して折り返すように搬送ベルト156を走行させることで、サーマルプリンタ1における装置長さ方向における長さを短縮できる。そのため、装置のコンパクト化を図ることができる。
【0065】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
また、上述した実施形態では、粘着力発現ユニット4における熱源として粘着力発現用サーマルヘッド41を用いる構成について説明したが、粘着力発現用サーマルヘッド41以外の熱源を用いることも可能である。例えば熱ローラを用いて粘着ラベルLの粘着面を加熱することも可能である。但し、本実施形態のように粘着力発現用サーマルヘッド41を用いて発熱素子の発熱を制御することで、粘着ラベルLの粘着層側に部分的に粘着力を発現させる等(いわゆる部分活性)、粘着ラベルLの加熱領域を自由に設定できるため、利便性の向上を図ることができる。
【0066】
また、上述した実施形態では、熱活性粘着剤からなる粘着層を有するラベル用紙Sを使用し、粘着力発現ユニット4によって粘着層を熱活性化させることで粘着ラベルLの粘着力を発現させる構成について説明しているが、本発明は、他の構成のラベル用紙を使用することも可能である。例えば、被膜層で粘着層が被覆された構成のラベル用紙を使用することも可能である。この場合、粘着力発現ユニットによって被膜層を除去して粘着層を露出させることで粘着ラベルの粘着力を発現させることができる。
さらに、上述した実施形態では、本発明の粘着ラベル発行装置(粘着力発現ユニット4、及び搬送ユニット5,105)をサーマルプリンタ1,100に搭載した場合について説明したが、これに限らず、予めラベル用紙Sの感熱発色面に印字が施されているロール紙Rを使用する場合等、印字ユニットを省略することも可能である。
【0067】
また、上述した実施形態では、搬送ベルト54,156の外周面を平坦面に形成し、粘着ラベルLの全面が搬送ベルト54,156に粘着保持されている場合について説明したが、粘着ラベルLの全面が搬送ベルトに載置されていれば、粘着ラベルLの少なくとも一部が搬送ベルトに粘着保持されていれば構わない。
【0068】
さらに、図4に示すように、搬送ベルト256の外周面全域に亘ってシボ状の微小な凹凸部257を形成し、凹凸部257上で粘着ラベルLを粘着保持する構成でも構わない。これにより、搬送ベルト256を平坦面に形成する場合に比べて、搬送ベルト256と粘着ラベルLとの接触面積を低減できるので、取出領域において粘着ラベルLが剥離し易くなる。また、凹凸部257の凹部部分を起点にして粘着ラベルLが剥離し易くなる。
また、図5に示すように、搬送ベルト356の走行方向に沿って間隔を空けて凹部357、及び凸部358を形成しても構わない。これにより、上述した図4に示す構成と同様に、搬送ベルト356と粘着ラベルLとの接触面積を低減できるので、取出領域において粘着ラベルLを剥離し易くなる。また、凹部357を起点にして粘着ラベルLが剥離し易くなる。
さらに、図6に示すように、搬送ベルト456の走行方向に沿って、弱粘着領域457と、弱粘着領域457よりも粘着力が強い強粘着領域458と、を交互に形成しても構わない。これにより、弱粘着領域457を起点にして粘着ラベルLを剥離し易くすることができる。
【0069】
さらに、上述した実施形態では、無端状の搬送ベルトを搬送体として採用したが、これに限らず、粘着ラベルLよりも外形が大きいプレート状の搬送体を用いて粘着ラベルLを一枚ずつ搬送する構成にしても構わない。
【符号の説明】
【0070】
1…サーマルプリンタ(プリンタ) 2…印字ユニット 4…粘着力発現ユニット 41…粘着力発現用サーマルヘッド 5…搬送ユニット 51〜53,151〜155…搬送ローラ 54,156,256,356,456…搬送ベルト(搬送体) 257…凹凸部 357…凹部(凹凸部) 358…凸部(凹凸部) 457…弱粘着領域 468…協粘着領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感熱紙の感熱発色面の裏側に粘着層が設けられた粘着ラベルを、前記粘着層側から加熱して前記粘着ラベルの粘着力を発現させる粘着力発現ユニットと、
前記粘着力発現ユニットの用紙搬送方向下流側に配置され、前記粘着ラベルを搬送する搬送ユニットと、を有する粘着ラベル発行装置において、
前記搬送ユニットは、前記粘着ラベルにおける少なくとも一部が剥離可能な所定の粘着力で粘着保持された状態で搬送される搬送体を備え、
前記搬送体は、前記粘着ラベルにおける前記粘着層側の全面が載置可能な大きさに形成されていることを特徴とする粘着ラベル発行装置。
【請求項2】
前記搬送ユニットは、複数の搬送ローラを備え、
前記搬送体は、前記搬送ローラに掛け渡された無端状の搬送ベルトであることを特徴とする請求項1記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項3】
前記搬送ユニットは、前記搬送ベルトを間に挟んで前記搬送ローラの反対側において、外周面が前記搬送ベルトに接触した状態で配置された対向ローラを備えていることを特徴とする請求項2記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項4】
前記搬送体は、シリコンゴムまたはフッ素ゴムからなることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項5】
前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面が、シリコン樹脂コーティング剤、またはフッ素樹脂コーティング剤によりコーティングされていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項6】
前記粘着力発現ユニットは、前記粘着性ラベルの幅方向に沿って多数の発熱素子が配列された粘着力発現用サーマルヘッドを備えていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項7】
前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面には、凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項8】
前記搬送体における前記粘着性ラベルの載置面は、弱粘着領域と、前記弱粘着領域よりも粘着力が強い強粘着領域と、が用紙搬送方向に沿って交互に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8の何れか1項に記載の粘着ラベル発行装置と、
前記粘着ラベル発行装置の用紙搬送方向上流側に設置され、前記粘着ラベルを前記感熱発色面側から加熱して前記感熱発色面に印字を行う印字ユニットと、を備えていることを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−201368(P2012−201368A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64286(P2011−64286)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】