説明

粘着付与剤として使用するための変性ノボラック樹脂

【課題】向上した粘着性を有する、より良好な粘着付与剤を提供する。
【解決手段】ビニルモノマーで変性されたヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂であり、この樹脂は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂とビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される。また、ゴムまたはゴム混合物と、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を含んでなる改善された粘着性を有するゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂に関する。より詳細には、本発明は、ゴム組成物において使用するためのビニルモノマーで変性したこのような樹脂およびその改善された粘着性に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ゴム組成物は、天然ゴムおよび合成ゴムまたはそれらのブレンドから作られている。天然ゴム(NR)は、合成ゴム(SR)とは異なる。天然ゴムは、ゴムノキの樹液から作られている。このゴム樹液(いわゆるラテックス)は、水性媒体中のコロイド状分散体である。ほんの少しの比率のラテックスのみが直接使用され、および大部分が硬質ゴムに加工される。多くの異なるタイプの合成ゴムのなかでも、最も一般的な合成ゴムは、SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、BR(ブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、IR(イソプレンゴム)、IIR(イソプレンイソブチレンゴム)、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)、SIS(スチレンイソプレンスチレン)、SBS(スチレンブタジエンスチレン)およびCR(ポリ−2−クロロブタジエン)である。製造手順に応じて、重合体、重縮合物および重付加合成ゴムの間で区別がなされている。
【0003】
ゴム(生ゴム)は、非架橋であるが、室温でゴム弾性特性を有する架橋性(硬化性、加硫性)ポリマーである。エラストマーは、架橋された(加硫された)ポリマー材料である。それらは、低温で硬くおよびガラス状であり、および高温でさえも粘性流を示さない。加硫は、ゴムを、その化学構造の変化を通じて、より大きい温度範囲にわたって弾性特性が与えられ、確立され、または改善される状態に変換する工程である。ゴム組成物の例は、ラテックス混合物を含浸させた複合布からの不織布であり、ゴム−金属−複合物、例えば衝撃吸収材、エラストマースプリング、接続部品、ハンガー、接着剤、補修材、発泡体、マイクロセルラーおよびセルラーゴム組成物、コンベヤーベルト、フラットおよびビーベルト、タイヤ、ソール材料、シート材料、およびパンチング製品を含む製品を形成する。
【0004】
ゴム組成物は、しばしば、各々同一または異なる化学組成を有する幾つかのゴム層から構成される。製品の製造の間、これらの層は、加硫前形態で互いに適当に接着されなければならない。例えば、組立タイヤブランクは、加硫前に、かなり長期間一緒に保持されることを必要とする。したがって、使用されるゴム混合物は、適切な「粘着性」を有することが重要である。用語「粘着性」で示される特性は、特定の条件下、押し付けられて一緒になった2つの加硫前ゴム混合物を引き離すのに必要とされる力として定義される。天然ゴム混合物は、通常、良好な粘着性を有するが、合成ゴム混合物は、ずっと小さい粘着性であり、極端な場合、全く粘着性を持たない。したがって、粘着付与剤を小さい粘着性のゴムまたはゴム混合物に添加して、それらの粘着性を高めることは、一般的な方法である。合成ゴム製品において、合成ゴム接着剤組成物は、粘着性を高めるために用いられ、および良好な硬化接着を与える。種々の組成物が提案されている。
【0005】
粘着付与剤を含有するゴム組成物は、通常、天然または合成ゴム(例えばスチレン−ブタジエン共重合体、ポリブタジエン)またはそれらの混合物、充填剤、加工剤および加硫剤から、内部混合機中で、またはローラーセット上で処方される。処方後、ゴム組成物を製造に使用して、所望のゴム製品を製造する。これらとしては、例えばゴムおよびエラストマー強化用樹脂、ゴム用粘着付与剤、フリクションライニング用結合剤、硬化性成形品組成物、含浸剤、被覆剤、塗料、および微粒子無機基材用結合剤などの添加剤が挙げられる。ゴム組成物は、工程がかなり長期間中断される場合(特に製造が完成前の製品の保存および輸送を必要とする異なる場所での工程を含む場合、これは珍しいことではない)でさえも、製造工程の間に十分に粘着性のままでなければならない。
【0006】
既知の粘着付与剤としては、例えばコロフォニー、水素化および二量体化コロフォニー、テルペン樹脂および変性テルペン樹脂、不飽和Cヒドロカルビル、不飽和Cヒドロカルビル、ジシクロペンタジエンまたはクマロンに基づくヒドロカルビル樹脂、ノボラックタイプのフェノール樹脂(例えばヒドロカルビル基中に4〜15個の炭素原子を有するヒドロカルビルフェノールから、酸媒体中でホルムアルデヒドと反応させることにより得られるもの)、および、ヒドロカルビルフェノールを、アルキン(特にアセチレン)と反応させることにより製造されるヒドロカルビルフェノール樹脂が挙げられる。
【0007】
ノボラック樹脂は、多種多様のゴム組成物において使用される、良く知られた粘着付与剤である。ノボラック樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドを、酸触媒の存在下、反応させることにより得られるフェノール単位の繰り返し構造を有する。化学構造が異なる種々のフェノールノボラック樹脂は、粘着付与剤樹脂としてゴム処方物と組み合わされる。粘着付与剤として使用される種々のノボラック樹脂の例としては、フェノール−クロトンアルデヒドノボラック(そのフェノール成分は、例えばアルキルフェノールおよび/またはジフェノール、例えばレゾルシノールまたはハイドロキノンであり得る)(米国特許4,167,540);テルペンおよび不飽和カルボン酸を含んでなる変性ノボラック樹脂および/またはこれらの化合物の誘導体(欧州特許出願公開第0362727号);フェノール化合物およびアラルキルを含んでなるザイロック樹脂と呼ばれるフェノール樹脂、例えばp−キシリレングリコールジメチルエーテル(特開昭52−14280号公報);または酸触媒の存在下、フェノール、アラルキル化合物およびホルムアルデヒドを反応させることにより得られる変性フェノール−アラルキル樹脂(米国特許6,642,345)が挙げられる。
【0008】
種々のノボラック樹脂のさらなる例として、米国特許4,889,891は、アルキル置換高分枝状レゾルシノールホルムアルデヒドノボラックを開示する。米国特許4,605,696は、レゾルシノールモノエステル、特にレゾルシノールモノベンゾエートから構成された同様の高分枝状ノボラック樹脂を開示する。米国特許4,892,908には、レゾルシノールのケト誘導体、例えばベンゾイルレゾルシノールの使用が開示されている。米国特許5,021,522は、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼンおよびビニルナフタレンからなる群から選択される一以上の化合物でアラルキル置換されたフェノール樹脂、特にアラルキル置換されたレゾルシノールノボラック樹脂を開示する。
【0009】
向上した粘着性を有する、より良好な粘着付与剤に対する必要性が引き続き存在することが、ゴム産業において長い間認識されていた。特にかなり長期間の経年劣化後の合成ゴム組成物(例えば市販のSBR系タイヤ組成物)による乏しい粘着性のため、特にタイヤ産業において必要性が存在する。粘着付与剤の粘着性および製造方法を改善する試みは、かなり長期間なされている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,167,540号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0362727号明細書
【特許文献3】特開昭52−14280号公報
【特許文献4】米国特許第6,642,345号明細書
【特許文献5】米国特許第4,889,891号明細書
【特許文献6】米国特許第4,605,696号明細書
【特許文献7】米国特許第4,892,908号明細書
【特許文献8】米国特許第5,021,522号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記必要性に答えるものである。本発明は、向上した粘着性を有する変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂に関する。また、本発明は、変性樹脂の製造方法、および該変性樹脂を含有する改善されたゴム組成物も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂と、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂に関する。
【0013】
また、本発明は、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂の製造方法を提供する。該方法において、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーと、酸触媒の存在下、反応させる。また、該方法は、反応の完了後、酸触媒を塩基で中和する工程をさらに含み得る。
【0014】
別の局面において、本発明は、ゴムまたはゴム混合物と、0.5〜7phrの本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を含んでなる改善された粘着性を有するゴム組成物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ビニルモノマーで変性されたヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂に関する。本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂とビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される。
【0016】
フェノールのフェニル環は、ヒドロキシル基に対してオルト位およびパラ位での反応によってのみ、アルデヒドおよびケトンにより誘導体化され得ることは当該分野で既知である。フェニル環のメタ位は反応性ではない。ノボラック樹脂の製造において、重合は、3つのオルト位およびパラ位で生じる。本発明で使用されるヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、ヒドロキシル基に対して1つのオルト位またはパラ位にヒドロカルビル置換基を有するフェノールから製造される。これによって、2つの環位置、2つのオルト位(パラ−ヒドロカルビル置換)か、または1つのオルト位および1つのパラ位(オルト−ヒドロカルビル置換)のいずれかが重合に利用可能なように残される。その結果、得られたノボラック樹脂は「直鎖状」ポリマーである。本発明で使用される直鎖状ノボラックポリマーは、オルト−ヒドロカルビルフェノール、パラ−ヒドロカルビルフェノール、またはオルト−ヒドロカルビルフェノールとパラ−ヒドロカルビルフェノールの混合物から製造され得る。本発明による直鎖状ノボラック樹脂のビニル変性は、該樹脂の粘着性を改善する。
【0017】
任意のヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状樹脂を、本発明の変性樹脂を形成するために使用することができる。ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状樹脂を製造するためのヒドロカルビルフェノールとホルムアルデヒドの重合は、当該分野でよく知られている。高発熱縮合反応、いわゆる「ノボラック縮合」は、ヒドロカルビルフェノールとアルデヒドまたはケトン(特にホルムアルデヒド)を、触媒の存在下(一般に酸の存在下)、反応させて、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を形成する方法によって行われる(米国特許4,167,540;米国特許6,642,345)。好ましくは、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、Schenectady International Inc.製の一連のノボラック樹脂、例えばSP−1068、HRJ−2765、HRJ−4047、HRJ−10420、CR−418、HRJ−2355、SMD 31144、およびHRJ−11937である。
【0018】
用語「ヒドロカルビル」は、脂肪族(直鎖および分枝鎖)および環式(例えば脂環族、芳香族、および環式テルペン)を含む、炭化水素置換基を意味する。好ましくは、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂のヒドロカルビル基は、C〜C60ヒドロカルビル基である。最も好ましくは、ヒドロカルビル基は、t−ブチル基またはt−オクチル基である。ヒドロカルビル基は、一般的な官能基、例えばヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、ハロゲン、チオール基、ジスルフィド基などによって置換されていてもよい。官能基は、本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂または該樹脂が添加されたゴム組成物の粘着特性を害するべきではない。好ましくは、任意の官能基が、製造目的のために、粘着性を高めるために、または該樹脂が添加されるゴム組成物の特性を改善するために、樹脂に有利な特性を与えるために選択される。
【0019】
本発明によれば、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを用いて、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される。変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、好ましくは90℃と150℃の間、およびより好ましくは105℃と135℃の間の軟化点を有する。ガラス転移温度は、典型的に70℃付近であり、および残留モノマーは通常1%未満である。以下の図式は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂およびスチレン誘導体による変性反応を示す。
【0020】
【化1】

R=t−ブチル、またはt−オクチル;
=H、CH
X=繰り返し単位数;
Y=スチレン誘導体による変性数。
【0021】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状樹脂の変性に適当な触媒の例は、フリーデル・クラフツ触媒または酸触媒である。酸触媒としては、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸および亜リン酸が挙げられる。また、酸触媒として、アルキルおよびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、およびメタンスルホン酸も挙げられる。好ましい触媒は、アリールスルホン酸触媒である。最も好ましくは、酸触媒は、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、またはドデシルベンゼンスルホン酸である。触媒量は、好ましくはフェノール化合物100部当たり触媒0.01〜10部の範囲である。
【0022】
任意のビニルモノマーを、本発明のヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を変性するのに使用することができる。用語「ビニルモノマー」は、ビニル基(CH=CR−)を有する化合物を意味する。有用なビニルモノマーの例としては、限定されないが、環含有不飽和モノマー、例えばスチレンおよびそのo−、m−、p−置換生成物、例えばN,N−ジメチルアミノスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、カルボキシスチレンなど、α−メチルスチレン、フェニル(メタ)アクリレート、ニトロ含有ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、例えばN,N−ジメチル−アミノエチルメタクリレート、N−t−ブチルアミノエチルメタクリレート;2−(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、メチルクロリド四級塩など;オレフィンまたはジエン化合物、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン、イソブテン、イソプレン、クロロプロペン、フッ素含有オレフィン、塩化ビニルなど;カルボキシル基含有不飽和モノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸など(好ましくはメタクリル酸)、(メタ)アクリル酸(好ましくはメタクリル酸)のC〜Cヒドロキシルヒドロカルビルエステル、例えば2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなど、ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコール)と不飽和カルボン酸(好ましくはメタクリル酸)との間のモノエステル;ポリエーテルポリオール(例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールまたはポリブチレングリコール)とヒドロキシル基含有不飽和モノマー(例えば2−ヒドロキシルメタクリレート)との間のモノエーテル;不飽和カルボン酸とモノエポキシ化合物との間の付加生成物;グリシジル(メタ)アクリレート(好ましくはメタクリレート)と単塩基酸(例えば酢酸、プロピオン酸、p−t−ブチル安息香酸または脂肪酸)との間の付加生成物;酸無水物基含有不飽和化合物(例えば無水マレイン酸またはイラコン(iraconic)酸無水物)とグリコール(例えばエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオールまたはネオペンチルグリコール)との間のモノエステルまたはジエステル;塩素−、臭素−、フッ素−、およびヒドロキシル基含有モノマー、例えば3−クロロ−2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート(好ましくはメタクリレート)など;(メタ)アクリル酸(好ましくはメタクリル酸)のC〜C24ヒドロカルビルエステルまたはシクロヒドロカルビルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−、sec−、またはt−ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなど、(メタ)アクリル酸(好ましくはメタクリル酸)のC〜C18アルコキシヒドロカルビルエステル、例えばメトキシブチルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、エトキシエチルメタクリレート、エトキシブチルメタクリレートなど;重合性アミド、例えば(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸など;窒素含有モノマー、例えば2−、4−ビニルピリジン、1−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロニトリルなど;グリシジル基含有ビニルモノマー、例えばグリシジル(メタ)アクリレートなど、ビニルエーテル、酢酸ビニル、および環式モノマー、例えばメチル1,1−ビシクロブタンカルボキシレートが挙げられる。これらのモノマーは、単独で、または二以上の混合物として使用することができる。好ましくは、ビニルモノマーは、スチレン系モノマー、オレフィン、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルピリジン、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブチルスチレン、カルボキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、およびそれらの混合物からなる群から選択されるスチレン系モノマーである。
【0023】
また、本発明は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂と、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させる工程を含む、改善された粘着性を有する変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂の製造方法を提供する。該方法は、好ましくは、反応の完了後、酸触媒を塩基で中和する工程を含み得る。苛性NaOHからアミンまでの任意の塩基を使用することができるが、好ましくは、塩基は、TEA(トリエチルアミン)またはTEAOH(トリエタノールアミン)である。既存のノボラック樹脂を変性するため、本発明による変性反応は、樹脂の溶融物の状態で、または適当な溶媒中に樹脂を溶解させることにより溶媒中で行うことができる。当該分野で既知のように、適当な溶媒としては、限定されないが、芳香族溶媒、例えばトルエンまたはキシレンが挙げられる。
【0024】
上記のように、任意のヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状樹脂を使用して本発明の変性樹脂を形成することができる。変性反応は、ノボラック樹脂を形成するためのフェノール−ホルムアルデヒド重合の直後の工程として行うことができ、または最初の製造後のノボラック樹脂を変性するために使用することができる。該工程は、攪拌機、ヒーター、サーモスタット、供給装置、還流冷却器および水分離器を備えた反応器(例えば通例の容器またはガラスフラスコ)中で行われる。最初に、ヒドロカルビルフェノールを触媒と共に導入し、所望の反応温度または蒸留温度に導くことができ、次いで、アルデヒドまたはケトン、好ましくは、例えばホルムアルデヒド水溶液を2〜3時間にわたって添加する。最初にヒドロカルビルフェノールの一部のみを導入し、そして残りをホルムアルデヒドと共に90〜150℃にて添加することもできる。縮合が完了した後、ビニルモノマーを反応器に添加し、そして、さらなる時間の間、反応温度(150℃付近)に保持する。該反応物は、塩基によって中和することができ、および水は留去する。
【0025】
本発明にしたがって製造される変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、多種多様な用途に有用である。変性樹脂は、例えば接着剤、分散剤、界面活性剤、乳化剤、エラストマー、被覆剤、塗料、熱可塑性プラスチックエラストマー、エンジニアリング樹脂、インク成分、滑剤、ポリマー・ブレンド成分、紙添加剤、生体材料、水処理添加剤、化粧品成分、帯電防止剤、食品および飲料包装材料、医薬用途におけるレリース配合剤(release compounding agent)としての用途が見出されている。
【0026】
本発明の変性樹脂の好ましい使用は、ゴム組成物用粘着付与剤としての使用である。本発明のこの実施態様において、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、ゴムの粘着性を改善するために添加される。ゴム組成物は、任意の天然ゴム、合成ゴムまたはそれらの組合せであり得る。合成ゴムの例としては、限定されないが、スチレンブタジエン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリルブタジエンスチレン、EPDM、ポリクロロプレン、イソブチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンおよびエチレンプロピレンが挙げられる。ゴム組成物自身は、単独のゴムまたはゴム混合物であり得る。
【0027】
本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、他の既知の粘着付与剤またはノボラック樹脂と同様の量で、同様の方法で、および同様の用途のために、ゴム組成物に添加することができる。好ましくは、変性樹脂は、0.5〜7phr、より好ましくは1〜4phrの範囲の量で使用される。単独の本発明の変性樹脂または該樹脂の混合物を、ゴム組成物中に組み込むことができる。
【0028】
また、本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、ゴムおよびエラストマー強化用樹脂として使用することができる。この目的のために、それらを、架橋剤と共に、または架橋剤とは別に、未加硫ゴムまたはエラストマー混合物中に組み込むことができる。ゴムは、任意の所望の供給形態で、例えばベールまたは粉末として、ならびに、例えばカーボンブラックと共に、使用することができる。さらに、例えばニトリルゴム(アクリロニトリルとブタジエンまたはイソプレンの共重合体)またはポリウレタンゴムなどの極性ゴムも適当である。他の通例の添加剤も本発明のゴム組成物に使用できる。これらの添加剤としては、限定されないが、充填剤、加硫剤、促進剤、活性剤および加工助剤が挙げられる。本発明にしたがって製造される変性ノボラック樹脂を使用する場合に得られる加硫物は、例えば産業ゴム製品、例えばダンピングエレメント、ゴムスリーブ、ベローズ、コンベヤーベルト、ならびに車両用タイヤとしても使用することができる。
【0029】
また、変性ノボラック樹脂は、ゴム(特に合成ゴム)用粘着付与剤としても使用することができる。特に自動車のタイヤの製造に必要であるような、幾つかの層から構成されるゴム製品を製造する場合、通例の未加硫成分は、しばしば組立に必要な粘着性を有しないか、または維持できない。これは、ゴム組成物が、部分的に、主に、または専ら、合成ゴムから構成される場合に特にそうである。変性ノボラック樹脂の添加は、粘着性の適切な増大をもたらし得る。
【0030】
さらに、本発明にしたがって得られる変性ノボラック樹脂は、フリクションライニング分野、有機および/または無機繊維用含浸剤分野、有機および/または無機繊維用結合剤分野、被覆剤、仕上剤および塗料分野、ならびに粉砕(好ましくは無機)材料用結合剤分野にも使用することができる。これらの用途において、該変性ノボラック樹脂を、架橋剤を用いるか、または用いずに、ならびに充填剤、添加剤、顔料および他の添加剤を用いて、加工することができ、次いで、必要に応じて成形を伴う、一以上の熱後処理工程(ノボラックの分解温度超える温度にすることもできる)に、必要に応じて付すことができる。
【実施例】
【0031】
本発明の方法を以下の実施例を参照してさらに説明する。
(実施例1)
ビニルモノマーを用いるヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂の製造
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を、100ポンドのt−オクチルフェノールとホルムアルデヒドを用いて製造した。ノボラック縮合が反応器中で完了した後、10ポンドのα−メチルスチレンを反応器に添加し、そして混合物を150℃に加熱した。この温度に到達した時点で、該反応温度を少なくとも3時間保持した。反応完了後、トリエタノールアミンを混合物に添加した。溶媒を、最初に大気圧にて、170℃の底部温度に到達するまで、下方傾斜凝縮器を用いる蒸留によって除去した。この手順の間、反応器を不活性ガスとして窒素を用いてフラッシュした。170℃に到達したとき、水蒸気蒸留を減圧下で30分間行い、未反応モノマーまたは溶媒を除去した。次いで、蒸留を、減圧下(27hPa=27mbar)、170℃にてさらに30分間続けた。該樹脂中の遊離ヒドロカルビルフェノール含量は1%未満であった。
【0032】
(実施例2)
変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂粘着付与剤を含有するゴム処方物
〔ゴム組成物の製造〕
最初に、ゴムまたは対応する量のカーボンブラック−ゴム混合物を、一組のローラーに付与する。密閉シートが形成されたときに、ステアリン酸、酸化亜鉛、加工助剤、酸化防止剤、加硫剤(例えばフェノール樹脂または硫黄)、充填剤およびプロセス油から選択されるさらなる成分、および粘着性を改善する変性ヒドロカルビルフェノールノボラック樹脂を次々に混合する。次いで、混合物を、100℃〜120℃の温度(ローラー上を動く混合物表面で測定)にて5分間ロールで延ばす。温度は、使用される樹脂の融点よりもかなり高くなければならず、したがって、120℃を超える温度にさえも高められ得る。次いで、従来の混合温度(すなわち、促進剤が反応しない温後、例えば120℃までの温度)にて促進剤を添加することによって混合を完了する。
【0033】
変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂粘着付与剤を使用するゴム組成物を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
本発明の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を含有するゴム組成物は、以下の試験にしたがって評価される:
混合(バンベリー混合):ASTM D3182−89(2001)
スコーチ(ムーニースコーチ):ASTM D1646−03
振動円板レオメーター:ASTM D2084−01
反発弾性:DIN 53512
【0036】
変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を含有するゴム組成物についての試験結果を表2に示す。樹脂非含有組成物(ブランク)についての対応する値およびビニル変性剤としてα−メチルスチレン(AMS)またはビニルピリジンを有するt−オクチルフェノール(PTOP)ノボラック樹脂およびt−ブチルフェノール(PTBP)ノボラック樹脂を含有する組成物についての対応する値を、粘着性、ムーニースコーチおよびODRについて比較する。如何なる粘着付与剤も有しない比較目的のためのコントロール組成物(ブランク)は、非常に低い粘着性(0.2)を有した。ブランクと比べて、変性樹脂を有するゴム混合物は、かなりの粘着性の増加を示す。
【0037】
ムーニースコーチ値を、ムーニー粘度計によって121℃にて決定した。これは早期加硫に対する化合物の耐性を示す。報告した値は、試験温度での最小ムーニー粘度から5ポイント上昇するのに必要な時間である。より大きな値は、早期加硫に対する耐性を示し、より短い時間は、「スコーチ」傾向を示す。
【0038】
加硫特性を振動円板レオメーター(「ODR」)で決定した。試験は153℃で行った。パラメーターRminおよびRmaxは、それぞれ最小レオメータートルク(加硫開始前)および最大レオメータートルク(加硫による)である。パラメーターt90は、加硫によるトルクの増大の90%が生じるのに必要とされた時間(R/(Rmax−Rmin)=0.90の時間)である。
【0039】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂と、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される、変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂。
【請求項2】
ヒドロカルビル基はC〜C60ヒドロカルビル基からなる群から選択される、請求項1に記載の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂。
【請求項3】
ヒドロカルビル基はt−ブチル基またはt−オクチル基である、請求項2に記載の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂。
【請求項4】
ビニルモノマーは、スチレン系モノマー、オレフィン、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルピリジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂。
【請求項5】
ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブチルスチレン、カルボキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるスチレン系モノマーである、請求項4に記載の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂。
【請求項6】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂と、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させる工程を含む、改善された粘着性を有する変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂の製造方法。
【請求項7】
反応の完了後、酸触媒を塩基で中和する工程をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂は、ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂と、約1重量%〜約25重量%のビニルモノマーを、酸触媒の存在下、反応させることにより製造される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂のヒドロカルビル基はC〜C60ヒドロカルビル基である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂のヒドロカルビル基はt−ブチル基またはt−オクチル基である、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ビニルモノマーは、スチレン系モノマー、オレフィン、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルピリジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項12】
ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブチルスチレン、カルボキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるスチレン系モノマーである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ゴムまたはゴム混合物と、0.5〜7phrの請求項1に記載の変性ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂を含んでなる、改善された粘着性を有するゴム組成物。
【請求項14】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂のヒドロカルビル基はC〜C60ヒドロカルビル基である、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項15】
ヒドロカルビルフェノール−ホルムアルデヒド直鎖状ノボラック樹脂のヒドロカルビル基はt−ブチル基またはt−オクチル基である、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項16】
ビニルモノマーは、スチレン系モノマー、オレフィン、(メタ)アクリルモノマー、(メタ)アクリレートモノマー、ビニルピリジンおよびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13に記載のゴム組成物。
【請求項17】
ビニルモノマーは、スチレン、α−メチルスチレン、クロロスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、アミノスチレン、ヒドロキシスチレン、t−ブチルスチレン、カルボキシスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレンおよびそれらの混合物からなる群から選択されるスチレン系モノマーである、請求項16に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2013−67804(P2013−67804A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−245909(P2012−245909)
【出願日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【分割の表示】特願2007−557058(P2007−557058)の分割
【原出願日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(507287032)エスアイ・グループ・インコーポレイテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】SI GROUP, INC.
【Fターム(参考)】