説明

粘着付与樹脂エマルション及びその製造方法、並びに水系感圧性接着剤組成物

【課題】 乳化剤を用いずに粘着付与樹脂が乳化され、耐水性に優れた粘着付与樹脂エマルション及びその製造方法、並びに水系感圧性接着剤組成物を得る。
【解決手段】 粘着付与樹脂エマルションは、粘着付与樹脂(A1)が、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)により水分散されたことを特徴とする。ポリマー(A2)が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーであってもよく、その有機酸基はカルボン酸基であってもよい。水系感圧性接着剤組成物は、前記粘着付与樹脂エマルション(A)と、アクリル系重合体(B1)をベースポリマーとする感圧性接着剤(B)とを含有していることを特徴とする。感圧性接着剤(B)100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(A)が1〜50重量部配合されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、耐水性が優れている粘着付与樹脂エマルション及びその製造方法、並びに水系感圧性接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、感圧接着テープには、主として、溶剤系のアクリル系ポリマーを主成分とした溶剤系感圧性接着剤が用いられてきた。しかし、このような溶剤系感圧性接着剤は、有機溶媒中で合成されるため、塗工時の溶剤の揮発が環境的に問題があり、水分散型の感圧性接着剤(水系感圧性接着剤)への転換が図られている。しかし、アクリル系ポリマーを主成分とした水系感圧性接着剤は、ステンレス、ポリエチレンテレフタレート等の極性の被着体(極性被着体)への接着力は高いが、ポリエチレン、ポリプロピレン等の非極性の被着体(非極性被着体)への粘着力が低く、これらの非極性被着体への接着後の端末剥がれ防止性(被着体貼付部において端部が剥がれにくい性質;耐反発性)等が劣るという欠点を有している。このような欠点を改良するために、粘着剤組成物中に、粘着付与剤(例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂などの粘着付与樹脂など)が配合されている。
【0003】ところが前記粘着付与樹脂は、極めて水に分散しにくいため、水に均一に分散させるには多量の乳化剤を必要とする。そのため、従来のアクリルエマルションを主成分とする水系感圧性接着剤組成物は、多量の乳化剤による粘着付与樹脂エマルションにおける多量の乳化剤の影響により、湿度の高い場所や水滴のかかる場所においては感圧性接着剤自身が吸水したり白化や曇りを生じ易いという問題があるため、耐水性の必要な用途には適さなかった。すなわち、粘着付与樹脂エマルション自体の耐水性が低いため、水系感圧性接着剤組成物自体も耐水性が低くなっている。
【0004】こうした状況下、粘着付与樹脂を水に分散させる際に必要な乳化剤を減らすための方法として、特開平10−195407において、シードポリマーに粘着付与樹脂とアクリル系モノマーを取り込ませて重合する方法が示されている。しかしながら、この方法では、アクリル系モノマー重合時に使用できる粘着付与樹脂は、結果的にはアクリル系モノマーの重合阻害を起こさないものに限定されるため、非極性被着体への接着性を高めることができる適切な粘着付与剤を選択できない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、耐水性に優れた粘着付与樹脂エマルション及びその製造方法、並びに水系感圧性接着剤組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、乳化剤を用いずに粘着付与樹脂が乳化された粘着付与樹脂エマルション及びその製造方法、並びに水系感圧性接着剤組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、粘着付与樹脂をガラス転移温度(Tg)が10℃以上、重量分子量が300〜50000であり分子内に有機酸基を含むポリマーにより乳化させて水分散することにより、耐水性に優れた粘着付与樹脂エマルションが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】すなわち、本発明は、粘着付与樹脂(A1)が、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)により水分散されたことを特徴とする粘着付与樹脂エマルションを提供する。
【0008】前記ポリマー(A2)としては、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーを用いることができる。また、ポリマー(A2)の有機酸基としてはカルボン酸基が好ましい。
【0009】また、本発明は、粘着付与樹脂(A1)を、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)を用いて水分散することを特徴とする粘着付与樹脂エマルションの製造方法を提供する。
【0010】さらにまた、本発明は、前記粘着付与樹脂エマルション(A)と、アクリル系重合体(B1)をベースポリマーとする感圧性接着剤(B)とを含有していることを特徴とする水系感圧性接着剤組成物を提供する。該水系感圧性接着剤組成物では、感圧性接着剤(B)100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(A)が1〜50重量部配合されていることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】[粘着付与樹脂(A1)]粘着付与樹脂(A1)としては、感圧性接着剤用の粘着付与樹脂として公知乃至慣用の粘着付与樹脂を用いることができる。粘着付与樹脂(A1)としては、例えば、ロジン類(A1-a)、ロジン誘導体(A1-b)、石油系樹脂(A1-c)、テルペン系樹脂(A1-d)、フェノール系樹脂(A1-e)、ケトン系樹脂(A1-f)などが挙げられる。粘着付与樹脂(A1)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0012】ロジン類(A1-a)としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等のロジンの他、安定化ロジンや重合ロジン(例えば、前記ロジンを不均化もしくは水素添加処理した安定化ロジンや重合ロジン等)、変性ロジン(例えば、マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸等の不飽和酸により変性された不飽和酸変性ロジン等)などが挙げられる。
【0013】また、ロジン誘導体(A1-b)としては、前記ロジン類(A1-a)から誘導される各種公知のロジン誘導体を使用することができる。具体的には、ロジン誘導体には、例えば、前記ロジン類(A1-a)のエステル化物、前記ロジン類(A1-a)のフェノール変性物及びそのエステル化物などが含まれる。例えば、ロジン類(A1-a)のエステル化物としては、例えば、前記例示のロジン類と多価アルコールとをエステル化反応させたものを用いることができる。該多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価アルコール;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の3価アルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリン等の4価アルコール;ジペンタエリスリトールなどの6価アルコール等が挙げられる。多価アルコールは単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0014】また、ロジン類(A1-a)のフェノール変性物及びそのエステル化物には、例えば、前記例示のロジン類にフェノール類を付加させたもの、前記例示のロジン類にフェノールを付加させ次いでエステル化したもの、並びにレゾール型フェノール樹脂と前記例示のロジン類とを反応させて得られるいわゆるロジン変性フェノール樹脂及びそのエステル化物などが含まれる。
【0015】石油系樹脂(A1-c)としては、例えば、いわゆるC5系石油樹脂、いわゆるC9系石油樹脂、いわゆるC5−C9共重合系石油樹脂、ピュアモノマー樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂や、これらの水素化物などを例示できる。
【0016】テルペン系樹脂(A1-d)としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂や、テルペン類(例えば、α−ピネン、β−ピネンなど)および芳香族モノマー(例えば、スチレン等のスチレン系モノマーなど)の共重合による芳香族変性テルペン系樹脂、テルペン類(例えば、α−ピネン、β−ピネンなど)およびフェノールの共重合によるテルペンフェノール系樹脂などが挙げられる。
【0017】フェノール系樹脂(A1-e)としては、フェノール類(例えば、フェノール、m−クレゾール、3,5−キシレノール、p−アルキルフェノール、レゾルシンなど)とホルムアルデヒドとの縮合物を用いることができる。具体的には、フェノール系樹脂(A1-e)としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾールや、酸触媒で縮合反応させたノボラックなどが挙げられる。また、フェノール系樹脂(A1-e)には、ロジン類にフェノールを酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等も含まれる。
【0018】ケトン系樹脂(A1-f)には、例えば、ケトン類(例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン等の脂肪族ケトンや、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等の脂環式ケトンなど)とホルムアルデヒドとの縮合によるケトン系樹脂などが含まれる。
【0019】粘着付与樹脂(A1)としては、特に限定されず、例えば、その軟化点が200℃以下の高軟化点のものから液状のものまで各種用途に応じて適宜選択して使用することができる。
【0020】[ポリマー(A2)]本発明では、粘着付与樹脂(A1)を水分散する際に、乳化剤ではなく、ポリマー(A2)を用いている。ポリマー(A2)のガラス転移温度(Tg)としては、10℃以上(例えば、10〜150℃)、好ましくは15℃以上(例えば、15〜120℃)であることが重要である。ポリマー(A2)のTgが10℃以上とすることにより、ポリマー(A2)自身も粘着付与樹脂(A1)と同様の機能を発揮することができ、ポリマー(A2)を多量に混合しても、非極性被着体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)への粘着性向上や非極性被着体への接着後の端末剥がれ防止性向上などの粘着付与樹脂による機能(又は作用)や効果を有効に発現させることができる。
【0021】また、ポリマー(A2)は、分子内に有機酸基を含んでいることが重要である。このような有機酸基としては、例えば、カルボン酸基(−COOH)、スルホン酸基(−SO3H)、リン酸基(−PO3H)などが挙げられる。ポリマー(A2)の有機酸基としては、特にカルボン酸基(カルボキシル基)が好適である。なお、ポリマー(A2)中の有機酸基は1種であってもよく2種以上組み合わせられていてもよい。
【0022】さらにまた、ポリマー(A2)の重量平均分子量が、300〜50000(好ましくは1000〜20000、さらに好ましくは3000〜15000)であることが重要である。このように、ポリマー(A2)は、(比較的に)低分子量のポリマーである。なお、ポリマー(A2)の分子量が低すぎると(例えば、重量平均分子量が300未満であると)、粘着付与樹脂(A1)の分散性が低下し、また、感圧性接着剤と混合したとき、感圧性接着剤の凝集力が低下し、粘着剤の保持特性を発揮できなくなる。一方、分子量が高すぎると(例えば、重量平均分子量が50000を越えると)、粘着付与樹脂(A1)の分散性が低下し、また、感圧性接着剤と混合したとき、非極性被着体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)への粘着付与樹脂による粘着力を高める作用又は効果が低下し、非極性被着体への接着後の端末剥がれ防止性が低下する。
【0023】本発明では、ポリマー(A2)としては、(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)を単量体主成分とし且つ有機酸基を有するアクリル系ポリマーを好適に用いることができる。アクリル系ポリマーに有機酸基を導入する方法としては、例えば、(1)単量体主成分としての(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)を、有機酸を有する共重合性単量体(有機酸基含有単量体)(A2-b)および、必要に応じて他の共重合性単量体(A2-c)と共重合する方法、(2)(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)を単量体主成分とするとともに、必要に応じて他の共重合性単量体(A2-c)を共重合成分とするアクリル系ポリマーに周知の化学反応により有機酸を付与する方法などが挙げられる。
【0024】(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)には、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルや(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステルが含まれる。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおいて、アルキル基部位としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステルにおいて、脂環式炭化水素部位としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基などの橋かけ環式炭化水素基などが例示できる。
【0025】具体的には、(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0026】(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)としては、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸メチルを好適に用いることができる。
【0027】また、(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)と共重合可能な共重合性単量体(A2-c)としては、例えば、スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体などが挙げられる。共重合性単量体(A2-c)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0028】有機酸を導入する際に用いられる有機酸基含有単量体(A2-b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有単量体などが挙げられる。有機酸基含有単量体(A2-b)としては、カルボキシル基含有単量体、なかでもアクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が最適である。有機酸基含有単量体(A2-b)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0029】ポリマー(A2)におけるアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)を単量体主成分としており、(メタ)アクリル酸エステル(A2-a)の全単量体に対する割合としては、例えば、50重量%以上(好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)であることが望ましい。
【0030】本発明では、ポリマー(A2)としては、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸イソボルニルおよびメタクリル酸メチルから選択された少なくとも一種の(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とし、アクリル酸及び/又はメタクリル酸を有機酸含有単量体として共重合により得られるカルボキシル基含有アクリル系ポリマーを好適に用いることができる。
【0031】[粘着付与樹脂エマルション(A)]粘着付与樹脂エマルション(A)は、前記粘着付与樹脂(A1)を、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)を用いて水分散することにより調製される。粘着付与樹脂(A1)を水分散させる方法としては、特に制限されないが、高圧乳化の操作を経るほうが、粘着付与樹脂(A1)からなる乳化粒子の粒径が小さくなり、粘着付与樹脂エマルション(A)を加えたときの感圧性接着剤の特性を向上させることができるので、望ましい。その手法の一例としては、例えば、ポリマー(A2)(アクリル系ポリマーなど)と、粘着付与樹脂(A2)とを少量の有機溶剤を用いて事前に混合した後、水もしくは、アルカリ性の水を加えて攪拌機で攪拌し、予備乳化させる。その後、高圧乳化機を用いて乳化粒子の粒径を微細化し、減圧下で溶剤及び水を共に除去する方法が挙げられる。
【0032】粘着付与樹脂エマルション(A)では、多量の乳化剤が用いられておらず、粘着付与樹脂エマルション(A)自体の耐水性が向上しており、感圧性接着剤(B)(特に、アクリル系感圧性接着剤)に対して用いても、感圧性接着剤(B)の耐水性の低下を抑制又は防止することができる。
【0033】粘着付与樹脂エマルション(A)において、粘着付与樹脂(A1)とポリマー(A2)との割合としては、特に制限されず、例えば、粘着付与樹脂(A1)100重量部に対して、ポリマー(A2)が5〜100重量部(好ましくは10〜50重量部、さらに好ましくは20〜40重量部)程度であってもよい。ポリマー(A2)の割合が少なすぎると、分散液の安定性が低下し、一方、多すぎると、粘着力の低下など、粘着特性の低下が生じる場合がある。
【0034】[感圧性接着剤(B)]本発明では、感圧性接着剤(B)のベースポリマーとしては、アクリル系重合体(B1)を用いることができる。アクリル系重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)を単量体の主成分として含有し、必要に応じて共重合性単量体(B1-b)を共重合成分として含有している。アクリル系重合体(B1)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0035】(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)には、例えば、(メタ)アクリル酸のアルキルエステルや(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステルが含まれる。(メタ)アクリル酸のアルキルエステルにおいて、アルキル基部位としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、イソオクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基(ステアリル基)などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸の脂環式炭化水素エステルにおいて、脂環式炭化水素部位としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基などの橋かけ環式炭化水素基などが例示できる。
【0036】具体的には、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル等の(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステルなどが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0037】共重合性単量体(B1-b)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸等のカルボキシル基含有単量体又はその無水物;スチレン、置換スチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリルなどのシアノ基含有単量体;エチレン、ブタジエンなどのオレフィン類;酢酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニル;ビニルスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸基含有単量体;アクリルアミド、メタアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなどの水酸基含有単量体;(メタ)アクリロイルモルホリンなどのアミノ基含有単量体;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有単量体;(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体などが挙げられる。共重合性単量体(B1-b)は単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】なお、共重合性単量体(B1-b)として、必要に応じて、シラン系単量体(例えば、(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン誘導体等の(メタ)アクリロイル基を有するシラン化合物、ビニルトリアルコキシシラン、ビニルアルキルトリアルコキシシランなど)を用いてもよい。該シラン系単量体を共重合性成分として用いることにより、粘着製品として被着体に貼付したときの耐反発性を向上させることができる。
【0039】また、共重合性単量体(B1-b)として、必要に応じて、多官能モノマーを使用することができる。多官能モノマーとしては、反応性の官能基を複数個有する重合性化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0040】さらにまた、必要に応じて、前記多官能モノマーに代えて(又は、多官能モノマーと共に)、架橋剤を用いることもできる。架橋剤としては、通常用いる架橋剤を使用することができ、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン樹脂系架橋剤、過酸化物系架橋剤などが挙げられる。
【0041】アクリル系重合体(B1)は、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)を単量体主成分としており、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)の全単量体に対する割合としては、例えば、50重量%以上(好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)であることが望ましい。
【0042】(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)としては、上記例示のものの中でも、曲面へ貼り付けたときの端末部の剥がれを抑制しうる(耐反発性に優れた)(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステル(特に、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)を好適に用いることができる。このような(メタ)アクリル酸C4-9アルキルエステルを単量体主成分とするアクリル系重合体(B1)を用いた粘着製品は、良好な感圧接着性を発現することができる。
【0043】アクリル系重合体(B1)としては、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)を単量体の主成分としていれば、単量体の組成やその使用量又は配合割合を適宜選択することができるが、良好な感圧接着性を発現させるためには、得られるポリマーのガラス転移点(Tg)が通常−20℃以下となるように、組成及びその配合割合を決めるのが望ましい。
【0044】なお、アクリル系重合体(B1)の重量平均分子量は、20万以上(例えば、20万〜70万)、好ましくは25万〜50万、さらに好ましくは30万〜45万程度であってもよい。従って、アクリル系重合体(B1)は、(比較的に)高分子量のポリマーであってもよい。
【0045】感圧性接着剤(B)において、感圧性接着剤を構成するベースポリマーとしてのアクリル系重合体(B1)はエマルションの形態で含有されていてもよい。アクリル系重合体(B1)がエマルションの形態で含有されている場合、アクリル系重合体(B1)を重合する際に乳化剤を用いることによりエマルション化されていてもよく、アクリル系重合体(B1)を乳化剤によりエマルション化されていてもよい。すなわち、アクリル系重合体(B1)を含有するエマルションは、(メタ)アクリル酸エステル(B1-a)と、必要に応じて共重合性単量体(B1-b)とを用いた乳化重合により得られるアクリル系重合体エマルションであってもよく、乳化重合以外の重合方法によりアクリル系重合体(B1)を得た後、乳化剤により水に分散させて調製されたアクリル系重合体エマルションであってもよい。
【0046】本発明において、ポリマー(A2)やアクリル系重合体(B1)などのポリマーを調製する際には、一般的な一括重合、連続滴下重合、分割滴下重合などの重合方法を採用でき、重合温度は、重合開始剤の種類に応じて、例えば、5〜100℃の範囲から選択できる。前記重合開始剤としては、例えば、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル、2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2´−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2´−アゾビス(N,N´−ジメチレンイソブチルアミジン)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組み合わせ等の過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、重合開始剤の使用量は、その種類やアクリル系モノマーの種類に応じて適宜選択できるが、一般には、単量体混合物100重量部に対して、例えば0.005〜1重量部(好ましくは0.02〜0.5重量部)程度である。
【0047】また、重合には連鎖移動剤を用いてもよい。連鎖移動剤を用いることにより、ポリマー(A2)やアクリル系重合体(B1)などのポリマーの分子量を調整することができる。連鎖移動剤としては、慣用の連鎖移動剤、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどが例示できる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、通常、単量体混合物100重量部に対して0.001〜0.5重量部程度である。
【0048】また、重合に際して、重合安定性を確保するために、乳化剤を用いることができる。このような乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などを使用できる。また、これらにプロペニル基等のラジカル反応性基が導入されたラジカル重合性の乳化剤を用いることもできる。これらの乳化剤は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、重合安定性、機械的安定性の観点から、例えば、単量体混合物100重量部に対して0.5重量部以上が好ましく、1.0重量部以上がさらに好ましい。一方、耐水性を向上させる観点から、5重量部以下が好ましく、3重量部以下がさらに好ましい。
【0049】[水系感圧性接着剤組成物]本発明の水系感圧性接着剤組成物は、前記粘着付与樹脂エマルション(A)と、前記感圧性接着剤(B)とを含有している。水系感圧性接着剤組成物は、粘着付与樹脂エマルション(A)と感圧性接着剤(B)とを混合することにより調製することができる。粘着付与樹脂エマルション(A)と感圧性接着剤(B)との割合としては、感圧性接着剤(B)100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(A)が1〜50重量部(好ましくは10〜40重量部)程度であってもよい。粘着付与樹脂エマルション(A)が感圧性接着剤(B)100重量部に対して1重量部未満である場合には、粘着付与樹脂(A1)を添加することによる改質がほとんど認められず、また、50重量部を超える場合には、低温の接着性や凝集力が低下する傾向がある。
【0050】水系感圧性接着剤組成物には、必要に応じて、pHを調整するための塩基や酸の他、粘着剤に通常使用される添加剤、例えば、消泡剤、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、着色剤(顔料など)、老化防止剤などが添加されていてもよい。なお、pHを調整するための塩基や酸により、粘度を調整することができ、この場合、塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの塩基性無機化合物や、アミン系化合物等の塩基性有機化合物などを用いることができる。
【0051】本発明の水系感圧性接着剤組成物は、粘着付与樹脂が用いているにもかかわらず、多量の乳化剤が使用されていないので、耐水性が優れている。そのため、高湿下や水滴のかかる場所でも使用できるようになる。しかも、粘着付与樹脂による非極性被着体への接着性向上の効果が有効に発揮され、また、粘着付与樹脂による非極性被着体への接着後の端末剥がれ防止性も効果的に発揮される。さらには、水系のアクリル系粘着剤を用いるので環境衛生上望ましい。
【0052】本発明の水系感圧性接着剤組成物は、粘着製品(例えば、粘着テープ、粘着シート、粘着フィルム、粘着ラベル等)として利用することができる。粘着製品は、例えば、上記の水系感圧性接着剤組成物による粘着剤層を備えている。該粘着剤層は、基材上に形成されていてもよく、また、剥離フィルム上に形成されていてもよい。基材としては、例えば、ポリプロピレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、エチレン−プロピレン共重合体フィルム、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ酢酸ビニルフィルムなどのプラスチックフィルム;クラフト紙などの紙;金属箔などを使用できる。前記プラスチックフィルムは、無延伸フィルム及び延伸(一軸延伸又は二軸延伸)フィルムの何れであってもよい。また、基材の片面又は両面に、粘着剤層の密着力の向上などを目的にコロナ処理やプラズマ処理などの物理的処理、下塗り剤などの化学的処理など、適宜表面処理を施してもよい。基材の厚みは、10〜300μm、好ましくは20〜150μm程度である。
【0053】水系感圧性接着剤組成物は、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーターなどを用いて、基材や剥離フィルム上に塗布することができる。前記感圧性接着剤組成物は、通常、乾燥後の粘着剤層の厚みが、例えば5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度となるように塗布される。
【0054】なお、粘着剤保護のために粘着剤層上に剥離フィルムを積層しておくのが望ましい。また、剥離フィルムを利用しない場合は、シートの背面にシリコーン系剥離剤や長鎖アルキル系剥離剤などの剥離処理剤により背面処理を施しても構わない。粘着製品は、ロール状に巻回した粘着テープであってもよい。
【0055】
【発明の効果】本発明の水系感圧性接着剤組成物によれば、水系であるにもかかわらず、粘着付与樹脂のエマルション化に際して多量の乳化剤が用いられていないので、耐水性に優れている。
【0056】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、部は重量部を意味する。
(水系アクリル系感圧性接着剤の調製例1)温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応容器にイオン交換水715部を入れ、攪拌しながら温度60℃で1時間窒素置換させた。これに2,2´−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド(重合開始剤)を1.5部加え、温度を60℃にし、その後、アクリル酸ブチル1266部、アクリル酸2−エチルヘキシル141部、アクリル酸56部、ラウリルメルカプタン(連鎖移動剤)0.73部、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン0.88部、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム(乳化剤)21部を水474部で乳化したものを4時間かけて滴下し、乳化重合処理した。冷却後、10重量%アンモニア水100部を添加して中和し、アクリル系の水系感圧性接着剤を得た。なお、該アクリル系の水系感圧性接着剤におけるベースポリマーとしてのアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、350,000であり、ガラス転移温度(Tg)は−58℃である。
【0057】(有機酸含有ポリマーの調製例1)温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応容器に、シクロヘキシルメタクリレート190部、アクリル酸10部、アゾビスイソブチロニトリル0.6部、2−メルカプトエタノール4部、トルエン100部を入れ、攪拌しながら温度70℃で1時間窒素置換させた。その後、温度を70℃にし、2時間反応させ、80℃に昇温してさらに1時間攪拌を続けた後、室温まで冷却して反応を終了させて、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0058】(有機酸含有ポリマーの調製例2)シクロヘキシルメタクリレートに代えて、シクロヘキシルアクリレート190部を使用したこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0059】(有機酸含有ポリマーの調製例3)シクロヘキシルメタクリレートに代えて、イソボルニルアクリレート190部を使用したこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0060】(有機酸含有ポリマーの調製例4)アクリル酸に代えて、メタクリル酸10部を使用したこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0061】(有機酸含有ポリマーの調製例5)2−メルカプトエタノールの使用量を4部に代えて6部としたこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0062】(有機酸含有ポリマーの調製例6)2−メルカプトエタノールの使用量を4部に代えて0.1部としたこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0063】(有機酸含有ポリマーの調製例7)シクロヘキシルメタクリレートに代えて、2−エチルヘキシルアクリレート190部を使用したこと以外は、有機酸含有ポリマーの調製例1と同様にして、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを得た。
【0064】(分子量の測定)有機酸含有ポリマーの調製例1〜7で得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマーを乾燥させた後、テトラヒドロフラン(THF)を加えて0.1重量%のTHF溶液とし、GPC(ゲルパーミュレーションクロマトグラフィ)によって、分子量(重量平均分子量:Mw)を測定した。測定結果を表1に示す。なお、測定条件は次の通りである。
測定条件:溶出液THF、液送量0.5ml/min、カラム温度40℃、標準ポリスチレン換算
【0065】(ガラス転移温度の測定)有機酸含有ポリマーの調製例1〜7で得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマーについて、動的粘弾性測定装置でG″(損失弾性率)を測定し、そのピーク値をガラス転移温度(Tg)とした。測定結果を表1に示す。
【0066】
【表1】


【0067】(実施例1)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0068】(実施例2)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例2により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0069】(実施例3)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例3により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0070】(実施例4)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例4により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0071】(実施例5)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例5により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0072】(実施例6)軟化点125℃の重合ロジンエステル(商品名「ペンセルD125」荒川化学工業(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0073】(実施例7)軟化点100℃の不均化ロジンエステル(商品名「スーパーエステルA−100」荒川化学工業(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0074】(実施例8)軟化点115℃のテルペンフェノール樹脂(商品名「YSポリスターT−115」ヤスハラケミカル(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0075】(実施例9)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー10部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水115部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0076】(実施例10)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と、有機酸含有ポリマーの調製例1により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー50部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水115部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0077】(比較例1)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と有機酸含有ポリマーの調製例6により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0078】(比較例2)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部と有機酸含有ポリマーの調製例7により得られたカルボキシル基含有アクリル系ポリマー30部(固形分換算)とを混合させて溶解した後、0.5重量%のアンモニア水145部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0079】(比較例3)軟化点145℃のロジンフェノール樹脂(商品名「スミライトレジンPR12603」住友デュレズ(株)製)100部をトルエン60部に溶解した後、アニオン系乳化剤(ポリオキシエチレンラウリル硫酸アンモニウム)を3部及び0.5重量%のアンモニア水110部を加えて、温度30℃で1時間攪拌し予備乳化を行った。得られた予備乳化物を高圧乳化機(B.E.E.社製)により、60MPaの圧力で高圧乳化して乳化物を得た。次いで、減圧蒸留装置に前記乳化物を仕込み50℃、130hPaの条件下に6時間減圧蒸留を行い、固形分50重量%の粘着付与樹脂エマルションを得た。
【0080】(評価方法)実施例1〜10及び比較例1〜3により得られた粘着付与樹脂エマルションを、水系感圧接着剤と混合して、水系感圧接着剤組成物としての性能評価を下記の方法により調べた。具体的には、水系アクリル系感圧性接着剤の調製例1により得られたアクリル系の水系感圧性接着剤(アクリル系エマルションポリマー)100部に、実施例及び比較例で得られた粘着付与樹脂エマルション30部を混合した調製物に、アンモニア水にて増粘させて、水系感圧接着剤組成物を得た。なお、比較例4としては、粘着付与樹脂エマルションを混合しない水系感圧接着剤組成物とし、比較例5としては、実施例1で得られた粘着付与樹脂エマルションを100部混合した水系感圧接着剤組成物とした。これらの水系感圧性接着剤組成物を、厚み150μmの紙基材剥離紙上に塗布し、120℃で3分間乾燥処理して、厚さが70μmの感圧性接着剤層を形成させた。この感圧接着剤層を坪量14gのレーヨン・パルプ製不織布の両面に貼り合わせ、感圧性接着テープを作成し、以下の性能評価方法にて各種試験を行った。なお、評価結果は、表2〜3に示した。
【0081】(接着力)幅20mmの感圧性接着テープの片面に厚さ38μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを貼り合わせ、該テープを各種被着体に2kgゴムローラーを1往復して圧着し、30分後放置した後、剥離速度300mm/minで剥離して、各被着体に対する接着力(N/20mm幅)を測定した。なお、被着体としては、ステンレス板(SUS板)、ポリプロピレン板(PP板)を用いた。
【0082】(保持力)幅10mmの粘着テープをベークライト板に対し10mm×20mmの接触面積で貼り付け、20分経過後ベークライト板を垂下し、粘着テープの自由端に500gの均一荷重を負荷して、40℃又は80℃において1時間経過後に粘着シートがずれた距離(mm)を測定した。
【0083】(耐反発性試験)粘着テープを、直径30mmになるように弧状に曲げた厚さ0.5mmのアルミニウム板(10mm×50mm)の外面側に貼り付けた後、ラミネーターにてポリプロピレン板に貼り合わせた。これを室温に24時間置いた後、ポリプロピレン板の端部の剥がれた高さ(mm)を測定した。
【0084】(定荷重剥離性試験)幅20mm×長さ100mmの粘着テープに厚さ38μmのPETフィルムを貼り合わせ、該テープを被着体に2kgのゴムローラーを1往復して圧着し、30分放置した後、粘着テープの自由端に100gの均一荷重を負荷して、90°剥離させたときの23℃での24時間経過後の剥離距離(mm)を測定した。なお、被着体としては、ポリプロピレン板(PP板)、ポリスチレン板(PSt板)を用いた。
【0085】(耐白化性試験)幅50mm×長さ50mmの感圧性接着テープの片側に38μmのPETフィルムを貼り合わせ、感圧性接着剤面を水に浸し、12時間後の白化状態を目視で観察し、白化しなかったものを○とし、白化したものを×として、耐白化性を評価した。
【0086】
【表2】


【0087】
【表3】


【0088】表2〜3より明らかなように、実施例に係る粘着付与樹脂エマルションを添加した水系感圧性接着剤組成物は、優れた接着力、保持力、耐反発性及び定荷重剥離性を示し、さらに白化が生じにくい。これに対し、比較例1では、高分子量のカルボキシル基含有アクリル系ポリマーを用いているため、特に耐反発性および定荷重剥離性の点で劣り、比較例2では、ガラス転移温度が低いカルボキシル基含有アクリル系ポリマーを用いているため、特に保持力、耐反発性および定荷重剥離性の点で劣る。また、比較例3では、カルボキシル基含有アクリル系ポリマーを用いず、アニオン系乳化剤を用いているため、特に耐白化性の点で劣る。さらにまた、比較例4では、粘着付与樹脂エマルションを用いていないため、特に接着力、耐反発性および定荷重剥離性の点で劣り、比較例5では、粘着付与樹脂エマルションのみであるため、特に接着力、保持力、耐反発性および定荷重剥離性の点で劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 粘着付与樹脂(A1)が、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)により水分散されたことを特徴とする粘着付与樹脂エマルション。
【請求項2】 ポリマー(A2)が、(メタ)アクリル酸エステルを単量体主成分とするアクリル系ポリマーである請求項1記載の粘着付与樹脂エマルション。
【請求項3】 ポリマー(A2)の有機酸基がカルボン酸基である請求項1又は2記載の粘着付与樹脂エマルション。
【請求項4】 粘着付与樹脂(A1)を、ガラス転移温度(Tg)が10℃以上で且つ重量平均分子量が300〜50000であるとともに、分子内に有機酸基を含んでいるポリマー(A2)を用いて水分散することを特徴とする粘着付与樹脂エマルションの製造方法。
【請求項5】 請求項1〜3の何れかの項に記載の粘着付与樹脂エマルション(A)と、アクリル系重合体(B1)をベースポリマーとする感圧性接着剤(B)とを含有していることを特徴とする水系感圧性接着剤組成物。
【請求項6】 感圧性接着剤(B)100重量部に対して、粘着付与樹脂エマルション(A)が1〜50重量部配合されている請求項5記載の水系感圧性接着剤組成物。

【公開番号】特開2003−171560(P2003−171560A)
【公開日】平成15年6月20日(2003.6.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−369495(P2001−369495)
【出願日】平成13年12月4日(2001.12.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】