説明

粘着剤及び粘着フィルム

【課題】押出機による共押出を行った場合に粘着層を基材層上に延展不足を生じることなく積層可能であり、保護フィルムと貼付けた際にフィルムとの接触面積が小さいプリズムシート等の被覆体に使用可能である粘着剤の提供。
【解決手段】スチレン成分が5〜15重量%であり、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロックとスチレンとオレフィンのとのランダム共重合体ブロックとのブロック共重合体、及びまたはこれらの水素添加物を主成分としてなるスチレン系エラストマー100重量部に対して、粘着付与樹脂2重量部以上、10重量部未満、ポリオレフィン系樹脂2重量部以上、10重量部未満を含む樹脂組成物からなることを特徴する粘着性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着剤及び粘着フィルムに関する。本発明の粘着剤は、特に光学用途に用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部の外表面を保護するための粘着フィルムに好適にもちいることができる。
また、合成樹脂板(例えば建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械および、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(たとえば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護する場合にも好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
従来から、被覆体の表面保護を目的とした粘着フィルムは、建築資材や電気、電子製品、自動車等の加工、保管、輸送時にもちいられており、このような粘着フィルムは、良好な粘着性を有するとともに、使用後は、各表面を粘着剤で汚染することなく容易に引き剥がすことができなければならない。
この種の粘着フィルムは、基材となる層に粘着層を積層することにより構成される。粘着フィルムの製造方法としては、例えば合成樹脂等から構成される基材層に、溶液状の粘着剤を塗工する方法、基材層、粘着層を複数の押出機から溶融押出しし、Tダイ等を用いて共押出製膜する方法等があげられる。これらの中でもTダイ法による共押出製膜がコスト、品質上の面から優位である。
【0003】
共押出製膜を行う際に、粘着層に使用される有用な樹脂として、熱可塑性エラストマーの一つであるスチレン系エラストマーが挙げられる。スチレン系エラストマーは、フィルムを製膜する際にポリオレフィン系樹脂からなる基材層に対する粘着層の投錨力が優れているのみならず、粘着付与剤の添加により粘着力の制御が容易である等の利点を有する(特許文献1)。
【0004】
ところで、上記した被覆体は近年、その多様化により、被覆面が平滑なものだけでなく表面凹凸を有するものも多数見受けられる。表面凹凸を有する被覆体としては、例えば光学部材に用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部等が挙げられるプリズムシートのような表面凹凸を有する被覆体に対して、使用上充分な粘着力を発現させる必要がある。
そのためには、接触面積が小さくても粘着力が得られるように粘着層の粘着力を高くする、もしくは粘着層を軟らかくすることにより被覆体の表面凹凸を粘着層に食込ませて接触面積を大きくすることにより粘着力を得る等が考えられる。
【0005】
粘着層の自己粘着性の向上を計るには、粘着剤に適したスチレン系エラストマーに粘着付与樹脂を添加することで可能である(例えば、特許文献1等参照。)が、スチレン系エラストマーに粘着付与樹脂を過剰に添加することにより構成される粘着層を基材層に押出機により共押出で積層する場合、粘着層の溶融粘度が低下し、基材層に対し延展され難く、時間がかかるという問題が生じる。また、フィードブロック法で積層する場合、粘着層が基材層に延展された後も、基材層よりも粘着層の溶融粘度が低いため、徐々にフィルム幅方向の端部で粘着層の廻り込みが発生し端部が粘着層のみとなることで、フィルム端部が製膜機に粘着する等のトラブルの原因となることもある。
また、スチレン系エラストマーに粘着付与剤を添加することによりプリズムシートに対して使用上必要な自己粘着力を発現させることができる(例えば、特許文献2等参照。)が、スチレン系エラストマーに粘着付与剤を添加するだけでは、フィルムをロール状態としその後フィルムを繰出す際に必ずしも繰出し性が良好ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−151656号公報
【特許文献2】特開2007−332329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、粘着フィルムを製造する際、粘着剤及び基材層用樹脂を押出機により共押出を行った場合に、粘着剤を基材層上に延展不足を生じることなく積層することが可能であり、かつフィルムロール状でのブロッキングが少なく、例えば、粘着フィルムとの接触面積が小さいプリズムシートなどの被着体に使用に好適な粘着フィルムのための粘着剤及びそのような粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討した結果、粘着剤を構成する樹脂組成を所定の範囲とすることで上記の課題を解消できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は
スチレン成分が5〜15重量%であり、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロックとスチレンとオレフィンのとのランダム共重合体ブロックとのブロック共重合体、及びまたはこれらの水素添加物を主成分としてなるスチレン系エラストマー100重量部に対して、粘着付与樹脂2重量部以上、10重量部未満、ポリオレフィン系樹脂2重量部以上、10重量部未満を含む樹脂組成物からなることを特徴する粘着性樹脂組成物であり、特にポリオレフィン系樹脂の含有量に特徴がある。
【0009】
本発明によれば、粘着フィルムを製造する際、粘着剤及び基材層用樹脂を押出機による共押出を行われた場合でも粘着剤を基材層上に延展不足を生じることなく積層した粘着フィルムを得ることができる。
さらなる発明は、前記の粘着性樹脂組成物が、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の片面に積層されてなることを特徴とする粘着フィルム。
である。
本発明の粘着フィルムは、保護フィルムとして、例えばプリズムなどの表面凹凸を有する被覆体に貼り合せても実用上充分な粘着力を有し、しかも粘着フィルム同士を重ねても粘着フィルム同士のブロッキングが少ないという利点を有している。
【0010】
また、前記ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の粘着性樹脂組成物からなる粘着層とは反対面に離形層とが積層されてなることが好適である。
【0011】
さらにまた、前記ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層、粘着性樹脂組成物からなる粘着層、離形層とが共押出により積層されてなることが好適である。
【0012】
さらにまた、前記粘着層中のスチレン系エラストマーの230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分であることが好適である。
【0013】
さらにまた、前記基材層中のポリプロピレン系樹脂の230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0〜15g/10分であることが好適である。
【0014】
さらにまた、前記粘着フィルムがプリズムシート被覆用であることが好適である。
【0015】
さらにまた、前記粘着フィルムが自己粘着性であることが好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明による粘着剤は、押出機による共押出を行った場合に粘着剤を基材層上に延展不足を生じることなく積層可能であり、しかも粘着フィルム同士を重ねても粘着フィルム同士のブロッキングが少ないという利点を有する。
本発明の粘着フィルムは例えば、プリズムシート等のようなフィルムとの接触面積が小さい被着体に保護フィルムとして貼付けた際に、十分な粘着力を有し有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の粘着剤及び粘着フィルムの実施の形態を説明する。
【0018】
(粘着性樹脂組成物)
本発明の粘着剤を構成する樹脂組成物としては、スチレン系エラストマー、粘着付与樹脂、ポリオレフィン系樹脂を所定の割合で混合されたものが、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層に共押出で積層される際の延展性が良好であり、フィードブロック法で積層する場合、粘着層がフィルム幅方向の端部で廻り込みを起こし難く、得られた粘着フィルムの被覆体への自己粘着力を発現する上で好ましい。
【0019】
(スチレン系エラストマー)
スチレン系エラストマーは、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン、スチレン−エチレン/ブチレン共重合体−スチレン、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体−スチレン等のA−B−A型ブロックポリマー、スチレン−ブタジエン、スチレン−イソプレン、スチレン−エチレン/ブチレン共重合体、スチレン−エチレン/プロピレン共重合体等のA−B型ブロックポリマー、スチレン−ブタジエンラバー等のスチレン系ランダム共重合体およびそれらの水素添加体を挙げることができる。
【0020】
本発明において用いられるスチレン系エラストマーの水素添加物とは、上記スチレン系エラストマーの共役ジエン由来の二重結合が水素添加により部分的にもしくは完全に飽和されているもののことを言う。飽和度としては、好ましくは80モル%以上であり、より好ましくは90モル%以上であり、特に好ましくは95〜100モル%である。上記飽和度が80モル%未満であると、粘着剤層の耐候性や耐熱性が不十分となることがある。
【0021】
スチレン系エラストマー中のスチレン成分は5重量%以上、15重量%以下であることが望ましい。5重量%未満であるとレジン作成時の造粒が困難となり、15重量%を超えると粘着力が低下し、必要とする粘着力を得ることが難しくなる。なお、粘着力は粘着付与樹脂の添加量を増やすことで上げることができるが、その分共押出時の粘着層の延展性が悪化する。また、フィードブロック法で積層する場合、粘着層がフィルム幅方向の端部で廻り込みを起こし易くなる。必要とする粘着力を発現し、かつ共押出時に粘着層の延展性を良好なものとし粘着層がフィルム幅方向の端部で廻り込みを起こし難くするためには、スチレン系エラストマー中のスチレン成分が好ましくは10重量%以上、13重量%以下である。
【0022】
使用する使用するスチレン系エラストマーの230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分の範囲が好ましく、2.0〜8.0g/10分の範囲が製膜性の点でより好ましい。
【0023】
(粘着付与樹脂)
粘着付与樹脂は、例えば脂肪族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、ロジン樹脂等を挙げることができる。
【0024】
樹脂組成物における粘着付与樹脂の含有量は、スチレン成分が5重量%以上、15重量%以下のスチレン系エラストマー100重量部に対し、2重量部以上、10重量部未満であることが望ましい。粘着付与樹脂の含有量が2重量部未満であると粘着力向上は見込めない。粘着付与樹脂の含有量を10重量部以上に増やし過ぎると溶融押出を行う場合、溶融粘度が著しく低下する。
溶融粘度が低い粘着層を230℃・2.16Kgfにおけるにおけるメルトフローレート(MFR)が15(g/10分)未満のポリプロピレン系樹脂を基材層として共押出により積層する場合、基材層と粘着層の間の溶融粘度差により、粘着層が基材層に対し延展され難く、時間がかかる問題が生じる。また、フィードブロック法で積層する場合、粘着層が基材層に延展された後も、基材層よりも粘着層の溶融粘度が低いため、徐々にフィルム幅方向の端部で粘着層の廻り込みが発生し端部が粘着層のみとなることで、フィルム端部が製膜機に粘着する等のトラブルの原因となることもある。しかも粘着フィルムをロール状に巻いた後、再び巻き出す際にブロッキングが生じやすいという問題もある。また被覆体を汚染する恐れもある。粘着付与樹脂の含有量は好ましくは4重量%以上、9重量%以下である。
【0025】
(ポリオレフィン系樹脂)
ポリオレフィン系樹脂は特に限定されず、結晶性ポリプロピレン、プロピレンと少量のαオレフィンとの共重合、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと少量のαオレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられる。中でもポリプロピレン系樹脂は基材層がポリプロピレン系樹脂で構成されるため、溶融粘度等の関係からも好適に用いることができる。
使用する使用するポリオレフィン系樹脂の230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)は、0.5〜10g/10分の範囲が好ましく、2.0〜8.0g/10分の範囲が製膜性の点でより好ましい。
【0026】
樹脂組成物におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、スチレン成分が5重量%以上、15重量%以下のスチレン系エラストマー100重量部に対し、2重量部以上、10重量部未満の範囲である。10重量部以上であると粘着力が低下し表面凹凸を有する被覆体に充分な粘着力が得られず、かつ延展性も劣る。2重量部未満であるとフィルムをロール状態で保管し、その後フィルムを繰出す際にも、ブロッキングが生じてフィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が生じる。ポリオレフィン系樹脂の含有量は好ましくは4重量%以上、9重量%以下である。
【0027】
また、粘着剤に使用する粘着付与樹脂は、種類によっては粉体を一部含む場合があり、押出時に押出機を汚す物もある。このような問題は粘着付与樹脂をポリオレフィン系樹脂とマスターバッチ化して使用することで改善されるため、粘着付与樹脂とポリオレフィン系樹脂とをマスターバッチ化して使用するほうが好ましい。
【0028】
本発明で用いられる粘着剤中には、本発明の課題達成を阻害しない範囲で必要に応じて、架橋剤、粘着性付与剤、無機もしくは有機充填剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、カップリング剤、消泡剤、帯電防止剤、難燃剤等の各種添加剤の1種もしくは2種以上が添加されていても良いが、粘着剤層や得られる表面保護フィルムの透明性を阻害しない添加剤を選択して用いることが好ましい。
【0029】
(粘着フィルム)
粘着剤層として、上記粘着剤を用いて、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層に共押出で積層された粘着フィルムは、粘着剤層が基材層に十分に延展される。さらにプリズム等の被着体への粘着力を十分に有し、しかも粘着フィルム同士を重ねても粘着フィルム同士のブロッキングが少ないという利点を有する。
【0030】
本発明の粘着フィルムの粘着力は23℃において、プリズムシートに対し3〜50cN/25cmの範囲であることが、プリズムシートの保護性能の点から好ましい。粘着力が3cN/25cm未満であるとプリズムシートを保護する際にめくれ等が生じ、保護フィルムとしての機能を担えない。一方、粘着力が50cN/25cmを超えるとプリズムシートからフィルムを剥離する際にスムーズに剥離できない恐れがある。粘着力は粘着層の樹脂組成や厚みなどを変更するにより、粘着力を適宜設定することが可能である。
【0031】
本発明の粘着フィルムの粘着面の離型面に対する剥離力は23℃において、100cN/25cm以下の範囲であることが、粘着フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出し性の点から好ましい。剥離力が100cN/25cmを超えると粘着フィルムをロール形態とした際のフィルムの繰出しにフィルムが部分的に伸長したり、変形する等の問題が生じる。剥離力は離型層に表面凹凸を形成し、ロールとして巻き取る際に粘着面と離型面との接触面積を変更することで、適宜設定することができる。また、離型層中にフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、4−メチル−1−ペンテン等の表面自由エネルギーを下げる効果を持つ樹脂を添加することでも、剥離力を下げることが可能である。
【0032】
本発明の粘着フィルムは、公知の添加剤を必要に応じて含有させたりすることができる。例えば、滑剤、ブロッキング防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐光剤、耐衝撃改良剤などを含有させたりしても良い。
但し、粘着層表面の低分子量物質を1mg/m未満にすることが好ましい。
ここで、粘着層表面の低分子量物質の測定は、次の手順にて実施した。粘着層表面をエタノール等の粘着層を構成する樹脂を侵食しない有機溶剤を用いて洗浄後、その洗浄液から有機溶剤をエバポレーター等で除去した後、その残渣を秤量して求めた数値を洗浄した粘着層表面の表面積で割り、求めた。ここで、残渣が1mg/m以上存在すると粘着層表面と被着体表面の間に異物が存在する事となり、接触面積を減らし、ファンデルワールス力を低下させる原因となる為、粘着力が低下し好ましくない。添加剤を添加する場合は、高分子型等の添加剤を選択したり、添加量及び添加方法を検討するなどして、粘着層への移行、転写がない様にすることが必要である。
【0033】
(基材層)
本発明の粘着フィルムは、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層を必要とし、ここで用いるポリプロピレン系樹脂としては、結晶性ポリプロピレン、プロピレンと少量のαオレフィンとのランダム共重合、ブロック共重合体等を挙げることができ、さらに詳しくは、結晶性ポリプロピレン樹脂として、通常の押出成形などで使用するn−へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体又はプロピレンを60重量%以上含有するポリプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を挙げることができ、このプロピレン単独重合体あるいはプロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を、単独又は混合して使用することができる。
ここで、n−ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn−ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150ppm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30PPm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
【0034】
プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体のα−オレフィン共重合成分としては、炭素数が2〜8のα−オレフィン、例えば、エチレンあるいは1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなどのC4以上のα−オレフィンが好ましい。
ここで共重合体とは、プロピレンに上記に例示されるα−オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましい。
上記理由から、使用するポリプロピレン系樹脂の230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)は、1.0〜15g/10分の範囲が好ましく、2.0〜10.0g/10分の範囲がより好ましい。
また、プロピレンと他のα−オレフィンとの共重合体を2種以上混合して使用することもできる。
またさらに、本発明で得られたフィルムを製品加工する際に出た屑フィルムを回収原料として再造粒し、基材層に添加することもできる。回収原料を使用することにより、生産コストを抑えることが可能である。
【0035】
本発明の粘着フィルムにおける粘着層の基材層に対する延展性は90%以上であることが好ましい。粘着層の延展性が低いと樹脂を置換する際に多大な時間がかかり、操業性が悪化する。また、粘着層を数μmオーダーで積層させる際にフィルムの幅方向に厚みムラが発生しやすくなるという問題がある。粘着層の延展性は90%以上であることが好ましく、93%以上であるとより好ましく、95%以上であると特に好ましい。
【0036】
本発明の粘着フィルムにおける粘着層の基材層に対する廻り込み率は3%以下であることが好ましい。粘着層の廻り込み率が高いとフィルム端部が粘着層のみとなり、製膜機に粘着する等のトラブルが発生し操業性が悪化する。粘着層の基材層に対する廻り込み率は2.5%以下であるとより好ましい。
【0037】
本発明の粘着フィルムにおける粘着層の厚さは、1μm以上、30μm未満であることが好ましい。
粘着フィルムの厚さが1μm未満であると、共押出による安定製膜が困難となり、30μm以上であると、コストの面で不利なフィルムとなる。
このとき、粘着力を大きくする場合は、その粘性を考慮し、厚みを大きくするのが好ましい。粘着層の厚みを大きくすることにより、被着体との接触面積が大きくなりやすい。
粘着層の厚さは、2μm以上、20μm以下であることが好ましく、さらに3μm以上、15μm以下が好ましく、特に4μm以上、8μm以下が好ましい。
【0038】
本発明の粘着フィルムにおける基材層の厚さは、5μm以上、100μm未満であることが好ましく、15μm以上、25μm未満であることがさらに好ましい。
粘着フィルムの厚さが5μm未満であると、腰感が弱くなり、保護フィルムとして被覆体に貼り付けた際にシワ等が入りやすく、粘着力が十分に得られないという問題があり、100μm以上であるとコストの面で不利なフィルムとなる。
【0039】
(離形層)
本発明の粘着フィルムは、基材層の片面に積層された粘着層とは反対面に離形層を形成するのが好ましい。そうすることよってブロッキングをさらに抑えることができる。
本発明の粘着層の樹脂組成を鑑みると、離型層表面の平均表面粗さSRaを0.40μm以上とするのが好ましい。表面の平均表面粗さはSRaで0.850μm以下となる様な表面にすることがさらに好ましく、さらに0.500μm以上、0.700μm以下が特に好ましい。
離形層の厚さは、1μm以上、30μm未満であることが好ましく、3〜10μmが特に好ましい。
【0040】
上記のような表面凹凸を形成するには、プロピレン−エチレンブロック共重合体を使用することによって、マット状に表面が荒れた層を形成することができる。また、ホモポリプロピレンにポリエチレン系樹脂を混合することによっても同様の効果が期待できる。加えて、プロピレン−エチレンブロック共重合体にポリエチレン系樹脂を混合することによりさらに表面が荒れた層を形成させることができる。
マット状の表面を得るのに好適な樹脂としては、具体的には日本ポリプロピレン(株)製「BC4FC」などのプロピレン−エチレンブロック共重合体を例示することが出来る。
【0041】
本発明の粘着フィルムはロールの形態とするのが取り扱いの上で好適である。
フィルムロールの幅および巻長の上限は特に制限されるものではないが、取扱いのしやすさから、一般的には幅1.5m以下、巻長はフィルム厚み30μmの場合に6000m以下が好ましい。また、巻取りコアとしては、通常、3インチ、6インチ、8インチ等のプラスチックコアや金属製コアを使用することができる。
また、加工の適性から長さ200m以上、幅450mm以上の寸法で巻き取ったフィルムロールであることが好ましい。
【0042】
本発明の粘着剤を使用した粘着フィルムは、特に、光学用途に用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部の外表面を保護するために好適にもちいることができる。また、合成樹脂板(例えば建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械および、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(たとえば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護する場合にも用いることができる。
【実施例】
【0043】
次に実施例をあげて本発明をさらに説明する。但し、本発明は、その要旨を逸脱しない限り下記の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における物性の評価方法は以下の通りである。
【0044】
(1)粘着層の基材層への延展性の評価
3層Tダイ(フィードブロック型、リップ幅850mm、リップギャップ1mm)内で粘着層樹脂を40mmφ単軸押出し機にて15Kg/時の吐出量で、基材層樹脂を90mmφ単軸押出し機にて15Kg/時の吐出量で、離型層樹脂を60mmφ単軸押出し機にて5Kg/時の吐出量でそれぞれ共押出しする。押出したフィルムを温度30℃のキャスティングロールへ20m/分速度で引取ることにより、650mm幅の未延伸フィルムが得られる。粘着層樹脂を40mmφ単軸押出し機に投入し、その樹脂の代わり始めから30分経過後の基材層への粘着層の延展率を測定した。
延展率=粘着層の積層幅(mm)/650(mm)×100(%)
【0045】
(2)粘着層の基材層への廻り込み性の評価
3層Tダイ(フィードブロック型、リップ幅850mm、リップギャップ1mm)内で粘着層樹脂を40mmφ単軸押出し機にて15Kg/時の吐出量で、基材層樹脂を90mmφ単軸押出し機にて15Kg/時の吐出量で、離型層樹脂を60mmφ単軸押出し機にて5Kg/時の吐出量でそれぞれ共押出しする。押出したフィルムを温度30℃のキャスティングロールへ20m/分速度で引取ることにより、650mm幅の未延伸フィルムが得られる。粘着層樹脂を40mmφ単軸押出し機に投入し、その樹脂の代わり始めから120分経過後の基材層への粘着層のフィルム幅方向の両端の廻り込み率を測定した。
廻り込み率=粘着層がフィルム幅方向の両端に廻り込んだ幅(mm)/650(mm)×100(%)
【0046】
(3)粘着性の評価
JIS−Z−0237(2000)粘着テープ・粘着シート試験方法に準拠して下記の方法にて測定した。
被着体として、アクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト3mm厚)50mm×150mm、表面処理状態の異なる2種類のプリズムシート(レンズ部は三角柱からなり、三角柱の高さは25μm、三角柱の幅は50μm)50mm×150mmを準備し、試験片として、フィルム製造時の巻き取り方向に150mm、それとは直交する方向に25mmの試験片を切り出し、質量2000gのゴムロール(ローラ表面のスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのもの)を用いて、被着体と試験片を5mm/秒の速さで、1往復させて圧着した。圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置したものを(株)島津製作所製「オートグラフ」(AGS−J)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を粘着力[cN/25mm]とした。180度剥離とは、剥離時の抵抗値を測定する際のアクリル板とフィルムの剥離角度を180度に保持することを意味する。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ25mm×170mmのポリエステルシートを準備し、上記、粘着フィルムとアクリル板を圧着した測定試料の粘着フィルム側の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定試料の模式図を図1に示す。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの粘着力とした。
【0047】
(4)耐ブロッキング性の評価
耐ブロッキング性の評価として、下記のように粘着フィルムの離形層と粘着層の剥離力を測定した。
アクリル板(三菱レイヨン(株)製:アクリライト3mm厚)50mm×150mm全面に両面接着テープ(日東電工(株)製:No535A)を貼付け、両面接着テープの他面に試験片の粘着面が来るように150mm(フィルム製造時の巻き取り方向)×50mm(フィルム製造時の巻き取り方向とは直交方向)試験片を貼付けた。
新たに試験片として、フィルム製造時の巻き取り方向に150mm、それとは直交する方向に25mmの試験片を切り出し、その粘着面とアクリル板に両面接着テープを介し貼付けた試験片の離型面を重ね合わせた後、質量2000gのゴムロール(ローラ表面のスプリング硬さ80Hs、厚さ6mmのゴム層で被覆された、幅45mm、直径(ゴム層を含む)95mmのもの)を用いて、離型面と試験片を5mm/秒の速さで、1往復させて圧着した。圧着後、温度23℃、相対湿度65%の環境下で30分放置したものを(株)島津製作所製「オートグラフ」(AGS−J)を用いて、300mm/分の速度で180度剥離した際の抵抗値を剥離力[cN/25mm]とした。
測定の際は測定試料のつかみ代として厚み190μm、サイズ25mm×170mmのポリエステルシートを準備し、150mm×25mmの試験片の端に、のり代15mmの幅でセロハンテープにて貼り付けて、測定の際のつかみ代とした。測定は一つのサンプルに関して3回実施し、その平均値をそのサンプルの剥離力とした。
【0048】
(5)平均表面粗さの測定
(株)小阪研究所製の接触式三次元中心面表面粗計(型式ET−30HK)を用いて、離型層の表面の中心面平均粗さ(SRa)を次の条件で触針法により測定した。条件は下記の通りであり、3回の測定の平均値をもって値とした。
触針先端半径:0.5μm
触針圧:20mg
カットオフ値:80μm
測定長:1000μm
測定速度:100μm/秒
測定間隔:2μm
【0049】
(6)取り扱い性
得られたフィルムをロールとし、ロールからフィルムを繰出す際にフィルムの抵抗が小さいものを○、大きいものを×とした。
【0050】
[実施例1]
(基材層の作成)
ポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)100wt%を90mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして基材層とした。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)8.8重量部と石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)8.8重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
(離型層の作成)
プロピレン−エチレンブロックコポリマー(日本ポリプロピレン製:BC4FC)100wt%を65mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして離型層とした。
(フィルムの作成)
基材層、粘着層、離型層それぞれが各押出し機にて溶融された状態のまま、250℃の3層Tダイ(フィードブロック型、リップ幅850mm、リップギャップ1mm)内で積層押出しを行った。押出したフィルムを温度30℃のキャスティングロールへ20m/min速度で引取り、冷却固化して基材層厚みが18μm、粘着層厚みが6μm、離型層厚みが6μmの3種3層未延伸フィルムを得た。
【0051】
[実施例2]
粘着層、離型層は実施例1のまま、基材層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(基材層の作成)
ホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FLX80E4、MFR:7.5g/10min)100wt%を90mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして基材層とした。
【0052】
[実施例3]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)3.2重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)3.2重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0053】
[実施例4]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)8.8重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:WF836DG3:、MFR:7.0g/10min)8.8重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0054】
[実施例5]
離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)5.7重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)8.0重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
(基材層の作成)
ホモポリプロピレン樹脂(住友化学社製:FLX80E4、MFR:7.5g/10min)100wt%を90mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして基材層とした。
【0055】
[比較例1]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)17.6重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0056】
[比較例2]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)21.4重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)21.4重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0057】
[比較例3]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)17.6重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0058】
[比較例4]
離型層は実施例1のまま、粘着層と基材層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)17.6重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
(基材層の作成)
ホモポリプロピレン樹脂(住友化学製:FLX80E4、MFR:7.5g/10min)100wt%を90mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして基材層とした。
【0059】
[比較例5]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)6.4重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0060】
[比較例6]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)6.3重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)18.8重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0061】
[比較例7]
基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1221、スチレン共重合比12wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)18.8重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:WF836DG3、MFR:7.0g/10min)6.3重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0062】
[比較例8] 基材層、離型層は実施例1のまま、粘着層を下記の内容に変更して、実施例1と同様の製法で3種3層の未延伸フィルムを得た。
(粘着層の作成)
スチレン系エラストマー(旭化成ケミカルズ製:タフテックH1062、スチレン共重合比18wt%、MFR:4.5g/10min)100重量部に対して、石油樹脂(荒川化学製:アルコンP125)8.8重量部とポリプロピレン系樹脂(住友化学製:FS2011DG3、MFR:2.5g/10min)8.8重量部を混合したものを、40mmφ単軸押出し機にて溶融押出しして粘着層とした。
【0063】
上記結果を表1、2、3に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
【表2】

【0066】
【表3】

【0067】
表1から明らかなように実施例1〜5で得られたフィルムは、フィルム製膜時の延展性が良好で、保護フィルムとして使用した際に実用上充分な粘着力を有し、フィルムをロールとした際の取り扱い性も良好であった。
【0068】
一方、比較例1及び4及び7で得られたフィルムは、フィルム製膜時の延展性が不充分であり、粘着層の回り込みが発生し、製膜性が必ずしも良好とは言えない結果なった。また、フィルムをロールとした際の取り扱い性に関しても必ずしも良好とは言えない結果なった。比較例2及び3及び6及び8で得られたフィルムは、被覆体であるプリズムシートに粘着力を示さず、実用上必要な粘着力を有していない結果となった。比較例5で得られたフィルムはフィルムをロールとした際の取り扱い性に関しても必ずしも良好とは言えない結果なった。このように比較例で得られたフィルムはいずれも品質が劣り、実用性が低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の粘着剤は、特に光学用途に用いられているプリズムシートのプリズム型のレンズ部の外表面を保護するための粘着フィルムに好適にもちいることができる。
また、合成樹脂板(例えば建築資材用)、ステンレス板(例えば、建築資材用)、アルミ板、化粧合板、鋼板、ガラス板、家電製品、精密機械および、製造時の自動車ボディーの表面を保護するため、物品を積み重ねたり、保管したり、輸送したり、製造工程で搬送する際の傷付きから保護するため、ならびに、物品を二次加工する(たとえば、曲げ加工やプレス加工)際の傷付きから保護する場合にも好適に用いることができ、産業界に寄与することが大である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】測定試料の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン成分が5〜15重量%であり、スチレン系重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックとのブロック共重合体、スチレン系重合体ブロックとスチレンとオレフィンのとのランダム共重合体ブロックとのブロック共重合体、及びまたはこれらの水素添加物を主成分としてなるスチレン系エラストマー100重量部に対して、粘着付与樹脂2重量部以上、10重量部未満、ポリオレフィン系樹脂2重量部以上、10重量部未満を含む樹脂組成物からなることを特徴する粘着性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着性樹脂組成物を、ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の片面に積層されてなることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項3】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層の粘着性樹脂組成物からなる粘着層とは反対面に離型層とが積層されてなることを特徴とする請求項2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂を主成分とする基材層、粘着性樹脂組成物からなる粘着層、離型層とが共押出により積層されてなることを特徴とする請求項3に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着層中のスチレン系エラストマーの230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が0.5〜10g/10分である請求項2〜4に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記基材層中のポリプロピレン系樹脂の230℃・2.16Kgfにおけるメルトフローレート(MFR)が1.0〜15g/10分である請求項2〜5に記載の粘着フィルム。
【請求項7】
プリズムシート被覆用である請求項2〜6に記載の粘着フィルム。
【請求項8】
自己粘着性である請求項2〜7に記載の粘着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2012−131978(P2012−131978A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238933(P2011−238933)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】