説明

粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置

【課題】ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮できる粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置を提供する。
【解決手段】水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)と、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、置換基を有する3級イミダゾール(C)とを含む粘着剤組成物を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置に関する。
【0002】
(メタ)アクリル系共重合体を用いた粘着剤は、たとえば両面テープや付箋等の事務用品、自動車や家電製品等の工業製品などさまざまな分野で使用されている。これは、粘着剤に含まれる(メタ)アクリル系共重合体の組成を設計することにより、粘着特性に代表される特性を容易に制御できるためである。また、(メタ)アクリル系共重合体は透明性に優れるため光学用途に用いられる。
【0003】
液晶表示装置は、通常、所定の方向に配向した液晶成分をガラス等の2枚の支持基板の間に挟持した液晶セルと、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム等の光学フィルムとから構成されている。光学フィルム同士の積層や、光学フィルムと液晶セルとの貼着には粘着剤が使用されている。このような粘着剤は、基材への接着性に加え、透明性、光学フィルムへの応力集中時の光漏れ防止等の光学特性が求められる。
【0004】
液晶表示装置は、パーソナルコンピューターやテレビジョン(TV)、カーナビゲーション等の表示装置として広範囲に使用されている。光学フィルムは、高温や高湿環境下において、収縮、膨張しやすいため、通常の粘着剤を光学フィルムに用いると、発泡や剥がれなどの外観不良が生じやすい。そのため、光学フィルムに用いられる粘着剤には高温、高湿条件下においても外観不良が生じることがないことが求められる。
【0005】
このような粘着剤は、接着性、光学特性および高温、高湿条件下における外観不良を抑制するため、アクリル系樹脂が用いられている。特にアクリル系樹脂の組成にカルボキシル基を含むことが接着性能向上のために好ましい。粘着剤は粘着剤の凝集力を制御して使用する。
【0006】
粘着剤を有する光学フィルムは、たとえば次のように製造する。まず、アクリル系共重合体を含む樹脂組成物に架橋剤を所定量加えて混合し、粘着剤とする。次に、剥離シート上に粘着剤を塗工し、乾燥後、粘着剤を塗工した剥離シートの粘着剤面と光学フィルムとを貼り合わせ、粘着剤を有する光学フィルムとする。粘着剤の架橋反応が十分進行するまで養生させた後、粘着剤を有する光学フィルムを、所定の大きさに切断、打ち抜き等加工して、表示装置などに組み込んで使用する。養生時間が不十分で架橋反応が十分に進行していないと、粘着剤を有する光学フィルムは、切断や打ち抜き等加工した際に、刃に粘着剤の付着が発生する。この付着した粘着剤が光学フィルムに転着することで、光学フィルムを汚す不具合が発生する。粘着剤を有する光学フィルムの加工作業時間は、粘着剤の養生時間に負うところが大きいため、養生時間の短縮が求められる。一方、架橋反応が早すぎる場合、粘着剤の粘度が上昇し、塗工作業ができなくなる。また、粘度の高い粘着剤を塗工できたとしても、スジ状の欠陥が発生し、粘着剤を有する光学フィルムの光学特性を損なうことが懸念される。光学特性等に支障なく塗工作業ができる時間をポットライフと呼ぶ。このように、架橋反応を適切に制御し、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮できる粘着剤が求められている。
【0007】
たとえば下記特許文献1には、イソシアネート系架橋剤と、架橋促進剤としてアミノ基を有する化合物や、ジブチルスズジラウレートを用いたアクリル系粘着剤が開示されている。この公報によれば、具体的にはイソシアネート系架橋剤であるトリレンジイソシアネートと、架橋促進剤であるジブチルスズジラウレート、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、またはDBU(R)−フェノール塩を用いたアクリル系粘着剤が開示されている。この公報によれば、このアクリル系粘着剤は、光漏れを改善するとともに、架橋促進剤を添加することで、架橋反応の時間を短縮している。
【0008】
しかし、特許文献1に記載のアクリル系粘着剤の養生時間は、たとえば72時間程度であり、改善の余地がある。さらに、養生時間を短縮させようとすると、ポットライフが短くなる不具合がある。架橋促進剤にジブチルスズジラウレートを用いることは、環境を汚染する問題があるとともに、たとえばシランカップリング剤使用時に望ましくない反応を促進させるため、粘着剤の接着性、および耐久性に問題が発生する。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-138057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮することができる粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置を提供することである。

【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の発明者は、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体と、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物と、3級イミダゾールとを粘着剤組成物に用いることで、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮した粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置を提供できることを見出した。

【発明の効果】
【0012】
本発明の粘着剤組成物を用いることで、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮することができる。
【0013】
また、粘着剤組成物の養生時間が短縮するため、切断や打ち抜き等の加工作業時間を短縮できる光学フィルム、およびそれを用いた液晶表示装置を提供できる。

【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の実施形態のひとつである粘着剤組成物を説明する。
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)と、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、3級イミダゾール(C)とを含むことを特徴とするものである。
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を含む。前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とした共重合体の少なくとも1種からなる。ここで、(メタ)アクリル系モノマーを主成分とした共重合体とは、構成するモノマー100質量%に対し、(メタ)アクリル系モノマーが50質量%以上であることを示す。
【0017】
以下、本発明において、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を、単に(メタ)アクリル系共重合体(A)と称することがある。
【0018】
なお、本発明において(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルの少なくとも一方を、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタアクリレートの少なくとも一方を意味する。
【0019】
本発明の粘着剤組成物は、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)を含むため、(メタ)アクリル系共重合体が有する反応性官能基と、後述するイソシアネート化合物とが架橋反応する。したがって、粘着剤組成物の凝集力があがり、優れた粘着特性を示す。
【0020】
本発明の(メタ)アクリル系共重合体(A)は、水酸基、カルボキシル基、アミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、(メタ)アクリル系モノマーなどと共重合することにより得ることができる。
【0021】
本発明において、これらの前記反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーは、それぞれ1種類のみを用いることができる。また、反応性官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーを2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0022】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系モノマーは、
たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、i-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-オクチルアクリレート、i-オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、n-ノニルアクリレート、i-ノニルアクリレート、n-デシルアクリレート、n-ドデシルアクリレート、ステアリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、およびイソボルニルアクリレートのアクリル酸等の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステル;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、i-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、n-ドデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびイソボルニルメタクリレートのメタクリル酸等の炭素数1〜18の直鎖もしくは分枝アルキルエステル、更にはこれらの各種誘導体を例示できる。
【0023】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、共重合成分としてカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを共重合成分として含むことで、接着性能と基材密着性能、粘着剤の凝集力が向上し、たとえば本発明の粘着剤組成物を液晶表示装置の偏光フィルムに用いた際、耐久性が優れる。
【0024】
本発明に用いることのできる前記カルボキシル基(メタ)アクリル系含有モノマーは、
たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フマル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,2-ジカルボキシシクロヘキサンモノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ダイマー、およびω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)
アクリレート、を例示できる。
【0025】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、共重合成分として水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。前記水酸基(メタ)アクリル系含有モノマーを共重合成分として含むことで、粘着剤の凝集力が向上し、たとえば本発明の粘着剤組成物を液晶表示装置の偏光フィルムに用いた際、光漏れを抑制でき、かつ耐久性が向上する。
【0026】
本発明に用いることのできる前記水酸基含有(メタ)アクリル系モノマーは、
たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-メチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,1-ジメチル-3-ブチル(メタ)アクリレート、1,3-ジメチル-3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-3-ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-3-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)
アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド、アリルアルコール、およびメタリルアルコール、を例示できる。
【0027】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、共重合成分として芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーを共重合成分として含むことが可能である。本発明の粘着剤組成物を、偏光フィルムの接着に用いる際、光漏れが抑制できるため、芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことが好ましい。
【0028】
本発明に用いることのできる芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーは、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性クレゾール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、およびビフェニル(メタ)アクリレートを例示できる。前記芳香族環を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることで光漏れが抑制できる。
【0029】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、共重合成分としてアミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーを含むことが可能である。アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーを共重合成分として含むことによって、本発明の粘着剤組成物は更に養生時間を短縮することができる。アミノ基含有(メタ)アクリル系モノマーは、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、およびビニルピリジン、を例示できる。
【0030】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)は、共重合成分として(メタ)アクリル系モノマー以外のモノマーを含むことができる。このようなモノマーは、たとえば、スチレン、αーメチルスチレン、tーブチルスチレン、pー クロロスチレン、クロロメチルスチレン、およびビニルトルエン等の芳香族モノビニル単量体;例えば、アクリロニトリル、およびメタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、およびバーサチック酸ビニル等、ならびにこれらの各種誘導体を例示することができる。
【0031】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、および懸濁重合などの公知の方法により重合できる。重合により得られた前記(メタ)アクリル系共重合体(A)を用いて本発明の粘着剤組成物を製造する際、処理工程が簡単で且つ短時間で行えることから、前記重合方法は溶液重合が好ましい。溶液重合は、一般に、重合槽内に所定の有機溶媒、モノマー、重合開始剤、および必要に応じて用いられる連鎖移動剤を仕込み、窒素気流中又は有機溶媒の還流温度で、撹拌しながら数時間加熱反応させるなど、公知の方法を例示できる。
【0032】
本発明に用いることのできる前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は、とくに制約はないが、70万〜200万の範囲が好ましい。重量平均分子量は、重合反応温度、時間、有機溶媒の量などにより調節することができる。重量平均分子量が前記の範囲であれば、本発明の粘着剤組成物の塗工時取扱性を適正に保つことができる。
【0033】
本発明に用いることのできるイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、たとえば、トリレンジイソシアネートを構成単位とするポリイソシアネートを例示できる。ここで、トリレンジイソシアネートを構成単位とする、とは、たとえば後述するトリレンジイソシアネートの環状構造のように、トリレンジイソシアネートを原料とするポリイソシアネートを意味する。
【0034】
前記トリレンジイソシアネートとしては、たとえば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
本発明に用いることのできる前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、たとえば式(II)で表されるトリレンジイソシアネートの環状3量体構造、および式(III)で表されるトリレンジイソシアネートの環状5量体構造を例示できる。本発明に用いることのできる前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、環状3量体、環状5量体、環状7量体、およびそれらの誘導体であるトリレンジイソシアネートのポリイソシアネート、ならびにそれらの混合物を好適に用いることができる。さらに、本発明では、イソシアヌレート変性でトリレンジイソシアナートとヘキサメチレンジイソシアネートとを含むポリイソシアネート、も好適に用いることができる。
【0036】
式(II):
【化2】

【0037】
式(III):
【化3】

【0038】
式(II)および式(III)の表記において、R11〜R25は、水素原子またはメチル基を表す。R11〜R13のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R14〜R16のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R17〜R19のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R20〜R22のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R23〜R25のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。たとえば、R11はメチル基、R12とR13はそれぞれ水素原子の組み合わせを例示できる。
【0039】
本発明に用いることのできる前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、住友バイエルウレタン株式会社製 商品名「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」、「スミジュールFL−2」、「スミジュールFL−3」、「スミジュールFL−4」、および「SBUイソシアネート0817」、日本ポリウレタン工業株式会社製 商品名「コロネート2037」、ならびにSAPICI社製 商品名「Polurene KC」、および「Polurene HR」など、市販されているものを好適に使用することができる。
【0040】
たとえば、本発明に用いることのできる前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)のかわりに、イソシアヌレート変性ではないトリレンジイソシアネートや、イソシアヌレート変性のヘキサメチレンジイソシアネートを用いても、粘着剤組成物の養生時間の短縮効果は十分ではない。
【0041】
本発明の効果を損なわない範囲で、前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)に加えて他の架橋剤を併用することができる。たとえば、他の架橋剤としてイソシアヌレート環と芳香族環を有するイソシアネート化合物(B)以外のイソシアネート架橋剤、およびエポキシ架橋剤を例示することができる。
【0042】
本発明の粘着剤組成物は、前記アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)を0.1〜1質量部含むことが好ましい。好ましくは、0.1〜0.75質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。本発明の粘着剤組成物は、前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)を0.1質量部以上含むことで、架橋が十分進み、適切な凝集力が得られ、接着性、および耐久性に優れる効果がより得られるため好ましい。また、本発明の粘着剤組成物は、前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)を1質量部以下含むことで、粘着剤組成物の塗工中にゲルの発生、粘度の増大が起こりにくくなる、すなわちポットライフを適正に維持できるため好ましい。
【0043】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)の構造は、イミダゾール構造をもち、かつ分子中のイミダゾール環の窒素原子が直接水素原子と結合しない構造をもつ。
【0044】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)の構造は、式(I)で示す構造で表される3級イミダゾール構造を例示できる。ここで、式(I)中、R1〜R4は置換基を表す。
【0045】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)は、好ましくは式(I)中の置換基で、R1、R2、およびR4は、水素原子、アルキル基、アリール基、R3はアルキル基、アリール基である3級イミダゾールを例示できる。
【0046】
式(I):
【化1】

【0047】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)の構造は、好ましくは式(IV)で示す構造で表される3級イミダゾール構造を例示できる。ここで、式(IV)中で、R1とR2、およびR3とR4は互いに連結して環状構造を形成する。
【0048】

式(IV):
【化4】

【0049】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)は、式(V)で表される1、2−ジメチルイミダゾール、式(VI)で表される1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、および式(VII)で表される1-ベンジル-2−フェニルイミダゾール、からなる群から選択される3級イミダゾールを1種以上含むことが、養生時間短縮のため好ましい。
【0050】
式(V):
【化5】

【0051】
式(VI):
【化6】

【0052】
式(VII):
【化7】

【0053】
本発明に用いることのできる3級イミダゾール(C)は、式(VIII)で表される2、3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾールであることが、養生時間短縮のため好ましい。
【0054】
式(VIII):
【化8】

【0055】
本発明に用いることのできる前記3級イミダゾール(C)は、たとえば四国化成株式会社製 「キュアゾール 1,2DMZ」、「キュアゾール 1B2MZ」、「キュアゾール 1B2PZ」、および「キュアゾール TBZ」など、市販されているものを好適に使用することができる。
【0056】
本発明に用いることのできる前記3級イミダゾール(C)は、揮発性が低く臭気が少ないため好ましい。
【0057】
本発明において、前記3級イミダゾール(C)を用いることで、ポットライフは適正に維持することができる。本発明に用いる前記3級イミダゾール(C)のかわりに、たとえばイミダゾール環にNH基を有する2級イミダゾールを用いた場合、架橋反応が急速に進行するため、養生時間が極端に短くなる。2級イミダゾールを用いた際のように、架橋反応が急速に進行すると、粘着剤組成物の塗工時に粘度が上昇するため、塗工できなくなるなど粘着剤組成物の取扱性は低下し、ポットライフは短くなる。
【0058】
本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、前記3級イミダゾール(C)0.05〜0.5質量部を含むことが好ましい。本発明の粘着剤組成物は、前記3級イミダゾール(C)を0.05質量部以上含むことで、架橋が十分進み、適切な凝集力が得られ、接着性、および耐久性に優れるため好ましい。また、本発明の粘着剤組成物は、前前記3級イミダゾール(C)を0.5質量部以下含むことで、粘着剤組成物の塗工中にゲルの発生、粘度の増大が起こらない、すなわちポットライフを適正に維持できるため好ましい。
【0059】
本発明の発明者は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、3級イミダゾール(C)とを組み合わすことで、粘着剤組成物の光学性能を維持し、養生時間を短縮できるとともに、粘着剤組成物の架橋反応の進行を適正に制御することを見出した。具体的には、従来少なくとも72時間必要であった粘着剤組成物の養生時間が、23℃、RH50%の環境下でも24時間以内に短縮できる。また、前記3級イミダゾール(C)を用いることで、粘着剤組成物の架橋反応の進行を適正に制御することが可能となり、塗工時の粘度をほぼ一定に保つことができる。
【0060】
本発明において、光学特性を損なわず塗工作業ができる時間をポットライフと呼ぶ。塗工作業ができるとは、架橋反応の進行に伴う粘度上昇がおきず、塗工が安定して行えること、または、光学フィルムの光学特性を損なうことなく塗工できることである。たとえば、粘着剤組成物の塗工品が偏光フィルムの場合、塗工作業中に粘度上昇が起きなくても、スジ状の欠陥により偏光フィルムの光学特性を損なうことが懸念される。
【0061】
本発明の粘着剤組成物は、たとえば架橋反応が十分進行するまで養生させた後、粘着剤組成物を有する偏光フィルムを、所定の大きさに切断、打ち抜き等加工して、表示装置などに組み込んで使用する。養生時間が不十分で架橋反応が十分に進行していないと、粘着剤組成物を有する偏光フィルムは、切断や打ち抜き等加工した際に、刃に粘着剤組成物の付着が発生する。この付着した粘着剤組成物が偏光フィルムに転着することで、偏光フィルムを汚す不具合が発生する。粘着剤組成物を有する偏光フィルムを用いた加工作業は、粘着剤組成物の養生時間に負うところが大きいため、養生時間の短縮が求められる。一方、架橋反応が早すぎる場合、粘着剤組成物の粘度が上昇するなどポットライフは短い。本発明の粘着剤組成物は、架橋反応を適切に制御することで、ポットライフの維持と、従来よりも養生時間の短縮とを両立し優れた特性を示す。
【0062】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と
、前記3級イミダゾール(C)との他に、本発明の効果を損なわない範囲内の量で、従来公知の各種添加剤、溶剤、耐候性安定剤、シランカップリング剤、タッキファイヤ−、可塑剤、軟化剤、帯電防止剤、染料、顔料、および無機充填剤などを適宜配合することができる。たとえば、シランカップリング剤を含むことにより、本発明の粘着剤組成物と液晶セル間の密着性がより良好となる。
【0063】
本発明の形態の一つである光学フィルムは、本発明の粘着剤組成物を粘着剤層に有する光学フィルムである。具体的には、剥離シート上に前記粘着剤組成物を塗工し、粘着剤層を形成後、剥離シートと粘着剤層を光学フィルムに積層して得られる、剥離シート/粘着剤層/光学フィルムの構成の積層物である。剥離シート上への前記アクリル系粘着剤層の形成は、本発明の粘着剤組成物を剥離シート上に塗工し、乾燥させることで行うことができる。本発明の光学フィルムは、光学性能を維持するとともに、養生時間の短い粘着剤組成物を用いるため、塗工の後工程である切断や打ち抜き加工までの時間短縮を図ることができる。なお、本発明の光学フィルムの種類は、たとえば偏光フィルムを例示できる。偏光フィルム以外には、防眩フィルム、配向フィルム、偏光層保護フィルム、位相差フィルム、視野角向上フィルム、輝度向上フィルム、および電磁波シールドフィルムなどに使用できる。また、タッチパネル用途の各種フィルムにも使用できる。
【0064】
本発明の形態の一つである液晶表示装置は、前記光学フィルムを用いた液晶表示装置である。本発明の液晶表示装置は、たとえば光学フィルムとして偏光フィルムを用いた際に、光漏れを抑制し、優れた光学性能を示す。
【0065】
本発明の粘着剤組成物を剥離シート上に塗工する方法は特に制約はないが、たとえばコンマロールコーター、バーコーター、ダイロールコーター、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、ナイフコーター、スピンコーター、およびスプレーコーターを用いた塗工方法を例示できる。
【0066】
前記剥離シートは、合成樹脂シート、および紙等を、フッ素系樹脂、パラフィンワックス、およびシリコーン等の離型剤で離型処理したものを例示できる。
【0067】
前記剥離シート上に形成される前記粘着剤層の厚さは、たとえば乾燥後で1〜100μm、好ましくは5〜50μm
、さらに好ましくは15〜30μm程度の厚さである。
【0068】
前記剥離シート上に塗工した本発明の粘着剤組成物は、たとえば熱風乾燥機で70〜120℃
、1〜3分加熱し、乾燥および架橋を行うことができる。
【0069】
本発明において、養生時間の判定は、ゲル分率測定によって行う。
【0070】
本発明の別の実施形態は、粘着剤組成物を用いた光学フィルム、および液晶表示装置である。本発明の粘着剤組成物を用いた光学フィルム、および液晶表示装置は、粘着剤組成物の養生時間が短縮するため、切断、打ち抜き、および組み込み等の加工作業時間を短縮できる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明の効果を具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例および比較例における、試験片の作製方法、各種の試験及び評価方法は以下のとおりである。
【0072】
(1)試験用偏光フィルムの作製
シリコーン系離型剤で表面処理された離型紙上に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmとなるように、粘着剤組成物を塗工し、100℃で90秒間熱風循環式乾燥機にて乾燥して粘着剤層を形成した後、偏光ベースフィルム〔ポリビニルアルコール(PVA)フィルムを主体とする偏光子の両面に、セルローストリアセテート(TAC)フィルムをラミネートしたもの;約190μm〕の裏面を粘着剤層面と貼り合せ、加圧ニップロールに通して圧着した後、23℃×50%RHの条件で養生させて偏光フィルムを得る。
【0073】
(2)養生時間判定方法
(メタ)アクリル系共重合体(A)に、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、3級イミダゾール(C)と、必要に応じ各種添加剤、各種溶媒とを加え、粘着剤組成物の溶液をシリコーン系離型剤で表面処理した剥離フィルム上に、乾燥後厚み25μmとなるようにフィルム状の粘着剤層を作成した。次に、作製した粘着剤層を23℃×50%RH環境下で保管し、保管開始から24時間と168時間とのゲル分率の測定を実施した。養生時間のゲル分率を168時間後のゲル分率と比較し、ゲル分率の差が3%以内になった場合を養生終了とみなした。
評価基準は次の通りである。
○:養生24時間後と168時間後のゲル分率の差が3%以内である。
×:養生24時間後と168時間後のゲル分率の差が3%を超える。
【0074】
ゲル分率は、下記方法により測定する。
1、精秤した250メッシュの金網(100mm×100mm)にフィルム状粘着剤層を約0.25g貼付し、ゲル分が漏れないように包む。その後、精密天秤にて質量を正確に測定して試料を作製する。
2、前記の金網を酢酸エチル溶液に3日間浸漬する。
3、浸漬後、金網を取り出して少量の酢酸エチルにて洗浄し、120℃で24時間乾燥
させる。その後、精密天秤にて質量を正確に測定する。
4、下式によりゲル分率を計算する。
ゲル分率(質量%)=(Z−X)/(Y−X)×100
但し、Xは金網の質量(g)、Yは粘着剤を貼付した金網の質量(粘着剤重量)(g)、Zは浸漬後、乾燥させた金網の質量(ゲル樹脂質量)(g)である。
【0075】
(3)耐久性の評価
配合後3時間時間以内に「(1)試験用偏光フィルムの作製」の方法を用いて作製した偏光フィルムを、吸収軸に対して長辺が45゜になるようにカットした140mm×260mm(長辺)の試験片を用い、0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の片面にラミネーターを用いて貼付した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、次の温度、及び湿度条件下(80℃、60℃×90%RH)に500時間放置し、発泡、剥れや浮きの状態を目視観察にて評価した。
評価基準は次の通りである。
◎:発泡、剥れが全く見られない
○:発泡が殆ど見られない、2辺において外周端部から0.5mm以上の位置に剥れが無いもの。
×:発泡が顕著に見られる、2辺において外周端部から0.5mm以上の位置に剥れがあるもの。
【0076】
(4)光漏れの評価試験
配合後30分以内で「(1)試験用偏光フィルムの作製」の方法を用いて作製した偏光フィルムを、「(3)耐久性の評価」と同様のサイズの粘着剤層を有する偏光フィルムを0.7mmコーニング社製無アルカリガラス板「#1737」の両面にラミネーターを用いてその偏光軸が互いに直交するように貼付した試験サンプルを作製した。次に、このサンプルにオートクレーブ処理(50℃、5kg/cm2、20分)を施し、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、80℃、ドライの条件下に500時間、放置した。放置後、23℃、50%RHの条件下で均一光源を使用し、光漏れ状態を目視により監察した。評価基準は次の通りである。
○:光漏れがほとんど認められない。
×:光漏れが大きい。
【0077】
(5)ポットライフ性試験
(メタ)アクリル系共重合体(A)に、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、3級イミダゾール(C)と、必要に応じ各種添加剤、各種溶媒とを加えた配合液とを23℃、50%RHの条件下で放置した。放置した配合液を「(1)試験用偏光フィルムの作製」と同様にフィルムを作成した。また、その作製したフィルムを「(3)耐久性の評価」と同様に試験した。評価基準は次の通りである。
◎:配合から12時間後の塗工作業性は良好であり、スジ状の欠陥は見られない。
○:配合から6時間後の塗工作業性は良好であり、スジ状の欠陥は見られないが、
配合から12時間後の塗工作業性は悪く、塗工面にスジ状の欠陥が見られる。
△:配合から3時間後の塗工作業性は良好であり、スジ状の欠陥は見られないが、
配合から6時間後の塗工作業性は悪く、塗工面にスジ状の欠陥が見られる。
×:配合から3時間後の塗工作業性は悪く、塗工面にスジ状の欠陥が見られる。
【0078】
((メタ)アクリル系共重合体(A)の製造)
(製造例1)
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器内に、n−ブチルアクリレート(BA)99.5質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)0.5質量部、酢酸エチル(EAc)100質量部、およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を入れ、前記反応容器の空気を窒素ガスで置換した。その後、攪拌下に窒素雰囲気中で、前記反応容器の内容物温度を65℃に昇温させて6時間反応させ、更に70℃に昇温させて2時間反応させた。次に、EAc20質量部にAIBN0.4質量部を溶解させた溶液を1時間かけて滴下し、更に2時間反応させた。反応終了後、反応混合物をトルエンで希釈し、固形分22.68質量%の(メタ)アクリル系共重合体(A)溶液を得た。(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は152万であった。
【0079】
(製造例2〜4)
表1に(メタ)アクリル系共重合体(A)の各製造例の共重合組成および特性値をまとめた。製造例1で使用した(メタ)アクリル系共重合体(A)のかわりに、組成を表1の各製造例に示したモノマー組成とした以外は製造例1と同様にして重合を行った。表1に、各製造例の(メタ)アクリル系共重合体(A)組成、固形分、および重量平均分子量(Mw)を示した。
【0080】
【表1】

【0081】
(粘着剤組成物の製造)
(実施例1)
(メタ)アクリル系共重合体(A)として製造例1で合成した(メタ)アクリル系共重合体100質量部、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)としてコロネート2037 0.15質量部(日本ポリウレタン社製ポリイソシアネート化合物)、3級イミダゾール系(C)として1-ベンジル-2-メチルイミダゾール0.1質量部(四国化成株式会社製 イミダゾール化合物、商品名1B2MZ)、およびエポキシ基含有シランカップリング剤0.1質量部(信越化学株式会社製シラン化合物、商品名KBM-403)を十分に攪拌混合して粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を目視したところ、濁りがなく、透明性が十分にあることを確認した。
【0082】
(実施例2〜12、比較例1〜9)
表2に示した実施例、および比較例の配合組成にした以外は実施例1と同様にして粘着剤組成物を作製した。表2中の質量部は固形分換算である。得られた粘着剤組成物はいずれも、目視したところ、濁りがなく、透明性が十分にあることを確認した。
【0083】
(粘着剤組成物を用いた光学フィルムの評価)
得られた粘着剤組成物を用いて、上述した試験用光学フィルムの作製方法により試験用光学フィルムを作製後、上述した各種測定、評価を実施した。実施例、および比較例の評価結果を表2に示す。
【0084】
実施例1〜12の粘着剤組成物を用いた光学フィルムの作製において、粘着剤の塗工時に粘度の上昇による塗工性低下は見られず、また、光学フィルムにスジ状の欠陥がなくポットライフは適正であった。
【0085】
【表2】

【0086】
表2中の各化合物の詳細は以下のとおりである。
コロネート2037 :日本ポリウレタン社製 ポリイソシアネート化合物(イソシアヌレート変性TDI)
コロネートL :日本ポリウレタン社製 ポリイソシアネート化合物(トリメチロールプロパン変性TDI)
デスモジュールHL :住化バイエルウレタン社製 ポリイソシアネート化合物(イソシアヌレート変性TDI)
E-405-80T :旭化成ケミカルズ社製 ポリイソシアネート化合物(HMDI)
TPA-100 :旭化成ケミカルズ社製 ポリイソシアネート化合物(イソシアヌレート変性HMDI)
タケネートD-110N :武田薬品工業社製 ポリイソシアネート化合物(トリメチロールプロパン変性XDI)
TETRAD-X :三菱ガス化学社製 エポキシ架橋剤
キュアゾール1B2MZ :四国化成社製 1-ベンジル-2-メチルイミダゾール
キュアゾールTBZ :四国化成社製 2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ〔1,2-a〕ベンズイミダゾール
キュアゾール1.2DMZ :四国化成社製 1,2-ジメチルイミダゾール
キュアゾール1B2PZ :四国化成社製 1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール
キュアゾール2MZ :四国化成社製 2-メチルイミダゾール
カオライザーNo.1 :花王社製 N.N.N'.N'-テトラメチルヘキサンジアミン
DBTDL :ジブチルスズジウラレート
【0087】
表2の実施例1〜12の評価結果より、本発明の粘着剤組成物、それを用いた光学フィルムは、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮できる優れた特性を示すと同時に、光学性能、および耐久性も優れた特性を示すことが確認された。
【0088】
比較例1は、本発明に用いたイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)のかわりに、アダクト変性のヘキサメチレンジイソシアネートを用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価したところ、目標とする養生時間に未達であった。
【0089】
比較例2は、本発明に用いたイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)のかわりに、イソシアヌレート変性のヘキサメチレンジイソシアネートを用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価したところ、目標とする養生時間に未達であった。
【0090】
比較例3は、本発明に用いたイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)のかわりに、イソシアヌレート環を有するが芳香族環を含まない化合物を用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、目標とする養生時間に未達であることを確認した。
【0091】
比較例4は、本発明に用いたイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物のかわりに、アダクト変性のキシレンジイソシアネートを用いた粘着剤組成物である。この組成物を評価し、目標とする養生時間に未達であることを確認した。
【0092】
比較例5は、本発明に用いたイソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)のかわりに、エポキシ系架橋剤でアミン構造をもつ化合物を用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、目標とする養生時間に未達であることを確認した。
【0093】
比較例6は、本発明に用いた3級イミダゾール(C)のかわりに2級イミダゾールを用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、ポットライフが短いため実用に適さないことを確認した。
【0094】
比較例7は、本発明に用いた3級イミダゾール(C)のかわりに3級アミンを用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、ポットライフが短いため実用に適さないことを確認した。
【0095】
比較例8は、硬化を促進する作用を示す化合物を含まない粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、目標とする養生時間に未達であることを確認した。
【0096】
比較例9は、本発明に用いた3級イミダゾール(C)のかわりにスズ系化合物を用いた粘着剤組成物である。この粘着剤組成物を評価し、ポットライフが短いため実用に適さないことを確認した。
【0097】
(液晶表示装置の評価)
実施例1で作製した粘着剤組成物を用いた光学フィルムを液晶表示装置に組み込み、液晶表示装置の光学性能を目視で確認した。ムラがなく光学的に優れた性能を示すことを確認できた。また、本発明の光学フィルムを、粘着剤組成物塗工後24時間経過した後打ち抜き加工し、液晶表示装置に用いたところ、打ち抜き刃への粘着剤組成物の顕著な付着はなく、打ち抜き加工した光学フィルムにわれなどの外観異常は見られなかった。
【0098】
以上示したとおり、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、3級イミダゾール(C)とを含むことにより、従来よりも養生時間を短縮できる優れた特性を示す粘着剤組成物、それを用いた光学フィルム、および液晶表示装置を提供できた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の粘着剤組成物を用いることで、ポットライフを維持しつつ、従来よりも養生時間を短縮することができる。
【0100】
また、粘着剤組成物の養生時間が短縮するため、切断や打ち抜き等の加工作業時間を短縮できる光学フィルム、およびそれを用いた液晶表示装置を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基からなる群から選択される1種以上の反応性官能基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A)と、
イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)と、
式(I):
【化1】


(R1〜R4は置換基を表す)
で表される3級イミダゾール(C)とを
含むことを特徴とする粘着剤組成物。

【請求項2】
前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、
トリレンジイソシアネートを構成単位とするポリイソシアネートである
請求項1に記載の粘着剤組成物

【請求項3】
前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)は、
少なくとも
式(II):
【化2】

または
式(III):
【化3】

(R11〜R25は、水素原子またはメチル基を表す。R11〜R13のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R14〜R16のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R17〜R19のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R20〜R22のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。R23〜R25のうちの1つはメチル基であり、2つは水素原子である。)
のいずれかを含むイソシアネート化合物である
請求項1または2に記載の粘着剤組成物。

【請求項4】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、
前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)を0.1〜1.0質量部含む
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。

【請求項5】
前記3級イミダゾール(C)は、
式(I):
【化1】


(R1〜R4は、水素原子、アルキル基、アリール基のいずれかである。)
で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。

【請求項6】
前記3級イミダゾール(C)が、
1、2−ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、および1-ベンジル-2−フェニルイミダゾールからなる群から選択される1種以上である
請求項5に記載の粘着剤組成物。

【請求項7】
前記3級イミダゾール(C)は、
式(IV):
【化4】


(R1とR2、およびR3とR4は互いに連結して環状構造を形成する)
で表される請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。

【請求項8】
前記3級イミダゾール(C)が、
2、3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾールである
請求項7に記載の粘着剤組成物。

【請求項9】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)100質量部に対し、
前記イソシアヌレート環と芳香族環とを有するイソシアネート化合物(B)0.1〜1.0質量部と
前記3級イミダゾール(C)0.05〜0.5質量部とを含む
請求項1〜8のいずれか1項に記載の粘着剤組成物。

【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の粘着剤組成物を用いた光学フィルム。

【請求項11】
請求項10に記載の光学フィルムを用いた液晶表示装置。

































【公開番号】特開2013−1733(P2013−1733A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131708(P2011−131708)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000004592)日本カーバイド工業株式会社 (165)
【Fターム(参考)】