説明

粘着剤組成物、粘着剤層、および粘着シート

【課題】接着性能を満足し、かつ低誘電率の粘着剤層を実現することができる粘着剤組成物を提供すること。
【解決手段】側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを40重量%〜99.5重量%含むモノマー成分を重合することにより得られ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のメタクリル系ポリマーを含むことを特徴とする粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電率を実現することができる粘着剤組成物および当該粘着剤組成物から得られる粘着剤層、およびこのような粘着剤層を支持体の少なくとも片面に有する粘着シートに関する。
【0002】
本発明の粘着剤層または粘着シートは、光学用途に好適である。例えば、本発明の粘着剤層または粘着シートは、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどの画像表示装置の製造用途や、光学方式、超音波方式、静電容量方式、抵抗膜方式などのタッチパネルなどの入力装置の製造用途に好適に用いることができる。特に、静電容量方式のタッチパネルに好適に用いられる。
【0003】
また、本発明の粘着シートは、支持体に光学部材を用いた粘着型光学部材として有用である。例えば、光学部材として透明導電性フィルムを用いる場合には、粘着型光学部材は、粘着剤層付き透明導電性フィルムとして用いられる。当該粘着剤層付き透明導電性フィルムは、適宜加工処理がなされた後に、前記画像表示装置やタッチパネルなどにおける透明電極に用いられる。特に、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明導電性薄膜をパターニングして、静電容量方式のタッチパネルの入力装置の電極基板に好適に用いられる。その他、粘着剤層付き透明導電性フィルムは、透明物品の帯電防止や電磁波遮断、液晶調光ガラス、透明ヒーターに用いられる。
【0004】
また光学部材として光学フィルムを用いる場合には、粘着型光学部材は、粘着剤層付き光学フィルムとして用いられる。当該粘着剤層付き光学フィルムは、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置に用いられる。前記光学フィルムとしては、偏光板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、さらにはこれらが積層されているものを用いることができる。
【背景技術】
【0005】
近年、携帯電話や携帯用音楽プレイヤー等の画像表示装置とタッチパネルを組み合わせて用いる入力装置が普及してきている。中でも、静電容量方式のタッチパネルはその機能性から急速に普及してきている。
【0006】
現在、タッチパネル用に用いる透明導電性フィルムとしては、透明プラスチックフィルム基材やガラスに透明導電性薄膜(ITO膜)が積層されたものが多く知られている。透明導電性フィルムは、他の部材に粘着剤層を介して積層される。前記粘着剤層として各種のものが提案されている(特許文献1〜4参照)。
【0007】
前記透明導電性フィルムが、静電容量方式のタッチパネルの電極基板に用いられる場合には、前記透明導電性薄膜がパターニングされたものが用いられる。このようなパターニングされた透明導電性薄膜を有する透明導電性フィルムは、他の透明導電性フィルム等とともに粘着剤層を介して積層して用いられる。これら透明導電性フィルムは、2本以上の指で同時に操作できるマルチタッチ方式の入力装置に好適に使用される。即ち、静電容量方式のタッチパネルは、指などでタッチパネルに触れた際にその位置の出力信号が変化し、その信号の変化量がある閾値を超えた場合にセンシングする仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2003−342542号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【特許文献4】特開2002−363530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように、タッチパネルを構成する部材、フィルムの誘電率は、タッチパネルの応答性に関わっており重要な数値である。一方、近年、タッチパネルの普及に伴ない、タッチパネルにはより高性能化が求められており、その構成部材である透明導電性フィルムや粘着剤層にも高性能が求められ、薄型化もそのひとつである。しかしながら、粘着剤層を単純に薄型化してしまうと設計した静電容量値が変わってしまうという問題がある。前記静電容量値の数値を変えないで、粘着剤層を薄型化するためには、粘着剤層の低誘電率化が求められる。
【0010】
そこで、本発明は、接着性能を満足し、かつ低誘電率の粘着剤層を実現することができる粘着剤組成物を提供することを目的とする。
【0011】
また本発明は、前記粘着剤組成物により形成された粘着剤層を提供すること、さらには当該粘着剤層を有する粘着剤シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、下記粘着剤組成物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち本発明は、側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを40重量%〜99.5重量%含むモノマー成分を重合することにより得られ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のメタクリル系ポリマーを含むことを特徴とする粘着剤組成物、に関する。
【0014】
上記メタクリル系ポリマーの重量平均分子量は、40万〜250万であることが好ましい。
【0015】
上記モノマー成分は、さらに、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよび環状エーテル基を有するモノマーから選ばれるいずれか少なくとも1つの官能基含有モノマーを、0.5重量%以上含むことができる。
【0016】
上記モノマー成分は、さらに、側鎖にC1〜C10のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことができる。
【0017】
上記モノマー成分として、さらに側鎖に分岐したC3〜C10のアルキル鎖を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことができる。
【0018】
本発明はまた、上記いずれかに記載の粘着剤組成物から得られる粘着剤層、に関する。
【0019】
上記粘着剤層は、周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以下であり得る。
【0020】
上記粘着剤層のゲル分率は、20〜98重量%であることが好ましい。
【0021】
上記粘着剤層の厚さ25μmの場合のヘイズは、2%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明はまた、上記いずれかに記載の粘着剤層を支持体の少なくとも片側に有する粘着シート、に関する。
【0023】
上記粘着シートは、粘着剤層の無アルカリガラスに対する90度ピール接着力(300mm/min)が0.5N/20mm以上であり得る。
【0024】
上記粘着シートは光学部材に用いられ得る。
【発明の効果】
【0025】
本発明の粘着剤組成物における主成分であるメタクリル系ポリマーは、側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを40重量%〜99.5重量%含むモノマー成分を重合することにより得られ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のメタクリル系ポリマーである。かかる本発明の粘着剤組成物によれば、接着性能を満足し、かつ低誘電率の粘着剤層を実現することができる。
【0026】
本発明の粘着剤層は、低誘電率を満足することにより、本発明の粘着剤層を薄型化して、静電容量方式のタッチパネルに用いる透明導電性フィルムに適用する粘着剤層に用いた場合においても、静電容量方式のタッチパネルで設計した静電容量値の数値を変えることなく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の粘着剤層または粘着シートが用いられている静電容量方式のタッチパネルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の粘着剤組成物は、側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを40重量%〜99.5重量%含むモノマー成分を重合することにより得られ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のメタクリル系ポリマーを含む。
【0029】
上記側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルからなるホモポリマーのTgは、−80〜40℃であることが好ましく、−60〜0℃であることがさらに好ましく、さらには−60〜−10℃であることが好ましい。ホモポリマーのTgが、−80℃以下では、入手困難であり、40℃を超える場合には凝集力や接着力の点から好ましくない。ホモポリマーのTgは、示差熱同時分析(TG−DTA)により、測定した値である。各種カタログ等に公開されている。
【0030】
上記メタクリル系ポリマーの平均重量分子量は40万〜250万であることが好ましい。
【0031】
側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルとしては、ラウリルメタクリレート(炭素数12、Tg−65℃)、トリデシルメタクリレート(炭素数13、Tg−40℃)、ステアリルメタクリレート(炭素数18、Tg38℃)、イソデシルメタクリレート(炭素数10、Tg−41℃)、ウンデシルメタクリレート(炭素数11)、テトラデシルメタクリレート(炭素数14)、ペンタデシルメタクリレート(炭素数15)、ヘキサデシルメタクリレート(炭素数16)、ヘプタデシルメタクリレート(炭素数17)などが挙げられる。
【0032】
本発明において、ホモポリマーのTgが−80〜40℃であるメタクリル系モノマーは、メタクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、40〜99.5重量%であり、好ましくは45〜99.5重量%、さらに好ましくは50〜99重量%である。40重量%以上であると、低誘電率化の面で好ましく、99.5重量%以下であることが、接着力や凝集力の面で好ましい。
【0033】
本発明の(メタ)アクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、さらに、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよび環状エーテル基を有するモノマーから選ばれるいずれか少なくとも1つの官能基含有モノマーを含むことができる。
【0034】
カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつカルボキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イソクロトン酸等があげられ、これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。イタコン酸、マレイン酸はこれらの無水物を用いることができる。これらのなかで、アクリル酸、メタクリル酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
【0035】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつヒドロキシル基を有するものを特に制限なく用いることができる。ヒドロキシル基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート等などのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;(4−ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルシクロアルカン(メタ)アクリレートが挙げられる。その他、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。これらのなかでもヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適である。
【0036】
環状エーテル基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基等の不飽和二重結合を有する重合性の官能基を有し、かつエポキシ基またはオキセタン基等の環状エーテル基を有するものを特に制限なく用いることができる。エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等が挙げられる。オキセタン基含有モノマーとしては、例えば、3−オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3−ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、等があげられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0037】
本発明において、前記官能基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、接着力、凝集力の点から0.5重量%以上であるのが好ましく、さらには1重量%以上であるが好ましい。一方、前記官能基含有モノマーが多くなりすぎると、組成物の粘度が上昇したり、ゲル化する場合があることから、前記官能基含有モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、30重量%以下であるのが好ましく、さらには25重量%以下、さらには20重量%以下であるのが好ましい。
【0038】
本発明のメタクリル系ポリマーを形成するモノマー成分には、前記官能基含有モノマー以外の共重合モノマーを含むことができる。前記以外の共重合モノマーとしては、例えば、側鎖にC1〜C10のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。すなわち、CH=C(R)COOR(但し、Rは水素またはメチル基、Rは炭素数1〜10の無置換のアルキル基または置換されたアルキル基を表す)で表される(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0039】
ここで、Rとしての、炭素数1〜10の無置換のアルキル基または置換されたアルキル基は、直鎖、分岐鎖のアルキル基、あるいは環状のシクロアルカンを指す。置換されたアルキル基の場合は、置換基としては、炭素数3−8個のアリール基または炭素数3−8個のアリールオキシ基であることが好ましい。アリール基としては、限定はされないが、フェニル基が好ましい。
【0040】
このようなCH=C(R)COORで表されるモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テルペン(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらは単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0041】
本発明において、前記CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、60重量%以下で用いることができ、50重量%以下であることが好ましく、さらには40重量%以下であるのが好ましい。なお、前記CH=C(R)COORで表される(メタ)アクリレートは接着力維持の面から10重量%以上、さらには20重量%以上用いることが好ましい。
【0042】
さらに、本発明のメタクリル系ポリマーを形成するモノマーとして、側鎖に炭素数3〜10の分岐したアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。このような側鎖に、炭素数3〜10の分岐したアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、およびイソデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。本発明において、炭素数3〜10の分岐したアルキル鎖を有するアルキル(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリル系ポリマーを形成する全モノマー成分に対して、60重量%以下で用いることができ、55重量%以下であることが好ましく、さらには50重量%以下であるのが好ましい。なお、前記炭素数3〜10の分岐したアルキル鎖をエステル基の末端に有するアルキル(メタ)アクリレートは、接着力維持等の面から10重量%以上、さらには20重量%以上用いることが好ましい。
【0043】
他の共重合モノマーとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレン、α−メチルスチレン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドンなどのビニル系モノマー;(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコールなどのグリコール系アクリルエステルモノマー;(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、フッ素(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレートや2−メトキシエチルアクリレートなどのアクリル酸エステル系モノマー;アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イミド基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなども使用することができる。
【0044】
さらに、ケイ素原子を含有するシラン系モノマーなどがあげられる。シラン系モノマーとしては、例えば、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリメトキシシラン、10−メタクリロイルオキシデシルトリエトキシシラン、10−アクリロイルオキシデシルトリエトキシシランなどがあげられる。
【0045】
本発明のメタクリル系ポリマーの重量平均分子量は40万〜250万であるのが好ましく、より好ましくは60万〜220万である。重量平均分子量が40万より大きくすることで、粘着剤層の耐久性を満足させたり、粘着剤層の凝集力が小さくなって糊残りが生じるのを抑えることができる。一方、重量平均分子量が250万よりも大きくなると貼り合せ性、粘着力が低下する傾向がある。さらに、粘着剤組成物が溶液系において、粘度が高くなりすぎ、塗工が困難になる場合がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーション・クロマトグラフィー)により測定し、ポリスチレン換算により算出された値をいう。
【0046】
また本発明のメタクリル系ポリマーは、Tgが−70〜0℃であることが好ましく、さらには、−65〜−10℃であるのが好ましい。このような(メタ)アクリル系ポリマーを用いることで、得られる最終的な粘着剤組成物が低誘電率であり接着力も良好なものとすることができる。なお、メタクリル系ポリマーのTgは、メタクリル系ポリマーを構成するモノマー単位とその割合から、FOXの式により算出される理論値である。
【0047】
このようなメタクリル系ポリマーの製造は、溶液重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合などの公知の製造方法を適宜選択できる。また、得られるメタクリル系ポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0048】
なお、溶液重合においては、重合溶媒として、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが用いられる。具体的な溶液重合例としては、反応は窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50〜70℃程度で、5〜30時間程度の反応条件で行われる。
【0049】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などは特に限定されず適宜選択して使用することができる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、重合開始剤、連鎖移動剤の使用量、反応条件により制御可能であり、これらの種類に応じて適宜のその使用量が調整される。
【0050】
重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(和光純薬社製、VA−057)などのアゾ系開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ−n−オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
前記重合開始剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー100重量部に対して、0.005〜1重量部程度であることが好ましく、0.02〜0.5重量部程度であることがより好ましい。
【0052】
なお、重合開始剤として、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いて、前記重量平均分子量の(メタ)アクリル系ポリマーを製造するには、重合開始剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.06〜0.2重量部程度とするのが好ましく、さらには0.08〜0.175重量部程度とするのが好ましい。
【0053】
連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2−エチルヘキシル、2,3−ジメルカプト−1−プロパノールなどがあげられる。連鎖移動剤は、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量はモノマー成分の全量100重量部に対して、0.1重量部程度以下である。
【0054】
また、乳化重合する場合に用いる乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などがあげられる。これらの乳化剤は、単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
さらに、反応性乳化剤として、プロペニル基、アリルエーテル基などのラジカル重合性官能基が導入された乳化剤として、具体的には、例えば、アクアロンHS−10、HS−20、KH−10、BC−05、BC−10、BC−20(以上、いずれも第一工業製薬社製)、アデカリアソープSE10N(ADEKA社製)などがある。反応性乳化剤は、重合後にポリマー鎖に取り込まれるため、耐水性がよくなり好ましい。乳化剤の使用量は、モノマー成分の全量100重量部に対して、0.3〜5重量部、重合安定性や機械的安定性から0.5〜1重量部がより好ましい。
【0056】
また、メタクリル系ポリマーは、前記モノマー成分を紫外線照射することにより重合して製造することができる。この場合には、モノマー成分に光重合開始剤を含有させる。光重合開示剤としては、光重合を開始するものであれば特に制限されず、通常用いられる光重合開始剤を用いることができる。例えば、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、α‐ケトール系、光活性オキシム系、ベンゾイン系、ベンジル系、ベンゾフェノン系、ケタール系、チオキサントン系などを用いることができる。光重合開始剤の使用量は、モノマー成分100重量部に対して、0.05〜1.5重量部であり、好ましくは0.1〜1重量部である。
【0057】
本発明の粘着剤組成物は、架橋剤を含有することができる。架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、過酸化物などの架橋剤が含まれる。架橋剤は1種を単独でまたは2種以上を組み合わせることができる。前記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましく用いられる。
【0058】
上記架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記メタクリル系ポリマー100重量部に対し、前記架橋剤を5重量部以下の範囲で含有することが好ましい。架橋剤の含有量は、0.01〜5重量部含有してなることが好ましく、0.03〜4重量部含有してなることがより好ましい。
【0059】
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート基(イソシアネート基をブロック剤または数量体化などにより一時的に保護したイソシアネート再生型官能基を含む)を1分子中に2つ以上有する化合物をいう。
【0060】
イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。
【0061】
より具体的には、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製,商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製,商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製,商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D160N);ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。これらのうち、脂肪族イソシアネートを用いることが、反応速度が速い為に好ましい。
【0062】
上記イソシアネート系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記メタクリル系ポリマー100重量部に対し、前記イソシアネート系架橋剤を0.01〜5重量部含有してなることが好ましく、0.03〜4重量部含有してなることがより好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0063】
なお、乳化重合にて作成した変性メタクリル系ポリマーの水分散液では、イソシアネート系架橋剤を用いなくても良いが、必要な場合には、水と反応し易いために、ブロック化したイソシアネート系架橋剤を用いることもできる。
【0064】
上記エポキシ系架橋剤はエポキシ基を1分子中に2つ以上有する多官能エポキシ化合物をいう。エポキシ系架橋剤としては、例えば、N,N,N′,N′−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。上記エポキシ系架橋剤としては、例えば、三菱ガス化学社製、商品名「テトラッドC」、「テトラッドX」などの市販品も挙げられる。
【0065】
上記エポキシ系架橋剤は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記メタクリル系ポリマー100重量部に対し、前記エポキシ系架橋剤を0.01〜5重量部含有してなることが好ましく、0.03〜4重量部含有してなることがより好ましい。凝集力、耐久性試験での剥離の阻止などを考慮して適宜含有させることが可能である。
【0066】
過酸化物の架橋剤としては、加熱によりラジカル活性種を発生して粘着剤組成物のベースポリマーの架橋を進行させるものであれば適宜使用可能であるが、作業性や安定性を勘案して、1分間半減期温度が80℃〜160℃である過酸化物を使用することが好ましく、90℃〜140℃である過酸化物を使用することがより好ましい。
【0067】
用いることができる過酸化物としては、たとえば、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:90.6℃)、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.4℃)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(1分間半減期温度:103.5℃)、t−ヘキシルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:109.1℃)、t−ブチルパーオキシピバレート(1分間半減期温度:110.3℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジ−n−オクタノイルパーオキシド(1分間半減期温度:117.4℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(1分間半減期温度:124.3℃)、ジ(4−メチルベンゾイル)パーオキシド(1分間半減期温度:128.2℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)、t−ブチルパーオキシイソブチレート(1分間半減期温度:136.1℃)、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン(1分間半減期温度:149.2℃)などがあげられる。なかでも特に架橋反応効率が優れることから、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(1分間半減期温度:92.1℃)、ジラウロイルパーオキシド(1分間半減期温度:116.4℃)、ジベンゾイルパーオキシド(1分間半減期温度:130.0℃)などが好ましく用いられる。
【0068】
なお、過酸化物の半減期とは、過酸化物の分解速度を表す指標であり、過酸化物の残存量が半分になるまでの時間をいう。任意の時間で半減期を得るための分解温度や、任意の温度での半減期時間に関しては、メーカーカタログなどに記載されており、たとえば、日本油脂株式会社の「有機過酸化物カタログ第9版(2003年5月)」などに記載されている。
【0069】
前記過酸化物は1種を単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記メタクリル系ポリマー100重量部に対し、前記過酸化物0.02〜2重量部であり、0.05〜1重量部含有してなることが好ましい。加工性、リワーク性、架橋安定性、剥離性などの調整の為に、この範囲内で適宜選択される。
【0070】
なお、反応処理後の残存した過酸化物分解量の測定方法としては、たとえば、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)により測定することができる。
【0071】
より具体的には、たとえば、反応処理後の粘着剤組成物を約0.2gずつ取り出し、酢酸エチル10mlに浸漬し、振とう機で25℃下、120rpmで3時間振とう抽出した後、室温で3日間静置する。次いで、アセトニトリル10ml加えて、25℃下、120rpmで30分振とうし、メンブランフィルター(0.45μm)によりろ過して得られた抽出液約10μlをHPLCに注入して分析し、反応処理後の過酸化物量とすることができる。
【0072】
また、架橋剤として、有機系架橋剤や多官能性金属キレートを併用してもよい。有機系架橋剤としては、多官能性金属キレートは、多価金属が有機化合物と共有結合または配位結合しているものである。多価金属原子としては、Al、Cr、Zr、Co、Cu、Fe、Ni、V、Zn、In、Ca、Mg、Mn、Y、Ce、Sr、Ba、Mo、La、Sn、Ti等があげられる。共有結合または配位結合する有機化合物中の原子としては酸素原子等があげられ、有機化合物としてはアルキルエステル、アルコール化合物、カルボン酸化合物、エーテル化合物、ケトン化合物等があげられる。
【0073】
本発明の粘着剤組成物には、接着力を向上させるために、(メタ)アクリル系オリゴマーを含有させることができる。(メタ)アクリル系オリゴマーは、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーよりもTgが高く、重量平均分子量が小さい重合体を用いるのが好ましく。かかる(メタ)アクリル系オリゴマーは、粘着付与樹脂として機能し、かつ誘電率を上昇させずに接着力を増加させる利点を有する。
【0074】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーは、Tgが約0℃以上300℃以下、好ましくは約20℃以上300℃以下、さらに好ましくは約40℃以上300℃以下であることが望ましい。Tgが約0℃未満であると粘着剤層の室温以上での凝集力が低下し、保持特性や高温での接着性が低下する場合がある。なお(メタ)アクリル系オリゴマーのTgは、(メタ)アクリル系ポリマーのTgと同じく、Foxの式に基づいて計算した理論値である。
【0075】
(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量は、1000以上30000未満、好ましくは1500以上20000未満、さらに好ましくは2000以上10000未満である。重量平均分子量が30000以上であると、接着力の向上効果が充分には得られない場合がある。また、1000未満であると、低分子量となるため接着力や保持特性の低下を引き起こす場合がある。本発明において、(メタ)アクリル系オリゴマーの重量平均分子量の測定は、GPC法によりポリスチレン換算して求めることができる。具体的には東ソー株式会社製のHPLC8020に、カラムとしてTSKgelGMH−H(20)×2本を用いて、テトラヒドロフラン溶媒で流速約0.5ml/分の条件にて測定される。
【0076】
前記(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートのようなアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環族アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレート;テルペン化合物誘導体アルコールから得られる(メタ)アクリレート;等を挙げることができる。このような(メタ)アクリレートは単独であるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0077】
(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、イソブチル(メタ)アクリレートやt−ブチル(メタ)アクリレートのようなアルキル基が分岐構造を持ったアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートやイソボルニル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸と脂環式アルコールとのエステル;フェニル(メタ)アクリレートやベンジル(メタ)アクリレートのようなアリール(メタ)アクリレートなどの環状構造を持った(メタ)アクリレートに代表される、比較的嵩高い構造を有するアクリル系モノマーをモノマー単位として含んでいることが好ましい。このような嵩高い構造を(メタ)アクリル系オリゴマーに持たせることで、粘着剤層の接着性をさらに向上させることができる。特に嵩高さという点で環状構造を持ったものは効果が高く、環を複数含有したものはさらに効果が高い。また、(メタ)アクリル系オリゴマーの合成の際や粘着剤層の作製の際に紫外線(紫外線)を採用する場合には、重合阻害を起こしにくいという点で、飽和結合を有したものが好ましく、アルキル基が分岐構造を持ったアルキル(メタ)アクリレート、または脂環式アルコールとのエステルを、(メタ)アクリル系オリゴマーを構成するモノマーとして好適に用いることができる。
【0078】
このような点から、好適な(メタ)アクリル系オリゴマーとしては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソブチルメタクリレート(IBMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とアクリロイルモルホリン(ACMO)の共重合体、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)とジエチルアクリルアミド(DEAA)の共重合体、1−アダマンチルアクリレート(ADA)とメチルメタクリレート(MMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)とイソボルニルメタクリレート(IBXMA)の共重合体、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBXMA)、イソボルニルアクリレート(IBXA)、ジシクロペンタニルアクリレート(DCPA)、1−アダマンチルメタクリレート(ADMA)、1−アダマンチルアクリレート(ADA)の各単独重合体等を挙げることができる。このうち、特にシクロヘキシルメタクリレート(CHMA)を主成分として含むオリゴマーが好ましい。
【0079】
本発明の粘着剤組成物において、前記(メタ)アクリル系オリゴマーを用いる場合、その含有量は特に限定されないが、メタクリル系ポリマー100重量部に対して70重量部以下であるのが好ましく、さらに好ましくは1〜70重量部であり、さらに好ましくは2〜50重量部であり、さらに好ましくは3〜40重量部である。(メタ)アクリル系オリゴマーの添加量が70重量部を超えると、弾性率が高くなり低温での接着性が悪くなるという不具合がある。なお、(メタ)アクリル系オリゴマーを1重量部以上配合する場合に、接着力の向上効果の点から有効である。
【0080】
さらに、本発明の粘着剤組成物には、粘着剤層のガラスなどの親水性被着体に適用する場合における界面での耐水性をあげる為にシランカップリング剤を含有することができる。シランカップリング剤の配合量は、(メタ)アクリル系ポリマー100重量部に対して1重量部以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1重量部、さらに好ましくは0.02〜0.6重量部である。シランカップリング剤の配合が多過ぎるとガラスへの接着力が増大し再剥離性に劣り、少なすぎると耐久性が低下するため好ましくない。
【0081】
好ましく用いられ得るシランカップリング剤としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有シランカップリング剤、3−アミノプロピルトリメトキシシラン 、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シランカップリング剤、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基含有シランカップリング剤などが挙げられる。
【0082】
さらに本発明の粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0083】
本発明の粘着剤層は、前記粘着剤組成物から形成される。粘着剤層の厚さは、特に制限されず、例えば、1〜100μm程度である。好ましくは、2〜50μm、より好ましくは2〜40μmであり、さらに好ましくは、5〜35μmである。
【0084】
また本発明の粘着剤層は、周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以下であるのが好ましく、より好ましくは3.3以下、さらに好ましくは3.2以下である。
【0085】
また本発明の粘着剤層のゲル分率は20〜98重量%であるのが好ましい。粘着剤層のゲル分率は、より好ましくは25〜95重量%であり、さらに好ましくは30〜95重量%である。前記粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、架橋剤全体の添加量を調整することとともに、架橋処理温度や架橋処理時間の影響を十分考慮して、ゲル分率が制御することができる。ゲル分率が小さい場合には凝集力に劣り、大きすぎると接着力に劣る場合がある。かかるゲル分率を有する粘着剤層は、被着体に貼付後の接着力の上昇が非常に小さく、長時間貼り付けた後でも糊残りすることなく、容易に再剥離できるという特徴が発揮される。
【0086】
また本発明の粘着剤層は、粘着剤層の厚さが25μmの場合のヘイズ値が2%以下であることが好ましい。ヘイズ2%以下であれば、前記粘着剤層が光学部材に用いられる場合に要求される透明性を満足することができる。前記ヘイズ値は0〜1.0%であることが好ましく、さらには0〜0.5%であることが好ましい。なお、ヘイズ値は2%以下であれば、光学用途として満足することができる。前記ヘイズ値が2%を超えると白濁が生じて光学フィルム用途として好ましくない。
【0087】
前記粘着剤層は、例えば、前記粘着剤組成物を支持体に塗布し、重合溶剤などを乾燥除去することにより粘着シートとして形成することができる。粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に、重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0088】
粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーターなどによる押出しコート法などの方法があげられる。
【0089】
前記加熱乾燥温度は、好ましくは40℃〜200℃であり、さらに好ましくは、50℃〜180℃であり、特に好ましくは70℃〜170℃である。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する粘着剤層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、好ましくは5秒〜20分、さらに好ましくは5秒〜10分、特に好ましくは、10秒〜5分である。
【0090】
また前記粘着剤層の形成は、本発明の(メタ)アクリル系ポリマーを、モノマー成分を紫外線照射することにより重合して製造する場合には、前記モノマー成分から(メタ)アクリル系ポリマーを製造するとともに、粘着剤層を形成することができる。モノマー成分には、適宜に架橋剤等の前記粘着剤組成物に配合することができる材料を含有することができる。前記モノマー成分は、紫外線照射にあたり、事前に一部を重合してシロップにしたものを用いることができる。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどを用いることができる。
【0091】
前記支持体としては、例えば、剥離処理したシートを用いることができる。剥離処理したシートとしては、シリコーン剥離ライナーが好ましく用いられる。
【0092】
剥離処理したシート上に粘着剤層を形成した粘着シートは、前記粘着剤層が露出する場合には、実用に供されるまで剥離処理したシート(セパレーター)で粘着剤層を保護してもよい。実用に際しては、前記剥離処理したシートは剥離される。
【0093】
セパレーターの構成材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルム、紙、布、不織布などの多孔質材料、ネット、発泡シート、金属箔、およびこれらのラミネート体などの適宜な薄葉体などをあげることができるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0094】
そのプラスチックフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフイルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0095】
前記セパレーターの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは5〜100μm程度である。前記セパレーターには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理もすることもできる。特に、前記セパレーターの表面にシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの剥離処理を適宜おこなうことにより、前記粘着剤層からの剥離性をより高めることができる。
【0096】
本発明の粘着剤層および粘着シートは、光学部材への適用が好適であり、特に光学用途における、金属薄膜や金属電極に対して貼り付ける用途に好ましく使用される。金属薄膜としては、金属、金属酸化物やこれらの混合物からなる薄膜が挙げられ、特に限定はされないが、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、ZnO、SnO、CTO(酸化カドミウムスズ)の薄膜が挙げられる。金属薄膜の厚みは、特に限定されないが、10〜200nm程度である。通常、ITOなどの金属薄膜は、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(特にPETフィルム)等の透明プラスチックフィルム基材上に設けられ、透明導電性フィルムとして使用される。上記の本発明の粘着シートを金属薄膜に対して貼り付ける際には、粘着剤層側の表面を金属薄膜に貼り付けられる側の粘着面となるようにして使用されることが好ましい。
【0097】
また、上記金属電極としては、金属、金属酸化物やこれらの混合物からなる電極であればよく、特に限定されないが、例えば、ITO、銀、銅、CNT(カーボンナノチューブ)の電極が挙げられる。
【0098】
本発明の粘着シートは、粘着層の無アルカリガラスに対する90度ピール接着力(300mm/min)が0.5N/20mm以上であることが好ましい。90度ピール接着力は、好ましくは、1.0N/20mm以上である。
【0099】
本発明の粘着シートの具体的な用途の一例として、タッチパネルの製造用途に用いる、タッチパネル用粘着シートを挙げることができる。タッチパネル用粘着シートは、例えば、静電容量方式のタッチパネルの製造において、ITOなどの金属薄膜が設けられた透明導電フィルムと、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)板、ハードコートフィルム、ガラスレンズ等とを貼り合わせるために用いらえる。上記タッチパネルは、特に限定されないが、例えば、携帯電話、タブレットコンピューター、携帯情報端末などに用いられる。
【0100】
より具体的な例として、本発明の粘着剤層または粘着シートが用いられている静電容量方式のタッチパネルの一例を図1に示す。図1において、1は静電容量方式タッチパネルであり、11は装飾パネルであり、12は粘着剤層または粘着シートであり、13はITOフィルムであり、14はハードコートフィルムである。装飾パネル11は、ガラス板や透明アクリル板(PMMA板)であることが好ましい。また、ITOフィルム13は、ガラス板や透明プラスチックフィルム(特にPETフィルム)にITO膜が設けられているものが好ましい。ハードコートフィルム14は、PETフィルムなどの透明プラスチックフィルムにハードコート処理が施されたものが好ましい。上記静電容量方式タッチパネル1は、本発明の粘着剤層または粘着シートが用いられているので、厚さを薄くすることができ、動作の安定性に優れる。また、外観や視認性が良好である。
【0101】
また本発明の粘着シートの支持体としては、光学部材を用いることができる。前記粘着剤層は、光学部材に直接塗布し、重合溶剤などを乾燥除去することにより、粘着剤層を光学部材に形成することができる。また、剥離処理したセパレーターに形成した粘着剤層を、適宜に光学部材に転写して、粘着型光学部材を形成することができる。
【0102】
なお、上記の粘着型光学部材の作製にあたって用いた、剥離処理したシートは、そのまま粘着型光学部材のセパレーターとして用いることができ、工程面における簡略化ができる。
【0103】
また、前記粘着型光学部材において、粘着剤層の形成にあたっては、光学部材の表面に、アンカー層を形成したり、コロナ処理、プラズマ処理などの各種易接着処理を施した後に粘着剤層を形成することができる。また、粘着剤層の表面には易接着処理をおこなってもよい。
【0104】
本発明の粘着型光学部材は、光学部材として透明導電性フィルムを用いた、粘着剤層付き透明導電性フィルムとして用いることができる。透明導電性フィルムは、透明プラスチックフィルム基材の一方の面に、上記ITO等の金属薄膜となる透明導電性薄膜を有する。透明プラスチックフィルム基材の他方の面には、本発明の粘着剤層を有する。透明プラスチックフィルム基材には、アンダーコート層を介して透明導電性薄膜を設けることができる。なお、アンダーコート層は複数層設けることができる。透明プラスチックフィルム基材と粘着剤層の間にオリゴマー移行防止層を設けることができる。
【0105】
前記透明プラスチックフィルム基材としては、特に制限されないが、透明性を有する各種のプラスチックフィルムが用いられる。当該プラスチックフィルムは1層のフィルムにより形成されている。例えば、その材料として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂等が挙げられる。これらの中で特に好ましいのは、ポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂およびポリエーテルスルホン系樹脂である。前記フィルム基材の厚みは、15〜200μmであることが好ましい。
【0106】
前記フィルム基材には、表面に予めスパッタリング、コロナ放電、火炎、紫外線照射、電子線照射、化成、酸化などのエッチング処理や下塗り処理を施して、この上に設けられる透明導電性薄膜またはアンダーコート層の前記フィルム基材に対する密着性を向上させるようにしてもよい。また、透明導電性薄膜またはアンダーコート層を設ける前に、必要に応じて溶剤洗浄や超音波洗浄などにより除塵、清浄化してもよい。
【0107】
前記透明導電性薄膜の構成材料、厚みは、特に限定されず、上記金属薄膜で例示したとおりである。アンダーコート層は、無機物、有機物または無機物と有機物との混合物により形成することができる。例えば、無機物として、NaF(1.3)、Na3AlF6(1.35)、LiF(1.36)、MgF2(1.38)、CaF2(1.4)、BaF2(1.3)、SiO2(1.46)、LaF3(1.55)、CeF3(1.63)、Al23(1.63)などの無機物〔上記各材料の()内の数値は光の屈折率である〕があげられる。これらのなかでも、SiO2、MgF2、A123などが好ましく用いられる。特に、SiO2が好適である。上記の他、酸化インジウムに対して、酸化セリウムを10〜40重量部程度、酸化スズを0〜20重量部程度含む複合酸化物を用いることができる。
【0108】
また有機物としてはアクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、シロキサン系ポリマー、有機シラン縮合物などがあげられる。これら有機物は、少なくとも1種が用いられる。特に、有機物としては、メラミン樹脂とアルキド樹脂と有機シラン縮合物の混合物からなる熱硬化型樹脂を使用するのが望ましい。
【0109】
アンダーコート層の厚さは、特に制限されるものではないが、光学設計、前記フィルム基材からのオリゴマー発生防止効果の点から、通常、1〜300nm程度であり、好ましくは5〜300nmである。
【0110】
上記粘着剤層付き透明導電性フィルムは、タッチパネルや液晶ディスプレイなどの種々の装置の形成などにおいて用いられる。特に、タッチパネル用電極板として好ましく用いることができる。タッチパネルは、種々の検出方式(例えば、抵抗膜方式、静電容量方式等)に好適に用いられる。
【0111】
静電容量方式のタッチパネルは、通常、所定のパターン形状を有する透明導電性薄膜を備えた透明導電性フィルムがディスプレイ表示部の全面に形成されている。上記粘着剤層付き透明導電性フィルムは、粘着剤層とパターン化された透明導電性薄膜とが対面するように適宜に積層される。
【0112】
また、本発明の粘着型光学部材は、光学部材として画像表示装置用の光学フィルムを用いた、粘着剤層付き光学フィルムとして用いることができる。
【0113】
光学フィルムとしては、液晶表示装置、有機EL表示装置等の画像表示装置の形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。例えば、光学フィルムとしては偏光板があげられる。偏光板は偏光子の片面または両面には透明保護フィルムを有するものが一般に用いられる。
【0114】
偏光子は、特に限定されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。これらの中でも、ポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質からなる偏光子が好適である。これらの偏光子の厚さは特に制限されないが、一般的に5〜80μm程度である。
【0115】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3〜7倍に延伸することで作成することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛等を含んでいても良いヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0116】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物があげられる。なお、偏光子の片側には、透明保護フィルムが接着剤層により貼り合わされるが、他の片側には、透明保護フィルムとして、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂を用いることができる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などがあげられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50〜100重量%、より好ましくは50〜99重量%、さらに好ましくは60〜98重量%、特に好ましくは70〜97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性等が十分に発現できないおそれがある。
【0117】
また光学フィルムとしては、例えば反射板や反透過板、位相差板(1/2や1/4等の波長板を含む)、光学補償フィルム、視覚補償フィルム、輝度向上フィルムなどの液晶表示装置等の形成に用いられることのある光学層となるものがあげられる。これらは単独で光学フィルムとして用いることができる他、前記偏光板に、実用に際して積層して、1層または2層以上用いることができる。
【0118】
偏光板に前記光学層を積層した光学フィルムは、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても形成することができるが、予め積層して光学フィルムとしたものは、品質の安定性や組立作業等に優れていて液晶表示装置などの製造工程を向上させうる利点がある。積層には粘着層等の適宜な接着手段を用いうる。前記の偏光板と他の光学層の接着に際し、それらの光学軸は目的とする位相差特性などに応じて適宜な配置角度とすることができる。
【0119】
本発明の粘着剤層付き光学フィルムは液晶表示装置等の各種画像表示装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと粘着剤層付き光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による粘着剤層付き光学フィルムを用いる点を除いて特に限定は無く、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0120】
液晶セルの片側又は両側に粘着剤層付き光学フィルムを配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学フィルムは液晶セルの片側又は両側に設置することができる。両側に光学フィルムを設ける場合、それらは同じものであっても良いし、異なるものであっても良い。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。
【実施例】
【0121】
以下に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各例中の部および%はいずれも重量基準である。実施例等における評価項目は下記のようにして測定を行った。
【0122】
<重量平均分子量の測定>
得られた(メタ)アクリル系ポリマーの重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエー
ション・クロマトグラフィー)により測定した。サンプルは、試料をテトラヒドロフランに溶解して0.1重量%の溶液とし、これを一晩静置した後、0.45μmのメンブレンフィルターで濾過した濾液を用いた。
・分析装置:東ソー社製、HLC−8120GPC
・カラム:東ソー社製、(メタ)アクリル系ポリマー:GM7000HXL+GMHXL+GMHXL
芳香族系ポリマー:G3000HXL+2000HXL+G1000HXL
・カラムサイズ;各7.8mmφ×30cm 計90cm
・溶離液:テトラヒドロフラン(濃度0.1重量%)
・流量:0.8ml/min
・入口圧:1.6MPa
・検出器:示差屈折計(RI)
・カラム温度:40℃
・ 注入量:100μl
・ 溶離液:テトラヒドロフラン
・ 検出器:示差屈折計
・ 標準試料:ポリスチレン
【0123】
実施例1
<メタクリル系ポリマーの調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ラウリルメタクリレート(LMA)100重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)1重量部、重合開始剤として2,2´−アゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を酢酸エチル200重量部と共に仕込み、穏やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して1時間窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って15時間重合反応を行い、重量平均分子量90万のメタクリル系ポリマー溶液を調製した。
【0124】
次いで、上記で得られたメタクリル系ポリマー溶液に、ポリマーの固形分100重量部に対して、架橋剤として、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N)を0.5重量部配合して粘着剤組成物溶液を調製した。
【0125】
次いで、得られた粘着剤組成物溶液を、シリコーン処理を施した38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製,DIAFOILMRF38)のシリコーン処理面に、乾燥後の粘着剤層の厚さが25μmになるように塗布し、130℃で3分間乾燥を行い、粘着剤層を形成し、粘着シートを作成した。
【0126】
実施例2〜6、比較例1〜4
実施例1において、メタクリル系ポリマーの調製に用いたモノマーの種類とその組成比、架橋剤の種類とその配合量を表1に示すように変えたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、粘着シートを作成した。得られた粘着シートの組成、構成ポリマーの分子量およびガラス転移温度、誘電率、接着力、ゲル分率、全光線透過率、およびヘイズを表1に示す。
【0127】
上記実施例および比較例で得られた、粘着シート(サンプル)について以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0128】
<ゲル分率の測定>
粘着シートにおける粘着剤層から所定量(最初の重量W1)を取り出し、酢酸エチル溶液に浸漬して、室温で1週間放置した後、不溶分を取り出し、乾燥させた重量(W2)を測定し、下記のように求めた。
ゲル分率=(W2/W1)×100
【0129】
<誘電率>
粘着剤層(粘着シートからシリコーン処理を施したPETフィルムを剥離したもの)を4層積層して、約100μmの積層粘着剤層を形成した。当該積層粘着剤層を、銅箔と電極の間に挟み以下の装置により周波数100kHzにおける比誘電率を測定した。測定は3サンプルの測定値の平均を誘電率とした。
なお、粘着剤層の周波数100kHzでの比誘電率を、JIS K 6911に準じて、下記条件で測定した。
測定方法:容量法(装置:Agilent Technologies 4294A Precision Impedance Analyzer使用)
電極構成:12.1mmΦ、0.5mm厚みのアルミ板
対向電極:3oz 銅板
測定環境:23±1℃、52±1%RH
【0130】
<接着力>
実施例および比較例で得られたサンプルの粘着面に厚み25μmのPETフィルム(東レ社製、ルミラーS10)を貼り付けたものを評価用サンプルとした。この評価用サンプルを、幅20mm×長さ約100mmに裁断した後、前記シリコーン処理したPETフィルムを剥離して、厚さ0.5mmの無アルカリガラス板(コーニング社製,1737)に、2kgのロール一往復で貼付け、室温(23℃)で1時間静置した後、剥離角度90度、剥離速度300mm/分で剥離接着を測定した。
【0131】
<ヘイズ>
全光線透過率99.3%、ヘイズ0.1%の無アルカリガラスの片面に、実施例および比較例で得られた粘着シートを貼り付け、ヘイズメーター(村上市記載技術研究所製、MR−100)により、ヘイズおよび全光線透過率を測定した。ヘイズメーターによる測定にあたり、粘着シートが光源側になるよう配置した。ヘイズ値は、無アルカリガラスのヘイズ値が0.1%であるため、測定値から0.1%を引いた値をヘイズ値とした。全光線透過率(%)は、測定値を採用した。
【0132】
【表1】

【0133】
表1中、
TDMAは、トリデシルメタクリレート(SARTOMER社製,ホモポリマーのTg=−40℃);
STMAは、ステアリルメタクリレート(共栄社化学社,ホモポリマーのTg=38℃);
IDは、イソデシルメタクリレート(共栄社化学社製,ホモポリマーのTg=−41℃);
2EHAは、2−エチルヘキシルアクリレート(大阪有機化学工業社製,ホモポリマーのTg=−50℃);
LAは、ラウリルアクリレート(共栄社化学社製,ホモポリマーのTg=−3℃);
STAは、ステアリルアクリレート(大阪有機化学工業社製,ホモポリマーのTg=30℃);
AAは、アクリル酸;
HBAは、4−ヒドロキシブチルアクリレート;
BA:ブチルアクリレート;を示す。
【0134】
(ホモポリマーのTgの測定)
示差熱同時分析(TG−DTA)により、測定した。大阪有機化学工業社製のモノマーは、溶液重合でホモポリマーを作製し、貧溶媒でポリマー分を抽出して、TG−DTAによりTgを測定した。 共栄社化学社製のモノマーは、ホモポリマーをUV重合により重合(固まらないものは溶液重合)し、TG−DTAによりTgを測定した。
<条件>
装置:TA Instruments製Q−2000
平均昇温速度:5℃/min
雰囲気ガス:窒素(50ml/min)
ホモポリマー約2.5mgで測定を行い、吸熱ピークの中間値を取る温度をガラス転移点とした。
【0135】
D110Nは、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D110N);
D140Nは、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリメチロールプロパン付加物(三井化学社製,商品名D140N);
TEDRAD−Cは、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,商品名テトラッドC);を示す。
【符号の説明】
【0136】
1 静電容量方式タッチパネル
11 装飾パネル
12 粘着剤層または粘着シート
13 ITOフィルム
14 ハードコートフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側鎖にC10〜C18のアルキル基を有するメタクリル酸アルキルエステルを40重量%〜99.5重量%含むモノマー成分を重合することにより得られ、ガラス転移温度(Tg)が0℃以下のメタクリル系ポリマーを含むことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記メタクリル系ポリマーの重量平均分子量が40万〜250万であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
モノマー成分が、さらに、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーおよび環状エーテル基を有するモノマーから選ばれるいずれか少なくとも1つの官能基含有モノマーを、0.5重量%以上含むモノマー成分であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
モノマー成分が、さらに、側鎖にC1〜C10のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
モノマー成分が、さらに側鎖にC3〜C10の分岐したアルキル鎖を有する(メタ)アクリル系モノマーを含むことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の粘着剤組成物から得られることを特徴とする粘着剤層。
【請求項7】
周波数100kHzにおける比誘電率が3.5以下であることを特徴とする請求項6記載の粘着剤層。
【請求項8】
ゲル分率が20〜98重量%であることを特徴とする請求項6または7記載の粘着剤層。
【請求項9】
粘着剤層の厚さが25μmの場合のヘイズが、2%以下であることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の粘着剤層。
【請求項10】
支持体の少なくとも片側に、請求項6〜9のいずれかに記載の粘着剤層が形成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項11】
粘着剤層の無アルカリガラスに対する90度ピール接着力(300mm/min)が0.5N/20mm以上であることを特徴とする請求項10記載の粘着シート。
【請求項12】
光学部材に用いられることを特徴とする請求項10または11記載の粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2013−1761(P2013−1761A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−132384(P2011−132384)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】