説明

粘着剤組成物、粘着剤物品、光学用粘着剤組成物及び粘着方法

【課題】
特性に優れた粘着剤組成物などを提供する。
【解決手段】
本発明の第1の側面は、ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする粘着剤組成物にある。本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。本発明の第2の側面は、イオン対を含有し、前記イオン対のアニオンはビス(フルオロスルホニル)イミドであることを特徴とする粘着剤組成物にある。本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着剤物品、光学用粘着剤組成物及び粘着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、静電気とは、物体に電荷が蓄えられ、帯電する現象、又は、帯電した電荷そのもののこと指す。静電気は、2種類の誘電体の摩擦によって発生する電荷の蓄積のほか、帯電した物体との接触などによっても生じ、物体の表面に蓄えられる。
【0003】
ICなどの半導体部品を扱う際には、静電気による高電圧が素子を破壊することもある。最新の電子機器類は静電気の放電によって回復不能な損傷を極端に受けやすいために、静電気は電子産業においては特に問題である。絶縁物体上への静電気の蓄積は、湿度が低い場合や、液体または固体が互いに接触しながら移動する場合(摩擦帯電)には極めて起こりやすく、大きな問題である。
【0004】
例えば、電子ディスプレイにおいては、静電気は、CRTモニターのようなディスプレイの表面に発生する。これらの静電気が空気中から埃を引きつけてしまうことがある。光学的に透明な帯電防止性感圧粘着剤であれば、CRT透過調節フィルムのようなディスプレイ用フィルムと共にCRTの表面に適用して、静電気を逃がすようにすることができる。自動車用又は建築用の窓用フィルムでは、剥離ライナーを除去する際に、感圧粘着剤の表面に静電気が発生する。それらの静電気が埃を引きつけ、その結果、性能で劣る製品ができてしまう可能性がある。
【0005】
静電気の蓄積は、物質の導電率を上げることによって調節することができる。これは、イオン性または電子性導電率を上げることによって達成することができる。今日において、静電気の蓄積を調節するための最も一般的な手段は、湿分を吸収させて導電率を上げる方法である。
【0006】
このことは、環境空気の中に湿分を追加してやる(加湿)かまたは吸湿性帯電防止剤を使用することによって通常達成されているが、その吸湿性帯電防止剤は、大気中の湿分を吸着する役目を有しているので一般に湿潤剤と呼ばれている。ほとんどの帯電防止剤は静電気が蓄積している際に除去するように働くので、静電気の減衰率(static decay rate)および表面の導電性が帯電防止剤の有効性の一般的な目安となる。
CRT透過調節フィルムのような、得られるフィルムの光学的な透明性を維持しながら、光学的に透明な感圧粘着剤に帯電防止剤を添加することはこれまで困難であった。その理由は、一般に帯電防止剤が感圧粘着剤に不溶性または非相溶性であったからである。
【0007】
そこで、光学ディスプレイ、ならびに感圧粘着剤および剥離ライナーを使用するその他の光学フィルムの用途として、光学的に透明な帯電防止性粘着剤などが提案されてきた。
【0008】
【特許文献1】特表2004-536940
【特許文献2】特開2005-330464
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの帯電防止性粘着剤はコストなどの面で問題があり、同等又はそれ以上の特性を持つ他の材料による粘着剤の出現が熱望されていた。
【0010】
本発明は、上述の背景技術に鑑みてなされたものであり、特性に優れた粘着剤組成物などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明によれば、上述の目的を達成するために、特許請求の範囲に記載のとおりの構成を採用している。以下、この発明を詳細に説明する。
【0012】
本発明の第1の側面は、
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする粘着剤組成物
にある。
【0013】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0014】
本発明の第2の側面は、
イオン対を含有し、
前記イオン対のアニオンはビス(フルオロスルホニル)イミドであることを特徴とする粘着剤組成物
にある。
【0015】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0016】
本発明の第3の側面は、
前記イオン対が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び含リンオニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種以上である請求項2記載の粘着剤組成物
にある。
【0017】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0018】
本発明の第4の側面は、
前記イオン対が、下記一般式(A)〜(D)で表される1種以上のカチオンを含む請求項2記載の粘着剤組成物。
【化1】

[式(A)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]
[式(B)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9、R10、およびR11は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR15は、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しXが硫黄原子の場合、R12はない。]
にある。
【0019】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0020】
なお、上記の化合物の置換基などは、下記の状態であることがさらに好ましい。
【0021】
[式(A)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なって、水素または炭素数1から6の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]
【0022】
[式(B)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一又は異なって、水素または炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
【0023】
[式(C)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9、R10、およびR11は、同一又は異なって、水素または炭素数1から2の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
【0024】
[式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR15は、同一又は異なって、炭素数1から10の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しXが硫黄原子の場合、R12はない。]
【0025】
本発明の第5の側面は、
前記イオン対のカチオンは、1-オクチル-2-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム及び1-オクチルピリジニウムからなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物
にある。
【0026】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0027】
本発明の第6の側面は、
ベースとなるポリマーをさらに含有することを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物
にある。
【0028】
本構成によれば、ポリマーの優れた特性を粘着剤に組み込むことも可能である。例えば、一般に光学的に透明な、アクリレート系ポリマー、シリコーン系、ゴム樹脂系、ブロックコポリマー系、特に水素化エラストマーを含むもの、またはビニルエーテルポリマー系をベースとすれば光学フィルムを得ることも可能である。
【0029】
本発明の第7の側面は、
前記ポリマーは、モノマー構造として、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを有することを特徴とする請求項6記載の粘着剤組成物
にある。
【0030】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0031】
本発明の第8の側面は、
前記ポリマーは、モノマー構成として2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6記載の粘着剤組成物
にある。
【0032】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤組成物が得られる。
【0033】
本発明の第9の側面は、
【0034】
帯電防止性をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物
にある。
【0035】
本構成によれば、静電気により起こる問題を回避する必要がある製造工程などで使用できる粘着剤組成物が得られる。
【0036】
本発明の第10の側面は、
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする粘着剤物品。
にある。
【0037】
本構成によれば、これまでの粘着剤組成物に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着剤物品が得られる。
【0038】
本発明の第11の側面は、
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする光学用粘着剤
にある。
【0039】
本構成によれば、光学的に透明であることなどを要求される製品に適用できる光学用粘着剤組成物が得られる。
【0040】
本発明の第12の側面は、
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有する組成物によって物体を粘着させることを特徴とする粘着方法
にある。
【0041】
本構成によれば、これまでの粘着方法に引けを取らない又は優れた特性を有する粘着方法が得られる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、特性に優れた粘着剤組成物などが得られる。
【0043】
本発明のさらに他の目的、特徴又は利点は、後述する本発明の実施の形態や添付する図面に基づく詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの化学式等を示す図である。
【図2】FSIアニオンの分子サイズを示す図である。
【図3】EMlm-FSIイオン液体の性質を示す図である。
【図4】粘度の温度依存を示す図である。
【図5】イオン伝導性の温度依存を示す図である。
【図6】カチオンを変化させた場合のFSIイオン液体の性質を示す図である。
【図7】サイクリックボルタンメトリーカーブである。
【図8】熱的安定性を比較する図である。
【図9】溶解度を比較する図である。
【図10】炭酸プロピレン溶液としての粘度を示す図である。
【図11】炭酸プロピレン溶液としてのイオン伝導性を示す図である。
【図12】水中での化学的安定性を示す図である。
【図13】水中でのアニオンの安定性を示す図である。
【図14】剥離帯電圧試験方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0046】
[概要]
【0047】
本実施形態の粘着剤、粘着剤組成物は、イオン液体などのイオン対、並びにベースとなるポリマー(ベースポリマー)を含有してなる。ここで、イオン液体とは、例えば、融解温度が100℃未満の塩類、室温(25℃)で液状を呈する溶融塩(イオン性化合物)、又はポリマーとの相溶性がよい塩類等をいう。本実施形態によると、イオン液体が帯電防止剤として作用するとともに、これを用いることで、帯電防止剤のブリードが抑制され、経時や高温下においても被着体への汚染性が低い粘着剤組成物が得られる。
【0048】
なお、イオン液体を用いることでブリードが抑制される理由の詳細は明らかではないが、次のように推測されている。
【0049】
長鎖アルキル基等を有する界面活性剤による帯電防止は、表面に界面活性剤がブリードして空気中の水分をともなって電荷漏洩層を形成することにより発現すると考えられる。一方、イオン液体は液状であるため、界面活性剤と比べて分子運動が容易であり、電荷の発生により分子の再配列が起き易い。したがって、イオン液体の場合には分子再配列による電荷中和機構が働くため、界面活性剤とくらべ表面にブリードしなくても優れた帯電防止効果が得られると考えられる。
【0050】
また、イオン液体は室温にて液状であることが好ましい。固体の塩に比べて、粘着剤への添加および分散又は溶解が容易に行える。さらにイオン液体は蒸気圧がない(不揮発性)のため、経時で消失することもなく、帯電防止特性が継続して得られる。
【0051】
ベースポリマーの酸価が10以下さらには1.0以下であることが好ましい。酸価が10以下であれば、イオン液体との相互作用が大きい酸官能基を実質的に有しておらず、上記のような分子再配列による電荷中和機構を阻害することなく、帯電防止機能を好適に発現できる。また、特定の炭素数のアルキル基を有するポリマーを使用するため、イオン液体との相溶性も良好で、粘着特性のバランスが優れたものとなる。ここで、酸価とは、試料1g中に含有する遊離脂肪酸、樹脂酸などを中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数をいう。
【0052】
また、ベースポリマーの酸価は、10以下さらに1.0以下が好ましく、0.8以下がさらに好ましく、0.0が最も好ましい。酸価が10を超えると、イオン液体との相互作用を有する酸官能基の量が増加して、帯電防止性が大きく減少する。ポリマーの酸価の調整は、カルボキシル基またはスルホネート基を有するモノマーの使用量をゼロ又は少なくすることで行うことができる。
【0053】
[主な組成例]
【0054】
以下、TFSIとの比較などを行いながら各種組成物の物性について説明する。
【0055】
表1A及び表1Bは、本実施形態の様々なイオン液体の物性の測定データである。これにより、帯電防止剤用途としての適正等を調べることができる。ここでは、表面抵抗、剥離帯電圧、粘着力、アルミ腐食及び基材密着について測定した。表において、データの背景が薄い箇所ほど、帯電防止等に使用するにあたりその物性値がより好ましいことを示している。また、下線部を付したデータは、帯電防止等に使用するにあたりその物性値が特に好ましいものである。
【0056】
ここで、表2は、ベースポリマーの組成例を示す表である。表3は、モノマー構造を示す表である。表4は、イオン種構造を示す表である。これらの表に示す化合物を測定では使用した。なお、本明細書中では、これらの表に記載された略称で各化合物を示す。
【0057】
【表1A】

【0058】
【表1B】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
一般的に、静電気による剥離帯電現象を定量的に考えると、『帯電量』=『発生量』−『漏洩量』という関係が成り立つ。
【0063】
【非特許文献1】菅野功著、帯電防止材料の技術と応用、第1版、シーエムシー、13ページ(1996)
【0064】
導電性の評価は、表面抵抗値の測定によって、上記で言う『漏洩量』の目安、すなわち漏洩のしやすさという尺度で評価している。その理由は、測定環境や測定方法による誤差が少なく、正確に測定できるからである。一方、剥離帯電圧の測定も行っている。これは上記の『帯電量』および『発生量』に相当するものを測定する手法であり、両者とも時間とともに変化する値である。このように、双方の観点から同一サンプルの物性を測定することでより正確な適正を知ることができる。
【0065】
【特許文献3】特開2007-16138
【0066】
このような観点から、本実施形態のサンプルの測定値を見ると、本実施形態のイオン液体は、TFSIと同等の物性またはTFSIを大きく上回る物性を有することがわかる。
【0067】
表5は、本実施形態の帯電防止剤の物性を示すデータである。それぞれの化合物の組み合わせに対して、融点、表面抵抗、電気伝導度及び粘着力を測定した。本実施形態のサンプルの測定値においても、本実施形態の帯電防止剤は、TFSIなどの各種化合物を含む帯電防止剤と同等の物性またはTFSIなどの各種化合物を含む帯電防止剤を大きく上回る物性を有することがわかる。
【0068】
【表5】

【0069】
表6は、各成分の含有量を変化させながら本実施形態の帯電防止剤の物性の変化を測定したデータである。
【0070】
【表6】

【0071】
[ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)の物性]
【0072】
ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)の物性について図面を参照しながら概説する。
【0073】
図1は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオンの化学式等を示す図である。以下の説明では、この図に示す略号で化合物を示す。
【0074】
図2は、FSIアニオンの分子サイズを示す図である。FSIはイミド塩としてはほぼ最小の体積である。これは、FSIが空間中を自由に動き回れ、帯電防止能力が高いことを示している。
【0075】
図3は、EMlm-FSIイオン液体の性質を示す図である。図4は、粘度の温度依存を示す図である。FSIは他の化合物よりも粘度が少なく、加工処理などを行いやすいことを示している。
【0076】
図5は、イオン伝導性の温度依存を示す図である。図6は、カチオンを変化させた場合のFSIイオン液体の性質を示す図である。図7は、サイクリックボルタンメトリー(cyclic voltammetry、CV)カーブである。図8は、熱的安定性を比較する図である。図9は、溶解度を比較する図である。図10は、炭酸プロピレン(プロピレンカーボネート)溶液としての粘度を示す図である。図11は、炭酸プロピレン溶液としてのイオン伝導性を示す図である。図12は、水中での化学的安定性を示す図である。図13は、水中でのアニオンの安定性を示す図である。
【0077】
これらのデータから、FSIはTFSI等の他の化合物にも劣らない優れた特性を有することが明らかになった。さらに、FSIは、高い伝導性、低い粘度、優れた溶解性、低温でのよい特性の維持、疎水性などの物性を備え、粘着剤として適用するにはたいへん優れた化合物であることが判明した。
【0078】
[ビス(フルオロスルホニル)イミド(FSI)の製造方法]
【0079】
FSIの製造方法は多くの形態が考えられる。しかしながら、スルファミン酸、クロロスルホン酸およびハロゲン化剤より得られるビス(クロロスルホニル)イミドアニオン化合物を窒素含有化合物(例えばトリメチルアミン)などの塩基触媒を使用してフッ素置換し、FSI化合物を得る手法を採用することが好ましい。この反応は高収率であることもあるが、それに加え、これにより得られるFSI化合物は高純度であり、生成物を粘着剤として適用するにはたいへん優れているからである。
【0080】
[イオン対]
【0081】
イオン対は、単独又は2種以上を混合して用いられるものでもよい。また、イオン対は例えば以下のものでもよい。例としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、または含リンオニウム塩の何れか1種以上であるイオン液体を挙げることができる。特に、前記イオン液体が、下記一般式(A)〜(D)で表される一種以上のカチオンを含むことが好ましい。これらのカチオンを持つイオン液体により、さらに帯電防止能の優れたものが得られる。
【0082】
【化2】

[式(A)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、Rはない。]
[式(B)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のR8 は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9、R10、およびR11は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR15は、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しXが硫黄原子の場合、R12はない。]
【0083】
これらのカチオンは、オクチル基、エチルヘキシル基、アリル基などで修飾することも考えられる。
【0084】
また、式(A)で表されるカチオンとしてはピリジニウムカチオン、オクチルピペリジニウムカチオン、アリルピペリジニウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、ピロリン骨格を有するカチオン、ピロール骨格を有するカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1-オクチル-2-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-3-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチル-4-メチルピリジニウムカチオン、1-オクチルピリジニウムカチオン、2-エチルヘキシルピリジニウムカチオン、1−エチルピリジニウムカチオン、1−ブチルピリジニウムカチオン、1−へキシルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−4−メチルピリジニウムカチオン、1−へキシル−3−メチルピリジニウムカチオン、1−ブチル−3,4−ジメチルピリジニウムカチオン、1,1−ジメチルピロリジニウムカチオン、1−エチル−1−メチルピロリジニウムカチオン、1−メチル−1−プロピルピロリジニウムカチオン、2−メチル−1−ピロリンカチオン、1−エチル−2−フェニルインドールカチオン、1,2−ジメチルインドールカチオン、1−エチルカルバゾールカチオンが挙げられる。
【0085】
式(B)で表されるカチオンとしてはイミダゾリウムカチオン、オクチルイミダゾリウムカチオン、テトラヒドロピリミジニウムカチオン、ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムカチオン、1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−へキシル−2,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,5−テトラメチル−1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,3−ジメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3−トリメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,4−ジヒドロピリミジニウムカチオン、1,2,3,4−テトラメチル−1,6−ジヒドロピリミジニウムカチオンなどが挙げられる。
【0086】
式(C)で表されるカチオンとしてはピラゾリウムカチオン、ビラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。具体例としては、1−メチルピラゾリウムカチオン、3−メチルピラゾリウムカチオン、1−エチル−2−メチルピラゾリニウムカチオンなどが挙げられる。
【0087】
式(D)で表されるカチオンとしてはテトラアルキルアンモニウムカチオン、トリアルキルスルホニウムカチオン、テトラアルキルホスホニウムカチオンや、上記アルキル基の一部がアルケニル基やアルコキシル基、さらにはエポキシ基に置換されたものなどが挙げられる。
【0088】
具体例としては、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラエチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン、テトラヘキシルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジプロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N,N−ジヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルスルホニウムカチオン、トリエチルスルホニウムカチオン、トリブチルスルホニウムカチオン、トリヘキシルスルホニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオン、テトラメチルホスホニウムカチオン、テトラエチルホスホニウムカチオン、テトラブチルホスホニウムカチオン、テトラヘキシルホスホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ベンザルコニウムカチオンなどが挙げられる。
【0089】
中でもトリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリブチルエチルアンモニウムカチオン、トリメチルデシルアンモニウムカチオン、N,N―ジエチル―N―メチル―N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、グリシジルトリメチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−エチル−N−ノニルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ブチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−プロピル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ブチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジメチル−N−ペンチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリメチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−ヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルメチルアンモニウムカチオン、トリエチルプロピルアンモニウムカチオン、トリエチルペンチルアンモニウムカチオン、トリエチルヘプチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−エチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジプロピル−N−ブチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ペンチルアンモニウムカチオン、N,N−ジブチル−N−メチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、トリオクチルメチルアンモニウムカチオン、N−メチル−N−エチル−N−プロピル−N−ペンチルアンモニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルスルホニウムカチオン、ジブチルエチルスルホニウムカチオン、ジメチルデシルスルホニウムカチオンなどのトリアルキルスルホニウムカチオン、トリエチルメチルホスホニウムカチオン、トリブチルエチルホスホニウムカチオン、トリメチルデシルホスホニウムカチオンなどの非対称のテトラアルキルホスホニウムカチオンが好ましく用いられる。
【0090】
なお、イオン液体などのイオン対は、市販のものを使用してもよいが、下記のようにして合成することも可能である。イオン液体などの合成方法としては、目的とするイオン液体などが得られれば特に限定されないが、文献“イオン液体−開発の最前線と未来−”[(株)シーエムシー出版発行]に記載されているような、ハロゲン化物法、水酸化物法、酸エステル法、錯形成法、および中和法などが用いることができる。
【0091】
イオン液体の配合量としては、使用するアクリル系ポリマーとイオン液体の相溶性により変わるため一概に定義することができないが、一般的にはベースポリマー100重量部に対して、0.01〜40重量部が好ましく、0.03〜20重量部がより好ましく、0.05〜10重量部が最も好ましい。0.01重量部未満であると十分な帯電防止特性が得られず、40重量部を超えると被着体への汚染が増加する傾向がある。
【0092】
[ベースポリマー]
【0093】
ベースポリマーは例えば以下のものでもよい。例としては、ベースポリマーとして、炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーを含有するものを挙げることができる。ここで、アクリル系ポリマーは、粘着性能のバランスの観点から、ガラス転移点Tgが0℃以下(通常−100℃以上)であることが好ましい。また、同様の観点から、アルキル基の炭素数は6〜14が好ましい。
【0094】
炭素数1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートの1種または2種以上を主成分とするアクリル系ポリマーとしては、炭素数が1〜14のアルキル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレート{以下(メタ)アクリレートと称す。}の1種または2種以上を50〜100重量%含有する単量体を主成分とした重量平均分子量10万以上のアクリル系ポリマーが用いられる。
【0095】
炭素数1〜14のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、n−テトラデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0096】
中でも、架橋の制御を容易に行えることから、ヒドロキシル基含有モノマーが好ましく、特にヒドロキシル基を有するアクリレート及び/又はメタクリレートが好ましい。
【0097】
ヒドロキシル基含有モノマーとしては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどがあげられる。ヒドロキシル基含有モノマーの使用量は、構成モノマー成分中、0.5〜10重量%が好ましく、1〜8重量%がより好ましい。
【0098】
上記のヒドロキシル基含有モノマー以外の成分としては、アクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどの芳香族ビニル化合物などの凝集力・耐熱性・屈折性向上成分や、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどのアミド基含有モノマー、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有モノマー、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有モノマー、N−アクリロイルモルホリン、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有モノマー等の接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分が挙げられる。以上の成分は、1種又は2種以上併用することも可能である。
【0099】
本実施形態の粘着剤は、アクリル系ポリマーを適宜架橋することで、更に耐熱性に優れた粘着シート類が得られる。架橋方法の具体的手段としては、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物などアクリル系ポリマーに適宜架橋化基点として含ませたヒドロキシル基、アミノ基、アミド基などと反応しうる基を有する化合物を添加し反応させるいわゆる架橋剤を用いる方法がある。中でも、ポリイソシアネート化合物やエポキシ化合物が特に好ましく用いられる。
前記ポリイソシアネート化合物としては、たとえばブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX)[いずれも日本ポリウレタン工業(株)製]などのイソシアネート付加物などが挙げられる。エポキシ化合物としてはN,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン(商品名TETRAD−X)や1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD−C)[いずれも三菱瓦斯化学(株)製]などが挙げられる。これらの架橋剤は単独で、または2種以上の混合系で使用される。架橋剤の使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シートとしての使用用途によって適宜選択される。
【0100】
アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、0.5重量部以上配合するのが好ましい。また柔軟性、接着性の点から上記アクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下で配合するのが好ましい。
【0101】
偏光板用粘着剤として使用する場合は、これらの測定の際に、次のことが判明している。(1)ポリマー成分にアクリル酸フェノキシエチルを含むとMURA(ムラ)がよい。(2)低分子量成分を含むとMURAがよい。さらに芳香族を二つ持つ低分子量成分を含むとさらにMURAはよくなる。(3)AS(antistatic)剤(帯電防止剤)を含むことで帯電防止機能が発現し、さらに低分子量成分を含むことでその機能は向上する。
【0102】
低分子量成分としては、例えば、ジメチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ジブトキシエチルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート、オクチルデシルアジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)アゼレート、ジイソオクチルアゼレート、ジイソブチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジイソオクチルセバケート等の二塩基脂肪酸エステル;マレイン酸エステル;トリメリット酸イソデシルエステル、トリメリット酸オクチルエステル、トリメリット酸n−オクチルエステル、トリメリット酸イソノニル等のトリメリット酸エステル;エポキシ化エステル;トリラウリルホスフェート、トリステアリルホスフェート、トリ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート等のリン酸エステル;ホスホン酸エステル;ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ブチルオクチルフタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジイソオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステルなどが挙げられ、さらに低分子量成分としては、例えば、芳香族基および/または環状アルキル基を2個以上含有する化合物で、具体的には、安息香酸エステル系としてのジエチレングリコールジベンゾエート、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ベンジルベンゾエート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジベンゾエートなどが挙げられ、リン酸系としてのトリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0103】
低分子量成分の使用料はアクリル系ポリマー100重量部に対して、通常1〜50重量部である。
【0104】
また、実質的な架橋剤として放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとして添加し、放射線などで架橋させることもできる。放射線反応性不飽和結合を2個以上有する多官能モノマーとしてはビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルベンジル基の如き放射線の照射で架橋処理(硬化)しうる1種または2種以上の放射線反応性を2個以上有する多官能モノマー成分が用いられる。なお一般的には放射線反応性不飽和結合が10個以下のものが好適に用いられる。多官能モノマーは2種以上を併用することも可能である。
【0105】
多官能モノマーの具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、N,N’−メチレンビスアクリルアミドなど挙げられる。
【0106】
多官能モノマーの使用量は、架橋すべきアクリル系ポリマーとのバランスにより、さらには、粘着シートとしての使用用途によって適宜選択される。アクリル粘着剤の凝集力により充分な耐熱性を得るには一般的には、アクリル系ポリマー100重量部に対して0.1〜30重量部で配合するのが好ましい。また柔軟性、接着性の点からアクリル系ポリマー100重量部に対して、10重量部以下で配合するのがより好ましい。
【0107】
放射線としては、例えば、紫外線、レーザー線、α線、β線、γ線、x線、電子線などが挙げられるが、制御性および取り扱い性の良さ、コストの点から紫外線が好適に用いられる。より好ましくは、波長200〜400nmの紫外線が用いられる。紫外線は、高圧水銀灯、マイクロ波励起型ランプ、ケミカルランプなどの適宜光源を用いて照射することができる。なお、放射線として紫外線を用いる場合にはアクリル粘着剤に光重合開始剤を添加する。
【0108】
光重合開始剤としては、放射線反応性成分の種類に応じ、その重合反応の引金となり得る適当な波長の紫外線を照射することによりラジカルもしくはカチオンを生成する物質であればよい。
【0109】
光ラジカル重合開始剤として例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、o−ベンゾイル安息香酸メチル−p−ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン等のベンゾイン類、ベンジルジメチルケタール、トリクロルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のアセトフェノン類、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−4’−イソプロピル−2−メチルプロピオフェノン等のプロピオフェノン類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、p−クロルベンゾフェノン、p−ジメチルアミノベンゾフニノン等のベンゾフェノン類、2−クロルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−(エトキシ)−フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類、ベンジル、ジベンゾスベロン、α−アシルオキシムエステルなどが挙げられる。
【0110】
光カチオン重合開始剤として例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩や、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体などの有機金属錯体類、ニトロベンジルエステル、スルホン酸誘導体、リ
ン酸エステル、スルホン酸誘導体、リン酸エステル、フェノールスルホン酸エステル、ジアゾナフトキノン、N−ヒドロキシイミドスルホナートなどが挙げられる。上記光重合開始剤については、2種以上併用することも可能である。
【0111】
光重合開始剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0112】
さらにアミン類などの光開始重合助剤を併用することも可能である。前記光開始助剤としては、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート、ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステルなどがあげられる。上記光重合開始助剤については、2種以上併用することも可能である。重合開始助剤は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、0.05〜10重量部、さらには0.1〜7重量部の範囲で配合するのが好ましい。
【0113】
[表面保護用粘着剤関係]
【0114】
(共重合体組成物)
【0115】
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル75部、アセトン15部、ブチルアクリレート20部、2−エチルヘキシルアクリレート80部、4−ヒドロオキシブチルアクリレート3.5部および重合開始剤(アゾビスイソブチロニトリル)0.2部を仕込む。攪拌しながら溶剤の還流温度で7時間反応する。反応終了後、[1−オクチルピリジニウム][ビス(フルオロスルホニル)イミド]3部およびトルエン95部を添加して室温まで冷却して、粘度3,500mPa・s、固形分35%である共重合体組成物溶液を得た。
【0116】
上記共重合体組成物の固形分100重量部に対して架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットタイプ(旭化成工業(株)製 商品名デュラネート24A−100)を固形分で2.0部を配合して粘着剤を得た。
【0117】
(試験方法)
【0118】
試験の際の諸条件は次のとおりである。
【0119】
表面抵抗
試料作成条件
表面基材…PET 38μm
塗工厚…dry 20μm,ダイレクト塗工
乾燥条件…90℃×1分
エイジング…23℃×3日
試験項目
粘着力…貼付24時間後測定,被着体:弊社手持ち偏光板(AG)
引張速度:0.3, 30 m/min
剥離帯電圧…被着体:弊社手持ち偏光板(AG),引張速度:30 m/min
表面抵抗値…横河ヒューレットパッカード社製ハイレジスタンスメーター使用。
被着体汚染性…貼り付け80℃×24時間後の偏光板の汚染を目視にて判定。
金属腐食性…アルミ箔貼付,70℃90%RHx168Hrs後の白化を目視にて判定。
【0120】
図14は、剥離帯電圧試験方法を示す図である。この際には、ガラス板に貼付した偏光板をアルミニウム板上に固定して測定する。測定の際の諸条件は次のとおりである。
【0121】
測定環境:23℃50%RH
試料貼付サイズ:50mm幅×200mm長
試料貼付時間:貼付24時間後
剥離速度:30 m/min
剥離方向:180°
被着体:弊社手持ち偏光板(AG)
静電電位測定器:キーエンス社製高精度静電器センサーSK-200,SK-030使用
【0122】
[偏光板用粘着関係]
【0123】
ここでは、共重合体A−1製造例について説明する。
攪拌機、温度計、還流冷却器、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、酢酸エチル70部、アセトン15部、ブチルアクリレート62.5部、フェノキシエチルアクリレート19.0部、メチルアクリレート16.0部、アクリル酸1.5部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1.0部およびアゾ系重合開始剤2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株) 商品名V−60)0.1部を仕込む。攪拌しながら窒素ガス気流中溶剤の還流温度で8時間反応する。反応終了後、トルエン315部を添加して室温まで冷却する。粘度7,000mPa・s、固形分20.0%、重量平均分子量135万である共重合体A−1を得た。
【0124】
製造例で得られた共重合体A−1溶液の固形分100重量部に対して[1−オクチルピリジニウム][ビス(フルオロスルホニル)イミド]3部を添加撹拌する。さらに架橋剤としてヘキサメチレンジイソシアネートのビウレットタイプ(旭化成工業(株)製 商品名デュラネート24A−100)を固形分で0.08重量部添加しよく攪拌する。調整した粘着剤溶液をポリエステル製剥離フィルム(38μm)に、乾燥塗膜厚が25μmになるように塗布し、90℃、60秒間乾燥させて偏光板(一般偏光板、厚さ100μm)上に転写し、23℃、65%RHの雰囲気中に7日間養生させ偏光板試料を得た。得られた偏光板試料を吸収軸が偏光板長辺に対して45°になるように80mm×150mmに裁断して、ガラス板の片面に50℃中で5Kg/cm2の圧力をかけ、18分保持して貼り付けた試験試料を90℃及び60℃、90%RHの雰囲気中に500時間放置し、発泡及び剥がれの発生状態を調べた結果、共に良好であった。得られた偏光板試料をガラス板の両面に、吸収軸が直行するように配置して、50℃中で5Kg/cm2の圧力をかけ、18分保持して貼り付けた試験試料を90℃の雰囲気中に500時間放置し、MURA(ムラ)の発生状態を調べた結果、良好であった。
【0125】
(MURA(ムラ)評価)
【0126】
MURA(ムラ)評価は目視で行った。また、その際には、前記粘着剤の粘着シートを用いた80℃耐久性試験後の同試料を2枚クロスニコルにして貼り合せ、液晶モニターのバックライト上に置きMURA(ムラ)の状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
【0127】
<評価基準>
〇:粘着シートに白ヌケが確認されなかった。
△:粘着シートに白ヌケがわずかに確認された。
×:粘着シートに白ヌケが確認された。
【0128】
(粘着力)
【0129】
粘着シートを、JIS Z−0237に準じて180°引き剥がし粘着力を測定した。被着体はガラス板を使用する。
【0130】
(保持力)
【0131】
粘着剤の粘着シートを、JIS Z−0237の保持力測定法に準じてズレ量を測定する。すなわち、吸収軸が偏光板長辺に対して90°になるように25mm×55mmに裁断して、接着面積が25mm×10mmになるようにガラス板に50℃中で5Kg/cm2の圧力をかけ、18分間保持して貼り付けた試験試料を作製し、該試料を90℃の雰囲気中で9.8Nの荷重をつるし、1時間後のズレを測定する。
【0132】
[その他の測定方法]
【0133】
(酸価)
【0134】
酸価は、平沼産業株式会社製自動滴定装置COM−550を用いて測定を行い、下記式より求めることができる。
【0135】
A={(Y−X)×f×5.611}/M
【0136】
A;酸価、Y;サンプル溶液の滴定量(ml)、X;混合溶媒50gのみの溶液の滴定量(ml)、f;滴定溶30液のファクター、M;ポリマーサンプルの重量(g)
【0137】
測定条件は下記の通りである。サンプル溶液:ポリマーサンプル約0.5gを混合溶媒(トルエン/2−プロパノール/蒸留水=50/49.5/0.5、重量比)50gに溶解してサンプル溶液とした。滴定溶液:0.1N、2−プロパノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬工業(株)社製、石油製品中和価試験用)、電極:ガラス電極;GE−101、比較電極;RE−201、測定モード:石油製品中和価試験1。
【0138】
(分子量)
【0139】
分子量は、東ソー株式会社製GPC装置、HLC−8220GPCを用いて測定を行い、ポリステレン換算値にて求めることができる。
【0140】
測定条件は下記の通りである。サンプル濃度:0.2wt%(THF溶液)、サンプル注入量:10μl、溶離液:THF、流速:0.6ml/min、測定温度:40℃、カラム:サンプルカラム;TSKguardcolumnSuperHZ−H1本+TSKgelSuperHZM−H2本、リファレンスカラム;TSKgel SuperH−RC1本、検出器:示差屈折計。
【0141】
(ガラス転移温度)
【0142】
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めることができる。
【0143】
式:1/(Tg+273)=Σ〔Wn/(Tgn+273)〕
【0144】
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(−)は各モノマーの重量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
2−エチルヘキシルアクリレート:−70℃
2−ヒドロキシエチルアクリレート:−15℃
イソノニルアクリレート:−82℃
アクリル酸:106℃
【0145】
[他の適用例]
【0146】
本実施形態を粘着シート類に適用することもできる。粘着シート類は、支持体の片面または両面に上記いずれかに記載の粘着剤組成物を含む粘着剤層を有する。本実施形態の粘着シート類によると、上記の如き作用効果を奏する本実施形態の粘着剤組成物を使用するため、剥離した際に被着体の帯電防止が図れ、被着体への汚染性が低減可能な粘着シート類とすることができる。
【0147】
また、前記支持体は、帯電防止処理されているプラスチックフィルムを備えることが好ましい。プラスチックフィルムを帯電防止処理することにより、被着体への剥離耐電圧を例えば±0.5kV以内にすることもでき、より帯電防止性が優れたものとなる。
【0148】
粘着シートに用いられる粘着剤には、各種の粘着付与剤や表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充項剤、金属粉、顔料などの粉体、粒子状、箔状物などの各種の添加剤を使用する用途に応じて適宜添加することが出来る。
【0149】
粘着シート類は、上記粘着剤を通常厚み3〜100μm、好ましくは5〜50μm程度となるようにポリエステルフィルムなどのプラスチックフィルムや、紙、不織布などの多孔質材料などからなる各種の支持体の片面または両面に塗布形成し、シート状やテープ状などの形態としたものである。特に表面保護フィルムの場合には支持体としてプラスチック基材が用いるのが好ましい。
【0150】
プラスチック基材としては、シート状やフィルム状に形成できるものであれば特に限定されるものでなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体などのポレオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリアクリレートフィルム、ポリスチレンフィルム、ナイロン6、ナイロン6,6、部分芳香族ポリアミドなどのポリアミドフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどが挙げられる。前記フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。
【0151】
また、本実施形態で使用する支持体としては、帯電防止処理されたプラスチックフィルムがより好ましく用いられる。プラスチックフィルムに施される帯電防止処理としては特に限定されないが、一般的に用いられるフィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法やプラスチックフィルムに練り込み型帯電防止剤を練り込む方法が用いられる。フィルムの少なくとも片面に帯電防止層を設ける方法としては、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法があげられる。
【0152】
帯電防止性樹脂に含有される帯電防止剤としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1、第2、第3アミノ基などのカチオン性官能基を有するカチオン型帯電防止剤、スルホン酸塩や硫酸エステル塩、ホスホン酸塩、リン酸エステル塩などのアニオン性官能基を有するアニオン型帯電防止剤、アルキルベタインおよびその誘導体、イミダゾリンおよびその誘導体、アラニンおよびその誘導体などの両性型帯電防止剤、アミノアルコールおよびその誘導体、グリセリンおよびその誘導体、ポリエチレングリコールおよびその誘導体などのノニオン型帯電防止剤、更には、上記カチオン型、アニオン型、両性イオン型のイオン導電性基を有する単量体を重合もしくは共重合して得られたイオン導電性重合体があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0153】
カチオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アシロイルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、アルキルベンジルメチルアンモニウム塩、アシル塩化コリン、ポリジメチルアミノエチルメタクリレートなどの4級アンモニウム基を有する(メタ)アクリレート共重合体、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するスチレン共重合体、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム基を有するジアリルアミン共重合体などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0154】
アニオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、スルホン酸基含有スチレン共重合体があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0155】
両性イオン型の帯電防止剤として、たとえば、アルキルベタイン、アルキルイミダゾリウムベタイン、カルボベタイングラフト共重合があげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0156】
ノニオン型の帯電防止剤として、たとえば、脂肪酸アルキロールアミド、ジ(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、脂肪酸グリセリンエステル、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンジアミン、ポリエーテルとポリエステルとポリアミドからなる共重合体、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0157】
導電性ポリマーとしては、たとえば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェンなどがあげられる。
【0158】
導電性物質としては、たとえば、酸化錫、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化チタン、酸化亜鉛、インジウム、錫、アンチモン、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、チタン、鉄、コバルト、ヨウ化銅、およびそれらの合金または混合物があげられる。
【0159】
帯電防止性樹脂および導電性樹脂に用いられる樹脂成分としては、ポリエステル、アクリル、ポリビニル、ウレタン、メラミン、エポキシなどの汎用樹脂が用いられる。なお、高分子型帯電防止剤の場合には、樹脂成分を含有させなくてもよい。また、帯電防止樹脂成分に、架橋剤としてメチロール化あるいはアルキロール化したメラミン系、尿素系、グリオキザール系、アクリルアミド系などの化合物、エポキシ化合物、イソシアネート系化合物を含有させることも可能である。
【0160】
帯電防止層の形成方法としては、たとえば、上記帯電防止性樹脂、導電性ポリマー、導電性樹脂を有機溶剤もしくは水などの溶媒で希釈し、この塗液をプラスチックフィルムに塗布、乾燥することで形成される。
【0161】
前記帯電防止層の形成に用いる有機溶剤としては、たとえば、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、シクロへキサノン、n‐へキサン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどがあげられる。これらの溶剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0162】
前記帯電防止層の形成における塗布方法は、具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロ一ルブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート、含浸およびカーテンコート法があげられる。
【0163】
前記帯電防止性樹脂層、導電性ポリマー、導電性樹脂の厚みとしては通常0.01〜5μm、好ましくは0.03〜1μm程度である。
【0164】
導電性物質の蒸着あるいはメッキの方法としては、たとえば、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、化学蒸着、スプレー熱分解、化学メッキ、電気メッキ法などがあげられる。
【0165】
前記導電性物質層の厚みとしては通常20〜10000Åであり、好ましくは50〜5000Åである。
【0166】
また、練り込み型帯電防止剤としては、上記帯電防止剤が適宜用いられる。練り込み型帯電防止剤の配合量としては、プラスチックフィルムの総重量に対して20重量%以下、好ましくは0.05〜10重量%の範囲で用いられる。練り込み方法としては、前記帯電防止剤がプラスチックフィルムに用いられる樹脂に均一に混合できる方法であれば特に限定されず、たとえば、加熱ロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸混練機等が用いられる。
【0167】
プラスチックフィルムには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等による離型および防汚処理や酸処理、アルカリ処理、プライマー処理、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの易接着処理をすることもできる。
【0168】
粘着剤の塗布形成方法としては粘着テープの製造に用いられる方法を用いることができ、具体的にはロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法などが挙げられる。
【0169】
粘着シート類は必要に応じて粘着面を保護する目的で粘着剤表面にセパレーターを貼り合わせることが可能である。セパレーターを構成する基材としては紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。
【0170】
そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、例えばポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0171】
前記フィルムの厚みは、通常5〜200μm、好ましくは10〜100μm程度である。前記フィルムの粘着剤層貼合面には、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系若しくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉等により適宜離型剤処理が施されている。
【0172】
本実施形態の粘着剤組成物、ならびに粘着シート類は、特に静電気が発生しやすいプラスチック製品などに用いられ、なかでも特に、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板、波長板、光学補償フィルム、光拡散シート、反射シートなどの光学部材表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとしても用いることができる。
【0173】
また、帯電防止性を備えれば、各種の温度および湿度範囲において、静電荷を発生し効果的な帯電防止性能を必要としている各種の表面では、本発明の帯電防止性感圧粘着剤による恩恵を受けることができる。特に、フラットパネルディスプレイ、例えば液晶ディスプレイ、コンピュータ画面、およびテレビ画面などが恩恵を受けることができる。
【0174】
[権利解釈など]
【0175】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について説明してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が実施形態の修正又は代用を成し得ることは自明である。すなわち、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、冒頭に記載した特許請求の範囲の欄を参酌すべきである。
【0176】
また、この発明の説明用の実施形態が上述の目的を達成することは明らかであるが、多くの変更や他の実施例を当業者が行うことができることも理解されるところである。特許請求の範囲、明細書、図面及び説明用の各実施形態のエレメント又はコンポーネントを他の1つまたは組み合わせとともに採用してもよい。特許請求の範囲は、かかる変更や他の実施形態をも範囲に含むことを意図されており、これらは、この発明の技術思想および技術的範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
イオン対を含有し、
前記イオン対のアニオンはビス(フルオロスルホニル)イミドであることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イオン対が、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、及び含リンオニウム塩からなる群から選ばれた少なくとも1種以上である請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記イオン対が、下記一般式(A)〜(D)で表される1種以上のカチオンを含む請求項2記載の粘着剤組成物。
【化1】

[式(A)中のR1は、炭素数4から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R2およびR3は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但し、窒素原子が2重結合を含む場合、R3はない。]
[式(B)中のR4は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R5、R6、およびR7は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(C)中のR8は、炭素数2から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良く、R9、R10、およびR11は、同一又は異なって、水素または炭素数1から16の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。]
[式(D)中のXは、窒素、硫黄、又はリン原子を表し、R12、R13、R14、およびR15は、同一又は異なって、炭素数1から20の炭化水素基を表し、ヘテロ原子を含んでも良い。但しXが硫黄原子の場合、R12はない。]
【請求項5】
前記イオン対のカチオンは、1-オクチル-2-メチルピリジニウム、1-オクチル-3-メチルピリジニウム、1-オクチル-4-メチルピリジニウム及び1-オクチルピリジニウムからなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
ベースとなるポリマーをさらに含有することを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリマーは、モノマー構造として、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステルを有することを特徴とする請求項6記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
前記ポリマーは、モノマー構成として2−エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、メチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸及びアクリルアミドからなる群より選ばれた少なくとも1種からなることを特徴とする請求項6記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
帯電防止性をさらに備えることを特徴とする請求項2記載の粘着剤組成物。
【請求項10】
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする粘着剤物品。
【請求項11】
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有することを特徴とする光学用粘着剤組成物。
【請求項12】
ビス(フルオロスルホニル)イミドを含有する組成物によって物体を粘着させることを特徴とする粘着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−64146(P2013−64146A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264635(P2012−264635)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2007−338181(P2007−338181)の分割
【原出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000105877)サイデン化学株式会社 (39)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】