説明

粘着剤組成物および粘着テープ

【課題】 本発明は、高温の条件を必須とすることなく熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物の架橋重合反応を進行させることを可能とするとともに長時間を要することなくその架橋重合反応を十分に進行させることを可能とする粘着剤組成物を提供することを目的とし、さらに、そのような粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することを目的とする。
【解決手段】 熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物と、熱またはエネルギー線によって塩基を発生するエネルギー感受性塩基発生剤とを含む、ことを特徴とする粘着剤組成物により、高温長時間を要せずに架橋重合反応を十分に進行させることを可能とする粘着剤組成物を提供することができ、さらに、そのような粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することができるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物および粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、半導体チップのパッケージを製造する工程など、様々な工業製品の製造過程に用いられる。
【0003】
半導体チップの高密度実装を実現するパッケージの形態としては、CSP(Chip Size Package)が提案されているが、その中でも、QFN(Quad Flat Non−leaded Package)と呼ばれるパッケージ形態が、小型・高集積化を容易に実現可能な技術である点で特に注目されている。
【0004】
QFNの製造方法としては、生産性の高さの点で、複数のチップを一括封止するMAP(Molded Array Packaging)方式による製造方法が注目されている。この製造方法は、リードフレームのダイパッド上に半導体チップを固定するダイボンディング工程と、リードフレームのインナーリードとダイパッド上の半導体チップにボンディングワイヤーを接続するワイヤーボンディング工程と、インナーリードと半導体チップとボンディングワイヤーを樹脂材料で被覆する樹脂封止工程とを備えるものである。この方法でQFNを製造する際、粘着テープは、上記各工程をスムーズに実施するためにリードフレームの裏面側に貼り付けられるマスキングシート用のテープとして、極めて重要な役割を果たす。
【0005】
QFNの製造方法では、ワイヤーボンディング工程などにおいて、通常、180℃から270℃程度の極めて高い熱履歴が加えられる。このため、粘着テープには、耐熱性に優れたものが要請されており、具体的に、ポリイミド系樹脂フィルムを基材シートとして、その基材シート面に特定のポリイミド系樹脂組成物からなる粘着層を形成した粘着テープが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−262116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された粘着テープのように、ポリイミド系樹脂組成物を用いて粘着テープを調製するためには、ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド前駆体樹脂を熱処理により架橋重合反応させて粘着層となすことが必須となる。ところが、この架橋重合反応を進行させるためには、熱処理は、180℃から270℃という極めて高温の条件で実施される必要があるうえ、架橋重合反応を十分に進行させるために比較的長時間実施される必要がある、という問題があった。
【0008】
本発明は、高温の条件を必須とすることなく熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物の架橋重合反応を進行させることを可能とするとともに長時間を要することなくその架橋重合反応を十分に進行させることを可能とする粘着剤組成物を提供することを目的とし、さらに、そのような粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、[1]熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物と、熱またはエネルギー線によって塩基を発生するエネルギー感受性塩基発生剤とを含む、ことを特徴とする粘着剤組成物、
[2]エネルギー感受性塩基発生剤は、熱またはエネルギー線によって第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アミジン系化合物の少なくともいずれか1種以上の塩基を発生するものである、上記[1]記載の粘着剤組成物、
[3]エネルギー感受性塩基発生剤は、80℃以上180℃未満の温度で加熱されることによって第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アミジン系化合物の少なくともいずれか1種以上の塩基を発生するものである、上記[1]記載の粘着剤組成物、
[4]熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物は、下記式(1)に示すテトラカルボン酸二無水物ならびに下記式(2)に示すテトラカルボン酸及びテトラカルボン酸の誘導体からなる群より選ばれた1種以上の化合物(Q)と下記式(3)に示す脂肪族ジアミンとを、化合物(Q)のモル数のほうが脂肪族ジアミンのモル数よりも多くなるように配合して加熱反応させてポリイミド(A)となし、ポリイミド(A)と下記式(4)に示す芳香族ジアミンとを加熱反応させてポリイミド(B)となし、ポリイミド(B)と下記式(5)に示すビスマレイミド化合物とを混合してなる、上記[1]から[3]のいずれかに記載の粘着剤組成物、を要旨とする。
【0010】
【化1】

(Rは4価の有機基である)
【0011】
【化2】

(Rは4価の有機基であり、Y〜Yは独立した水素または炭素数1〜8の炭化水素基である)
【0012】
【化3】

(Rは、アミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合している炭素数1〜221の2価の有機基であり、その構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【0013】
【化4】

(Rは、アミノ基に芳香族環が直接結合している炭素数6〜27の2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【0014】
【化5】

(Zは2価の有機基である)
【0015】
また、本発明は、[5]イソシアネート系架橋剤が更に含まれる、上記[1]から[4]のいずれかに記載の粘着剤組成物、
[6]イソシアネート系架橋剤は1分子あたり2つ以上のイソシアネート基を有する、上記[5]に記載の粘着剤組成物、
[7]酸化防止剤がさらに含まれる、上記[1]から[6]のいずれかに記載の粘着剤組成物、
[8]酸化防止剤は、ヒンダートフェノール誘導体またはベンゾトリアゾール誘導体である、上記[7]に記載の粘着剤組成物、
[9]耐熱性基材シート面上に粘着層を形成してなる粘着テープであって、粘着層は、上記[1]から[8]のいずれかに記載の粘着剤組成物の硬化物である、ことを特徴とする粘着テープ、
[10]粘着層が常温粘着性を有する、上記[9]に記載の粘着テープ、
[11]粘着層は、ガラス転移温度が30℃未満であり、JIS Z 0237に準拠するボールタック試験で1以上である、上記[9]または[10]に記載の粘着テープ、
[12]リードフレームのダイパッド上に半導体チップを固定するダイボンディング工程と、リードフレームのインナーリードとダイパッド上の半導体チップにボンディングワイヤーを接続するワイヤーボンディング行程と、インナーリードと半導体チップとボンディングワイヤーを樹脂材料で被覆する樹脂封止工程とを備える半導体製品の製造方法において用いられるものである、上記[9]から[11]のいずれかに記載の粘着テープ、
[13]ダイボンディング工程の前にリードフレームの一方面に貼り付けられるものであるとともに、樹脂封止工程の後にリードフレームの一方面から剥離されるものである、上記[12]に記載の粘着テープ、
[14]耐熱性基材シートは、250℃で1時間加熱前後の重量減少率が5%未満である、上記[9]から[13]のいずれかに記載の粘着テープ、をも要旨とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高温の条件を必須とすることなく熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物の架橋重合反応を進行させることを可能とするとともに長時間を要することなくその架橋重合反応を十分に進行させることを可能とする粘着剤組成物を提供することができ、さらに、そのような粘着剤組成物を用いた粘着テープを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の粘着剤組成物を用いてなる粘着層を備えた粘着テープの実施例の1つを示す概略縦断面図である。
【図2】(a)リードフレームの1つを模式的に示す平面模式図である。(b)図2(a)における領域Sの部分を拡大した状態を模式的に示す部分拡大模式図である、(c)図2(a)におけるA−A線断面を模式的に示す部分断面模式図である。
【図3】(a)粘着テープをリードフレームに接着する貼付工程を説明するための工程断面図である、(b)ダイボンディング工程を説明するための工程断面図である、(c)ワイヤーボンディング工程を説明するための工程断面図である、(d)樹脂封止工程を説明するための工程断面図である、(e)剥離工程を説明するための工程断面図である、(f)QFNプロセスによって得られる半導体製品を説明するための断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の粘着剤組成物は、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物と、エネルギー感受性塩基発生剤を含んでなる。
【0019】
(熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物)
熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物(組成物(K))は、下記に示す、第1の工程から第3の工程を順次実施して製造されるものである。
【0020】
すなわち、化合物(Q)と脂肪族ジアミンとを加熱反応(イミド化反応)させてポリイミド(A)を合成する工程(第1の工程)、ポリイミド(A)と芳香族ジアミンとを加熱反応させてポリイミド(B)を合成する工程(第2の工程)、ポリイミド(B)とビスマレイミド化合物とを配合して所定の温度下で混合する工程(第3の工程)を実施することで、組成物(K)が製造される。
【0021】
(第1の工程について)
第1の工程では、上記したような脂肪族ジアミンと化合物(Q)を無溶剤下で加熱して脂肪族ジアミンと化合物(Q)のイミド化反応を行い、イミド化反応の反応生成物としてポリイミド(A)が合成される。
【0022】
イミド化反応は、ポリイミド(A)の両末端に酸無水物基またはイミド化可能なジカルボン酸誘導体の官能基を配させるようにする点と、イミド化可能な官能基を有するモノマーである化合物(Q)の残留量を抑制する点で、化合物(Q)のモル数のほうが脂肪族ジアミンのモル数よりも多くなるように配合して実施されることが好ましく、具体的には脂肪族ジアミン1モルに対して化合物(Q)を1モル以上2モル以下の比で配合して実施されることが好ましい。
【0023】
なお、第1の工程は、各種の有機溶媒中で脂肪族ジアミンと化合物(Q)をイミド化反応させることにて実施されても良い。使用できる有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、m−クレゾール、フェノール、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ−ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが使用可能であるが、N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンを単独または併用するのが好ましい。
【0024】
第1の工程においては、イミド化反応が、1〜12時間の反応時間、150〜200℃の反応温度という条件下で実施されることが好ましい。
【0025】
(化合物(Q))
化合物(Q)は、下記式(1)に示すテトラカルボン酸二無水物ならびに下記式(2)に示すテトラカルボン酸及びその誘導体からなる群より選ばれた1種以上の化合物である。
【0026】
【化6】

(Rは4価の有機基である)
【0027】
【化7】

(Rは4価の有機基であり、Y〜Yは独立して水素または炭素数1〜8の炭化水素基である。)
【0028】
テトラカルボン酸二無水物としては、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が例示できる。また所望の耐熱性を発現させるために必要に応じて例示した芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することも出来る。
【0029】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物などを例示できる。使用するものとして特に限定されるものではないが、好ましくは、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物であり、より好ましくは1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物である。
【0030】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、2, 2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル) エーテル二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、3−カルボキシメチル−1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物等を挙げる事ができる。
【0031】
テトラカルボン酸及びその誘導体としては、脂肪族テトラカルボン酸及びその誘導体と、芳香族テトラカルボン酸及びその誘導体、をあげることができる。
【0032】
脂肪族テトラカルボン酸としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸、ジシクロヘキシルテトラカルボン酸などが例示される。脂肪族テトラカルボン酸の誘導体としては、上記した脂肪族テトラカルボン酸とアルコール(炭素数1〜8)とのエステルが例示される。
【0033】
芳香族テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸、エチレンテトラカルボン酸、3−カルボキシメチル−1,2,4−シクロペンタントリカルボン酸、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン等を挙げることができる。芳香族テトラカルボン酸の誘導体としては、上記した芳香族テトラカルボン酸とアルコール(炭素数1〜8)とのエステルが例示される。
【0034】
(脂肪族ジアミン)
脂肪族ジアミンは、下記式(3)に示すものである。
【0035】
【化8】

(Rは、アミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合している炭素数1〜221の2価の有機基であり、その構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【0036】
したがって、脂肪族ジアミンは、アミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合している分子構造を有するジアミンである。脂肪族ジアミンには、分子構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。脂肪族ジアミンとしては、ポリオキシアルキレンジアミンを挙げることができるほか、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ノルボルナンジアミン、パラキシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、ヘキサメチレンジアミン、メタキシリレンジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ビシクロヘキシルジアミン、シロキサンジアミン類などを挙げることができる。脂肪族ジアミンは、粘着剤組成物の硬化物を可撓性と粘着性に優れたものとするためには、ポリオキシアルキレンジアミンであることが好ましい。
【0037】
(第2の工程について)
第2の工程では、ポリイミド(A)に芳香族ジアミンを配合し無溶剤下で加熱してイミド化反応を行うことによりポリイミド(B)が合成される。
【0038】
第2の工程では、各種の有機溶媒中でポリイミド(A)と芳香族ジアミンのイミド化反応を実施しても良い。有機溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチレンスルホン、テトラヒドロフラン、アセトン等を使用できる。また、m−クレゾール、フェノール、ジグライム、トリグライム、テトラグライム、ジオキサン、γ―ブチロラクトン、ジオキソラン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなども使用可能であるが、N−メチルー2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンを単独または併用するのが好ましい。
【0039】
第2の工程においては、第1の工程と同じく、イミド化反応が、1〜12時間の反応時間、150〜200℃の反応温度という条件下で実施されることが好ましい。
【0040】
(芳香族ジアミン)
芳香族ジアミンは、下記式(4)に示すものである。
【0041】
【化9】

(Rは、アミノ基に芳香族環が直接結合している炭素数6〜27の2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【0042】
芳香族ジアミンは、アミノ基に芳香族環が直接結合しているジアミンである。芳香族ジアミンとしては、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、ジアミノベンゾフェノン、2,6−ジアミノナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、α、α’−ビス(3−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、α、α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼンおよび2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン等が例示される。この中で耐熱性と粘着性の観点から3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0043】
(第3の工程について)
第3の工程では、2の工程で合成されたポリイミド(B)とビスマレイミド化合物を混合する。これにより得られるものが、組成物(K)である。ビスマレイミド化合物は、架橋剤としての機能を示すものであり、ポリイミド(A)を製造するために用いた脂肪族ジアミン1モルに対して0.25モル以上4モル以下で配合されることが、粘着剤組成物の硬化物を可撓性に優れたものとするためには好ましい。
【0044】
(ビスマレイミド化合物)
ビスマレイミド化合物は、下記式(5)に示す化合物である。
【0045】
【化10】

(Zは2価の有機基である)
【0046】
ビスマレイミド化合物としては、N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルオキシ)ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジフェニルスルホン)ビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−2,4−トリレンビスマレイミド、N,N’−2,6−トリレンビスマレイミド、N,N’−エチレンビスマレイミド、N,N’−ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’−{4,4’−〔2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)イソプロピリデン〕}ビスマレイミド、N,N’−{4,4’−〔2,2’−ビス(4’’,4’’’−フェノキシフェニル)ヘキサフルオロイソプロピリデン〕}ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジメチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジエチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3,5−ジイソプロピルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、N,N’−(4,4’−ジシクロヘキシルメタン)ビスマレイミド、N,N’−p−キシリレンビスマレイミド、N,N’−m−キシリレンビスマレイミド、N,N’−(1,3−ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミド、N,N’−(1,4−ジメチレンシクロヘキサン)ビスマレイミド、ビスマレイミド化合物としては、N,N’ −(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−ビス(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドなどが例示できる。この中で耐熱性の観点からN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−〔4,4’−(3−メチル−5−エチルフェニル)メタン〕ビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミドが好ましい。
【0047】
本発明の粘着剤組成物には、イソシアネート系架橋剤が更に含まれてもよい。イソシアネート系架橋剤は、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成する上記ポリイミド(B)の架橋反応を行う架橋剤として機能することができるものである。
【0048】
(イソシアネート系架橋剤)
イソシアネート系架橋剤は、イソシアネート化合物とブロックイソシアネート化合物の少なくとも一方を含んでなる。
【0049】
イソシアネート系架橋剤として選択されうるイソシアネート化合物は、1分子あたり2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物であることが好ましい。具体的には、イソシアネート化合物としては、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物などを例示することができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。イソシアネート化合物が2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば、効果的にポリイミド(B)間を架橋重合反応させることができる。
【0050】
イソシアネート系架橋剤は、炭化水素の両末端の炭素にイソシアネート基を結合してなる化学構造を有するイソシアネート化合物を含んでなることが好ましい。このようなイソシアネート化合物としては、下記式(6)に示す化合物に示す化合物を挙げることができる。
【0051】
【化11】

(Rは、炭素数1〜18の2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【0052】
イソシアネート系架橋剤として選択されうるブロックイソシアネート化合物は、分子構造中に、ブロック剤で保護されたイソシアネート基を有する化合物である。また、ブロックイソシアネート化合物は、上記に挙げた1分子に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物のうち、少なくとも一部のイソシアネート基がブロック基で保護されているものであればよいが、ブロックイソシアネート化合物は、通常、上記に挙げたイソシアネート化合物のうち全部のイソシアネート基をブロック剤で保護してなるものである。
【0053】
ブロックイソシアネート化合物について、ブロック剤としては、フェノール、アルコール、マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン、ε−カプロラクタム等を例として挙げることができる。ブロックイソシアネート化合物は、ブロック剤としてオキシム化合物、活性メチレン化合物、カプロラクタム、アルコールが用いられるものであることが、ブロックイソシアネートの調製が容易である点では好ましい。
【0054】
ブロックイソシアネート化合物は、60℃以上150℃以下の温度範囲で加熱された場合に1分子あたり2以上のイソシアネート基を生じるものであり、80℃以上120℃以下の温度範囲で加熱された場合に1分子あたり2以上のイソシアネート基を生じるものであることが、粘着剤組成物の保存安定性や硬化を容易にする点で好ましい。
【0055】
イソシアネート系架橋剤は、適宜の配合量にて粘着剤組成物に添加されてよいが、100重量部のポリイミド(B)に対して1重量部から30重量部の範囲で配合されることが、粘着剤組成物の硬化物を可撓性に優れたものとするためには好ましく、3重量部から20重量部であることがより好ましい。イソシアネート系架橋剤の配合量が1重量部未満であれば粘着剤組成物の硬化物の架橋度が低く耐熱性が不足する虞があり、イソシアネート系架橋剤の配合量が30重量部を超えると過剰な架橋度になり粘着剤組成物の硬化物の粘着性が不足する虞がある。
【0056】
(エネルギー感受性塩基発生剤)
エネルギー感受性塩基発生剤は、熱またはエネルギー線によって塩基を発生するものである。
【0057】
エネルギー線は、光線と電離放射線とを含んでなる概念であり、光線は、紫外線と可視光線と赤外線のいずれか1種以上含んでなる概念であり、電離放射線は、X線やγ線等といった物質を電離させるエネルギーを有する放射線と電子線などの粒子線とを含む概念であるものとする。
【0058】
エネルギー感受性塩基発生剤は、熱またはエネルギー線によって第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アミジン系化合物のうちの少なくともいずれか1種の塩基を発生するものであることが好ましい。第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、は、特に限定されるものではないが、N−(イソプロポキシカルボニル)−2,6−ジメチルピペリジン、N−(tert−ブトキシカルボニル)−2,6−ジメチルピペリジン、N−(ベンジロキシカルボニル)−2,6−ジメチルピペリジン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンが例として挙げられる。また、アミジン系化合物は、下記式(7)に示すようなアミジンの構造を有する化合物とアミジンの部分構造を有する複素環式化合物とを含んでなる。具体的に、アミジン系化合物には、アミジンの部分構造を有する複素環式化合物のジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、イミダゾール、ピリミジン、プリンが含まれる。
【0059】
【化12】

(RからRは、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、または炭素数6〜12のアリール基である。また、RからRは、相互に連結して環状構造を形成してもよい。)

【0060】
熱によって塩基を発生するエネルギー感受性塩基発生剤としては、公知の熱塩基発生剤を用いることができ、粘着剤組成物に使用可能な熱塩基発生剤としては、サンアプロ株式会社製1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7エン(DBU)(登録商標)、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネ−5−エン(DBN)、U−CAT SA102、U−CAT SA506、U−CAT SA810、U−CAT 5002、U−CAT 5003、U−CAT 18XなどのU−CATシリーズ、POLYCAT 9、PORYCAT 12、POLYCAT 41などのPOLYCATシリーズを、具体的に挙げることができる。
【0061】
エネルギー感受性塩基発生剤のうち熱によって塩基を発生するもの(熱塩基発生剤)は、温度が200℃未満で塩基を生じるものであるが、温度が室温(25℃)以上200℃未満で塩基を生じるものであることが好ましく、温度が80℃以上180℃未満で塩基を生じるものであることがより好ましい。このようなエネルギー感受性塩基発生剤があまりに低い温度で塩基を生じるものであると、エネルギー感受性塩基発生剤の塩基発生反応の感受性が高くなりすぎて、粘着剤組成物を溶媒に溶かした塗工液の安定性が悪くなる虞がある。エネルギー感受性塩基発生剤が200℃を超えるようなあまりに高い温度条件下でないと塩基を生じないようなものであると、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物の架橋重合反応の触媒としての役割を果たすものではなくなってしまう虞がある。
【0062】
エネルギー感受性塩基発生剤のうちエネルギー線によって塩基を発生するもの(エネルギー線塩基発生剤)としては、公知のものを用いることが出来る。エネルギー線塩基発生剤としては、例えば、以下の化13に示すようなオキシムエステル系化合物、オキシムエステル系高分子が挙げられる。
【0063】
【化13】

【0064】
エネルギー線塩基発生剤としては、例えば、以下の化14に示すような、4級アンモニウム塩系化合物が挙げられる。
【0065】
【化14】

【0066】
エネルギー線塩基発生剤としては、例えば、以下の化15に示すようなアシル化合物が挙げられる。
【0067】
【化15】

【0068】
また、エネルギー線塩基発生剤としては、例えば、以下の化16、化17に示すようなカルバメート化合物等が挙げられる。
【0069】
【化16】

【0070】
【化17】

【0071】
また、エネルギー線塩基発生剤としては、例えば、以下の化18に示すような化合物が挙げられる。
【0072】
【化18】

(上記(化18)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R及びRは、それらが結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。但し、R及びRの少なくとも1つは1価の有機基である。また、化17における、R、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素、ハロゲン、水酸基、ニトロ基、ニトロソ基、メルカプト基、シリル基、シラノール基又は1価の有機基であり、同一であっても異なっていても良い。R、R、R及びRは、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していても良く、ヘテロ原子の結合を含んでいても良い。)
【0073】
化18で示すエネルギー線塩基発生剤は、上記のような特定の構造を有するため、紫外線などのエネルギー線が照射されることにより、(化18)中の(−CH=CH−C(=O)−)部分がシス体へと異性化し、さらに加熱によって環化し、塩基(NHR)を生成する。すなわち、化18で示すエネルギー線塩基発生剤は、その構造に応じて、塩基として、第1級アミン、第2級アミン、アミジン系化合物を生成しうる。
【0074】
化13から化18に示すようなエネルギー線塩基発生剤は単独種類で使用することも、複数種類を組み合わせて使用することもできる。
【0075】
(粘着剤組成物の調製)
本発明の粘着剤組成物は、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物と、エネルギー感受性塩基発生剤を混合することによって調製することができる。粘着剤組成物において、エネルギー感受性塩基発生剤の配合量(重量%)は、0.1重量%以上35重量%以下で、より好ましくは、1重量%以上10重量%以下である。粘着剤組成物においてエネルギー感受性塩基発生剤の配合量が0.1重量%未満であると、その配合量が少なすぎて粘着剤組成物の硬化が不十分となる虞があり、粘着剤組成物においてエネルギー感受性塩基発生剤の配合量が35重量%を超えると、その配合量が多すぎてエネルギー感受性塩基発生剤などの低分子成分が硬化物からブリードする虞がある。この点、エネルギー感受性塩基発生剤が好ましい配合量の範囲にあることで、粘着剤組成物を硬化させた際に所望の耐熱性を有する硬化物が得られるという効果を得ることができるようになる。
【0076】
本発明の粘着剤組成物には、さらに酸化防止剤やその他の添加剤が添加されていてもよい。
【0077】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、耐熱性を有するものであれば特に限定されるものではない。具体的に、酸化防止剤としては、ヒンダートアミン誘導体、ヒンダードフェノール誘導体、リン系化合物、イオウ系化合物、ヒドロキシル系化合物、トリアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体などが例示されるが、ヒンダートフェノール誘導体及び/又はベンゾトリアゾール誘導体が使用されることが好ましい。このような酸化防止剤が粘着剤組成物に含まれることにより、この粘着剤組成物からなる粘着層を基材シート上に形成した粘着テープに180℃を超えるような高温熱履歴をかけた場合に特に生じやすい粘着層の劣化の問題を、効果的に抑制することができる。
【0078】
粘着剤組成物には、100重量部の熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物に対する酸化防止剤の配合量が0.1重量部以上10重量部以下の範囲となるような配合割合にて、酸化防止剤が含有されていることが好ましい。酸化防止剤の配合量が0.1重量部未満であると粘着剤組成物を用いた粘着テープにおける粘着層の酸化劣化を抑制する能力が不足し、酸化防止剤の配合量が10重量部を超えると粘着層からの酸化防止剤のブリードによる糊残りが生じるため好ましくない。
【0079】
(その他の添加剤)
粘着剤組成物には、その粘着剤組成物を用いてなる粘着層を備えた粘着テープの用途、機能を害しない範囲で、可塑剤、充填材、帯電防止剤などの各種添加剤がさらに含まれていてもよい。
【0080】
(粘着剤組成物の状態)
粘着剤組成物には、ビスマレイミド化合物などの架橋剤の機能を有する化合物とポリイミド(B)との混合物でなる組成物(K)、およびエネルギー線感受性塩基発生剤の混合物や、これにそのほかの添加物を添加してなる混合物を所定の温度下で溶媒に溶解してなる溶液の状態のもの(粘着剤組成液)が含まれるほか、粘着剤組成液を構成する各固形分(非溶媒成分)の混合物の状態のもの(固形分の混合物)も含まれる。
【0081】
溶媒の量は、溶液を用いたキャスト製膜が可能な粘度となる量である事が好ましい。ポリイミド(B)とビスマレイミド化合物などの固形分を溶媒に溶解させる温度は、ビスマレイミド化合物を効果的に溶媒に溶解させて均一な溶液を得るとともに組成物(K)の硬化が進行してしまうことを抑制するためには、0℃〜80℃が好ましく、20℃〜60℃がより好ましい。また、溶媒は、沸点が、上記溶解温度以上であって熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物の硬化温度未満である。そこで、溶媒の沸点は、60℃以上200℃未満の範囲内にあることが好ましく、60℃以上180℃以下の範囲内にあることがより好ましく、80℃を超えて180℃以下の範囲内であることが更に好ましい。
【0082】
溶媒としては、1,3−ジオキソラン、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系の溶媒、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系の溶媒、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル系の溶媒、他にアセトニトリル等が挙げられる。特に、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド等のアミド系の溶媒を単独もしくは併用して用いる事が好ましい。
【0083】
次に、本発明の粘着剤組成物を用いて粘着層を形成した粘着テープについて述べる。この粘着テープは、様々な用途に使用することができるものである。特に、粘着テープが、QFN等の半導体製品を製造する各工程を実施する際に使用される粘着テープ(半導体製品組立用テープ)である場合について説明する。
【0084】
(粘着テープ1)
粘着テープ1は、耐熱性基材シート2面上に粘着層3を形成してなる(図1)。
【0085】
(耐熱性基材シート2)
耐熱性基材シート2は、QFN等の半導体製品を製造する各工程(半導体製品製造工程)を実施する際の最も高い処理温度(工程最高処理温度)を超える融点を有するシート材からなる。
【0086】
耐熱性基材シート2の材料となるシート材は、リードフレームに貼り付ける貼付工程やリードフレームから取り除く剥離工程を容易に実施するためには、柔軟性を有するフィルム材であることが好ましい。ただし、柔軟性を有するフィルム材は、半導体製品を製造する各工程を実施する際の温度範囲で過剰な膨張を生じないものであることが好ましい。このようなフィルム材としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルイミド、ポリエチレンナフタレート等からなるフィルム材が例示されるが、耐熱性に優れる点で、特にポリイミドが好ましい。
【0087】
耐熱性基材シート2の厚みは、5μmから200μmの範囲であることが好ましい。耐熱性基材シート2は、250℃で1時間加熱前後の重量減少率が5%未満であり、ガラス転移点が150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましい。また耐熱性基材シート2は、150℃から250℃における熱膨張係数が5〜50ppm/℃であることが好ましく、10〜30ppm/℃であることがより好ましい。耐熱性基材シート2が250℃で1時間加熱前後の高温加熱時の減少率が低く、重量減少率が5%未満である場合には、半導体製品製造工程を実施する際における高温加熱時に耐熱性基材シート2の分解が抑制されている。耐熱性基材シート2のガラス転移点が150℃以上であれば、半導体製品製造工程の高温加熱時に耐熱性基材シート2の軟化を抑制できる。また、耐熱性基材シート2の150℃から250℃における熱膨張係数が5〜50ppm/℃であることで、半導体製品製造工程時に加熱が行われた後の冷却にともなう粘着テープ1の熱収縮を抑え、半導体製品に反りが発生する虞を抑制することができる。
【0088】
(粘着層3)
粘着層3は、本発明の粘着剤組成物の硬化物からなる層である。
【0089】
粘着層3は、常温粘着性を有する。なお、本明細書において、「常温粘着性を有する」とは、常温(23℃から30℃)下でJIS Z 0237の貼り付け方法により被着体に貼り付け可能であることを示す。さらに、貼り付け可能とは、JIS Z 0237に規定されるSUS(ステンレス鋼)に対する粘着層3の剥離強度が0.001(N/25mm)以上であることを示す。なお、粘着層3の剥離強度は、好ましくは0.01(N/25mm)以上である。
【0090】
粘着層3は、所望の被着体に対する粘着性が、JIS Z 0237に基づくボールタック試験で1以上(ボールナンバーが1以上)であることが、より好ましい。粘着層3が、ボールタック試験法で1以上であるような粘着性を有すると、より確実に常温粘着性を示すこととなる。
【0091】
粘着性の測定に用いるJIS Z 0237に準拠したボールタック試験は、次のように実施される。
【0092】
まず、粘着テープ1を幅25mm〜50mm×長さ100mm以上に裁断した試験体を準備する。次に、ボールタック試験機に、粘着面が表面になるようにするとともに粘着面の傾斜角が30度となるように、試験体をセットする。さらに、ボールタック試験機にセットされた試験体の粘着面のうち所定の測定面内の領域を通過するように鋼球を転がす。このとき、鋼球を転がされる測定面の長さは、100mmである。また、鋼球は、直径が1/32インチから1インチまでの大きさのものを用いられるである。そして、これらの鋼球を転がした際に測定面の領域内で停止するような鋼球のうち、最大径のボールナンバーを見出す。ボールナンバーは、鋼球の直径を32倍することで求められる。ボールナンバーが1以上であれば、粘着面に粘着性が存在し、ボールナンバーが大きいほど、粘着面の粘着性が強い。
【0093】
粘着層3の厚みは、3μm以上50μm以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5μm以上20μm以下の範囲内である。粘着層3の厚みが3μm以下であると粘着強度が不足し、被着体への貼り付け性が低下する点で好ましくなく、50μm以上では粘着テープを貼り付けられた被着体の熱履歴後に粘着テープを被着体から剥離した際に被着体に糊残りが生じる虞があることから好ましくない。
【0094】
粘着層3は、ガラス転移温度が30℃未満であることが好ましい。ガラス転移温度が30℃未満であると、常温下(23℃から30℃)において、粘着層3は、より確実に粘着性を有するものとなる。
【0095】
ガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定されたものである。損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率の値により測定される。損失弾性率と貯蔵弾性率は、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物からなる層構造に対して一定の周波数で力を付与しその力を与えた時の応力を、動的粘弾性計測装置を用いて計測することで測定される。
【0096】
(粘着テープ1の製造)
上記粘着テープ1は、次のように製造される。
【0097】
まず、粘着剤組成物が、熱を受けることによって塩基を生じるエネルギー感受性塩基発生剤を含む場合(第1の場合)について述べる。この場合、粘着剤組成物を溶媒に添加して得られた粘着剤組成液を、耐熱性基材シート2面上に塗布して塗布膜を形成する。粘着剤組成液の塗布方法は、ダイレクトグラビアコート法、グラビアリバースコート法、マイクログラビアコート法、ファンテンコート法、ディッピング法、コンマコート法、ダイコート法等の公知の塗布方式を適宜採用することができる。
【0098】
次に、塗布膜を形成した耐熱性基材シート2が所定時間、所定温度雰囲気下に置かれることで塗布膜が加熱される(加熱工程)。加熱工程での加熱温度は、溶媒の沸点以上の温度であって、且つエネルギー感受性塩基発生剤から塩基が生じうる温度範囲を満たすような温度が選択される。具体的には、加熱工程は、80〜200℃の温度下、好ましくは100〜150℃の温度下で実施される。また、加熱時間は、1〜15分、好ましくは3〜10分であればよい。加熱方法は、従前より公知な加熱方法を適宜採用されてよい。加熱工程では、溶媒が留去されて塗布膜が乾燥される。さらに、この加熱工程において、塗布膜に含まれる熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)とビスマレイミド化合物が架橋重合反応する。この架橋重合反応の進行により塗布膜の硬化が生じる。そして、このとき、塗布膜が硬化して粘着剤組成物の硬化物が形成され、これが粘着層3をなす。こうして、粘着テープ1が製造される。なお、粘着剤組成物にイソシアネート系架橋剤が添加されている場合には、この加熱工程において、塗布膜に含まれる熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)とビスマレイミド化合物が架橋重合反応するほかに、ポリイミド(B)とイソシアネート系架橋剤との架橋重合反応も生じうる。
【0099】
なお、粘着テープ1を製造するにあたり、加熱工程後に、エネルギー線照射工程が実施されてもよい。この場合、架橋重合反応がより効率的に十分に進行するようになり、十分に粘着剤組成物を硬化させた粘着層を形成した粘着テープが得られ、粘着テープの耐熱性を一層効率的に向上させることができるようになる。
【0100】
エネルギー線照射工程は、塗布膜に向けて、所定時間、所定のエネルギー線が照射される工程である。エネルギー線照射工程は、エネルギー線の照射強度50〜1000mJ/cmの条件下、好ましくは100〜500mJ/cmの条件下で実施されればよい。エネルギー線照射方法は、従前より公知な方法を適宜採用されてよい。たとえば、紫外線を照射する場合には、汎用の紫外線ランプを光源として用いて塗布膜に向けて紫外線を照射すればよい。
【0101】
粘着剤組成物が、エネルギー線を受けることによって塩基を生じるエネルギー感受性塩基発生剤を含む場合(第2の場合)については、第1の場合と同様に耐熱性基材シート2面上に、粘着剤組成物を塗布後、加熱工程を実施して、塗布膜が乾燥される。そして、その後、塗布膜に向けて、所定時間、所定のエネルギー線が照射される。エネルギー線の照射は、上記したエネルギー線照射工程と同様の方法および条件で実施される。こうして、粘着テープ1が製造される。
【0102】
なお、粘着テープ1は上記第1,2の場合のほかに、粘着剤組成物が、熱またはエネルギー線の少なくとも一方を受けることによって塩基を生じるエネルギー感受性塩基発生剤を含む場合(第3の場合)と、粘着剤組成物が、熱を受けることによって塩基を生じるエネルギー感受性塩基発生剤とエネルギー線を受けることによって塩基を生じるエネルギー感受性塩基発生剤とを含む場合(第4の場合)があるが、第3の場合には、上記したエネルギー線照射工程もしくは加熱工程が実施されればよく、第4の場合には、エネルギー線照射工程および加熱工程が実施されればよい。
【0103】
なお、加熱工程とエネルギー線照射工程との両工程が実施される場合、両工程は別々に実施されてもよいし同時に実施されてもよい。
【0104】
従来、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の架橋重合反応を進行させるための加熱工程は、温度180〜250℃という高温雰囲気下で、30〜90分の加熱時間という長時間の条件をかけて実施される必要があった。この点、本発明の粘着剤組成物を用いて粘着テープを製造することで、上記従来の加熱工程のような高温雰囲気下かつ長時間の条件を架橋重合反応に要する必要がなく、架橋重合反応を比較的低温雰囲気下で実施でき、しかも、短時間の条件で、架橋重合反応を十分に効率的に進行させることができるようになり、効率的に粘着層を形成することが可能となる。したがって、本発明の粘着剤組成物を用いて粘着テープを製造することで、粘着テープの製造コストが高騰する虞を抑制できるとともに、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の架橋重合反応が不十分で熱硬化性ポリイミド樹脂組成物の未硬化物が残存する虞を抑制することもできる。
【0105】
(粘着テープ1の使用)
粘着テープ1は、半導体製品のパッケージ形態をQFNとする場合の半導体製品の製造プロセス(QFNプロセス)の実施工程で用いられる半導体製品組立用テープとして使用される。
【0106】
QFNプロセスは、粘着テープ1をリードフレームに貼り付ける工程(貼付工程)、リードフレームに半導体チップを搭載する工程(ダイボンディング工程)、リードフレームのリード部と半導体チップとをボンディングワイヤーで接続する工程(ワイヤーボンディング工程)、リードフレームの表面の半導体チップを樹脂で封止する工程(樹脂封止工程)、リードフレーム裏面の粘着テープ1を取り除く工程(剥離工程)、リードフレームを分割する工程(カッティング工程)を備えてなる。
【0107】
(貼付工程)
まず、図2(a)に例示するようなリードフレーム10を準備する。この例に示すリードフレーム10は、枠部30と、枠部30に取り囲まれたパッケージ用領域形成部31とからなる。パッケージ用領域形成部31は、複数の単位領域11に区画化されている。各単位領域11は、整然と区画化されて形成されている。リードフレーム10では、リードフレーム10上のパッケージ用領域形成部31は、平面視上、縦横のマトリックス状のパターンに区画化され、図2(a)(c)に示すように、区画化された各部分の領域が単位領域11をなす。図2(c)は、図2(a)におけるA−A線縦断面を模式的に示す部分断面模式図である。
【0108】
リードフレーム10においては、図2(b)に示すように単位領域11には、個々のQFN用の半導体チップを配置されるダイパッドを形成した所定のパッケージパターン形成部32が形成されている。具体的には、単位領域11ごとにQFNの規格に応じたパッケージパターン形成部32が形成されている。リードフレーム10は、例えば銅などの金属を素材としており、また、リードフレーム10の厚みは、50〜300μmが一般的である。図2(b)は、図2(a)における領域Sの部分を拡大して模式的に示す部分拡大模式図である。
【0109】
リードフレーム10の単位領域11に形成されるパッケージパターン形成部32は、図2(b)の例では、半導体チップを搭載される平面視上矩形状のダイパッド12を単位領域11の中央に形成し、ダイパッド12の周囲に櫛歯状のリード部13をその先端をダイパッド12の四側周縁に向けて形成し、ダイパッド12とリード部13との間に隙間部14を形成し、ダイパッド12の四方を支える4つの支持部33を形成してなる。
【0110】
貼付工程では、粘着テープ1が、その粘着層3面を、リードフレーム10の裏面側に当接するように配置されるとともにリードフレーム10に押し当てられ、粘着テープ1が面あたりにリードフレーム10の裏面に貼り付けられる(図3(a))。なお、リードフレーム10の裏面とは、ダイパッド12の裏面、すなわち半導体チップの非当接面となるほうの面を示す。
【0111】
粘着テープ1は、少なくともパッケージ用領域形成部31の領域を含みさらにその周縁よりも外側の領域まで含む領域にわたってリードフレーム10裏面に貼着され、樹脂にて封止されるリードフレーム10の部分に対応する領域の外側まで貼着される。
【0112】
(ダイボンディング工程)
貼付工程の後、図3(b)に示すように、リードフレーム10の露出面側(表面側)のダイパッド12の表面(図3において符号12aで示す)上に半導体チップ15を、固定材16を介して接着する。これにより、ダイパッド12上に半導体チップ15を搭載する。固定材16には、エポキシ銀ペースト(エポキシ樹脂を樹脂成分とする銀ペースト)などの接着剤が用いられる。
【0113】
このダイボンディング工程は、150℃から180℃の雰囲気温度下で実施される。
【0114】
(ワイヤーボンディング工程)
ダイボンディング工程の後、半導体チップ15とリードフレーム10のリード部13とをボンディングワイヤー17により電気的に通電可能に接続する(図3(c))。
【0115】
このワイヤーボンディング工程は、180℃から250℃の雰囲気温度下で実施される。
【0116】
(樹脂封止工程)
ワイヤーボンディング工程の後、ボンディングワイヤー17を接続された半導体チップ15を搭載したリードフレーム10の表面全面を覆うように、樹脂を流しこんで、樹脂層18を形成する。このとき、ボンディングワイヤー17を接続された半導体チップ15が樹脂層18に閉じ込められた状態が形成され、樹脂によって、半導体チップ15やボンディングワイヤー17が保護されるとともに半導体チップ15とリード部13とがボンディングワイヤー17を介して接続された状態にて、封止がなされる(図3(d))。この封止のために使用される樹脂としては、エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0117】
封止工程は、具体的に、リードフレーム10を所定形状の金型内にセットして溶融状態の樹脂を注ぎ込んで金型中で樹脂層の成型が行われることが通常である。この成形は、樹脂を170〜180℃程度の温度まで加熱し、この温度で樹脂層の成形が行われる。
【0118】
(剥離工程)
樹脂封止工程の後、リードフレーム10の裏面に貼着されていた粘着テープ1が取り除かれる(図3(e))。
【0119】
そして、最後に、リードフレーム10を、各パッケージ単位に分割して(分割位置の例については、図3(e)において、K1、K2、K3、K4にて示す)(カッティングして)個片化し、図3(f)に示すようなQFN20が製造される。カッティングは、例えばダイサーなどの切断刃にて樹脂層18とリードフレーム10をカットすることにより実現できる。
【0120】
なお、リードフレームを説明するにあたり、図2(c)に示すように単位領域11が互いに離間している場合を例としたが、このような例に限定されず、となりあう単位領域11同士は境界を接していてもよい。その場合、図3(e)に示す分割位置K1、K2は、互い重なり合っていてもよく、さらにまた、分割位置K3、K4も重なり合っていてもよい。
【0121】
このように、本発明の粘着材組成物を用いて得られる粘着テープ1は、半導体チップの搭載及び結線が実施される前のリードフレームの裏面側に貼り合わせられ、且つ、リードフレームのダイパッド上に搭載された半導体チップを樹脂により封止された後に剥離されるものである。そして、リードフレーム裏面から粘着テープ1が剥離された後においては、所定のサイズにカットされて半導体製品が製造されることになる。
【0122】
粘着テープ1は、ポリイミド系樹脂フィルムからなる基材シート2と、その基材シート2面に形成されたポリイミド系樹脂組成物の架橋重合硬化物からなる粘着層3とを備えてなるので、耐熱性に優れるものであり、QFNプロセスの各工程が上記のような高温雰囲気下で実施されても粘着層3に劣化を生じにくく、QFNプロセスにおいて好適に使用可能なものである。
【0123】
(他の使用)
なお、上記では、粘着テープ1が、QFNプロセスで半導体製品が製造される際に用いられる半導体製品組立用テープである場合を例として説明したが、粘着テープ1は、QFNプロセスに用いるものに限定されず、SONプロセス、DFN(Dual Flat Non−leaded Package)プロセスなど、広く、ダイパッドにチップを固定した状態にして樹脂を封止するように構成されるパッケージプロセスに用いられる半導体製品組立用テープであってもよい。さらに、この粘着テープ1は、パッケージプロセスの途中の必要なプロセスにのみ使用される半導体組立用テープとしての用途以外に、最終製品の接着層を形成するために用いるテープとして永久的に接着する用途でも適応可能である。
【実施例】
【0124】
本発明の粘着剤組成物を得るにあたり、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を調製した。
【0125】
熱硬化性ポリイミド樹脂組成物を調製するために、次のようにポリイミド(A)を調製し、さらにポリイミド(B)を調製した。
【0126】
<ポリイミド(A、B)の合成>
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物20.35g(0.090モル)、ポリオキシプロピレンジアミン(三井化学ファイン株式会社製、ジェファーミンD2000)118.81g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン91.50gを窒素気流下で加え合わせ、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置を用いて生成水を分離した。反応後、水の留出がないことを確認し、室温(23℃)まで放冷し反応物(ポリイミド(A))を得た。ポリイミド(A)の生成有無は、IRスペクトルを確認して、ν(C=O)1770、1706cm−1のイミド環の特性吸収を確認することで判定できる。次に、ポリイミド(A)に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル12.08g(0.060モル)、N−メチル−2−ピロリドン9.74gを加え、200℃に昇温して3時間イミド化反応を行い、ディーンスターク装置で生成水を分離した。イミド化反応後、水の留出が止まったことを確認し、反応生成物溶液を室温まで放冷し、反応生成物溶液中に反応物(ポリイミド(B))を得た。ポリイミド(B)の生成有無は、IRスペクトルから確認される。
【0127】
<熱硬化性ポリイミド樹脂組成物(P)の調製>
粘着層を形成する熱硬化性ポリイミド樹脂組成物(P)は、窒素気流下、ポリイミド(B)に、架橋剤であるN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを混合することによって得られた。
【0128】
<エネルギー感受性塩基発生剤の準備>
エネルギー感受性塩基発生剤には、次に示す塩基発生剤A1からA7(塩基発生温度はいずれも80℃から180℃の間)が準備された。
塩基発生剤A1:熱塩基発生剤(サンアプロ株式会社製、U−CAT 18X)
塩基発生剤A2:熱塩基発生剤(サンアプロ株式会社製、U−CAT 5002)
塩基発生剤A3:熱塩基発生剤(サンアプロ株式会社製、U−CAT SA810)
塩基発生剤A4:熱塩基発生剤(サンアプロ株式会社製、U−CAT SA506)
塩基発生剤A5:エネルギー線塩基発生剤(DNCDP)
塩基発生剤A6:エネルギー線塩基発生剤(下記化19に示す化合物)
塩基発生剤A7:熱塩基発生剤(サンアプロ株式会社製、U−CAT 5002)とエネルギー線塩基発生剤(DNCDP)の併用(配合比率は、U−CAT 5002:DNCDP= 1(重量部):1(重量部))
【0129】
【化19】

【0130】
塩基発生剤A1は、加熱により、3級アミンを発生し、塩基発生剤A2,A3,A4は、いずれも加熱によりアミジンを塩基として発生する。塩基発生剤A5は、エネルギー線としての紫外線(365nm)の照射により2級アミンを塩基として発生する。塩基発生剤A6は、エネルギー線としての紫外線(365nm)の照射により1級アミンを塩基として発生する。なお、上記したDNCDPは、N−{[(4,5−ジメトキシ−2−ニトロベンジル)オキシ]カルボニル}−2,6−ジメチルピペリジンを示す。
【0131】
<酸化防止剤の準備>
酸化防止剤には、次に示す酸化防止剤B1〜B3が準備された。
酸化防止剤B1:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1010)
酸化防止剤B2:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1098)
酸化防止剤B3:ヒンダートフェノール系酸化防止剤(チバ・ジャパン株式会社製、IRGANOX1010)と1,2,3−ベンゾトリアゾールの併用
(配合比率は、ヒンダートフェノール系酸化防止剤:1,2,3−ベンゾトリアゾール=2(重量部):1(重量部))
【0132】
実施例1から7
上記熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)および架橋剤と、表1に示すように適宜選択されたエネルギー感受性塩基発生剤を用い、これらを下記の配合量にて混合することにより、粘着剤組成物たる混合物(実施例番号の昇順に、それぞれCA1からCA7)が調製された。
【0133】
<CA1からCA7の粘着剤組成物の各成分の配合量>
ポリイミド(B) :100(重量部)
架橋剤 : 15(重量部)
エネルギー感受性塩基発生剤: 1(重量部)
【0134】
得られた粘着剤組成物それぞれに基づき硬化物を調製し、その硬化物のガラス転移温度が特定された。
【0135】
<粘着剤組成物からなる硬化物>
粘着剤組成物からなる硬化物の調製にあたり、次のような組成液を調製した。組成液は、N,N’−ジメチルアセトアミド(DMAc)と1,3−ジオキソランの混合液(混合液の混合比率は、体積比率でDMAc:1,3−ジオキソラン=30%:70%とした)を用いて、固形分濃度(重量%)が25%となるように熱硬化性ポリイミド樹脂組成物(P)が希釈されるように、室温で粘着剤組成物を1時間攪拌し完全に溶解させることでえられた。この組成液を200℃で30分の条件で硬化させ、熱硬化性ポリイミド樹脂組成物からなる硬化物が得られた。粘着剤組成物(CA1からCA7)を用いた硬化物それぞれについて、その硬化物のガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づき(DMA法に基づき)測定された。粘着剤組成物(CA1からCA7)を用いた硬化物のそれぞれについてのガラス転移温度は、CA1を用いた硬化物では−23℃、CA2を用いた硬化物では−30℃、CA3を用いた硬化物では−27℃、CA4を用いた硬化物では−27℃、CA5を用いた硬化物では−25℃、CA6を用いた硬化物では−26℃、CA7を用いた硬化物では−26℃であった。
【0136】
実施例8から16
上記熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)および架橋剤と、表1に示すように適宜選択されたエネルギー感受性塩基発生剤と酸化防止剤を用い、これらを下記の配合量にて混合することにより、粘着剤組成物たる混合物(実施例番号の昇順に、それぞれCA8からCA16)が調製された。
【0137】
<CA8からCA16の粘着剤組成物の各成分の配合量>
ポリイミド(B) :100(重量部)
架橋剤 : 15(重量部)
エネルギー感受性塩基発生剤: 1(重量部)
酸化防止剤 : 3(重量部)
【0138】
比較調製例1
上記熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)および架橋剤を用い、これらを下記の配合量にて混合することにより、粘着剤組成物たる混合物(CB1)が調製された。
【0139】
<CB1の粘着剤組成物の各成分の配合量>
ポリイミド(B) :100(重量部)
架橋剤 : 15(重量部)
【0140】
比較調製例2,3
上記熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)および架橋剤と、表1に示すように適宜選択された酸化防止剤を用い、これらを下記の配合量にて混合することにより、粘着剤組成物たる混合物(CB2、CB3)が調製された。
【0141】
<CB2、CB3の粘着剤組成物の各成分の配合量>
ポリイミド(B) :100(重量部)
架橋剤 : 15(重量部)
酸化防止剤 : 3(重量部)
【0142】
【表1】

表1中「−」は、添加されなかったことを示す。
【0143】
実施例17から19
粘着剤組成物CA1を用いて粘着テープを調製した。
【0144】
<粘着剤組成液の調製>
固形分濃度(重量%)が25%となるように熱硬化性ポリイミド樹脂組成物(P)が希釈されるように、表2に示すような粘着剤組成物CA1(100重量部)を粘着剤組成液調製用の溶媒(溶媒M)に混合して、室温で1時間攪拌し完全に溶解させることで粘着剤組成液が調製された。本願発明においては、粘着剤組成物の概念に粘着剤組成液が含まれ、粘着剤組成液は、粘着剤組成物の一形態に対応するが、便宜上、粘着剤組成液の文言を用いることとする。
【0145】
溶媒Mには、次のような組成を有するものが用いられた。
溶媒Mの組成:DMAcと1,3−ジオキソランの併用(配合比率は、体積比率(%)で、DMAc:1,3−ジオキソラン=30:70)
【0146】
<粘着テープの調製>
粘着剤組成液を用いて、これをポリイミドフィルム(東レ・デュポン株式会社製、カプトン100V)(厚さ25μm)(250℃で1時間加熱前後の重量減少率が1%未満)の片面に、乾燥後の厚さが5μmになるようベーカー式アプリケーターを用いて一面塗布して塗布膜を作製し、塗布膜に含まれる熱硬化型ポリイミド樹脂組成物の架橋重合反応を進行させ(架橋重合工程)、その塗布膜を粘着層となすことで、粘着テープ(半導体製品組立用テープ)を得た。実施例17から19のそれぞれについて、架橋重合工程は、表2に示すような実施条件で行われた。実施例17から19では、架橋重合工程は、塗布膜を形成したポリイミドフィルムの加熱を行う工程となっている(加熱工程)。そして加熱工程の際の加熱時間、加熱温度が、表2に示される。このように架橋重合工程が加熱工程で構成される場合、この加熱工程の実施には、高温槽(楠本化成株式会社製、エタック高温槽HT320)が用いられる。なお、表2中「ND」は、データの取得がなされていないことを示す。また、後述の表3,4中の「ND」も、データの取得がなされていないことを示す。
【0147】
架橋重合工程を実施した際、塗布膜の硬化が生じたか否かについて、次のように評価した。なお、これらの評価の結果は、表2に示すとおりである。
【0148】
(塗布膜の硬化)
塗布膜の硬化の有無の評価は、次のようなフィルム剥離試験によって行われた。
【0149】
(フィルム剥離試験)
塗布膜面に、試験用フィルムとしてポリオレフィン樹脂製のフィルム材(300mm×210mm)(東レ株式会社製、トレファンBO40−2500)を室温下でハンドローラーを用いて貼り付ける。貼り付けの直後に塗布膜面から試験用フィルムを剥離させる。このとき、ポリイミドフィルム上の塗布膜が試験用フィルム側に残ったか否か(凝集破壊が生じたか否か)を目視で観察した。
【0150】
(塗布膜の硬化の有無の評価)
塗布膜の硬化の有無の評価については、塗布膜が試験用フィルム側に残らない(糊残りがない)場合、すなわち試験用フィルムを剥離した時に凝集破壊の発生が認められない場合に、塗布膜の硬化が十分であると判断し、「○」(良好)と評価した。試験用フィルムを剥離した時に凝集破壊の発生が認められないが、剥離後の塗布膜の面に微細な凹凸が認められた(塗布面が荒れていた)場合に、塗布膜の硬化が十分とまではいえないと判断し、「△」(やや不良)と評価した。試験用フィルムを剥離した時に凝集破壊の発生が認められた場合に、塗布膜の硬化が不十分であると判断し、「×」(不良)と評価した。
【0151】
【表2】

【0152】
【表3】

【0153】
【表4】

【0154】
実施例20
実施例17と同様に、粘着剤組成物CA1と溶媒を用いて粘着剤組成液を得て、ポリイミドフィルム面に粘着剤組成液の塗布膜を形成した。次に、架橋重合工程を実施して粘着テープを得た。架橋重合工程の実施条件には、表2に示すような条件が採用された。実施例20では、架橋重合工程は、加熱工程と、塗布膜を形成したポリイミドフィルムにエネルギー線を照射する工程(エネルギー線照射工程)とで構成されている。加熱工程は、実施例17と同様に、高温槽(楠本化成株式会社製、エタック高温槽HT320)を用いて実施された。
【0155】
また、エネルギー線照射工程では、塗布膜を形成したポリイミドフィルムに紫外線が照射された。紫外線の照射には、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ社製、VPS/I600(コンベア付UV照射装置)が用いられた。この紫外線照射装置において、ランプとして、Hバルブが用いられた。また、UV照射条件は、ランプ出力60%、コンベアースピード10m/minとした。紫外線照射装置を用い、塗布膜を形成したポリイミドフィルムがコンベアに載せられて移送されながら塗布膜に紫外線を照射される工程(移送照射工程)が実施されるが、この工程が1回実施されることで、100mJ相当の紫外線が塗布膜に照射される。塗布膜に紫外線を500mJ照射する場合には、移送照射工程が5回くりかえして実施される。
【0156】
なお、このように架橋重合工程が加熱工程でとエネルギー線照射工程で構成される場合、加熱工程の後にエネルギー線照射工程を実施する。
【0157】
架橋重合工程を実施した際、塗布膜の硬化が生じたか否かについて、実施例17と同様に評価を行った。これらの評価の結果は、表2に示すとおりである。
【0158】
実施例21,23,25
表2に示すように粘着剤組成物CA2からCA4を用いて粘着剤組成液を調製し、表2に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例17と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表2に示すとおりである。
【0159】
参考例1,2,3,4
表2に示すように粘着剤組成物CA5,CA6を用いて粘着剤組成液を調製し、表2に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例17と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表2に示すとおりである。参考例1,3では、粘着テープが得られたが、参考例2,4では、塗布膜の硬化が不十分で粘着層が形成されず、粘着テープが得られなかった。
【0160】
実施例22,24,26,27,28,29
表2に示すような粘着剤組成物CA2からCA7を用いて粘着剤組成液を調製し、表2に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例20と同様にして、粘着テープを得るとともに、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表2に示すとおりである。
【0161】
実施例30から34,37から39,41から43,45,47,49
表3に示すように粘着剤組成物CA8からCA13を用いて粘着剤組成液を調製し、表3に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例17と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表3に示すとおりである。
【0162】
参考例5,6,7,8
表3に示すように粘着剤組成物CA14,CA15を用いて粘着剤組成液を調製し、表3に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、参考例1と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて、および、粘着層の状態について評価を行った。結果は、表3に示すとおりである。参考例5,7では、粘着テープが得られたが、参考例6,8では、塗布膜の硬化が不十分で粘着層が形成されず、粘着テープが得られなかった。
【0163】
実施例35,36,40,44,46,48,50から53
表3に示すような粘着剤組成物CA8からCA16を用いて粘着剤組成液を調製し、表3に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例20と同様にして、粘着テープを得るとともに、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表3に示すとおりである。
【0164】
参考例9から11
表4に示すように粘着剤組成物CB1,CB2,CB3を用いて粘着剤組成液を調製し、表4に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、参考例1と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表4に示すとおりである。
【0165】
比較例1,2,4,5,7,8
表4に示すように粘着剤組成物CB1からCB3を用いて粘着剤組成液を調製し、表4に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例17と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表4に示すとおりである。
【0166】
比較例3,6,9
表4に示すような粘着剤組成物CB1からCB3を用いて粘着剤組成液を調製し、表4に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例20と同様にして、粘着テープの調製を実施し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて、および、粘着層の状態について評価を行った。結果は、表4に示すとおりである。
【0167】
実施例17から20,22,24,26から53、参考例1,5,9から11で得られた粘着テープを用いて、それぞれについて、粘着性試験を実施して粘着層の粘着性を測定し、さらに剥離試験を実施して糊残りの発生有無を確認するとともに、粘着強度の測定を行った。結果を表5から表7に示す。
【0168】
(粘着性試験)
粘着性試験は、JIS Z 0237に準拠したボールタック試験により実施された。
【0169】
まず、得られた粘着テープを幅25mm×長さ100mmに裁断した試験体を準備した。次に、ボールタック試験機(テスター産業株式会社製)に、粘着面が表面になるように試験体をセットした(粘着面の傾斜角が30°)。さらに、23℃雰囲気下で、ボールタック試験機にセットされた試験体の粘着層表面の測定面領域を通過するように鋼球を転がす(測定面の長さは、100mm)。このとき、鋼球は、直径が1/32インチから1インチまでの大きさのものを用いた。そして、これらの鋼球を転がした際に測定面の領域内で停止するような鋼球のうち、最大径のボールナンバーの値を特定した(表5から7)。ボールナンバーは、鋼球の直径を32倍することで求められる。表5から表7中、ボールタック試験欄の各数値は、ボールナンバーの値を示す。
【0170】
(剥離試験)
剥離試験は、JIS Z 0237に準拠した粘着力測定方法を行うことにより実現された。粘着力測定方法として次のような初期粘着強度測定と加熱後粘着強度測定を行った。
【0171】
(初期粘着強度測定)
得られた粘着テープを25mm幅×150mmに裁断し、貼り付け面積が25mm×100mmになるように室温下2kgローラーでSUS304に貼り付けて試験体を得た。試験体を1時間室温下で保管し(保管処理)、保管処理の後、試験体を引張試験機(エーアンドディ社製(TENSILON RTF−1150−H))にセットして、試験体から粘着テープを、引張速度300mm/分で、180°方向に引き剥がし(剥離処理)、剥離処理の際に試験体から粘着テープを剥離するために要する力を測定することで粘着強度(N/25mm)を測定した(表5から表7)。
【0172】
(加熱後粘着強度測定)
加熱後粘着強度測定は、保管処理にかえて試験体を加熱する処理(試験体加熱処理)を行ったほかは、初期粘着強度測定と同じ方法を用いて実施され、粘着強度(N/25mm)が測定された。ただし、試験体加熱処理は、実施例17から20,22,24,26から29、参考例1で得られた粘着テープを用いた場合には、温度200℃×加熱時間30minの条件で実施された。また、実施例30から53、参考例5,9から11で得られた粘着テープを用いた場合には、試験体加熱処理は、温度200℃×加熱時間30min、温度250℃×加熱時間30minの2とおりの条件で実施された。加熱後粘着強度測定では、さらに、剥離処理の際に被着体表面に糊残りが生じたか否かについて目視にて確認した(表5から表7)。表5から表7の各表中、剥離試験欄において、数値は、粘着強度(N/25mm)を示し、「有」が、糊残りが認められたことを示し、「無」が、糊残りが認められなかったことを示す。
【0173】
被着体としては、初期粘着強度測定および加熱後粘着強度測定の両方についてステンレス(SUS)材(SUS304)が用いられた。
【0174】
また剥離試験は、初期粘着強度測定および加熱後粘着強度測定のいずれも、酸素存在雰囲気下で実施された。
【0175】
【表5】

【0176】
【表6】

【0177】
【表7】

【0178】
粘着性試験および剥離試験の結果から、粘着テープは200℃という高温加熱履歴に対しても貼り付け面の端縁部に糊残りをほとんど生じず、劣化しにくいものであることがわかる。さらに、これらの試験の結果から、酸化防止剤を添加された粘着層を有する粘着テープにいたっては、250℃という高温加熱履歴に対しても貼り付け面の端縁部に糊残りをほとんど生じず、劣化しにくいものであることもわかる。
【0179】
実施例17,20,22,24,26から30,36,40,44,46,48,50から53、参考例9から11で得られたそれぞれ粘着テープを用いて、ワイヤーボンディング試験を実施し、半導体製品組立工程のワイヤーボンディング工程の歩留まりを測定し、且つ、樹脂はみ出し確認試験を行った。結果を表8から10に示す。
【0180】
(ワイヤーボンディング試験)
粘着テープをリードフレーム(QFN用リードフレーム(Cuリードフレーム)縦200mm×横50mm)の裏面に貼り付け、ダイパット部分にエポキシフェノール系の銀ペーストを接着剤として用いて半導体チップに接着し、180℃の雰囲気下で90分間銀ペーストの硬化処理を実施することで、ダイパット上に半導体チップを搭載した。次に、ワイヤーボンディングを行った。ワイヤーボンディングは、1つのワイヤの一方端をダイパッド上のチップ領域内の1箇所に接続する工程(ファーストボンディング(1st))と、他端をリード部の1箇所に接続する工程(セカンドボンディング(2nd))とで1セットとなっており、この工程をダイパッド領域内の接続箇所数に応じたセット数くりかえして実施される。ワイヤーボンディング試験では、ダイパッド上のチップ1つにおけるリード部に対面する部分に、垂直方向に4ワイヤ(ワイヤ長2mm弱)、水平方向に4ワイヤ(ワイヤ長2mm弱)、これを5段、合計40箇所のワイヤーボンディングを行った。したがって、上記ファーストボンディングとセカンドボンディングが40セットくりかえして実施された。このとき、未着状況の確認を行った。
【0181】
ワイヤーボンディングには、ワイヤーボンダー(HW27U−HF(パナソニックファクトリーソリューションズ株式会社)が用いられ、下記のボンディング条件で実施された。
【0182】
(ボンディング条件)
・トーチレベル:0.999mm
・ボンドレベル:(1st)5.5826mm、(2nd)5.826mm
・サーチ速度:(1st)6、(2nd)6
・ループ高さ:Nonset、rev−0.180mm
・ループモード:STD B
・テール長さ:0.699mm
・軌跡補正:0.000ms
・US(超音波)発振時間:(1st)15ms、(2nd)10ms
・USパワー:(1st)55bit、(2nd)150bit
・ボンド荷重:(1st)40g、(2nd)120g
・ボンディング温度:200℃
【0183】
(樹脂はみ出し確認試験)
ワイヤーボンディング試験に引き続き、樹脂のはみ出しを確認する試験を行った。樹脂はみ出し確認試験は、ワイヤーボンディング終了後、さらにエポキシ系モールド樹脂を用いて、175℃雰囲気下、5分間の条件でその樹脂による封止処理を実施した後、室温下で粘着テープを剥離処理し、この剥離処理の際にフレームからの樹脂のはみ出しが認められる否かを確認することによって実施された。結果を表8から10に示す。
【0184】
比較例10
実施例17の粘着テープにかえて市販のテープ(日東電工社製、TRM−6250L)を用いたほかは、実施例17と同様にしてワイヤーボンディング試験および樹脂はみ出し確認試験を行った。結果を表10に示す。ワイヤーボンディング試験の結果、未着箇所が9箇所確認された。9箇所のうちファーストボンディングで未着であった箇所が3箇所、セカンドボンディングで未着であった箇所が5箇所、ファーストボンディングおよびセカンドボンディングともに未着であった箇所が1箇所であった。また、樹脂はみ出し確認試験の結果、樹脂のはみ出しがあることが確認された。
【0185】
【表8】

【0186】
【表9】

【0187】
【表10】

【0188】
表5から表10により、本発明の粘着剤組成物により調製された粘着テープは、半導体製品組立用テープとして有効なものであることが確認される。
【0189】
実施例54から57
実施例1と同様にして、熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物を構成するポリイミド(B)と架橋剤となるN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを準備し、ポリイミド(B)およびN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、実施例1で選択されたエネルギー感受性塩基発生剤を用い、これらを下記の配合量にて混合することにより、粘着剤組成物たる混合物が調製された。この混合物には、イソシアネート系架橋剤として、実施例54についてはイソシアネート化合物G1−1を、実施例55についてはイソシアネート化合物G1−2を、実施例56についてはブロックイソシアネート化合物G2−1を、実施例57についてはブロックイソシアネート化合物G2−2を、それぞれ15重量部添加して、粘着剤組成物CC1からCC4が調製された(表11)。なお、各イソシアネート系架橋剤は、下記に示す。
【0190】
<CC1からCC4の粘着剤組成物の各成分の配合量>
ポリイミド(B) :100(重量部)
エネルギー感受性塩基発生剤: 1(重量部)
架橋剤
N,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド:5(重量部)
イソシアネート系架橋剤:15(重量部)
【0191】
イソシアネート系架橋剤として準備されたイソシアネート化合物G1−1、G1−2ブロックイソシアネート化合物G2−1、G2−2の内容は、次のとおりである。
【0192】
<イソシアネート系架橋剤>
イソシアネート化合物(G1−1):コロネートL(日本ポリウレタン工業社製)
イソシアネート化合物(G1−1):TD−75(綜研化学社製)
ブロックイソシアネート化合物(G2−1):デュラネートMF−K60X(旭化成ケミカルズ社製)
ブロックイソシアネート化合物(G2−2):コロネート2507(日本ポリウレタン工業社製)
【0193】
なお、上記のブロックイソシアネート化合物は、温度80から130℃でイソシアネート基を生じるものである。
【0194】
ここに、実施例1のCAと比較して、CC1からCC4では、ビスマレイミドの配合量が減ぜられているが、イソシアネート系架橋剤を加えた場合には、ビスマレイミドの配合量を減じてもポリイミド(B)の硬化が可能であることによる。粘着剤組成物には、100重量部のポリイミド(B)に対して、イソシアネート系架橋剤が1重量部以上30重量部以下の範囲で配合されると、ビスマレイミドは5重量部程度で配合されてよい。
【0195】
実施例58
実施例2と同様にして、粘着剤組成物CA2と同じくポリイミド(B)と架橋剤となるN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを準備し、ポリイミド(B)およびN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、実施例2で選択されたエネルギー感受性塩基発生剤を、実施例54の粘着剤組成物CC1と同じ配合量で混合して混合物を調製し、この混合物には、更に下記イソシアネート系架橋剤としてブロックイソシアネート化合物G2−1を15重量部添加して粘着剤組成物CC5を調製した(表11)。
【0196】
実施例59
実施例8と同様にして、粘着剤組成物CA8と同じくポリイミド(B)と架橋剤となるN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミドを準備し、ポリイミド(B)およびN,N’−(4,4’−ジフェニルメタン)ビスマレイミド、実施例8で選択されたエネルギー感受性塩基発生剤を、実施例54の粘着剤組成物CC1と同じ配合量で混合して混合物を調製し、この混合物には、更に下記イソシアネート系架橋剤としてブロックイソシアネート化合物G2−1を15重量部添加して粘着剤組成物CC6を調製した(表11)。
【0197】
実施例60から65
各実施例について表11に示すように粘着剤組成物CC1からCC6を用い、表12に示すような架橋重合工程の実施条件を採用したほかは、実施例60,61,62,64については実施例17と同様にして、実施例63,65については実施例20と同様にして、それぞれ粘着テープを調製し、塗布膜の硬化が生じたか否かについて評価を行った。結果は、表12に示すとおりである。
【0198】
実施例60,64,65で得られた粘着テープを用いて、実施例60,64については実施例17と同様にして、実施例65については実施例30と同様にして、それぞれに粘着性試験を実施して粘着層の粘着性を測定し、さらに剥離試験を実施して糊残りの発生有無を確認するとともに、粘着強度の測定を行い、ワイヤーボンディング試験と樹脂はみ出し確認試験を行った。結果を表13から表15に示す。
【0199】
【表11】

【0200】
【表12】

【0201】
【表13】

【0202】
【表14】

【0203】
【表15】

【符号の説明】
【0204】
1 粘着テープ
2 耐熱性基材シート
3 粘着層
10 リードフレーム
11 単位領域
12 ダイパッド
13 リード部
14 隙間部
15 半導体チップ
16 固定材
17 ボンディングワイヤー
18 樹脂層
20 QFN
30 枠部
31 パッケージ用領域形成部
32 パッケージパターン形成部
33 支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物と、熱またはエネルギー線によって塩基を発生するエネルギー感受性塩基発生剤とを含む、ことを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
エネルギー感受性塩基発生剤は、熱またはエネルギー線によって第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アミジン系化合物の少なくともいずれか1種以上の塩基を発生するものである、請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
エネルギー感受性塩基発生剤は、80℃以上180℃未満の温度で加熱されることによって第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、アミジン系化合物の少なくともいずれか1種以上の塩基を発生するものである、請求項1記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
熱硬化性ポリイミド系樹脂組成物は、下記式(1)に示すテトラカルボン酸二無水物ならびに下記式(2)に示すテトラカルボン酸及びテトラカルボン酸の誘導体からなる群より選ばれた1種以上の化合物(Q)と下記式(3)に示す脂肪族ジアミンとを、化合物(Q)のモル数のほうが脂肪族ジアミンのモル数よりも多くなるように配合して加熱反応させてポリイミド(A)となし、ポリイミド(A)と下記式(4)に示す芳香族ジアミンとを加熱反応させてポリイミド(B)となし、ポリイミド(B)と下記式(5)に示すビスマレイミド化合物とを混合してなる、請求項1から3のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【化1】

(Rは4価の有機基である)
【化2】

(Rは4価の有機基であり、Y〜Yは独立した水素または炭素数1〜8の炭化水素基である)
【化3】

(Rは、アミノ基に脂肪族基または脂環基が直接結合している炭素数1〜221の2価の有機基であり、その構造の一部に芳香族基、エーテル基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【化4】

(Rは、アミノ基に芳香族環が直接結合している炭素数6〜27の2価の有機基であり、その構造の一部に脂肪族基、脂環基、その他の置換基を含んでいてもよい。)
【化5】

(Zは2価の有機基である)
【請求項5】
イソシアネート系架橋剤が更に含まれる、請求項1から4のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
イソシアネート系架橋剤は1分子あたり2つ以上のイソシアネート基を有する、請求項5に記載の粘着剤組成物。
【請求項7】
酸化防止剤がさらに含まれる、請求項1から6のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【請求項8】
酸化防止剤は、ヒンダートフェノール誘導体またはベンゾトリアゾール誘導体である、請求項7に記載の粘着剤組成物。
【請求項9】
耐熱性基材シート面上に粘着層を形成してなる粘着テープであって、粘着層は、請求項1から8のいずれかに記載の粘着剤組成物の硬化物である、ことを特徴とする粘着テープ。
【請求項10】
粘着層が常温粘着性を有する、請求項9に記載の粘着テープ。
【請求項11】
粘着層は、ガラス転移温度が30℃未満であり、JIS Z 0237に準拠するボールタック試験で1以上である、請求項9または10に記載の粘着テープ。
【請求項12】
リードフレームのダイパッド上に半導体チップを固定するダイボンディング工程と、リードフレームのインナーリードとダイパッド上の半導体チップにボンディングワイヤーを接続するワイヤーボンディング行程と、インナーリードと半導体チップとボンディングワイヤーを樹脂材料で被覆する樹脂封止工程とを備える半導体製品の製造方法において用いられるものである、請求項9から11のいずれかに記載の粘着テープ。
【請求項13】
ダイボンディング工程の前にリードフレームの一方面に貼り付けられるものであるとともに、樹脂封止工程の後にリードフレームの一方面から剥離されるものである、請求項12に記載の粘着テープ。
【請求項14】
耐熱性基材シートは、250℃で1時間加熱前後の重量減少率が5%未満である、請求項9から13のいずれかに記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−202139(P2011−202139A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222886(P2010−222886)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】