説明

粘着剤組成物

【課題】 本発明は、上記課題を認識し、基材、特にステンレス板はもとより、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの非極性ポリオレフィンを含有する基材に対する曲面を含めた粘着性に優れ、同時に、加熱による黄変が少ない耐候性に優れた粘着剤組成物を提供することを課題とした。
【解決手段】 本発明は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いて重合された(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含むと共に、
(メタ)アクリル系共重合体(B)が、(メタ)アクリル酸イソボルニル由来の構成ユニットを30質量%以上有するものであることを特徴とする粘着剤組成物を提供することで上記課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着ラベル、粘着シートおよび粘着テープなどに用いる粘着組成物に関するものであり、詳しくは、基材、特にステンレス板や、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの非極性ポリオレフィンを含有する基材に対する曲面を含めた粘着性、ならびに透明性および耐候性に優れた粘着剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物では、タックや粘着力、凝集力などの基本的な物性に加え、耐熱性、耐候性、耐水性、耐磁性、耐油性などの特性が求められる。
【0003】
しかし、アクリル系共重合体を主成分とする粘着剤組成物では、ポリエチレンやポリプロピレンなどの非極性ポリオレフィンを基材とする場合や、得られた粘着製品を非極性ポリオレフィンからなる被着体に貼着する場合に、該非極性ポリオレフィンに対する粘着力を充分に確保できないことがあった。
【0004】
そのため特許文献1では、アクリル系共重合体に、軟化点が110〜150℃のロジン系粘着付与樹脂を配合した粘着剤組成物を開示している。しかし、上記粘着剤組成物では、ポリオレフィンに対する粘着力や曲面に対する接着性は改善されるものの、耐候性に劣り、加熱によって粘着剤層が黄変することがあった。
【0005】
一方、特許文献2では、重量平均分子量が50,000以下の低分子アクリル系共重合体を配合することで、耐候性を改善した粘着剤組成物を開示している。しかし、上記粘着剤組成物では、主剤となるベース樹脂によって、低分子アクリル系共重合体との相溶性が劣る場合があった。
【0006】
また、特許文献3では、ポリエチレンに対する粘着性と耐候性の両方を改善するため、ガラス転移温度が−80〜0℃のアクリル共重合体を主剤として用い、このアクリル共重合体100部に対し、(メタ)アクリロイル単位を50〜100重量%とし、かつ重量平均分子量を5,000〜50,000に設定したビニル重合体を粘着付与樹脂として5〜200重量部配合した粘着剤組成物を開示している。しかし、上記粘着剤組成物では、ポリオレフィンに対する粘着性が劣ることがあった。
【特許文献1】特開昭63−256672号公報
【特許文献2】特開平4−31480号公報
【特許文献3】国際特許01/088052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記課題を認識し、基材、特にステンレス板はもとより、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの非極性ポリオレフィンを含有する基材に対する曲面を含めた粘着性に優れ、同時に、加熱による黄変が少ない耐候性に優れた粘着剤組成物を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いて重合された(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含むと共に、
(メタ)アクリル系共重合体(B)が、(メタ)アクリル酸イソボルニル由来の構成ユニットを30質量%以上有するものであることを特徴とする粘着剤組成物を提供することで上記課題を解決した。
【0009】
(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量は1,000〜10,000が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着剤組成物は、上記構成を有することで、基材、特にステンレス板や、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどの非極性ポリオレフィンを含有する基材に対する曲面を含めた粘着性、耐候性および透明性に優れていた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いて重合された(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含むものである。
【0012】
本発明の「(メタ)アクリル系共重合体(A)」は、得られる粘着剤組成物の用途、および後述する(メタ)アクリル系共重合体(B)や添加剤などの種類や組み合わせに応じて、公知のものから適宜選択することができる。中でも、主たる原料モノマーとして炭素数が1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステルを用いることが好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ドデシルまたは(メタ)アクリル酸ステアリルなどや、これらを組み合わせたものが挙げられる。
【0013】
なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度が高いと、得られる粘着剤組成物のタック性が損なわれることがあるので、(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度は、−80〜0℃であることが好ましい。そのため、具体的にはアクリル酸−2−エチルヘキシル(ホモポリマーのTg=−70℃)やブチルアクリレート(ホモポリマーのTg=−54℃)などを多用することが好ましい。
【0014】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の合成には、架橋点となる官能基を含有するモノマーや凝集力付与用モノマーを用いることが好ましい。
【0015】
上記架橋点となる官能基を含有するモノマーとは、後述する架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマーを意味する。架橋点となる官能基としては、得られた粘着製品を20〜30℃の加湿環境下で1週間程度放置する際(以下、養生と称する)に、架橋反応を完結させ、その後は物性の経時変化を起こさないものが好ましい。具体的には、エポキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。例えば、架橋剤としてイソシアネート基を有するものを用いた場合には、架橋点となる官能基として、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピルまたは(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルのポリカプロラクトン変性物(ダイセル化学工業社製、「プラクセルF」シリーズなど)などのヒドロキシル基を有するものを用いることができる。中でも、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、またはアクリル酸−4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどのポリカプロラクトン変性物が好ましい。アクリル酸−2−ヒドロキシエチルは価格などの点で好ましい。アクリル酸−4−ヒドロキシブチルや(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチルなどのポリカプロラクトン変性物は、化合物中のアクリル系共重合体の主鎖から離れた長めの側鎖の先端にヒドロキシル基が存在するため、主鎖による立体障害を排除することができ、その結果ヒドロキシル基の移動度を高めることができ、架橋剤との反応効率を向上させることができる。
【0016】
上記凝集力付与用モノマーとしては、得られる(メタ)アクリル系共重合体(A)に対し凝集力を付与することができるモノマーが挙げられ、適宜選択すればよい。(メタ)アクリル酸の他、特に分子構造内に窒素原子を含有したモノマーが好ましい。具体的には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリロニトリルなどや、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシエチルアクリルアミド、N−(n−ブトキシメチル)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミドなどが挙げられる。中でも、入手しやすさ、重合性、得られるポリマーの特性などの点から、N−ビニルピロリドンやアクリルアミドなどが好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル系共重合体(A)の合成に際しては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、(メタ)アクリル系共重合体(A)の単量体成分中55〜99.49質量%含まれていることが好ましい。架橋点となる官能基を含有するモノマーは、単量体成分中、0.01〜5質量%が好ましく、より好ましくは0.05〜5質量%用いるとよい。凝集力付与用モノマーは、単量体成分中0.5〜20質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%とすることが好ましい。官能基含有モノマーおよび凝集力付与用モノマーはいずれも、前記範囲の下限を下回ると、凝集力不足となるおそれがあり、一方、前記範囲の上限を超えると、凝集力が高くなりすぎる場合がある。それ以外に20質量%以下の含有割合でスチレンまたはα−メチルスチレンなどの芳香族系モノマー、酢酸ビニルまたはプロピオン酸ビニルなどのビニルエステルなどを添加してもよい。なお、(メタ)アクリル系共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸イソボルニル由来の構成ユニットを有しておらず、これにより(A)≠(B)となる。
【0018】
また、本発明の「(メタ)アクリル系共重合体(B)」は、(メタ)アクリル酸イソボルニル由来の構成ユニットを有しており、その含有量は、得られる粘着剤組成物の用途よって異なるが、一般に、30質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらにより好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上とすることが望ましい。この(メタ)アクリル酸イソボルニル由来のユニットのため、(メタ)アクリル系共重合体(B)と(A)との相溶性が良好となるからである。
【0019】
(メタ)アクリル系共重合体(B)の合成の際には、上記(メタ)アクリル酸イソボルニルと共に、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)で述べたものと同様なモノマーを使用することができる。
【0020】
さらに(メタ)アクリル系共重合体(B)は、揮発成分を含まない状態で、23℃の温度下で固化しているものがより高い粘着力を示すために好ましい。
【0021】
上記特性を得るためには、(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、ゲルパーミエーション(GPC)にて測定したポリスチレン換算の値で、1,000、好ましくは1,500を下限とすることが望ましい。
【0022】
また、重量平均分子量の値は、高すぎると(メタ)アクリル系共重合体(A)との相溶性が悪化し、得られる粘着剤組成物の透明性や粘着物性が低下することがある。そのため、(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量の上限は、10,000、好ましくは9,000、より好ましくは8,000とすることが望ましい。
【0023】
また、粘着剤組成物中の(メタ)アクリル系共重合体(B)の配合割合は、(メタ)アクリル酸共重合体(A)100質量部に対して、5〜50質量部である。この範囲を外れると、タック、ポリオレフィンに対する粘着力や曲面に対する接着性が不十分になるおそれがある。
【0024】
さらに、本発明の粘着剤組成物では、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)以外に、必要に応じて、下記する添加剤を含有していてもよい。
【0025】
添加剤としては、粘着付与樹脂、充填剤、顔料、希釈剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤等の従来公知の添加剤が挙げられる。これら添加剤は、得られる粘着剤組成物に、1種のみ添加されてもよいし、2種以上添加されてもよい。
【0026】
粘着付与剤は、得られる粘着組成物の用途で必要とされる粘着性、耐候性および透明性などを損なわない範囲内で、公知のものを適用することができる。中でも、好ましくは(重合)ロジン系、(重合)ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系、クマロン系、クマロンインデン系、スチレン樹脂系、キシレン樹脂系、フェノール樹脂系、石油樹脂系の粘着付与剤や、これらを組み合わせたものが挙げられる。
【0027】
次に、本発明の粘着剤組成物は、例えば以下の方法で製造することができる。
【0028】
(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)の製造方法は、所望する特性を有する(メタ)アクリル系重合体(A)、(B)をそれぞれ得ることができれば、特には限定されないが、例えば、重合時に発生する重合熱を除去することが比較的容易であり、かつ操業性が良い点などから、下記する有機溶剤の存在下で行う溶液重合法で製造することが望ましい。その際使用する溶媒としては、トルエンやキシレンなどの芳香族炭化水素類、酢酸エチルや酢酸ブチルなどの脂肪族エステル類、シクロヘキサンなどの脂環族炭化水素類またはヘキサンやペンタンなどの脂肪族炭化水素類などや、これらを組み合わせたものが挙げられる。用いる溶媒の量は、所望する(メタ)アクリル系共重合体(A)または(B)の分子量などに応じて適宜選択すればよい。
【0029】
また、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)を得る際に、重合反応を効率よく制御するために、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイドやm−トルオイルパーオキサイドとベンゾイルパーオキサイドの混合物(市販品では、例えば、「ナイパーBMT−K40」日本油脂社製など)などの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルや2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(市販品では、例えば、「ABN−E」日本ヒドラジン工業製など)などのアゾ系化合物などの公知のラジカル重合開始剤を添加することも好ましい。
【0030】
さらに、残存モノマー量の低減させるために、重合の後期に後添加用開始剤(ブースター)を添加してもよい。
【0031】
前記重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、単量体成分の質量に対して、合計で、0.01〜1質量%とすることが好ましい。また、前記重合に際しては、所望の分子量を得るために、メルカプト化合物などの公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0032】
重合温度や重合時間などの重合条件は、単量体成分の組成、溶媒や重合開始剤の種類、あるいは、得られる共重合体の要求特性または粘着剤の用途などに応じて適宜設定すればよい。さらに反応圧力も常圧(大気圧)、減圧あるいは加圧のいずれであってもよい。なお、重合反応は、窒素ガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
そして、上記(メタ)アクリル系共重合体(A)および(B)を均一に混合することで、本発明の粘着剤組成物を得ることができる。
【0034】
本発明の粘着剤組成物を用いて各種粘着製品を得る際には、例えば、粘着シート、粘着ラベル、粘着テープ、両面テープ等の各種用途に応じた形態で粘着剤組成物により粘着剤層を形成した後、乾燥(架橋反応)させ、必要に応じて養生すればよい。なお、粘着剤層の形成は、基材に粘着剤組成物を塗布することにより行ってもよいし、基材レスで行ってもよい。また、用途によっては、粘着剤組成物を被着体に直接、塗布してもよい。
【0035】
前記基材としては、上質紙、クラフト紙、クレープ紙またはグラシン紙などの従来公知の紙類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフテレート、ポリ塩化ビニルまたはセロファンなどのプラスチック類、織布または不織布などの繊維製品などが挙げられる。基材の形状は、例えば、フィルム状、シート状、テープ状、板状または発泡体などが挙げられる。基材の片面に粘着剤組成物を塗布することによって、粘着シート、粘着テープまたは粘着ラベルなどを得ることができる。また、紙、合成紙またはプラスチックフィルムなどのシート状物に離型剤が塗布されている離型紙などに、粘着剤組成物を塗布することで、基材レス(単層構造)の粘着剤層を得、基材レスの両面テープとして使用することもできる。また、前記基材の両面に同種または異種の粘着剤組成物を塗布して、両面テープとしてもよい。
【0036】
粘着剤組成物を基材等に塗布する方法は、例えば、ロールコーティング法、スプレーコーティング法またはディッピング法などの公知の方法が挙げられる。この場合、粘着剤組成物を基材に直接塗布してもよいし、離型紙等に粘着剤組成物を塗布した後、この塗布物を基材上に転写してもよい。
【0037】
粘着剤組成物を塗布した後、乾燥させる際の乾燥条件(温度、時間など)や、養生させる際の養生条件(温度、湿度、時間など)は、特に限定されるものではなく、通常の条件で行えばよいが、養生後の特性の経時変化を抑制するためには、加湿下で養生させることが望ましい。
【0038】
なお、得られた粘着製品の粘着剤層の表面には、粘着剤層表面を好適に保護・保存するために、例えば、離型紙などを貼着してもよい。剥離紙は、粘着製品を使用する際に、粘着剤層表面から引き剥がされる。また、シート状やテープ状などの基材の片面に粘着剤層を形成する場合には、この基材の片面に公知の離型剤を塗布して離型剤層を形成し、粘着剤層を内側にして粘着シート(テープ)をロール状に巻くことで、粘着剤層が基材背面の離型剤層と当接することとなり、粘着剤層表面を保護・保存するようにしてもよい。
【実施例】
【0039】
本実施例では、特に定めがない限り「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味するものである。
【0040】
(合成例1)
攪拌機、温度計、冷却機および不活性ガスの導入管を備えたセパラブルフラスコからなる反応槽に、窒素ガスの流入下で、147部のアクリル酸2−エチルヘキシル(以下、2EHAと称する)、147.6部のアクリル酸ブチル(以下、BAと称する)、4.5部のアクリル酸(以下、AAと称する)、0.9部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル(以下、HEAと称する)および660部の酢酸エチルを仕込み、攪拌条件下で、82℃まで昇温させた。そして、上記温度が安定した後、1.6部の過酸化ベンゾイル系反応開始剤(「ナイパーBMT−K40」、日本油脂社製)と2部の酢酸エチルとを、反応槽に、攪拌条件下で滴下させ、10分間重合反応を行った。その後、343部のアクリル酸2−エチルヘキシル、344.4部のアクリル酸ブチル、10.5部のアクリル酸、2.1部のアクリル酸2−ヒドロキシエチル、20部の酢酸エチル、36部のトルエンおよび1.3部の過酸化ベンゾイル系の重合開始剤(上述と同じ)からなる混合液を調製し、その混合液を攪拌条件下で約90分間かけて反応槽に滴下した。滴下終了後、約3時間さらに反応させてアクリル系共重合体A1を得た。なお、反応の間、酢酸エチルまたはトルエンなどの溶媒の蒸発に伴い重合体の粘度が上昇した場合、適宜、上記溶媒を追加した。得られたアクリル系共重合体の最終揮発成分(樹脂固形分)は46.1%であり、重量平均分子量は873,000であった。
【0041】
(合成例2)
攪拌機、温度計、冷却機および不活性ガスの導入管を備えたセパラブルフラスコからなる反応槽に、窒素ガスの流入下で、212.5部のメタクリル酸イソボルニル(以下、IBMAと称する)、37.5部のn−ドデシルメルカプタン(以下、n−DMと称する)および220部のトルエンを仕込み、攪拌条件下で、110℃まで昇温させた。そして、上記温度が安定した後、2.5部の重合開始剤(日本油脂社製、「パーオキサTMH」)と5部のトルエンとを、攪拌条件下で反応槽に滴下させて110℃で、90分間重合反応を行った。その後、2.5部の「パーオキサTMH」と5部のトルエンとを、反応槽に添加し、重合開始剤を投入してから120、180および240分後に、さらに1部の「パーオキサTMH」と5部のトルエンとを、反応槽に添加した。その後、さらに90分間重合させてアクリル系共重合体B1を得た。なお、反応の間、トルエンなどの溶媒の蒸発に伴い重合体の粘度が上昇した場合、適宜、上記溶媒を追加し、アクリル系共重合体の最終揮発成分(樹脂固形分)が50%になるように調節した。得られた共重合体の樹脂固形分は49.4%であり、重量平均分子量は1,270であった。
【0042】
(合成例3〜9)
単量体成分および連鎖移動剤の種類ならびに配合量を表1に従って重合させた以外は、合成例2と同様にして行った。
【0043】
(実施例1〜9)
アクリル系共重合体(A1)100部に対し、表2に記載の配合量のアクリル系共重合体(B)を容器に仕込み、さらにイソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン社製、「コロネートL−55E」)を添加し、均一に混合させて粘着剤組成物を作製した。なお、配合量は固形分換算で行った。
【0044】
(比較例1〜5)
アクリル系共重合体(B)の種類と配合量および粘着付与樹脂の添加量を表3に従った以外は、実施例1〜9と同様な方法で行った。
【0045】
<試料の作製方法>
基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)社製:厚み50μm)を用い、乾燥後の厚さが30μmとなるように、上記の粘着剤組成物を塗布し、100℃で2分間乾燥させた。そして、得られた粘着剤組成物からなる層の上に離型紙(サンエー化研(株)社製、「K−80HS」)を貼着し、粘着剤組成物をPETフィルムと離型紙で挟み込んだものを、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で7日間養生させ、粘着シートを作製した。
【0046】
<ボールタック>
JIS Z−0237に規定されているJ.Down法に従って、23℃で測定を行い、停止したボールの最大No.を示した。
【0047】
<粘着力>
粘着シートを25mm幅のテープ状に切断し、得られた粘着シートから離型紙を剥がし、粘着面を露出させた。そして、露出させた粘着面を被着体(ステンレスまたはポリエチレン製)と接触させ、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、PETシート側から2kgのローラーを1往復させて粘着テープを被着体に圧着させた。そして、そのまま20分間放置して粘着テープを作製した。そして、粘着テープの被着体に対する180℃方向での粘着強度を、引張試験機(テスター産業社製、「QC引張試験機」)を用い、引き剥がし速度300mm/分、抵抗力N/25mmで測定した。
【0048】
<保持力>
粘着シートを25mm幅に切断し、得られた粘着テープから離型紙を剥がし、粘着面を露出させた。そして、露出させた粘着面をSUS304鋼板と貼付長さ25mmで貼り合わせ、23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、PETシート側から2kgのローラーを1往復させて粘着シートを被着体に圧着させた。そして、80℃の雰囲気下で20分間放置した。そして、得られたものを、80℃に設定した保持力試験機の中に鉛直に吊り下げた状態で、さらに20分間放置した。その後、直ちに、粘着シートに対して水平方向に均一に1kgの荷重を掛け、粘着テープがSUS304鋼板から離れるまでの時間、または24時間後に粘着テープがずれた距離(24時間後に被着体に貼り付いている粘着テープの位置と当初の貼り付け位置とのずれ;以下「ずれ距離」と称する)を測定し、保持力を測定した。
【0049】
<耐曲面貼り性>
粘着シートを幅10mm、長さ25mmに切断し、温度23℃、相対湿度65%の雰囲気下で、ポリプロピレン製の円柱(直径15mm)に、ラベルの長さ方向が円周に沿うように貼り付け、3日後にラベルの浮き状態を観察して、下記の評価基準から耐曲面貼り性を判断した。
(評価基準)
○:試料の浮きが5mm未満
△:試料の浮きが5mm以上、10mm未満
×:試料の浮きが10mm以上
【0050】
<耐加熱黄変性>
JIS K5400−1990 7.4.2に基づき、日本電色社製SE−2000を用い、粘着シートを150℃の熱風循環オーブン中で5時間放置する前後での色差を測定し、下記の評価基準から加熱黄変性を評価した。
(評価基準)
○:色差の差が2.0未満
△:色差の差が2.0以上、5.0未満
×:色差の差が5.0以上
【0051】
【表1】

【0052】
【表2】

【0053】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル酸イソボルニルを用いて重合された(メタ)アクリル系共重合体(B)とを含むと共に、
(メタ)アクリル系共重合体(B)が、(メタ)アクリル酸イソボルニル由来の構成ユニットを30質量%以上有するものであることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
(メタ)アクリル系共重合体(B)の重量平均分子量が、1,000〜10,000である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
請求項1または2により得られた粘着剤層が支持基材の少なくとも片面に形成されていることを特徴とする粘着製品。


【公開番号】特開2006−96958(P2006−96958A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287902(P2004−287902)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】