説明

粘着剤組成物

【課題】粘着性に優れた粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明の粘着剤組成物は、交換連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体をラジカル重合する重合工程を備える方法により製造され、且つ、数平均分子量Mnが300000以上であり、重量平均分子量Mwとこの数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着特性に優れた粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系共重合体は、粘着剤として、粘着テープ、粘着シート等における粘着層の形成や、ホットメルト型粘着剤、ホットメルト型接着剤等の原料として広く用いられている。アクリル系共重合体を含む粘着剤は、ゴム系の粘着剤に比較して、耐熱性、耐候性に優れ、良好な接着性や透明性を有すること、シリコーン系粘着剤に比較して低コストであること等から広く用いられている。このようなアクリル系共重合体としては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ランダム共重合体が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ランダム共重合体を用いる粘着剤組成物が開示されている。しかしながら、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル系ランダム共重合体のみからなる粘着剤組成物は、溶融特性が良くないので、例えば、粘着シートを製造する際、基材シートへの塗工性に問題がある。また、初期粘着力、経時粘着力、保持力等の粘着特性においても不十分であり、これでは高度の性能が要求される分野の使用に供することはできない。
【0004】
特に近年、電気、電子分野における接着剤、自動車部品分野における接着への応用が進み、耐熱性、接着性、再剥離性等の品質がより強く求められるようになり、なかでも耐熱性に対する要求が益々厳しくなってきている。
【0005】
耐熱性を向上させる方法としては、アクリル系共重合体の重合度を高めることにより、高温においても十分な凝集力を発揮させる方法が考えられる。しかし、アクリル系共重合体は、通常のラジカル重合開始剤を用いた溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合により製造されるが、これらラジカル重合に基づく重合体は、分子量分布が2.0〜5.0と広く、低分子量が混在するために耐熱性が十分なものではなかった。
【0006】
耐熱性を向上させる方法として、アクリル系粘着剤組成物のガラス転移温度を高くする方法も考えられる。しかし、この場合においては、粘着不良や低温での粘着力の低下をもたらし、耐熱性と低温での作業性のバランス等に限界があった。
【0007】
耐熱性の向上を目的として、リビングアニオン重合を用いて製造された分子量分布の狭い(メタ)アクリル共重合体、更には、ブロック共重合体を粘着剤組成物として用いていることが提案されている。
【0008】
また、特許文献2には、リビングアニオン重合を用いて製造された分子量分布が狭く、超高分子量のアクリル系重合体が、粘着剤として、耐熱性及び粘着性に優れることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3及び4には、リビングアニオン重合を用いて製造された分子量分布が狭く、分子量の高いアクリル系ブロック型共重合体が、粘着剤として、耐熱性及び粘着性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平6−41501号公報
【特許文献2】特開平11−255812号公報
【特許文献3】特開2004−2863号公報
【特許文献4】特開2005−307063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2〜4に開示された、リビングアニオン重合を用いてアクリル系共重合体を製造する方法においては、重合体を低温で合成する必要があり、多大な経済的負担を要する。また、ヒドロキシル基、カルボキシル基等の官能基を有するビニル系単量体を重合するためには、保護基を有するビニル系単量体を共重合した後、それを脱保護する工程を経る必要があり、製造工程が煩雑になる。
【0012】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであって、安価に且つ容易な、特定の方法により製造された、数平均分子量Mnが300000以上であり、且つ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を含有し、粘着性に優れた粘着剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下のとおりである。
1.交換連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体をラジカル重合する重合工程を備える方法により製造され、且つ、数平均分子量Mnが300000以上であり、重量平均分子量Mwとこの数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
2.上記交換連鎖移動剤が、チオカルボニルチオ基を有する化合物である上記1に記載の粘着剤組成物。
3.上記チオカルボニルチオ基を有する化合物が、チオカルボニルジチオ基を有する化合物である上記2に記載の粘着剤組成物。
4.上記交換連鎖移動剤が、有機ハロゲン化合物である上記1に記載の粘着剤組成物。
5.上記有機ハロゲン化合物が、2つのヨウ素原子を有し、このヨウ素原子が芳香族環に結合した炭素原子に結合した構造を有する含ヨウ素化合物である上記4に記載の粘着剤組成物。
6.上記(メタ)アクリル系重合体がブロック共重合体である上記1乃至5のいずれかに記載の粘着剤組成物。
【0014】
本明細書において、「(共)重合体」とは、単独重合体及び/又は共重合体を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
また、重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて得られた標準ポリスチレン換算値である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の粘着剤組成物は、特定の方法により得られた(メタ)アクリル系重合体を含有するので、粘着性に優れる。
上記(メタ)アクリル系重合体がブロック共重合体である場合には、特に粘着性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の粘着剤組成物について詳しく説明する。
本発明の粘着剤組成物は、交換連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体をラジカル重合する重合工程を備える方法により製造され、且つ、数平均分子量Mnが300000以上であり、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする。
【0017】
上記(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体の重合により製造された重合体であり、少なくとも、(メタ)アクリル系化合物に由来する構造単位(以下、「構造単位(m1)」という。)を含む。従って、上記(メタ)アクリル系重合体は、構造単位(m1)のみからなる(共)重合体であってよいし、この構造単位(m1)、及び、上記(メタ)アクリル系化合物と共重合可能な、重合性不飽和結合を有する化合物(以下、「他の単量体」という。)に由来する構造単位(以下、「構造単位(m2)という。)からなる共重合体であってもよい。
上記(メタ)アクリル系重合体が、構造単位(m1)及び(m2)からなる共重合体である場合、構造単位(m1)の含有量の下限は、両者の合計を100質量%とした場合に、好ましくは70質量%、より好ましくは80質量%、更に好ましくは90質量%である。上記(メタ)アクリル系重合体を構成する構造単位(m1)の含有量が少なすぎると、粘着性に優れた粘着剤組成物が得られない場合がある。
【0018】
上記構造単位(m1)を形成する(メタ)アクリル系化合物は、(メタ)アクリロイル基と、エステル部COOR(Rは、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基及び芳香族炭化水素基から選ばれた少なくとも1種を含む炭化水素基である。)と、を有する重合性化合物である。
【0019】
上記(メタ)アクリル系化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ドデシル、(メタ)アクリル酸n−オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
他の単量体としては、ラジカル重合性を有するビニル系不飽和化合物であれば、特に限定されず、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸、不飽和酸無水物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、アミノ基含有不飽和化合物、アミド基含有不飽和化合物、アルコキシル基含有不飽和化合物、シアノ基含有不飽和化合物、ニトリル基含有不飽和化合物、マレイミド系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
上記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、β−メチルスチレン、エチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
上記不飽和カルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、桂皮酸、更には、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル(マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のモノアルキルエステル)等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
上記不飽和酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのモノ(メタ)アクリル酸エステルや、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
アミノ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノメチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸2−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸2−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル、(メタ)アクリル酸3−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−ジエチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸3−(ジ−n−プロピルアミノ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
アミド基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
アルコキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−プロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2−(n−ブトキシ)プロピル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
シアノ基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸1−シアノエチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸4−シアノブチル、(メタ)アクリル酸6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸8−シアノオクチル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
ニトリル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリロニトリル、エタクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリル、α−イソプロピルアクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−フルオロアクリロニトリル等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
上記マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(2−メチルフェニル)マレイミド、N−(4−メチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジメチルフェニル)マレイミド、N−(2、6−ジエチルフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−ナフチルマレイミド等が挙げられる。これらの化合物は、単独で用いてよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
上記化合物以外に、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物等を用いることもできる。
不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステルとしては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等のジアルキルエステルが挙げられる。
ビニルエステル化合物としては、メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニル、桂皮酸ビニル等が挙げられる。
上記ビニルエーテル化合物としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル、ビニルシクロヘキシルエーテル等が挙げられる。
【0032】
上記(メタ)アクリル系重合体が共重合体である場合、(メタ)アクリル系化合物と、芳香族ビニル化合物及び不飽和カルボン酸から選ばれた少なくとも1種とからなる共重合体が好ましい。
また、上記(メタ)アクリル系重合体が共重合体である場合、ブロック共重合体及びランダム共重合体のいずれでもよいが、ブロック共重合体が好ましい。このブロック共重合体の構造は、特に限定されないが、AB型、ABA型、ABC型、ABCA型、ABCD型等とすることができる。
【0033】
上記(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量Mnが300000以上であり、好ましくは500000以上、より好ましくは700000以上である。但し、上限は、通常、3000000である。
また、上記(メタ)アクリル系重合体における、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)は1.7未満であり、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.4未満である。但し、下限は、通常、1.05である。
上記(メタ)アクリル系重合体が、これらの物性を備えることにより、本発明の粘着剤組成物は、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープ、ラベル等における粘着性に優れる。
【0034】
本発明に係る(メタ)アクリル系重合体は、交換連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体をラジカル重合する重合工程を備える方法により製造された重合体である。その製造方法においては、重合工程の後、公知の後処理工程、精製工程等を備えることができる。
【0035】
上記重合工程で用いられる交換連鎖移動剤としては、チオカルボニルチオ基を有する化合物、有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0036】
チオカルボニルチオ基を有する化合物は、好ましくは、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物である。
【化1】

(式中、Rは炭素数1以上のp価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、金属原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zが複数存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。pは1以上の整数である。)
【化2】

(式中、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、金属原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zは酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)又は炭素数1以上のq価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。qは2以上の整数である。)
【0037】
上記一般式(1)で表される化合物において、Rは、炭素数1以上のp価の有機基であり、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等とすることができる。pは1以上の整数であり、上限は、通常、6である。
が1価〜6価の有機基である場合、その具体例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−アセトキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−エトキシカルボニル−2−プロピル基、2−シアノ−2−プロピル基、tert−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−(4−クロロフェニル)−2−プロピル基、ビニルベンジル基、tert−ブチルスルフィド基、2−カルボキシエチル基、カルボキシメチル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノ−2−ブチル基、下記式で表される有機基等が挙げられる。
【化3】

(式中、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。)
【0038】
上記一般式(1)で表される化合物において、Zは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上の1価の有機基である。このZが炭素数1以上の1価の有機基である場合、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等とすることができる。
としては、フェニル基、メチル基、エチル基、ベンジル基、4−クロロフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、ジエトキシホスフィニル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、チオメチル基(メチルスルフィド)、フェノキシ基、チオフェニル基(フェニルスルフィド)、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N−フェニル−N−エチルアミノ基、チオベンジル基(ベンジルスルフィド)、ペンタフルオロフェノキシ基、下記式で表される有機基等が挙げられる。
【化4】

【0039】
また、上記一般式(2)で表される化合物において、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等とすることができる。
としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−アセトキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−エトキシカルボニル−2−プロピル基、2−シアノ−2−プロピル基、tert−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−(4−クロロフェニル)−2−プロピル基、ビニルベンジル基、tert−ブチルスルフィド基、2−カルボキシエチル基、カルボキシメチル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノ−2−ブチル基、下記式で表される有機基等が挙げられる。
【化5】

(式中、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。)
【0040】
上記一般式(2)で表される化合物において、Zは、酸素原子(q=2の場合)、硫黄原子(q=2の場合)、窒素原子(q=3の場合)又は炭素数1以上のq価の有機基である。このZが炭素数1以上のq価の有機基である場合、置換又は非置換の脂肪族炭化水素基、置換又は非置換の芳香族炭化水素基等とすることができる。
が2価〜4価の有機基である場合、その具体例としては、下記式で表される有機基等が挙げられる。
【化6】

(式中、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。)
【0041】
上記のように、本発明に係る(メタ)アクリル系重合体は、ブロック共重合体であることが好ましい。チオカルボニルチオ基を有する化合物を用いてブロック共重合体を製造する場合、例えば、初めに、重合体ブロック(A)を構成することとなる重合体を合成し、その後、連続して重合体ブロック(B)を構成することとなる単量体を重合する方法が挙げられる。他の方法としては、重合体ブロック(A)を構成することとなる重合体を合成し、これを単離精製した後、あるいは、何らかの物理的又は化学的処理の後、重合体ブロック(B)を構成することとなる単量体を重合する方法がある。
また、トリブロック共重合体やマルチブロック共重合体とする場合には、各ブロックを構成することとなる単量体を連続して重合させ、単離精製の後、あるいは、何らかの物理的または化学的処理の後、残りの単量体を重合させてもよい。
尚、上記重合体ブロック(A)の形成順と重合体ブロック(B)の形成順を入れ替えてもよい。即ち、重合体ブロック(B)を構成することとなる重合体を先に合成してもよい。また、重合体ブロック(A)を構成することとなる重合体、及び、重合体ブロック(B)を構成することとなる重合体を、それぞれ、別々に重合しておき、その後、両者を化学的に結合させてブロック共重合体としてもよい。この場合、重合体ブロック(A)を構成することとなる重合体、及び、重合体ブロック(B)を構成することとなる重合体の両方の重合の際に、チオカルボニルチオ基を有する化合物を存在させておいてもよく、いずれかの一方の重合の際にのみ、チオカルボニルチオ基を有する化合物を存在させておいてもよい。
【0042】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有する化合物としては、チオカルボニルチオ基を2つ以上有する化合物、及び、チオカルボニルジチオ基を有する化合物が好ましい。これらの化合物を、交換連鎖移動剤として用いることにより、単量体の重合反応を迅速に進めることができ、数平均分子量Mnが300000以上であり、重量平均分子量Mwとこの数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を効率よく製造することができる。そして、得られる(メタ)アクリル系重合体を含む粘着剤組成物の粘着性が優れる。
【0043】
チオカルボニルチオ基を2つ以上有する化合物としては、上記一般式(1)において、pが2以上の整数である場合の化合物、上記一般式(2)で表される化合物等が挙げられる。
例えば、上記一般式(1)において、pが2である場合の化合物としては、下記一般式(1−1)で表される化合物とすることができる。
【化7】

(式中、Rは炭素数1以上の2価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、金属原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zは水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1以上の1価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zが複数存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)
【0044】
上記一般式(1−1)において、好ましいRは、以下に示される。
【化8】

【0045】
また、上記一般式(2)において、qが2である場合の化合物としては、下記一般式(2−1)で表される化合物とすることができる。
【化9】

(式中、Rは炭素数1以上の1価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子、金属原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Zは酸素原子、硫黄原子又は炭素数1以上のq価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。Rは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)
【0046】
上記一般式(1−1)で表される化合物、及び、上記一般式(2−1)で表される化合物を用いることにより、例えば、トリブロック共重合体を製造する場合でも、重合体ブロック同士をカップリングする必要がなく、(メタ)アクリル系重合体の生産性を向上させることができる。
【0047】
また、チオカルボニルジチオ基を有する化合物としては、上記一般式(1)において、Zが−SRであり且つpが1である場合の化合物、即ち、下記一般式(1−2)で表される化合物とすることができる。
【化10】

(式中、R及びRは、互いに同一又は異なって、炭素数が1以上の1価の有機基であり、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子、ケイ素原子、リン原子を含んでいてもよく、高分子量体であってもよい。)
【0048】
上記一般式(1−2)において、R及びRは、好ましくは、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−アセトキシエチル基、1−(4−メトキシフェニル)エチル基、エトキシカルボニルメチル基、2−エトキシカルボニル−2−プロピル基、2−シアノ−2−プロピル基、tert−ブチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、2−(4−クロロフェニル)−2−プロピル基、ビニルベンジル基、tert−ブチルスルフィド基、2−カルボキシエチル基、カルボキシメチル基、シアノメチル基、1−シアノエチル基、2−シアノ−2−ブチル基、下記式で表される有機基等である。
【化11】

(式中、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。)
【0049】
上記一般式(1−2)で表される化合物を用いる場合にも、例えば、トリブロック共重合体を製造する場合でも、重合体ブロック同士をカップリングする必要がなく、(メタ)アクリル系重合体の生産性を向上させることができる。
【0050】
上記一般式(1)及び(2)で表される化合物としては、以下に示される。
【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

(式中、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基を示し、nは1以上の整数であり、rは0以上の整数である。)
【0051】
上記交換連鎖移動剤として、チオカルボニルチオ基を有する化合物を用いる場合、その使用量は、上記単量体100モルに対して、好ましくは0.001〜0.1モル、より好ましくは0.002〜0.05モル、更に好ましくは0.003〜0.03モルである。使用量が上記範囲にあると、高分子量で且つ分子量分布の狭い重合体を製造することができる。
【0052】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有する化合物を、交換連鎖移動剤として用い、(メタ)アクリル系重合体を合成するに際して、従来、公知の重合開始剤を併用することができる。
上記重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物、無機過酸化物、レドックス型重合開始剤等が挙げられる。
【0053】
上記アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、1,1−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、アゾクメン、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスジメチルバレロニトリル、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2−(tert−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)等が挙げられる。
【0054】
上記有機過酸化物としては、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、クメンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ビス(tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。
【0055】
上記無機過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。
また、レドックス型重合開始剤としては、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、アスコルビン酸、硫酸第一鉄等を還元剤とし、ペルオキソ二硫酸カリウム、過酸化水素、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等を酸化剤としたものを用いることができる。
【0056】
上記重合開始剤の使用量は、交換連鎖移動剤1モルに対して、通常、0.1〜2モルである。
【0057】
上記交換連鎖移動剤として、チオカルボニルチオ基を有する化合物を用いて、(メタ)アクリル系重合体を合成する場合、単量体をラジカル重合する方法は、特に限定されず、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合、微細懸濁重合等、従来、公知の方法を適用することができる。
【0058】
溶液重合の場合、使用する溶剤としては、炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤、エーテル系溶剤、芳香族石油系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記炭化水素系溶剤としては、ヘプタン、オクタン、ミネラルスピリット等が挙げられる。
上記エステル系溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
上記ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
上記アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、イソブタノール等が挙げられる。
上記エーテル系溶剤としては、n−ブチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。
また、上記芳香族石油系溶剤としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0059】
溶液重合による(メタ)アクリル系重合体の製造に際して、使用する溶剤の種類及び使用量は、単量体の溶解度、得られる重合体の溶解度、十分な反応速度を達成するために適切な重合開始剤濃度や単量体濃度、チオカルボニルチオ基を有する化合物の溶解度等を考慮して決定すればよく、特に限定されない。
【0060】
乳化重合又は微細懸濁重合の場合、使用する乳化剤は、特に限定されず、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの界面活性剤は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸石けん、ロジン酸石けん、ナフタレンスルホン酸ナトリウムホルマリン縮合物、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸アンモニウム、アルキル硫酸トリエタノールアミン、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルフォン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。
上記非イオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。
また、上記カチオン系界面活性剤としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0061】
乳化重合又は微細懸濁重合による(メタ)アクリル系重合体の製造に際して、必要に応じて、後述する懸濁重合において使用可能な分散剤を添加してもよい。
【0062】
また、懸濁重合により(メタ)アクリル系重合体を製造する場合、使用する分散剤は、特に限定されず、部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリアルキレンオキサイド、アニオン性界面活性剤及び分散助剤の組合せ等、従来、公知のものを使用することができる。
【0063】
懸濁重合による(メタ)アクリル系重合体の製造に際して、必要に応じて、前述した乳化重合又は微細懸濁重合において使用可能な乳化剤を添加してもよい。
【0064】
本発明において、チオカルボニルチオ基を有する化合物の存在下、単量体をラジカル重合する場合、重合温度は、使用する重合開始剤の種類等により、適宜、選択されるが、通常、40℃〜100℃である。
【0065】
上記重合工程により得られた重合体は、その末端、もしくは中央あたりにチオカルボニルチオ基を有する場合がある。本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体は、チオカルボニルチオ基を有する重合体であってもよいし、末端にチオカルボニルチオ基が存在する場合は、重合工程の後、チオカルボニルチオ基を、メルカプト基等の他の官能基に変換させてなる重合体であってもよいし、中央にチオカルボニルチオ基が存在する場合は、切断して、分子量を半分にしてもよい。
【0066】
重合体に含まれるチオカルボニルチオ基をメルカプト基に変換する、切断する方法としては、水素−窒素結合含有化合物を用いる方法が、簡便かつ確実である点で好ましい。この水素−窒素結合含有化合物を、上記重合工程により得られた反応液に添加することによって、チオカルボニルチオ基がメルカプト基に変換される。この処理後、過剰の水素−窒素結合含有化合物は、特に除去する必要がないか、あるいは容易に留去され得る。他の変換方法としては、水素−窒素結合含有化合物を除く酸性化合物や塩基性化合物を添加して加水分解する方法が挙げられるが、この場合は処理後に酸または塩基を中和する必要があるなど、工程が煩雑となる。
【0067】
上記水素−窒素結合含有化合物としては、アンモニア、ヒドラジン、1級アミン系化合物、2級アミン系化合物、アミド系化合物、アミン塩酸塩系化合物、水素−窒素結合含有高分子、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等が挙げられる。
【0068】
次に、交換連鎖移動剤として用いられる有機ハロゲン化合物について説明する。
この有機ハロゲン化合物は、炭素原子及びハロゲン原子の結合(以下、「炭素−ハロゲン結合」ともいう。)を、少なくとも1つ有する化合物である。
【0069】
上記有機ハロゲン化合物において、ハロゲン原子が結合している炭素原子(以下、「炭素原子(X)」という。)に結合している水素原子の数は、好ましくは2以下、より好ましくは1以下、特に好ましくは0である。
また、上記炭素原子(X)に結合しているハロゲン原子の数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
また、上記炭素原子(X)には、炭素原子が結合していることが好ましい。この炭素原子(X)に結合している炭素原子の数は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3である。
【0070】
上記有機ハロゲン化合物に含まれるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。これらのハロゲン原子のうち、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子が特に好ましい。
また、上記有機ハロゲン化合物が、複数のハロゲン原子を有する場合、同一種類のハロゲン原子であってよいし、異なる種類のハロゲン原子であってもよい。
【0071】
上記有機ハロゲン化合物は、炭素−ハロゲン結合を有することにより、単量体を重合させるための開始剤(ラジカル発生剤及び重合開始剤)として作用する。尚、本明細書において、炭素−ハロゲン結合を2つ以上有する有機ハロゲン化合物を、「多官能の開始剤」とする。例えば、炭素−ハロゲン結合を2つ有する有機ハロゲン化合物を、「2官能の開始剤」とする。また、炭素−ハロゲン結合を1つ有する有機ハロゲン化合物を、「単官能の開始剤」とする。
本発明に係る重合工程において、上記有機ハロゲン化合物が単官能の開始剤である場合、得られる(メタ)アクリル系重合体は、通常、その片末端にハロゲン原子を有する。また、上記有機ハロゲン化合物が2官能の開始剤である場合、得られる(メタ)アクリル系重合体は、通常、その両末端にハロゲン原子を有する。
【0072】
本発明においては、高分子量で且つ分子量分布の狭い重合体を効率よく製造することができることから、上記有機ハロゲン化合物は、好ましくは多官能の開始剤であり、特に好ましくは2官能の開始剤である。
【0073】
上記2官能の開始剤は、炭素−ハロゲン結合を2つ有する有機ハロゲン化合物である。この有機ハロゲン化合物は、好ましくは、1の炭素−ハロゲン結合を構成する炭素原子と、他の炭素−ハロゲン結合を構成する炭素原子とが、異なる化合物である。
以下、好ましい有機ハロゲン化合物を、一般式(3)〜(12)をもって例示する。
【0074】
【化16】

上記一般式(3)において、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜5の2価のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜3の直鎖の2価のアルキレン基であり、より好ましくは、メチレン基(−CH−)である。
また、上記一般式(3)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0075】
【化17】

上記一般式(4)において、R及びR10は、同一又は異なって、炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3の直鎖のアルキル基であり、より好ましくは、メチル基である。
また、上記一般式(4)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0076】
【化18】

上記一般式(5)において、R11及びR12は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(5)において、R13は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20の2価のアルキレン基である。
また、上記一般式(5)において、R14及びR15は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。アルキル基の場合、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。
また、上記一般式(5)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0077】
【化19】

上記一般式(6)において、R16及びR17は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(6)において、R18は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20の2価のアルキレン基である。
また、上記一般式(6)において、R19及びR20は、同一又は異なって、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。アルキル基の場合、直鎖状及び分岐状のいずれでもよい。
また、上記一般式(6)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0078】
【化20】

上記一般式(7)において、R21、R22、R23及びR24は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(78)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0079】
【化21】

上記一般式(8)において、R25、R26、R27、及びR28は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(8)において、R29は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20の2価のアルキレン基である。
また、上記一般式(8)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0080】
【化22】

上記一般式(9)において、R30、R31、R32及びR33は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(9)において、R34は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20の2価のアルキレン基である。
また、上記一般式(9)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0081】
【化23】

上記一般式(10)において、R35、R36、R37及びR38は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(10)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0082】
【化24】

上記一般式(11)において、R39、R40、R41及びR42は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(11)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0083】
【化25】

上記一般式(12)において、R43、R44、R45及びR46は、同一又は異なって、水素原子又は直鎖状若しくは分岐状の炭素数1〜5のアルキル基である。このアルキル基は、好ましくは炭素数1〜3のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
また、上記一般式(12)において、R47は、直鎖状又は分岐状の炭素数1〜20の2価のアルキレン基である。
また、上記一般式(12)において、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子であり、好ましくはヨウ素原子であり、複数のXは同一であっても、異なっていてもよい。
【0084】
上記2官能の開始剤としては、具体的には、ジヨードキシレン、ジブロモキシレン、ジクロロキシレン、ジエチル−2,5−ジヨードアジペート、ジエチル−2,5−ジブロモアジペート、ジエチル−2,5−ジクロロアジペート等が挙げられる。
【0085】
また、上記単官能の開始剤は、炭素−ハロゲン結合を1つ有する有機ハロゲン化合物であり、一般式(13)及び(14)で表される化合物、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモメチル、ジブロモメタン、ブロモホルム、ブロモエタン、ジブロモエタン、トリブロモエタン、テトラブロモエタン、ブロモトリクロロメタン、ジクロロジブロモメタン、クロロトリブロモメタン、ヨードトリクロロメタン、ジクロロジヨードメタン、ヨードトリブロモメタン、ジブロモジヨードメタン、ブロモトリヨードメタン、ヨードホルム、ジヨードメタン、ヨウ化メチル、塩化イソプロピル、塩化tert−ブチル、臭化イソプロピル、臭化tert−ブチル、トリヨードエタン、ヨウ化エチル、ジヨードプロパン、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化tert−ブチル、ブロモジクロロエタン、クロロジブロモエタン、ブロモクロロエタン、ヨードジクロロエタン、クロロジヨードエタン、ジヨードプロパン、クロロヨードプロパン、ヨードジブロモエタン、ブロモヨードプロパン、2−ヨード−2−ポリエチレングリコシルプロパン、2−ヨード−2−アミジノプロパン、2−ヨード−2−シアノブタン、2−ヨード−2一シアノ−4-メチルペンタン、2一ヨード−2−シアノ4−メチル−4−メトキシペンタン、4−ヨード−4−シアノ−ペンタン酸、メチル−2−ヨードイソブチレート、2−ヨード−2−メチルプロパンアミド、2−ヨード−2,4−ジメチルペンタン、2−ヨード−2−シアノブタノール、4−メチルペンタン、シアノ−4−メチルペンタン、2−ヨード−2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、2−ヨード−2−メチル−N−(1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4−メチルペンタン、2−ヨード−2−(2−イミダソリン−2−イル)プロパン、2−ヨード−2−(2−(5−メチル−2−イミダソリン−2−イル)プロパン等が挙げられる。
【0086】
【化26】

(式中、R49は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R50は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子である。)
【化27】

(式中、R51は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、R52は、炭素数1〜5の2価のアルキレン基であり、R53は、水素原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基又はアミノ基であり、Xは、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子である。)
【0087】
上記一般式(13)で表される化合物としては、CH−CHI−Ph等が挙げられる。また、上記一般式(14)で表される化合物としては、(CH−C(CN)I、下記式(14−1)で表される化合物等が挙げられる。
【化28】

【0088】
尚、本発明においては、単量体とともに反応系に配合し、上記一般式(14)で表される有機ハロゲン化合物を生成する成分を用いることができる。
例えば、上記式(14−1)で表される化合物は、以下のように、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸と、ヨウ素とから形成することができる。
【化29】

【0089】
上記反応は、上記一般式(14)で表される化合物を得るために、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸を第1前駆体として、ヨウ素を第2前駆体として用いたものである。このような第1前駆体及び第2前駆体を反応系に併存させることにより、上記一般式(14−1)で表される化合物を形成させ、交換連鎖移動剤として作用させることができる。
【0090】
第1前駆体としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、4,4−アゾビス−4−シアノ吉草酸、2,2’−アゾビス−{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}等が挙げられる。また、有機過酸化物としては、ビス(3‐カルボキシプロピオニル)ペルオキシド等が挙げられる。
第2前駆体としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素の単体が挙げられる。これらのハロゲン単体のうち、塩素、臭素及びヨウ素が好ましく、ヨウ素が特に好ましい。
【0091】
上記重合工程により得られた重合体は、その末端にハロゲン原子を有する場合がある。本発明の粘着剤組成物に含まれる(メタ)アクリル系重合体は、ハロゲン原子を有する重合体であってよいし、重合工程の後、このハロゲン原子を、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基、アクリロイル基等の他の官能基に変換させてなる重合体であってもよい。
【0092】
上記重合工程により得られた重合体(以下、「変性前重合体」という。)を変性する方法としては、以下に例示される。
(1)無機水酸化物を用いて、ヒドロキシル基を導入する方法
(2)アミン化合物を用いて、ハロゲン−アミノ置換反応を利用し、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基を導入する方法
(3)メルカプト化合物を用いて、ハロゲン−メルカプト置換反応を利用し、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基を導入する方法
(4)カルボキシル基含有化合物を用いて、ハロゲン−カルボン酸塩置換反応を利用し、カルボキシル基を導入する方法
【0093】
上記方法(1)では、変性前重合体と無機水酸化物とを反応させる。即ち、変性前重合体の分子末端のハロゲン原子と、無機水酸化物との置換反応により、無機水酸化物由来のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル系重合体が得られる。
上記無機水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等が挙げられる。
この反応は、媒体の存在下で行うことができる。この媒体は、特に限定されず、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等挙げられる。
反応温度は、通常、0℃〜80℃であり、好ましくは25℃〜70℃である。
【0094】
上記方法(2)では、変性前重合体とアミン化合物とを反応させる。アミン化合物を用いて、変性前重合体の分子末端のハロゲン原子と、アミン化合物とのハロゲン−アミノ置換反応により、変性前重合体における末端ハロゲン原子が、アミン化合物由来の官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基)に置換された(メタ)アクリル系重合体が得られる。
上記アミン化合物としては、アミノエタノール、グリシン、(アミノイソシアネート)、エチレンジアミン、カダベリン等が挙げられる。
この反応は、媒体の存在下で行うことができる。この媒体は、特に限定されず、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等挙げられる。
反応温度は、通常、0℃〜80℃であり、好ましくは25℃〜70℃である。
【0095】
上記方法(3)では、変性前重合体とメルカプト化合物とを反応させる。アミン化合物を用いて、変性前重合体の分子末端のハロゲン原子と、メルカプト化合物とのハロゲン−メルカプト置換反応により、変性前重合体における末端ハロゲン原子が、メルカプト化合物由来の官能基(カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基)に置換された(メタ)アクリル系重合体が得られる。
上記メルカプト化合物としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、メルカプトイソシアネート、メルカプトアミン等が挙げられる。
この反応は、媒体の存在下で行うことができる。この媒体は、特に限定されず、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等挙げられる。
反応温度は、通常、0℃〜80℃であり、好ましくは25℃〜70℃である。
【0096】
上記方法(4)では、変性前重合体とカルボキシル基含有化合物とを反応させる。アミン化合物を用いて、変性前重合体の分子末端のハロゲン原子と、カルボキシル基含有化合物とのハロゲン−カルボン酸塩置換反応により、変性前重合体における末端ハロゲン原子が、カルボキシル基含有化合物由来のカルボキシル基に置換された(メタ)アクリル系重合体が得られる。
上記カルボキシル基含有化合物としては、コハク酸モノナトリウム塩等が挙げられる。
この反応は、媒体の存在下で行うことができる。この媒体は、特に限定されず、通常、極性溶媒が用いられる。この極性溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、アセトン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、アセトニトリル等が挙げられる。
反応温度は、通常、0℃〜80℃であり、好ましくは25℃〜70℃である。
【0097】
本発明の粘着剤組成物は、上記のようにして得られた(メタ)アクリル系重合体を含有する。尚、必要に応じて、架橋剤(硬化剤)、粘着性付与剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、難燃剤、防かび剤、シランカップリング剤、充填剤、着色剤等を含有した組成物とすることもできる。
【0098】
上記架橋剤(硬化剤)としては、グリシジル基を2つ以上有するグリシジル化合物、イソシアネート基を2つ以上有するイソシアネート化合物、アジリジニル基を2つ以上有するアジリジン化合物、オキサゾリン基を有するオキサゾリン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物等が挙げられる。これらのうち、アジリジン化合物、グリシジル化合物及びイソシアネート化合物が好ましい。
【0099】
上記アジリジン化合物としては、1,6−ビス(1−アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン、1,1’−(メチレン−ジ−p−フェニレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、1,1’−(ヘキサメチレン)ビス−3,3−アジリジル尿素、エチレンビス−(2−アジリジニルプロピオネート)、トリス(1−アジリジニル)ホスフィンオキサイド、2,4,6−トリアジリジニル−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパン−トリス−(2−アジリジニルプロピオネート)等が挙げられる。
【0100】
上記グリシジル化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等の多官能グリシジル化合物が挙げられる。
【0101】
上記イソシアネート化合物としては、好ましくは、イソシアネート基を2つ以上有する化合物が用いられる。
上記イソシアネート化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系の各種イソシアネート化合物、更には、これらのイソシアネート化合物の変性物(プレポリマー等)を用いることができる。
【0102】
芳香族イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、粗製ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、p−フェニレンジイソシアネート(PPDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が挙げられる。
脂肪族イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、リシンジイソシアネート(LDI)、リシントリイソシアネート(LTI)等が挙げられる。
脂環族イソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、水添化XDI(H6XDI)、水添化MDI(H12MDI)等が挙げられる。
また、変性イソシアネートとしては、上記イソシアネート化合物のウレタン変性体、2量体、3量体、カルボジイミド変性体、アロファネート変性体、ビューレット変性体、ウレア変性体、イソシアヌレート変性体、オキサゾリドン変性体、イソシアネート基末端プレポリマー等が挙げられる。
【0103】
本発明の粘着剤組成物が架橋剤(硬化剤)を含有する場合、その含有量は、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.03〜5質量部、更に好ましくは0.05〜2質量部である。
【0104】
上記粘着性付与剤としては、ロジンエステル、ガムロジン、トール油ロジン、水添ロジンエステル、マレイン化ロジン、不均化ロジンエステル等のロジン誘導体;テルペンフェノール樹脂、α−ピネン、β−ピネン、リモネン等を主体とするテルペン系樹脂;(水添)石油樹脂;クマロン−インデン系樹脂;水素化芳香族コポリマー;スチレン系樹脂;フェノール系樹脂;キシレン系樹脂等が挙げられる。
本発明の粘着剤組成物は、粘着性付与剤を含有しなくても、接着力、凝集力、タック等において優れた粘着特性を有するが、粘着性付与剤を含有することにより、タック、接着力、保持力等を一層向上させることができ、各粘着特性間のバランスを調節することができる。
【0105】
上記可塑剤としては、ジn−ブチルフタレート、ジn−オクチルフタレート、ビス(2−エチルヘキシル)フタレート、ジn−デシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジn−オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)セバケート、ジn−ブチルセバケート等のセバシン酸エステル類;ビス(2−エチルヘキシル)アゼレート等のアゼライン酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類;ポリプロピレングリコール等のグリコール類;エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ変性植物油類;トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類;アジピン酸と1,3−ブチレングリコールとのエステル化物等のエステルオリゴマー類;低分子量ポリブテン、低分子量ポリイソブチレン、低分子量ポリイソプレン等の低分子量重合体;プロセスオイル、ナフテン系オイル等のオイル類等が挙げられる。
【0106】
上記酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−〔β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル〕2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、ビス〔3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール類等のフェノール系酸化防止剤;ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’−チオジプロピオネート、ステアリル3,3’−チオジプロピオネート等の硫黄系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェニルジトリデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルホスファイト)、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、10−デシロキシ−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0107】
上記紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線吸収剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3",4",5",6"−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤;ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、〔2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラート)〕−n−ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−リン酸モノエチレート、ニッケル−ジブチルジチオカルバメート等のニッケル系紫外線安定剤等が挙げられる。
【0108】
上記老化防止剤としては、ポリ(2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、6−エトキシ−1,2−ジヒドロ−2,2,4−トリメチルキノリン、1−(N−フェニルアミノ)−ナフタレン、スチレン化ジフェニルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、モノ(α−メチルベンジル)フェノール、ジ(α−メチルベンジル)フェノール、トリ(α−メチルベンジル)フェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン、2−メルカプトベンズイミダゾール、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩、2−メルカプトメチルベンズイミダゾール、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジステアリル等が挙げられる。
【0109】
上記難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(2,3−ジブロモプロピル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、デカブロモジフェニルオキサイド、含ハロゲンポリフォスフェート等のハロゲン系難燃剤;リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、酸性リン酸エステル、含窒素リン化合物等のリン系難燃剤;赤燐、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機系難燃剤;ポリ(ジメトキシシロキサン)、ポリ(ジエトキシシロキサン)、ポリ(ジフェノキシシロキサン)、ポリ(メトキシフェノキシシロキサン)、メチルシリケート、エチルシリケート、フェニルシリケートのようなシロキサン系難燃剤等が挙げられる。
【0110】
上記防かび剤としては、ベンズイミダゾール、ベンゾチアゾール、トリハロアリル、トリアゾール、有機窒素硫黄化合物等が挙げられる。
【0111】
上記シランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0112】
上記充填剤としては、炭酸カルシウム、酸化チタン、マイカ、タルク等の無機粉末充填剤;ガラス繊維、有機補強用繊維等の繊維状充填剤等が挙げられる。
【0113】
本発明の粘着剤組成物は、エマルション型粘着剤として用いてよいし、上記(メタ)アクリル系重合体をトルエン等の溶剤に溶かして得られた溶液を、溶液型粘着剤として使用することもできる。
エマルション型粘着剤として用いる場合には、安定剤が配合されてなるものとすることができる。この安定剤としては、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ジブチルスズジラウリン酸鉛、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト等の塩化ビニル用安定剤;ジ−n−オクチルスズビス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)塩、ジ−n−オクチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジ−n−オクチルスズジラウリン酸塩、ジ−n−オクチルスズマレイン酸エステル塩、ジ−n−ブチルスズビスマレイン酸エステル塩、ジ−n−ブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジ−n−ブチルスズビスオクチルチオグリコールエステル塩、ジ−n−ブチルスズβ−メルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジ−n−ブチルスズジラウレート、ジ−n−メチルスズビス(イソオクチルメルカプトアセテート)塩、ポリ(チオビス−n−ブチルスズサルファイド)、モノオクチルスズトリス(イソオクチルチオグリコール酸エステル)、ジブチルスズマレエート、ジ−n−ブチルスズマレートエステル・カルボキシレート、およびジ−n−ブチルスズマレートエステル・メルカプチド等の有機スズ系安定剤;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、ケイ酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛等の鉛系安定剤;カドミウム系石けん、亜鉛系石けん、バリウム系石けん、鉛系石けん、複合型金属石けん、ステアリン酸カルシウム等の金属石けん系安定剤等が挙げられる。
【0114】
本発明の粘着剤組成物は、溶液、分散液又は固形とすることができる。溶液及び分散液の場合、組成物に媒体を含有することとなるが、媒体は、上記(メタ)アクリル系重合体100質量部に対して、通常、20〜80質量部である。
【0115】
本発明の粘着剤組成物は、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープ、ラベル等の製品における粘着層の形成に好適であり、物と物とを粘着させるための粘着剤としても好適である。
粘着層を有する製品の製造方法は、粘着剤組成物の性状によって選択されるが、組成物を、フィルム状、シート状、テープ状又はその他の形状を有する、紙、紙ボード、セロハン、樹脂、布、木材、金属等からなる基材(フィルム、シート、板等)に塗工した後、乾燥することにより、粘着層を有する製品を得ることができる。また、組成物を溶融状態にして、基材に塗工した後、冷却することにより、粘着層を有する製品を得ることもできる。
粘着層の厚さ(乾燥後膜厚)は、通常、5〜100μmである。
粘着層をフィルム又はシートに形成させることによって得られる粘着用製品としては、粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ、感圧性テープ、表面保護フィルム、表面保護テープ、マスキングテープ、電気絶縁用テープ、ラミネート物等が挙げられる。特に、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等に配される光学フィルム、フレキシブルプリント回路基板等の電子部品に好適である。
【実施例】
【0116】
以下、本発明を、例を挙げて具体的に説明する。尚、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。以下の記載において、「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
【0117】
1.(メタ)アクリル系共重合体の合成
合成例1(重合体A−1の合成)
内容積1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル400部と、下記式で表される化合物(ビス(ベンジルスルファニル)メタンチオン)0.113部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.019部と、酢酸ブチル100部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、8時間反応させた。アクリル酸ブチルの重合率は71%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、約250部のポリアクリル酸ブチル、即ち、単独重合体(A−1)を得た。得られた重合体(A−1)のMwは922880であり、Mnは721000であった。また、これらを用いて、Mw/Mn(以下、「分散度」ともいう。)1.28を得た(表1参照)。
【化30】

【0118】
合成例2(重合体A−2の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル391部と、アクリル酸11部と、ビス(ベンジルスルファニル)メタンチオン0.111部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.019部と、酢酸ブチル100部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、8時間反応させた。アクリル酸ブチル及びアクリル酸の重合率は、それぞれ、71%及び69%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、アクリル酸単位とからなるランダム共重合体(A−2)約250部を得た。得られた重合体(A−2)のMwは863600であり、Mnは680000であった。そして、分散度1.27を得た(表1参照)。
【0119】
合成例3(重合体A−3の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル384部と、メタクリル酸ヒドロキシエチル20部と、ビス(ベンジルスルファニル)メタンチオン0.109部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.019部と、酢酸ブチル100部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、8時間反応させた。アクリル酸ブチル及びメタクリル酸ヒドロキシエチルの重合率は、それぞれ、73%及び72%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、メタクリル酸ヒドロキシエチル単位とからなるランダム共重合体(A−3)約250部を得た。得られた重合体(A−3)のMwは956250であり、Mnは757000であった。そして、分散度1.25を得た(表1参照)。
【0120】
合成例4(重合体A−4の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル(MMA)15部と、下記式で表される、チオカルボニルジチオ基を有する化合物(2、2’−トリチオカーボネートビス(2−メチルプロピオン酸メチル))0.117部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.019部と、酢酸ブチル10部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、5時間反応させた。次いで、この反応液に、アクリル酸ブチル(BA)388部と、酢酸ブチル90部とを加え、60℃で重合を継続した。7時間反応させた後、単量体の重合率を測定したところ、アクリル酸ブチル及びメタクリル酸メチルが、それぞれ、67%及び90%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、
冷却後、反応液を抜き出し、減圧度0.3kPa、80℃で5時間かけ蒸発機で減圧乾燥し、MMA−BA−MMAのブロック共重合体(A−4)約250部を得た。得られた重合体(A−4)のMwは902720であり、Mnは728000であった。そして、分散度1.24を得た(表1参照)。
【化31】

【0121】
合成例5(重合体A−5の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル389部と、アクリル酸11部と、1,4−ジヨードキシレン0.181部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.025部と、酢酸ブチル100部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、4時間反応させた。アクリル酸ブチル及びアクリル酸の重合率は、それぞれ、68%及び70%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、アクリル酸単位とからなるランダム共重合体(A−5)約250部を得た。得られた重合体(A−5)のMwは645000であり、Mnは430000であった。そして、分散度1.50を得た(表1参照)。
【0122】
合成例6(重合体A−6の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル250部と、アクリル酸13部と、過酸化ベンゾイル0.500部と、酢酸ブチル250部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を70℃に上昇させて重合を開始し、10時間反応させた。アクリル酸ブチル及びアクリル酸の重合率は、それぞれ、90%及び92%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、アクリル酸単位とからなるランダム共重合体(A−6)約250部を得た。得られた重合体(A−6)のMwは569250であり、Mnは225000であった。そして、分散度2.53を得た(表1参照)。
【0123】
合成例7(重合体A−7の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル390部と、アクリル酸11部と、ビス(ベンジルスルファニル)メタンチオン0.443部と、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル0.076部と、酢酸ブチル100部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、8時間反応させた。アクリル酸ブチル及びアクリル酸の重合率は、それぞれ、72%及び74%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、アクリル酸単位とからなるランダム共重合体(A−7)約250部を得た。得られた重合体(A−7)のMwは231000であり、Mnは192500であった。そして、分散度1.20を得た(表1参照)。
【0124】
合成例8(重合体A−8の合成)
1リットルのセパラブルフラスコに、アクリル酸ブチル390部と、アクリル酸11部と、アゾビスイソブチロニトリル0.603部と、酢酸ブチル250部とからなる混合液を仕込み、この混合液を窒素ガスのバブリングにより十分に脱気した。その後、混合液の内温を60℃に上昇させて重合を開始し、7時間反応させた。アクリル酸ブチル及びアクリル酸の重合率は、それぞれ、94%及び91%であった。
次に、反応液を冷却し、フラスコから反応液を抜き出した。そして、蒸発機を用いて、減圧度0.3kPa、温度80℃で5時間かけて減圧乾燥し、アクリル酸ブチル単位と、アクリル酸単位とからなるランダム共重合体(A−8)約250部を得た。得られた重合体(A−8)のMwは1210680であり、Mnは513000であった。そして、分散度2.35を得た(表1参照)。
【0125】
【表1】

【0126】
2.粘着剤組成物の製造及び評価
実施例1
上記合成例1で得られた重合体(A−1)をトルエンで溶解させ、粘着剤組成物を調製した。組成物中の固形分濃度は40%である。
次に、粘着剤組成物を、塗工装置を用いて、コロナ放電により表面処理したポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、160℃で30分間加熱した。これにより、厚さ25μmの粘着層を有する粘着フィルムを得た。
【0127】
この粘着フィルムについて、下記項目の評価を行った。
(1)保持力試験
JIS Z 0237に準じて評価した。粘着フィルムを切断加工して、25mm幅の長尺状とした後、温度23℃の条件下、粘着層表面の一部(25mm×25mmの面積相当部分)を、厚さ1mmのSUS304板に対して、2kgのローラーを一往復させて粘着させた。次いで、環境温度120℃で、1kgのおもりを吊り下げた状態とし、1時間放置後のSUS304板のずれの長さ、又は、1時間以内の長尺状粘着フィルムの落下時間を測定した。
(2)180度剥離試験
JIS Z 0237に準じて、180度剥離試験を評価した。粘着フィルムを切断加工して、25mm幅の長尺状とした後、この長尺状粘着フィルムの粘着層表面に、厚さ1mmのSUS304板、又は、厚さ1mmのポリエチレン樹脂板(ハイゼックス1300J、三井石油化学工業社製)を粘着させ、温度23℃で20分放置した。次いで、温度23℃、引張速度300mm/分の条件下、180度で剥離させて、剥離強度を測定した。
(3)ボールタック試験
JIS Z 0237に準じて、温度23℃でボールタックを測定した。ここで、ボールタック値(ボールの番号)は、数字が大きいほど、粘着性が高いことを示す。
【0128】
実施例2
上記合成例2で得られた重合体(A−2)100部と、アジリジン化合物(1,6−ビス(1−アジリジニルカルボニルアミノ)ヘキサン「HDU」(商品名)、相互薬工社製)0.15部とを、これらの成分からなる固形分濃度が40%となるようにトルエンに溶解させ、粘着剤組成物を調製した。そして、上記実施例1と同様にして、粘着フィルムを作製し、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0129】
実施例3
上記合成例3で得られた重合体(A−3)100部と、ポリイソシアネート(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物「コロネートL」(商品名)、日本ポリウレタン社製)0.10部とを、これらの成分からなる固形分濃度が40%となるようにトルエンに溶解させ、粘着剤組成物を調製した。そして、上記実施例1と同様にして、粘着フィルムを作製し、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0130】
実施例4
重合体(A−1)に代えて、上記合成例4で得られた重合体(A−4)を用いた以外は、上記実施例1と同様にして、粘着剤組成物の調製、粘着フィルムの作製を行い、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0131】
実施例5
重合体(A−2)に代えて、上記合成例5で得られた重合体(A−5)を用いた以外は、上記実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、粘着フィルムの作製を行い、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0132】
比較例1
重合体(A−2)に代えて、上記合成例6で得られた重合体(A−6)を用いた以外は、上記実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、粘着フィルムの作製を行い、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0133】
比較例2
重合体(A−2)に代えて、上記合成例7で得られた重合体(A−7)を用いた以外は、上記実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、粘着フィルムの作製を行い、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0134】
比較例3
重合体(A−2)に代えて、上記合成例8で得られた重合体(A−8)を用いた以外は、上記実施例2と同様にして、粘着剤組成物の調製、粘着フィルムの作製を行い、各種評価を行った。その結果を表2に併記した。
【0135】
【表2】

【0136】
表2から明らかなように、比較例1は、Mnが30万未満であり、且つ、分散度が1.7以上の重合体を含む粘着剤組成物を用いた例であり、耐熱粘着性及び剥離強度が十分ではなかった。比較例2は、分散度は1.7未満であるがMnが30万未満の重合体を含む粘着剤組成物を用いた例であり、耐熱粘着性及び剥離強度が十分ではなかった。また、比較例3は、Mnが30万以上であるが分散度が1.7以上の重合体を含む粘着剤組成物を用いた例であり、剥離強度が十分ではなかった。
一方、実施例1〜5は、本発明の粘着剤組成物を用いた例であり、粘着性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の粘着剤組成物は、粘着フィルム、粘着シート、粘着テープ、ラベル等の製品における粘着層の形成に好適であり、物と物とを粘着させるための粘着剤としても好適である。
粘着層をフィルム又はシートに形成させることによって得られる粘着用製品としては、粘着シート、粘着フィルム、粘着テープ、感圧性テープ、表面保護フィルム、表面保護テープ、マスキングテープ、電気絶縁用テープ、ラミネート物等が挙げられる。特に、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等に配される光学フィルム、フレキシブルプリント回路基板等の電子部品に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交換連鎖移動剤の存在下、(メタ)アクリル系化合物を含む単量体をラジカル重合する重合工程を備える方法により製造され、且つ、数平均分子量Mnが300000以上であり、重量平均分子量Mwと該数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)が1.7未満である(メタ)アクリル系重合体を含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記交換連鎖移動剤が、チオカルボニルチオ基を有する化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記チオカルボニルチオ基を有する化合物が、チオカルボニルジチオ基を有する化合物である請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記交換連鎖移動剤が、有機ハロゲン化合物である請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記有機ハロゲン化合物が、2つのヨウ素原子を有し、該ヨウ素原子が芳香族環に結合した炭素原子に結合した構造を有する含ヨウ素化合物である請求項4に記載の粘着剤組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル系重合体がブロック共重合体である請求項1乃至5のいずれかに記載の粘着剤組成物。

【公開番号】特開2011−79979(P2011−79979A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233815(P2009−233815)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】