説明

粘着性エラストマー発泡体

【課題】粘着特性を担保しつつ耐溶剤性に優れた粘着剤を提供すること、並びに、溶剤系のような大量の溶剤を用いずに、加工性に優れた粘着剤の製造方法を提供すること。
【解決手段】酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤に対して、化学発泡剤を混合し、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物で酸変性エラストマーの酸基間を架橋させることにより得られる粘着性エラストマー発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト型粘着剤として使用可能な、耐溶剤性に優れた粘着性エラストマー発泡体に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ゴムや再生ゴムを使用し、これらを架橋することによって良好な粘着特性と耐溶剤性を獲得することができる。これらをテープ化するには、得られる粘着剤は有機溶剤に溶かすか、粘着剤を複数の熱ロールで薄だしすることを経由する。前者は、有機溶剤の使用による環境面やポットライフの問題があり、後者は、得られるテープの粘着剤表面が均一であるとは言えず、これは粘着テープの特性を大きく損なうものとなる。
【0003】
これら加工性が改善されたものとして、SIS等の、熱によって流動し室温ではゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーが粘着剤のメインエラストマーとして使用され、熱溶融によって支持体に塗布される。しかし、これらの多くはトルエンなどの有機溶剤への溶解性が高く、解消するために架橋を施すと、利点である加熱による流動性が損なわれ、加工性は著しく低下する。
【0004】
その他、熱溶融可能なエラストマーとしてはポリオレフィンが挙げられる。これをメインエラストマーとして成る粘着剤はトルエンなど工業的溶剤に対する溶解性は低く、耐油性・耐溶剤性を粘着剤に付与できるが、充分な粘着特性を得ることは難しい。
【0005】
このように粘着特性と耐溶剤性は二律背反の関係にあり、SISとポリオレフィンをブレンドすることが考えられるが、耐溶剤性と高タック・高粘着力を有する粘着剤を得るには単純なブレンドでバランスを取るだけでは解決のために充分なものではない。
【0006】
従来、ホットメルト粘着剤を化学発泡剤で発泡させ、コストダウンを図るとともに、粘着特性を改善する手法が知られている(例えば、特許文献1〜3)。一方、粘着剤には、養生用粘着テープなど、耐溶剤性が求められる利用分野がある。耐溶剤性を向上させるには、粘着剤中のエラストマーを架橋することが有効である。しかし、粘着剤のエラストマーを架橋すれば粘着剤の粘度が上昇し、塗工性が悪くなる結果、生産効率が低下する。また粘着剤の粘度が高すぎると発泡が不充分又は不均一になる問題がある。従来、エラストマーを均一に発泡させるために、電子線、有機化酸化物などで架橋し流動性を適度に制限して、エラストマーを均一に発泡させる技術が存在する(例えば、特許文献4及び5)。また、エラストマーを均一に発泡させた後、電子線で架橋する技術も知られている(例えば、引用文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許3373946号明細書
【特許文献2】特開平07−70520号明細書
【特許文献3】特開平11−124554号明細書
【特許文献4】特開2005−68184号明細書
【特許文献5】特開平8−311228号明細書
【特許文献6】特開2009−120728号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、粘着特性を担保しつつ耐溶剤性に優れた粘着剤を提供すること、並びに、溶剤系のような大量の溶剤を用いずに、加工性に優れた粘着剤の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、溶剤を用いなくても製造可能な粘着剤としてホットメルト型粘着剤に着目した上、特定のエラストマーと特定の化学発泡剤とを組み合わせることで、当該化学発泡剤(又はその分解物)を発泡剤としてのみならず架橋剤としても機能させ得るという発想を見出し、本発明を完成させた。
【0010】
本発明は、酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤に対して、化学発泡剤を混合し、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物で酸変性エラストマーの酸基間を架橋させることにより得られる粘着性エラストマー発泡体である。
【0011】
例えば、化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド(ADCA)及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンからなる群より選択される一種以上であってもよい。
【0012】
例えば、前記組成物が、酸変性エラストマー100重量部に対して、化学発泡剤を0.5〜20重量部配合してなるものであってもよい。
【0013】
例えば、前記組成物が、スチレン系ブロック共重合体を更に含有するものであってもよい。
【0014】
また、本発明は、
酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤を溶融する溶融工程と、
溶融したホットメルト型粘着剤に化学発泡剤を添加した後、当該ホットメルト型粘着剤を吐出する加工工程と
を含み、化学発泡剤が、加工工程の環境下にて分解して発泡する成分であり、且つ、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物が、加工工程での環境下にて熱変性エラストマーの酸基を架橋させる成分である、粘着性エラストマー発泡体の製造方法である。
【0015】
例えば、化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンからなる群より選択される一種以上であってもよい。
【0016】
例えば、前記組成物が、酸変性エラストマー100重量部に対して、化学発泡剤を0.5〜20重量部配合してなるものであってもよい。
【0017】
例えば、前記組成物が、スチレン系ブロック共重合体を更に含有するものであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る粘着性エラストマー発泡体は、粘着特性を担保しつつ耐溶剤性に優れているという効果を奏する。
【0019】
本発明に係る粘着性エラストマー発泡体の製造方法は、ホットメルト型粘着剤であるため、溶剤系のような大量の溶剤を用いる必要がない一方、高温で架橋反応を実行するためにポットライフが著しく短くなることが危惧される状況下、発泡剤としても機能し得る化学発泡剤を加工工程(好適には吐出直前)で添加するため、溶融した粘着性エラストマーの粘度を発泡によりある程度低下させつつ、加工工程の途中(好適には吐出直前)から架橋反応を進行させる結果、製造工程の早い段階から溶融した粘着性エラストマーの架橋反応が進行してしまうことに起因した加工性の低下を防止しつつ、粘着性エラストマーの架橋も確実に実行することが可能になるという効果を奏する。また、発泡剤の分解温度・材料の劣化温度さえ考慮すれば、温度制御無しに架橋と発泡が1ステップで可能という効果も奏する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本形態に係る粘着性エラストマー発泡体は、例えば、
酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤を溶融する溶融工程と、
溶融したホットメルト型粘着剤に化学発泡剤を添加した後、当該ホットメルト型粘着剤を吐出する加工工程と
を含む製造方法により製造される(別ライン投入式)。以下、当該製造方法で使用される各原料を説明する。
【0021】
≪粘着性エラストマー発泡体の原料≫
{原料エラストマー:酸変性エラストマー}
本形態の酸変性エラストマーとは、ホットメルト型粘着剤として使用され得ると当業界で認識されている、エラストマーを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性したものである。具体例としては、ポリイソプレン、ポリブタジエンなどの共役ジエン系単量体の重合体、エチレン、プロピレン又はブテンなどのα-オレフィンの少なくとも1種からなるポリオレフィン、更には、ビニル芳香族化合物重合体ブロックAとイソプレンやオレフィン系化合物重合体ブロックBとからなるA-B-A型ブロック共重合体もしくはA-B型ブロック共重合体、このようなブロック共重合体の具体例としては、A−B型としてスチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、A−B-A型としてスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及びそれらの水素添加物であるスチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体等の熱可塑性エラストマーを挙げることができる。これらを不飽和カルボン酸もしくはその誘導体で変性したもの、又はそれらの混合物が用いられる。更には、それらの無水物も含まれる。これらの内、無水マレイン酸変性ポリイソプレン及び無水マレイン酸変性SEBSが好適であり、無水マレイン酸変性ポリイソプレンが特に好適である。
【0022】
市販されている酸変性ポリイソプレンとしては、株式会社クラレ製の商品名クラプレンLIR403、LIR410がある。市販されている酸変性ポリブタジエンとしては、サートマー社製の商品名RICON130MA、RICON131MA17などがある。市販されているスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体の酸変性物としては、例えば、クレイトンポリマー社製の商品名KRATON FG−1901Gなどがある。
【0023】
{原料エラストマー:任意の熱可塑性エラストマー}
エラストマー成分として、酸変性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーを1種又は2種以上添加してもよい。酸変性エラストマー以外の熱可塑性エラストマーは特に限定されないが、スチレン系ブロック共重合体が好ましい。スチレン系ブロック共重合体は特に限定されないが、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレンーブタジエンースチレン(SBS)、及びこれらの水素添加物の、例えば、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)ブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)が好ましい(これらの任意の組み合わせたものも含む)。市販されているスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)としては、日本ゼオン株式会社の商品名クインタック3421、3620、3433N、3520、3450、3460、JSR株式会社製のSIS TRシリーズ、エニケム社製の商品名ユーロプレン、クレイトンポリマー社製の商品名KRATON D1111K、D1113P、D1114P、D1117B、D1119B、D1119P、D1124B、D1124K、D1126P、D1160B、D1160E、D1161B、D1161E、D1161P、D1162P、D1163B、D1163P、D1163PTM、D1164P、D1165Pなどがある。
【0024】
{化学発泡剤}
化学発泡剤は、加工工程での環境条件(例えば、温度やせん断力)下にて分解して発泡する成分である。更に、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物は、加工工程での環境下にて酸変性エラストマーの酸基を架橋させる成分である。
【0025】
(好適な化学発泡剤)
好適な化学発泡剤の具体例は、それ自体又は発泡後の分解物が、カルボキシル基と反応するNH基又はNH基を2個以上(上限値は特に限定されないが例えば5個)有する化合物(例えば当該基を2個)である(例えば、ジアミン構造を有する有機化合物)。尚、このような化合物を複数組み合わせてもよい。より具体的な例としては、アゾジカルボンアミド(ADCA)等のジアミド、NN’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)などを挙げることができる。市販されているアゾジカルボンアミド(ADCA)としては、大塚化学株式会社製の商品名ユニフォームAZや、永和化成工業株式会社製の商品名ビニホールや、三協化成株式会社製の商品名セルマイクCシリーズなどがある。市販されているN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)としては、永和化成工業株式会社製の商品名セルラーや三協化成株式会社製の商品名セルマイクAシリーズなどがある。
【0026】
{他の任意成分}}
他の任意成分として、粘着付与樹脂、充填剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などを1種又は2種以上添加してもよい。更には架橋密度と発泡倍率のバランスをとるために、他の化学発泡剤(例えば、その他ジアミン構造を有する有機化合物、その他の有機、無機発泡剤)や物理的発泡を併用してもよい。尚、これら任意成分は、原料エラストマー側に添加しても、溶融した原料エラストマーに添加する化学発泡剤側に添加しても、更には別ラインから添加してもよい。
【0027】
≪粘着性エラストマー発泡体の製造方法≫
{別ライン投入式}
本形態に係る粘着性エラストマーの製造方法は、例えば、
酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤を溶融する溶融工程と、
溶融したホットメルト型粘着剤に化学発泡剤を添加・混合した後、当該ホットメルト型粘着剤を吐出する加工工程と
を含む。この際、投入される化学発泡剤の分解温度(T)と投入する先の粘着剤組成物の温度(T)との関係は、特に限定されないが、例えば、T>Tという状況で混合してその後にT以上まで昇温してもよく、或いは、T≧Tという状況で混合してもよい。
【0028】
{温度制御式}
本形態に係る粘着性エラストマーの製造方法は、
酸変性エラストマーと化学発泡剤とを含むホットメルト型粘着剤を加熱し、酸変性エラストマーを含む原料エラストマーを溶融する工程(ここで、溶融温度は、原料エラストマーの溶融温度以上であり、化学発泡剤の分解温度及び架橋反応温度未満である)と、
ホットメルト型粘着剤の加熱温度を、化学発泡剤の分解温度及び架橋反応の温度以上とする昇温工程と、
昇温工程後、溶融したホットメルト型粘着剤を吐出する加工工程と
を含む。
【0029】
以下、製造ライン簡素化の観点から、別ライン投入式を例に採り、当該方式での各工程を詳述する。
【0030】
{溶融工程}
溶融工程では、原料エラストマー(酸変性エラストマーを必須とし、任意に他のエラストマーを含む)を溶融させる。この際の溶融温度は、原料エラストマーが溶融し且つ原料エラストマーが劣化しない温度であることが好適である。
【0031】
(原料エラストマー中の酸変性エラストマー成分の添加量)
ここで、原料エラストマーとして他の熱可塑性エラストマーを添加する場合でも、酸変性エラストマー成分100重量部に対し、他の熱可塑性エラストマー成分0〜200重量部とすることが好適であり、40〜160重量部とすることがより好適であり、40〜120重量部とすることが特に好適である。
【0032】
{加工工程}
加工工程では、溶融したホットメルト型粘着剤に化学発泡剤を添加した後、当該ホットメルト型粘着剤を吐出させる。以下、当該工程を詳述する。
【0033】
(添加手法・タイミング)
溶融した原料エラストマーに化学発泡剤を添加する手法は、特に限定されず、例えば、吐出部(ノズル)側に向かって移動している溶融した原料エラストマーに、発泡剤を添加してもよい。また、添加するタイミングは、加工温度と使用する発泡剤の分解温度によるが、吐出させる直前(即ち、塗工直前)に投入する。
【0034】
(加工条件)
この加工工程での環境は、添加した化学発泡剤が分解して発泡する環境であり、且つ、添加した化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物による、酸変性エラストマーの酸基間の架橋反応が進行する環境である必要がある。この際、先に発泡反応が進行するような環境でも、先に架橋反応が進行するような環境でも、或いは同時に両反応が進行するような環境でもよい。このような環境は、使用するエラストマーの種類や化学発泡剤の種類等を踏まえ、温度、せん断力及び時間等を適宜調整することで構築する。例えば、加工温度は、発泡剤の分解温度以上及び架橋反応温度以上であればよい(酸とアミンは140℃以上で反応が進むことが知られている状況下、実施例では、加工温度を化学発泡剤の分解温度以上である180℃〜200℃で実施している)。しかしながら、加工温度が発泡剤の分解温度以下でも、せん断しつつ混ぜることにより反応は進行し得る(例えば、化学発泡剤の分解温度以下である160℃、この場合は分解前にNH2構造を有している発泡剤である。)。また、原料組成物内で発泡したガスによる膨張を抑制するよう、吐出させる前まで(即ち、ノズル内)を高圧に保つことが好適である。また、温度が高い状態にあるホットメルト粘着剤では次々に消泡していくが、吐出により急冷させることで、架橋と発泡が両立する。
【0035】
(化学発泡剤の添加量)
溶融した原料エラストマーに添加する化学発泡剤の配合量は、原料エラストマー中の酸変性エラストマー100重量部に対し、0.5〜40重量部であることが好適であり、0.5〜20重量部であることがより好適であり、1〜5重量部であることが更に好適である。この範囲内であるとゲル分率が好適化し易い。
【0036】
≪粘着性エラストマー発泡体の製造装置≫
ホットメルト粘着剤の製造に際しては、酸変性エラストマー等のエラストマー成分を溶融させるための加熱と混練手段、溶融したエラストマー成分をノズル側に押し出す押出手段、発泡剤を途中から混入する手段、押し出された原料組成物を外部に吐出させるためのノズルと、を備えた装置を使用する。具体例としては、当該装置は、先に粘着剤を溶融させ送液し、(好適には塗工直前に)化学発泡剤を別ラインから投入し混合しながら吐出・発泡(この段階で発泡と架橋が進行)させる装置である。このような構成のため、粘着剤成分と化学発泡剤は特に温度制約なく(加工温度で発泡剤が分解してくれればよい)実施可能である。
【0037】
≪粘着性エラストマー発泡体≫
{構造}
得られた粘着性エラストマー発泡体は、ホットメルト粘着剤という用途で使用する場合には、例えばシート状又はテープ状である。ここで、当該シート状又はテープ状での粘着性発泡体の厚さは、例えば、50μm以上(例えば、50〜300μm)である。また、粘着面に剥離ライナーが設けられていてもよい。
【0038】
{性質}
粘着性エラストマーのゲル分率は、35〜95%であることが好適であり、50〜80%が好適であり、60〜75%が更に好適である。特に、固定用途など粘着力が必要となる場合には、比較的柔らかく仕上げておくことが好ましい。そのためには、前述のような酸変性エラストマー以外の熱可塑性エラストマー(例えば、無変性SIS)を配合することが好適である。
【0039】
{粘着性エラストマー発泡体の用途}
本発明に係る粘着性発泡体は、ホットメルト粘着剤として有用である。この場合、粘着特性を担保しつつ、従来のホットメルト粘着剤の弱点であった耐溶剤性を改善することができる。特に、例えばSIS等を配合した場合であっても、著しい耐溶剤性の低下を抑制できる。このような粘着剤は特に養生用粘着テープに特に有用である。
【実施例】
【0040】
以下に具体的な例を挙げて本発明を説明する。しかし、本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0041】
≪発泡状態評価方法≫
顕微鏡で観察し、発泡状態良好なものを○、発泡しなかったものは×と評価した。
≪耐溶剤性(ゲル分率)測定方法)≫
サンプル約1gの重量を測り濾紙上に置き、24時間トルエンに浸漬した後、濾紙残留物を乾燥して重量を測った。
ゲル分率=濾紙残留物量(g)÷サンプル重量(g)
ゲル分率35%未満を×、35%以上70%未満を○、70%以上を◎と評価した。
≪粘着特性(指タック評価方法)≫
テープの粘着面に瞬間的に当てた親指に対する粘着剤のつきを官能評価。○:指に対して充分なタックがある、△:タックがやや低め、×:タックがない。(日本粘着テープ工業会、粘着ハンドブック編集委員会編「粘着ハンドブック 第3版」243頁、2005年10月1日発行)
【0042】
≪実施例1≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180℃に昇温した後、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):1重量部を加えて180〜200℃の温度で攪拌混合し、発泡と架橋を同時に行った。尚、使用したADCAは、180℃であっても199℃と比較して大幅な時間差なく発泡は進行する(有機過酸化物と同様に半減期が温度依存)。
【0043】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に良好であった(90.2%)。
【0044】
≪実施例2≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):1重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。
【0045】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に良好であった(90.9%)。
【0046】
≪実施例3≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ M3(ADCA、分解温度135℃):1重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。ユニフォームAZ VI-25の代わりにユニフォームAZ M3を用いた以外は実施例2と同じである。
【0047】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に良好であった(88.2%)。
【0048】
≪実施例4≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ M3(ADCA、分解温度135℃):5重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。ユニフォームAZ M3を1重量部からV重量部に増やした以外は実施例3と同じである。
【0049】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ良好であった(40.1%)。
【0050】
≪実施例5≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、永和化成工業株式会社製のセルラーGX(DPT、分解温度123℃):1重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。ユニフォームAZ VI-25の代わりにセルラーGXを用いた以外は実施例2と同じである。攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ良好であった(62.4%)。
【0051】
≪実施例6≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR410(カルボキシル基変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):1重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。クラプレンLIR403の代わりにクラプレンLIR410を用いた以外は実施例2と同じである。
【0052】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に良好であった(92.8%)。
【0053】
≪実施例7≫
クレイトンポリマー社製の商品名KRATON FG-1901G (無水マレイン酸変性SEBS):50重量部を180℃に昇温した後、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):1重量部を加えて180〜200℃の温度で攪拌混合し、発泡と架橋を同時に行った。
【0054】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ良好であった(38.1%)。
【0055】
≪実施例8≫
株式会社クラレ製の商品名クラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部と、日本ゼオン株式会社の商品名クインタック3421(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体):50重量部と、日本ゼオン株式会社の商品名クイントンS195(粘着付与樹脂、軟化点94℃):20重量部と、精工化学株式会社製の商品名ノンフレックスEBP(酸化防止剤):1重量部と、を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製の商品名ユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):10重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。
【0056】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に良好であった(87.3%)。
【0057】
≪比較例1≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン)自体の耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(9.6%)。
【0058】
≪比較例2≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR410(カルボキシル基変性ポリイソプレン)自体の耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(4.3%)。
【0059】
≪比較例3≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR-30(ポリイソプレンホモポリマー、酸変性していない)自体の耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(5.5%)。
【0060】
≪比較例4≫
株式会社クラレ製のLIR-30(ポリイソプレンホモポリマー、酸変性していない):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、大塚化学株式会社製のユニフォームAZ VI-25(ADCA、分解温度199℃):1重量部を混合し、発泡と架橋を同時に行った。クラプレンLIR403の代わりに、酸変性していないクラプレンLIR-30を用いた以外は実施例2と同じである。
【0061】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、均一に十分発泡していた。しかし、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(7.4%)。
【0062】
≪比較例5≫
株式会社クラレ製のクラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部を180〜200℃の温度に昇温して溶融撹拌した状況下にて、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3、84g/mol):1重量部を混合した。ユニフォームAZ VI-25の代わりに炭酸水素ナトリウムを用いた以外は実施例2と同じである。
【0063】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、きれいに発泡していた。しかし、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(6.6%)。
【0064】
≪比較例6≫
クレイトンポリマー社製の商品名KRATON FG-1901G(無水マレイン酸変性SEBS)自体の耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(13.5%)。
【0065】
≪比較例7≫
日本ゼオン株式会社の商品名クインタック3421(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)自体の耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(6.2%)。
【0066】
≪比較例8≫
株式会社クラレ製の商品名クラプレンLIR403(無水マレイン酸変性ポリイソプレン):50重量部と、日本ゼオン株式会社の商品名クインタック3421(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体):50重量部と、日本ゼオン株式会社の商品名クイントンS195(粘着付与樹脂、軟化点94℃):20重量部と、精工化学株式会社製の商品名ノンフレックスEBP(酸化防止剤):1重量部と、を加えて180〜200℃の温度で攪拌混合した。ユニフォームAZ VI-25を配合しなかった以外は実施例8と同じである。
【0067】
攪拌容器より反応物を取り出し、発泡状態を顕微鏡で観察したところ、発泡していなかった。また、耐溶剤性(ゲル分率)を測定したところ非常に低かった(8.8%)。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤に対して、化学発泡剤を混合し、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物で酸変性エラストマーの酸基間を架橋させることにより得られる粘着性エラストマー発泡体。
【請求項2】
化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンからなる群より選択される一種以上である請求項1記載の粘着性エラストマー発泡体。
【請求項3】
前記組成物が、酸変性エラストマー100重量部に対して、化学発泡剤を0.5〜20重量部配合してなる請求項1又は2記載の粘着性エラストマー発泡体。
【請求項4】
前記組成物が、スチレン系ブロック共重合体を更に含有する請求項1〜3のいずれか一項記載の粘着性エラストマー発泡体。
【請求項5】
酸変性エラストマーを含むホットメルト型粘着剤を溶融する溶融工程と、
溶融したホットメルト型粘着剤に化学発泡剤を添加した後、当該ホットメルト型粘着剤を吐出する加工工程と
を含み、化学発泡剤が、加工工程の環境条件下にて分解して発泡する成分であり、且つ、化学発泡剤及び/又は化学発泡剤分解物が、加工工程での環境条件下にて酸変性エラストマーの酸基を架橋させる成分である、粘着性エラストマー発泡体の製造方法。
【請求項6】
化学発泡剤が、アゾジカルボンアミド及びN,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンからなる群より選択される一種以上である請求項5記載の製造方法。
【請求項7】
前記組成物が、酸変性エラストマー100重量部に対して、化学発泡剤を0.5〜20重量部配合してなる請求項5又は6記載の製造方法。
【請求項8】
前記組成物が、スチレン系ブロック共重合体を更に含有する請求項5〜7のいずれか一項記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−71985(P2013−71985A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211371(P2011−211371)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000004020)ニチバン株式会社 (80)
【Fターム(参考)】