説明

粘着性ハイドロゲル、粘着性ハイドロゲル製造用組成物及びゲルシート

【課題】洗浄等の特別な作業を伴うことなく、優れた繰返し粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供する。
【解決手段】高分子マトリックスに水と多価アルコールとK値が25〜88のポリビニルピロリドンが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であり、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が2.5〜22.5重量部、前記(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が2.5〜22.5重量部、前記ポリビニルピロリドンが5〜40重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性ハイドロゲル、粘着性ハイドロゲル製造用組成物及びゲルシートに関する。更に詳しくは、本発明は、生体用電極、医療用粘着剤、化粧品、医薬部外品、工業計測用電極等の原料として好適に用いることができる粘着性ハイドロゲル、その製造用組成物、それを含むゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロゲルは、基本的に水との親和性の高いポリマーが水系溶媒中で膨潤したものである。ハイドロゲルは、吸水性、膨潤性、粘着性、導電性等の種々特性を有しており、これらの特性を活かして土木建築、農芸、食品、医療、化粧品、電気等の広範囲の分野において利用されている。
【0003】
近年では、痩身や筋力トレーニングを目的としたEMS(Electrical Muscle Stimulation)が普及し、一般家庭で使用される機会が増えてきた。一般家庭で使用される場合、皮膚上に貼付する電極パッドの耐久性が要求される。即ち、電極パッドに用いられる粘着性ゲルは、貼付と剥離を繰り返しても粘着力が低下しないこと(以下、繰返し粘着力という)が必要とされる。繰返し粘着力が向上すると、本来、使い捨て使用されている医療現場における電極パッドの使用においてもメリットが生じる。
【0004】
繰返し粘着力が低下する主な原因としては、ゲルを皮膚から剥離する際に、皮膚表面から脱落した角質がゲルの表面に付着し、有効な粘着面積が低下することが挙げられる。このような観点から、繰返し粘着力を改良する技術として、数回の皮膚貼付により汚れた粘着面を水洗することにより粘着力を回復させる技術が知られている(特許文献1参照)。また、所定量の水溶性高分子を使用することにより、粘着性を向上させる技術が知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3437124号公報
【特許文献2】特開2003−96431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されているハイドロゲルは、繰返し使用後、粘着力を回復させるために水洗等の作業が必要である。そのため、家庭等で使用される際には、確実に粘着力を回復させるために、洗浄方法や乾燥方法等について、取扱説明書等に記載された条件を守らなければならない。そのような条件は、ユーザーに煩雑さを感じさせることがある。
【0007】
ハイドロゲルは、水と接触すれば吸水する性質があり、吸水した状態では粘着力が発現しない。そのため、再使用には、指定の条件で余剰水分を蒸発させて、元の状態に回復させる必要がある。また、必要以上に長時間水と接触させると、ハイドロゲルは過度に吸水し、組成の復元が困難になる場合もある。
よって、特許文献1のハイドロゲルは、全てのユーザーにとって、安易にその効果を享受できるものとまではいえなかった。
一方、特許文献2の技術は、ハイドロゲルの粘着力を向上することができるものの、繰返し粘着力の点においては、改善の余地があると思われる。
【0008】
本発明は、洗浄等の特別な作業を伴うことなく、優れた繰返し粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、所定の単量体の共重合体からなる高分子マトリックスに、所定範囲のK値を有するポリビニルピロリドンを所定の割合で含有させたハイドロゲルが、繰返し粘着力に優れていることを見出して本発明に至った。
【0010】
かくして本発明によれば、高分子マトリックスに水と多価アルコールとK値が25〜88のポリビニルピロリドンが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であり、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が2.5〜22.5重量部、前記(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が2.5〜22.5重量部、前記ポリビニルピロリドンが5〜40重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルが提供される。
【0011】
また、本発明によれば、上記に記載の粘着性ハイドロゲルの製造に使用される粘着性ハイドロゲル製造用組成物であって、前記粘着性ハイドロゲル製造用組成物100重量部に対して、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体2.5〜22.5重量部及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体2.5〜22.5重量部を含む重合性単量体混合物、架橋性単量体、水、多価アルコール及びK値が25〜88のポリビニルピロリドン5〜40重量部含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記粘着性ハイドロゲルを含むことを特徴とするゲルシートが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による粘着性ハイドロゲルは、繰返し粘着力に優れている。そのため、本発明によるハイドロゲルを使用した(電極パッド等の)製品は、従来の製品に比べて繰返し使用に耐え得るので、製品寿命が長くなり、経済的であり、また省資源化に寄与することができる。
【0014】
多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリンから選択される場合、更に優れた繰返し粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【0015】
(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート又は(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレートから選択され、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンから選択される場合、更に優れた繰返し粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
また、粘着性ハイドロゲルが、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部の電解質を更に含む場合、導電性を備えた粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による粘着性ハイドロゲル(以下、単に「ハイドロゲル」又は「ゲル」ともいう)は、高分子マトリックスに水と多価アルコールとK値が25〜88のポリビニルピロリドンが含まれてなる。上記高分子マトリックスは、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体である。なお(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0017】
(高分子マトリックス)
高分子マトリックス(以下、「マトリックス」ともいう)は、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体である。
(1)重合性単量体混合物
重合性単量体混合物に含まれる(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と(メタ)アクリルアミド又はその誘導体は、重合反応性が良好であるため、残存モノマーを低減することができる。また、粘着性ハイドロゲル中の他の成分との親和性も良好である。
【0018】
(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ここで、(ポリ)エチレンとは、エチレン又はポリエチレンを意味する。また、ポリエチレンとは、エチレン単位を2〜10個備えた構造を意味する。(ポリ)プロピレン及び(ポリ)グリセリンも、(ポリ)エチレンと同様の内容を意味する。
【0019】
(メタ)アクリルアミド又はその誘導体としては、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩等の電解質系アクリルアミド誘導体、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の非電解質系アクリルアミド誘導体が挙げられる。
【0020】
(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して2.5〜22.5重量部含まれる。好ましくは、5〜22重量部である。含まれる量が2.5重量部未満であると、ハイドロゲルの粘着力が低下する場合がある。一方、22.5重量部を超えると、残存モノマーが多く発生するので、後処理工程が煩雑になり、また、残存モノマーの影響により得られるハイドロゲルの品質が劣化する場合がある。
【0021】
(メタ)アクリルアミド又はその誘導体は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して2.5〜22.5重量部含まれる。好ましくは、3〜22重量部である。含まれる量が2.5重量部未満であると、残存モノマーが多く発生する場合がある。一方、22.5重量部を超えると、ハイドロゲルの粘着性が低下する場合がある。
また、これらの(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体は、水溶性であることが好ましい。
【0022】
(2)架橋性単量体
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する二重結合を2つ以上有するものが好ましい。具体的には、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、ジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種以上併用して使用されてもよい。
【0023】
また、重合性の二重結合を1つ以上と、脱離反応や開環反応による架橋性反応性を有する官能基としてエポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基等を1つ以上有する、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等も挙げられる。
更に、イオンによる架橋を行う場合には、イオン性重合性単量体の一部に架橋性単量体としての機能を持たせることも可能である。
【0024】
高分子マトリックスを製造する際の架橋性単量体の割合は、使用する重合性単量体種や架橋性単量体種によって異なるが、一般的にハイドロゲル100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.25重量部である。架橋性単量体の割合が0.01重量部未満であると、架橋密度が低くなりゲルの形状安定性が乏しくなるため、皮膚に貼付したゲルを剥離する際にちぎれたゲルが皮膚表面に残留する場合がある。また、電気測定に使用する場合は、厚みの変動により測定値に変動が生じやすくなる場合がある。一方、0.5重量部を超えると、粘着力がほとんどない、硬くて脆いゲルになりやすい。
【0025】
(高分子マトリックスの含有量)
上記重合性単量体と架橋性単量体とが重合・架橋することにより、高分子マトリックスが形成される。本発明の粘着性ハイドロゲルに含まれる高分子マトリックスの割合は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して5〜50重量部であることが好ましい、より好ましくは、5〜40重量部である。粘着性ハイドロゲル中の高分子マトリックスの割合が5重量部未満であると、得られるゲル中のマトリックス濃度が低すぎるため、マトリックスが溶媒をかかえきれずブリードしやすくなり、ゲルの腰強度が弱くなる場合がある。一方、50重量部を越えると、重合時の発熱が大きくなりすぎるため、反応が暴走して、溶媒の沸点を超えて沸騰することがある。また沸騰した場合にはゲルに気泡が混入するため、良好なゲルを得られない場合がある。
【0026】
(多価アルコール)
本発明の粘着性ハイドロゲルに含まれる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変成体等が挙げられる。これらは、単独であるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0027】
これらの多価アルコールのうち、ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば室内で使用する場合は20℃前後)で液状であるものを使用することが好ましい。このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン等が挙げられる。
【0028】
多価アルコールの含有量は、ハイドロゲル100重量部に対して10〜80重量部であることが好ましい。より好ましくは、20〜70重量部である。多価アルコールの含有量が10重量部未満であると、ゲルの保湿力が乏しく、水分の蒸散が著しくなり、ゲルの経時安定性に欠けると共に柔軟性に欠けるため、ゲルに粘着性を付与することが困難となる場合がある。一方、80重量部を超えると、多価アルコールがゲルの表面にブリードして、粘着力が低下する場合がある。また、多価アルコールと水とポリビニルピロリドンとの配合液作成時に、粘度が高くなりすぎて、ハンドリングが悪くなり、溶解が困難となる場合がある。更に、ゲルに成型する際に気泡が混入し、脱泡作業工程が余分にかかる場合がある。
【0029】
(ポリビニルピロリドン)
ポリビニルピロリドンは、ハイドロゲル100重量部に対して5〜40重量部含まれる。好ましくは、5〜30重量部である。ポリビニルピロリドンの含有量が5重量部未満であると、繰り返し粘着性が低下する場合がある。一方、40重量部を超えると、ゲル作製時の配合液の粘度が高くなりすぎて、配合液が凝集して、均一溶解が困難となり、均一なゲルが得られない場合がある。なお、ハイドロゲル100重量部とは重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール及びポリビニルピロリドンの各添加量の総計である
【0030】
ポリビニルピロリドンのK値は、25〜88である。好ましくは、27〜85である。K値が25未満の場合、生体等にゲルを貼付して、剥離する際、ゲル表面近傍に存在する水溶性高分子が皮膚表面に残留し、不快感が残る場合がある。更に、ゲル粘着面と貼り付け対象物との界面に水溶性高分子が浮き出した際に、低分子量で凝集性に欠けるため粘着を阻害する場合がある。一方、K値が88を超えると、添加する水溶性高分子の量がたとえ微量であっても、ゲルを作製する際に調整する配合液の粘度が高くなりすぎて、均一溶解が困難となり、均一なゲルが得られない場合がある。
【0031】
(水)
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は、特に制限されないが、最終的に得られる粘着特性や電気特性を最適な値とするために、粘着性ハイドロゲル全体に対して10重量部から50重量部であることが好ましい。より好ましくは、10〜45重量部である。水の含有量が、10重量部未満であると、ゲルの平衡水分量に対する含水量が少なすぎるため、吸湿性が強くなり、ゲルが経時的に変質する場合がある。一方、50重量部を超えると、ゲルの平衡水分量との差が大きくなるため、乾燥によるゲルの収縮や、物性の変化を生じる場合がある。
【0032】
(電解質)
粘着性ハイドロゲルには、電解質が含まれてもよい。電解質が含まれることにより、心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極用途として好適な導電性のゲルを得ることができる。このような生体電極用途として用いる場合、電解質が含まれる粘着性ハイドロゲルの比抵抗は0.1〜10kΩ・cmであることが好ましい。
【0033】
本発明における粘着性ハイドロゲルに含まれる電解質としては、塩が挙げられる。塩としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等、ハロゲン化アルカリ金属やハロゲン化アルカリ土類金属、その他の金属ハロゲン化物や、各種金属の、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、また、アンモニウム塩や、各種錯塩等の無機塩類、酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価有機カルボン酸塩、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩、スルホン酸、アミノ酸、等の有機酸の金属塩、及び有機アンモニウム塩の他、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩が挙げられる。
【0034】
なお、電解質は、ハイドロゲルの配合作製時には不溶性であり、配合液作製中に分散した形態であっても、時間とともにハイドロゲル中に溶解するという特性のものを使用してもよい。そのような電解質としては、珪酸塩、アルミン酸塩や金属酸化物、水酸化物等が挙げられる。
【0035】
粘着性ハイドロゲルに好適な導電性を求める場合、電解質は、ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部含まれることが好ましい。より好ましくは、0.1〜2重量部である。水分を含んだハイドロゲルは、元来誘電体としての特性を有し、電極素子と複合させて電極を作製した場合は、ゲルの厚さや電極素子面積に応じた電気容量を有する。しかし、電極のインピーダンス(Z)は、特に1kHz未満の低周波領域では電解質濃度に大きく影響される。電解質の含有量が0.05重量部未満であると、インピーダンスが高くなり、導電性用途として好適とはいえなくなる場合がある。一方、10重量部を超えると、電解質のハイドロゲルへの溶解が困難となり、ゲル内部で結晶の析出が生じたり、他の成分の溶解を阻害したりする場合がある。また、導電性能が頭打ちとなり、導電性付与という観点からこれ以上の添加は有益なものとはいえなくなる。
【0036】
電解質は、ハイドロゲルに導電性を付与する目的以外で用いられてもよい。例えば、ハイドロゲルのPH調整を目的として、酸性塩、塩基性塩、多官能塩が添加されてもよい。また、ハイドロゲルの保湿性能の向上や抗菌性を持たせる目的で、電解質が添加されてもよい。
【0037】
(その他の添加物)
粘着性ハイドロゲルには、必要に応じて防腐剤、殺菌剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤等、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等その他の薬効成分を適宜添加してもよい。
【0038】
(粘着性ハイドロゲルを得る方法の例示)
粘着性ハイドロゲルを得る方法としては、例えば、重合性単量体、架橋性単量体、水、非架橋の水溶性高分子及び必要に応じて重合開始剤を溶解又は均一分散し、加熱又は紫外線照射等を行うことにより重合させることで得る方法が挙げられる。また、あらかじめ重合反応によって形成された高分子マトリックスに、水や非架橋の水溶性高分子等を含浸させることにより得ることも可能である。また、重合性単量体のみを重合させた直鎖状高分子、水、非架橋の水溶性高分子等を溶解又は均一分散して得られるポリマー配合液に、架橋性単量体又は触媒を添加して直鎖状高分子と架橋性単量体を反応させることによりマトリックスを生成する方法により得ることも可能である。
【0039】
ハイドロゲルを得るための重合方法としては、光重合の他、一般的なラジカル重合、レドックス重合、放射線重合等が可能である。上記種々の重合法の内、製造工程が簡素であり、非常に経済的であると同時に、安定した物性のゲル体を得ることが可能であることから光照射による光重合が好ましい。
【0040】
光重合においては、光重合性開始剤の存在下、紫外線を照射して重合することが好ましい。紫外線の積算照射量は、1000mJ/cm2以上であることが好ましい。2000mJ/cm2〜10000mJ/cm2であれば、ゲル中の残存モノマー量を100ppm以下にまで低減できるので、より好ましい。紫外線の積算照射量が1000mJ/cm2未満であると、重合反応が十分に進まない場合がある。大きすぎると、紫外線照射装置の大型化が必要となり、また不必要なエネルギーを消費することになる。更に、紫外線照射により発生する熱を除去する工程が別途必要となり、製造コストが上昇することがある。
【0041】
光重合性開始剤は、紫外線や可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。中でもα−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が好ましい。
【0042】
光重合開始剤の具体例としては、1−「4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル」−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−メチル−1−「(メチルチオ)フェニル」−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらを、単独で、あるいは複数を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
光重合開始剤は、重合反応を十分に行い、かつ残存モノマー量を低減するために、ハイドロゲル100重量部に対して、0.01〜1重量部添加されることが好ましい。より好ましくは、0.05〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が0.01重量部未満であると、重合反応が十分に進まない場合がある。一方、1重量部を超えると、重合反応後の重合開始剤の残物により、ハイドロゲルが変色(黄変)し、あるいは臭気を帯びることがある。
【0044】
(粘着性ハイドロゲルの成形方法(ゲルシート)の例示)
粘着性ハイドロゲルは、液状の配合液を重合架橋してゲル化するため、用途に合わせて適宜成形することが可能である。例えば、樹脂フィルム等のベースフィルムの上に前記組成物を滴下し、滴下後、その上面に樹脂フィルム等のトップフィルムをかぶせて組成物を押し広げ、所望の厚みに制御する。この状態で光(紫外線)照射及び/又は熱により重合・架橋させて、所望の厚さを有する粘着性ハイドロゲルを得ることができる。
【0045】
例えば、粘着剤として使用する場合等では、厚さ0.01mm〜2.0mmのゲルシートに成型されることがある。その場合、片面、又は両面に保護フィルムを設けたゲルシートに成形してもよい。
【0046】
ゲルシートを作製する際の保護フィルムは、セパレータや支持体として使用することができ、公知のものを使用してもよい。また、ゲルシートの作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造することができる。
【0047】
ベースフィルムには、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。これらフィルムのゲルシートと接する面は、シリコーンコーティング等の離型処理がなされていることが好ましい。
【0048】
ベースフィルムを離型紙として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、紙、樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムの表面に離型処理を施したものが好適に用いられる。二軸延伸したPETフィルムや、OPP等が特に好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0049】
ベースフィルムを離型紙でなく、粘着剤のパッキング材(裏打材)として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等を離型処理しないで用いることが好ましい。これらのうち、ポリウレタンフィルムは柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものもあるので特に好ましい。また、ポリウレタンフィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱が困難なため、キャリアフィルムとしてポリオレフィンや紙等でラミネートして用いることが好ましい。
【0050】
ゲル生成工程は、ベースフィルムにキャリアフィルムを付けた状態で行われることが好ましい。トップフィルムには、基本的にベースフィルムと同じ材質ものを使用することも可能であるが、光重合を妨げないために、光を遮断しない材質のフィルムを選択することが好ましい。また、パッキング材(裏打材)に用いるフィルムは、トップフィルムとして使用しない方が好ましい。特に、パッキング材に使用するフィルムが紫外線等の照射により劣化する可能性がある場合には、直接紫外線が照射される側に位置することになるため好ましくない。
【0051】
(ハイドロゲルを用いた電極パッド及びその製造方法の例示)
粘着性ハイドロゲルは、安全に皮膚等に粘着する特性を備えている。また、任意に電解質を添加することにより導電性を容易に付与することができる。そのため、電極パッド等の粘着性導電部位として好適に使用することができる。本発明の粘着性ハイドロゲルを電極パッドとして使用する一例について、以下に説明する。
【0052】
まず、カーボン等の導電物質が練り込まれた導電層の片面に粘着性ハイドロゲルを積層させる。次に、ハイドロゲルが積層された面とは反対側の面に、非導電性の支持体を積層させる。この支持体には、銅線等の導電性物質が導電層と接する形で取り付けられ、それが端子となる。端子を通じて、外部からもしくは外部のモニター等へ電気が流れて、導電層とハイドロゲルを通して貼付対象に電気を流すことができる粘着性導電部位となり得る。
【0053】
導電層には、ポリエステル系又はポリウレタン系樹脂をバインダーとしてカーボンペーストにより形成されたカーボンコート層、Ag/AgCl等の金属やカーボン等を含む導電性インクを印刷コーティングした層、樹脂フィルム上に金属箔(アルミ、ステンレス、Ag等)、もしくはカーボン等を練りこんだ導電性フィルムをラミネートした層等が使用される。導電層は引っ張り等、外部から力が働いた際に容易に切れないような強度を保持していることが望ましい。容易に切れると、電極を製造する際に途中で導電層が切れたり、伸張により最終製品の電極が変形したり、更に使用者の取扱い方によっては電極中の導電層の断線により、火傷等を誘引する可能性がある。一方で、凹凸のある皮膚面へ貼付するため、柔軟性も必要とされる。使用に際して不具合が起こらないような物性を持った導電層の選択が必要である。
【0054】
端子は、支持体と導電層がラミネートされたフィルムの場合は、導電層に粘着性ハイドロゲルを積層させる際に、フィルムの一部にハイドロゲルが積層されていない部分を設けることにより形成される。端子(ハイドロゲルが積層されていない部分)は、クリップ等で挟まれてリード線と接続される。
【0055】
カシメ構造を有する電極の場合は、導電性を有していれば特に限定されないが、ステンレス等の金属やカーボンを練りこんだ樹脂成型品であるスナップ端子と樹脂の成型品がAg/AgCl等の金属でコーティングされたエレメントで、挟まれた構造の部分が端子となり外部へ接続される。
【0056】
また、金属線等を使用する場合は、金属線の一部が導電層と支持体に挟まれた構造で、導電層と支持体の積層部からはみ出した部分は非導電性の樹脂等で覆われており、金属線の先端がリード線と接続されることで外部へ接続される。
【0057】
(粘着性ハイドロゲルを含むゲルシートの繰返し粘着力)
粘着性ハイドロゲルを用いて得られたゲルシート、電極パッドは、優れた繰返し粘着力を有する。具体的には、初期の粘着力(対象物に貼付して最初に剥離する際に要する力)をN1とし、貼付と剥離を繰り返して、10回目の粘着力(10回目の剥離の際に要する力)をN10としたときに、N1とN2との関係が、
0.85<N10/N1<1
となる。N10/N1が0.85より小さいと、繰返し使用した場合に、粘着力が著しく低下してしまうため、0.85を超えることが好ましい。0.90を超えることが特に好ましい。
【0058】
本発明による粘着性ハイドロゲルは、上述したとおり優れた繰返し粘着力を有するため、このハイドロゲルを用いて得られたゲルシートや電極パッドは、従来の製品にはみられないような優れた繰返し粘着力を有し、製品寿命を延ばすことができる。そのため、使い捨ての頻度を減らすことにより、省資源化の一助になることが期待される。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
先ず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
(K値の測定方法)
本発明におけるK値とは、分子量の大きさをフィケンチャー(Fikentscher)法により表した値であり、以下の測定方法によって求めることができる。K値が20未満である場合には5%(g/100ml)溶液の粘度を測定し、K値が20以上の場合は1%(g/100ml)溶液の粘度を測定する。試料濃度は乾燥物換算する。K値が20以上の場合、試料は1.0gを精密に測りとり、100mlのメスフラスコに入れ、室温で蒸留水を加え、振とうしながら完全に溶かして蒸留水を加えて正確に100mlとする。この試料溶液を恒温槽(25±0.2℃)で30分間放置後、ウベローデ型粘度計を用いて測定する。溶液が2つの印線の間を流れる時間を測定する。数回測定し、平均値をとる。相対粘度を規定するために、蒸留水についても同様に測定する。2つの得られた流動時間をハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach−Couette)の補正値に基づいて補正する。
K値={[300ClogZ+(C+1.5ClogZ)2]1/2+1.5ClogZ−C}/(0.15C+0.003C2)・・・(1)
上記式(1)中、Cは試料の濃度(%:g/100ml)、Zは濃度Cの溶液の相対粘度(ηrel)を示す。
相対粘度ηrelは次式より得られる。
ηrel=(溶液の流動時間)÷(水の流動時間)・・・(2)
【0061】
(粘着力の測定方法)
不織布で裏打ちしたサンプルを20mm×100mmの短冊状に切り出し、この試験片をベークライト板(住友ベークライト社製 紙ベークライト 品番:PL113)に貼り付け、英弘精機社製テクスチャーアナライザーにセットする。この後、JIS−Z0237に準じて300mm/分の速度で90°方向に剥離する際の力を粘着力とする。
【0062】
(繰返し粘着力の測定方法:皮膚180°繰り返し粘着力)
不織布で裏打ちしたサンプルを20mm×150mmの短冊状に切り出し、この試験片を予めアルコールで軽く拭いた左腕内側の皮膚に貼付する。貼付後2分間経過後、テンシロン(オリエンテック社製)を用いて、試験片を1000mm/分の速度で180°方向に剥離するのに要した力の値を初期の粘着力(N1)とする。その後、剥離した試験片を左腕内側の皮膚に貼付して、それを剥離するという操作を繰り返し、(初回の剥離から数えて)10回目に剥離したときに要した力の値をN10とする。そして、N10をN1で除した数値を、初期粘着力に対する粘着力保持率とする。なお、測定条件は、温度23℃、湿度60%の雰囲気下とする。
【0063】
(比抵抗の測定方法)
不織布で裏打ちしたサンプルを20mm×200mmの角型に切り出し、この試験片の両面にステンレス板を貼り合わせ、ステンレス板間に1kHz、10Vp−pの電流を流した時のインピーダンスを測定する。得られたインピーダンス(I)と、試験片の面積(S)及び厚み(d)から以下の式により、比抵抗を算出する。
比抵抗(Ω・cm)=I(Ω)÷d(cm)×S(cm2
【0064】
(実施例1)
重合性単量体としてターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸10重量部及びアクリル酸15重量部、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.06重量部、多価アルコールとしてグリセリン39.94重量部、K値が29.2のポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30)10重量部、電解質として塩化ナトリウム0.5重量部、紫外線重合開始剤として1−「4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル」−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.2重量部を攪拌溶解させてモノマー配合液を作製した。
【0065】
その後、この配合液を50重量%NaOH水溶液でpH4.0〜5.0に調整して、イオン交換水の量が25重量部になるよう調整した。次に、得られたモノマー配合液にメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cm2の紫外線照射をすることにより、厚さ0.75mmのシート状の粘着性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルの粘着力は1.6であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.90であり、比抵抗値は2.7であった。
【0066】
(実施例2)
グリセリンの添加量を34.94重量部に、ポリビニルピロリドンの添加量を15重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は3.16であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.91であり、比抵抗値は3.5であった。
【0067】
(実施例3)
グリセリンの添加量を29.94重量部に、ポリビニルピロリドンの添加量を20重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は5.26であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.93であり、比抵抗値は5.5であった。
【0068】
(実施例4)
ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸の添加量を5重量部に、アクリル酸の添加量を20重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.65であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.90であり、比抵抗値は2.85であった。
【0069】
(実施例5)
ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸の添加量を20重量部に、アクリル酸の添加量を5重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.95であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.91であり、比抵抗値は3.8であった。
【0070】
(実施例6)
ポリビニルピロリドンのK値を49.5に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.48であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.86であり、比抵抗値は2.6であった。
【0071】
(比較例1)
グリセリンの添加量を49.69重量部に、ポリビニルピロリドンの添加量を0.25重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.22であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.65であり、比抵抗値は2.5であった。
【0072】
(比較例2)
グリセリンの添加量を5重量部に、ポリビニルピロリドンの添加量を45重量部に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルの作製を試みた。しかし、完全に溶解することなく、モノマー配合液を作製できなかったので、ハイドロゲルの作製を断念した。
【0073】
(比較例3)
ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸の添加量を25重量部に変更して、アクリル酸を添加しなかったことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.18であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.81であり、比抵抗値は2.5であった。
【0074】
(比較例4)
ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸の添加量を25重量部に、ポリビニルピロリドンの添加量を0.25重量部に変更して、アクリル酸を添加しなかったことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は
1.55であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.61であり、比抵抗値は2.4であった。
【0075】
(比較例5)
ポリビニルピロリドンのK値を94.2に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製を試みた。しかし、完全に溶解することなく、モノマー配合液を作製できなかったので、ハイドロゲルの作製を断念した。
【0076】
(比較例6)
ポリビニルピロリドンのK値を16.5に変更したことを除き、実施例1と同様の方法でハイドロゲルを作製した。このハイドロゲルの粘着力は1.25であり、繰返し粘着力(N10/N1)は0.52であり、比抵抗値は2.7であった。
実施例1〜6及び比較例1〜6の原料の使用量及び結果について、表1にまとめて示す。
【0077】
【表1】

IR2959:1−「4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル」−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)
【0078】
表1に示されるように、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体、(メタ)アクリルアミド又はその誘導体、ポリビニルピロリドンが本発明の範囲内で作製された粘着性ハイドロゲルは、優れた繰返し粘着力を有することが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスに水と多価アルコールとK値が25〜88のポリビニルピロリドンが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体を含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であり、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して、前記(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が2.5〜22.5重量部、前記(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が2.5〜22.5重量部、前記ポリビニルピロリドンが5〜40重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲル。
【請求項2】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン、ポリオキシエチレングリセリンから選択される請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート又は(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレートから選択され、前記(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリンから選択される請求項1又は2に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項4】
前記粘着性ハイドロゲルが、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部の電解質を更に含む請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルの製造に使用される粘着性ハイドロゲル製造用組成物であって、前記粘着性ハイドロゲル製造用組成物100重量部に対して、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体2.5〜22.5重量部及び(メタ)アクリルアミド又はその誘導体2.5〜22.5重量部を含む重合性単量体混合物、架橋性単量体、水、多価アルコール及びK値が25〜88のポリビニルピロリドン5〜40重量部含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルを含むことを特徴とするゲルシート。

【公開番号】特開2012−62354(P2012−62354A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205605(P2010−205605)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】