説明

粘着性ハイドロゲル及びその製造方法、粘着性ハイドロゲル製造用組成物及びゲルシート

【課題】水洗使用した場合や一定時間水に浸漬した場合でも、乾燥後において、粘着力に加えて繰返し粘着性をも低下し難い粘着性ハイドロゲルを提供することを課題とする。
【解決手段】高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記高分子マトリックスが、特定量の、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、イオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体と、特定の非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体とを含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であることを特徴とする粘着性ハイドロゲルにより、上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性ハイドロゲル及びその製造方法、粘着性ハイドロゲル製造用組成物及びゲルシートに関する。更に詳しくは、本発明は、生体用電極、医療用粘着剤、化粧品、医薬部外品、工業計測用電極等の原料として好適に用いることができる粘着性ハイドロゲル及びその製造方法、その製造用組成物、それを含むゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
重合・架橋したポリマーからなる高分子マトリックスに、湿潤剤と水を含有させた導電性高分子ハイドロゲルを用いた電極は、様々な分野で利用されている。例えば、生体用電極には、従来からポリアクリル酸等の電解質ポリマーを重合・架橋した高分子マトリックスに、湿潤剤と水を含有させた導電性高分子ハイドロゲルを用いた電極が用いられてきた。高分子ハイドロゲルを用いた電極は、高分子マトリックスが親水性であり、水分の透過性があると同時に、水を含んでいるために電解質の添加が容易であり、加えて低インピーダンス化が可能である。そのため、心電図モニタリング等の高精度測定用電極としても十分な性能を発揮する。
【0003】
このような導電性高分子ハイドロゲルを用いた電極は、一旦被測定物に貼付して使用すると、生体用電極では皮膚表面の皮脂や角質が、工業用電極では被測定物自体又は表面の汚れ等がゲル表面に付着して粘着力が低下するため、通常使い捨てにされていた。しかしながら1回だけの使用で捨てるのは不経済であり、再使用可能な電極が望まれているが、繰り返し使用での粘着力の低下を防ぐことは難しく、満足できる再使用性は得られ難い。また、高分子ハイドロゲルは、高分子マトリックスが親水性であり、同時にゲル内包成分も親水性であるため、繰り返し水洗使用した場合や一定時間水に浸漬した場合では耐水性が殆どないという問題があった。
【0004】
上記の問題を解決する方法として、従来から存在する、親水性が低く、水洗に耐える化学構造を有する親油性ゲル、シリコーンゲル、ポリウレタン等を用いる方法が考えられる。しかしながら、これらの材料は水分の透過性が極めて小さく、これらを生体に用いた場合には蒸れによるカブレが発生することがある。また、ゲルに添加できる電解質の量が極めて少ないために、ゲル単体での優れた導電性を有する用途、特に心電図モニタリング、精密工業計測等の高精度な電気測定には不向きであった。このような問題を解決するための技術、すなわち水洗可能なゲル電極が、特開2001−406号公報(特許文献1)で提案されている。このゲル電極は、水と多価アルコールを含むハイドロゲルであると同時に、導電性高分子ゲル表面を水洗し、汚れを除去することにより初期の粘着力を回復できることを特徴としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のゲル電極は、確かに初期の粘着力を回復することは可能であるが、繰返し使用により次第に粘着力は低下してしまい、水洗後の繰返し粘着性としては決して満足いくものではなかった。
【0007】
本発明は、水洗使用した場合や一定時間水に浸漬した場合でも、乾燥後において、粘着力に加えて繰返し粘着性をも低下し難い粘着性ハイドロゲルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、イオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体と、特定の非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体とを含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体からなる高分子マトリックスを含むハイドロゲルが、水洗後も粘着力と繰返し粘着性に優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明によれば、高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、
前記高分子マトリックスが、(A)成分として(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、(B)成分としてイオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体と、(C)成分として式(1):
CH2=CR1−CONR23 (1)
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は水素原子または低級アルキル基である)
で表わされる非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体とを含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であり、
前記(A)成分、(B)成分及びC)成分が、それぞれ前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して5.0〜20.0重量部、3.0〜15.0重量部及び0.3〜3.0重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲルが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の粘着性ハイドロゲルの製造方法であって、前記(A)成分5.0〜20.0重量部と、前記(B)成分3.0〜15.0重量部と、前記(C)成分0.3〜3.0重量部とを含む重合性単量体混合物と、架橋性単量体と、水と、多価アルコールとを攪拌溶解させてモノマー配合液を得る工程と、
得られたモノマー配合液を加熱又は紫外線照射により、前記重合性単量体混合物と前記架橋性単量体とを共重合させて高分子マトリックスを得る工程と
を含むことを特徴とする、高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる粘着性ハイドロゲルの製造方法が提供される。
【0011】
さらに、本発明によれば、上記の粘着性ハイドロゲルの製造に使用される粘着性ハイドロゲル製造用組成物であって、前記粘着性ハイドロゲル製造用組成物100重量部に対して、前記(A)成分5.0〜20.0重量部、前記(B)成分3.0〜15.0重量部及び前記(C)成分0.3〜3.0重量部を含む重合性単量体混合物、架橋性単量体、水及び多価アルコールを含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物が提供される。
【0012】
さらに、本発明によれば、上記粘着性ハイドロゲルを含むことを特徴とするゲルシートが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明による粘着性ハイドロゲルは、水洗使用した場合や一定時間水に浸漬した場合でも、乾燥後において粘着力に優れると共に繰返し粘着力に優れている。そのため、本発明によるハイドロゲルを使用した(電極パッド等の)製品は、従来の製品に比べて繰返し使用に耐え得るので、製品寿命が長くなり、経済的であり、また省資源化に寄与することができる。
【0014】
粘着性ハイドロゲルが、高分子マトリックスに(D)成分としてポリビニルピロリドン又はその誘導体が更に含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記ポリビニルピロリドン又はその誘導体が、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.1〜6重量部含まれる場合、更に優れた粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【0015】
多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン及びポリオキシエチレングリセリンから選択される場合、更に優れた粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【0016】
(A)成分の(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート及び(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレートから選択され、(B)成分の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体が、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される場合、更に優れた粘着力を有する粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【0017】
また、粘着性ハイドロゲルが、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部の電解質を更に含む場合、導電性に優れた粘着性ハイドロゲルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明による粘着性ハイドロゲル(以下「ハイドロゲル」又は「ゲル」ともいう)は、高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる。
本発明の粘着性ハイドロゲルの各構成成分について説明するが、以下の説明において「粘着性ハイドロゲル100重量部」とは、重合性単量体、架橋性単量体、水、多価アルコール、任意成分のポリビニルピロリドンおよびその他添加物の総計を意味する。
【0019】
(高分子マトリックス)
高分子マトリックス(以下「マトリックス」ともいう)は、(A)(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、(B)イオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体と、(C)非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体とを含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体である。なお(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
本発明において「イオン性」とは、水に溶解したときに陽イオンと陰イオンを生じるものであり、遊離の酸の状態における単量体の1重量%水溶液が4未満のpHを示すものであることを意味する。
【0020】
重合性単量体と架橋性単量体とが重合・架橋することにより、高分子マトリックスが形成される。粘着性ハイドロゲルに含まれる高分子マトリックスの割合は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して8.5〜44重量部であることが好ましい。10〜42重量部がより好ましく、15〜40重量部が特に好ましい。
高分子マトリックスの割合が8.5重量部未満では、得られるゲル中のマトリックス濃度が低すぎ、マトリックスが溶媒を抱えきれずブリードし易くなり、ゲルの腰強度が弱くなることがある。一方、高分子マトリックスの割合が44重量部を超えると、高分子マトリックスを形成する単量体混合物の重合時の発熱が大きくなりすぎ、反応が暴走して、溶媒の沸点を超えて沸騰することがある。また、沸騰した場合にはゲルに気泡が混入するため、良好なゲルが得られないことがある。
【0021】
(1)重合性単量体混合物
重合性単量体混合物に含まれる(A)成分の(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、(B)成分の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体は、重合反応性が良好であるため、残存モノマーを低減することができる。また、粘着性ハイドロゲル中の他の成分との親和性も良好である。
【0022】
(A)成分としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート及び(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、(A)成分は水溶性であることが好ましい。
ここで、(ポリ)エチレンとは、エチレン又はポリエチレンを意味する。また、ポリエチレンとは、エチレン単位を2〜10個備えた構造を意味する。(ポリ)プロピレン及び(ポリ)グリセリンも、(ポリ)エチレンと同様の内容を意味する。
【0023】
(A)成分は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して5.0〜20.0重量部、好ましくは6.0〜15.0重量部含まれる。含まれる量が5.0重量部未満では、ハイドロゲルの粘着力が低下することがある。一方、含まれる量が20.0重量部を超えると、残存モノマーが多く発生して後処理工程が煩雑になり、また残存モノマーの影響により得られるハイドロゲルの品質が劣化することがある。
【0024】
(B)成分としては、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩等の電解質系アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、(B)成分は水溶性であることが好ましい。
【0025】
(B)成分は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して3.0〜15.0重量部、好ましくは 5.0〜12.0重量部含まれる。含まれる量が3.0重量部未満では、残存モノマーが多く発生することがある。一方、含まれる量が15.0重量部を超えると、ハイドロゲルの粘着性が低下することがある。
【0026】
(C)成分は、式(1):
CH2=CR1−CONR23 (1)
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は水素原子または低級アルキル基である)
で表わされる。
式(1)における置換基R2およびR3の低級アルキル基としては、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等の炭素数3〜6の直鎖状または分枝鎖状の低級アルキル基が挙げられる。これらの中でもイソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
炭素数が3未満の場合、水洗後の繰返し粘着性が悪くなるおそれがあり、炭素数6を超えると、ゲルの強度が低下したり、透明性が損なわれるおそれがある。
【0027】
式(1)で表される(C)成分としては、N−プロピルアクリルアミド,N−イソプロピルアクリルアミド,N−ブチルアクリルアミド,N−イソブチルアクリルアミド,N−sec-ブチルアクリルアミド,N−tert-ブチルアクリルアミド,N−ペンチルアクリルアミド,N−ヘキシルアクリルアミド等が挙げられる。
【0028】
(C)成分は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.3〜3.0重量部、好ましくは0.4〜2.0重量部含まれる。含まれる量が0.3重量部未満では、水洗後の繰返し粘着性が悪くなるおそれがある。一方、含まれる量が3.0重量部を超えると、ゲルの強度が低下したり、透明性が損なわれるおそれがある。
【0029】
なお、本発明では、上記重合性単量体のほかに、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の非電解質系アクリルアミド誘導体を適宜使用することができる。
【0030】
(2)架橋性単量体
架橋性単量体としては、分子内に重合性を有する二重結合を2つ以上有するものが好ましい。具体的には、メチレンビス(メタ)アクリルアミド[N,N’−メチレンビスアクリルアミド]、エチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリルアミド又は(メタ)アクリレート、テトラアリロキシエタン、ジアリルアンモニウムクロライド等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
また、架橋性単量体としては、重合性の二重結合を1つ以上と、脱離反応や開環反応による架橋性反応性を有する官能基としてエポキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基等を1つ以上有する、グリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロールアクリルアミド等も挙げられる。
さらに、イオンによる架橋を行う場合には、イオン性重合性単量体の一部に架橋性単量体としての機能を持たせることも可能である。
【0032】
高分子マトリックスを製造する際の架橋性単量体の割合は、使用する重合性単量体種や架橋性単量体種によって異なるが、一般的にハイドロゲル100重量部に対して0.01〜0.5重量部であることが好ましい。より好ましくは、0.03〜0.25重量部、さらに好ましくは0.05〜0.2重量部である。
架橋性単量体の割合が0.01重量部未満では、架橋密度が低くなりゲルの形状安定性が乏しくなり、皮膚に貼付したゲルを剥離する際にちぎれたゲルが皮膚表面に残留することがある。また、電気測定に使用する場合は、厚みの変動により測定値に変動が生じ易くなることがある。一方、架橋性単量体の割合が0.5重量部を超えると、粘着力がほとんどない、硬く脆いゲルになり易い。
【0033】
(多価アルコール)
本発明の粘着性ハイドロゲルに含まれる多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等のジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン等の多価アルコール縮合体、ポリオキシエチレングリセリン等の多価アルコール変性体等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
これらの多価アルコールの中でも、粘着性ハイドロゲルを実際に使用する温度領域(例えば、室内で使用する場合は20℃前後)で液状であるが好ましい。このような多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、グリセリン等が挙げられる。
【0035】
多価アルコールの割合は、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して10〜80重量部であることが好ましい。より好ましくは20〜70重量部である。
多価アルコールの割合が10重量部未満では、ゲルの保湿力が乏しく、水分の蒸散が著しくなり、ゲルの経時安定性に欠けると共に柔軟性に欠け、ゲルに粘着性を付与することが困難になることがある。一方、多価アルコールの割合が80重量部を超えると、多価アルコールがゲルの表面にブリードして、粘着力が低下することがある。また、多価アルコールと水とポリビニルピロリドンとの配合液調製時に、粘度が高くなりすぎて、ハンドリングが悪くなり、溶解が困難となることがある。さらに、ゲルを成型する際に気泡が混入して、脱泡作業工程が余分に必要になることがある。
【0036】
(ポリビニルピロリドン)
本発明による粘着性ハイドロゲルは、水洗い前の粘着力が向上するという点で、高分子マトリックスにポリビニルピロリドン又はその誘導体が更に含まれてなるのが好ましい。
ポリビニルピロリドンは、ハイドロゲル100重量部に対して0.1〜6重量部含まれるのが好ましい。より好ましくは、0.2〜3.0重量部である。ポリビニルピロリドンの含有量が0.1重量部未満であると、粘着力の向上効果が少ないことがある。一方、6重量部を超えると、ゲル作製時の配合液の粘度が高くなりすぎ、配合液が凝集して均一溶解が困難となり、均一なゲルが得られないことがある。
【0037】
ポリビニルピロリドンのK値は、25〜88であることが好ましい。より好ましくは27〜85である。K値が25未満では、生体等にゲルを貼付して、剥離する際、ゲル表面近傍に存在する水溶性高分子が皮膚表面に残留し、不快感が残ることがある。また、ゲル粘着面と貼り付け対象物との界面に水溶性高分子が浮き出した際に、低分子量で凝集性に欠けるため粘着を阻害することがある。一方、K値が88を超えると、添加する水溶性高分子の量が例え微量であっても、ゲルを作製する際に調整する配合液の粘度が高くなりすぎて、均一溶解が困難になり、均一なゲルが得られないことがある。
【0038】
本発明におけるK値とは、分子量の大きさをフィケンチャー(Fikentscher)法により表した値であり、以下の測定方法によって求めることができる。
K値が20未満である場合には5%(g/100ml)溶液の粘度を測定し、K値が20以上の場合は1%(g/100ml)溶液の粘度を測定する。試料濃度は乾燥物換算する。K値が20以上の場合、試料は1.0gを精密に測りとり、100mlのメスフラスコに入れ、室温で蒸留水を加え、振とうしながら完全に溶かして蒸留水を加えて正確に100mlとする。この試料溶液を恒温槽(25±0.2℃)で30分間放置後、ウベローデ型粘度計を用いて測定する。溶液が2つの印線の間を流れる時間を測定する。数回測定し、平均値をとる。相対粘度を規定するために、蒸留水についても同様に測定する。2つの得られた流動時間をハーゲンバッハ−キュッテ(Hagenbach−Couette)の補正値に基づいて補正する。
K値=[[300ClogZ+(C+1.5ClogZ)2]1/2+1.5ClogZ−C]
/(0.15C+0.003C2) (1)
上記式(1)中、Cは試料の濃度(%:g/100ml)、Zは濃度Cの溶液の相対粘度(ηrel)を示す。
相対粘度ηrelは次式より得られる。
ηrel=(溶液の流動時間)/(水の流動時間) (2)
【0039】
(水)
粘着性ハイドロゲルに含まれる水の含有量は、特に制限されないが、最終的に得られる粘着特性や電気特性を最適な値とするために、粘着性ハイドロゲル100重量部に対して10重量部から50重量部であることが好ましい。より好ましくは10〜45重量部、さらに好ましくは20〜30重量部である。
水の含有量が10重量部未満では、ゲルの平衡水分量に対する含水量が少なすぎるため、吸湿性が強くなり、ゲルが経時的に変質することがある。一方、水の含有量が50重量部を超えると、ゲルの平衡水分量との差が大きくなり、乾燥によるゲルの収縮や物性の変化を生じることがある。
【0040】
(電解質)
粘着性ハイドロゲルには、電解質が含まれてもよい。電解質が含まれることにより、心電図測定用電極、低周波治療器用電極、各種アース電極等の生体電極用途として好適な導電性のゲルを得ることができる。このような生体電極用途として用いる場合には、電解質が含まれる粘着性ハイドロゲルの比抵抗は0.1〜10kΩ・cmであることが好ましい。
【0041】
本発明における粘着性ハイドロゲルに含まれる電解質としては、塩が挙げられる。
塩としては、ハロゲン化ナトリウム、ハロゲン化カリウム、ハロゲン化マグネシウム、ハロゲン化カルシウム等、ハロゲン化アルカリ金属やハロゲン化アルカリ土類金属、その他の金属ハロゲン化物や、各種金属の、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、また、アンモニウム塩や、各種錯塩等の無機塩類、酢酸、安息香酸、乳酸、酒石酸等の一価有機カルボン酸塩、フタル酸、コハク酸、アジピン酸、クエン酸等の多価カルボン酸の一価又は二価以上の塩、スルホン酸、アミノ酸、等の有機酸の金属塩、及び有機アンモニウム塩の他、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン等の高分子電解質の塩が挙げられる。
【0042】
なお、電解質は、ハイドロゲルの配合作製時には不溶性であり、配合液作製中に分散した形態であっても、時間とともにハイドロゲル中に溶解するという特性のものを使用してもよい。そのような電解質としては、珪酸塩、アルミン酸塩や金属酸化物、水酸化物等が挙げられる。
【0043】
粘着性ハイドロゲルに好適な導電性を求める場合、電解質は、ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部含まれることが好ましい。より好ましくは0.1〜2重量部である。水分を含んだハイドロゲルは、元来誘電体としての特性を有し、電極素子と複合させて電極を作製した場合は、ゲルの厚さや電極素子面積に応じた電気容量を有する。しかし、電極のインピーダンス(Z)は、特に1kHz未満の低周波領域では電解質濃度に大きく影響される。電解質の含有量が0.05重量部未満であると、インピーダンスが高くなり、導電性用途として好適とはいえなくなる場合がある。一方、10重量部を超えると、電解質のハイドロゲルへの溶解が困難となり、ゲル内部で結晶の析出が生じたり、他の成分の溶解を阻害したりする場合がある。また、導電性能が頭打ちとなり、導電性付与という観点からこれ以上の添加は有益なものとはいえなくなる。
【0044】
電解質は、ハイドロゲルに導電性を付与する目的以外で用いられてもよい。例えば、ハイドロゲルのPH調整を目的として、酸性塩、塩基性塩、多官能塩が添加されてもよい。また、ハイドロゲルの保湿性能の向上や抗菌性を持たせる目的で、電解質が添加されてもよい。
【0045】
(その他の添加物)
粘着性ハイドロゲルには、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、防腐剤、殺菌剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、香料、界面活性剤、着色剤等、抗炎症剤、ビタミン剤、美白剤等その他の薬効成分を適宜添加してもよい。
これらの添加剤は、ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部用いることができる。
【0046】
(粘着性ハイドロゲルの製造方法)
本発明の粘着性ハイドロゲルを得る方法としては、(A)成分5.0〜20.0重量部と、(B)成分3.0〜15.0重量部と、(C)成分0.3〜3.0重量部とを含む重合性単量体混合物と、架橋性単量体と、水と、多価アルコールと、任意に(D)成分0.1〜6重量部とを攪拌溶解させてモノマー配合液を得る工程と、
得られたモノマー配合液を加熱又は紫外線照射により、前記重合性単量体混合物と前記架橋性単量体とを共重合させて高分子マトリックスを得る工程が含まれる。モノマー配合液には、必要に応じて重合開始剤が含まれていてもよい。
【0047】
また、予め重合反応によって形成された高分子マトリックスに、水や非架橋の水溶性高分子等を含浸させることにより得ることも可能である。また、重合性単量体のみを重合させた直鎖状高分子、水、非架橋の水溶性高分子等を溶解又は均一分散して得られるポリマー配合液に、架橋性単量体又は触媒を添加して直鎖状高分子と架橋性単量体を反応させることによりマトリックスを生成する方法により得ることも可能である。
【0048】
ハイドロゲルを得るための重合方法としては、光重合の他、一般的なラジカル重合、レドックス重合、放射線重合等が可能である。上記種々の重合法の内、製造工程が簡素であり、非常に経済的であると同時に、安定した物性のゲル体を得ることが可能であることから光照射による光重合が好ましい。
【0049】
光重合においては、光重合性開始剤の存在下、紫外線を照射して重合することが好ましい。紫外線の積算照射量は、1000mJ/cm2以上であることが好ましい。2000mJ/cm2〜10000mJ/cm2であれば、ゲル中の残存モノマー量を100ppm以下にまで低減できるので、より好ましい。紫外線の積算照射量が1000mJ/cm2未満では、重合反応が十分に進まないことがある。紫外線の積算照射量が大きすぎると、大型の紫外線照射装置が必要になり、また不必要なエネルギーを消費することになる。更に、紫外線照射により発生する熱を除去する工程が別途必要となり、製造コストが上昇することがある。
【0050】
光重合性開始剤は、紫外線や可視光線で開裂して、ラジカルを発生するものであれば特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。中でもα−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が好ましい。
【0051】
光重合開始剤の具体例としては、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:ダロキュア1173、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:イルガキュア184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:イルガキュア907、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:イルガキュア369、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
光重合開始剤は、重合反応を十分に行い、かつ残存モノマー量を低減するために、ハイドロゲル100重量部に対して、0.01〜1重量部添加されることが好ましい。より好ましくは0.05〜0.5重量部である。光重合開始剤の添加量が0.01重量部未満では、重合反応が十分に進行しないことがある。一方、光重合開始剤の添加量が1重量部を超えると、重合反応後の重合開始剤の残物により、ハイドロゲルが変色(黄変)し、あるいは臭気を帯びることがある。
【0053】
(粘着性ハイドロゲルの成形方法(ゲルシート)の例示)
粘着性ハイドロゲルは、液状の配合液を重合・架橋してゲル化するため、用途に合わせて適宜成形することが可能である。例えば、樹脂フィルム等のベースフィルムの上に前記組成物を滴下し、滴下後、その上面に樹脂フィルム等のトップフィルムをかぶせて組成物を押し広げ、所望の厚みに制御する。この状態で光(紫外線)照射及び/又は熱により重合・架橋させて、所望の厚さを有する粘着性ハイドロゲルを得ることができる。
【0054】
例えば、粘着剤として使用する場合等では、厚さ0.01mm〜2.0mmのゲルシートに成型されることがある。その場合、片面、又は両面に保護フィルムを設けたゲルシートに成形してもよい。
【0055】
ゲルシートを作製する際の保護フィルムは、セパレータや支持体として使用することができ、公知のものを使用してもよい。また、ゲルシートの作製方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法で製造することができる。
【0056】
ベースフィルムには、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、紙又は樹脂フィルムをラミネートした紙等を使用することができる。これらフィルムのゲルシートと接する面は、シリコーンコーティング等の離型処理がなされていることが好ましい。
【0057】
ベースフィルムを離型紙として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、紙、樹脂フィルムをラミネートした紙等のフィルムの表面に離型処理を施したものが好適に用いられる。二軸延伸したPETフィルムや、OPP等が特に好ましい。離型処理の方法としては、シリコーンコーティングが挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0058】
ベースフィルムを離型紙でなく、粘着剤のパッキング材(裏打材)として使用する場合は、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等を離型処理しないで用いることが好ましい。これらのうち、ポリウレタンフィルムは柔軟性があり、水蒸気透過性を有するものもあるので特に好ましい。また、ポリウレタンフィルムは、通常単独では柔らかすぎ、製造工程での取扱いが困難なため、キャリアフィルムとしてポリオレフィンや紙等でラミネートして用いることが好ましい。
【0059】
ゲル生成工程は、ベースフィルムにキャリアフィルムを付けた状態で行われることが好ましい。トップフィルムには、基本的にベースフィルムと同じ材質ものを使用することも可能であるが、光重合を妨げないために、光を遮断しない材質のフィルムを選択することが好ましい。また、パッキング材(裏打材)に用いるフィルムは、トップフィルムとして使用しない方が好ましい。特に、パッキング材に使用するフィルムが紫外線等の照射により劣化する可能性がある場合には、直接紫外線が照射される側に位置することになるため好ましくない。
【0060】
(ハイドロゲルを用いた電極パッド及びその製造方法の例示)
粘着性ハイドロゲルは、安全に皮膚等に粘着する特性を備えている。また、任意に電解質を添加することにより導電性を容易に付与することができる。そのため、電極パッド等の粘着性導電部位として好適に使用することができる。本発明の粘着性ハイドロゲルを電極パッドとして使用する一例について、以下に説明する。
【0061】
まず、カーボン等の導電物質が練り込まれた導電層の片面に粘着性ハイドロゲルを積層させる。次に、ハイドロゲルが積層された面とは反対側の面に、非導電性の支持体を積層させる。この支持体には、銅線等の導電性物質が導電層と接する形で取り付けられ、それが端子となる。端子を通じて、外部からもしくは外部のモニター等へ電気が流れて、導電層とハイドロゲルを通して貼付対象に電気を流すことができる粘着性導電部位となり得る。
【0062】
導電層には、ポリエステル系又はポリウレタン系樹脂をバインダーとしてカーボンペーストにより形成されたカーボンコート層、Ag/AgCl等の金属やカーボン等を含む導電性インクを印刷コーティングした層、樹脂フィルム上に金属箔(アルミ、ステンレス、Ag等)、もしくはカーボン等を練りこんだ導電性フィルムをラミネートした層等が使用される。導電層は引っ張り等、外部から力が働いた際に容易に切れないような強度を保持していることが望ましい。容易に切れると、電極を製造する際に途中で導電層が切れたり、伸張により最終製品の電極が変形したり、更に使用者の取扱い方によっては電極中の導電層の断線により、火傷等を誘引する可能性がある。一方で、凹凸のある皮膚面へ貼付するため、柔軟性も必要とされる。使用に際して不具合が起こらないような物性を持った導電層の選択が必要である。
【0063】
端子は、支持体と導電層がラミネートされたフィルムの場合は、導電層に粘着性ハイドロゲルを積層させる際に、フィルムの一部にハイドロゲルが積層されていない部分を設けることにより形成される。端子(ハイドロゲルが積層されていない部分)は、クリップ等で挟まれてリード線と接続される。
【0064】
カシメ構造を有する電極の場合は、導電性を有していれば特に限定されないが、ステンレス等の金属やカーボンを練りこんだ樹脂成型品であるスナップ端子と樹脂の成型品がAg/AgCl等の金属でコーティングされたエレメントで、挟まれた構造の部分が端子となり外部へ接続される。
【0065】
また、金属線等を使用する場合は、金属線の一部が導電層と支持体に挟まれた構造で、導電層と支持体の積層部からはみ出した部分は非導電性の樹脂等で覆われており、金属線の先端がリード線と接続されることで外部へ接続される。
【0066】
(水洗後の繰り返し粘着力の評価)
粘着性ハイドロゲルを用いて得られたゲルシート、電極パッドは、水洗しても優れた繰返し粘着力を有する。具体的には、水洗後の初期の粘着力(対象物に貼付して最初に剥離する際に要する力)をN1とし、引き続いて貼付と剥離を繰り返して、10回目の粘着力(10回目の剥離の際に要する力)をN10としたときに、N1とN10との関係が、
0.6<N10/N1<1.0
となる。N10/N1が0.6より小さいと、繰返し使用した場合に、粘着力の低下が大きく好ましくない。0.75を超えることがより好ましく、0.80を超えることが特に好ましい。
水洗の方法としては、例えば、20℃の水に1分間浸漬した後、23℃、相対湿度60%の雰囲気下で乾燥する方法等である。
【0067】
本発明による粘着性ハイドロゲルは、上述したとおり水洗した場合でも優れた繰返し粘着力を有するため、このハイドロゲルを用いて得られたゲルシートや電極パッドは、従来の製品にはみられないような優れた繰返し粘着力を有し、製品寿命を延ばすことができる。そのため、使い捨ての頻度を減らすことにより、省資源化の一助になることが期待される。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。先ず、実施例及び比較例中の測定方法及び評価方法について説明する。
【0069】
(粘着力の測定方法:皮膚180°繰り返し粘着力)
20mm×100mmの短冊状に切り出したサンプルを,20℃の水に1分間浸漬した後、23℃、相対湿度60%の雰囲気下で120分間乾燥させた後,不織布で裏打ちした。この試験片を予めアルコールで軽く拭いた左腕内側の皮膚に貼付する。貼付後2分間経過後、テンシロン(オリエンテック社製)を用いて、試験片を1000mm/分の速度で180°方に剥離するのに要した力の値を初期の粘着力(N1)とする。その後、剥離した試験片を左腕内側の皮膚に貼付して、それを剥離するという操作を繰り返し、(初回の剥離から数えて)10回目に剥離したときに要した力の値を粘着力(N10)とする。そして、N10をN1で除した数値を、初期粘着力に対する粘着力保持率とする。なお、測定条件は、温度23℃、湿度60%の雰囲気下とする。
【0070】
(実施例1)
重合性単量体としてアクリル酸14.4重量部、ターシャリーブチルアクリルアミドスルホン酸9.6重量部及び ターシャリーブチルアクリルアミド0.6重量部、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部、架橋性単量体としてN,N’−メチレンビスアクリルアミド0.06重量部、多価アルコールとしてポリグリセリン(阪本薬品工業社製:ポリグリセリン♯310,平均分子量310)44重量部、電解質として塩化ナトリウム0.5重量部、紫外線重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:イルガキュア2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)0.2重量部を攪拌溶解させてモノマー配合液を作製した。
【0071】
その後、この配合液を50重量%NaOH水溶液でpH4.0〜5.0に調整して、粘着性ハイドロゲルの総量が100重量部になるようにイオン交換水を調製した(イオン交換水の使用量17.24重量部)。次に、得られたモノマー配合液にメタルハライドランプを使用してエネルギー量3000mJ/cm2の紫外線照射をすることにより、厚さ0.75mmのシート状の粘着性ハイドロゲルを得た。水洗後のこのハイドロゲルの初期粘着力N1(N)は0.8、繰返し粘着力N10(N)は0.64、粘着力保持率N10/N1は0.8であった。
【0072】
(実施例2)
ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部を1.0重量部に,イオン交換水17.24重量部を21.64重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして粘着性ハイドロゲルを得た。水洗後のこのハイドロゲルの初期粘着力N1は0.65,繰返し粘着力N10(N)は0.42,粘着力保持率N10/N1は0.65であった。
【0073】
(実施例3)
ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部を0重量部に、イオン交換水17.24重量部を22.64重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして粘着性ハイドロゲルを得た。水洗後のこのハイドロゲルの初期粘着力N1は0.85,繰返し粘着力N10は0.70,粘着力保持率N10/N1は0.82であった。
【0074】
(実施例4)
ターシャリーブチルアクリルアミド0.6重量部を1.2重量部に,ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部を0重量部に、イオン交換水17.24重量部を22.04重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして粘着性ハイドロゲルを得た。水洗後のこのハイドロゲルの初期粘着力N1は0.83,繰返し粘着力N10は0.71,粘着力保持率N10/N1は0.85であった。
【0075】
(比較例1)
ターシャリーブチルアクリルアミド0.6重量部を0.1重量部に、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部を0重量部に、粘着性ハイドロゲルの総量が100重量部になるようにイオン交換水を調製した(イオン交換水の使用量23.14重量部)こと以外は実施例1と同様にして粘着性ハイドロゲルを得た。このハイドロゲルの初期粘着力N1(N)は0.7、繰返し粘着力N10(N)は0.07、粘着力保持率N10/N1は0.1であった。
【0076】
(比較例2)
ターシャリーブチルアクリルアミド0.6重量部を6重量部に、ポリビニルピロリドン(第一工業製薬社製:クリージャスK30、K値:29.2)5.4重量部を0重量部にしたこと以外は実施例1と同様にして粘着性ハイドロゲル作製を試みたが、ターシャリーブチルアクリルアミドが溶解せず均一な配合液の作製は出来なかった。
【0077】
表1によれば、重合性単量体として(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体、イオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体、非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体が本発明の範囲内で作製された粘着性ハイドロゲルは、粘着力に加えて優れた繰返し粘着性を有することがわかる。
また、重合性単量体として、本発明の範囲内でポリビニルピロリドンを用いて作製された粘着性ハイドロゲルは、さらに優れた繰返し粘着性を有することがわかる。
【0078】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、
前記高分子マトリックスが、(A)成分として(メタ)アクリル酸、その誘導体又はカルボキシル基を2つ有する炭素数4〜5のビニル誘導体と、(B)成分としてイオン性の(メタ)アクリルアミド又はその誘導体と、(C)成分として式(1):
CH2=CR1−CONR23 (1)
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2およびR3は水素原子または低級アルキル基である)
で表わされる非イオン性の(メタ)アクリルアミド誘導体とを含む重合性単量体混合物と架橋性単量体との共重合体であり、
前記(A)成分、(B)成分及びC)成分が、それぞれ前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して5.0〜20.0重量部、3.0〜15.0重量部及び0.3〜3.0重量部含まれることを特徴とする粘着性ハイドロゲル。
【請求項2】
前記粘着性ハイドロゲルが、前記高分子マトリックスに(D)成分としてポリビニルピロリドン又はその誘導体が更に含まれてなる粘着性ハイドロゲルであって、前記(D)成分が、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.1〜6重量部含まれる請求項1に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項3】
前記多価アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリセリン及びポリオキシエチレングリセリンから選択される請求項1又は2に記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項4】
前記(A)成分が、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート及び(ポリ)グリセリン(メタ)アクリレートから選択され、前記(B)成分が、ターシャルブチルアクリルアミドスルホン酸(TBAS)又はその塩、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド(DMAEAA)塩酸塩、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)塩酸塩、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド及びアクリロイルモルホリンから選択される請求項1〜3のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項5】
前記粘着性ハイドロゲルが、前記粘着性ハイドロゲル100重量部に対して0.05〜10重量部の電解質を更に含む請求項1〜4のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲル。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルの製造方法であって、前記(A)成分5.0〜20.0重量部と、前記(B)成分3.0〜15.0重量部と、前記(C)成分0.3〜3.0重量部とを含む重合性単量体混合物と、架橋性単量体と、水と、多価アルコールとを攪拌溶解させてモノマー配合液を得る工程と、
得られたモノマー配合液を加熱又は紫外線照射により、前記重合性単量体混合物と前記架橋性単量体とを共重合させて高分子マトリックスを得る工程と
を含むことを特徴とする、高分子マトリックスに水と多価アルコールとが含まれてなる粘着性ハイドロゲルの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルの製造に使用される粘着性ハイドロゲル製造用組成物であって、前記粘着性ハイドロゲル製造用組成物100重量部に対して、前記(A)成分5.0〜20.0重量部と、前記(B)成分3.0〜15.0重量部と、前記(C)成分0.3〜3.0重量部を含む重合性単量体混合物、架橋性単量体、水及び多価アルコールを含むことを特徴とする粘着性ハイドロゲル製造用組成物。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の粘着性ハイドロゲルを含むことを特徴とするゲルシート。

【公開番号】特開2012−197344(P2012−197344A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61472(P2011−61472)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】