説明

粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルム

【課題】 フィッシュアイが少なくて外観に優れる粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルムを提供する。
【解決手段】 50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層を有する粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、並びにこれを用いた保護フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂は経済性、機械強度、透明性、成形性、衛生性等に優れていることから広範な産業分野で使用されており、例えば単層又は多層フィルムに加工され、光学用の保護フィルムをはじめとして、金属板、樹脂板、自動車、電子材料等の保護フィルムとして広範に用いられている。
【0003】
保護フィルムの品質に対する要求は年々厳しくなっており、特に外観を損ねるフィッシュアイの低減が求められている。ここでフィッシュアイとは、フィルム中に異物やゲルがあるとその周辺部分が肉眼、偏光板、または顕微鏡で見ると魚の目のようにみえることからきた樹脂フィルムの欠点の一つである。
【0004】
ポリオレフィン樹脂フィルムの場合、フィッシュアイの原因の一つであるゲルには未溶融ゲルと架橋ゲルがあることが知られている。
【0005】
架橋ゲルはポリオレフィン樹脂が3次元的に架橋し、加熱溶融、及び溶剤への溶解が難しいゲルである。一方、未溶融ゲルは加熱により溶融又は溶解可能なゲルであり、押出機により溶融混練し、ダイス等から押出した場合には未溶融ゲルとしての状態を保持している比率が高く、製品外観の低下を招く。
【0006】
特にベッセル型反応器又はチューブラー型反応器を用いて高圧ラジカル重合で得られるポリオレフィン樹脂、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、低密度ポリエチレン等では上記の未溶融ゲル、架橋ゲルが多いことが知られている。高温の反応器内では生成したポリマーからラジカル的に水素が引き抜かれ、分岐が生成する。この分岐ポリマーは反応器に接続された高圧分離器、及びペレット化の過程で高温に晒されて、凝集体としての未溶融ゲル、又は架橋反応を起こして架橋ゲルを生成することが、この理由である。
【0007】
そこで、この問題を解決する方法として、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、特定の重合条件でエチレンを重合するに際し、反応系内にラジカル重合禁止剤を共存させることが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0008】
また、樹脂に含まれる架橋ゲル、及び未溶融ゲルを成形時に除去する方法が提案されている。例えば、押出機に高粘度樹脂溶融体輸送用ギヤーポンプ、及び濾過装置として焼結フィルターを設置し、溶融ポリエチレン系樹脂を押出してフィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【0009】
さらには、溶融した膜状のポリオレフィン樹脂をキャストロールと該ロールに沿って円弧状に形成された無端ベルトとの間で挟圧して得られるフィルムが提案されている(例えば、特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−342307号公報
【特許文献2】特開平8−103952号公報
【特許文献3】特開平8−25460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に提案の方法はフィッシュアイを低減する一定の効果はあるもののそのレベルは不充分である。
【0012】
また、特許文献2、3に記載の方法は、ポリオレフィン樹脂が高温にさらされるため架橋ゲルが生成する課題を解決し切れていない。特に特許文献2に記載の方法は、焼結フィルターを用いるため高温にさらされる時間が長くなってしまう。
【0013】
そこで、本発明は、フィッシュアイが少なくて外観に優れる粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層からなる粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムが、フィッシュアイが少なく外観に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層を有する粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、並びにこれを用いた保護フィルムである。
【0015】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層を有する。
【0017】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層に用いるポリオレフィン樹脂フィルムは長さ、幅、厚さに特に制限はなく、平面状成形物であり、テープ類、リボン類も含む。該ポリオレフィン樹脂フィルムの厚みは、フィルムの扱いやすさの観点から1〜200μmが好ましく、5〜150μmがさらに好ましく、10〜100μmが特に好ましい。
【0018】
また、本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層中の50μm以上のフィッシュアイは10個/m以下であり、さらに好ましくは50μm以上のフィッシュアイが5個/m以下であり、特に好ましくは3個/m以下である。50μm以上のフィッシュアイが10個/mを超えると、例えば高品質を求められる保護フィルムとして用いることができない。
【0019】
ここでいうフィッシュアイとは、ポリオレフィン樹脂フィルム中で光学的に不均一な状態を示している領域と定義される。
【0020】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層におけるポリオレフィン樹脂としては、何ら制限はなく、例えば、ポリエチレン、エチレン系共重合体、ポリプロピレン、ポリプロピレン系共重合体、さらにこれらポリオレフィン樹脂の塩素化物等を挙げることができる。さらに詳しくは、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン等が挙げられる。エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−ビニルエステル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、エチレン−メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、具体的には、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−4−メチルペンテン−1樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物、エチレン−ビニルアルコール樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸エチル共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系共重合体としては、例えば、ポリプロピレンブロックコポリマー、ポリプロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。また、これらポリオレフィン樹脂は単独で、又は複数選択して用いることができる。
【0021】
中でもポリオレフィン樹脂フィルム層が柔軟となることから、ポリオレフィン樹脂フィルム層におけるポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン樹脂であることが好ましい。
【0022】
ポリオレフィン樹脂フィルム層がポリエチレンフィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は900〜965kg/mであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂フィルム層がエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は923〜970kg/mであることが好ましい。ポリオレフィン樹脂フィルム層がエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物フィルムの場合には、得られるフィルムが柔軟で取り扱い易い点から、ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は923〜1200kg/mであることが好ましい。
【0023】
これらのポリオレフィン樹脂を合成するための重合方法に特に限定はなく、通常知られている方法を用いることができ、例えば、高圧ラジカル重合法、中低圧重合法、溶液重合法、スラリー重合法等を挙げることができる。
【0024】
また、重合に使用する触媒に特に制限はなく、例えば、過酸化物系触媒、チーグラー−ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。
【0025】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層におけるポリオレフィン樹脂の分子量は、ポリオレフィン樹脂が溶剤に溶解する限り何ら制限は無いが、フィルムの強度を維持し、かつ、ポリマー溶液の流動性が維持して薄いフィルムを得るため、直鎖状ポリエチレン換算の重量平均分子量(M)が、10,000〜1,000,000が好ましく、20,000〜700,000がさらに好ましく、25,000〜300,000が特に好ましい。
【0026】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層は、フィッシュアイが少なくなることから、酸化防止剤を含有することが好ましい。含有することが好ましい酸化防止剤としては、何ら制限はなく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等が挙げられる。
【0027】
これらの酸化防止剤の中でも、架橋ゲルの生成を抑制する効果が大きいことから、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノールが好ましい。
【0028】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層中の酸化防止剤の量は、得られる粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムのフィッシュアイが少なく、耐汚染性に優れることから、0.1〜100ppmであることが好ましく、0.1〜50ppmがさらに好ましく、0.1〜10ppmが特に好ましい。
【0029】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有していても良い。添加剤としては、例えば、染料、有機顔料、無機顔料、無機補強剤、可塑剤、アクリル加工助剤等の加工助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、発泡剤、滑剤、ワックス、結晶核剤、可塑剤、離型剤、加水分解防止剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、防徽剤、防錆剤、イオントラップ剤、難燃剤、難燃助剤、無機充填材、有機充填材等を挙げることができる。
【0030】
本発明を構成するポリオレフィン樹脂フィルム層に用いるポリオレフィン樹脂フィルムを得る方法は、例えば、ポリオレフィン樹脂を加熱して溶融させた後にフィルム化する方法、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解させた後にフィルム化する方法等が挙げられる。
【0031】
ポリオレフィン樹脂を加熱して溶融させた後にフィルム化する方法としては、例えば、インフレーション法(空冷法、水冷法)、Tダイ法、カレンダー法等が挙げられる。
【0032】
ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解させた後にフィルム化する方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に連続的に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程からなる溶液流延法が挙げられる。
【0033】
中でも、得られるポリオレフィン樹脂フィルムのフィッシュアイが少ない、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程からなる溶液流延法が好ましい。
【0034】
好ましい製造法である溶液流延法の各工程について以下に説明する。
【0035】
1)ポリオレフィン溶液を調製する工程
ポリオレフィン溶液を調製する工程で用いられる溶剤は、ポリオレフィン樹脂を溶解する溶剤であれば特に制限は無く、例えば、ハロゲン系溶剤、沸点が70〜140℃、溶解度指数が13〜20MPa1/2である脂肪族炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、エーテル系化合物及びアセタール系化合物から選ばれる少なくとも1種類の非ハロゲン系溶剤等を挙げることができる。これらの溶剤は2種以上を混合して使用することもでき、その割合は特に限定するものではない。
【0036】
ハロゲン系溶剤としては、例えば、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレンなどの塩素系溶剤;臭化エタンなどの臭素系溶剤;モノフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、パーフルオロヘプタン、パーフルオロオクタン、ジクロロペンタフルオロプロパンなどのフッ素系溶剤;ブロモクロロメタン、1,2−ジブロモ−1,1−ジフルオロエタンなどの臭素とフッ素を含有する溶剤等が挙げられる。
【0037】
沸点が70〜140℃、溶解度指数が13〜20MPa1/2である脂肪族炭化水素系化合物、芳香族炭化水素系化合物、エーテル系化合物、アセタール系化合物の非ハロゲン系溶剤としては、例えば、n−ヘプタン、2−メチルヘキサン、3−メチルヘキサン、2,3−ジメチルペンタン、2,4−ジメチルペンタン、n−オクタン、2,2,3−トリメチルペンタン、イソオクタン、2,2,5−トリメチルヘキサン、1−ヘプテン、1−オクテン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロヘキセンなどの脂肪族炭化水素系化合物;ベンゼン、トルエン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素系化合物;シクロペンチルメチルエーテル、エチルアミノエーテル、ジオキサン、ジプロピルエーテルなどのエーテル系化合物;ジエチルアセタ−ルなどのアセタール系化合物等が例示される。
【0038】
これらの溶剤の中で、ポリオレフィン樹脂の溶解性の観点からはポリオレフィン樹脂を例えば、80〜120℃で溶解できる溶剤が好ましく、また、溶剤の蒸散の観点からは沸点の低い溶剤が好ましい。これらの観点から、1,1,2−トリクロロエタン、n−ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、シクロペンチルメチルエーテルが好ましく、1,1,2−トリクロロエタン、メチルシクロヘキサンがさらに好ましい。
【0039】
ポリオレフィン樹脂の溶解温度は用いる溶剤とポリオレフィンに樹脂より適宜決定される。使用する溶剤の沸点以下でポリオレフィン樹脂が溶解しない場合には、必要に応じて耐圧容器を用いて溶剤の沸点以上の温度で溶解することも可能であるが、使用する溶剤の常圧での沸点以下で溶解させるのが経済的側面から好ましい。溶解温度に特に制限は無いが、60〜200℃が好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。
【0040】
溶解時間は使用するポリオレフィン樹脂の形状、及び溶解温度に依存し、例えば20分〜8時間が好ましく、30分〜2時間がさらに好ましい。また、ポリオレフィン樹脂の溶解は完全に行う必要があり、一定の溶液粘度に到達するまで溶解を行うことが好ましい。
【0041】
また、溶解する装置に特に制限はなく、例えば、ベッセル、チューブ、横型反応器、押出機等を用いることができる。また、溶解は撹拌しながら行うのが好ましい。
【0042】
ポリオレフィン樹脂を溶剤へ溶解して得られたポリオレフィン溶液は、異物を除くために濾過することが好ましく、濾過はポリオレフィン樹脂が溶解した状態で行うことが好ましい。濾過方法には特に制限はなく、公知の方法を用いることができ、例えば、自然濾過、遠心濾過、加圧濾過、減圧濾過、デカンテーション等が挙げられる。濾材としては、例えば、金属網、積層金網焼結体、金属不織布焼結体、樹脂織布、樹脂不織布、樹脂メンブラン、濾布、紙等が挙げられる。これらの濾材は単独、又は複数組み合わせて使用することができ、また濾過精度を上げるため、濾過は多段階に分けて行うこともできる。濾材の目開きは100μm以下が好ましく、50μm以下がさらに好ましく、30μm以下が特に好ましい。
【0043】
ポリオレフィン溶液を濾過する際の温度に特に制限は無く、例えば、使用する溶剤の沸点以下で、ポリオレフィン樹脂が溶解した状態等で行うことができる。
【0044】
ポリオレフィン溶液の濃度には特に制限がなく、選択した溶剤により適宜設定することが可能であり、0.1〜50重量%が好ましく、1〜30重量%がさらに好ましく、5〜25重量%が特に好ましい。
【0045】
2)溶剤を蒸散させる工程
溶剤を蒸散させる方法としては、例えば、ポリオレフィン溶液を基材上に流延し薄膜化した後、加熱する方法等が挙げられる。
【0046】
基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル製のフィルムに代表される各種樹脂フィルム、これら樹脂フィルムの表面にシリコン処理、アクリル樹脂等のハードコートによる表面処理を施した各種樹脂フィルム、これら樹脂フィルムに金属蒸着処理を行った各種樹脂フィルムが挙げられる。さらには、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属箔、金属フィルム、金属シート等の各種フィルム、必要に応じてこれら金属素材上にポリマーコーティングを施したもの、無機コーティングを施したものを例示することができる。また、必要に応じて加熱した回転金属ドラム上に流延することも可能であり、エンドレスのポリマーベルト、金属ベルト上に流延することができる。
【0047】
ポリオレフィン溶液を基材上に流延する方法には特に制限は無く、例えば、グラビアコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、ダブルメイヤーバーコーター法、ドクターブレード法等が例示される。ポリオレフィン樹脂を溶解させるために加熱が必要な場合であり、かつ溶剤の沸点が低い場合には、流延過程における溶剤の急速な揮発によるポリオレフィン溶液の粘度上昇を抑制するため、ダイコーターを用いるのが好ましい。流延により形成された直後の基材上のポリオレフィン溶液の厚みは3〜500μmが好ましく、流延速度は基材上に形成された直後のポリオレフィン樹脂層の厚みとは独立に0.5〜50m/分が好ましい。
【0048】
基材上に形成されたポリオレフィン溶液層の乾燥は1段階から多段階に分けて行うことができ、その温度範囲は50〜200℃が好ましく、多段階で乾燥する場合には50〜100℃で1次乾燥し、100〜200℃の範囲で2次乾燥する等の方法をとることが好ましい。また、必要に応じて乾燥を3段階以上に分けて行うことも可能である。この乾燥は工業的にはダイコーターに隣接した乾燥炉を用いて効率的に行うことができる。ポリオレフィン樹脂層は十分な乾燥の後に基材から剥離して巻取る、又は乾燥途中の段階で基材から剥離して、ポリオレフィン樹脂層のみを乾燥し、巻取る等の方法によりフィルム化し、ポリオレフィン樹脂フィルムを得ることができる。
【0049】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、上記ポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層を有する。
【0050】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムの粘着剤層に用いられる粘着剤は、特に制限は無く、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられ、適度な粘着性と剥離性を有することから、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤が好ましい。これらの粘着剤は、単独で用いられても良いし、2種以上が併用されても良い。
【0051】
ゴム系粘着剤としては、特に制限は無く、例えば、室温でゴム状弾性を示すエラストマーと粘着性付与剤からなる粘着剤等を挙げることができる。
【0052】
室温でゴム状弾性を示すエラストマーとしては、例えば、天然ゴム;スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、ポリイソブチレン、ポリブテンなどの合成ゴム;スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン−イソプレンブロック共重合体(SI)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、これらの共役ジエン部分に水素添加して得られるスチレン−エチレン−ブチレンブロック共重合体(SEB)やスチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等のブロック共重合体等が挙げられ、これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0053】
粘着性付与剤としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、クマロンインデン系樹脂及びこれらの水素添加物等が挙げられる。これらの粘着性付与剤は、単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0054】
室温でゴム状弾性を示すエラストマーと粘着性付与剤の組成は、ゴム系粘着剤の耐熱性と粘着性が優れることから室温でゴム状弾性を示すエラストマー100重量部に対して、粘着性付与剤10〜200重量部が好ましく、さらに好ましくは20〜150重量部、特に好ましくは20〜100重量部である。
【0055】
アクリル系粘着剤としては、特に制限は無く、例えば、炭素数が1〜18までのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーと共重合性改質モノマーを1種または2種以上を溶液重合、乳化重合等により単独重合または共重合したアクリル系ポリマー等を挙げることができる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル等のモノマーの具体例としては、例えば、ブチル基、2−エチルヘキシル基、イソオクチル基、イソノニル基などのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステル等が挙げられる。また、共重合性改質モノマーの具体例としては、例えば、エチル基やメチル基などのアルキル基を有する(メタ)アクリル酸のエステル、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、ビニルピロリドン、グリシジル基やジメチルアミノエチル基やヒドロキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルアミン、アリルアミン、多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0057】
上記アクリル系ポリマーは、そのまま粘着剤のベースポリマーとして用いることもできるが、粘着剤の凝集力を向上させる目的で架橋剤を配合することが好ましい。架橋剤としては、例えば、多官能性エポキシ系化合物や多官能イソシアネート化合物等が挙げられる。その他、放射線照射による架橋処理を施してもよい。
【0058】
多官能性エポキシ化合物は、分子中に2個以上のエポキシ基を有していれば特に制限は無く、例えば、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパングリシジルエーテル、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、トリグリシジル−p−アミノフエノール等がある。また、多官能イソシアネート化合物には、分子中に2個以上のイソシアネート基を有しておれば特に制限は無く、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
これらの架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用でき、その使用量は、アクリル系ポリマーの組成や分子量などに応じて適宜選択できる。その際、反応を促進させるために、ジブチルスズジラウレートなどの架橋触媒を加えてもよい。
【0060】
アクリル系粘着剤の市販品としては、例えば、日本合成化学工業株式会社製 商品名:コーポニールNS−001、NS−002、NS−004、東亞合成株式会社製商品名:アロンタックHV−C9500、HV−C7560等が挙げられる。
【0061】
ウレタン系粘着剤としては、例えば、ポリオールと前記多官能イソシアネート化合物の反応物に前記粘着性付与剤を添加した組成物、ウレタン結合を含み末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0062】
ポリオールは、分子中に2個以上の水酸基を有していれば特に制限は無く、例えば、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール等を挙げることができる。
【0063】
また、ウレタン結合を含み末端に(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーは、例えば、アルキレンジオールやポリエーテル化合物等の末端にヒドロキシル基を有するジオール分子とジイソシアナート分子との反応によるウレタンオリゴマーを生成し、その末端の官能基に(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応さたり、末端にヒドロキシル基を有するポリエーテル化合物やポリエステル化合物と(メタ)アクリロイル基とイソシアナート基を有する化合物を反応させたりして得られる。
【0064】
エチレン−酢酸ビニル系粘着剤としては、例えば、酢酸ビニル含有率が40〜90%のエチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。市販品としては、例えば、ランクセス社製 レバメルト等を挙げることができる。
【0065】
ポリビニルエーテル系粘着剤としては、例えば、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等の単独重合体、または共重合体が挙げられる。
【0066】
シリコーン系粘着剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリジメチルジフェニルシロキサン等のシリコーン生ゴム、トリメチルシランでシラノール基末端の3次元シリケートからなるもの等を挙げることができる。市販品としては、例えば、信越化学工業株式会社製、商品名:信越シリコーンKR−100、KR−101−10、KR−130、X−40−3102、X−40−3229等が挙げられる。
【0067】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムの粘着剤層に用いられる粘着剤には、本発明の効果を損なわない範囲で各種添加剤を含有していても良い。添加剤としては、例えば、粘着性付与剤、剥離性調整剤、架橋剤、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤、カップリング剤、酸化防止剤、老化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、溶剤等が挙げられ、これらの1種又は2種類以上を添加しても良い。
【0068】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムの粘着剤層に用いられる粘着剤の形態は、特に制限はなく、例えば、溶剤型粘着剤、エマルジョン型粘着剤、ホットメルト型粘着剤、光重合型粘着剤等のいずれの形態であっても良い。また、本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムの粘着剤層に用いられる粘着剤は、非架橋型粘着剤であっても良いし、架橋型粘着剤であっても良く、1液型粘着剤であっても良いし、2液以上の多液型粘着剤であっても良い。
【0069】
本発明を構成する接着剤層に用いられる粘着剤の調製方法は、特に限定されるものではなく、例えば、ミキサー、ニーダー、ロール、押出機等の通常の攪拌混練機を用いて、粘着剤成分を各所定量と必要に応じて添加される各種添加剤の各所定量とを、常温下もしくは加温下で、均一に攪拌混練する方法を挙げることができる。
【0070】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層に上記粘着剤を塗布して作られる。
【0071】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムの製造方法としては、例えば、ロールコーター等の通常の塗工機を用いて、ポリオレフィン樹脂フィルム層の所定の面に粘着剤を直接塗工し、必要に応じて乾燥、冷却、光照射等の工程を経て、粘着剤層を積層する直接塗工法、離型層の離型処理面に上記と同様の方法で粘着剤層を形成した後、この粘着剤層をポリオレフィン樹脂フィルム層の所定の面に積層して、粘着剤層をポリオレフィン樹脂フィルム層の所定の面に転写する転写法、ポリオレフィン樹脂フィルム層用のポリオレフィン樹脂と粘着剤層用の粘着剤とを共押出する方法等が挙げられる。これらのうち得られる粘着剤層のフィッシュアイが少ないことから、直接塗工法が好ましい。
【0072】
ポリオレフィン樹脂フィルム層の所定の面には、粘着剤層の密着性をより高めるために、予めコロナ放電処理、プラズマ放電処理、プライマー塗工等の表面処理を施すことが好ましい。
【0073】
粘着剤層の厚みは、特に制限は無く、粘着性と剥離性の観点から、3〜50μmであることが好ましく、より好ましくは5〜30μmである。
【0074】
また、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、ロール巻きにされた状態で保存することができることから、少なくとも一方の最表面層の上に離型層を有するものであることが好ましく、さらに粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層/離型層、又は、離型層/粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層の構成を有する粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムであることが好ましく、特に、粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層/剥離処理した面を外側にした離型層、又は、剥離処理した面を内側にした離型層/粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層の構成を有する粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムが好ましい。
【0075】
離型層としては、特に制限は無く、例えば、剥離処理した樹脂フィルム、紙等を挙げることができる。樹脂フィルムとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、4−フッ化エチレン−パークロロアルコキシ共重合体、4−フッ化エチレン−6−フッ化プロピレン共重合体、2−エチレン−4−フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム;ポリカーボネートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物フィルムなどの樹脂フィルム等を挙げることができる。
【0076】
剥離処理には特に制限は無く、例えば、シリコーン系剥離処理、フッ素系剥離処理、長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル系剥離処理、長鎖アルキル基を有するビニルエーテル系剥離処理を用いることができ、剥離性に優れるシリコーン系剥離処理が好ましい。
【0077】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、保護フィルムとして使用でき、保護する対象に特に制限は無く、保護する対象としては、例えば、塗装鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等の金属;ポリカーボネート板、アクリル板、スチレン板等の樹脂板;偏光版、光学フィルム、プリズムシート、導光板、位相差フィルム、拡散板等の光学部材;自動車部品、半導体部材、銘板等が挙げられる。
【発明の効果】
【0078】
本発明により産業上極めて応用範囲の広い、フィッシュアイが少なくて外観に優れる粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルムを提供することができる。本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、例えば高い品質が求められる保護フィルムとして有用である。
【実施例】
【0079】
以下に実施例にもとづき本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明の理解を助けるための例であって本発明はこれらの実施例により何等の制限を受けるものではない。
【0080】
<ポリオレフィン樹脂>
(1)ポリエチレン
LDPE:低密度ポリエチレン、ペトロセン(登録商標)175K(MFR=0.6g/10分、密度=922kg/m)、東ソー株式会社製
(2)エチレン−酢酸ビニル共重合体
EVA:エチレン−酢酸ビニル共重合体、ウルトラセン(登録商標)520F(酢酸ビニル含有量8重量%、MFR=2.0g/10分、密度=928kg/m)、東ソー株式会社製
(3)エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物
EVA−OH:エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、メルセンH(登録商標)H−6410M(MFR=19g/10分、密度=950kg/m)、東ソー株式会社製
<基材>
(1)PETフィルム
PET−1;ピューレックス(登録商標)A31、片面シリコーン系剥離処理、厚み:75μm,帝人デュポンフィルム株式会社製
PET−2;メリネックス(登録商標)タイプS(厚み:100μm),帝人デュポンフィルム株式会社製
<流延>
加熱可能な幅300mmのダイを設置した塗工機を用いて行った。オートクレーブで溶解したポリマー溶液はユニコントロールズ(株)製の加熱ジャケット、窒素導入バルブを備えた5Lスケールの加圧可能なタンクに移液した。タンク内のポリマー溶液は、タンクを加圧することによりダイスへ移液した。タンクとダイスは、タンク下部の抜出しバルブに(株)マイセック製のホースヒーターを施工したテフロン(登録商標)チューブで連結し、一定温度に保持した状態とした。
【0081】
ダイスの温調は日本金型産業(株)製の金型温調機TSW−75Sを用いて行い、ホースヒーター、及び、加熱タンクは(株)マイセック製のHST−120CTを用いて温度調節した。
【0082】
<フィッシュアイの測定>
得られたフィルムの下から蛍光灯を照射し、目視やルーペを用いフィルム中のフィッシュアイの個数と大きさを測定し、個数は1m当たりの個数として算出した。
【0083】
<密度の測定>
ポリオレフィン樹脂フィルムの密度は、JIS K7112(1999年)に準拠して、密度こうばい管法により測定した。
【0084】
実施例1
LDPEのペレット3.6kg、及び1,1,2−トリクロロエタン28.8kgを30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間攪拌してLDPEを溶解してポリオレフィン溶液を得た。この溶液を500メッシュの金属網でろ過しながら、105℃に加温した5Lのタンクに溶液3Lを移液した。タンクを窒素で加圧して、105℃に保温した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)チューブを通して105℃に加温した300mm幅のコーティングダイへ送液し、ダイからポリオレフィン溶液を基材であるPET−1のシリコーン系剥離処理をしていない面上に流延し、150℃で乾燥した。PET−1の速度は2m/分に設定した。得られたPET−1とLDPEフィルムの積層体からLDPEフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0085】
【表1】

得られたポリオレフィン樹脂フィルムの50μm以上のフィッシュアイは0.8個/mで外観の優れた品質のフィルムであった。
【0086】
一方、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(Kraton株式会社製、KratonD−1107)100重量部、粘着性付与剤として水素化石油樹脂(芳香族系石油樹脂の水素添加物)アルコンP−90(荒川工業株式会社製)100重量部を180℃で混合して予めゴム系粘着剤を準備した。
【0087】
次に、上記で得られたPET−1とLDPEフィルムの積層体のLDPEフィルムの上にゴム系粘着剤をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布して巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0088】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは外観に優れたものであった。
【0089】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをポリカーボネート板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が無く、フィルムの浮きも見られない高品質の保護フィルムであった。
【0090】
実施例2
EVAのペレット2.5kg、及びメチルシクロヘキサン15.4kgを30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間攪拌してEVAを溶解してポリオレフィン溶液を得た。この溶液を500メッシュの金属網でろ過しながら、105℃に加温した5Lのタンクに溶液3Lを移液した。タンクを窒素で加圧して、105℃に保温した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)チューブを通して105℃に加温した300mm幅のコーティングダイへ送液し、ダイからポリオレフィン溶液を基材であるPET−2上に流延し、150℃で乾燥した。PETフィルムの速度は2m/分に設定した。得られたPET−2とEVAフィルムの積層体からEVA−2を剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0091】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムの50μm以上のフィッシュアイは0.9個/mで外観の優れた品質のフィルムであった。
【0092】
次に、上記で得られたPET−2とEVAフィルムの積層体のEVAフィルムの上にアクリル系粘着剤アロンタックHV−C9500(東亞合成株式会社製)をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布、乾燥した後、アクリル系粘着剤の上にPET−1のシリコーン系剥離処理面を合わせて積層し、PET−2を剥離しながら巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0093】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは外観に優れたものであった。
【0094】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをSUS314板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が無く、フィルムの浮きも見られない高品質の保護フィルムであった。
【0095】
実施例3
EVA−OHのペレット3.6kg、及び1,1,2−トリクロロエタン28.8kgを30Lのオートクレーブに仕込み、加熱下110℃で2時間攪拌してEVA−OHを溶解してポリオレフィン溶液を得た。この溶液を500メッシュの金属網でろ過しながら、105℃に加温した5Lのタンクに溶液3Lを移液した。タンクを窒素で加圧して、105℃に保温した加温ジャケット付のテフロン(登録商標)チューブを通して105℃に加温した300mm幅のコーティングダイへ送液し、ダイからポリオレフィン溶液を基材であるPET−1のシリコーン系剥離処理をしていない面上に流延し、150℃で乾燥した。PET−1の速度は2m/分に設定した。得られたPET−1とEVA−OHフィルムの積層体からEVA−OHフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定した。その結果を表1に示す。
【0096】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムの50μm以上のフィッシュアイは1.0個/mで外観の優れた品質のフィルムであった。
【0097】
次に、上記で得られたPET−1とEVA−OHフィルムの積層体のEVA−OHフィルムの上にアクリル系粘着剤HV−C9500(東亞合成株式会社製)をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布、乾燥して巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0098】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは外観に優れたものであった。
【0099】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをSUS314板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が無く、フィルムの浮きも見られない高品質の保護フィルムであった。
【0100】
実施例4
実施例2で得られたPET−2とEVAフィルムの積層体のEVAフィルムの上にアクリル系粘着剤アロンタックHV−C9500(東亞合成株式会社製)をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布、乾燥した後、PET−2を剥離し粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0101】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは外観に優れたものであった。
【0102】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをSUS314板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が無く、フィルムの浮きも見られない高品質の保護フィルムであった。
【0103】
比較例1
LDPEのペレットを25mmφのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、基材であるPET−1のシリコーン系剥離処理していない面上に250℃の温度でTダイより押出し、LDPEをラミネートした。得られたPETフィルムとLDPEフィルムの積層体からLDPEフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定したところ、厚み30μm、50μm以上のフィッシュアイ20個/m、密度922kg/mであった。
【0104】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、フィッシュアイが多く、外観に劣るフィルムであった。
【0105】
次に、実施例1と同様に、得られたPET−1とLDPEフィルムの積層体のLDPEフィルムの上にゴム系粘着剤をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布して巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0106】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、外観に劣るものであった。
【0107】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをポリカーボネート板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が多く、フィルムの浮きが見られ品質の劣る保護フィルムであった。
【0108】
比較例2
EVAのペレットを25mmφのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、基材であるPET−1のシリコーン系剥離処理していない面上に190℃の温度でTダイより押出し、EVAをラミネートした。得られたPETフィルムとEVAフィルムの積層体からEVAフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定したところ、厚み40μm、50μm以上のフィッシュアイ30個/m、密度928kg/mであった。
【0109】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、フィッシュアイが多く、外観に劣るフィルムであった。
【0110】
次に、実施例1と同様に、得られたPET−1とEVAフィルムの積層体のEVAフィルムの上にゴム系粘着剤をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布して巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0111】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、外観に劣るものであった。
【0112】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをSUS314板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が多く、フィルムの浮きが見られ品質の劣る保護フィルムであった。
【0113】
比較例3
EVA−OHのペレットを25mmφのスクリューを有する押出ラミネーターの押出機へ供給し、基材であるPET−1のシリコーン系剥離処理していない面上に210℃の温度でTダイより押出し、EVA−OHをラミネートした。得られたPETフィルムとEVA−OHフィルムの積層体からEVA−OHフィルムを剥離してポリオレフィン樹脂フィルムを得た。得られたポリオレフィン樹脂フィルムの厚み、フィッシュアイ、及び密度を測定したところ、厚み40μm、50μm以上のフィッシュアイ25個/m、密度950kg/mであった。
【0114】
得られたポリオレフィン樹脂フィルムは、フィッシュアイが多く、外観に劣るフィルムであった。
【0115】
次に、実施例3と同様に、得られたPET−1とEVA−OHフィルムの積層体のEVA−OHフィルムの上にアクリル系粘着剤をパイロットコーター(井上金属工業株式会社製)用いて厚み10μmとなるように塗布、乾燥して巻き取り、粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを得た。
【0116】
得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムは、外観に劣るものであった。
【0117】
さらに、得られた粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムをSUS314板の保護フィルムとして貼ったところ、フィッシュアイ等の欠陥が多く、フィルムの浮きが見られ品質の劣る保護フィルムであった。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム、及びこれを用いた保護フィルムは、フィッシュアイが少なくて外観に優れるため、例えば高い品質が求められる保護フィルムとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50μm以上のフィッシュアイが10個/m以下であるポリオレフィン樹脂フィルム層、及び粘着剤層を有することを特徴とする粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂フィルム層が、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、及びエチレン−酢酸ビニル共重合体の鹸化物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオレフィン樹脂フィルム層であることを特徴とする請求項1に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂フィルム層が、ポリオレフィン樹脂を溶剤に溶解してポリオレフィン溶液を調製する工程、及び引き続き、ポリオレフィン溶液を基材上に流延した後、加熱して溶剤を蒸散させる工程から製造されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項4】
溶剤が1,1,2−トリクロロエタン及び/又はメチルシクロヘキサンであることを特徴とする請求項3に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項5】
粘着剤層が、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エチレン−酢酸ビニル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種の粘着剤であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの項に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項6】
少なくとも一方の最表面層にさらに離型層を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかの項に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項7】
粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層/離型層、又は、離型層/粘着剤層/ポリオレフィン樹脂フィルム層であることを特徴とする請求項6に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルム。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれかの項に記載の粘着性ポリオレフィン樹脂積層フィルムを用いたことを特徴とする保護フィルム。

【公開番号】特開2010−260975(P2010−260975A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113562(P2009−113562)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】