説明

粘着性組成物および該組成物から得られる粘着性シート

【課題】粘着力や凝集力と低透湿性とがバランスよく優れ、また高湿熱下や紫外線照射下においても物性が低下し難い粘着性組成物を提供すること。
【解決手段】本発明に係る粘着性組成物は、重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、ポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、前記ポリブテン樹脂(B)を前記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着性組成物および該組成物から得られる粘着性シートに関する。さらに詳しく述べると、例えば有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescense;以下、「EL」と記す)を利用した有機EL素子等のディスプレイデバイスなど、電子デバイスの封止に好適に用いられる粘着性組成物および該組成物から得られる粘着性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、陽極と陰極との間に有機電荷輸送層や有機発光層を積層させた有機層を設けたものであり、低電圧直流駆動による高輝度発光が可能な発光素子として注目されている。また、有機EL素子は、プラスチックフィルムを基板に用いることで、フレキシブルディスプレイとしても期待されている。
【0003】
ところで有機EL素子は、一定時間駆動した場合、発光輝度、発光効率、発光均一性の発光特性が初期に比べて劣化するという問題がある。この発光素子の劣化の原因としては、有機EL素子内に侵入した酸素や水分による電極の酸化や有機物の変性、駆動時の熱による有機材料の酸化分解等を挙げることができる。さらに、酸素や水分の影響で構造体の界面が剥離したり、駆動時の発熱や駆動時に高温下に曝されると、各構成要素の熱膨張率の違いにより構造体の界面で応力が発生し、界面が剥離したりする。上記構造体の機械的劣化も発光特性の劣化の原因として考えられる。
【0004】
このような問題を防止するため、有機EL素子を封止し、水分や酸素との接触を抑制するため、例えば、ガラス基板上に形成された有機EL層を耐湿性を有する光硬化性樹脂で覆い、かつ光硬化性樹脂層の上部に透水性の小さい基板を固着させる技術が開示されている(特許文献1参照)。また、対向する透明基板をフリットガラスからなるシール材で封止する技術が開示されている(特許文献2参照)。また、基板とシールド材によって気密空間を形成する際に、両者をカチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤で接着する技術が開示されている(特許文献3参照)。さらに、防湿性高分子フィルムと接着層により形成された封止フィルムを有機EL素子の外表面上に被覆する技術が開示されている(特許文献4参照)。
【0005】
しかしながら、上述のような従来の技術では、封止材として使用するには、耐湿性、防湿性などが依然として十分ではなく、さらには、例えば、封止工程における加熱により、有機発光層及び電荷輸送層が熱劣化したり、光硬化性の樹脂接着剤を使用した際には、硬化のために多量の紫外線照射を必要とするため、有機発光層及び電荷輸送層が劣化したりする場合があった。また、封止材が硬化物であると、製品使用時に生じうる衝撃や振動により、亀裂等が発生し易く、素子特性の劣化を招く場合があった。
【0006】
上述の問題を解決するため、封止工程において高温加熱や紫外線照射等を必要としない樹脂を用いた接着性フィルムを用いることにより、封止工程における加熱や紫外線照射等による素子特性の劣化を防ぐ封止技術が開示されている(特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−182759号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平10−74583号公報(請求項1及び2)
【特許文献3】特開平10−233283号公報(請求項1)
【特許文献4】特開平5−101884号公報(請求項1)
【特許文献5】特開2007−197517号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献5のポリイソブチレン系の樹脂は高温・紫外線等に弱く、長時間の駆動や駆動環境によって前記EL素子やデバイスが高温下または紫外線照射下に曝されることによっては樹脂自体が劣化し、接着性フィルムの性能低下とそれに伴う素子の劣化を引き起こす懸念があり課題が残る。
【0009】
そこで、本発明の目的は、外部からの水分の浸入を防止することができ、高湿熱下や紫外線照射下において起こる分子量低下や樹脂の変色等の劣化を抑制した粘着性組成物を提供することにある。
【0010】
さらに、本発明の目的は、上述のような組成物から得られる粘着性シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る粘着性組成物は、重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、上記ポリブテン樹脂(B)を上記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部含むことを特徴とする。
【0012】
上記ヒンダードアミン系光安定剤(C)が3級のヒンダードアミン基を有し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)においてヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基で置換されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明に係る粘着性シートは、上記粘着性組成物からなる粘着層を有することを特徴とする。
また、本発明の粘着性シートは、波長550nmにおける可視光線透過率が90%以上であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の粘着性シートは、40℃、95%RHにおける水蒸気透過率が5g/m2/day以下であることを特徴とする。
また、本発明の粘着性シートは、有機EL素子の封止用途として用いられることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る粘着性組成物は、重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を配合して得られ、
前記ポリブテン樹脂(B)を前記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部配合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以下の詳細な説明から理解されるように、本発明の粘着性組成物は、水蒸気透過率が低く、かつ高い粘着力を有するので、有機EL素子やその他の電子デバイスにおいて封止材として有利に使用することができる。特に、この粘着性組成物では、特定分子量のポリイソブチレン系樹脂とポリブテン樹脂とを使用したことにより、目的の粘着物性を発現させるとともに、水蒸気透過率を低下させることができる。さらに、特定の光安定剤と酸化防止剤とを用いることで、粘着剤の物性を低下させることなく、高湿熱および紫外線に対して優れた耐久性が付与される。さらに、可視域で透明であるので、光を遮ることなく発光面や発光面の背面を問わず利用することができる。
【0017】
さらに、本発明の粘着性組成物は、シート化することで取り扱い性を改善することができる。
さらにまた、本発明の粘着性シートはSUS、ポリエチレンテレフタレート、アルミ蒸着フィルム、ITO蒸着フィルム、ガラス等の各種被着体に対して高い粘着力を発現するため、用途に応じて任意の貼付面に使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、本発明の粘着性シートを用いた有機EL素子の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る粘着性組成物および粘着性シートについて詳細に説明する。
本発明の粘着性組成物は、重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含む。
【0020】
ポリイソブチレン系樹脂(A)は、主鎖又は側鎖にポリイソブチレン骨格を有する樹脂であり、下記構成単位(a)を有する樹脂であり、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン、イソブチレンとn−ブテンあるいはイソブチレンとブタジエンの共重合体、これら共重合体を臭素化または塩素化したハロゲン化ブチルゴム等が挙げられる。なお、ポリイソブチレン系樹脂(A)がイソブチレンとn−ブテンとから得られる共重合体である場合は、原料モノマー中、イソブチレンは主成分として最大量のモノマーである。
【0021】
【化1】

かかるポリイソブチレン系樹脂(A)は、イソブチレンをルイス酸触媒、例えば塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などの存在下で重合させて調製することができる。ポリイソブチレン系樹脂(A)は合成してもよいが市販品を使用することもできる。市販品としては、Vistanex (Exxon Chemical Co.製) 、Hycar (Goodrich社製) 、Oppanol(オパノール) (BASF社製)等が挙げられる。ポリイソブチレン系樹脂(A)は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0022】
ポリイソブチレン系樹脂(A)は、重量平均分子量30万〜50万であり、好ましくは32万〜48万、より好ましくは33〜45万である。分子量が高いほど、水蒸気透過率を低下させ保持力を向上させることが出来る。30万より小さいと、粘着性組成物の凝集力が十分に得られず、50万より大きくなると、粘着剤組成物の凝集力が高くなりすぎて、被着体との濡れが十分に得られ難い。また、粘着剤組成物を調製する際に、分子量が高すぎると溶媒に対する溶解性が低下する場合がある。したがって、適切な分子量を選択することにより水蒸気透過率が低く、高い凝集力等を維持できる。上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値である。
【0023】
ポリブテン樹脂(B)は、長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合物質であり、ポリブテン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、プロピレン・1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマーなどのエチレンプロピレンゴムなどが挙げられる。これらのなかでもポリブテン共重合体が好ましい。ポリブテン共重合体はイソブテン、1−ブテン、2−ブテンを共重合させたものでるが、これらのなかでもイソブテン・1−ブテン共重合体が好ましい。ポリブテン樹脂(B)は合成してもよいが市販品を使用することもできる。市販品としては、例えば、出光ポリブテン(出光興産社製)、ニッサンポリブテン(日本油脂社製)、日石ポリブテン(新日本石油社製)、Oppanol(オパノール) (BASF社製)などが挙げられる。ポリブテン樹脂(B)は単独で用いても二種以上を併用してもよい。このポリブテン樹脂(B)は、前記ポリイソブチレン系樹脂(A)と良好に相溶し、このポリイソブチレン系樹脂(A)を適度に可塑化して、被着体に対する濡れ性を高め、粘着物性、柔軟性、保持力等を向上させるためのものである。
【0024】
ポリブテン樹脂(B)は、重量平均分子量1,000〜25万であり、好ましくは1,200〜22万であり、好ましくは1,500〜20万である。重量平均分子量が1,000より小さいと、低分子成分として分離し、被着体を汚染したり、高温下で発生するアウトガスが増加する等、物性に悪影響を及ぼす恐れがある。逆に、25万より大きくなると、十分な可塑化効果が得られず、被着体との濡れが十分に得られ難い。上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定されるポリスチレン換算の値である。
【0025】
本発明の粘着性組成物は、ポリブテン樹脂(B)をポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部、好ましくは5〜50質量部、更に好ましくは10〜40質量部含む。
【0026】
本発明の粘着性組成物は、特定の重量平均分子量を有するポリイソブチレン系樹脂(A)とポリブテン樹脂(B)とを特定の量で含んでいるため、粘着力や凝集力と水蒸気透過率とがバランスよく優れている。また、透明性にも優れる。
【0027】
光安定剤であるヒンダードアミン系光安定剤(C)は、1分子中に下記式(c)で表わされる基(ヒンダードアミン基)を少なくとも1つ有する。ヒンダードアミン系光安定剤(C)は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0028】
【化2】

式(c)中、R1は水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基などが挙げられる。1分子中に式(c)で表わされる基が複数あるときは、複数の基においてR1は同一であっても異なっていてもよい。
【0029】
ヒンダードアミン系光安定剤(C)としては、より具体的には、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ、ポリ[{6-モルフォリノ-s-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、シクロヘキサンと過酸化N-ブチル2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジンアミン-2,4,6-トリクロロ1,3,5-トリアジンとの反応生成物と2-アミノエタノールとの反応生成物、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1-(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル、1,1-ジメチルエチルヒドロペルオキシドとオクタンの反応生成物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)、N,N’、N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート等が挙げられる。
【0030】
これらのなかでも、ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、光安定剤性能を向上させ、粘着剤組成物の耐久性を向上させるという点から、式(c)中R1がアルキル基である3級のヒンダードアミン基であることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、3級のヒンダードアミン基を有すると、光安定剤性能が特に優れる。このようなヒンダードアミン系光安定剤(C)としては、例えば、N,N’,N’’,N’’’-テトラキス-(4,6-ビス-(ブチル-(N-メチル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)-4,7-ジアザデカン-1,10-ジアミン、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケート(混合物)、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケートが挙げられる。
【0031】
酸化防止剤であるヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)は、1分子中に下記式(d)で表わされる基(ヒンダードフェノール基)を少なくとも1つ有する。ヒンダードフェノール系光安定剤(D)は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0032】
【化3】

式(d)中、R2、R3は水素原子、直鎖状アルキル基または分枝状アルキル基を表す。直鎖状アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等などが挙げられ、分枝状アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基などが挙げられる。1分子中に式(d)で表わされる基が複数あるときは、複数の基においてR2は同一であっても異なっていてもよく、複数の基においてR3も同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)としては、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロキシンナマミド、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、4,4'-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、2,2'-メチレンビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロキシンナマミド、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。
【0034】
これらのなかでも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)は、光安定剤性能を向上させ、粘着剤組成物の耐久性を向上させるという点から、式(d)中R2及びR3が分枝状アルキル基であることが好ましく、より好ましくはヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基であることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)において、ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基であれば、光安定剤性能が特に優れる。例えば、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N'-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロキシンナマミド、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)1,3,5-トリアジン、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)トリオン、イソオクチル(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。尚、当該ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、市販品としては、ヨシノックスBHT(吉富ファインケミカル社製)、IRGANOX 245(チバ・ジャパン製)、IRGANOX565(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)、IRGANOX1010(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。
【0035】
本発明の粘着性組成物は、ポリイソブチレン系樹脂(A)およびポリブテン樹脂(B)とともに、ヒンダードアミン系光安定剤(C)及びヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含むことにより、粘着力や凝集力と水蒸気透過率との優れたバランスや優れた透明性を保ちつつ、さらに高湿熱や紫外線に対する優れた耐久性を発揮する。
【0036】
ヒンダードアミン系光安定剤(C)は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して0.25〜1.0重量部の範囲で含まれていることが好ましい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して0.25〜1.0重量部の範囲で含まれていることが好ましい。これらの化合物が上記量よりも少なすぎると、耐久性の効果が得られない場合がある。また、上記量よりも多すぎると、他の成分と分離する場合がある。
【0037】
また、本発明の粘着性組成物は、さらに環状オレフィン系重合体(E)を含んでいてもよい。環状オレフィン系重合体(E)は、塗工時の粘度の調整、可塑性効果による柔軟性の向上、濡れ性向上による初期粘着力の向上、凝集力の増大などの目的に有用である。また、水蒸気透過率が低い点も好ましい。
【0038】
環状オレフィン系重合体(E)は、重合体の全繰返し単位中に環状オレフィン系単量体の繰返し単位を含有するものである。環状オレフィン系単量体の結合様式は主鎖中に環状構造を導入しうるものであればとくに限定されず、該単量体の炭素−炭素不飽和結合を重合したもの、環状共役ジエンを付加重合したもの等が挙げられる。例えば、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体を付加重合させたもの、環状オレフィン以外の共重合可能な単量体と共重合させたもの、また、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体を開環重合させた開環重合体等が挙げられる。また、単環の環状オレフィン系単量体を付加重合させたもの、シクロペンタジエンやシクロヘキサジエンなどの環状共役ジエン系単量体を1,4−付加重合させたもの、単環の環状オレフィン系単量体および環状共役ジエン系単量体と、環状オレフィン以外の共重合可能な単量体とを共重合させたものでも良い。また、これらの重合体はさらに水素添加させたものでも良い。具体的には、粘着付与剤として知られる石油樹脂を水素添加した、いわゆる水添石油樹脂などを挙げることができる。水添石油樹脂としては、水添化率を異にする部分水添樹脂から完全水添樹脂まで挙げることができ、前記ポリイソブチレン系樹脂(A)および前記ポリブテン樹脂(B)との相溶性、水蒸気透過率、高湿熱や紫外線に対する耐久性の点から完全水添された樹脂が好ましい。
【0039】
具体的には、水添テルペン系樹脂、水添ロジン及び水添ロジンエステル系樹脂、不均化ロジン、不均化ロジンエステル系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するペンテン、イソプレン、ピペリン、1.3−ペンタジエンなどのC5留分を共重合して得られるC5系石油樹脂の水添加樹脂である水添ジシクロペンタジエン系樹脂、部分水添芳香族変性ジシクロペンタジエン系樹脂、石油ナフサの熱分解で生成するインデン、ビニルトルエン、α−又はβ−メチルスチレンなどのC9留分を共重合して得られるC9系石油樹脂を水添した樹脂、上記したC5留分とC9留分の共重合石油樹脂を水添した樹脂が挙げられる。これらの重合体のうち、低透湿性及び透明性の点から、水添ジシクロペンタジエン系樹脂が好適である。これにより、前記ポリイソブチレン系樹脂(A)および前記ポリブテン樹脂(B)が高湿熱や紫外線により変色(黄変)するのを防ぐことができる。
【0040】
環状オレフィン系重合体(E)は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
環状オレフィン系重合体(E)の重量平均分子量は、好ましくは200〜5,000であり、より好ましくは500〜3,000である。重量平均分子量が5,000を超えると、粘着性の付与力に乏しく、被着体との濡れが十分に得られなかったり、ポリイソブチレン系樹脂(A)との相溶性が低下したりする恐れがある。
【0041】
環状オレフィン系重合体(E)は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して好ましくは10〜300質量部、より好ましくは10〜100質量部含まれていることが好ましい。10質量部より少ないと、粘着性の付与力に乏しく、被着体との濡れが十分に得られず、300質量部より多くなると、粘接着剤組成物の凝集力が十分に得られず、被着体に貼り付ける場合などでは剥がれやすくなってしまうことがある。
【0042】
また、本発明の粘着性組成物は、粘着物性等を阻害しない範囲において、さらにその他の添加剤として、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、樹脂安定剤、充てん剤、顔料、増量剤等を含んでいてもよい。これらの添加材は単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0043】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)以外の酸化防止剤としては、リン酸エステル系化合物などを挙げることができる。これら化合物は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜2質量部の量で用いることが好ましい。
【0044】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、オキサゾリアックアシッドアミド化合物、ベンゾフェノン系化合物等を挙げることが出来る。これら化合物は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜3質量部の量で用いることが好ましい。
【0045】
樹脂安定剤としては、例えば、イミダゾール系樹脂安定剤、ジチオカルバミン酸塩系樹脂安定剤、リン系樹脂安定剤、硫黄エステル系樹脂安定剤などを挙げることができる。これら化合物は、ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して通常0.01〜3質量部の量で用いることが好ましい。
【0046】
また、本発明の粘着性組成物は、ポリイソブチレン系樹脂(A)、ポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)とともに、さらにトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶剤を配合して得られる組成物であってもよい。この場合、固形分濃度が好ましくは10〜60質量%、より好ましくは10〜30質量%となるように有機溶剤を配合することが望ましい。
【0047】
上述した本発明の粘着性組成物は、具体的には、ポリイソブチレン系樹脂(A)、ポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)および、その他の成分を、上記の量で配合して得られる。このような粘着性組成物は、粘着性シートとしたときに、可視光線透過率、水蒸気透過率、黄色度、アウトガス発生量、粘着物性、ならびに高湿熱および紫外線照射に対する耐久性が後述するような範囲にある。
【0048】
本発明の粘着性シートは、重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、上記ポリブテン樹脂(B)を上記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部含むことを特徴とする粘着性組成物からなる粘着層を有する。その形態については特に制限はなく、例えば基材の片面に上述した粘着性組成物からなる粘着層を有していてもよく、基材の両面に粘着層を有していてもよい。あるいは基材を用いずに、2枚の剥離シートにより粘着層が挟持されたものや、両面が剥離処理された剥離シートの片面に粘着層を設け、ロール状に巻いたものなどであってもよい。
【0049】
上記粘着層の厚さとしては、特に制限はなく、粘着性シートの用途などに応じて適宜選定されるが、通常0.5〜100μmの範囲、好ましくは1〜60μmの範囲、より好ましくは3〜40μmで選定される。0.5μmよりも薄いと被着体に対し良好な粘着力が得られず、100μmよりも厚いと生産性が悪く、粘着性シートの取扱いがしにくくなる。
【0050】
本発明の粘着性シートを製造する方法は、特に制限はなく公知の方法により製造できる。例えば、粘着性組成物を有機溶剤に溶解した溶液として公知の塗工方法により製造することができる。例えばスピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の方法により基材や剥離シートの剥離層面に粘着性組成物を有機溶剤に溶解した溶液を塗工したのち、溶剤や低沸点成分の残留を防ぐために、80〜150℃の温度で30秒〜5分間加熱して製造することができる。使用する有機溶剤には特に制限はなく、例えば、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどを挙げることができる。粘着剤組成物を溶液として塗布する場合は、溶液の濃度が10〜60質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。溶液の濃度が10質量%未満であると、溶剤の使用量が多すぎて経済的に不利となるおそれがある。溶液の濃度が60質量%を超えると、溶液の粘度が高くなりすぎて塗工作業性が低下するおそれがある。
【0051】
上記基材としては特に制限はなく、様々なものを用いることができる。具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリイミド、ポリアミドなどの樹脂からなるシート;これらのシートにアルミニウム等の金属蒸着を施したもの;上質紙、含浸紙等からなる紙類;アルミニウム箔、銅箔や鉄箔等の金属箔;不織布;合成紙などが用いられる。これらの基材の厚さは特に制限はなく、通常2〜200μm程度の範囲であるが、取り扱いやすさの面から、好ましくは10〜150μm程度の範囲である。
【0052】
本発明の粘着性シートにおいては、粘着層上に、所望により剥離シートを設けることができる。
この剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、上質紙などの紙基材、これらの紙基材にポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙、又上記基材にセルロース、デンプン、ポリビニルアルコール、アクリル−スチレン樹脂などで目止め処理を行った紙基材、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンフィルムのようなプラスチックフィルム、およびこれらのプラスチックフィルムに易接着処理を施したフィルムなどに剥離剤を塗布したものなどが挙げられる。
【0053】
剥離剤層を形成させるために用いる剥離剤としては、例えばオレフィン系樹脂、イソプレン系樹脂、ブタジエン系樹脂などのゴム系エラストマー、長鎖アルキル系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂などが用いられる。
【0054】
基材上に形成される剥離剤層の厚さは、特に限定されないが、剥離剤を溶液状態で塗工する場合は好ましくは0.05〜2.0μmであり、より好ましくは0.1〜1.5μmである。剥離剤層として、ポリエチレンやポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂を用いて形成させる場合は、剥離剤層の厚さは、3〜50μmであるのが好ましく、5〜40μmであるのがより好ましい。
【0055】
本発明の粘着性シートは、波長550nmにおける可視光線透過率が90%以上であることを特徴とする。可視光線透過率が90%以上であれば、有機EL素子において封止用途として好適に用いることができる。さらに、120℃dry環境下8週間後において、波長1000〜300nmにおける光透過率を測定した後の黄色度が1.0以下であれば、透過率が優れていることに加え、粘着性シートの変色が少なく、有機EL素子において封止用途としてはさらに好適である。
【0056】
本発明の粘着性シートは、40℃、95%RH(RH:相対湿度)における水蒸気透過率が5g/m2/day以下であることを特徴とする。水蒸気透過率が5g/m2/dayであれば、有機EL素子において封止用途として好適に用いることができる。なお、可視光線透過率、黄色度、水蒸気透過率については公知方法で測定することができるが、本発明においては、実施例の方法で測定される。
【0057】
また、本発明の粘着性シートはアウトガス発生量が少ないことを特徴とする。本発明において、アウトガス発生量はn−デカン換算値で比較される。粘着層からのアウトガス発生量がn−デカン換算量で1.0μg/cm2未満であれば、例えば精密機器への貼付用途に適応した場合、精密電子部材の誤動作をもたらす可能性が著しく低減する。
【0058】
本発明の粘着性シートは、120℃の温度で30分間加熱した際のアウトガス発生量が、n−デカン換算量で通常1.0μg/cm2未満、好ましくは0.5μg/cm2以下である。この範囲であれば、粘着層が被着体を腐食させることがない。なお、本発明の粘着性シートが剥離シートを有する場合には、アウトガス発生量は、上記剥離シートを剥離除去して測定した値である。また、具体的な発生ガスの測定方法については実施例で詳しく説明する。
【0059】
また、本発明の粘着性シートの粘着力は、粘着層の厚みが薄い場合でも、高い粘着力を有し、粘着力は3N/25mm以上、被着体によっては、5N/25mm以上の高い粘着力を有する。
【0060】
このように本発明の粘着性組成物および粘着性シートは、水蒸気透過率が低く、かつ粘着力が高く、粘着力や凝集力と低透湿性との優れたバランスや優れた透明性を有する。さらに高湿熱や紫外線に対する優れた耐久性を発揮する。
【0061】
本発明の粘着性シートは、有機EL素子の封止用途として用いられることを特徴とする。
図1に、本発明の粘着性シートを用いた有機EL素子の例を示す。この有機EL素子10では、ガラス基板12上に、透明電極、正孔輸送層、発光層および背面電極などが積層された構造体14が形成されている。この構造体14に、さらに本発明の粘着性シート16を介してガスバリアフィルム18が固着されている。有機EL素子10は、ガラス基板12上に構造体14を形成した後、本発明の粘着性シート16を貼付し、次いでシート上にガスバリアフィルム18を貼付して封止される。本発明の粘着性シートによれば、高温加熱や紫外線照射等を必要としないため、簡便に素子を封止できる。
【0062】
さらに、本発明の粘着性シートは、有機EL素子等のディスプレイデバイスに限らず、粘着力や凝集力、低透湿性および耐久性が必要とされる電子デバイスの封止材として好適に用いられる。このような電子デバイスとしては太陽電池などが挙げられる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例により、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制約されるものではない。なお、実施例及び比較例において、部および%は、各々、質量部及び質量%を意味し、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。
【0064】
〔実施例1〕
<粘着性組成物の調製>
ポリイソブチレン系樹脂(A)としてオパノールB50(BASF製、Mw:340,000)100質量部、ポリブテン樹脂(B)として日石ポリブテン「HV−1900」(新日本石油社製、Mw:1900)30質量部、ヒンダードアミン系光安定剤(C)としてTINUVIN765(チバ・ジャパン製)0.5質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)としてIRGANOX1010(チバ・ジャパン製)0.5質量部、環状オレフィン系重合体(E)としてEastotac H-100L Resin(イーストマンケミカル.Co.製)50質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度約25質量%の粘着性組成物を調製した(表1)。なお、TINUVIN765は、三級のヒンダードアミン基を有し、IRGANOX1010は、ヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基である。
【0065】
次いで、基材として厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム〔東洋紡績(株)製、コスモシャインA4100〕を用い、得られた粘着性組成物の溶液を乾燥後の厚さが20μmになるように塗工した後、120℃で2分間乾燥させて粘着層を形成させた。次いで、この粘着層面に、剥離シートとして、厚み38μm、の剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの剥離処理面を貼付して粘着性シートを作製した。
【0066】
〔実施例3〕
実施例1においてヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)をIRGANOX 245(チバ・ジャパン製)に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0067】
〔実施例4〕
実施例1においてヒンダードアミン系光安定剤(C)をTINUVIN 770(チバ・ジャパン製)に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0068】
〔実施例5〕
実施例1においてヒンダードアミン系光安定剤(C)をTINUVIN 770(チバ・ジャパン製)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)をIRGANOX 245(チバ・ジャパン製)に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0069】
〔実施例6〕
実施例1においてポリブテン(B)をオパノールB30SF(BASF製、Mw:200,000)に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0070】
〔実施例7〕
実施例1においてポリブテン(B)をオパノールB10(BASF製、Mw:20,000)に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0071】
〔比較例1〕
実施例1においてヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を加えないこと以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0072】
〔比較例2〕
実施例1においてヒンダードアミン系光安定剤(C)を加えず、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を1.0質量部加えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0073】
〔比較例3〕
実施例1においてヒンダードアミン系光安定剤(C)を加えず、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)をIRGANOX245(チバ・ジャパン製)1.0質量部に変えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0074】
〔比較例4〕
実施例1においてヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を加えず、ヒンダードアミン系光安定剤(C)を1.0質量部加えた以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0075】
〔比較例5〕
実施例1においてヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を加えず、ヒンダードアミン系光安定剤(C)をTINUVIN770(チバ・ジャパン製)1.0質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0076】
〔比較例6〕
実施例1においてポリブテン樹脂(B)を150質量部に変更した以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0077】
〔比較例7〕
実施例1においてポリイソブチレン系樹脂(A)をオパノールB80SF(BASF製、Mw:750,000)とし、ポリブテン樹脂(B)を加えないこと以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した。なお、粘着性組成物の調製は固形分濃度約15質量%で行なった(表1)。
【0078】
〔比較例8〕
実施例1においてポリブテン樹脂(B)を加えないこと以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0079】
〔比較例9〕
実施例1においてポリブテン樹脂(B)をオパノールB30SF(BASF製、Mw:200,000)100質量部に変更し、ポリイソブチレン系樹脂(A)を加えないこと以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0080】
〔比較例10〕
実施例1においてポリブテン樹脂(B)をオパノールB10(BASF製、Mw:20,000)100質量部に変更し、ポリイソブチレン樹脂(A)を加えないこと以外は実施例1と同様に実施して粘着性シートを作製した(表1)。
【0081】
このようにして得られた実施例及び比較例の粘着性シートを用い、下記の方法に従って特性評価を行った。その結果を後記する第2表に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2−1】

【0084】
【表2−2】

<粘着力測定>
得られた粘着性シートを幅25mm、長さ約250mmに切断し、ステンレス板に23℃、50%RH環境下にて圧着させ、JISZ0237(2000年改正)の粘着力の測定法に準じて貼付から24時間後、180°における引き剥がし粘着力(N/25mm)を測定した。ステンレス板の変わりに、ガラス板、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にスズドープ酸化インジウム〔ITO〕を蒸着させたITO蒸着面、ポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着面、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて、同様に粘着力(N/25mm)を測定した。
【0085】
<保持力測定>
25mm×25mmにカットした粘着性シートを、#360の研磨紙で研磨したステンレス板(SUS304)の垂直面に、23℃、50%RH環境下にて、貼着し、20分間放置後、温度40℃のオーブン内に移し、20分間経過後に1kgの重しを粘着性シートに取り付け、オーブン内に放置して、JIS Z 0237に基づき、粘着性シートがずれ落ちるまでの時間を測定した。
【0086】
<アウトガス発生量測定>
実施例、比較例で調整した粘着性組成物の溶液を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにシリコーン剥離処理した剥離シートのシリコーン処理面に乾燥後の厚さが20μmになるように塗工した後、120℃で2分間乾燥させて粘着層を形成させた。得られた粘着層面に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにシリコーン剥離処理した剥離シートのシリコーン処理面をラミネートし、2枚の剥離シートにより粘着層が挟持された粘着性シートを得た。
【0087】
上記のようにして得られた粘着性シートを測定用のサンプルとして用いた。得られたアウトガス発生量測定用の粘着性シートの剥離シートを剥離除去し、粘着層のみを試料(20cm2)とし、この試料をアンプル瓶に封入し、アンプル瓶をパージ&トラップGC Mass〔日本電子工業(株)製、JHS−100A〕を用いて、120℃、30分間加熱してガスを採取し、その後GC Mass(PERKIN ELMER製、Turbo Mass)に導入して、n-デカンを用いて作成した検量線より発生するガス量をn-デカン換算量(μg/cm2)として求めた。
【0088】
<水蒸気透過率測定>
粘着層の厚みを50μmに変えて作成した粘着性シートを用いて、この粘着性シートの剥離シートを剥離し、ポリエチレンテレフタレートフィルム(三菱樹脂社製、厚さ6μm)でラミネートし、2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムで挟まれた粘着層からなる水蒸気透過率測定用のサンプルとした。
【0089】
水蒸気透過率の測定は、透過率測定器(LYSSY社製、L89−500)を用いて、相対湿度90%、40℃の条件で測定した。なお、ラミネートに用いたポリエチレンテレフタレートフィルムの水蒸気透過率は2枚で43g/m2・24hであった。
【0090】
<重量平均分子量測定>
粘着性組成物の重量平均分子量測定は、上記の方法でアウトガス発生量の測定用として得られ2枚の剥離シートに挟まれている粘着層を採取し、東ソー(株)製 HLC−8220ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて、カラムとして東ソー(株)製、TSK−gel−GMH×1(2))、溶媒としてテトラヒドロフラン、流速1ml/分、温度40℃で測定し、ポリスチレン基準で較正した。また、上記の方法で得られ2枚の剥離シートにより粘着層が挟持された粘着性シートをガラス面に貼付し、粘着面をむき出しの状態で、それぞれFOM50時間、FOM500時間、120℃dry4週間、80℃90%RH4週間の環境下で促進試験を行った後、粘着層を採取し、同様にして重量平均分子量を測定した。なお、FOMとは、スガ試験機(株)製、紫外線フェードメータU−48を用いた、500W/m2(波長300−700nm)の連続照射のことである。
【0091】
<可視光透過率測定>
粘着剤層の厚みを0.1mmとした以外は実施例1、3〜7及び比較例1〜10と同様にして作製した粘着性シートを、可視光透過率測定装置(島津製作所社製「UV−3101PC」)を用いて、促進条件投入前後で波長550nmの可視光透過率を測定した。なお、促進条件は、120℃dry8週間とした。
【0092】
さらに、促進条件投入後の上記の粘着性シートを、可視光透過率測定装置(島津製作所社製「UV−3101PC」)を用いて、波長1000〜300nmの透過率を測定した後、得られた透過率の数値を用いて島津製作所社製ソフトウェア「UV−Prove」にて黄色度の算出を行なった。
【0093】
第2表に示すとおり、実施例1、3〜7は、特定分子量のポリイソブチレン系樹脂とポリブテン樹脂とを用い、かつ特定の光安定剤と酸化防止剤とを用いることで、各被着体に対して優れた粘着力及び保持力を有し、水蒸気透過率が低く、かつ、比較例1,3,5に比べ高湿熱および紫外線照射後も分子量の低下が大幅に抑えられており、優れた耐久性を有することがわかった。さらに、実施例1、3〜7の粘着性シートは、加熱促進後であっても黄色度が小さく、高い可視光透過率を有していることが分かった。
【符号の説明】
【0094】
10: 有機EL素子
12: ガラス基板
14: 構造体
16: 粘着性シート
18: ガスバリアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含み、
前記ポリブテン樹脂(B)を前記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部含むことを特徴とする粘着性組成物。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系光安定剤(C)が3級のヒンダードアミン基を有し、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)においてヒンダードフェノール基のベータ位が2つともターシャリーブチル基で置換されていることを特徴とすることを請求項1に記載の粘着性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の粘着性組成物からなる粘着層を有することを特徴とする粘着性シート。
【請求項4】
波長550nmにおける可視光線透過率が90%以上であることを特徴とする請求項3に記載の粘着性シート。
【請求項5】
40℃、95%RHにおける水蒸気透過率が5g/m2/day以下であることを特徴とする請求項3に記載の粘着性シート。
【請求項6】
有機EL素子の封止用途として用いられることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の粘着性シート。
【請求項7】
重量平均分子量30万〜50万のポリイソブチレン系樹脂(A)、重量平均分子量1千〜25万のポリブテン樹脂(B)、ヒンダードアミン系光安定剤(C)およびヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を配合して得られ、
前記ポリブテン樹脂(B)を前記ポリイソブチレン系樹脂(A)100質量部に対して5〜100質量部配合することを特徴とする粘着性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−231313(P2011−231313A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79424(P2011−79424)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】