説明

粘着性表面を有するキャリア

複数の小さいコンポーネントをハンドリングし、保持するためのキャリアである。このキャリアは、約20ダイン/cmから約100ダイン/cmの間の表面エネルギと、約ショアA15からショアD75の間の硬度と、約1×104オーム/平方から1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗とを有する熱可塑性エラストマ材料から形成されたエラストマコンポーネント接触表面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
この発明は小さいコンポーネントをハンドリングするためのキャリアに関する。さらに詳しくは、この発明は半導体のチップやデバイスなど小さい電子コンポーネントをハンドリングするためのキャリアトレイに関する。
【0002】
発明の背景
半導体デバイスの処理には多くの処理工程が含まれる。これらのデバイスは物理的損傷や電気的損傷を受けやすく、処理工程の間で搬送を行うときには注意深く取り扱う必要がある。また、処理中にはデバイスをハンドリングするのにしばしばロボットが使われる。ロボットがデバイスを効率的に位置合わせしてこれと係合できるようにするため、これらのロボットはデバイスを正確に位置合わせする必要がある。こうしたことから、処理工程の間におけるデバイスの搬送を容易にするために、特殊なキャリアが開発されてきている。
【0003】
フィルムフレームトレイとして知られる従来のキャリアの一つのタイプは、一般的に、薄いフィルムを取り囲むフレーム部分を有している。薄いフィルムの上側表面には接着剤層が配置されている。そして、接着剤上の所望の箇所に複数のデバイスが配列される。接着剤はデバイスの位置を固定する役割を果たす。こうしたフィルムフレームキャリアの例が米国特許第5,833,073号に開示されている。この特許は、その全体がここにおいて文献援用されている。
【0004】
トレイの表面上に複数のデバイスを固定するためにポケットの形態の物理的構造を用いている他のキャリアトレイ設計も開発されている。ポケット式マトリックストレイの例が米国特許第5,481,438号に開示されている。日本国特許公開第05-335787号など、こうしたマトリックストレイ設計のいくつかは、また、デバイスの位置を固定するためのポケットの底部に多層の接着剤材料を有している。
【0005】
一般的な接着剤材料を使用した従来のキャリアにおける問題は、そうした接着剤が、デバイスを損傷する可能性のある粒子の形態の汚染物質を付着させることである。これらの汚染物質は、接着剤を劣化させずに洗浄によってトレイから除去することが困難である。さらに、接着剤自身がデバイスやプロセスを汚染する可能性のある溶剤又はその他の望ましくない薬品を含んでいるかもしれない。また、接着剤自身が周囲の条件に応じて変化し、接着性が強くなりすぎてロボットによるデバイスのハンドリングプロセスの作業を邪魔するかもしれないし、接着性が不十分になってデバイスの位置を適切に固定できなくするかもしれない。
【0006】
デバイスを保持するためのポケットやその他の物理的構造を有する従来のキャリアトレイも問題を生じる可能性がある。ベアチップやリードレスチップなどのデバイスはデバイス上に突起がないために、物理的構造内に把捉することが容易ではない。また、ハンドリングのときにデバイスが物理的拘束から外れてしまって、デバイスが損傷したり、ロボットによるハンドリングのための位置合わせが不適切になるかもしれない。
【0007】
半導体デバイスやその他の小さいコンポーネントをハンドリングするための改良されたキャリアが産業界では必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,833,073号明細書
【特許文献2】米国特許第5,481,438号明細書
【特許文献3】特開平第5-335787号公報
【発明の開示】
【0008】
発明の概要
この発明は、複数の小さいコンポーネントをハンドリングし、保持するための、静電気放電(ESD)安全性を有するキャリアに関する。ここでは、コンポーネントはこのコンポーネントの表面とキャリアの接触表面との間の接着によって保持される。接触表面は、中程度以上の表面エネルギと、約1×104オーム/平方から1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗を有する比較的軟らかい熱可塑性エラストマ材料から形成されている。コンポーネントは、他の物理的な保持構造又は別の接着剤を使用することなく、熱可塑性の接触表面との接着のみによって所定の位置に保持される。
【0009】
キャリアの接触層は、堅固な本体部分上に射出成形によってオーバーモールドされる。これは、堅固な熱可塑性材料(rigid thermoplastic material)から形成されていることが好ましい。接触表面及び堅固な本体部分は、射出成形プロセスのときに形成される極性結合で一体に保持される。接触表面によって提供される接着の相対的な量は、熱可塑性エラストマ材料を、インパクト変性ポリマ又はその他の熱可塑性エラストマのブレンドと調合すなわち混合することによって調節することができる。また、接触表面の相対的な接着度及び電気的特性は、熱可塑性エラストマを本来的に静電気消散性又は導電性のポリマや、カーボンファイバ、カーボンパウダ、金属材料又はセラミック材料又はフィラー材料などの有機フィラーと調合すなわち混合することによって修正することができる。また、ランダム又は規則的なマトリックス状パターンで配置された小さい凹部又は凸部を接触層上に設けて、表面積、ひいては、保持されるコンポーネントとの接触に利用できる接着度を変えることもできる。
【0010】
この発明の特徴及び利点は、コンポーネントが、コンポーネントの平坦な表面とキャリアの熱可塑性エラストマ接触表面との間の接着のみによってキャリアの上に保持されることである。
この発明の別の特徴及び利点は、コンポーネントがキャリア上の所定の位置に十分な力で保持されるため、コンポーネントが外れることなく、キャリアを反転させることができ、また、通常の搬送にも及びハンドリングの衝撃にも耐え得ることである。
【0011】
この発明の別の特徴及び利点は、熱可塑性エラストマ接触表面以外には、キャリア上の所定の位置にコンポーネントを保持するための横方向又は垂直方向の物理的拘束構造を使用していないことである。
この発明の別の特徴及び利点は、コンポーネントを接触表面上へ接着するために、接触層表面上に別の接着物質を使用しておらず、従って、溶剤やその他の望ましくない薬品によるプロセス汚染の量が減ることである。
【0012】
この発明の別の特徴及び利点は、キャリアのコンポーネント接触表面及び本体部分が、保持されているコンポーネントに対してESD安全性を有していることである。
この発明の別の特徴及び利点は、このキャリアが周知のキャリアよりもより容易にリサイクル可能なことである。
この発明の別の特徴及び利点は、この発明によるキャリアのスタックがコンポーネントを所定の位置に保持しつつ再配置できることであり、しかも、それがコンポーネントに対して横方向から接触又は拘束を行う必要性なく、また、コンポーネントの上側と接触することなくできることである。
【0013】
この発明のさらに別の特徴及び利点は、表面によって提供されるコンポーネント引き付け力の相対的な量を、使用する材料の選択又は修正によって、又は接触層の表面形状を変えることによって個々の用途に適するように調節ができることである。
【0014】
この発明のその他の目的、利点及び新しい特徴は、部分的には以下の説明で述べられており、部分的には以下の説明を読めば当該分野の技術者には明らかになり、また、この発明を実行することによって理解されよう。この発明の目的及び利点は、特に、添付されている特許請求の範囲に記載されている手段及びその組み合わせによって実現され、達成されるであろう。
【0015】
好ましい実施形態の詳細な説明
添付図面は、この発明のキャリアに対する実施の形態と、その特徴及びコンポーネントを示している。前及び後、左及び右、上部及び底部、上側及び下側、水平及び垂直という言及は説明の便宜上のためであり、この発明又はそのコンポーネントをある一つの位置的又は空間的配置に限定するものではない。添付図面に指定されている寸法や、この明細書は、この発明の範囲から逸脱することなく、この発明の実施の形態の可能な設計及び意図する用途に応じて変えることができる。
【0016】
ここで使用されている「約」という用語は、寸法、サイズ、公差、フォーミュレーション、パラメータ、形状及びその他の量及び特性が厳密ではなく、また厳密である必要もないこと、そして必要に応じて、近似的及び/又はより大きく又はより小さくできることを意味しており、公差や変換ファクタ、丸め、測定誤差など、そして当該分野における技術者に周知のその他の要因を表している。一般に、寸法、サイズ、フォーミュレーション、パラメータ、形状又はその他の量又は特性は、そのように記載されているかいないかに関係なく、「約」又は「近似的」である。
【0017】
マイクロエレクトロニクス産業では、限定的ではないが、半導体チップやフェライトヘッド、磁気共鳴リードヘッド、薄膜ヘッド、ベアダイ、バンプダイ、基板、光デバイス、レーザダイオード、プリフォーム、そして、ばねやレンズなどの多くの機械部品などの小型コンポーネントを貯蔵、搬送、製造、そして、一般的には、保管するためにキャリアが使用されている。
【0018】
この発明は、半導体デバイスやその他の小型コンポーネントをハンドリングするためのキャリアを含んでいる。その場合において、コンポーネントの表面は、中程度以上の(moderate to high)表面エネルギを有するキャリアの熱可塑性接触表面と直接接触させて設置することができる。このキャリアは、ベアチップやリードレスチップなどの、突起又はリードを持たないコンポーネントを含む任意のタイプのコンポーネントに適しているが、チップスケールパッケージ(CSP)デバイスなどのリードを有するデバイスでも使用することができる。デバイスは、別の接着材料を使用することなく、また、熱可塑性接触表面自身とは別の横方向又は垂直方向の物理的拘束部材を使用することなく、キャリアの上に保持される。
【0019】
接触表面は、一般に、中程度以上の表面エネルギを有する比較的軟らかい熱可塑性材料を有している。デバイスの平坦な表面と接触表面との間の接着は、トレイの移動や通常のハンドリングのときにデバイスを保持し、一方、ロボットハンドリング装置によって表面からデバイスを容易に持ち上げられるようにしている。また、キャリアは、接触表面及び本体部分のどちらか又は両方に対して、約1×104オーム/平方から1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗を有する材料を使用することによって、ESDに対して安全になっている。
【0020】
図1及び図2は、マトリックストレイ100の形態を有するこの発明によるキャリアの実施の形態を示している。トレイ100は堅固な本体部分110を有しており、その本体部分110の中には、図示されているような「x」軸及び「y」軸によって定義される平面内にマトリックス状に配置された複数の個別のコンポーネントを受容するポケット102が形成されている。各ポケット102は「z」軸方向を向いた深さ寸法を有していて、一つのコンポーネントと係合して保持するための少なくとも一つのコンポーネント接触表面120を有している。本体部分110は、マトリックス部分116のエッジ122を越えて側方へ外側に突き出した周辺境界領域112を有している。本体部分110上には下方へ延びるスカート114が設けられている。スカート114は、複数のトレイを図4に示されているように積み重ねたときに、すぐ下に配置されるトレイの周辺境界領域112と係合するように位置合わせされている。スカート114の代わりとして、複数のトレイを積み重ねやすいようにするために、下方へ延びる脚又はポストなどの他の構造を使用してもよい。図面ではポケット102は堅固な本体部分110に一体に形成されているけれども、コンポーネントを受容するポケット又はその他の構造が形成された他の配置も考えられるし、この発明の範囲内である。例えば、クロスメンバ132を形成するポケットは別個の格子状ワークピースとして形成され、接着剤、ファスナ又はその他の手段を用いて、堅固な本体部分110の残り部分へ取り付けられていてもよい。
【0021】
図7及び図8にはこの発明によるキャリア300に対する別の実施の形態が示されている。ポケットを持たないこの実施の形態においては、キャリア300は図のように「x」軸及び「y」軸で定義される平面内に位置する堅固な本体302を有している。堅固な本体302上には接触層120が重ねられている。堅固な本体302は接触層120のエッジ306を越えて側方へ外側に突き出した周辺境界領域304を有していることが好ましい。本体部分302は下方へ延びるスカート308を有している。スカート308は、図9に示されているように、複数のキャリア300が積み重ねられたときにすぐ下側に配置された別のキャリア300の周辺境界領域304と係合するように位置合わせされている。スカート308の代わりとして、複数のキャリア300の積み重ねを容易にするために、脚やポストなどの他の構造を同じように使用してもよい。スカート308は十分な長さを有していて、接触層120の上に配置されたコンポーネント200がすぐ上に積み重ねられたトレイ300のどの部分にも接触しないようになっている。コンポーネントの効果的な保持に必ずしも必要ではないけれども、図11及び図12に示されているように、接触層120の上に別個の格子部材310を取り付けて、個々のコンポーネント保持領域312を形成してもよい。
【0022】
この発明においては、接触層120は中程度以上の表面エネルギ、比較的軟らかい表面及びESD安全性を有する高分子のエラストマ材料から形成されている。他のポリマも使用できるけれども、熱可塑性材料は、リサイクルが容易であり、ゾルフラクション(sol-fraction)を生じるプロセス汚染が小さく、低コストという一般的な利点を有しており、従って、好ましい。現在のところ、接触層120として好ましい材料は、比較的軟らかい熱可塑性エラストマである。これには、例えば、ウレタン(UR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオレフィン(PO)、ポリエチレンエテレフタレート(PET)、スチレンブロックコポリマ(styrenic block co-polymers)(例えば、Kraton(商標名))、スチレンブタジエンラバー、及びポリエーテルブロックポリアミド(PEBA)の形態のナイロンのエラストマ変異体(elastomeric variant)などが含まれる。また、ポリプロピレン/架橋EDPMラバーなどの熱可塑性硫化物材料(thermoplastic vulcanizate material)、例えば、オハイオ州アクロン(Akron, Ohio)のアドバンスト・エラストマ・システムズ(Advanced Elastomer Systems)によって製造されているSantoprene(商標名)などを使用することもできる。材料の表面エネルギは、20ダイン/センチメートルから100ダイン/センチメートルであることが好ましく、約30ダイン/センチメートルから45ダイン/センチメートルであることがより好ましく、約40ダイン/センチメートルであることが最も好ましい。材料は、約ショアD75(Shore D75)未満で、約ショアA15(Shore A15)を超えるデュロメータ硬度値を有していることが好ましい。
【0023】
接触表面はESD安全性を有し、約1×104オーム/平方から1×1012オーム/平方の表面電気抵抗値を有していていることが好ましい。所望の表面電気抵抗を得るためには、本来的に静電気消散性のポリマが接触表面材料と調合又は混合される。また、ドーピングされたポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリパラフェニリン、ポリパラフェニリンビニレン、ポリヘプタジン(polyheptadiyne)又はポリアセチレンなどの本来的に導電性のポリマーが混合ポリマとして使用できる。また、カーボンファイバ、カーボンパウダ、金属粒子、セラミック粒子又はその他の導電性フィラーを材料に添加してもよい。材料の表面抵抗を変えるために、例えば、第四アンモニウム塩、スルフォニウム塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、エタノールアミド、エタノールアミン又は脂肪アミンなどの有機フィラー材料を使用することもできる。もちろん、表面エネルギ、相対硬度及び純度の所望の物理特性とともに必要な電気特性を提供するその他の方法又は材料も使用できる。
【0024】
接触表面120によって提供される接着度は、特定の物理特性を有するコンポーネントを保持する特定の用途に応じて調節することができる。この調節は、接触表面120に用いる材料を選択又は変更することによって、又は表面自身の形状及び寸法を変えることによって行うことができる。一般的には、例えば、範囲の上限の表面エネルギを有する材料は範囲の下限の材料よりも強くコンポーネントを保持するであろう。また、範囲内の軟らかい側の端点にある硬度値を有する材料は硬い材料よりも一般的にコンポーネントを強く保持するであろう。ベース材料の表面エネルギ又は相対硬度を変えるために、上述した混合材料又はフィラー材料をベース材料と調合又は混合してもよい。インパクト変性ポリマ(impact modifying polymers)やその他の熱可塑性エラストマのブレンドを混合剤として使用して所望の相対硬度特性を達成することもできる。一般的に、表面層120は、少なくともコンポーネントの単位面積当たりの重力よりも大きいコンポーネント面積当たりの接着力をコンポーネントへ与え、それによって、トレイを反転したときでもコンポーネントを保持できるようになっていることが好ましい。一般に、接着度は、搬送やハンドリング作業のときに受ける衝撃や振動負荷のもとでコンポーネントを保持するのに十分であることが最も好ましい。
【0025】
接触表面120のコンポーネント接触面積の形状や、その結果としての接触面積の量を選択的に変えることによって、接着度を低減することもできる。わかりやすくするために、図5C又は図5Dにそれぞれ非常に誇張した形で示されているように、これは多数の規則的な凹部180又は凸部182を接触表面120に形成することによって実現することができる。凹部180又は凸部182は接触表面120の上にランダムに、又は規則的なマトリックスパターンに配置することができる。所望の接着度を達成するのに必要なように、凹部180又は凸部182は、深さ又は高さがそれぞれ約0.000040インチ(0.001mm)から約0.10インチ(2.54mm)であり、約0.000040インチ(0.001mm)から約0.30インチ(7.6mm)離間されている。所望のフィーチャ(feature)を有するネガの紋様で加工されたモールドで刻印することによって、接触表面120の上にフィーチャを形成することができる。一般的に、モールドは周知の加工技術を用いて加工することができる。範囲の内で小さい側の限界の規則的フィーチャを形成するのに、フォトリソグラフィを使用してモールドを加工してもよい。代わりに、細かくランダムな分布のフィーチャを有するモールドを、モールド表面に対してサンドブラストやガラスビーズ、ショットピーニングすることによって製造することもできる。
【0026】
ベアデバイス又はリードレスデバイスに適したマトリックストレイの一つの実施の形態が図2Aに示されている。接触表面120は各ポケット102の底部104の上に連続した層として成形される。図からわかるように、デバイス208は接触表面120と直接接触する表面209を有している。デバイス208は表面209と接触表面120との間の接着のみによって位置が保持されている。図示されているように、本体部分110はデバイス208と直接接触しておらず、デバイスを束縛していない。図2Bに示されている別の実施の形態は、ポケット102の内部に設けられた隆起構造106の一部として形成された接触表面120を有している。図示されているように、この構造は突き出したリード212を有するタイプのコンポーネント210に特に適している。この発明は任意のポケット形状又は構造を有し、必要な特性を有する熱可塑性エラストマ接触表面が設けられ、デバイスの表面と接触させて設置することができるようになっていることがわかるであろう。例えば、図6に示されているように、トレイはリセス状のポケットの代わりに、トレイ110の本体部分110の表面よりも上方へ隆起したプラットフォーム構造158のマトリックスを有している。接触表面120は各構造158の上部に設けられている。
【0027】
接触表面120は標準的な射出成形法を用いてオーバーモールドされることが現在のところ最も好ましい。表面層120及び本体部分110の材料は、射出成形プロセスのときに極性結合が形成されるようなものが好ましい。これら二つの層は、機械的に一体に固定されてもよいし、いくつかの方法を組み合わせて固定されてもよい。また、図5Bに最もよく示されているように、結合効果を向上させるために、機械的な結合構造160が本体部分110の上に設けられている。さらに、図5Eに示されているように、結合効果を向上させるために、二つの材料の間に中間層すなわち結合層170を使用してもよい。接触部分120に対してと同様に、本体部分110に対しては熱可塑性ポリマを使用することが好ましい。なぜなら、熱可塑性材料は、一般的に、リサイクルが容易であり、ゾルフラクションを生じるプロセス汚染が小さいために純度が高く、コストが低いという利点を有するからである。本体部分110は接触部分120に対して述べたものと同じ材料及び方法を用いてESD安全性を有するようにすることができる。本体部分に対して相応しい堅固な熱硬化性ポリマを使用してもよいが、あまり好ましくない。
【0028】
本体部分110はトレイに対して剛性及び機械的強度を与える。従って、相応しい堅固な材料から製造されていなければならず、また、トレイを使用したりハンドリングしたりするときに予想される機械的負荷に耐えるだけの適切な厚みを有していなければならない。所望の質の剛性、機械的強度及び化学的適合性を有する任意の相応しいポリマ材料を使用することができるけれども、図3に示されている表の第1列には、本体部分110に適したいくつかの極性ポリマ材料が掲載されている。結合効果を向上させるために表面処理を用いることができるけれども、掲載されている「グループA」の熱可塑性材料は、本体材料を表面処理する必要なく、この表の第2列に掲載されている接触部分の材料の任意のものといっしょに成形することができる。「グループB」の中に掲げられている本体材料は、一般に、非極性ポリマであり、接触部分120との適切な極性結合(polar bond)を実現するためには、コロナ処理、プラズマ処理、化学処理又は火炎処理の形態の表面処理を行う必要がある。また、「グループB」の材料は、デュポン・コーポレーション(Du Pont Corporation)によって製造されているBynel(商標名)やニチメン・コーポレーション(Nichimen Corporation)によって製造されているTymor(商標名)などの相互に適合性を有する別の中間結合層を使用して結合することもできる。
【0029】
キャリアを使用するときには、個々のコンポーネントは、コンポーネント表面のかなりの部分を接触表面120と接触させた状態で設置される。接触表面120の中程度以上の表面エネルギや軟らかさのために、コンポーネントは熱可塑性の接触表面120とデバイスの表面との間の接着によって接触表面120の上に効果的に保持され、別の接着剤や物理的な保持構造を用いる必要はない。接触表面や堅固な本体部分、又は両方の材料がESDに安全な静電気消散特性を有していることから、中に貯蔵されるデバイスは電気的に保護される。トレイの熱可塑性構造によって、トレイによるプロセス汚染の量は低減する。さらに、熱可塑性のコンポーネントはより容易かつ完全にリサイクルされ、環境への負荷が低減する。
【0030】
この発明における積み重ねの特徴は、図2、図2A及び図4を参照すると最もよくわかる。図4に示されているトレイ101のスタックにおいては、各デバイス208は接触表面120と直接接触しており、その接触表面120によって保持されている。デバイス208はポケット102の内部に配置されており、クロスメンバ132の上側表面124の上方までは延びていない。トレイ100を積み重ねたとき、各トレイの下方へ突き出したスカート114はすぐ下のトレイの周辺境界領域112に接触し、その上に載る。スカート114は十分な高さを有しており、トレイの下側表面126はすぐ下のトレイの上側表面124から離間している。デバイス208は接触表面120との粘着によってのみ位置が保持される。デバイス208は本体部分110によってポケット内部で横方向に拘束されることはなく、また、垂直方向にはすぐ上のトレイの下側表面126との接触によって拘束されることはない。トレイ101のスタックは、デバイス208を取り外すことなく、また、デバイスを他のトレイや同じトレイの他の部分と接触させることなく配置を変えることができるし、反転させることもできる。
【0031】
以上の説明は多くの特殊性を含んでいるが、これらは発明の範囲を制限するものではなく、単にこの発明の実施の形態のいくつかを示しているだけである。従って、この発明の範囲は、ここでの実施例によってではなく、添付の特許請求の範囲及びその法的均等物によって決定されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明のキャリアに対する実施の形態の斜視図である。
【図2】図1のキャリアの断面図である。
【図2A】図2の部分拡大図である。
【図2B】図2の部分拡大図であり、別の実施の形態を示している。
【図3】キャリアの接触表面及び本体に対して使用される種々の材料を一覧にした表である。
【図4】積み重ねられた状態にある複数のキャリアの断面図である。
【図5A】図2A部分拡大図である。
【図5B】図2Aの部分拡大図であり、コンポーネントの接触層を堅固な本体部分へ固定するための機械式結合構造を示している。
【図5C】図2Aの部分拡大図であり、コンポーネントの接触層を堅固な本体部分へ固定するための結合層を示している。
【図5D】図2Aの部分拡大図であり、接着性を低減するためにコンポーネント接触層に設けられた多数の凹部を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の小さいコンポーネントをハンドリングして保持するために用いられるキャリアであって、
堅固な本体部分と、
前記コンポーネントと接触して保持するために前記堅固な本体部分の上に設けられたエラストマの接触表面と、
を有し、前記接触表面が、20ダイン/cmから100ダイン/cmの間の表面エネルギと、約ショアA15からショアD75の間の硬度と、約1×104オーム/平方から1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗とを有する熱可塑性材料から形成されているキャリア。
【請求項2】
前記エラストマの接触表面が熱可塑性エラストマ材料から形成されている請求項1記載のキャリア。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマ材料が、ウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、スチレンブロックコポリマ、スチレンブタジエンラバー及びポリエーテルブロックポリアミドから成る熱可塑性エラストマのグループから選択される請求項2記載のキャリア。
【請求項4】
前記熱可塑性エラストマ材料が熱可塑性硫化物である請求項2記載のキャリア。
【請求項5】
前記熱可塑性エラストマ材料が本来的に静電気消散性のポリマ又は本来的に導電性のポリマと混合されている請求項2記載のキャリア。
【請求項6】
前記熱可塑性エラストマ材料がフィラー材料を含有している請求項2記載のキャリア。
【請求項7】
前記フィラー材料が無機の導電性材料である請求項6記載のキャリア。
【請求項8】
前記無機の導電性材料がカーボンファイバ、カーボンパウダ、金属粒子又はセラミック粒子である請求項7記載のキャリア。
【請求項9】
前記フィラー材料が有機材料である請求項6記載のキャリア。
【請求項10】
前記有機材料が、第四アンモニウム塩、スルフォニウム塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、エタノールアミド、エタノールアミン又は脂肪族アミンである請求項9記載のキャリア。
【請求項11】
前記接触表面の各々が、その接着性を低減するために、その上に形成された多数の凹部又は凸部を有している請求項1記載のキャリア。
【請求項12】
前記本体部分が、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ウレタン、ポリフェニレン、スルフィド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン及びスチレンアクリロニトリルから成る堅固な熱可塑性材料のグループから選択された堅固な熱可塑性材料から形成されている請求項1記載のキャリア。
【請求項13】
前記堅固な本体部分が、堅固なポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマ、ポリオレフィン、ポリアミド又はナイロンから形成されている請求項1記載のキャリア。
【請求項14】
前記本体部分と前記接触表面との間に挟まれた結合層をさらに有する請求項1記載のキャリア。
【請求項15】
前記接触表面が約30ダイン/cmから約45ダイン/cmの間の表面エネルギを有している請求項1記載のキャリア。
【請求項16】
前記接触表面が約40ダイン/cmの表面エネルギを有している請求項1記載のキャリア。
【請求項17】
前記本体部分が、周辺境界部分と、下方へ延びるスカート部分とを有し、前記スカート部分は、トレイを積み重ねたときに、別のトレイの周辺境界部分と係合するようになっている請求項1記載のキャリア。
【請求項18】
前記堅固な本体部分が約1×104オーム/平方から約1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗を有する請求項1記載のキャリア。
【請求項19】
前記堅固な本体部分が導電性である請求項1記載のキャリア。
【請求項20】
前記堅固な本体部分がその中に形成された複数のポケットを有している請求項1記載のキャリア。
【請求項21】
前記接触表面の上に配置された格子部材をさらに有し、前記格子部材は前記接触表面上に複数のコンポーネント受容領域を形成している請求項1記載のキャリア。
【請求項22】
複数の小さいコンポーネントをハンドリングして保持するためのキャリアを製造する方法であって、
プラスチック材料から堅固な本体部分を形成する段階と、
前記堅固な本体部分上にコンポーネント接触表面を形成する段階と、
を有し、前記コンポーネント接触表面は、約20ダイン/cmから約100ダイン/cmの間の表面エネルギと、約ショアA15から約ショアD75の間の硬度と、約1×104オーム/平方から約1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗とを有する熱可塑性エラストマを有し、前記コンポーネント接触表面は、前記トレイを反転したときに複数のコンポーネントの各々を保持するのに十分な接着性を有している方法。
【請求項23】
前記堅固な本体部分上に複数の機械式接合構造を形成する段階をさらに有する請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記本体部分が、堅固なポリエチレン、ポリプロピレン又はフルオロポリマから形成されており、前記本体部分の一部を、コロナ、プラズマ、火炎又は化学的処理プロセスで表面処理する段階をさらに有している請求項22記載の方法。
【請求項25】
前記本体部分と前記コンポーネント接触表面との間に中間結合層を形成する段階をさらに有する請求項22記載の方法。
【請求項26】
前記コンポーネント接触表面上に多数の均一な凹部又は凸部を形成する段階をさらに有する請求項22記載の方法。
【請求項27】
積み重ね可能なキャリアトレイと、このキャリアトレイの中に保持される複数のコンポーネントとを組み合わせたシステムであって、
表面をそれぞれ有する複数のコンポーネントと、
複数のキャリアトレイと、
を有し、前記トレイの各々が、上側表面を有する堅固な本体部分を有し、前記堅固な本体部分が、周辺境界領域と、前記複数のトレイを積み重ねたときにトレイのうちの別の一つの周辺境界領域と係合する少なくとも一つの下方へ延びる構造とを有し、前記堅固な本体部分の上側表面がコンポーネント接触表面を有し、前記コンポーネント接触表面が、約20ダイン/cmから約100ダイン/cmの間の表面エネルギと、約ショアA15から約ショアD75の間の硬度と、約1×104オーム/平方から約1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗とを有する熱可塑性エラストマ材料から形成され、前記複数のコンポーネントにおける各コンポーネントの表面が前記コンポーネント接触表面と係合可能であり、前記複数のコンポーネントの各コンポーネントが前記コンポーネント接触表面との接着のみによって横方向及び垂直方向に拘束され、前記接着は、トレイを反転したときにコンポーネントが前記コンポーネント接触表面上の所定の位置に維持されるのに十分なようになっているシステム。
【請求項28】
前記熱可塑性エラストマ材料が、ウレタン、ポリブチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、スチレンブロックコポリマ、スチレンブタジエンラバー及びポリエーテルブロックポリアミドから成る熱可塑性エラストマのグループから選択される請求項27記載のシステム。
【請求項29】
前記熱可塑性エラストマ材料が熱可塑性硫化物である請求項27記載のシステム。
【請求項30】
前記熱可塑性エラストマ材料が本来的に静電気消散性のポリマ又は本来的に導電性のポリマと混合されている請求項27記載のシステム。
【請求項31】
前記熱可塑性エラストマ材料がフィラー材料を含有している請求項27記載のシステム。
【請求項32】
前記フィラー材料が無機の導電性材料である請求項31記載のシステム。
【請求項33】
前記無機の導電性材料がカーボンファイバ、カーボンパウダ、金属粒子又はセラミック粒子である請求項32記載のシステム。
【請求項34】
前記フィラー材料が有機材料である請求項31記載のシステム。
【請求項35】
前記有機材料が、第四アンモニウム塩、スルフォニウム塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルリン酸塩、エタノールアミド、エタノールアミン又は脂肪族アミンである請求項34記載のシステム。
【請求項36】
前記コンポーネント接触表面が、その接着性を低減するために、その上に形成された多数の凹部又は凸部を有している請求項27記載のシステム。
【請求項37】
前記堅固な本体部分が、アクリロニトリルブタジエンスチレン、ポリカーボネート、ウレタン、ポリフェニレン、スルフィド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルイミド、ポリスルフォン及びスチレンアクリロニトリルから成る堅固な熱可塑性材料のグループから選択された堅固な熱可塑性材料から形成されている請求項27記載のシステム。
【請求項38】
前記堅固な本体部分が、堅固なポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマ、ポリオレフィン、ポリアミド又はナイロンから形成されている請求項27記載のシステム。
【請求項39】
前記本体部分と前記接触表面との間に挟まれた結合層をさらに有する請求項27記載のシステム。
【請求項40】
前記接触表面が約30ダイン/cmから約45ダイン/cmの間の表面エネルギを有している請求項27記載のシステム。
【請求項41】
前記接触表面の各々が約40ダイン/cmの表面エネルギを有している請求項27記載のシステム。
【請求項42】
前記本体部分が、周辺境界部分と、下方へ延びるスカート部分とを有し、前記スカート部分は、トレイを積み重ねたときに、別のトレイの周辺境界部分と係合するようになっている請求項27記載のシステム。
【請求項43】
前記堅固な本体部分が約1×104オーム/平方から約1×1012オーム/平方の間の表面電気抵抗を有する請求項27記載のシステム。
【請求項44】
前記堅固な本体部分が導電性である請求項27記載のシステム。

【図5B】図2Aの部分拡大図であり、接着性を低減するためにコンポーネント接触層に設けられた多数の凸部を示している。
【図6】この発明に対する別の実施の形態の断面図である。
【図7】この発明によるキャリアに対する別の実施の形態の斜視図である。
【図8】図7に描かれているキャリアの断面図である。
【図9】積み重ねられた状態にある複数の図7に描かれているようなキャリアの断面図である。
【図10】個々のコンポーネント保持領域を形成する別個の格子構造を有する図7のキャリアの部分分解斜視図である。
【図11】図10に描かれているキャリアの断面図である。
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2006−505457(P2006−505457A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−536085(P2004−536085)
【出願日】平成15年9月4日(2003.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/027533
【国際公開番号】WO2004/024594
【国際公開日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(500481330)エンテグリス・インコーポレーテッド (11)
【Fターム(参考)】