説明

粘着性高分子ゲル及び粘着性ゲルシート

【課題】高強度かつリワーク性に優れるとともに、剥離時に被着体への汚染が少ない粘着性高分子ゲル及び該粘着性高分子ゲルを用いた粘着性ゲルシートを提供する。
【解決手段】粘着性を有する高分子ゲルであって、周波数1Hzの温度分散で測定した、25℃における動的貯蔵弾性率G’が、1.0×105〜1.0×108Pa、かつ、該高分子ゲルを打ち抜いてなるダンベル1号試験片について、引張り強度が1MPa以上であり、長さ100mm、幅20mm、厚み0.3mmに加工した該高分子ゲルからなる試験片をJIS Z0237(2009)に準拠した方法でアクリル板に貼り付け、その後、速度300mm/分で前記試験片を前記アクリル板から90°方向に剥離した後に、前記試験片が付着していたアクリル板の表面のうち2mm×2mmの範囲の任意の箇所について光学顕微鏡にて100倍で拡大して観測される異物の数が5個未満である粘着性高分子ゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度かつリワーク性に優れるとともに、剥離時に被着体への汚染が少ない粘着性高分子ゲル及び該粘着性高分子ゲルを用いた粘着性ゲルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤や粘着性ゲルは固定用途として種々のものが用いられてきたが、近年、工業用部材の性能を高める目的でも用いられつつある。
例えば、PDP(プラズマディスプレイ)は、光学フィルタとパネルとを備えており、パネルを保護するために、光学フィルタとパネルとの間に空隙が設けられている。しかし、この空隙は、外部からの入射光の反射による二重映り現象の原因となり、この現象が画質を低下させるという問題があった。
このような問題に対し、光学フィルタとパネルとを粘着剤や粘着性ゲルで貼り合せることが検討されている。粘着剤や粘着性ゲルで貼り合せることで、光学フィルタとパネルとの接着固定と、パネルの保護とを行うことができるとともに、空隙が粘着剤や粘着性ゲルで充填されることで、画質の低下を抑えることが可能となる。
【0003】
このような用途に用いることができる粘着剤として、例えば、特許文献1には、モノマー成分の97重量パーセント以上が活性水素を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルからなる重合体及び活性エネルギー線硬化型化合物ならびに光重合開始剤を含む組成物を活性エネルギー線で硬化させてなる低極性表面用粘着剤及び同低極性表面用粘着剤を用いた粘着シートが開示されている。また、特許文献2には、カルボキシル基含有樹脂組成物とアミノ基含有樹脂組成物とを含有した粘着剤組成物が、特許文献3には、貯蔵弾性率が1.0×104Pa〜1.0×105Paの光学部材貼り合わせ用粘着シートが開示されている。
【0004】
ここで、粘着シートをパネルに貼着させた場合に、貼り間違え等により粘着シートを剥離又は貼着しなおす場合には、パネルに対して糊残り等を生じさせないリワーク性が求められるところ、特許文献1〜3に記載されている粘着シートは、粘着性に優れるため、その粘着性の高さ故にリワーク性に劣り、パネルを洗浄した後に再度粘着シートを貼着する必要があるという問題があった。特に、特許文献3に記載されている粘着シートは、貯蔵弾性率の低さ故にリワーク性に劣るものである。
また、近年、ガラスチップの搬送用、半導体の仮固定用という新しいニーズに対してリワーク性を有する粘着剤及び粘着性ゲルが求められているところ、従来の粘着剤及び粘着性ゲルは、粘着力の高さ及び引張り強度の弱さ故に、被着体への糊残りが多く被着体を汚染してしまうというのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−100760号公報
【特許文献2】特許第3516035号公報
【特許文献3】特開2010−077287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、高強度かつリワーク性に優れるとともに、剥離時に被着体への汚染が少ない粘着性高分子ゲル及び該粘着性高分子ゲルを用いた粘着性ゲルシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、粘着性を有する高分子ゲルであって、周波数1Hzの温度分散で測定した、25℃における動的貯蔵弾性率G’が、1.0×105〜1.0×108Pa、かつ、該高分子ゲルを打ち抜いてなるダンベル1号試験片について、引張り強度が1MPa以上であり、長さ100mm、幅20mm、厚み0.3mmに加工した該高分子ゲルからなる試験片をJIS Z0237(2009)に準拠した方法でアクリル板に貼り付け、その後、速度300mm/分で上記試験片を上記アクリル板から90°方向に剥離した後に、上記試験片が付着していたアクリル板の表面のうち2mm×2mmの範囲の任意の箇所について光学顕微鏡にて100倍で拡大して観測される異物の数が5個未満である粘着性高分子ゲルである。
【0008】
また、本発明は、粘着性高分子ゲルと樹脂フィルムとを用いてなる粘着性ゲルシートである。
以下に本発明を詳述する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着性高分子ゲルは、特定の範囲の動的貯蔵弾性率G’及び引張り強度を有し、かつ、剥離試験の結果、異物残りが一定個以下である粘着性高分子ゲルを用いることにより、該粘着性高分子ゲルをガラス板等の被着体に粘着し、貼り直し又は剥離を行った場合であっても弾性強度が高いためにリワーク性がよく、糊残りが少ないために、被着体への汚染が少ないため、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途、精密機器の搬送用途、半導体等の仮固定用途に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】異物の数の計測方法に関する模式図である。
【図2】実施例7のゲルの耐発泡剥れ性試験後(高温保持後)の写真((a))及びその写真のトレース図((b))である。
【図3】比較例5のゲルの耐発泡剥れ性試験後(常温保持後)の写真((a))及びその写真のトレース図((b))である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
また、本発明の粘着性高分子ゲルは、周波数1Hzの温度分散で測定した、25℃における動的貯蔵弾性率G’の下限が1.0×105Pa、上限が1.0×108Paである。動的貯蔵弾性率が1.0×105Pa未満であると、柔らかすぎて、剥離時に糊残りの原因となる。動的貯蔵弾性率が1.0×108Paを超えると、硬すぎるために柔軟性がなくなり、剥離時に粘着性高分子ゲルが破断や割れを生じ、剥離することが困難となる。動的貯蔵弾性率の好ましい下限は5.0×105Pa、好ましい上限は5.0×107Paであり、より好ましい下限は1.0×106Pa、より好ましい上限は1.0×107Paである。
なお、上記動的貯蔵弾性率G’の測定方法としては、例えば、動的粘弾性装置(Anton Paar社製、PHYSICA MCR301)を用いることができる。なお、本明細書においては、測定サンプルは、得られた粘着性高分子ゲルを8mmΦに打ち抜き、厚みが1mmとなるように積層したものとした。
【0012】
本発明の粘着性高分子ゲルは、JIS K6251に準拠し、打ち抜いてなるダンベル1号試験片(0.3mm厚み)について、引張り強度の下限が1MPaである。引張り強度が1MPa未満であると、剥離時に容易に裂けてしまい、糊残りの原因となる。引張り強度の好ましい下限は2MPa、より好ましい下限は4MPaである。なお、引張り強度の上限としては特に限定されないが、柔軟性がなくなり、剥離時に粘着性高分子ゲルが破断や割れを生じ、剥離することが困難となることがある等の理由から、好ましい上限は20MPa、より好ましい上限は15MPaである。
なお、上記引張り試験の測定方法としては、例えば、JIS K6251に準拠し、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製)を用いて、温度23℃、湿度54%RH、引張り速度500mm/分にて引張り試験を行い、粘着性高分子ゲルが破断した際の応力を引張り強度とすることができる。
【0013】
本発明の粘着性高分子ゲルは、長さ100mm、幅20mm、厚み0.3mmに加工した該粘着性高分子ゲルからなる試験片をJIS Z0237(2009)に準拠した方法でアクリル板に貼り付け、その後、速度300mm/分で上記試験片を前記アクリル板から90°方向に剥離した後に、上記試験片が付着していたアクリル板の表面のうち2mm×2mmの範囲の任意の箇所について光学顕微鏡にて100倍で拡大して観測される異物の数が5個未満である。
異物の数が5個未満であることにより、本発明の粘着性高分子ゲルの貼り直しを行うことが可能であるとともに、被着体については、洗浄等の工程を必要とせずにそのまま再利用することが可能となる。
ここで、異物の数については、光学顕微鏡にて100倍で拡大した任意の2mm×2mmの測定範囲について画像処理にて100分割(1マス200μm×200μm)し、異物で覆われているマス目の数を異物の個数としてカウントした。例えば、図1(a)に示すように異物が確認された場合には、図1(b)に示すような画像処理の結果から異物の個数を10個とカウントする。また、例えば、図1(c)に示すように異物が確認された場合には、図1(d)に示すような画像処理の結果、異物の面積が約2マス分の面積に相当すると判断されることから、異物の個数を2個とカウントする。
【0014】
本発明の粘着性高分子ゲルを製造するための具体的な方法としては特に限定されないが、例えば、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマー(C)を含有する組成物を用いる方法が挙げられる。
【0015】
上記アクリル系液状ポリマー(C)は粘着性高分子ゲルに対して可塑性を付与する役割を有するものである。
上記アクリル系液状ポリマー(C)のガラス転移温度(Tg)の好ましい上限は0℃である。上記アクリル系液状ポリマー(C)のガラス転移温度(Tg)が0℃を超えると、固形化し調液しにくくなったり、粘着性高分子ゲルの柔軟性が得らなくなったりすることがある。上記アクリル系液状ポリマー(C)のガラス転移温度(Tg)のより好ましい上限は−10℃である。
【0016】
ここで、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121:1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して測定する。
測定方法としては、例えば、示差走査熱量計装置 DSC220C型(セイコーインスツルメンツ社製)を用い、測定容器に試料を10.0±0.5mg充填して、20℃/分の冷却速度で−75℃まで冷却し5分間保持後、窒素ガス流量50mL/分のもと20℃/分の昇温速度で100℃まで昇温してガラス転移温度を測定し、中間点ガラス転移温度をガラス転移温度(Tg)とすることができる。なお、中間点ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠する。
【0017】
上記アクリル系液状ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)としては特に限定されないが、好ましい下限は500、好ましい上限は20000である。上記アクリル系液状ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)が500未満であると、作製される粘着性高分子ゲルからアクリル系液状ポリマーがブリードアウトしやすくなる。上記アクリル系液状ポリマー(C)の重量平均分子量(Mw)が20000を超えると、固形化し調液しにくくなるとともに、粘着性高分子ゲルの柔軟性が得らなくなることがある。上記アクリル系液状ポリマー(C)の重量平均分子量のより好ましい下限は700、より好ましい上限は10000であり、更に好ましい下限は1000、更に好ましい上限は5000である。特に、本発明の粘着性高分子ゲルを液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途として用いる場合には、透明維持性を有する粘着性高分子ゲルとするために、重量平均分子量の上限を5000とすることが好ましい。
【0018】
ここで、重量平均分子量は、ポリスチレン(PS)換算重量平均分子量を意味し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。以下に具体的な測定方法を詳述する。
[測定装置]
東ソー社製 HPLC(ポンプ DP−8020、オートサンプラー AS−8020、検出器 UV−8020、RI−8020)
[カラム]
GPC K−806L×2(Shodex 昭和電工社製)
[測定条件]
カラム温度(40℃)、移動相(クロロホルム)、移動相流量(1.2mL/分)、ポンプ温度(室温)、測定時間(25分)、検出(RI)、注入量(50μL)
[測定液作製方法]
試料30mg±5mgを秤量し、HPLC用クロロホルム4mL(移動相)で溶解後測定液とする。
[検量線用PS標準物質]
昭和電工社製(Shodex)STANDARDキットより、STD No.S−6120、S−3250、S−1320、S−493、S−133、S−55.1、S−19.6、S−7.2、S−3.1、S−1.2の合計10本を選択して使用し、検量線を作成する。
【0019】
上記ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマー(C)としては特に限定されないが、アクリル酸エステルを主成分とし、エステル部分の炭素数が1〜20で、直鎖状、分岐状、又は、環状のアクリル酸エステル由来のポリマーが好適に用いられる。上記主成分となるアクリル酸エステルとしては特に限定されず、例えば、エステル部分の炭素数が4〜12のアクリル酸エステルモノマーが好ましく、特に、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレートが好適に用いられる。
また、上記主成分となるアクリル酸エステル以外のアクリル酸エステルとして、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、ネオペンチルアクリレート、イソデシルアクリレート、トリデシルアクリレート及びステアリルアクリレート等のアクリル酸脂肪族アルキル、イソボルニルアクリレート、トリシクロデシニルアクリレート及びテトラヒドロフルフリルアクリレート等のアクリル酸脂環式アルキル、ジメチルアミノエチルアクリレート、クロロエチルアクリレート及びトリフルオロエチルアクリレート等のヘテロ原子含有アクリル酸エステル等を併用してもよい。
【0020】
また、上記アクリル系液状ポリマー(C)には、上記アクリル酸エステルに対してメタクリル酸エステル、α−オレフィン類、ビニルエステル類、ビニルエーテル類等のビニル系モノマーを共重合させてもよい。特に、粘着性高分子ゲルの強度を更に高めることができることから、上記アクリル系液状ポリマー(C)は、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基及びアルコキシシリル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有することが好ましい。
上記アクリル系液状ポリマー(C)にこれらの官能基を付与する方法としては特に限定されず、例えば、これらの官能基を含有するモノマーを適宜共重合させる方法等が挙げられる。
【0021】
上記アクリル系液状ポリマー(C)の合成法としては、従来公知の溶液重合法や高温連続重合法(特開昭59−6207号公報、特開昭60−215007号公報、特開平1−313522号公報等参照)等が挙げられる。なかでも、溶剤や連鎖移動剤を必要とせず、副原料が製品に残留することによる物性低下の問題が少ないことから、高温連続重合法が好適に用いられる。
【0022】
また、上記アクリル系液状ポリマー(C)は、例えば、次の品名で市販されており、適宜用いることができる。
無官能のアクリル系液状ポリマーとしては、東亞合成社のUPシリーズが挙げられ、品質や性状によって、UP1000、UP1010、UP1020、UP1021、UP1061、UP1080、UP1110、UP1170、UP1190という商品に分類される。
【0023】
水酸基含有のアクリル系液状ポリマーとしては、東亞合成社のUHシリーズが挙げられ、品質や性状によって、UH2000、UH2032、UH2041という商品に分類される。
【0024】
エポキシ基含有のアクリル系液状ポリマーとしては、東亞合成社のUGシリーズが挙げられ、品質や性状によって、UG4000、UG4010という商品に分類される。
【0025】
アルコキシシリル基含有のアクリル系液状ポリマーとしては、東亞合成社のUSシリーズが挙げられ、品質や性状によって、US6110、US6120、US6170という商品に分類される。その他、ジョンソンポリマー社よりジョンクリルという商品が市販されている。
これらのアクリル系液状ポリマーは、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0026】
上記組成物における上記アクリル系液状ポリマー(C)の含有率としては特に限定されないが、好ましい下限は10重量%、好ましい上限は60重量%である。上記アクリル系液状ポリマー(C)の含有率が10重量%未満であると、粘着性高分子ゲルが硬くなりすぎ、柔軟性が得られなくなることがある。上記アクリル系液状ポリマー(C)の含有率が60重量%を超えると、粘着性高分子ゲルが柔らかくなりすぎて、破断しやすくなる。上記アクリル系液状ポリマー(C)の含有率のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は55重量%である。
【0027】
上記組成物は、特に高温高湿条件といった苛酷な環境下において被着体に対する浮きや剥れの発生の防止を目的として、更に、重量平均分子量が200〜5000のポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)を含有してもよい。
上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の重量平均分子量の好ましい下限は200、好ましい上限は5000である。上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の重量平均分子量が200未満であると、作製される粘着性高分子ゲルから上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルがブリードアウトしやすくなる。上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の重量平均分子量が5000を超えると、粘着性高分子ゲルの柔軟性が得られなくなることがある。上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の重量平均分子量のより好ましい下限は300、より好ましい上限は3000である。
【0028】
上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)としては特に限定されず、例えば、ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル、ポリオキシプロピレン(ポリ)グリセリルエーテル等が挙げられる。
また、上記ポリアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)は、例えば、次の品名で市販されており、適宜用いることができる。
【0029】
ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテルとしては、阪本薬品工業社のSC−Eシリーズが挙げられ、品質や性状によってSC−E450、SC−E750、SC−E1000、SC−E1500、SC−E2000という商品に分類される。
【0030】
ポリオキシプロピレン(ポリ)グリセリルエーテルとしては、阪本薬品工業社のSC−Pシリーズが挙げられ、品質や性状によってSC−P450、SC−P750、SC−P1000、SC−P1200、SC−P1600という商品に分類される。
これらのポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
上記組成物がポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)を含有する場合、すなわち、上記アクリル系液状ポリマー(C)と上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)とを併用する場合、上記組成物における上記アクリル系液状ポリマー(C)及び上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の合計含有率の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は60重量%である。上記アクリル系液状ポリマー(C)及び上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の合計含有率が10重量%未満であると、粘着性高分子ゲルが硬くなりすぎ、柔軟性が得られなくなることがある。上記アクリル系液状ポリマー(C)及び上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の合計含有率が60重量%を超えると、粘着性高分子ゲルが柔らかくなりすぎて、破断しやすくなる。上記アクリル系液状ポリマー(C)及び上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)の合計含有率のより好ましい下限は15重量%、より好ましい上限は55重量%である。
【0032】
また、上記アクリル系液状ポリマー(C)と上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)とを併用する場合、上記アクリル系液状ポリマー(C)と上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)との重量比の好ましい範囲は1:0.01〜1:1である。この範囲を外れると、高温高湿下において白化現象を生じ、透明性が失われる恐れがあり、本発明の粘着性高分子ゲルをPDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に用いる場合には、問題となることがある。より好ましい範囲は1:0.1〜1:1である。
【0033】
上記組成物は、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)を含有することが好ましい。上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)は、本発明の粘着性高分子ゲルの骨格を形成する役割を有するものである。
上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)としては特に限定されないが、調液しやすい等の理由から炭素数が2〜10のアルコキシアルキル基を有することが好ましく、例えば、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;n−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−プロポキシメチル(メタ) アクリルアミド、n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ペンチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ヘキシルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−ヘプチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−オクチルオキシメチル(メタ)アクリルアミド、n−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、n−プロポキシエチル(メタ)アクリルアミド及びn−ブトキシエチル(メタ)アクリルアミド等のアルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
なかでも、自己架橋性を有するため粘着性高分子ゲルの強度を向上させることができることから、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミドが好適である。これらの単量体は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0034】
上記組成物における上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)の含有率としては特に限定されないが、好ましい下限は35重量%、好ましい上限は85重量%である。上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)の含有率が35重量%未満であると、粘着性高分子ゲルが柔らかくなりすぎて、破断しやすくなることがある。上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)の含有率が85重量%を超えると、粘着性高分子ゲルが硬くなりすぎ、柔軟性が得られなくなることがある。上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)の含有率のより好ましい下限は40重量%、より好ましい上限は80重量%である。
【0035】
本発明の粘着性高分子ゲルにおいては、粘着力の調整、上記アクリル系液状ポリマー(C)、ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)との相溶性の向上等を目的として、上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)以外の他の(メタ)アクリル系モノマーを適宜混合させて、上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)と共重合させてもよい。
【0036】
上記他の(メタ)アクリル系モノマーとしては特に限定されず、例えば、疎水性モノマー、イオン性モノマー、親水性及び親油性を有するモノマー(両親媒性モノマー)等が挙げられる。
【0037】
上記疎水性モノマーとしては特に限定されず、例えば、イソブチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0038】
上記イオン性モノマーとしては特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、アリルカルボン酸等の不飽和カルボン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸等のスルホン酸、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノアルキル(メタ)アクリレート、及び、これらの塩が挙げられる。
【0039】
また、上記両親媒性モノマーとしては特に限定されず、例えば、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0040】
なお、上記他の(メタ)アクリル系モノマーの含有率としては特に限定されないが、上記アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)の含有率に対して、重量比で50%以下であることが好ましい。
【0041】
上記組成物は、多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)を含有することが好ましい。上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)は、粘着性高分子ゲル中に架橋構造を形成させる役割を有するものである。
上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)としては特に限定されないが、分子内に重合性を有する炭素−炭素二重結合を2つ以上有するものであることが好ましく、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N’−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型等の多官能(メタ)アクリレート誘導体が挙げられる。
【0042】
上記組成物における上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)の含有率としては特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は5重量%である。上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)の含有率が0.01重量%未満であると、粘着性高分子ゲルに対して充分な強度を付与するだけの架橋構造を形成させることができず、粘着性高分子ゲルの強度が弱く、場合によっては形状を保てないこともある。上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)の含有率が5重量%を超えると、粘着性高分子ゲル中の架橋構造が多くなりすぎて柔軟性が得られなくなり、粘着性高分子ゲルが破断することがある。上記多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)の含有率のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は3重量%である。
【0043】
本発明の粘着性高分子ゲルを製造するための具体的な方法としては上述したように、例えば、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)、多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)、及び、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマー(C)を含有する組成物を用いる方法、更に重量平均分子量(Mw)が200〜5000のポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)を含有する組成物を用いる方法等が挙げられる。
ここで、高分子ゲルとは、高分子マトリックスと呼ばれる高分子骨格が、液状成分を内包する形態をとるものであり、本発明の粘着性高分子ゲルは、上記組成物を用いた方法からなる場合には、アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーと多官能(メタ)アクリル系モノマーとが反応してなる高分子マトリックスに、アクリル系液状ポリマー又はアクリル系液状ポリマーとポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルとが内包された形態となっていると考えられる。
【0044】
本発明の粘着性高分子ゲルの製造方法としては特に限定されず、例えば、上記組成物に対して、一般的なラジカル重合、レドックス重合、活性エネルギー線による重合等が挙げられる。
例えば、厚み又は深さが10mm以上の型枠に注入して重合させる場合には、レドックス重合や一般的なラジカル重合が好適であり、厚みが数mm〜数μmのシート又はフィルム状に成型する場合には活性エネルギー線による重合が好適である。
【0045】
活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線等の活性光又は電子線等を意味する。電子線を照射して架橋させる場合、光重合開始剤を必要としないが、紫外線等の活性光を照射して架橋させる場合には、光重合開始剤を存在させることが好ましい。本発明の粘着性高分子ゲルを作製する際に用いる活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
上記活性エネルギー線源としては、例えば、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、電子線加速装置、放射性元素等の線源が挙げられる。
【0046】
活性光を照射して架橋させる場合に用いられる光重合開始剤としては、紫外線や可視光線で開裂し、ラジカルを発生するものであれば特に限定されず、例えば、α−ヒドロキシケトン、α−アミノケトン、ベンジルメチルケタール、ビスアシルフォスフィンオキサイド、メタロセン等が挙げられる。
【0047】
上記光重合開始剤の具体例としては特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(製品名:DAROCUR1173、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(製品名:IRUGACURE184、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(製品名:IRUGACURE2959、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−メチル−1−[(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(製品名:IRUGACURE907、チバスペシャリティーケミカルズ社製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン(製品名:IRUGACURE369、チバスペシャリティーケミカルズ社製)等が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
【0048】
上記組成物における上記光重合開始剤の含有率としては特に限定されないが、好ましい下限は0.01重量%、好ましい上限は1重量%である。上記光重合開始剤の含有率が0.01重量%未満であると、重合反応が充分に行われず、未反応モノマーが多数残存することがある。上記光重合開始剤の含有率が1重量%を超えると、未反応の光重合開始剤により、変色(黄変)や臭気が生じることがある。
【0049】
さらに、上記組成物は、必要に応じて各種添加剤を含有してもよい。上記添加剤としては特に限定されず、例えば、粘着付与剤、防腐剤、殺菌剤、防黴剤、防錆剤、酸化防止剤、安定剤、pH調整剤、香料、界面活性剤、着色剤、染料、電解質等が挙げられる。
【0050】
本発明の粘着性高分子ゲルは、以下に記載する透明性(全光線透過率、ヘイズ値)を有するものであることが好ましい。
全光線透過率:90%以上
ヘイズ値:1.0%以下
なお、全光線透過率及びヘイズ値は、ヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定することができ、測定条件は、全光線透過率についてはJIS K7361に準拠し、ヘイズ値についてはJIS K7136に準拠したものとする。
【0051】
また、本発明の粘着性高分子ゲルを後述するようなPDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に用いる場合には、上記組成物を用い、特に上記アクリル系液状ポリマー(C)の重量平均分子量を500〜5000とすることにより、かつ、上記アクリル系液状ポリマー(C)と上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)とを併用する場合には、上記アクリル系液状ポリマー(C)と上記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)との重量比を1:0.01〜1:1とすることにより、本発明の粘着性高分子ゲルは、以下の透明維持性を有するものとすることができる。
<透明維持性>
60℃、90%RH雰囲気下に48時間静置し、その後、粘着性高分子ゲルの全光線透過率とヘイズをヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定した際に、以下に記載する透明性(全光線透過率、ヘイズ値)の範囲内であるものとする。
全光線透過率:90%以上
ヘイズ値:3.0%以下
【0052】
また、本発明の粘着性高分子ゲルは、0.1〜20Nの粘着力を有することが好ましい。特に、半導体等の仮固定用途等、高い粘着力を必要としない用途について本発明の粘着性高分子ゲルを用いる場合には、0.1〜5Nの粘着力を有することが好ましい。
ここで、粘着力はJIS Z0237(2009)に準拠した方法で測定されるものとする。
【0053】
本発明の粘着性高分子ゲルは、通常、液状のモノマー配合液を重合してゲル化させるため、用途に合わせて適宜成型できる。例えば、粘着性ゲルシートとして使用する場合には、厚さ0.01mm〜2.0mmのシート状に成型されていることが好ましい。特に、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に使用する場合には、薄型化が要望されており、厚さ0.05mm〜0.3mm程度が好ましい。
【0054】
本発明の粘着性高分子ゲルの両面には、表面を保護するためのセパレーターを設けることが好ましい。上記セパレーターのうち一方は支持体であってもよく、もう一方は、ベースフィルムとして最終製品まで付属していることが好ましい。この場合のセパレーターは、末端ユーザーが使用する直前に剥離させることができる。
なお、上記支持体とは、粘着性高分子ゲルを補強し、テープの形態を保持させるための樹脂フィルム、不織布、織布等を意味する。上記樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。
通常、粘着性高分子ゲルは支持体にコートされ、いわゆる、粘着性ゲルシートとして使用される。
粘着性高分子ゲルと樹脂フィルムとを用いてなる粘着性ゲルシートもまた、本発明の1つである。
なお、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途に使用する場合は、支持体なしの形態で使用される場合もある。
【0055】
上記セパレーターの材質としては、フィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に限定されず、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン等からなる樹脂フィルム;紙、樹脂フィルムをラミネートした紙等が挙げられる。
特に、ベースフィルムとして使用する場合は、二軸延伸したPETフィルムや、OPP、ポリオレフィンをラミネートした紙が好適に用いられる。また、光学フィルタをベースフィルムとして使用してもよい。
【0056】
セパレーターのうち、少なくとも本発明の粘着性高分子ゲルと接する面には離型処理がなされていることが好ましい。また、必要に応じてセパレーターの両面が離型処理されていてもよい。両面に離型処理する場合には、表裏の剥離強度に差をつけてもよい。
離型処理の方法としては特に限定されず、例えば、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル基含有カルバメート等の離型剤のコーティング等が挙げられ、特に、熱又は紫外線で架橋、硬化反応させる焼き付け型のシリコーンコーティングが好ましい。
【0057】
上記セパレーターのうち、上記ベースフィルムの逆の面に配置されるトップフィルムは、粘着性高分子ゲルの製品形態に応じて最適な材料が選択される。例えば、粘着性高分子ゲルを短冊で取り扱う場合は、前記の通りフィルム状に成型可能な樹脂又は紙であれば特に制限されないが、ベースフィルムと同様に離型処理されていることが好ましい。
【0058】
本発明の粘着性高分子ゲル及び粘着性ゲルシートの製造方法としては特に限定されず、例えば、以下の方法により行うことができる。
【0059】
(1)組成物(モノマー配合液)の作製
アルコキシアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー(A)、多官能(メタ)アクリル系モノマー(B)、及び、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマー(C)、重合開始剤を混合、攪拌して溶解する。次に、必要に応じて添加剤等を添加して溶解するまで攪拌して組成物(モノマー配合液)を作製する。
【0060】
(2)重合反応と成型
得られた組成物(モノマー配合液)を任意の形状の型枠に注入し、次いで重合させることで粘着性高分子ゲルを得ることができる。また、2枚の樹脂フィルム(ベースフィルム、トップフィルム)の間に組成物(モノマー配合液)を流し込み、一定の厚みに保持した状態で重合させることで厚み0.5〜2.0mm程度の粘着性高分子ゲル(粘着性ゲルシート)を得ることができる。更に、1枚の樹脂フィルム(ベースフィルム又は支持体)上にモノマー配合液を薄層コーティングし、重合させることで厚み0.01〜0.5mm程度の粘着性高分子ゲル(粘着性ゲルシート)を得ることができる。
本発明の粘着性高分子ゲル及び粘着性ゲルシートの製造方法においては、特に有機溶剤等を使用することなく製造することが可能であるため、環境面、生産工程の面においても好ましい。
【0061】
本発明の粘着性高分子ゲルは、特定の範囲の動的貯蔵弾性率G’及び引張り強度を有し、かつ、剥離試験の結果、異物残りが一定個以下である粘着性高分子ゲルであるため、該粘着性高分子ゲルをガラス板等の被着体に粘着し、貼り直し又は剥離を行った場合であっても弾性強度が高いためにリワーク性がよく、糊残りが少ないために、被着体への汚染が少ないという特性を有する。従って、本発明の粘着性高分子ゲルは、例えば、PDP、液晶ディスプレイ、タッチパネル等の光学用途;精密機器の搬送用途、半導体等の仮固定用途等として好適である。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
アルコキシアルキル基を有するアクリル系モノマーとしてイソブトキシメチルアクリルアミド(MRCユニテック社製、商品名:IBMA)80重量部、多官能の(メタ)アクリル系モノマーとして1,9−ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、商品名:ライトアクリレート1,9−NDA)0.2重量部、分子量が1700である無官能のアクリル系液状ポリマー(東亞合成社製、商品名:Arufon UP1010、Tg=−31℃)を19.3重量部、光重合開始剤として1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−プロパン−1−オン(チバスペシャリティーケミカルズ社製、商品名:IRUGACURE2959(略称IR2959))0.5重量部を混合、撹拌させることで、微黄色透明のモノマー配合液を得た。
次に、得られたモノマー配合液を、シリコーンコーティングされたPETフィルム上に滴下した。その上から同じくシリコーンコーティングされたPETフィルムを被せることで、液が均一に押し広げられ、厚さが0.3mmになる様に固定した。これにメタルハライドランプを使用してエネルギー量7000mJ/cm2の紫外線照射することにより厚さ0.3mmの粘着性高分子ゲルを得た。
【0064】
(実施例2〜実施例18、比較例1〜比較例8)
表1〜3に示す組成としたこと以外は、実施例1と同様にして粘着性高分子ゲルを作製した。なお、比較例7については、固形化し調液することができず、粘着性高分子ゲルを作製することができなかった。
なお、表1〜3に示す各組成物は以下のとおりである。
NBMA(N−n−ブトキシメチルアクリルアミド(MRCユニテック社製))
UP1110(無官能アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UP1110、Mw=2500、Tg=−64℃)
UP1170(無官能アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UP1170、Mw=8000、Tg=−57℃)
UH2032(水酸基含有アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UH2032、Mw=2000、Tg=−60℃、OHV=110mgKOH/g)
UH2000(水酸基含有アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UH2000、Mw=11000、Tg=−55℃、OHV=20mgKOH/g)
UG4000(エポキシ基含有アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UG4000、Mw=3000、Tg=−61℃、エポキシ価=0.7meq/g)
US6110(アルコキシシリル基含有アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon US6110、Mw=3200、Tg=−57℃、Si基数=0.9個/Mn)
UG4035(エポキシ基含有アクリル系フレーク状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UG4035、Mw=11000、Tg=52℃、エポキシ価=1.8meq/g)
UHE2012(水酸基含有アクリル系液状ポリマー、東亞合成社製、商品名:Arufon UHE2012、Mw=5800、Tg=20℃、OHV=67mgKOH/g)
SC−P1600(ポリオキシプロピレン(ポリ)グリセリルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名:SC−P1600、Mw=1600))
SC−P400(ポリオキシプロピレン(ポリ)グリセリルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名:SC−P400、Mw=400))
SC−E750(ポリオキシエチレン(ポリ)グリセリルエーテル(阪本薬品工業社製、商品名:SC−E750、Mw=750))
D−2000(ポリプロピレングリコール(日油社製、商品名:ユニオールD−2000、Mw=2000))
MO−150(オレイン酸エステル(阪本薬品工業社製、商品名:MO−150))
【0065】
(評価方法)
実施例及び比較例で得られた粘着性高分子ゲルについて、以下の測定を行った。結果を表1〜3に示す。
【0066】
(1)透明性(全光線透過率、ヘイズ)
全光線透過率及びヘイズ値は、ヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定し、測定条件は、全光線透過率についてはJIS K7361に準拠し、ヘイズ値についてはJIS K7136に準拠したものとする。
【0067】
(2)動的貯蔵弾性率G’
得られた粘着性高分子ゲルを8mmΦに打ち抜き、厚みが1mmとなるように積層したものを試験片とし、動的粘弾性装置(Anton Paar社製、PHYSICA MCR301)を用いて周波数1Hzにて−70℃〜200℃の温度域で温度分散測定を実施し、25℃での数値を読み取った。なお、比較例2、3、4、8については、おそらくG’が大きすぎるためと考えられるが、脆すぎて試験片を作製することができなかったため、本評価を含めて以下の評価を行っていない。また、比較例5については、測定値が安定しなかったため、測定不可とした。
【0068】
(3)引張り強度
JIS K6251に準拠し、テンシロン万能試験機(オリエンテック社製)を用いて温度23℃、湿度54%RH、引張り速度500mm/分にて引張り試験を行い、粘着性高分子ゲルが破断した際の応力を引張り強度とした。
【0069】
(4)異物測定
得られた粘着性高分子ゲルを長さ100mm、幅20mm、厚み0.3mmに加工し、アクリル板に付着させた後、JIS Z0237(2009)に準拠した方法でアクリル板に圧着させた。その後、テクスチャーアナライザー(stable Mycro Systems社製、TA−XTplus)により速度300mm/分で粘着性高分子ゲルをアクリル板から90°方向に剥離させ、粘着性高分子ゲルが付着していたアクリル板の表面のうち2mm×2mmの範囲の任意の箇所についてデジタルマイクロスコープ(KEYENCE社製、VHX−1000)により100倍に拡大して異物の数を算出した。
ここで、異物の数については、デジタルマイクロスコープにて100倍で拡大した任意の2mm×2mmの測定範囲について画像処理にて100分割(1マス200μm×200μm)し、異物で覆われているマス目の数を異物の数としてカウントした。
【0070】
(5)透明維持性(高温高湿環境下放置後の透明性)
60℃、90%RH雰囲気下に48時間静置し、その後、粘着性高分子ゲルの全光線透過率とヘイズをヘーズメーターHM−150型(村上色彩技術研究所社製)にて測定する。なお、測定条件は、全光線透過率についてはJIS K7361に準拠し、ヘイズ値についてはJIS K7136に準拠したものとする。
【0071】
(6)耐発泡剥がれ性
得られた粘着性高分子ゲルを、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)にラミネートした後、これを、厚さ1mmのポリカーボネート板(PC板)に貼り付けて固定して、PETフィルム/粘着性高分子ゲル/PC板の層構成を有するサンプル片を作製した。
このサンプル片について、温度23℃、湿度65%RHにて5時間静置させたものをサンプル片1、85℃のオーブン中に5時間投入した後のものをサンプル片2とし、サンプル片1、2について、目視により、接着界面(粘着性高分子ゲルとPC板との界面)に外観欠点となる気泡や浮き等がないかどうかを確認し、サンプル片1、サンプル片2ともに気泡や浮きがまったく見られなかったものを「◎」、サンプル片1のみ気泡や浮きがまったく見られなかったものを「○」、サンプル片1、サンプル片2ともに気泡や浮きが確認されたものを「×」として、評価する。なお、図2には、気泡や浮きがまったく見られなかったもの(実施例7のサンプル片2)の写真(a)及びその写真のトレース図(b)、図3には、気泡や浮きが確認されたもの(比較例5のサンプル片1)の写真(a)及びその写真のトレース図(b)を示した。
【0072】
【表1】

【表2】

【表3】

【0073】
実施例1〜実施例18で作製した粘着性高分子ゲルは、透明性に優れるとともに剥離時に被着体への汚染が少ない(リワーク性に優れる)ことが確認された。
また、重量平均分子量が200〜5000のポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテル(D)を用いることにより、高温高湿条件といった苛酷な環境下においても被着体に対する浮きや剥れの発生を生じないことが確認された(実施例7〜実施例13)。
また、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマー(C)について重量平均分子量(Mw)を5000以下とすることにより、高温高湿下においても透明維持性を有することが確認された(実施例1〜実施例16)。
【符号の説明】
【0074】
1:異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性を有する高分子ゲルであって、
周波数1Hzの温度分散で測定した、25℃における動的貯蔵弾性率G’が、1.0×105〜1.0×108Pa、かつ、該高分子ゲルを打ち抜いてなるダンベル1号試験片について、引張り強度が1MPa以上であり、
長さ100mm、幅20mm、厚み0.3mmに加工した該高分子ゲルからなる試験片をJIS Z0237(2009)に準拠した方法でアクリル板に貼り付け、その後、速度300mm/分で前記試験片を前記アクリル板から90°方向に剥離した後に、前記試験片が付着していたアクリル板の表面のうち2mm×2mmの範囲の任意の箇所について光学顕微鏡にて100倍で拡大して観測される異物の数が5個未満である
ことを特徴とする粘着性高分子ゲル。
【請求項2】
ガラス転移温度(Tg)が0℃未満のアクリル系液状ポリマーを含有する組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項3】
前記アクリル系液状ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が500〜20000であることを特徴とする請求項2に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項4】
前記アクリル系液状ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が1000〜5000であることを特徴とする請求項3に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項5】
前記組成物は、更に、重量平均分子量(Mw)が200〜5000のポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルを含有することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項6】
前記組成物における前記アクリル系液状ポリマー及び前記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルの合計含有率が10〜60重量%であり、かつ、前記アクリル系液状ポリマーと前記ポリオキシアルキレン(ポリ)グリセリルエーテルとの重量比が1:0.01〜1:1であることを特徴とする請求項5に記載の粘着性高分子ゲル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の粘着性高分子ゲルと樹脂フィルムとを用いてなることを特徴とする粘着性ゲルシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−193334(P2012−193334A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172135(P2011−172135)
【出願日】平成23年8月5日(2011.8.5)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】