説明

粘稠性物質の注出容器

【課題】 容器内に収容された高粘性を有する内容物を、複雑な構造をした注出ポンプや専用の特別な取出し具またはを使用しなくても、容器本体の上端部を押圧するだけで容易に注出できるようにした注出容器を、簡単な構造をして、低コストで提供できるようにする。
【解決手段】 円筒体の上端部に天板を設けた閉鎖状に形成して、下端部は開放状に形成した中空容器本体に、円筒状の嵌合筒体の先端部に押出し部材を設けた底部筒体を摺動可能に嵌合せしめて、空腔内に高粘性の内容物を注出可能に収容して注出容器を形成して、前記中空容器本体の上端部には吐出ノズルを設けて内容物を吐出可能に形成すると共に、下端部には前記底部筒体の外周面に設けられた係止段部に係合する係止突起を設けて係止可能に形成して、前記中空容器本体の天板部の押圧操作により前記押出し部材が高粘性の内容物を加圧して注出可能にした粘稠性物質の注出容器を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、各種の化粧用クリームや洗顔用のパック材、整髪料のポマード等の化粧用品、または、シャンプーやリンスその他の各種の洗剤等の高粘性を有する物質、あるいは、マヨネーズやケチャップ、ホワイトソース等のペースト状をした各種の調味料等の流動性物質を収容するのに適した容器、特に、これら各種の粘稠性物質を収容した容器から内容物を取り出すのに、道具を用いることなしに、また、手を汚すこともなしに容器内から注出可能にした注出容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
化粧用のクリームや整髪料のポマード等の高粘性を有する化粧用物質、あるいは、マヨネーズやホワイトソース等のペースト状をした各種の調味料等は、通常ガラス等の広口の容器に収容されていて、これらの内容物を取り出す際には、ネジ蓋その他の蓋体に回動等の操作を施して開いてから、内容物を指先に付着させて取り出すか、スプーン等の道具を用いて掬い出すかして使用するか、あるいは、軟質材からなるチューブ状その他の押圧変形が可能な中空容器に収容されているものを、前記容器の蓋を外してから胴部を圧迫、変形せしめて注出して使用するようにしたものが、従来は一般的であった。
【0003】
しかし、前者の広口容器に収容したものを、指先やスプーン等で取り出すものについては、指先についた汚れやスプーンに付着したものを処置しなくてはならなかったり、また、適量を取り出すのが面倒であったりする。
また、後者の軟質容器に収容したものについては、内容物の量が少なくなってくると、圧迫して内容物を注出するのが次第に困難になってくる。
そして、上記したいずれの容器に収容されたものは、使用するのに伴って内容物が空気に接触する面積が広くなって、内容物が酸化したり、腐敗してしたりする率が多くなり、変質するのを避けることが困難である。
【0004】
そこで、このような不便さを解消するものとして、広く使用されるようになったものに、上記したような高粘性を有する液状物を収容した中空容器の口頸部に往復動式の注出装置を装着しておいて、該注出装置の押圧ヘッドを指先により押し下げてシリンダーのピストンを往復動せしめることにより、容器内の内容物を加圧せしめて、注出装置のノズルから注出できるようにした各種の注出容器が広く知られている。
【0005】
ところで、このような注出装置を装着した注出容器は、内容物を注出するのに指先を汚したり、スプーン等を必要としないので非常に便利ではあるが、しかし、注出装置が多数の部品で構成されていて、やや複雑な構造をしていることから製作費を低減させるのが困難である。
従って、上記のような従来の注出装置を装着した注出容器は、製造コストがやや高くならざるを得ないという難点があことから、従来の注出装置に比べて、構造をもう少し簡単にした低コストの注出装置を用いた廉価な注出容器が出現するのが望まれる。
【0006】
そのような構造をした注出装置が用いられた廉価な注出容器としては、実開昭53−88428号公報に見るように、内容物を収容した円筒状の容器本体内に、蓋部を貫通する押圧部と吐出管を立設せしめたピストンを上下動可能に嵌着して、前記押圧部を押圧してピストンを押し下げることにより内容物を吐出管を通して注出可能にした容器、また、実開昭61−175165号公報に見るように、内容物を収容可能な蓋状をした上部円筒体内にピントンの役をする下部円筒体を摺動自在に嵌合して、前記蓋状の上部円筒体の天板部に押し出し可能な吐出口を立設、開口しておいて、前記ピストン状の下部円筒体を押圧、進入させることにより吐出口より内容物を注出可能にした容器等が知られている。
【0007】
しかし、前者の考案は、蓋部を貫通した吐出管のノズル部を保護する保護体や吐出管を作動不能に固定するストッパー等が設けられておらず、また、後者の考案は、吐出口の開口部をネジ蓋で密閉するので不用意に吐出することはないが、蓋部を捻じって開口しなければならないので、その開閉が面倒であり、また、ピストンの移動を固定するストッパーが設けられていないので、これらの注出容器は、押圧部やピストンに何らかの圧力が加えられると、不用意に内容物が押し出される恐れがある。
【0008】
そこで、出願人は、これらの問題点を改良して、内容物を収容する円筒状の容器本体の上端部内面に中蓋を押下げ可能に嵌合すると共に、底壁に回動自在なノズルを有する吐出管を立設、保持して、前記中蓋を押圧して注出可能にした容器本体の上端に開閉蓋を設けて、前記中蓋とノズルを保護するようにして、不用意に内容物が押し出されないように構成した注出容器を、実開平5−19172号として既に提案している。
【0009】
上記の考案は、図3に示すように、高粘性の内容物を収容する円筒状をした容器本体21の底部21aに、内容物を注出する吐出管23を立設するための係合支持棒21bを設けて、また、容器本体の円筒状周壁の上端部21cには吐出管23を突出せしめて保持する保持板24と、吐出管を挿通する挿通孔を有して容器本体の筒状内周壁面に密接して摺動自在に嵌合した中蓋25とを設けて、前記保持板24の上方に突出して水平に回動自在となしたノズル26が吐出管23の先端部に設けられている。
そして、前記ノズル26を保護するように収納する頂壁部を有する蓋体22が容器本体21の上端部に回動軸27を介して開閉可能に設けられていて、前記蓋体を開いた状態にして中蓋25部分を押圧することにより高粘性の内容物がノズル26の先端開口から注出されるように構成した注出容器20である。
【0010】
上記の考案は、中蓋25を押下げることにより容器本体21内の高粘性の内容物を吐出管23を通してノズル26から容易に注出することができて、その構造も従来のものに比べて簡単であり、吐出管先端のノズル26も蓋体22で保護されており、また、手や器具を汚したりしないで済むもので便利ある。
しかし、上記の考案は、吐出用のノズル26は保護されていて安全ではあるが、前記吐出管23を保持するのに、底部に係合支持棒21bを設けたり、貫通孔を有する保持板24を設けて固定するのでやや複雑になり、また、押圧して内容物を吐出させる中蓋25が不使用時に移動しないようにするストッパーが設けられていないので、不用意に内容物が注出する恐れが解消されておらず、まだ改善の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本願発明は、専用の特別な取出し具または複雑な構造をした注出ポンプ等を用いなくても、中空容器内に収容された高粘性を有する内容物を注出可能にした注出容器を提供するのに、上記した注出容器を更に改良して、高粘性の内容物を収容する注出容器本体を、円筒状をした中空容器本体と該中空容器本体内に嵌合する嵌合円筒体とから形成される簡単な構造となして、前記中空容器本体の上端部を押圧して押下げることにより、嵌合円筒体により内容物が押圧されて中空容器本体に設けた吐出口から注出されるように構成して、容器を構成する部品の点数が少なくて、簡単な構造の注出手段を有する注出容器に形成することにより、安価に製造することができて、また、不用意に内容物が注出することがなくて、安全で、使い勝手の良い注出容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、上記したような目的を達成するために、上端部が閉鎖状をして、下端部が開放した円筒体からなる中空容器本体と、前記中空容器本体内に密着して摺動自在に嵌合する円筒状またはプランジャー状をした底部筒体とから注出容器本体を形成して、前記容器本体の空腔内に高粘性を有する内容物を収容可能に構成する。
そして、前記底部筒体の上端部には、前記中空容器本体の円筒内周面に摺動可能に密着するピストンを設けて、空腔内に収容された高粘性の内容物を加圧可能に形成して、また、前記中空容器本体の上端部には、加圧された内容物が吐出する注出口を設けて吐出可能に形成すると共に、前記中空容器本体の下端部には、不用意に押圧降下するのを阻止するためのストッパーを設けて注出容器を形成して、前記中空容器本体の上端部の押圧可動部を押圧して、該容器本体内に収容された高粘性を有する内容物を注出可能に構成する。
【発明の効果】
【0013】
本願の発明は、中空の注出容器内に収容された高粘性を有する内容物を、中空容器本体の上端部の天板押圧部を押圧して、底部筒体により内容物を直接加圧せしめて吐出口から注出するようにしたので、専用の特別な取出し具を用いることなしに、また、指先等を汚すようなこともなしに、容易に内容物を取出すことができる。
本願発明は、注出容器を構成する部品の数をできるだけ少なくしたので、容器の構造が非常に簡単なものとなり、注出容器を安いコストで製造することができるようになって、また、中空容器本体が降下するのを阻止するストッパーを設けて、不使用時には降下できないようにしたので、不用意に内容物が注出する恐れはなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
筒状に形成した円筒体4の一方の上端部に、内容物を吐出可能にする開閉蓋6a付きの吐出ノズル6を有すると共に押圧可能な頂壁部となる天板5を設けて閉鎖状に形成して、他方の下端部にストッパーとなる環状係合部材7を設けて開放状に形成した円筒体からなる注出容器本体1の上半分を構成する中空容器本体2を形成する。
また、前記中空容器本体2内に嵌合して摺動する円筒状またはプランジャー状をした嵌合筒体8を形成すると共に、上記環状係合部材7からなるストッパーを係止する係止段部8aを形成して、前記嵌合筒体の先端部に内容物を押圧して押出す押圧部9aと中空容器本体2の内周面に密着して摺動するピストン9bとを有するやや軟質の押出し部材9を設けて、注出容器本体1の下半分を構成する底部筒体3を形成する。
【0015】
上記のように形成された中空容器本体2に対して、前記底部筒体3の先端部の押圧部とピストンとからなる押出し部材9を前記中空容器本体2の内周面に密着するように挿入せしめて底部を塞いだ状態にして、中空容器本体2の空腔内に高粘性を有する内容物を収容してから天板5を嵌着せしめて密閉して、高粘性の内容物を注出可能にした本願発明の注出容器1を構成する。
【0016】
上記のように構成された注出容器1は、使用するに際して、注出容器を適切な平坦状をした台面上に載置して、中空容器本体2の上部に設けられた吐出ノズル6の開閉蓋6aを開いた状態にしてから、中空容器本体2の天板5を指先等により押圧すれば、中空容器本体2部分が降下するのに伴って、前記底部筒体3の押出し部材9が中空容器本体2内に進入して空腔内の高粘性の内容物を押し上げるので、内容物は加圧されて吐出ノズル6の先端開口部から吐出して、注出容器1から注出されることになる。
【実施例】
【0017】
本願の発明について、最適な一つの実施例に基づいて、図面を参照しながら、以下に詳細に説明をする。
本願発明は、図1に示すように、円筒状の上端部が天板5で閉鎖されて、下端部が底部筒体3を嵌合可能に開放された円筒体4の上端部分に吐出ノズル6を設けて中空容器本体2を形成すると共に、前記中空容器本体2内に嵌合可能な円筒状またはプランジャー状をした嵌合筒体8の先端部にピストン9bを有する押出し部材9を設けた底部筒体3を摺動可能に挿通せしめて、中空容器本体の空腔部に高粘性を有する内容物を収容可能にした注出容器1に形成して、該注出容器内の内容物を押圧して注出可能にした注出容器に構成したものである。
【0018】
上記した中空容器本体2は、熱可塑性合成樹脂を射出成形して円筒体4に成形して、該円筒体の上端部に開閉蓋6aを有する吐出ノズル6を設けた天板5を螺着または嵌着せしめて密閉可能に形成すると共に、前記円筒体4の下端部に係止突起7aを有する環状係合部材7を螺着または嵌着せしめて、前記底部筒体3の嵌合筒体8に設けた係止段部8aに係止可能にするストッパーとなして、図2に見るように、中空容器本体2の内部に前記底部筒体3を摺動自在に装着可能にすると共に、高粘性を有する内容物を収容可能に形成する。
【0019】
また、上記した底部筒体3は、熱可塑性合成樹脂を射出成形して、前記中空容器本体2内に摺動自在に挿通可能な円筒状またはプランジャー状をした嵌合筒体8に成形すると同時に、前記嵌合筒体の下端部をテーブル等の平坦面に安定した状態に載置可能なように形成して、また、前記嵌合筒体8の上端部を内容物を押上げる押出し部材9を螺着または嵌着可能に形成すると共に、該嵌合筒体の側面に前記環状係合部材7を係止する周方向の係止段部8aと環状係合部材7を案内する案内溝8bとを形成する。
【0020】
続いて、上記のように形成した嵌合筒体8の上端部に、内容物を押圧する押圧部(ピストンヘッド)9aと中空容器本体2の内周面に密着して摺動するピストン(摺動ピストン)9bからなる円筒状をした押出し部材(ピストン部材)9を嵌着せしめて、前記中空容器本体2内に摺動可能に装着して高粘性の内容物を押圧する底部筒体3に形成する。
【0021】
そして、上記のようにして高粘性の内容物を収容可能に形成される注出容器1は、先端部に押出し部材9を設けた前記底部筒体3を前記中空容器本体2内に挿通して、前記ピストン9bが中空容器本体の内周面に密着して摺動するように装着して、中空容器本体の下端部が密閉された状態にしてから、空腔内に高粘性を有する内容物を所定量だけ充填して、ノズル6の開閉蓋6aを閉じた状態にした前記天板5を中空容器本体の上端部に嵌着すれば、内容物を注出可能にした注出容器が構成される。
尚、注出容器の空腔内に高粘性を有する内容物を充填する際に、前記中空容器本体2の上端部に吐出ノズル6の開閉蓋6aを閉じた状態の天板5を先に嵌着して、内容物を充填してから押出し部材9を摺動可能にして前記底部筒体3を装着することも可能である。
【0022】
上記のように構成された注出容器1から内容物を注出して使用するには、中空容器本体2の部分を回動せしめると、前記環状係合部材7の内面に突設した係止突起7aが前記嵌合筒体8の係止段部8aから外れるので、環状係合部材7の係止突起7aを案内溝8bに係合させて下動可能にしてから、前記注出容器1をテーブルまたは鏡等の置き台や棚等の適当な平坦面の上に載置した状態にして、注出容器1の中空容器本体2部分に設けられた吐出ノズル6の開口部を塞いでいた開閉蓋6aを開いた状態にしてから、前記中空容器本体2の天板5を指先等で押圧することにより円筒体4の部分が下方へ押下げられる。
【0023】
このようにして前記中空容器本体2の頂壁が押圧されると、中空容器本体2の円筒体4の部分が降下するのに伴って、前記底部筒体3の押出し部材9が中空容器本体2内へ次第に進入して行くので、空腔内の高粘性の内容物は押出し部材9により押圧されて加圧状態になる。
そして、押出し部材9により押圧された内容物は加圧されて上方へ押し上げられるので、内容物は前記吐出ノズル6の先端開口部から順次吐出されることから、前記円筒体4が押下げられる高さを加減すれば、注出容器1から内容物を必要なだけ簡単に注出することができる。
【0024】
上記したように、本願発明は、高粘性を有する内容物を注出可能に収容する中空容器を、熱可塑性合成樹脂の射出成形により成形した円筒体4の上端部に吐出ノズル6を有する天板5を設けた中空容器本体2に、前記中空容器本体内に嵌合する嵌合筒体8の上端部に前記容器本体の内周面に密着するピストン9bを有する押出し部材9を設けた底部筒体3を摺動可能に装着して構成して、前記中空容器本体上部の天板5を押圧して押下げることにより、前記底部筒体の押出し部材9により内容物が押上げられて吐出ノズル6の吐出口から注出するようにした注出容器1に形成したものである。
【0025】
従って、本願発明の注出容器の構造は非常に簡単であるが、従来のように専用の特別な取出し用具を必要としないで、また、指先等を汚すようなこともなしに、内容物を容易に取出すことができる。
そして、本願の発明は、注出容器を構成する部品の数をできるだけ少なくして、容器の構造を簡単にしたことから、従来の注出容器に比べて低コストで製造することができて、また、ストッパー機能を備えさせたことにより、何らかの要因で容器本体部が不用意に押下げられようとしても、それを阻止することができるので、不使用時に内容物が注出する恐れがない。
【0026】
尚、上記した実施例に於いては、中空容器本体2を、筒状に成形した円筒体4の上端部に吐出ノズル6を設けた天板5を螺着または嵌着して形成したものを用いたが、円筒体4の上端部に吐出ノズル6を設けた天板5を一体に成形したもの、あるいは、天板5と吐出ノズル6とを別体に成形したものを用いることは可能であり、更に、円筒体4の下端部に環状係合部材7を一体に形成したものを用いることも可能である。
同様に、底部筒体3についても、前記中空容器本体2内に挿入される嵌合筒体8の先端に、内容物に接する押圧部9aと容器本体の内面に密着するピストン9bをからなる押出し部材9を嵌着したものでなくて、嵌合筒体8の先端に押圧部9aとピストン9bとを一体にして成形したものを用いることも可能である。
【0027】
また、上記した注出容器に於いて、容器本体部分が不用意に押下げられるのを防止する環状係合部材7の係止突起7aが係止される係止段部8aを嵌合筒体8の上端部にだけに設けずに、嵌合筒体8の外周壁面の中程に係止突起7aが係合する凹状の周溝8cを設けておけば、内容物が注出、使用されて円筒体4の下端部の環状係合部材7部分が前記周溝8c部分まで降下したところで、容器本体2を周方向に回動せしめることにより、環状係合部材7の係止突起7aを前記周溝8cに係合させて容器本体2を係止することも可能になる。
【0028】
更に、内容物が注出される注出量を知り得るようにするために、嵌合筒体8の外周壁面に設ける凹状の周溝を注出量に合わせて多数個を設けておくとことにより、前記周溝を目盛り代わりにして注出することができるので、必要とする量をほぼ正確に注出することができる。
そして、このように嵌合筒体8の外周壁面に多数の凹状周溝を設ける場合には、凹状周溝8cを嵌合筒体8の外周壁面に周設するのでなくて、横方向の凹状周溝8cを短くして、案内溝8bと凹状周溝8cとが階段状になるように形成すると、円筒体4の下端部の係止突起7aが階段部分の当たって止まるので、より正確に注出することができるようになる。
【0029】
上記したように、環状係合部材7の係止突起7aを係止する係止部を、嵌合筒体8の上端部の係止段部8aだけでなく、嵌合筒体8の外周壁面に幾つか設けた場合には、使用途中で円筒体4を凹状周溝8cがある位置で周方向に回動させて係止することができて、また、再度使用する場合には、円筒体4を反対方向に回動せしめて、環状係合部材7の係止突起7aを案内溝8bに合わせると、容器本体2が押圧可能となって注出することができる。
そして、このようにして注出容器の中空容器本体2部分を底部筒体の嵌合筒体8の中程に係止して降下不能に固定しておくことにより、不使用時に内容物が注出することがないばかりか、容器内に残存する空気が少ないので、使いかけの内容物が酸化して変質するのをできるだけ抑えることが可能になる。
【0030】
以上、説明したように本願発明は、高粘性の内容物を注出可能に収容した注出容器において、従来のようなポンプ式の注出装置や特別な取出し器具等を用いることなしに、注出容器の容器本体の頂壁部分を押圧するだけで、高粘性の内容物を極めて簡単に注出することができて、また、注出容器を構成する部品の数を極力少ないものとしたので、容器の構造も簡単になり、その組立も容易になって、製造コストを低く抑えることも可能になった。
そして、中空容器本体の係止突起と底部筒体の係止段部とからなる内容物の注出を阻止するストッパー機能を備えたことにより、不使用時に内容物が不用意に注出するようなこともなくすことができた。
【産業上の利用可能性】
【0031】
上記のような構成をした本願発明の注出容器は、特別な取出し器具や費用がかかる注出装置を用いなくても、手先を汚すことなしに、容器内に収容した高粘性のペースト状の内容物を簡単に注出して使用することができるので、従来から広口の容器に収容して用いられてきた化粧用クリームや洗顔用パック材、整髪用ポマード等の化粧用品の収容容器、マヨネーズやケチャップ、ホワイトソース、その他の食品の収容容器、あるいは、シャンプーやリンス、その他の衛生用品の収容容器、接着糊や靴墨等の皮革保護材、グリース等の潤滑材、その他の高粘稠物の収容容器として広く使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の注出容器を示す縦方向の半断面図(a)とそのX−X断面図(b)である。
【図2】図1に示す本願発明の注出容器の注出状態を示す縦断面図(a)とそのY−Y断面図(b)である。
【図3】本願発明の先行例の注出容器を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1. 注出容器
2. 中空容器本体
3. 底部筒体
4. 円筒体
5. 天板
6. ノズル
7. 係止突起
8. 嵌合筒体
9. 押出し部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒体の上端部に天板を設けて閉鎖状に形成されると共に、下端部は開放状に形成された中空容器本体に、前記中空容器本体に嵌合する円筒状の嵌合筒体の先端部に押出し部材を設けて摺動可能に形成した底部筒体を嵌合せしめて注出容器本体を形成して、前記注出容器本体の空腔内に高粘性の内容物を収容して注出可能に構成した注出容器であって、
前記中空容器本体の上端部には吐出ノズルを設けて内容物を吐出可能に形成すると共に、下端部には前記底部筒体の外周面に設けられた係止段部に係合する係止突起を設けて係止可能に形成して、
前記中空容器本体の天板部の押圧操作により前記押出し部材が高粘性の内容物を加圧して注出可能に形成してなることを特徴とする粘稠性物質の注出容器。
【請求項2】
前記係止突起は、前記底部筒体の外周面に設けた係止段部に係合する係止突起を、前記中空容器本体の下端部に設けた環状係合部材の内面に突設せしめて、前記係止段部に係止可能に形成されてなることを特徴とする請求項1に記載する粘稠性物質の注出容器。
【請求項3】
前記底部筒体は、前記中空容器本体に嵌合する嵌合筒体の先端部に押出し部材が摺動可能に形成されて、また、前記嵌合筒体上端部には前記中空容器本体の下端部に設けられた係止突起を係止する係止段部が形成されると共に、該嵌合筒体側面には縦方向に前記係止突起を係合して案内する案内溝が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載する粘稠性物質の注出容器。
【請求項4】
前記押出し部材は、高粘性の内容物を加圧する押圧部とその外周部に設けられて前記中空容器本体の内周面に密着して摺動する摺動ピストンからなることを特徴とする請求項3に記載する粘稠性物質の注出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−124006(P2006−124006A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−317341(P2004−317341)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】