説明

粘膜の疾患および障害の予防および処置のための液体製剤

【課題】粘膜の潰瘍性、炎症性、および/またはびらん性の障害、特に粘膜炎の予防および処置のために有用である、安定で粘性で粘膜付着性の水性組成物の提供。
【解決手段】粘膜表面上での粘膜付着剤の滞流時間を増大させるのに十分な粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲルであって、該ゲルが、粘膜を保護するために有用であり、症状の軽減を提供し、かつ化学療法または放射線療法によって誘導される紅斑および潰瘍形成を含む粘膜炎の徴候および症状の発生を遅延またはその重篤度を減少させる、粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、安定で粘性で粘膜付着性の液体製剤および粘膜付着性のゲル製剤の製造のための組成物および方法に関し、かつ、粘膜皮膚表面(特に口腔)をコーティングして、潰瘍性、炎症性、および/またはびらん性のもの(特に化学療法および/または放射線療法によって誘導される粘膜炎)を含む粘膜の疾患および障害を予防および/または処置するための、これらの組成物の使用に関する。液体剤形は、広範囲の粘膜表面をコーティングするのに十分な可動性を有するが、また同様に、粘膜表面上での長期保持を提供するための粘膜付着性および粘性を有する。液体組成物は、薬学的に活性な既知の化合物を伴うことなく使用されうる。粘膜の疾患および障害の局所的処置におけるさらなる恩典を提供するために、一つまたは複数の薬学的に活性な化合物を、製剤中に含めることができる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
粘膜は、口腔、鼻腔、消化管および気道、膣、ならびに膀胱などのいくつかの体腔の表面上に保護層を提供する。これらの膜内の細胞またはこれらの膜に隣接した腺は、主に水、脂質、無機塩、およびムチン糖タンパク質からなる、粘液、液体、またはゲルを分泌するが、これらは、下にある(underlying)組織への有害な物質の通過を阻害するために防護壁を形成するのに役立つ。激痛、刺激、紅斑および/または潰瘍形成をもたらしうる、これらの粘膜表面の疾患および障害がいくつか存在する。口腔におけるこのような疾患の例としては、アフタ性潰瘍、水疱性類天疱瘡、口腔扁平苔癬、および口腔粘膜接触皮膚炎が挙げられる。多くの他の潰瘍性粘膜皮膚疾患が知られている。化学療法および放射線療法などの特定の治療における有害な副作用をもたらす、粘膜表面の痛みを伴う(painful)潰瘍性障害も存在する。粘膜炎は、癌、エイズを含む多くの状態に対する治療を受けている患者および骨髄移植療法中の患者の口腔に影響を与える、有害な副作用である。
【0003】
口腔粘膜炎の概要
口腔粘膜炎は、化学療法または放射線療法を受けている患者における重大な問題である。癌治療における口腔粘膜炎の推定量は、標準的な化学療法を受けている患者の40%から、骨髄移植患者の76%までにわたる。頭頚部に放射線療法を受ける患者の実質的に全員が、口腔合併症を発病する。粘膜炎は単に痛みを伴うだけでなく、適切な栄養摂取も制限し、かつ、治療を続けようという患者の意欲も減少させる可能性がある。広範な潰瘍形成を伴うより重篤な粘膜炎では、非経口栄養および麻酔剤を用いる、費用のかさむ入院を必要とする場合がある。粘膜炎は、生活の質を減弱させ、かつ、深刻な臨床的合併症をもたらしうる。健常な口腔粘膜は、微生物を取り除くようはたらき、かつ、上皮への多くの化合物の浸透を制限する化学的障壁を提供する。傷ついた粘膜表面は、二次感染のリスクを増大させ、かつ、全身感染の病巣であることがわかる場合さえある。粘膜炎によって、引き続く化学療法サイクルにおいて用量を減らす必要性を、または、放射線療法を遅延させる必要性が生じる場合があり、これは最終的に、治療に対する患者の応答に影響を及ぼしうる。
【0004】
通常、口の細胞は、7日〜14日周期で迅速に再生される。化学療法および放射線療法はどちらも、細胞性有糸分裂に干渉して、口腔粘膜の再生(regenerate)能力を低下させる。直接的な口腔毒性(stomatotoxicity)を生じる癌化学療法薬には、アルキル化剤、代謝拮抗剤、天然物、ならびに、ヒドロキシ尿素および塩酸プロカルバジンなどのその他の合成剤が含まれる。これらの細胞毒性物質の典型的後遺症には、上皮過形成、コラーゲンおよび腺の変性、ならびに上皮異形成が含まれる。粘膜炎は、放射線照射の不可避な副作用である。粘膜炎の重篤度は、電離放射線の種類、照射を受けた組織の体積、1日あたりの線量、および、蓄積線量に依存する。粘膜炎がより重篤化するのに伴い、偽膜および潰瘍形成が生じる。不十分な栄養状態は更に、細胞移動および再生を減少させることによって、粘膜再生に干渉する。
【0005】
直接的な口腔毒性は通常、化学療法または放射線療法の投与の5日〜7日後に見られる。非骨髄抑制(nonmyelosuppressed)患者において、口腔病変は、2週間〜3週間以内に治る。全く角質化されていない粘膜が、最も冒される。最も一般的な部位としては、口唇の、頬側の、および、軟口蓋の粘膜、ならびに、口腔底、および舌の前面が挙げられる。臨床的には、粘膜炎は多数の複合症状を呈する。それは、無症候性発赤および紅斑から始まって、接触圧に対してわずかに痛みを伴う孤立性の白色高剥離性パッチを通じて進行する。これらに続いて、大きく鋭い痛みを伴う連続した疑似膜質病変(pseudo membranous lesion)が、関連する嚥下障害および口腔摂取減少と共に発病する。組織病理学的には、(血管壁の内腔サイズの減少ならびに弾性線維および筋線維の破壊を付随的に伴う)内膜の肥厚を示す血管変化とともに、乳頭間隆起(retepeg)の浮腫が注目される。基底膜に対する上皮細胞の喪失により、下にある結合組織ストローマ(その関連する神経支配を伴う)が露出されるが、これは、粘膜病変が拡大するにつれて、増大する痛みの一因となる。細菌、ウイルス、または真菌生物が原因であり得る口腔感染症は更に、粘膜炎を悪化させ、かつ全身性感染を導く可能性がある。患者が重篤な粘膜炎および血小板減少症の両方を発病している場合、処置が極めて困難な口腔出血が起こりうる。
【0006】
粘膜炎格付システム(mucositis grading sysytem)によって、医師は、痛みの観点、および、患者が治療方針が適切に構築できるような十分な栄養を維持する能力の観点の両方から、粘膜炎の重篤度を評価することができる。多くの異なる格付システムが存在するが、その殆どは、紅斑、痛み、および、摂食に関わる問題を含む2つ以上の臨床パラメータに基づいている。一般的な格付システムの例とは、米国国立癌研究所によって提唱されたものであり、これは0〜4の番号スケール(numbering scale)を使用する。等級0は、粘膜炎が存在しないことを意味し;等級1では、患者は、無痛の潰瘍、紅斑、または穏やかな痛み(soreness)を有し;等級2では、患者は、痛みを伴う紅斑、浮腫、または潰瘍を有するが、摂食可能であり;等級3では、患者は、痛みを伴う紅斑、浮腫、または潰瘍を有し、摂食不可能であり;かつ、等級4では、患者は、非経口または経腸での補助を必要とする。
(出典:DeVita: Cancer: Principles and Practice of Oncology, 5th ed., Copyright (著作権) 1997 Lippincott-Raven Publishers(非特許文献1))
【0007】
粘膜炎の予防および処置のための現在の方法
問題の重要性にもかかわらず、現在、粘膜炎の予防および処置のための十分に確立された手順および製剤は存在しない。その結果として、標準化されたアプローチは存在せず、多くの機関では、安全性および有効性を支持するデータに殆どまたは全く基づくことなく、処置療法が採用されてきた。良好な口腔衛生が有益かどうかに関する意見の相違さえ存在する(例えば、Dodd MJ, Miaskowski C, Shiba GH, Dibble SL, Greenspan D, MacPhail L, Paul SM, Larson P, Risk factors for chemotherapy-induced oral mucositis: dental appliances, oral hygiene, previous oral lesions, and history of smoking, Cancer Invest 1999; 17(4): 278-84(非特許文献2)およびCheng KK, Molassiotis A, Chang AM, Wai WC, Cheung SS. Evaluation of an oral care protocol intervention in the prevention of chemotherapy-induced oral mucositis in pediatric cancer patients, Eur J Cancer 2001 Nov; 37(16): 2056-6(非特許文献3))。典型的には、良好な口腔衛生が推奨されており、現地で調合されて主に予防を提供するために用いられる製剤によって、補われる。したがって、患者は、氷、生理食塩すすぎ液(saline rinse)、重炭酸すすぎ液(bicarbonate rinse)、またはアシクロビルもしくはクロルヘキシジンなどの抗菌製剤を含むすすぎ液の使用を求められると考えられる(Fulton JS, Middleton GJ, McPhail IT, Management of oral complications, Semin Oncol Nurs 2002 Feb; 18(1): 28-35(非特許文献4))。粘膜炎およびその付随する痛みを処置するために一般的に使用される療法には、リドカインもしくはDyclone、Maalox、もしくはMylantaなどの局所麻酔剤、ジフェンヒドラミン(Benadryl)、ナイスタチン、またはスクラルファートが含まれる。これらの薬剤は、単独で、または、うがい薬に加工された上記の薬物との様々な組み合せで、使用される。一般的ではないが使用されるその他の薬剤には、Kaopectate、アロプリノール、ビタミンE、βカロチン、Kamillosan液、アスピリン、抗プロスタグランジン、プロスタグランジン、硝酸銀、および抗生物質が含まれる。経口麻酔剤、および時々は非経口麻酔剤が、疼痛軽減のために使用される(DeVita: Cancer: Principles and Practice of Oncology, 5th ed., Copyright (著作権) 1997 Lippincott-Raven Publishers(非特許文献1))。現在の処置選択肢および研究用臨床試験についての最近の調査により、大部分の薬剤および選択肢は、粘膜炎の予防および/または処置においていかなる恩典も示せていないことが示された(Worthington HV, Clarkson JE, Eden OB, Interventions for treating oral mucositis for patients with cancer receiving treatment, Cochrane Database Syst Rev 2002; (1): CD001973(非特許文献5); Demarosi F, Bez C, Carrassi A., Prevention and treatment of chemo- and radiotherapy-induced oral mucositis. Minerva Stomatol 2002 May; 51(5): 173- 86(非特許文献6))。
【0008】
最近の調査(Sonis ST, Fey KG, Oral Complications of Cancer Therapy, Oncology 2002, 16: 680-695(非特許文献7))により、粘膜炎の予防および処置のための臨床試験において評価されている多くの薬剤の概要が提供され、かつ、「粘膜炎に対する有効性が承認された処置(effective approved treatment)は存在しない」こと、および、現在臨床試験の対象である実験薬剤が将来の患者に恩典を提供するという決定的証拠は存在しないことが、結論づけられている。継続中の試験は粘膜炎の病因のより良好な理解を提供しているが、この知識を有効な新規処置に変換できるまでにはしばらく時間がかかる可能性がある。一方、主要なアプローチは理論に基づいており、かつ、病因のより良好な理解に基づいて根本的な(rationale)ドラッグデザインを適用できるまでには数年かかる可能性があることが予期される。
【0009】
現在のアプローチを、「鎮痛剤、細胞保護剤、抗炎症剤、抗菌剤、およびサイトカイン」に分類することができる(Plevova P: Prevention and treatment of chemotherapy- and radiotherapy-induced oral mucositis: A review. Oral Oncol 35:453-470, 1999(非特許文献8); Sonis ST, Fey EG, Oral Complications of Cancer Therapy, Oncology 2002, 16:680-695(非特許文献7))。各種類の例は以下の通りである。
i) 鎮痛剤:生理食塩すすぎ液および重炭酸すすぎ液、スクラルファート懸濁液ならびに局所鎮痛剤(例えば、粘性のリドカイン、ジクロニン、ジフェンヒドラミン、およびロペラミド)。
ii) 細胞保護剤:氷片、アロプリノール、グルタミン、ペントキシフィリン、エチオール(Ethyol)、ならびに、ビタミンCおよびビタミンEなどの抗酸化剤。
iii) 抗炎症剤:ベンジダミン、インドメタシン、および、アンレキサノクス。
iv) 抗菌剤:クロルヘキシジン、ポビドンヨード、プロテグリン(protegrin)IB-367。
v) サイトカイン:ケラチノサイト成長因子、形質転換成長因子-β3、および、インターロイキン-11、ならびにコロニー刺激因子であるG-CSFおよびGM-CSF。
【0010】
水酸化マグネシウム(例えばマグネシアミルク(Milk of Magnesia))、Kaopectate(Pharmacia & Upjohn, Columbus, OH)、OraRinse(Carrington Laboratories)、GelClair(Sinclair Pharmaceuticals)、および、水酸化アルミニウムゲル(Amphojel; Wyeth-Ayerst, Philadelphia, PA)のような局所コーティング剤は、粘膜炎に関連する病変の若干の対症的軽減を提供しうる(JB Epstein, AW Chow, Oral complications associated with immunosuppression and cancer therapies, Infectious Disease Clinics of North America, 1999, 13(4), 901-923(非特許文献9))。
【0011】
一時的緩和(palliation)は一時的な軽減を提供するが、5-FU治療の際の氷片の使用の可能性を除いて、上記の処置のいずれも、粘膜炎の予防または処置における証明された恩典を全く提供しない。従って、粘膜炎の予防および/または処置に関する臨床的に証明された恩典を提供する製品の開発には、満たされていない主要な医学的必要性が依然としてある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】DeVita: Cancer: Principles and Practice of Oncology, 5th ed., Copyright (著作権) 1997 Lippincott-Raven Publishers
【非特許文献2】Dodd MJ, Miaskowski C, Shiba GH, Dibble SL, Greenspan D, MacPhail L, Paul SM, Larson P, Risk factors for chemotherapy-induced oral mucositis: dental appliances, oral hygiene, previous oral lesions, and history of smoking, Cancer Invest 1999; 17(4): 278-84
【非特許文献3】Cheng KK, Molassiotis A, Chang AM, Wai WC, Cheung SS. Evaluation of an oral care protocol intervention in the prevention of chemotherapy-induced oral mucositis in pediatric cancer patients, Eur J Cancer 2001 Nov; 37(16): 2056-6
【非特許文献4】Fulton JS, Middleton GJ, McPhail IT, Management of oral complications, Semin Oncol Nurs 2002 Feb; 18(1): 28-35
【非特許文献5】Worthington HV, Clarkson JE, Eden OB, Interventions for treating oral mucositis for patients with cancer receiving treatment, Cochrane Database Syst Rev 2002; (1): CD001973
【非特許文献6】Demarosi F, Bez C, Carrassi A., Prevention and treatment of chemo- and radiotherapy-induced oral mucositis. Minerva Stomatol 2002 May; 51(5): 173- 86
【非特許文献7】Sonis ST, Fey KG, Oral Complications of Cancer Therapy, Oncology 2002, 16: 680-695
【非特許文献8】Plevova P: Prevention and treatment of chemotherapy- and radiotherapy-induced oral mucositis: A review. Oral Oncol 35:453-470, 1999
【非特許文献9】JB Epstein, AW Chow, Oral complications associated with immunosuppression and cancer therapies, Infectious Disease Clinics of North America, 1999, 13(4), 901-923
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、粘膜皮膚障害の予防および処置のために使用される、粘性で粘膜付着性の液体製剤および粘膜付着性のゲル製剤を提供することである。製剤は、一つまたは複数の活性な薬剤を用いてまたは用いずに使用されうる。これらの製剤は特に、広範囲の粘膜表面に処置が必要な疾患および状態において有益であるが、本製剤はまた、小面積の粘膜表面を処置する際にも使用されうる。
【0014】
粘膜皮膚障害を効果的に処置するためには、病変が、恩典を得るのに必要な期間、液体状またはゲル状の粘膜付着性製剤と接触していることが好ましい。このような恩典を付与するために、本発明は、一つまたは複数の薬学的に活性な成分を含んでも含まなくてもよい、粘膜付着性で粘性の液体製剤および粘膜付着性のゲル製剤を記載する。液体は、当技術分野において公知の方法によって、粘膜の冒された領域に容易に塗布されうると同時に、高い粘性および粘膜付着性のために、液体またはゲルは長期間病変と接触したままになると考えられる。本発明の製剤は、口腔、鼻腔、食道、直腸、膀胱、および、膣を含むがこれらに限定されない様々な体区画(body compartment)における粘膜皮膚病変を処置するために塗布されうる。
【0015】
本発明は、粘膜皮膚障害の処置および予防のための組成物を含む。ある態様において、本発明のこの組成物は、処置されている粘膜皮膚領域をコーティングするのに有効な量の粘膜付着剤(mucoadhesive)を含み、かつ同様に、粘膜皮膚障害に対して治療的または予防的に活性な薬物を含む。重要な態様において、粘膜付着剤は、粘性誘導(viscosity-inducing)濃度である。本発明のもう一つの態様では、粘膜皮膚障害の処置または予防において使用可能な粘膜ドラッグデリバリー組成物が記載されている。この組成物は、処置されている粘膜皮膚領域において有効なコーティングを形成する量の粘膜付着剤、粘性誘導剤、および粘膜皮膚障害のための治療薬または予防薬を含む。ある態様において、本発明の粘膜付着剤は、天然または合成の、直鎖状のまたは架橋されたポリマーであってよい。この粘膜付着剤は、例えば、直鎖状のまたは架橋されたポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルピロリドン硫酸デキストラン、デルマタン硫酸、水溶性ビニル重合体、グアールゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、および、ペクチンまたはキトサンでありうる。本発明の組成物において、粘膜付着剤は通常、約0.1w/w%から約3.0w/w%の間の濃度である。好ましい態様において、本発明の粘膜付着剤は、架橋されたポリアクリル酸ヒドロゲルに加えて、任意で、直鎖状のポリアクリレートおよび/もしくはポリメタクリレート、ならびに/または、アクリレートおよびメタクリレートモノマーに由来する直鎖状コポリマーを含む。使用できる粘性誘導剤は多く、寒天、ベントナイト、グリセリン、プロビドン(providone)、カオリン、トラガカント、アルギン酸ナトリウム、および、架橋されたポリアクリル酸が含まれる。本発明の組成物は、約6.5から約9.5の間のpHであることが好ましい。
【0016】
本発明の方法および組成物によって処置できる粘膜皮膚障害は、以下の通りである:粘膜炎、ベーチェット病、アフタ性潰瘍、水疱性類天疱瘡、化学性膀胱炎(chemical cystitis)、放射線性膀胱炎、多形性紅斑、食道炎、間質性膀胱炎、口腔扁平苔癬、天疱瘡、放射線性直腸炎、または潰瘍性大腸炎。
【0017】
本発明の重要な局面は、粘膜皮膚障害の予防または処置のための方法を含む。本方法は、粘膜皮膚障害を有しているかまたは発病の可能性がある患者の識別を含む。次にこの方法において、粘膜皮膚障害の予防または処置に有効な量の粘膜付着性薬剤を含む製剤が、患者へ投与される。当然ながら、本製剤は、粘性誘導剤および/または粘性増大濃度の粘膜付着剤を含んでもよく、かつ、含むことが多い。本方法によって処置できる粘膜皮膚障害は上述の通りである。塗布の際の粘性を減少させ(それにより液体はより容易に粘膜を覆うことができる)、および粘膜皮膚領域上に存在するときは液体の粘性を増大させる擬塑性(pseudoplastic)挙動を有する場合、本発明の液体製剤は、より有用であることが多い。処置の長さの観点については、これは、重篤度、および、障害の種類によって変動すると考えられる。粘膜皮膚障害の軽減が、患者を処置している全員に明らかであること、および、回復が明白になるまで処置法が続けられることが、求められる。状況に応じて、これは、数時間から数日間〜数週間かかる場合がある。本方法のための好ましい粘膜付着性の薬剤は、上述の通りである。粘性誘導剤についても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、粘膜表面への活性な薬学的成分の送達の増大を示すために開発されたインビトロモデルを示す。
【図1A】図1aは、粘膜表面への活性な薬学的成分の送達の増大を示すために開発されたインビトロモデルを示す。
【図2】図1に記載の装置が、10/31"フェルールおよび大口径HPLC管を用いてLCポンプ2-3に取り付けられていることを示す。
【図3】図3は、図1および図2に示した装置を使用して試験された場合の、3つの異なる製剤のアンレキサノクス送達の結果を示す。
【図3A】図3aは、図1および図2に示した装置を使用して試験された場合の、3つの異なる製剤のアンレキサノクス送達の結果を示す。
【図4】実施例7に記載の製剤の比較結果がまとめられている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、ヒトおよび動物における粘膜の障害の予防および処置のための製剤を記載する。本発明の液体製剤またはゲル製剤は、広範囲の粘膜表面を冒す疾患および障害を処置するのに理想的に適しているが、これらはまた、特に口腔内の、離散性で局所性の病変を処置する機会も提供する。本特許に記載の組成物によって処置されうる粘膜は、口腔、鼻腔、消化管および気道、膣、ならびに膀胱内の粘膜を含むが、これらに限定されるものではない。本特許に記載の組成物の局所塗布によって処置できる、炎症性、びらん性、および/または潰瘍性の疾患には、アフタ性潰瘍、ベーチェット症候群、水疱性類天疱瘡、化学性または放射線誘発性膀胱炎、多形性紅斑、食道炎、間質性膀胱炎、粘膜炎、口腔扁平苔癬、天疱瘡、および放射線性直腸炎が含まれるが、これらに限定されるものではない。アフタ性潰瘍、化学性または放射線誘発性膀胱炎、粘膜炎、および放射線直腸炎などの状態において、(例えば、アフタ性潰瘍の場合には前駆感覚によって、ならびに、癌の処置においては化学療法および/または放射線療法の開始によって)炎症性、びらん性、および/または潰瘍性の状態の発生が予測できる場合、本発明の組成物を、病変形成の前にまたは処置の初めに塗布して、炎症性、びらん性、および/または潰瘍性の病変の発生を予防するかまたは遅延させることができる。粘膜保護剤は粘膜付着剤単独であってもよいが、薬学的薬剤が粘膜標的に選択的に送達されるように存在している場合には、粘性で粘膜付着性の液体または粘膜付着性のゲルが特に好ましい。
【0020】
実施例の項で後述するように、本発明の粘性で粘膜付着性の製剤の一つである、薬学的に許容される賦形剤で完全に構成されている粘性の液体が、臨床試験において驚くべき結果を実証した。本試験では、頭頚部癌に対する放射線療法を受けている患者における粘膜炎の程度を検討した。コンコンビナント(concombinant)な化学療法を伴うまたは伴わない放射線療法の期間(6週間〜7週間)中に本発明の粘性で粘膜付着性の溶液の一つで1日6回すすいだ患者に関する粘膜炎スコアの平均値および中央値は、このすすぎ液を使用しなかった患者に関するスコアよりもずっと低かった。
【0021】
さらに、同様に薬学的に許容される賦形剤で完全に構成されている本発明の粘膜付着性の液体/ゲル製剤は、放射線誘導性粘膜炎ハムスターモデルにおいて驚くべき結果を示した。
【0022】
既知の薬学的有効成分を有さない本発明の粘性で粘膜付着性の液体およびゲルがなぜ患者にこのような恩典を提供するのかについての完璧な説明は、現在存在しない。以下は、熟考された現実的な可能性であるが、本発明は、これらの可能性のいずれか一つに限定されるとみなされるべきではない。
【0023】
粘性で粘膜付着性の溶液は粘膜表面上の層を長期間提供し、かつこれは、恩典的効果(例えば加湿効果または障壁効果)を有しうり、それによって、疾患により引き起こされる粘膜表面に対する損傷、または電離放射線および/もしくは化学療法剤に由来する創傷が制限される。したがって、非毒性で非刺激性の賦形剤と共に製剤化されて液体またはゲル(どちらも粘性で粘膜付着性である)を提供している任意の水性製剤が、粘膜の疾患または障害を患う患者に恩典を提供することが期待されることが想定される。
【0024】
ポリアニオン性の炭水化物ポリマーおよびオリゴマーが粘膜障害の処置において恩典的効果を有しうることが知られている。例えば、ペントサン多硫酸塩(pentosan polysulfate)およびヒアルロン酸は、組織間腔(interstital)膀胱炎の患者に恩典を提供することが知られている(Morales A, et al, Treatment of refractory interstitial cystitis, Int Urogynecol J Pelvic Floor Dysfunct 1996; 7(4): 215-20)。炭水化物であろうとなかろうと、天然起源のまたは合成のその他のポリアニオン性およびポリカチオン性の化合物が、同様に粘膜障害の予防および処置において恩典を提供しうる可能性が非常に高い。直鎖状のおよび部分的に架橋されたポリアニオン性ポリマーは、実施例に記載された粘膜炎臨床試験における恩典を実証している製品中で使用される製剤中に含まれる。
【0025】
単独で、または、互いとおよび/もしくは製剤のその他賦形剤と組み合わせて、臨床試験において使用される、製剤のその他の成分(ベンジルアルコール、クエン酸、グリセリン、ポリソルベート60、およびサッカリン)は、恩典的効果を有しうる。薬学的液体製品の製剤中の、当技術分野において公知の、単独のまたは組み合わされたその他の保存剤、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、抗菌剤、可溶化剤、および他の賦形剤はまた、粘性で粘膜付着性の溶液を提供するために製剤化される場合に、粘膜表面上での恩典的特性を提供しうるか、または増大させうる。
【0026】
単独で、または、互いとおよび/もしくは製剤のその他賦形剤と組み合わせて、粘膜炎ハムスターモデルにおいて使用される液体/ゲル製剤のその他の成分(フェノキシエタノール、グリシン、グリセロール、エタノール)は、恩典的効果を有しうる。ゲル状薬学的製品の製剤中の、当技術分野において公知の、単独のまたは組み合わされたその他の保存剤、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、抗菌剤、可溶化剤、および他の賦形剤はまた、粘膜付着性ゲルを提供するために製剤化される場合に、粘膜表面に対する恩典的特性を提供しうるか、または増大させうる。
【0027】
粘膜の疾患および障害の予防および処置のための粘性で粘膜付着性の製剤は、さらに、薬学的に活性であることが公知の一つまたは複数の化合物と共に製剤化されうる。更なる薬学的に活性な化合物の追加により、粘膜障害の予防および処置中の患者に対してより大きな恩典を提供することができた。本発明の粘性で粘膜付着性の溶液に組み入れられ得る薬学的に活性な化合物の例は、本項において後述される。
【0028】
薬学的に活性な化合物の水溶液は、便利なドラッグデリバリー製剤として当技術分野において公知である。溶液が嚥下される場合にはこのような製剤は経口送達のために最も有用であり、薬物は、急速吸収に適した形状で胃および消化管に提供される。水溶液はまた、粘膜組織に薬物を送達するためにも使用される。一般に、薬物の送達に使用される水溶液は、非粘性で粘膜非付着性の傾向がある。この特性は、口腔および食道内に保持される薬物の量が最小化される一方で、胃および消化管に送達される薬物の量が最大化されるため、経口送達のためには、望ましくない。粘膜皮膚障害の処置のための好ましい薬物の1つは、アンレキサノクスである。
【0029】
粘膜の局所的処置に関しては、広範囲の粘膜を溶液で容易に覆うことができるという点で、薬学的に活性な化合物の水溶液は他の剤形に勝る利点を提供するが、これは、処置されるべき領域が単一の離散性領域でない場合に、有利である。また、薬学的に活性な化合物の水溶液および簡単な塗布方法を使用して、容易に接触可能でない粘膜を処置することもできる。しかし、粘膜非付着性で非粘性の製剤は、粘膜表面への薬物の送達のために理想的とは言えない。例えば、重力の影響下で液体が塗布部位から流動したり、かつ/または、粘膜の天然分泌物が塗布部位から溶液を運ぶので、このような溶液は、処置されている領域から急速に除去されると考えられる。
【0030】
本発明は、高粘性および高粘膜付着性のどちらも単独では理想的な特性を与えないという知見を含む。粘性であるが粘膜非付着性の液体は、粘膜表面上の所定の位置では保持されない。その代わりに、例えば、重力の影響下で、ならびに/または、膜および周辺構造の自然な移動によって、ならびに/または、天然分泌物の流動によって、粘膜非付着性溶液は塗布箇所から容易に失われると考えられる。粘膜付着性であるが低粘性の水性液体製剤において、粘膜に隣接する液体の薄層だけは所定の位置で保持される可能性があるが、液体の大半は、重力の影響下で塗布部位から急速に流動しうり、かつ/または粘膜の天然分泌物によって容易に除去されうる。粘膜付着性で粘性の液体製剤において、液体は粘膜に付着すると考えられるが、一方、液体の高粘性によって、塗布部位からの大半の液体の除去速度が低下すると考えられる。場合によっては、特に薬学的薬剤が必要でない場合には、低い粘性および粘膜付着性によって効果的処置が提供されうる。粘膜付着性薬剤は、それ自身が粘性誘導因子であってもよく、したがって2つの目的を果たしうる。「粘性誘導」という用語は、粘膜領域に付着する水性粘膜付着層の増大を意味する。
【0031】
大部分の液体に関しては、粘性は、広範囲のずり速度にわたって一定のままである。この現象はニュートン(Newtonian)粘性として公知であり、この特性を示す液体はニュートン液体と呼ばれている。ずり速度と共に粘性が変動する液体は、非ニュートン(non-Newtonian)と言われる。いくつかの既知の非ニュートンプロファイルが存在する。これらのプロファイルのうちの1つは擬塑性と呼ばれており、このカテゴリに分類される液体は、ずり速度の増加に伴って粘性の減少を示す。本発明の好ましい製剤は擬塑性であり、かつ、低いずり速度における粘性の減少を示す。剪断力の応用(例えば、口の中で液体をクチュクチュする(swishing))により粘性が低下され、それにより液体が流動してより容易に粘膜表面をコーティングできるという事実によって、擬塑性(pseudoplasticity)は、本発明の製剤の塗布に恩典を与える。一旦剪断動力(shear forces)が中断されると、(粘膜付着性と共に)粘膜表面への長期付着に必要な、液体の粘性は増大する。
【0032】
本発明の製剤は、粘性で、動作が自由自在な(free-flowing)液体または流動的なゲルであり、これらはニュートンであるか擬塑性である。自由に流動する能力または自由に拡散される能力は、選択された領域または広範囲の冒された粘膜を容易にコーティングするために、および、単なる塗布では容易に接触できない粘膜をコーティングするために、有利である。本発明の溶液は、剪断力0において、100cP〜20,000cPの範囲の粘性を有すると考えられる。
【0033】
本発明の安定で粘性で粘膜付着性の液体製剤は、粘膜の障害または疾患の予防および/または処置のための薬学的に活性な化合物を粘膜へ送達するために、粘膜に塗布されうる。本液体は、例えば以下の粘膜表面に塗布されうる:口腔、鼻腔、消化管および気道、膣、ならびに/または膀胱。本発明の製剤はまた、障害および疾患の予防および処置のために、その他の粘膜に塗布されうる。体区画への液体の送達のために、当技術分野において公知の多くの方法が使用されうる。
【0034】
口腔の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘性で粘膜付着性の液体製剤を、口から摂取してもよく、かつ、クチュクチュする動作によって、または患者が頭部のゆっくりとした循環運動(slow circulating movement)を取り入れることによって、口腔全体に分配してもよい。過剰な溶液は、嚥下してもよく、放出してもよい。口腔の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘膜付着性のゲル製剤を、口から摂取してもよく、かつ、舌の動作によって、および/または綿棒もしくは同様の手段によって、口腔全体に分配してもよい。過剰なゲルは、嚥下してもよく、放出してもよい。
【0035】
食道の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤およびゲル製剤を、口腔との接触を最小限にして嚥下することができ、または、強制栄養によってもしくは喉への液体の噴霧によって、投与することができる。
【0036】
鼻腔の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤およびゲル製剤を、小滴として、または、鼻の中への液体の噴霧によって、送達することができる。
【0037】
膀胱の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤またはゲル製剤を、膀胱内投与によって送達することができる。
【0038】
直腸および下部消化管の障害および疾患の処置のために、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤またはゲル製剤を、カテーテルまたは浣腸器によって投与することができる。
【0039】
本発明の安定で粘性で粘膜付着性の液体製剤および安定で粘膜付着性のゲル製剤を粘膜組織に塗布するためのその他の方法は、当業者にとって公知である。
【0040】
粘膜の局所処置のために、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤およびゲル製剤と共に製剤化されうる薬学的に活性な化合物は、一つまたは複数の以下の種類の薬物を、単独でまたは組み合わせて含むことができる:抗アレルギー化合物、消炎鎮痛剤、ステロイド性および非ステロイド系の抗炎症剤、抗酸化化合物、鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、殺菌剤および消毒剤、血管収縮剤、止血剤、抗生物質、角質溶解剤、腐食剤(cauterizing agents)、抗ウイルス薬、成長因子、補助食品、ならびに粘膜炎の処置のためのその他潜在的薬剤。その他の種類の薬学的に活性な薬剤もまた、本発明の安定で粘膜付着性の液体製剤およびゲル製剤と共に製剤化されうる。
【0041】
消炎鎮痛剤の例としては、アセトアミノフェン、サリチル酸メチル、サリチル酸モノグリコール、アスピリン、メフェナム酸、フルフェナム酸、インドメタシン、ジクロフェナク、アルクロフェナク、ジクロフェナクナトリウム、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、プラノプロフェン、フェノプロフェン、スリンダク、フェンクロフェナック、クリダナク、フルルビプロフェン、フェンチアザク、ブフェキサマク、ピロキシカム、フェニルブタゾン、オキシフェンブタゾン、クロフェゾン、ペンタゾシン、メピリゾール、塩酸チアラミドなどが挙げられる。
【0042】
ステロイド性抗炎症剤の例としては、ヒドロコルチゾン、プレドニソロン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、フルオシノロンアセトニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酢酸プレドニソロン、メチルプレドニソロン、酢酸デキサメタゾン、ベタメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、フルメタゾン、フルオロメトロン、ジプロピオン酸ベクロメタゾンなどが挙げられる。
【0043】
抗酸化剤化合物の例としては、アスコルビン酸、デヒドロアスコルビン酸、α‐トコフェロール、グルタチオン、βカロチン、アゼラスチン、N-アセチル-L-システイン、アロプリノール、フラバノイドなどが挙げられる。
【0044】
抗ヒスタミン剤の例としては、塩酸ジフェンヒドラミン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、塩酸クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、塩酸イソチペンジル、塩酸トリペレナミン、塩酸プロメタジン、塩酸メトジラジンなどが挙げられる。
【0045】
局所麻酔剤の例としては、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、塩酸p-ブチルアミノ安息香酸2-(ジエチルアミノ)エチルエステル、塩酸プロカイン、テトラカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、塩酸ピペロカイン、ジクロニン、塩酸ジクロニンなどが挙げられる。
【0046】
殺菌剤および消毒剤の例としては、フェノキシエタノール、トリクロサン、チメロサール、フェノール、チモール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、クロルヘキシジン、ヨウ化ポビドン、塩化セチルピリジニウム、オイゲノール、臭化トリメチルアンモニウムなどが挙げられる。
【0047】
血管収縮剤の例としては、硝酸ナファゾリン、塩酸テトラヒドラゾリン、塩酸オキシメタゾリン、塩酸フェニレフリン、塩酸トラマゾリンなどが挙げられる。
【0048】
止血剤の例としては、トロンビン、フィトナジオン、硫酸プロタミン、アミノカプロン酸、トラネキサム酸、カルバゾクロム、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム(carbaxochrome sodium sulfanate)、ルチン、ヘスペリジンなどが挙げられる。
【0049】
抗生物質の例としては、ペニシリン、メチシリン、オキサシリン、セファロチン、セファロリジン、エリスロマイシン、リンコマイシン、テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、メタサイクリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、バシトラシン、シクロセリン、およびクリンダマイシンが挙げられる。
【0050】
角質溶解剤の例としては、サリチル酸、ポドフィルム脂、ポドリフォクス(podolifox)、およびカンタリジンが挙げられる。腐食剤の例としては、クロル酢酸および硝酸銀が挙げられる。
【0051】
抗ウイルス薬の例としては、プロテアーゼ阻害剤、チミジンキナーゼ阻害剤、糖または糖タンパク質合成阻害剤、構造タンパク合成阻害剤、付着および吸着阻害剤、ならびに、例えばアシクロビル、ペンシクロビル(penciclovir)、バラシクロビル、およびガンシクロビルなどのヌクレオシド類似体が挙げられる。
【0052】
抗アレルギー化合物の例としては、アロパタジン、アステミゾール、クロモリン、フェンピプラン、レピリナスト、トラニラスト、トラザノックスなどが挙げられる。
【0053】
粘膜炎の処置のための、成長因子、補助食品、およびその他の潜在的薬剤の例としては、ケラチノサイト成長因子、顆粒球コロニー刺激因子、形質転換成長因子-β3、スクラルファート、L-グルタミン、アミノ酸、リソフィリン(lisofylline)、IL-15、抗菌ペプチド、およびヒスタミンが挙げられる。
【0054】
使用される薬学的に活性な化合物の量は所望の処置の強さに依存するが、好ましくは、薬学的成分は、製剤の0.001重量%〜30重量%を、およびより好ましくは0.005重量%から20重量%の間を構成する。
【0055】
上述の粘膜付着性および粘性の好ましい必要条件に加えて、粘膜の疾患および障害の予防および処置のための製剤の使用のためには、短期間高温または低温に供された場合であってさえ製剤の物理的または化学的な劣化を伴うことなく、数ヶ月間または数年間外界温度で貯蔵できるように、液体またはゲルが安定であることが、重要である。有機溶媒(その存在によって、処置されている粘膜病変が刺激されうる)を全く使用せずに製品を製剤化することが通常望ましいが、このような溶媒の組み込みが粘膜に対して損傷を与えず、かつ以下の恩典を提供する可能性があるという条件において、薬学的に許容可能な有機溶媒を含む液体製剤およびゲル製剤は、本発明の範囲に含まれる:例えば、消毒剤としての恩典、または、粘膜の溶媒化を支援してより急速な粘膜付着を提供するための恩典、または、塗布後に粘膜付着性および/もしくは粘性を増大させるための(粘膜への塗布後の溶媒蒸発による)賦形剤の濃縮に対する恩典。さらに、全ての主要な薬事規制当局(pharmaceutical regulating authority)によって安全であると認められた賦形剤のみを使用して、粘性で粘膜付着性の溶液を製剤化することが望ましい。
【0056】
以下の一覧は、本発明の安定で粘性で粘膜付着性の製剤の成分の例を提供するものである。
【0057】
粘膜付着性を提供することが既知であってもなくてもよい、直鎖状のまたは架橋されたポリアニオン性またはポリカチオン性のポリマー。このようなポリマーは、(これらに制限されるわけではないが、)直鎖状のポリアクリル酸、アクリル酸に基づく架橋されたホモポリマー、アクリル酸に基づく架橋されたコポリマー、直鎖状のメタクリル酸ホモポリマーおよびコポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、硫酸デキストラン、デルマタン硫酸、ならびにヒアルロン酸を含む。その他の粘膜付着性ポリマーは、当業者には周知である。本発明の粘膜付着性製剤は、単一の粘膜付着性成分またはそれらの混合物を含むことができる。好ましい粘膜付着性ポリマーは、アクリル酸およびメタクリル酸に基づく架橋されたホモポリマーおよびコポリマーであり、特にCarbopol、および、B.F. Goodrichによって供給されるポリカルボフィルポリマー、および、Rohm-Haasによって供給されるEudragitポリマーである。Carbopol、Noveon AA1、およびEudragit L-100が最も好ましい。
【0058】
粘性の増大は、寒天、ベントナイト、グリセリン、ポビドン、カオリンおよび/もしくはトラガカント、およびアルギン酸ナトリウムと組み合わせたまたは単独の、一つまたは複数の上述した粘膜付着性ポリマーによって提供される。グリセリンと組み合わせたCarbopolが最も好ましい。
【0059】
溶液のpHは、薬学的に許容される任意の酸または塩基によって、所望の最終pHに調整される。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、リン酸、またはクエン酸が、最も好ましい。6.5から9.5の最終pHが好ましい。
【0060】
貯蔵の際の製剤中の微生物の成長を阻害するために、保存剤を含むことが望ましい。当技術分野において公知の保存剤には、ベンジルアルコール、安息香酸塩、フェノキシエタノール、メチルパラベン、およびプロピルパラベンが含まれる。フェノキシエタノールおよびベンジルアルコールが、最も好ましい保存剤である。
【0061】
湿潤剤は、経口塗布においてよい口あたりを提供するために望ましい。当技術分野において公知の湿潤剤には、コレステロール、脂肪酸、グリセリン、ラウリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ペンタエリスリトール、およびプロピレングリコールが含まれる。グリセリンが好ましい。
【0062】
例えば、全ての賦形剤(特にベンジルアルコールなどの疎水成分)の完全溶解を確実にするために、乳化剤が必要でありうる。多くの乳化剤が、当技術分野において公知である。好ましい乳化剤は、ポリソルベート60である。
【0063】
経口塗布のためには、薬学的に許容される芳香剤、着色剤、および/または甘味料を加えることが望ましい場合がある。サッカリン、グリセリン、単シロップ、およびソルビトールなどの化合物は、甘味料として中でも有用である。サッカリンが好ましい。
【0064】
その他の成分、例えば薬学的に許容される有機溶媒、緩衝剤、抗酸化剤、フリーラジカルスカベンジャ、抗菌剤、および/または着色剤を含むことが望ましい場合がある。上記成分の正確な処方および製造方法は、当業者には明らかである。Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company Co., Easton, PAおよびPharmaceutical dosage forms and drug delivery, Ansel et al, 1995, Williams and Wilkins, Malvern, PAを含む多くの出典が、薬学的製剤の設計および製造における補助となる。
【0065】
以下の実施例は、本発明の安定で粘膜付着性の液体およびゲルの恩典的効果を示すために提供される。人工粘膜表面上に拡張保持特性を有する液体のコーティングを提供するためには粘膜付着性および粘性の両方が望ましいことを示すために、実施例4が提供される。粘膜表面のこのインビトロモデルにおいて、『粘膜』表面全体への人工唾液の定常流により、液体コーティングを除去することが試みられる。疎水性薬剤であるアンレキサノクスは、フィルムの侵食および保持(後者はモデル粘膜全体へのマーカーの送達による)のマーカーとして使用される。保持のために粘膜付着性および粘性の両方を液体が必要とすることが、本試験により明白に示される。
【0066】
実施例6は、頭頸部に放射線療法を受けている患者における標準的治療と比較した、本発明の安定で粘性で粘膜付着性のすすぎ製剤の臨床試験の分析を提示する。この分析により、許容される薬学的に活性な成分を含まない本発明の安定で粘性で粘膜付着性のすすぎ製剤は、粘膜炎のための標準的治療を受けている類似群の患者と比較して、これらの患者の粘膜炎スコアの平均値および中央値を減少させるという、驚くべき結果が提供された。
【0067】
実施例8は、口腔の放射線照射によって粘膜炎が誘導されたゴールデンハムスターにおける試験の結果を提示する。このモデルにおいて6つのゲル製剤が試験され、各処置群に対する粘膜炎の重篤度が、各群の動物がスコア3以上の粘膜炎を経験した平均日数として表される。スコア3は潰瘍形成の発生を表し、それを上回るスコアは、より重篤な粘膜炎を表す。本試験において試験された製剤は、実施例7において列挙されている。製剤のいずれも、許容される薬学的に活性な成分を含まない。本試験の結果により、以下が明らかに示される。
a. 最も有効な製剤(AおよびB)は、2つの粘膜付着性ポリマーであるCarbopol 971およびNoveon AA1の混合物を含む。
b. 全ての系にわたり、粘性と共に有効性が一般的に増大するという傾向がある。このことは、粘膜炎の処置に使用される液体製剤およびゲル製剤の粘性の重要性の根拠を提供するものである。
c. (Eudragit L-100が除去されることを除いてはAと同じである)製剤Bは、Aに比べて類似しているもののわずかに低下した有効性を有するが、観察された小さな相違は統計的に有意でなく、かつ粘性によって説明することが可能であった。
d. 製剤Cは、製剤Bからフェノキシエタノールを除去することによって得られる。フェノキシエタノールは、既知の防腐特性および殺菌特性を有する保存剤である。製剤Cは粘膜炎の重篤度の低下において明らかに有効であるが、防腐剤/殺菌剤が存在する場合には、本製剤は明らかにより有効である。
e. グリシン緩衝液がホウ酸塩緩衝液と交換されていることを除いては、製剤DはBと同じである。製剤Dの粘性はBのそれよりわずかに低く、これが相違の一部を占めている可能性があるが、データはまた、アミノ酸によって提供される恩典が存在することを示している。
f. Noveon AA1が除去されていることを除いては、製剤EはBと同じである。粘性および粘膜付着性は、Carbopol 971によってのみ提供される。架橋されたアクリレートの総濃度は、類似した粘性を提供するために増大されなければならない。この製剤の有効性が不十分であることは、主にその粘性の低さに起因する可能性がある。
g. 全ての粘膜付着性ポリマーが粘膜非付着性の重合濃化剤(thickening agent)と交換されていることを除いては、製剤FはBと同じである。この製剤の粘性はわずかにBより高いが、それでも、これは(生理食塩水と比較して)有効性を有さない。このことは、有効性にとっては、粘性と同様に粘膜付着性が重要であることを示す。
【実施例】
【0068】
実施例1 粘性で粘膜付着性の水性組成物の調製
透明溶液を得るために、適切な混合装置(200rpm〜300rpmで回転するハイリフトブレード(high-lift blade)を備えたMaster Servodyne(登録商標)ミキサー)を使用して、水にCarbopol(登録商標)971P NFを加えることによって、粘性で粘膜付着性の水溶液を製剤化した。撹拌しながら水酸化カリウム水溶液を加えて、透明なゲルを得た。撹拌しながら、水酸化カリウム、クエン酸、サッカリンナトリウム、リン酸、およびグリセリンの水溶液を加えて、透明な溶液を得た。撹拌しながら、ベンジルアルコールおよびポリソルベート60の溶液を加えて、透明な溶液を得た。リン酸水溶液を用いて、pH7.0〜7.8に調整した。得られた産物をさらに30分間混合した。
【0069】
産物の配合を、表1に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例2 アンレキサノクスを含む粘性で粘膜付着性の水性組成物の調製
実施例1において述べられた方法により、続いて、下記の配合の、粘性で粘膜付着性の水性組成物が提供された。
【0072】
【表2】

【0073】
実施例3 アンレキサノクスに関する高速液体クロマトグラフィーアッセイ法
アンレキサノクスに関するアッセイ法を実行する際に、以下のHPLCパラメータを使用した。
Phenomenex, Prodigy, 5μm ODS (2), 150 mm×4.6 mm
移動相:25% THF / 75% 10 mMリン酸緩衝液、pH8.0
h. 流速:1.0 mL/min
注入用量:10 μL
i. 検出器:UV@ 244 nm
【0074】
実施例4 粘膜表面のインビトロモデルにおける、液体製剤からのドラッグデリバリーの実証
図2を参照すると、図1に記載の装置は、10/32"フェルール(ferule)および大口径HPLC管を用いてLCポンプ2-3に取り付けられている。ポリカーボネートブロック7の片側半分は、Spectra/Por4透析膜6全体にわたる人工唾液の連続流を提供しかつ10mLの容器8に溶出される、リザーバ1を有する。ポリカーボネートブロック7の反対側の半分は、透析膜6全体に常に再循環する人工唾液のリザーバ4を有するLCポンプ3へ連結されている。
【0075】
別々の実験において、粘膜付着性だが非粘性であるおよび粘性だが非粘膜付着性であるアンレキサノクスの水性製剤2つと実施例1の組成物を比較して、動作が自由自在な液体製剤の最適なドラッグデリバリーのためには両特性が必要であることが示された。
【0076】
アンレキサノクスの水性製剤2.9mL〜3.1mLをインビトロ系の透析膜に塗布し、人工唾液の流動を速度1.0mL/minで開始した。mL試料をリザーバ4および6から回収し、実施例3に記載のHPLCアッセイ法を用いて、アンレキサノクス含量に関して試料をアッセイした。
【0077】
本試験の結果を図3に示す。図3aにおいて示されるように、本発明の対象である粘性で粘膜付着性の溶液の場合には、他の2つの製剤と比べて、ずっと少ない量のアンレキサノクスが、唾液流動のシミュレーションにおいて洗い流される。その結果、本発明の対象である粘性で粘膜付着性の溶液の場合には、他の2つの製剤と比べて、ずっと多い量のアンレキサノクス(データは10倍の違いを示す)が膜に送達され、受け容器(receiver vessel)に輸送される。
【0078】
実施例5 安定性試験
実施例2の組成物を、安定性試験に供した。透明溶液を透明ガラス瓶に詰め、これを、テフロンライナーを取り付けた白色スクリューキャップで密閉した。瓶を、2群に分けた。第一群を、25℃/相対湿度60%に設定された安定性チャンバ内で保存し、一方、第二群を、40℃/相対湿度75%で保存した。物理的外観(溶液の透明度)、包装保全性(package integrity)、アンレキサノクスおよびベンジルアルコールの含量、pH、および粘性について、0ヵ月目、1ヵ月目、2ヵ月目、3ヵ月目、および6ヵ月目に瓶を検討した。全ての期間においておよび両方の状態の下で、物理的または化学的な変化は全く確認されなかった。
【0079】
実施例6 臨床試験
臨床試験は、頭頚部癌であると組織学的に資料で証明された診断を受け、かつKPSが少なくとも60%である、18歳以上の患者において行われた。この患者は、少なくとも40%の口腔粘膜を含むための照射野で、6週間〜7週間にわたって少なくとも線量60Gyの放射線照射を受けた。並行化学療法を受けている患者もまた、試験に含めた。放射線療法(6週間〜7週間)の期間中、実施例1において例証された溶液を用いて、1日6回(毎回5mL)、患者をすすいだ。これは、放射線療法の初日から開始した。粘膜炎の程度(Cancer, 1999, 85(10) 2103-13に記載の「Sonisスケール」)の客観的な測定は、試験期間中に、週3回行った。以下の表は、14日目、28日目、および39日目における患者の平均値スコアおよび中間値スコアを示す。これらのデータは12人の被験者において得られた。歴史的なデータ(頭頚部癌に対する類似の処置を受けている類似の患者集団(合計17人)に関するSonisスケールの粘膜炎スコア)を、比較用に提供する。
【0080】
【表3】

【0081】
実施例7 粘膜付着性ゲル製剤
6つのゲル製剤は、A-100プロペラを有するスピードミキサー(lightning mixer)を同じように使用して調製された。Bと示された後述の試料については、354グラムの50mMグリシン/水酸化ナトリウム緩衝液を600mlビーカーに加えて、200rpmで撹拌した。緩衝液は、0.2Mグリシン水溶液1リットルと、0.2N水酸化ナトリウム溶液176mlおよび脱イオン水2984mlとを混合することによって調製された。50グラムの95%USPエタノールを次に加え、その後5グラムのグリセリンを加えた。撹拌速度を300rpmまで増大させて、5グラムのNoveon AA1をゆっくりと渦に加え、速度を700rpmまで徐々に増大させた。この溶液を1時間ホモジナイズした。50グラムのCarbopol(登録商標)971P NFをゆっくりと渦に加え、速度を1200rpmまで徐々に増大させた。材料をさらに30分間混合し、その後、75グラムの2N水酸化ナトリウムおよび5グラムのフェノキシエタノールを加えた。得られたゲルをさらに30分間混合し、pHを測定して、9.82であることを見出した。混合速度を1000rpmまで低下させ、6.4mlの1N塩酸を用いてpHを9.01に調整した。最終的なゲル産物は、透明で均質であって、ポリプロピレン容器に移された。
【0082】
上述の方法は、以下の配合を用いてゲル類を調製するために使用された。
【0083】
【表4】

【0084】
実施例8 ハムスター粘膜炎試験
56匹のハムスターに対して、0日目に、それらの口腔粘膜に向けて線量40Gyの急性放射線照射を行った。照射前日(-1日目)から、照射後20日(20日目)まで継続して、被験材料(上記の各製剤A〜F)を局所的に塗布した。6日目から、その後一日おきに、28日目における本試験の終了まで、粘膜炎の等級を記録した。粘膜炎に対する各処置群の効果を、生理食塩水対照と比較した。各動物は粘膜炎スケール(0〜5)に従って記録されたが、ここで、0は粘膜炎が無いことを示し、5は重篤な粘膜炎を示し、かつ、3以上のスコアは、潰瘍形成が観察されることを示している。各群の動物のスコアの平均を記録し、各群のハムスターが重篤な(>3のスコア)粘膜炎を有する日数を算出した。対照に対して統計学的に有意に少ない、薬物処置群においてこのスコアを有するハムスターの数をχ2乗分析によって決定し、治療効果を定義した。
【0085】
図4において、実施例7に記載の製剤の比較結果がまとめられている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
50cps〜50,000cpsの粘性を有する、粘膜障害の処置または予防のための粘膜付着性の溶液または懸濁液。
【請求項2】
ゲルであると更に定義される、請求項1記載の溶液または懸濁液。
【請求項3】
粘性が粘膜付着性によりもたらされる、請求項1記載の溶液または懸濁液。
【請求項4】
粘性が粘性誘導剤により誘導または増大される、請求項1記載の溶液または懸濁液。
【請求項5】
粘膜付着剤が、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、硫酸デキストラン、ヒドロキシアルキルセルロース、デルマタン硫酸、水溶性ビニル重合体、キトサン、グアールゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、またはペクチンである、請求項1記載の溶液または懸濁液。
【請求項6】
粘膜付着剤が、架橋されたポリアクリル酸である、請求項1記載の溶液または懸濁液。
【請求項7】
粘性で粘膜付着性のゲル、懸濁液、または溶液を粘膜皮膚領域に塗布する段階を含む、粘膜皮膚障害を処置または予防する方法であって、該ゲル、懸濁液、または溶液が、粘膜皮膚領域を実質的にコーティングするのに十分な滞流時間を有しかつ十分な量で存在する、方法。
【請求項8】
粘性の粘膜付着剤が約50cps〜約50,000cpsの粘性を有する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
粘膜付着剤が、架橋されたポリアクリル酸である、請求項7記載の方法。
【請求項10】
粘膜表面上での粘膜付着剤の滞流時間を増大させるのに十分な粘性の、架橋されたポリアクリル酸を含む、粘膜表面のコーティングに適した粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲルであって、該ゲルが、粘膜を保護するために有用であり、症状の軽減を提供し、かつ化学療法または放射線療法によって誘導される紅斑および潰瘍形成を含む粘膜炎の徴候および症状の発生を遅延またはその重篤度を減少させる、粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項11】
薬学的に活性な化合物を含むと更に定義される、請求項10記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項12】
抗菌活性を有する保存剤もまた含む、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項13】
水性であると、および薬学的に許容される水混和性の(water-miscible)有機溶媒を約20%未満含むと、更に定義される、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項14】
粘膜表面が口腔由来である、請求項10記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項15】
架橋されたポリアクリル酸がCarbopolまたはポリカルボフィルである、請求項10記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項16】
粘性誘導剤もまた含む、請求項10記載の粘膜付着性で粘性の液体またはゲル。
【請求項17】
粘性誘導剤が、一価、二価、または三価のカチオンの無機塩である、請求項16記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項18】
塩が、薬学的に許容される塩素、臭素、リン酸、ホウ酸、酒石酸、または安息香酸の対イオンを有するNa、K、Ca、Mg、Zn、またはAlである、請求項17記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項19】
粘性誘導剤が、架橋されたポリアクリル酸の静電的架橋または水素結合架橋の形成に適した少なくとも2つのイオン化可能な基または水素結合基を含む、薬学的に許容される有機分子である、請求項10記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項20】
誘導剤が、少なくとも一つのアミノ酸、ペプチド、ジアミン、アルコール、有機酸、脂肪酸、ポリオール、ポリビニルアルコール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロックコポリマー、または界面活性剤を含む、請求項19記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項21】
保存剤がメチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、フェノキシエタノール、またはそれらの混合物である、請求項12記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項22】
薬学的に活性な成分もまた含む、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項23】
成分が、鎮痛剤、抗菌剤、抗酸化剤、抗炎症剤、またはフリーラジカルスカベンジャである、請求項22記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項24】
50cps〜50,000cpsの粘性を有すると定義される、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項25】
100cps〜15,000cpsの粘性を有すると定義される、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項26】
完全低粘調化(sheer-thinning)特性を示すと定義される、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項27】
安定性、口当たり、外観、および風味を改善するためのその他の薬学的に許容される賦形剤を含むと更に定義される、請求項10または11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項28】
賦形剤が保存剤、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、抗菌剤、可溶化剤、芳香剤、または甘味料である、請求項27記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項29】
薬学的に活性な化合物の総量が5%未満である、請求項11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項30】
薬学的に活性な化合物の総量が1%未満である、請求項11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項31】
薬学的に活性な化合物の総量が0.1%未満である、請求項11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項32】
薬学的に活性な化合物の含量が1%〜5%である、請求項11記載の粘膜付着性で粘性の液体または粘膜付着性のゲル。
【請求項33】
以下を含む、粘膜病変を処置または予防するための粘性で粘膜付着性の液体:
90.68重量%の精製水;
約4.6重量%の10%水酸化カリウム;
1.50重量%のベンジルアルコール;
0.05重量%のポリソルベート60;
0.35重量%のCarbopol(登録商標)971P;
約5.7重量%の0.5%リン酸;
0.05重量%のクエン酸;
0.40重量%のサッカリンナトリウム;
5.00重量%のグリセリン;および
0.05重量%の天然オレンジ香料。
【請求項34】
粘膜病変の処置または予防のための、粘膜付着性のゲル:
70.80重量%の50mMグリシン / NaOH緩衝液;
1.00重量%のグリセリン;
1.00重量%のNoveon AA1;
1.00重量%のCarbopol(登録商標)971P;
10.00重量%のエタノール;
15.20重量%の2N NaOH;および
1.00重量%のフェノキシエタノール。

【図1】
image rotate

【図1A】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−121983(P2011−121983A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25034(P2011−25034)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【分割の表示】特願2005−509105(P2005−509105)の分割
【原出願日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(501491044)アクセス ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】