説明

精密部品の接合体

【課題】
各々の部品が有する形状や特性を接合後も損なうことなく、かつ接合の信頼性が高く実用に耐えうる接合体を提供すること。
【解決手段】
接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶解する、一般式(1)にて示される組成式によって構成された接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体及び非晶質相を主相とする合金からなる部材の接合界面側にAu, Pt, Pd及びNiのうち少なくとも何れか1種を含有する箔層と、一般式(1)にて示される組成式によって構成された接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型アクチュエータや、半導体微細加工技術を応用したMEMSを利用したアプリケーション(以下、MEMSアプリケーションと称する)などに用いられる、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる精密部品との接合体に関する。
【背景技術】
【0002】
技術進歩に伴う高機能化によって、複数の優れた機能が付与された機器が開発されている。これらの機能を付与するためには、一般に機器の容積を大きくする必要がある。しかしながら、近年の機器の省資源化や省スペース化、更には低侵襲医療などを始めとした高付加価値化などの要求から従来の容積と同等か更に小型化した機器が求められており、その機器に組み込まれる部品についても更なる小型化が求められている。
【0003】
近年、精密な機械加工と高精度の組立技術を以って作製された小型アクチュエータや、MEMSアプリケーションが実用化されている。これらの出現は、高機能な機器の小型化に大きな役割を果たしている。
【0004】
また、新しい機能構造材料として非晶質合金が脚光を浴びている。従来、人類の歴史の中で使用されてきた従来の金属材料は、ほとんど全てが規則構造を有する結晶の集合体、すなわち多結晶体によって構成されているものであった。一方で、非晶質合金は長距離秩序構造を持たない液体の構造を有したままの状態で凍結固化することによって形成される点が、従来の金属材料と根本的に異なる特徴である。
【0005】
非晶質合金は、従来の金属材料のような転位や格子欠陥が存在しないことから、本来の材料が有する理想強度に限りなく近い高い強度を発現する一方、結晶よりも原子間の自由体積が大きく、しなやかであるという特徴を有している。このことから、非晶質合金の弾性歪み限界は約2%と極めて大きく、従来の金属材料の約3倍の値を有する。また、結晶粒界や偏析による析出物が存在しないことから腐食の起点となる特異な部位が存在せず、不動態膜を形成する元素を添加することによって極めて高い耐食性を付与することが可能である。更に、Fe,Co,Niといった磁性を有する元素が多く含まれている非晶質合金は、異方性がないことから極めて高い透磁率が得られる。
【0006】
特に、数10〜100K以上にも及ぶガラス転移領域が確認されるほど極めて安定な過冷却状態を有している非晶質合金も数多く発見されている。それらのほとんどは「3成分以上によって構成」され、「原子半径比が12%以上」であり、「液体生成時の混合エンタルピーが負」であるという3つの共通の経験則が成立する。それらは非晶質合金の中でも「金属ガラス」や「ガラス合金」と、区別して呼ばれることが多いが、本質的には非晶質合金の一部とみなされる。また、数nm程度の超微結晶が析出しているがX線回折法による分析では、非晶質とみなされる合金についても、その諸特性が厳密な意味での非晶質合金に酷似するため、非晶質合金とみなされるのが一般的である。
【0007】
以上のような極めて安定な過冷却状態が実現されたことにより、数mm〜数10mmに及ぶ塊状の非晶質合金を鋳込みの手法を用いて形成すること、すなわち、非晶質合金が従来の結晶金属材料と同様に塊状の各種部品として形成することが可能となった。
【0008】
非晶質合金の塊の凝固表面は結晶粒界を持たないことから極めて平滑であり、ナノオーダの微細構造をも再現することが可能な金型転写性を有している。また、液体状態から直接凍結固化してなることから凝固収縮がないため、その寸法精度は極めて高い。以上のことから、溶融状態からの鋳造法や過冷却液体状態からのインプリント法を用いた精密部品を作製するのに適している。
【0009】
部品によっては全体が非晶質相である必要がないものもあるが、非晶質相が持つ種々の特性を利用した、非晶質を主相とする合金からなる精密部品の実用化に対する検討が数多く進められており、その一部は既に実用化されている。
【0010】
以上のような背景の中で、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質相を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる部品との接合体を形成する必要性が出てきている。それらの接合体を得られる可能性を有する接合方法としては、例えば、粘性流動接合法(特許文献1)、摩擦撹拌接合法(特許文献2)、電子ビーム接合法(非特許文献1)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−323174号公報
【特許文献2】特許第3821656号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Y. Kawamura and Y. Ohno、「Successful Electron-Beam Welding of Bulk Metallic Glass」、Materials Transaction、2001年、第42巻、p.2476−2478
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の接合方法としては上述したような方法を始めとして種々の方法が開発されている。非晶質を主相とする合金からなる接合部品に適用された例はほとんどない。その理由として、従来の接合方法では、接合の際に、接合部品への高圧印加、摩擦による衝撃、熱的変形等が生じることによって、接合した精密部品の形状を変形させたり、特性が損なわれてしまうということが挙げられる。
【0014】
また、金属同士を接合するために、部材よりも融点の低い合金を溶かし、部材自体を融解させずに接合する方法として、「ろう付け」が広く用いられているが、非晶質相を主相とする合金からなる接合部品では、加熱により非晶質相の特性が失われてしまったり、接合に対しての安定性、濡れ性の問題から接合は困難であり、適用された例はない。
【0015】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、小型アクチュエータやMEMSアプリケーションなどに用いられるようなハンドリングが極めて困難な精密部品の接合において、各々の部品の形状を変形させたり特性を損なうことなく、かつ接合の信頼性が高く実用に耐えうる、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質相を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる精密部品との接合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を解決するために、本発明の請求項1に係る発明は、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体である。
【0017】
また、請求項2に係る発明は、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する、下記の一般式(1)にて示される組成によって構成された接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体である。また、母材を作製する際の原材料及び作製工程に起因する不純物元素による影響は、例えばエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)にて明瞭に観測されるような量でなければ、特に差し支えない。
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。
【0018】
また、請求項3に係る発明は、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する、一般式(1)にて示される組成によって構成された接合界面に用いた精密部品の接合体において、非晶質相を主相とする合金からなる部材の接合界面側に予め設けたAu, Pt, Pd及びNiのうち少なくとも何れか1種を含有する箔層と、接合母材を有することを特徴とする精密部品の接合体である。また、母材を作製する際の原材料及び作製工程に起因する不純物元素による影響は、例えばエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)にて明瞭に観測されるような量でなければ、特に差し支えない。
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。
【0019】
請求項4に係る発明は、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが下記の一般式(2)にて示されかつ3種以上の元素の組合せからなる組成によって構成された非晶質相を主相とする合金からなる精密部品である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の精密部品の接合体である。また、母材を作製する際の原材料及び作製工程に起因する不純物元素による影響は、例えばエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)にて明瞭に観測されるような量でなければ、特に差し支えない。
一般式(2):M1aM2bM3cM4dLneM5fM6g
但し、M1はTi,Zr及びHfから選ばれる少なくとも1種の元素、M2はFe,Co,Ni,Cu,V,Cr,Mn及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はZn,Be,Al,Ga,Ge,In及びSnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はAu,Pt,Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、LnはSc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Yb及びMm(希土類元素の集合体であるミッシュメタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はTa,W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M6はSi,P,B及びCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a,b,c,d,e及びfはそれぞれ原子%で、15≦a≦85,15≦b≦85,0≦c≦25,0≦d≦25,0≦e≦10,0≦f≦10,0≦g≦10である。
【0020】
請求項5に係る発明は、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材によって接合された接合体において、接合後の接合界面の融解温度が非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以上に改善された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の精密部品の接合体である。
【0021】
請求項1から請求項5でいう「非晶質相を主相とする合金」とは、X線回折法による分析によって結晶性の回折ピークが見られないか、或いはX線回折法による分析によって結晶の混在が認められた場合でも、示差走差熱量分析で非晶質相の存在による明瞭な発熱反応を示すものを指す。ここで、数nm程度の超微結晶相からなる場合でも、X線回折法による分析で結晶性の回折ピークが発現せず、示差走差熱量分析でガラス遷移や粗大な結晶化に起因する明瞭な発熱反応が確認されるものについては、ここでは非晶質相であるとみなす。結晶化温度は、等温変態温度曲線(TTT曲線)で示される等温保持温度と等温保持時間によって定まる温度である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材を接合界面に用いて接合体を形成することによって、非晶質相を主相とする合金からなる部品の特性を接合後も損なうことなく他方の部品と接合された接合体を提供することが可能になる。
【0023】
一般に、非晶質相を主相とする合金からなる部品の特性が損なわれる最も大きな要因としては、非晶質とみなされる相の結晶化が挙げられる。結晶化が開始されると共に、非晶質相(準安定相)から結晶相(安定相)への移行に伴う発熱が生じるが、このときの結晶化の駆動速度は極めて速く、瞬時に非晶質とみなされる相が消失する。よって、本来非晶質合金が有する優れた特性などが失われてしまう危険性が極めて高い。そのためには、「結晶化温度以下」という条件が必要である。
【0024】
請求項2の発明によれば、接合母材の融点をより確実に下げることができるため、より安定性に優れた接合体を提供できるという効果を有する。AuとSi,Ge,Snとの合金は何れも極めて深い2元共晶組成を有しており、各々の2元共晶組成の融点は、Au81.4Si18.6:363℃、Au72Ge28:361℃、Au71Ge29:278℃(何れも原子%)である。また、これらの2元共晶組成を基に多元化することによって更に低融点化することも可能である。例えば、Au−Si系2元共晶組成にBiを加えた3元組成の融点は、Au69.4Si18.6Bi12.0:295℃、Au−Sn系2元共晶組成にNiを加えた3元組成の融点は、Au65.7Sn27.2Ni7.1:257℃であり、各々の2元共晶組成よりも低融点となる。すなわち、一般式(1)で示される接合母材は、結晶化温度以下において接合界面で融解させることが可能となる。
【0025】
また、上記の効果に加えて、接合母材に主成分としてAuを含有するため、接合部品との濡れ性が向上するという効果を有する。接合界面に主成分としてAuを含有する場合、Auは非晶質相を主相とする合金の主要な構成元素との間で、多くの場合に液体生成時の混合エンタルピーが負となる、すなわち元素間で積極的に結び付こうとする性質を有するため、接合部品との濡れ性に大きな寄与を果たす。例えば、混合エンタルピーの値は、Au−Ti:−47kJ/mol、Au−Zr:−74kJ/mol、Au−Hf:−63kJ/mol、Au−Cu:−9kJ/molなどである。
【0026】
請求項3の発明によれば、非晶質相を主相とする合金からなる部品の接合界面側に、予めAu、Pt、Pd及びNiのうち少なくとも何れか1種を含有する箔層を設けているので、上述した効果に加えて、前記部品の加熱に伴う表面酸化を防止できるという効果を有する。非晶質相を主相とする合金からなる部品は、合金成分元素中で大気中の酸素に対して最も活性な元素が表面近傍に濃縮して酸化不動態皮膜を形成する傾向があるが、加熱下においては、室温以上に厚く安定な酸化不動態皮膜を形成しやすい。そのため、上述したような箔層を設けることで、酸化不動態被膜の形成を防ぐことができる。箔層の形成方法としては、例えばPVDやCVD、スパッタリング、プリント等が挙げられる。
【0027】
更に、上述したような箔層を設けることで、接合部品との濡れ性がより向上し、接合界面との安定的な接合に大きな役割を果たす得ることができる。なぜなら、Au,Pt,Pd及びNiは多くの元素との間で液体生成時の混合エンタルピーが負であることから、互いに引きつけ合う性質を有する。すなわち、これらの元素からなる箔層は、上述した酸化不動態皮膜の形成防止に加えて、部品との濡れ性の向上にも寄与する。また同時に組成式(1)からなる接合界面との間で拡散を基とした結合が生じる。このとき、上記元素が組成式(1)からなる接合界面側に箔層を構成する元素或いは元素群が傾斜的或いは断続的に拡散した組成を有する接合界面となることが特徴である。
【0028】
請求項4の発明によれば、接合界面に主成分としてAuを含有する場合、Auは一般式(2)で示された非晶質相を主相とする合金の主要な構成元素との間で多くの場合に、液体生成時の混合エンタルピーが大きく負となる元素が必ず存在し、元素間で積極的に結び付こうとする性質が高くなる。その結果、安定した濡れ性が実現でき、高い接合強度を得ることができるという効果を有する。
【0029】
請求項5の発明によれば、接合後の接合界面の融合温度を、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以上に改善させることによって、融点の低い接合母材の耐熱性の問題を解決できるという効果を有する。
【0030】
以上のとおり、本発明によって、精密部品の少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、従来法では接合が困難になる大きさであっても、非晶質相を主相とする合金からなる部品の特性や部品形状を接合後も損なうことなく他方の部品と接合された接合体を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施例における熱板加熱時の代表的な温度変化曲線を示す図である。
【図2】本実施例において得られた精密部品の接合体の外観を示す図である。
【図3】走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって拡大倍率2万倍で観察された接合界面の断面図を示す図である。
【図4】図3で観察された領域の元素分布をエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)を用いて分析した結果を示す図である。
【図5】図4で示された元素分布量を相対的にグラフ化した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の接合体は、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で融解する接合母材を接合界面に用いることを特徴としている。
【0033】
本発明の接合体は、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質相を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる部品との接合体である。
【0034】
前述したように、「非晶質相を主相とする合金」とは、X線回折法による分析によって結晶性の回折ピークが見られないか、或いは結晶の混在が認められた場合でも、示差走差熱量分析で非晶質合金相の存在による明瞭な発熱反応を示す合金を指す。
【0035】
本発明の接合体に用いる接合母材には、接合による接合部品の特性が劣化するのを防ぐために、前記精密部品の結晶化温度以下の温度帯で融解する接合母材を用いることが必要である。具体的には、一般式(1)にて示される組成によって構成された接合母材を用いることが好ましい。また、母材を作製する際の原材料及び作製工程に起因する不純物元素による影響は、例えばエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)にて明瞭に観測されるような量でなければ、特に差し支えない。
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。
【0036】
接合界面の組成範囲xについて、xが17.5未満であると、接合母材の融点が上昇するため、結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合界面を形成し得ない可能性が極めて高くなり好ましくない。また、xが40を超えると組成によっては接合母材の融点が上昇するため、結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合界面を形成し得ない可能性が極めて高くなるほか、接合界面に対するAuの濡れ性への寄与が得られにくくなる可能性が高くなるため好ましくない。故に、接合界面の組成範囲xは、17.5≦x≦40が好ましい。
【0037】
非晶質相を主相とする合金からなる部品は、合金成分元素中で大気中の酸素に対して最も活性な元素が表面近傍に濃縮して酸化不動態皮膜を形成する傾向がある。特に加熱下においては、室温時以上に厚く安定な酸化不動態皮膜を形成しやすい。この酸化不動態被膜は、接合不良が生じる大きな要因となる。
【0038】
そのため、非晶質相を主相とする合金からなる部品の表面への酸化不動態皮膜の形成を抑えるためには、接合前の段階で非晶質相を主相とする合金の接合界面側にAu, Pt, Pd及びNiのうち少なくとも何れか1種を含有する箔層を設けておくとよい。Au,Pt,Pd及びNiは、非晶質相を主相とする合金からなる部品の加熱に伴う表面酸化を防止する。更に、非晶質相を主相とする合金からなる部品と組成式(1)からなる接合界面との安定的な接合に大きな役割を果たす。但し、Niに関しては酸化に対する標準生成自由エネルギーが低いことから、Au,Pt及びPdと共に形成することがより好ましい。
【0039】
本発明の接合体を構成する「非晶質相を主相とする合金からなる精密部品」とは、下記の一般式(2)にて示される組成によって構成されていると好適である。また、母材を作製する際の原材料及び作製工程に起因する不純物元素による影響は、例えばエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)にて明瞭に観測されるような量でなければ、特に差し支えない。
一般式(2):M1aM2bM3cM4dLneM5fM6g
但し、M1はTi,Zr及びHfから選ばれる少なくとも1種の元素、M2はFe,Co,Ni,Cu,V,Cr,Mn及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はZn,Be,Al,Ga,Ge,In及びSnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はAu,Pt,Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、LnはSc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Yb及びMm(希土類元素の集合体であるミッシュメタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はTa,W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M6はSi,P,B及びCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a,b,c,d,e及びfはそれぞれ原子%で、15≦a≦85,15≦b≦85,0≦c≦25,0≦d≦25,0≦e≦10,0≦f≦10,0≦g≦10である
一般式(2)に示される合金は、下記一般式(2−a)〜(2−y)に示される合金を含む。
一般式(2−a):M1aM2b
一般式(2−b):M1aM2bM3c
一般式(2−c):M1aM2bM4d
一般式(2−d):M1aM2bLne
一般式(2−e):M1aM2bM5f
一般式(2−f):M1aM2bM6g
一般式(2−g):M1aM2bM3cM4d
一般式(2−h):M1aM2bM3cLne
一般式(2−i):M1aM2bM3cM5f
一般式(2−j):M1aM2bM3cM6g
一般式(2−k):M1aM2bM4dLne
一般式(2−l):M1aM2bM4dM5f
一般式(2−m):M1aM2bM4dM6g
一般式(2−n):M1aM2bLneM5f
一般式(2−o):M1aM2bM5fM6g
一般式(2−p):M1aM2bM3cM4dLne
一般式(2−q):M1aM2bM3cM4dM5f
一般式(2−r):M1aM2bM3cM4dM6g
一般式(2−s):M1aM2bM4dLneM5f
一般式(2−t):M1aM2bM4dM5fM6g
一般式(2−u):M1aM2bLneM5fM6g
一般式(2−v):M1aM2bM3cM4dLneM5f
一般式(2−w):M1aM2bM3cM4dM5fM6g
一般式(2−x):M1aM2bM4dLneM5fM6g
一般式(2−y):M1aM2bM3cM4dLneM5fM6g
【0040】
一般式(2−a)の組合せからなる合金は、M1とM2との2元組成においても非晶質相を形成する組合せが数多く存在しており、3種以上の元素の組合せとすることで、より容易に非晶質相が形成される。特に、M1は安定した接合界面を得るための重要な元素であり、M1の組成範囲aが15未満であると濡れ性の低下を招く。これに伴い、M2の組成範囲bも85以下に限定される。また、M1の組成範囲aが85を超えると、M2にいかなる元素を有していても非晶質相が極めて形成されにくくなる。これに伴い、M2の組成範囲bも15以上に限定される。
【0041】
一般式(2−b)〜(2−y)の組合せからなる合金は、一般式(2−a)を基にM3,Ln,M4及びM5を添加したものである。本発明の接合部材に用いられる非晶質相を主相とする合金からなる精密部品において、添加元素或いは添加元素群であるM3,Ln,M4及びM5は合金の主要成分とはなり得ない。なぜならば、M1とM2の何れかが主成分となることでより高い結晶化温度が得られ、本発明の接合体に適しているからである。しかしながら、これらの添加元素或いは添加元素群は、非晶質相の安定化などに寄与する一方で接合に大きな支障をきたさないことから、含有していても何ら問題はない。
【0042】
但し、M3及びM4は、その組成範囲c及びdが25を超えると非晶質相が極めて形成されにくくなるため、これらの組成範囲c及びdは25以下に限定される。また、Ln及びM5及び非金属であるM6は、これらの組成範囲e,f及びgが10を超えると非晶質相が極めて形成されにくくなるため、これらの組成範囲e,f及びgは10以下に限定される。
【0043】
更に、接合部品を構成する元素(群)或いは接合界面に形成された箔層を構成する元素(群)と接合母材との間で拡散を生じさせたり、接合母材を意図的に酸化させたりすることによって、接合母材の耐熱性に問題がある場合、接合後の接合界面の融解温度を非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以上に改善することも可能である。その方法としては、一般式(1)で示される接合母材を用いた場合においては、Si、Ge或いはSnを接合部品の接合界面に拡散させることによって亜共晶化させる方法、箔層をより厚くすると共に接合母材よりも薄くして双方を拡散させることによって亜共晶化させる方法などが挙げられる。
【実施例】
【0044】
本実施例は、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質相を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる精密部品との接合体を提供するための代表的な手法や条件の一例であり、これらの手法や条件のみに限定されない。以下の本実施例においては、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品に、Zr55Cu30Al10Ni5(以下、Z合金と称す)、Cu60Zr30Ti10(以下、C合金と称す)、Ti40Zr10Cu36Pd14(以下、T合金と称す)、及びNi53Nb20Ti10Zr8Co6Cu3(以下、N合金と称す)をそれぞれ適用した場合について示す。
【0045】
Z合金に代表されるZr−TM(遷移金属)−Al系合金は、1500MPa超の高い強度を有し、酸等に対する耐食性にも優れていることが知られている。更に、ガラス遷移温度(Tg)と結晶化温度との温度差で示される過冷却液体領域(ガラス遷移領域)が極めて広く、Z合金では40K/分の加熱において80〜90K、更に組成を調製することにより100K超にも及ぶ合金が作製可能である。また、非晶質を形成するための臨界冷却速度が数〜数10K/s程度であり、これは最も安定な非晶質状態を有する合金系の一つであると位置付けられる。このため、非晶質相からなるcm級の試料や部品が形成可能であり、非晶質合金として最も盛んに実用化の検討が進められている合金系である。
【0046】
C合金に代表されるCu−(Zr,Hf)−Ti系合金は、Zr−TM(遷移金属)−Al系合金と比較すると非晶質状態の安定性に劣るものの、Zr−TM(遷移金属)−Al系合金と類似の特性を備えている上に、より優れた強度特性を有しており、2000MPaオーダの強度を有することが知られている。Cu−(Zr,Hf)−Ti系合金にNi,Nb,Ta,Beなどを数%程度添加することによって耐食性や強度を更に改善した例も報告されている。Zr−TM(遷移金属)−Al系合金で機械的特性が不足する場合に特に有効な合金系であり、やはり盛んに実用化の検討が進められている合金系である。
【0047】
T合金に代表されるTi−Cu−Zr−Pd系合金は、生体毒性元素を含まない生体材料用途として開発され、Zr−TM(遷移金属)−Al系合金と同等レベルの機械的特性を持ち、Hanks溶液に対して純TiやTi−6Al−4V合金を上回る優れた耐食性を有するほか、生体活性化処理を行うことによって優れた生体親和性を有することが知られている。高価なPdを大量に含み得るため、機械構造材料としては現実的ではないが、生体内に挿入したり埋め込んだりする精密部品やそれを用いた低侵襲精密アプリケーションなどの用途で、実用化が検討されている合金系である。
【0048】
N合金に代表されるNi−Nb−(Ti,Zr)系合金は、実施例中で最も非晶質状態の安定性に乏しいが、引張強度が3000MPaと非常に高く、かつ全ての酸に対して卓越した耐食性を有していることが知られている。この引張強度は、非晶質相を塊として形成可能な合金の中では最も高い部類に当たる。本発明者らは、モジュール0.04のN合金製超精密歯車を用いた遊星歯車機構の耐久性に関する基礎評価試験において、同諸元の工具鋼製超精密歯車を用いた遊星歯車機構と比較して100倍オーダもの優れた耐久性を有することを確認している。また、Z合金を用いた遊星歯車機構と比較しても10倍オーダの優れた耐久性を有することが明らかとなっており、高い負荷を要する微細構造部材に対して、実用化が検討されている合金系である。また同時に、優れた耐食性と水素透過性を利用して、セパレータへの応用も期待されている合金系である。
【0049】
以上のように、非晶質相を主相とする合金の種々の優れた特性を有する精密部品を、その特性や部品の形状などを損なうことなく、適切に接合された接合体は必要不可欠である。
【0050】
以下、本発明の実施例を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0051】
本実施例に用いられる精密部品の模型として、従来の方法では接合加工が困難になることが想定される大きさである直径φ1mm,厚み1mmからなる形状を有する微小片を作製した。次に、微小片の接合対象の表面について、平均粒径1μm未満の酸化物系流動研磨剤を水系溶媒に10〜20体積%混合した研磨液を用いて、樹脂製プレートによる鏡面研磨加工を行った。その後、酸を用いた浸漬洗浄により接合対象面を清浄化した。更に、1Paオーダまで真空引きを行った上でAu及び/或いはNi,Ptなどを総厚み100nm程度となるように蒸着した。
【0052】
一方、接合界面を構成する接合母材には、Au71Sn29を用いた。この接合母材は、10-3Paオーダの真空引きの後Ar置換により約0.02MPa減圧下とした密閉環境下で、単ロールを用いた液体急冷凝固プロセスによって作製された。接合部材の厚みは、おおよそ20μm程度となるようにロールの回転数を制御した。
【0053】
作製した接合母材を1mm×1mmに切り出し、接合対象の2つの精密部品に挟み密着させた状態とした。その後、大気圧下のAr置換雰囲気による加熱処理を熱板上にて所定時間行った。本実施例における加熱処理については、各材料の最適条件であるとは言えないが、最高加熱温度を400℃、最高温度での保持時間を10分に統一して行った。熱板加熱時の代表的な温度変化曲線を図1に示す。これによると、200℃〜400℃の間の昇温速度はおおよそ30〜50K/分程度、冷却速度は温度によって異なるがおおよそ10〜25K/分である。なお、本実施例においては、部品の組合せが同種材からなる接合体の試作のみ実施した。但し、Z合金に関してのみ、種々の代表として結晶金属材料との接合体の試作も実施した。接合部材の可否についてはハンドリングに十分耐えうる接合が行われたものを可とした。また、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品の結晶化の有無については、精密部品の接合界面の対面に付着した箔層を除去した上で、X線回折プロファイルを接合前後で比較し、更に示差走査熱量分析において、昇温速度40K/分にて結晶化に伴う発熱ピークの存在の有無を確認することによって評価した。
【0054】
比較例として、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品に、La55Al25Cu10Ni5Co5(以下、L合金と称す)をそれぞれ適用した場合について示す。L合金は、強度が他の合金系と比較してやや劣るものの、Z合金同様に非晶質状態の安定性に優れ、過冷却液体領域(ガラス遷移領域)は40K/分の加熱において90〜100Kに及ぶ。この安定した過冷却液体において非常に優れた流動性を有していることから、粘性流動加工において極めて優れた微細形状転写性を有する精密部品の作製例が多数報告されており、精密部品の作製に適した合金系である。しかしながら、この合金系はLaが主成分であり、一般式(2)で示すM1或いはM2が主成分である条件から外れている。Ln(希土類元素)を主成分とすると、結晶化温度はM1或いはM2を主成分とする合金系と比べてかなり低く、40K/分の加熱下では約270℃である。これは一般式(1)で示されるAu65.7Sn27.2Ni7.1の融点257℃と比べて僅かな温度差である。L合金については、400℃の加熱処理では結晶化してしまうため、一般式(1)で示されるAu65.7Sn27.2Ni7.1の融点257℃より僅かに高い260℃を最高到達温度とし、保持時間無し(0分)及び10分の加熱処理を行った。
【0055】
本実施例の結果を表1に示す。また、精密部品の接合体の外観を図2に示す。接合後においても接合部品の形状に変化は全く見られなかった。
【0056】
【表1】

【0057】
以上のとおり、本発明例である1〜7では、何れも2つの精密部品の接合していることが確認できた。また、本実施例における処理条件において処理前後のX線回折プロファイルに有意な結晶性回折ピークの発現は認められなかった。また、示差走査熱量分析において結晶化に伴う明瞭な発熱ピークが認められた。一方で、比較例である8では、10分の加熱によって接合することは可能であったものの、結晶化を示唆する結晶性回折ピークの発現が認められた。保持時間無しの場合は、接合するに至らなかった。更に、保持時間無しであっても結晶化を示唆する結晶性回折ピークの発現が認められた。また、示差走査熱量分析において結晶化に伴う明瞭な発熱ピークは認められなかった。
【0058】
次に、本発明例の接合体の接合界面における詳細な分析結果を、代表して本発明例1を基に説明する。接合体を接合界面に対して垂直な方向に切断し、平均粒径1μm未満の酸化物系流動研磨剤を水系溶媒に10〜20体積%混合した研磨液を用いて、樹脂製プレートによる鏡面研磨加工を行い、接合界面の断面を得た。図3に、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって拡大倍率2万倍で観察された接合界面の断面像を示す。左側の明るい像が接合母材成分からなる部位、右側の暗い像が非晶質相を有するZ合金からなる部位である。それらの接合界面は、剥離やクラックなどが全く見られず、良好な接合界面が得られていることが確認できた。また、比較的明瞭なコントラストを有していることが見て取れた。
【0059】
また、接合母材の構成元素及びZ合金の主要な構成元素であるAu,Sn,Zr,Cu,Al,Niについて、同観察像からなる領域の元素分布をエネルギー分散型X線分光器(Energy Dispersive X−ray Spectrometer:EDS)を用いて分析した。その結果を図4に示す。この分析結果からも、接合界面の外観によく一致した各元素の分布が確認された。更に、元素分布量を相対的にグラフ化した結果を図5に示す。接合界面付近において濃度勾配が生じていると予想されるが、その範囲はおおよそ500nm〜1μm程度であり、EDSの測定分解能(15kV,数nA程度の場合の理論値はおおよそ500nm前後である)であることから、接合界面付近の濃度勾配の範囲は500nmよりも狭い可能性が示唆された。
【0060】
また、明るい像で観察される接合母材及び暗い像で観察されるZ合金それぞれの領域について、接合界面から約1μm、約2μm及び約5μm離れた点における定量分析を行った結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

【0062】
この結果から、Z合金の組成比はほぼ均質であるとみなすことが可能な状態であることが明らかとなった。一方で、接合界面近傍の接合母材の組成は、Au−Sn2元状態図で示されるβ相に近い組成を有しており、接合前の組成よりも有意にAu過剰な組成であることが明らかとなった。また、接合界面から離れるに従いSn含有量が増加する傾向にあり、約2μm離れた点ではζ相が主体であると予想される組成となり、更に約5μm離れた点では僅かにSn過剰な過共晶組成を有することが明らかとなった。これは、Z合金の主要な構成元素であるZrやCuとの間で液体生成時の混合エンタルピーが負となるAuが、濡れ性に大きく寄与していることを示唆する結果である。
【0063】
以上のことから、接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、従来の方法では接合加工が困難になることが想定される大きさであっても、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材を接合界面に用いて接合体を形成することによって、非晶質相を主相とする合金からなる部品の特性や部品形状を接合後も損なうことなく他方の部品と接合された接合体を提供することが可能となった。すなわち、小型アクチュエータやMEMSアプリケーションなどに用いられるようなハンドリングが極めて困難な精密部品の接合において、各々の部品の特性を接合後も損なうことなく、かつ接合の信頼性が高く実用に耐えうる、非晶質相を主相とする合金からなる精密部品同士、或いは非晶質相を主相とする合金からなる精密部品と結晶性金属、或いは半導体材料からなる精密部品との接合体を提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体。
【請求項2】
接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する、一般式(1)にて示される組成によって構成された接合母材を接合界面に用いた精密部品の接合体
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。
【請求項3】
接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが非晶質相を主相とする合金からなる場合において、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する、一般式(1)にて示される組成によって構成された接合界面に用いた精密部品の接合体において、非晶質相を主相とする合金からなる部材の接合界面側に予めAu, Pt, Pd及びNiのうち少なくとも何れか1種を含有する箔層と接合母材、及び接合母材を有することを特徴とする精密部品の接合体
一般式(1):Au100-xx
但し、MはSi,Ge,Snのうち少なくとも1種を必ず含む任意の元素群であり、xは原子%で、17.5≦x≦40である。
【請求項4】
接合されている2つ以上の精密部品のうち、少なくとも1つが一般式(2)にて示されかつ3種以上の元素の組合せからなる組成によって構成された非晶質相を主相とする合金からなる精密部品である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の精密部品の接合体
一般式(2):M1aM2bM3cM4dLneM5fM6g
但し、M1はTi,Zr及びHfから選ばれる少なくとも1種の元素、M2はFe,Co,Ni,Cu,V,Cr,Mn及びNbよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M3はZn,Be,Al,Ga,Ge,In及びSnよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M4はAu,Pt,Pd及びAgよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、LnはSc,Y,La,Ce,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Yb及びMm(希土類元素の集合体であるミッシュメタル)よりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M5はTa,W及びMoよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、M6はSi,P,B及びCよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素、a,b,c,d,e及びfはそれぞれ原子%で、15≦a≦85,15≦b≦85,0≦c≦25,0≦d≦25,0≦e≦10,0≦f≦10,0≦g≦10である。
【請求項5】
非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以下の温度帯で溶融する接合母材によって接合された接合体において、接合後の融解温度が、非晶質相を主相とする合金の結晶化温度以上に改善された請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の精密部品の接合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−98383(P2011−98383A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255590(P2009−255590)
【出願日】平成21年11月7日(2009.11.7)
【出願人】(000240477)並木精密宝石株式会社 (210)
【Fターム(参考)】