説明

精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析のための携帯装置

本発明は、(a)精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定するための第1の分析機器;及び(b)それぞれがデータベース及びアルゴリズムを含むか又はそれに結合されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の密度を測定するように構成されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全酸価を測定するように構成されている、少なくとも二つの更なる分析機器;
を含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析するための携帯装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2004年9月17日に出願の米国仮特許出願60/611,002及び2004年9月17日に出願の米国仮特許出願60/611,050の利益を主張する。
本発明は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析のための携帯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
供給原料の分析、例えば原油アッセイは、供給原料を精油所で精製する前に行わなければならない重要な分析である。典型的には、精油所は、それぞれが数多くの重要な特性において異なる、異なる原油及び原油のブレンドを含む多数の異なる供給原料を精製する。それぞれの供給原料の精製のための最適条件を確認し、生成物の収量、品質及び得ることのできる有用性のような供給原料の潜在的な価値、並びに腐食又は堆積のような該供給原料の精油所プロセスに対する潜在的な影響を評価するために、しばしば多数の特性を分析する必要がある。腐食、ファウリング又は触媒被毒のような精油所プロセスに対する更なる影響は、通常、アッセイでは測定されず、他の特性から推定される。
【0003】
これは、伝統的に、比較的大量の物質を必要とし、分析(アッセイ)データの一部の組を生成するのに1〜2週間を要し、全ての組を生成するのに6週間以下を要する時間のかかる分析である。購入者が利用できる全アッセイを行わずに供給原料を購入することは珍しくなく、したがって、購入者は、供給原料の価値に関する多数の仮定、例えば、原油に関しては同様の地域からの従前の原油の知識に基づくことができるという仮定を行わなければならない。これは、特に新しい生産地域からの新しい原油製造の評価における大きなリスクとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
精油所供給原料分析、好ましくは全アッセイを、潜在的な購入者が迅速に利用できることができれば有利であろう。
更に、精油所プロセスの生成物の迅速な分析もまた望ましい。かかる生成物としては、全精油所プロセスにおける中間体、ビチューメン、その後に化学供給原料として用いられる全精油所プロセスからの生成物、及びその後に燃料又は潤滑剤、或いは燃料又は潤滑剤のための配合成分、並びに燃料(例えば航空燃料、ガソリン燃料、ディーゼル燃料及び船舶燃料)及び潤滑剤それ自体として用いられる全精油所プロセスからの生成物が挙げられる。
【0005】
精油所プロセス及びそれからの生成物に関する記載は、当業者に周知であり、例えば、Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, Wiley出版の"Oil Refining", Walter W. Iron, Otto S. Neuwirthと題された章に記載されている。
【0006】
WO 00/39561は、分光法を用いた原油の自動分析法に関する。分光法を用いると、アッセイに必要な多数の原油特性の迅速な分析が得られるが、WO 00/39561の方法は、相当量の原油を未だ必要とし、従来の蒸留装置を用い、分析に2日を要し、測定に用いる赤外スペクトルは原油アッセイに通常必要な全ての特性に関する情報を含んではおらず、したがって幾つかの特性を、正確性が大きく低下する二次相関によって決定することになる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の測定アッセイを、供給原料又は生成物の沸点プロフィール、密度及び全酸価(TAN)のみの測定と、場合によってはこれと硫黄含量の測定とから得ることができる方法が見出された。これまでは、有用なアッセイをこれらのパラメーターのみを用いて得られるかもしれないということは認識されていなかった。本発明は、それを用いて迅速に且つ分析実験室から離れた場所でかかるアッセイを行うことができる携帯装置を提供する。
【0008】
したがって、本発明は、
(a)精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定するための第1の分析機器;及び
(b)それぞれがデータベース及びアルゴリズムを含むか又はそれに結合されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の密度を測定するように構成されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全酸価(TAN)を測定するように構成されている、少なくとも二つの更なる分析機器;
を含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析するための携帯装置を提供する。
【0009】
本発明による携帯装置中に存在する分析機器は、好適にはマイクロ加工されたものであり、センサーの形態であってよい。マイクロ加工された機器とは、機器の重要な分析部分又は検出器がマイクロチップ産業と整合する技術を用いて製造され、被検体との接触に応答してスペクトル又は単純な電気信号を発生させる機器である。簡単な電気信号は、結合された電子機器に供給され、ここで入力信号を測定する特性に関する数値データに変換されるか、或いは計量化学技術を用いて更に処理される。スペクトルは、直接用いるか或いは計量化学技術にかける前に数学的に処理して、必要とされる一つ又は複数の特性を得ることができる。いずれの場合においても、数値データ又はスペクトルは、測定された数値データ又はスペクトルと、予め行った分析測定によって測定されたかかる試料の既知の組成又は特性との間の相関関係から得られるモデルに供給される。
【0010】
概して、センサーは、単純な電気信号を発生させ、非常に小型で安価であり、単一の特性を測定するために用いられる。スペクトルを発生させる他のマイクロ機器は、多少大きく、より高価であってもよく、しばしば1種を超える特性を測定するために用いることができる。
【0011】
本発明の装置が、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定することのできる少なくとも一つの機器を、測定する特性に最も良く適合する装置であるように選択された少なくとも二つの他の機器と共に含まなければならないことが、本発明の重要な特徴である。測定する特性に対する測定機器のこの選択(マッチング)は、一つの機器、通常はNIR分光光度計を用いて、スペクトルと予め測定した分析測定値との間の相関関係を介して必要とされる全特性を測定していた従来の方法とは区別される。
【0012】
沸点プロフィールの測定のための第1の分析機器は、沸点プロフィールを直接得ることができるものであってよいが、好ましくは、好適なソフトウェア又は上記記載のモデルを用いることによって、例えば既知の原油のような既知の試料のデータを含む好適なデータベースを参照することによって沸点プロフィールを得るものである。この手段によって、石油をその成分に物理的に分離することが必要であった従来の方法と比較して極めて迅速な分析を得ることができる。第1の分析機器は、好ましくは、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の真の沸点プロフィール(TBP)を測定する。第1の分析機器は、好ましくは、(i)マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器;(ii)マイクロNIR分光光度計;(iii)マイクロオシレータ機器;及び(iv)マイクロGC;から選択される。
【0013】
装置は、また、少なくとも一つの密度を測定するための機器及び少なくとも一つのTANを測定するための機器を含む、少なくとも二つの更なる分析機器を含む。好ましくは、密度を測定するための機器は振動センサーであり、TANを測定するための機器は電気化学センサーである。これらの更なる機器のそれぞれは、所望の場合には、1以上の更なる特性に加えて、沸点プロフィールを測定することもでき、好ましくはTBPを測定することもできるものであってよい。例えば、第1の分析機器はマイクロ蒸留又はマイクロ分留機器であってよく、第2の分析機器はマイクロNIR分光光度計であってよい。
【0014】
而して、好ましい態様においては、本発明は、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器、マイクロNIR分光光度計、マイクロオシレータ機器及びマイクロGCから選択される3以上の分析機器を含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析のための携帯装置を提供する。特に好ましい態様においては、装置は、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器、マイクロNIR分光光度計、マイクロオシレータ機器及びマイクロGCから選択される少なくとも一つ、好ましくは少なくとも三つの機器を、更なる振動センサー及び電気化学センサーと共に含む。
【0015】
典型的には、例えば3以上のマイクロ蒸留又はマイクロ分留機器、マイクロNIR機器、マイクロオシレータ機器及びマイクロGC機器を含む上記記載の装置は、精油所供給原料アッセイ又は精油所プロセスの生成物の分析に必要な有意量の分析データを提供することができる。
【0016】
更に、(b)の更なる分析機器は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の更なる所望の特性を確認する多数の更なる分析機器を含んでいてよい。更に、単一の特性を測定するための1を超える機器を装置内に含ませてもよい。この見かけ上の余剰性は、結果を互いにクロスチェックするのに用いることができるので、極めて有益である。
【0017】
沸点プロフィール、密度及びTANに加えて測定することが望まれる可能性のある精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の更なる特性は、試料に依存性のものであり、典型的には、全塩基価(TBN)、低温フロー特性(例えば、流動点、氷点及び曇り点)、粘度、リサーチオクタン価(RON)、モーター法オクタン価(MON)、セタン価、煙点、鉱山局相関指標(BMCI)、屈折率、導電度、硫黄含量、窒素含量、ニッケル含量、バナジウム含量、及びこれらの組み合わせを挙げることができる。好ましくは、装置は、1以上のこれらの特性を測定するための少なくとも一つの更なる機器を含む。例えば、装置は、硫黄含量を測定するための更なる機器、例えばマイクロGC及びマイクロ質量分光光度計に接続した熱分解器(pyrolyser)、及び/又は金属含量を測定するための更なる機器、例えば金属特異センサーを含むことができる。
【0018】
かかる更なる特性を測定するための好適な機器としては、マイクロ導電度/キャパシタンス測定機器(例えば酸性度の測定のため)、マイクロレオロジー測定機器(例えば粘度の測定のため)、及びマイクロ分光法測定機器、例えばNIR、イオン移動度/微分型移動度測定器、音響光学測定機器、音響測定機器、UV−可視光及び中赤外分光法測定機器(例えば中赤外機器はナフテン酸酸性度の測定のため)を挙げることができる。マイクロ導電度/キャパシタンス測定機器、マイクロレオロジー測定機器、及び音響光学測定機器は、全てセンサーの形態で入手することができ、本発明の装置におけるセンサーの配列の一部分を形成することができる。
【0019】
ステップ(b)における1以上の更なる分析機器は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全体の密度及びTAN並びに場合によっては1以上の更なる特性、及び/又は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の1以上のフラクションの密度及びTAN並びに場合によっては1以上の更なる特性を測定することができる。
【0020】
而して、更なる好ましい態様においては、本発明は、
(a)精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定することができ、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を2以上のフラクションに分離するためのマイクロ分離機器;及び
(b)1以上のフラクションの密度及びTANを測定するための2以上の更なる分析機器;
を含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析するための携帯装置を提供する。
【0021】
この態様においては、マイクロ分離機器は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を少なくとも二つのフラクションに分離し、かかるフラクションは、次に2以上の更なる分析機器によって分析することができる。
【0022】
ステップ(a)のマイクロ分離機器は、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定することができ、好ましくはTBPを測定することができる。好ましくは、マイクロ分離機器は、本発明のステップ(a)の第1の分析機器である。最も好ましくは、マイクロ分離機器は、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器及びマイクロオシレータ機器から選択される。
【0023】
また、(b)の2以上の更なる分析機器は、フラクションの密度及びTANを測定するための2以上の分析機器に加えて、沸点プロフィール、好ましくはTBPを測定するための該第1の分析機器(a)を含んでいてよい。
【0024】
(b)の更なる分析機器は、ステップ(a)において生成した1以上のフラクションの密度、TAN、及び場合によっては沸点プロフィールを測定するために用いられる。1以上の更なる分析機器は、また、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全体の特性を測定することができるように構成することもできる。
【0025】
例えば、マイクロ分離機器は、第1の分析機器であるマイクロ蒸留又はマイクロ分留機器であってよく、第2の分析機器は、マイクロNIR分光光度計であってよい。マイクロNIRは、例えば、マイクロ分離機器から得られた1以上のフラクション、及び場合によっては精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全体における密度、飽和物及び芳香族物質の量に関するデータを与えるために用いることができる。
【0026】
また、或いは更に、更なる分析機器は、また、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全体及び/又はフラクションの更なる所望の特性を確認するための上記記載の多数の他の分析機器を含むこともできる。
【0027】
好ましくは、本発明の装置は、好適には5kg未満、例えば2kg未満の全重量を有する手持ち型である。
本発明の装置は、少量の、典型的には100ml未満、例えば10ml以下、好ましくは1ml以下の精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物(本明細書において、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物は「試料」と称することができる)しか必要としない。必要とされる試料が少量であるので、分析を、従来の分析、例えば従来の原油アッセイよりも著しく短い時間で行うことができる。
【0028】
典型的には、本発明の装置は、2時間未満で分析を与え、好ましくは30分未満、好ましくは5分未満、例えば2分未満で分析を与える。
精油所供給原料は、原油、合成原油(合成石油)、生物成分、中間体成分、例えば残留成分又は分解石油成分、或いは1以上のかかる供給原料のブレンドのような、精製所に供給することのできる任意の好適な供給原料であってよい。
【0029】
好ましくは、精油所供給原料は、場合によっては、1以上の合成原油成分、生物成分又は中間体成分、例えば残留成分又は分解石油成分も含む、原油又は原油のブレンドである。
【0030】
本発明の携帯装置を精油所プロセスの生成物の分析のために用いる場合には、生成物は、全精油所プロセス中の中間体流、ビチューメン、その後に化学供給原料として用いられる全精油所プロセスからの生成物、その後に燃料又は潤滑剤、或いは燃料又は潤滑剤のための配合成分、或いは燃料、例えば航空燃料、ガソリン燃料、ディーゼル燃料又は船舶燃料、或いは潤滑剤それ自体として用いられる全精油所プロセスからの生成物であってよい。
【0031】
存在する場合には、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器は、試料を蒸留して従来の蒸留によって得られるものと同様のフラクションを与えるのに用いることができる任意の好適な機器であってよい。例えば、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器は、原油又は他の精油所供給原料を蒸留して、原油蒸留ユニット(CDU)における従来の精製蒸留によって得られるものと同様のフラクションを与えることができる。マイクロ蒸留機器は、また、試料(例えば原油)を気化するためのマイクロヒーター、それを通って気化した試料が通過して気液分離を達成する好適な導管、例えば毛細管、導管を通過した気化試料が凝縮する好適な凝縮領域(典型的にはマイクロ冷却器のような冷却領域)、及び凝縮領域での試料の凝縮を測定するためのマイクロセンサーを含む、マイクロ設計機器であってもよい。マイクロセンサーは光学センサーであってよい。好ましくは、マイクロ蒸留機器は、例えばシリコンウエハー上のマイクロ加工分離機器である。マイクロ蒸留機器は、使い捨て型であってよい。マイクロ蒸留機器が従来の蒸留によって得られるものと同様の一連のフラクションを与える場合には、これらのフラクションは、1以上の更なる分析機器によって分析することができる。
【0032】
マイクロオシレータ機器は、存在する場合には、好ましくは音響光学測定機器又はセンサーである。マイクロオシレータ機器は、オシレーター上の物質の質量によって変化する機器の振動の周波数の測定に基づくものである。而して、物質が機器上で蒸発又は凝縮すると、周波数が変化する。沸点プロフィールに関する情報に加えて、音響光学測定機器は、粘度、低温フロー特性、揮発性コンタミナント及び沈殿物の形成に関する情報を提供することができる。好適なマイクロオシレータは、米国特許5,661,233及び5,827,952に記載されている。
【0033】
マイクロNIRは、存在する場合には、沸点プロフィールに関する情報を提供し、シミュレートされた蒸留曲線を与え、並びに試料全体及び/又は好適な分離ステップ、例えばマイクロ蒸留機器から得られたフラクションにおける飽和物及び芳香族物質の密度及び量に関する情報を提供するのに用いることができる。硫黄含量、及び/又は低温フロー特性、例えば曇り点及び氷点、酸性度(TAN)、リサーチオクタン価(RON)、モーター法オクタン価(MON)、セタン価及び煙点も測定することができる。好適なマイクロNIR分析装置としては、Axsun Technologies Inc., Massachusettsによって製造されているAxsun NIR−APSアナライザーが挙げられる。
【0034】
マイクロGCは、存在する場合には、シミュレートされた蒸留曲線を提供し、C1〜C19炭化水素のような炭化水素スペシエーションを提供することができる。好適なマイクロGC機器としては、マサチューセッツ大学によって開発されたもののようなSLSマイクロテクノロジーGC又は他のマイクロチップをベースとするGCが挙げられる。
【0035】
マイクロイオン移動度/微分型移動度分光光度計は、存在する場合には、試料中の特定の分子タイプ及び特に極性分子、例えば、有機塩化物又はメタノール並びにスルフィド及び窒素化合物のようなコンタミナントに関する情報を提供するのに用いることができる。更に、マイクロパイロライザーと結合したマイクロイオン移動度/微分型移動度分光光度計は、強度が高められた窒素及び硫黄分析を与えることができる。マイクロイオン移動度/微分型移動度分光光度計は、最良には、マイクロGC及び/又は予備分留/予備濃縮機器と組み合わせて用いられる。好適なマイクロイオン移動度/微分型移動度分光光度計としては、Sionex microDMxが挙げられる。
【0036】
センサーの形態のマイクロ加工機器が、その小さなサイズ及び低いコストのために有利である。本発明による装置の好ましい態様においては、装置は、センサーである1以上のマイクロ機器を含む。多数のかかるセンサーを、好ましくは配列の形態で配置して存在させることができる。それぞれのセンサーは、センサー信号を数値データに、及び場合によっては数値データに関係する計量化学モデルを所望の特性に変換する結合された電子機器を備える。センサー信号は、測定する特性に関する情報、或いは測定する特性に直接関連する情報を含む。
【0037】
本発明は、その比較的小さな個々のサイズ及び試料の必要量のために、多数の異なる分析機器を単一の携帯装置内に配列することができるという有利性を有する。本発明による装置は、装置を用いて試料(又はそのフラクション)の多数の特性を確認することができ、直接か又は以下に更に説明する好適なデータベースモデルを介して分析のための大量のデータを提供する、少なくとも3個の異なる分析機器、好ましくは少なくとも5個の異なる分析機器、例えば少なくとも10個の異なる分析機器を含む。
【0038】
その携帯性のために、本発明による装置は、分析する試料の場所に持ち運ぶことができ、試料の迅速な分析が得られる。例えば、原油分析(アッセイ)に関しては、装置を、例えば、原油タンカー上又は陸上原油貯蔵タンクで、港での又はパイプラインからの原油タンカーの積み込み又は陸揚げ中に、或いは石油探査採油所又は製造現場において、原油の「現場での」迅速な査定/評価を行うために用いて、潜在的な購入者が原油の価値を迅速に確認することを可能にすることができる。石油探査採油所においては、本発明の装置を、採油所の「ウェルヘッド」で用いて、原油の迅速な分析を提供する、例えば試験井戸での原油の特性の迅速なフィードバックを提供して該原油の評価を行うことを可能にすることができる。かかる用途においては、石油を、プレフィルターを通して通過させて、ボーリングプロセス、例えばボーリング添加剤からの汚染物質を除去することができ、或いは、好適な補正モデルを用いて得られたデータを補正することができる。
【0039】
本発明による装置の部品の比較的小さなサイズのために、所用電力もまた比較的低い。したがって、装置は、電池電源が重すぎて装置の携帯性に悪影響を与えることなく、好適な電池(又は電池パック)、好ましくは充電可能な電池で運転することができる。
【0040】
好ましくは、装置は、無線網型回線網のような無線通信手段を有するか又は少なくとも適合しており、より好ましくは衛星データ通信手段のような遠隔通信手段と適合しており、分析結果を潜在的な購入者に速やかに通信することができて、分析データを潜在的な購入者に入手可能にする時間スケールを減少させる。
【0041】
特に好適なマイクロ機器が入手できない場合には、本発明の装置は、他の携帯分析装置、特に携帯型X線ケイ光(XRF)分光測定及びレーザー誘起ブレークダウン分光測定(LIBS)のような元素データを得るものと組み合わせて用いて、アッセイの幅を向上させることができる。
【0042】
例えば、XRFは、試料、例えば原油フラクションの硫黄及び金属含量の分析を提供することができる。好適な携帯型のXRF分析装置としては、OXFORD instrumentsから入手できるものが挙げられる。
【0043】
概して、本発明による装置は、場合によって任意の他の分析装置と組み合わせて、分析する試料の少なくとも10種の重要な特性、例えば少なくとも20種の重要な特性に関するデータを生成する。例えば、原油アッセイに関しては、本発明による装置は、場合によって任意の他の分析装置と組み合わせて、好ましくは、全原油及び/又はそのフラクションの沸点プロフィール、密度、全酸価(TAN)、低温フロー特性(例えば、流動点及び曇り点)、粘度、硫黄含量、窒素含量、ニッケル含量、バナジウム含量、及びこれらの組み合わせをはじめとする、従来の原油アッセイで測定される重要な特性の大部分に関するデータ、あるいはそれから(以下に更に記載するように)誘導することのできるデータを提供する。同様の特性は、他の精油所供給原料のアッセイに関して必要とされている。
【0044】
本発明による装置、及び場合によっては任意の他の分析装置からの分析データは、直接、十分な分析データ、例えば分析又は評価する原油に関するアッセイデータを生成することができる。
【0045】
また、場合によっては他の分析装置と組み合わせて装置から直接得られる分析データは、好適なデータベースモデル、典型的には多数の他の試料の分析から得られる分析データから誘導されるモデルに入力することによって増強される。例えば、原油の分析に関しては、得られた分析データを、多数の他の原油の分析から得られたアッセイデータから誘導される原油アッセイデータベースモデルに入力することによって増強することができる。原油アッセイデータベースモデルを用いて、改良された信頼性を有する詳細なアッセイを生成することができる。
【0046】
同様に、精油所プロセスの生成物の分析に関しては、データを、多数の同様の(等価の)生成物の分析から誘導された生成物特性の好適なデータベースモデルに入力することによって増強することができる。
【0047】
例として、本発明による装置及び場合によっては任意の他の分析装置から得られた分析データが、NIRのような多変量分析技術からのデータである場合には、WO 03/48759に記載されているように、データベース中の既知の多変量分析データの線形結合に情報を近似させることによって、分析データを分析することができる。
【0048】
本発明の装置から得られる迅速な分析ゆえに、分析をより頻繁に得ることができ、及び/又はプロセスの最適化のために用いることができる。例えば、装置を精製所において用い、精製所で(2以上の入手できる原料から)生成される原油のブレンドのような精油所供給原料のブレンドに対して定期的な分析を行って、ブレンドに関する精製所の最適の構成を確保することができる。更に、装置を用いて、精製又は配合ステーションに到着した供給原料のコンシステンシー及び/又は品質を確認したり、及び/又は、装置を用いて、配合及びプロセス精製最適化モデルに入力するための供給原料の品質及び特性のデータのオンライン又はアットラインの測定を提供することができる。
【0049】
本発明の装置を採油所の「ウェルヘッド」で用いる場合には、多数の装置を、共通の移送機構、例えば共通のパイプラインを用いる異なるウェルヘッドで運転して、それぞれの井戸からの原油の分析を提供することができる。個々の原油の分析及び適当なスケジューリングによって、最終的な原油ブレンドのより最適な組成を得ることができる。更に、異なるウェルヘッドからの原油の分析を繰り返すことにより、経時的な個々の原油における変化を用いて、生成した原油ブレンドに対する影響又は配合への影響を予測して、一定の品質の原油ブレンドを保持することができる。
【0050】
同様に、装置を精油所プロセスから得られた生成物の分析のために用いる場合には、装置を用いて、精製所、或いは化学プラント自体のようなその後の場所、燃料配合ターミナル又は燃料を含むタンク、例えば燃料タンカー、又は飛行場、造船所における固定タンク、或いはガソリンスタンドフォアコートにおける生成物のコンシステンシー及び品質をチェックすることができる。
【0051】
更なる態様においては、本発明は、また、上記に記載した携帯装置を用いて精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析することを含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析方法も提供する。
【0052】
本方法は、また、1以上の更なる携帯分析装置、潜在的な購入者への分析結果の通信手段、及び/又は上記に記載のデータベースモデルを用いて得られた分析情報の組み合わせ、を用いて精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析を行うことを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定するための第1の分析機器;及び
(b)それぞれがデータベース及びアルゴリズムを含むか又はそれに結合されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の密度を測定するように構成されており、その少なくとも一つが精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全酸価を測定するように構成されている、少なくとも二つの更なる分析機器;
を含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析するための携帯装置。
【請求項2】
第1の分析機器が、(i)マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器;(ii)マイクロNIR分光光度計;(iii)マイクロオシレータ機器;及び(iv)マイクロGC;から選択される請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
更なる分析機器の少なくとも一つが、1以上の更なる特性に加えて沸点プロフィールを測定することができる分析機器を含む請求項1又は2に記載の携帯装置。
【請求項4】
マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器、マイクロNIR分光光度計、マイクロオシレータ機器及びマイクロGCから選択される3以上の分析機器を含む請求項1〜3のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項5】
存在する分析機器の少なくとも一つがセンサーである請求項1〜4のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項6】
マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器、マイクロNIR分光光度計、マイクロオシレータ機器及びマイクロGCから選択される3以上の分析機器を、振動センサー及び電気化学センサーと共に含む請求項5に記載の携帯装置。
【請求項7】
硫黄含量を測定するための少なくとも一つの機器、及び/又は金属含量を測定するための少なくとも一つの機器を含む請求項1〜6のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項8】
更に以下の特性:全塩基価、任意の低温フロー特性、粘度、リサーチオクタン価、モーター法オクタン価、セタン価、煙点、鉱山局相関指標、屈折率、導電度、窒素含量、及びこれらの組み合わせ;の少なくとも一つを測定することができる請求項1〜7のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項9】
ステップ(b)での2以上の更なる分析機器が、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の全体の密度及びTAN及び/又は精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の1以上のフラクションの密度及びTANを測定する請求項1〜9のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項10】
(a)精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の沸点プロフィールを測定することができ、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を2以上のフラクションに分離するためのマイクロ分離機器;及び
(b)1以上のフラクションの密度及びTANを測定するための2以上の更なる分析機器;
を含む請求項1〜9のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項11】
ステップ(A)のマイクロ分離機器が、ステップ(a)の第1の分析機器であり、マイクロ蒸留又はマイクロ分留機器及びマイクロオシレータ機器から選択される請求項10に記載の携帯装置。
【請求項12】
マイクロ分離機器としてマイクロ蒸留又はマイクロ分留機器を含み、第2の分析機器としてマイクロNIR分光光度計を含む請求項11に記載の携帯装置。
【請求項13】
手持ち型で、5kg未満、例えば2kg未満の全重量を有する請求項1〜12のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項14】
少なくとも5個の異なる分析機器を含む請求項1〜13のいずれかに記載の携帯装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の携帯装置を用いて精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物を分析することを含む、精油所供給原料又は精油所プロセスの生成物の分析方法。
【請求項16】
携帯装置から得られた分析データを、好適なデータベースモデルに入力することによって増強する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
原油又は原油のブレンドを分析することを含む請求項15又は16に記載の方法。

【公表番号】特表2008−513784(P2008−513784A)
【公表日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532518(P2007−532518)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/033240
【国際公開番号】WO2006/034069
【国際公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(597142701)ビーピー オイル インターナショナル リミテッド (16)
【氏名又は名称原語表記】BP OIL INTERNATIONAL LIMITED
【Fターム(参考)】