説明

精神分裂病の治療のための併用療法

本発明は、精神分裂病のための新しい治療法を対象とする。精神分裂病は非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物の組合せに応答することが発見された。この組合せは、精神分裂病の急性症状を緩和するために特に有用である。本発明はまた、バルプロ酸化合物と組み合わせて抗精神病薬を含有する新しい製剤に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神分裂病の治療におけるバルプロ酸化合物及び非定型抗精神病薬の使用を対象とする。本発明の他の局面は、バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の両方を含有する医薬組成物を対象とする。
【背景技術】
【0002】
精神分裂病及び関連障害(例えば分裂感情障害)などの精神病状態は、世界中の全人口の約1−2%を悩ませる、病因のはっきりしない複雑で不均質な疾患である。精神分裂病は、「陽性症状」(幻覚、妄想及び概念の解体)と「陰性症状」(感情鈍麻、社会的引きこもり、情動及び会話の貧困)の両方を有することを特徴とする。神経伝達物質ドーパミンの異常作用が精神分裂病の指標である。ドーパミンの作用が中間皮質系では低下し(陰性症状をもたらす)、中脳辺縁系では上昇する(陽性又は精神病症状をもたらす)。
【0003】
精神分裂病の明白な徴候の大部分は過度のドーパミン作用を伴っているので、初期の薬剤治療はCNSにおけるドーパミン受容体を遮断することを焦点とした。クロルプロマジンは、1950年代にさかのぼる、精神分裂病のために開発された最初のそのような薬剤であった。クロルプロマジンはD受容体に高い親和性を有し、その受容体でのアンタゴニストとして機能する。
【0004】
その後いくつもの他のDアンタゴニストが開発された。これらのDアンタゴニストはしばしば「神経弛緩薬」又は「古典的抗精神病薬」と称される。そのようなDアンタゴニストの例は、チオリダジン、フルフェナジン、ハロペリドール、チオキサンテン、フルペンチキソール、モリンドン及びロキサピンを含む。これらのDアンタゴニストは精神分裂病の陽性症状を治療するために有効であるが、陰性症状に対してはほとんど若しくは全く効果がない。Dアンタゴニストのさらなる難点は、硬直、振せん、運動緩徐(緩慢な運動)及び思考緩慢(緩慢な思考)、ならびに遅発性ジスキネジー及びジストニーを含む錐体外路性副作用の高い発生率である。
【0005】
アンタゴニストに結びつく有意の副作用及び限られた効果のために、研究者達は異なる作用機構を有する新しい抗精神病薬を発見しようと試みた。研究者達は、CNS内の他の神経伝達物質に注目し、それらが精神分裂病にどのような影響を、もし影響があるとすれば、及ぼしうるかを調べた。検討された神経伝達物質は、セロトニン(「5HT」)及びγ−アミノ酪酸(「GABA」)を含んだ。研究者達はまた、ホスホリパーゼ阻害因子、ニューロキニンアンタゴニスト、AMPAモジュレーター及びオピオイドアンタゴニストの精神分裂病を緩和する能力を評価した。
【0006】
これらの努力は、CNSにおけるセロトニン伝達を仲介することによって精神分裂病を緩和する新しいクラスの抗精神病薬の開発を導いた。これらの薬剤は一般に「非定型抗精神病薬」と称される。非定型抗精神病薬はすべて、CNS内の5HT受容体に結合する。これらの化合物は、これらの5HT受容体でセロトニンのアンタゴニストとして働く。非定型抗精神病薬の作用機構の詳細な検討は、Liebermanら、Biol.Psychiatry 1998;44:1099−1177によって述べられている。そのような薬剤の例は、クロザピン、オランザピン及びリスペリドンを含む。
【0007】
現在までに少なくとも2つの異なるGABA受容体、GABA及びGABAが特定されている。Wassefら、J Clin Psycholpharmacol 1999;19:222−232。研究者達は、GABAアゴニストはCNS内のドーパミン伝達を下方調節するので、精神分裂病において有用性を持つであろうと主張した。そのようなGABAアゴニストの例は、ベンゾジアゼピン(すなわちバリウム、リブリウム等)、ビニルGABA及びバルプロ酸を含む。理論上の有望性にもかかわらず、これらのGABAアゴニストに関する臨床試験は各種入り混じった結果を生じた、Wassef、前出。
【0008】
研究者達はまた、異なる作用機構を有する薬剤の組合せを用いることによって精神分裂病を治療することを試みた。Wassefらは、精神分裂病の急性増悪を緩和するための、GABAアゴニスト(ジバルプロックスナトリウム)と組み合わせたDアンタゴニスト(ハロペリドール)の使用について報告した(J.Clin Psychopharmacol Vol 20 No.3 357−361(2000))。Wassefらは、12名の患者を含む臨床試験においてこの組合せを評価した。治療群はハロペリドールとジバルプロックスナトリウムを摂取した。対照群はハロペリドールだけを服用した。治療群は対照群よりも大きな改善を示した。著者らは、そのような組合せはさらなる試験に値すると結論した。
【0009】
Kausenらは、少なくとも2年間クロザピン(非定型抗精神病薬)で維持されていた14名の慢性精神分裂病患者を含む試験に関して報告した(Neuropsychobiology 11:59−64(1984))。バルプロ酸ナトリウムをこれらの患者において90日間導入し、その後中止した。併用及びクロザピンを服用している間の患者の症状を評価した。バルプロ酸は患者の症状に有意の作用を及ぼさなかった。
【0010】
クロザピンは精神分裂病の陰性症状を管理する上で有意の効果を示してきたが、その広汎な使用は同時にいくつかの深刻な副作用も際立たせた。より深刻な副作用の一つは発作である。Balenは、クロザピンを服用している患者において発作を防ぐためにバルプロ酸を予防的に使用することについて報告した(Int.J.Psychiatry Clin.Pract.3/4(249−251)(1999))。精神分裂病の症状への影響は記述されなかった。Tanerらも同様の結果を述べている(Int.J.Psychiatry Clin.Pract.2/1(53−55)(1998))。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
精神分裂病の広汎な発生率及びこの疾患に関連する重大な経済的コストに鑑みて、新しい治療レジメンは現在も当分野にとって貴重な貢献である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明に従って、精神分裂病の治療のための新しい治療レジメンが発見された。精神分裂病を有する患者に非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物を同時投与することによって精神分裂病を治療できることが発見された。
【0013】
さらなる実施態様では、この組合せは、精神分裂病患者を疾患の急性期に治療するために特に有益であることが発見された。急性期は、病勢盛んな精神病期として特徴付けられる。急性期は、激越な又は危険な行動、幻覚、妄想、敵意、奇異な行動、パラノイア等を含みうる。この急性期の間は、患者が正常な社会環境で役割を果たすことはほとんど不可能である。典型的には、患者はこの急性期には入院する。この急性期はまた、典型的には精神分裂病に関連する精神病とも称される。
【0014】
バルプロ酸の付加は精神分裂病のこの急性期からの患者の回復を促進する。精神病の症状は、非定型抗精神病薬だけを服用している患者よりも速やかな速度で沈静する。それ故、バルプロ酸は患者がこれらの精神病の明白な症状を呈する期間を短縮し、潜在的に患者の入院期間を短縮するのに役立つ。
【0015】
バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の組合せはまた、精神分裂病以外に、他の精神病(mental illness)の治療においても有用である。精神病(psychosis)はしばしば分裂病様障害及び痴呆に結びつく。本発明の組合せで患者を治療するとき、これらの疾患に関連する精神病がより速やかな速度で消散する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
A)精神分裂病
主要な精神病性疾患である精神分裂病は、しばしば患者の生活に悲惨な影響を及ぼし、自殺及び他の生命を脅かす行動の高い危険度を担う。この疾患の症状発現は、知覚(例えば幻覚)、観念化、現実検討(例えば妄想)、情動(例えば平坦な情動、不相応な情動)、思考過程(例えば連合弛緩)及び行動(例えば緊張病、解体)を包含する、多数の心理的過程を含む。精神分裂病の行動的及び心理的特徴は、社会的及び職業上の機能遂行における様々な障害に結びつく。
【0017】
精神分裂病の主要な症状発現は、陽性及び陰性(欠損)症状、及び解体症状によって説明される。陽性症状は、幻覚、妄想、奇異な行動、敵意、非協力性及び妄想的観念を含む。陰性症状は、限られた範囲及び強さの感情表現(感情の平板化)、思考及び会話形成能力の低下(無論理思考)、無快感症、感情鈍麻及び目標志向行動の開始低下(意欲喪失)を含む。解体症状は、解体された話し方(思考障害)及び行動及び注意力貧困を含む。精神分裂病の亜型は、妄想型、解体型、緊張型、鑑別不能型及び残遺分裂病を含む。精神分裂病の管理は、通常、急性エピソードの頻度、重症度及び心理・社会的影響を低減すること及び疾患の全体的罹病率及び死亡率を低下させることを目指した様々な処置(例えば精神医学的管理、心理・社会的処置、薬剤療法、電気痙攣療法等)を含む。大部分の患者は、急性精神病性エピソードと完全な又は部分的寛解を伴う安定期が交互に現われる。
【0018】
病勢盛んな精神病期である精神分裂病の急性期には、治療は、役割の遂行を改善しながら、激越な及び他の危険な行動を含む急性症状を緩和する又は低減することを目指す。しばしばこの急性期には、患者は幻覚及び/又は妄想(陽性症状)、重度に解体された思考を示し、通常、自分自身を適切に制御することができなくなる。陰性症状も、急性エピソードの間にはしばしば重症度が上昇する。
【0019】
バルプロ酸化合物及び非定型抗精神病薬の組合せがその最大の効果を有するのはこの急性期においてである。バルプロ酸化合物の付加は、患者がこの疾患の急性期から回復する速度を速める。疾患のこの期に関連する精神病症状は、バルプロ酸化合物を治療レジメンに加えることによってより速やかに消散する。
【0020】
精神分裂病の急性期は、精神分裂病の急性増悪、精神分裂病を伴う急性精神病、及び急性精神分裂病とも称されてきた。本明細書に関しては、これらの語を同意語として扱うものとする。
【0021】
急性精神病症状の重症度の低下を特徴とする安定化の時期には、治療は、ストレスを最小限に抑えること、及び再発の可能性を低下させ、患者が地域社会生活に戻るのを助け、引き続き症状の軽減と寛解の確立を促進するための援助を提供することを目指す。この期は、急性エピソードの発症後6ヶ月間又はそれ以上続くことがある。疾病のこの期においても、患者はやはりバルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の組合せから恩恵を受けると考えられる。そのような組合せは、精神分裂病の陽性症状の発生率を低下させ、また急性期への回帰の割合を低下させうる。
【0022】
ひとたび症状が比較的安定化すれば、この疾患は安定期(一般に維持期とも称される)に入る。この期の治療は、再発を予防しながら、患者の機能遂行とクオリティ・オブ・ライフのレベルを維持することを目指す。バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の併用は、精神分裂病の急性期への回帰を予防するのを助けると考えられる。バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の同時投与による精神分裂病患者にとっての他の恩恵は、当業者には容易に明らかになる。
【0023】
精神分裂病の診断及び治療についてのさらなる情報は、the Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorder,修正、第4版(2000)(「DSM−IV−TR」)に認められる。DSM−IV−TRはTask Force on Nomenclature and Statistics of the American Psychiatric Associationによって作成された。DSM判定基準に従って精神分裂病とみなされる患者は、典型的に、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物の同時投与から恩恵を受ける。
【0024】
B)非定型抗精神病薬
非定型抗精神病薬は当業者に周知である。非定型抗精神病薬の基本的な特徴は、5HT受容体に高いレベルの親和性を有し、その受容体でのセロトニンのアンタゴニストとして働くということである。これらの化合物がその抗精神病作用を及ぼす正確な機構はまだ検討下にあるが、それらの効果の少なくとも一部は、CNS内でのセロトニン伝達を調節する能力から生じると考えられる。非定型抗精神病薬はしばしばCNS内のドーパミン受容体に親和性を有するが、それらは、クロルプロマジン、ハロペリドール等のような古典的抗精神病薬よりもはるかに弱いドーパミンアンタゴニストである。これらの化合物及びその作用機構の詳細な検討については、Blin,Comparative Review of New Antipsychotics,Can J Psychiatry,Vol 44,235−242、1999年4月参照のこと。異なる作用機構に加えて、非定型抗精神病薬は、それらの副作用プロフィールに基づいて古典的抗精神病薬と区別することができる。非定型抗精神病薬は、ハロペリドールなどの典型的抗精神病薬と比較したとき、急性錐体外路症状、特にジストニーの有意に低い発生率に結びつく(Beasleyら、Neuropsychopharmacology,14(2)、111−123(1996))。
【0025】
本明細書において使用するとき、「非定型抗精神病薬」の語は、オランザピン、クロザピン、リスペリドン、セルチンドール、ケチアピン、ゾテピン、エプリバンセリン、MDL 100,907、イロペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、Org−5222、SM−13496、アリピプラゾール及びジプラシドンを含むが、これらに限定されない。上記に例示した化合物に類似する薬理的プロフィールを有する他のいかなる化合物も、その化合物が本明細書の申請後に発見された場合であっても、非定型抗精神病薬の語に包含されるとみなされるべきである。
【0026】
オランザピン、2−メチル−4−(4−メチル−1−ピペラジニル)−10H−チエノ[2,3−b][1,5]ベンゾジアゼピンは既知の化合物であり、米国特許第5,229,382号の中で精神分裂病、分裂病様障害、急性躁病、軽度不安状態及び精神病の治療のために有用であると述べられている。米国特許第5,229,382号はその全体が参照してここに組み込まれる。オランザピンはEli Lillyから市販されている。推奨用量は2.5mgから15mg/日の範囲である。オランザピンの詳細な検討、その投与スケジュール、潜在的副作用等は、the American Society of Hospital Pharmacists(McEvoy編集)発行のAHFS,Drug Information 2000,p.2135に認められる。
【0027】
クロザピン、8−クロロ−11−(4−メチル−1−ピペラジニル)−5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピンは、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許第3,539,573号に述べられている。精神分裂病の治療における臨床効果は、Hanesら、Psychopharmacol.Bull.24,62(1988)によって記述されている。クロザピンはNovartisから市販されている。一日用量は25mg/日から900mg/日の範囲である。クロザピンの詳細な検討、その投与スケジュール、潜在的副作用等は、the American Society of Hospital Pharmacists(McEvoy編集)発行のAHFS,Drug Information 2000,p.2125に認められる。
【0028】
リスペリドン、3−[2−[4−(6−フルオロ−1,2−ベンズイソキサゾール−3−イル)ピペリジノ]エチル]−2−メチル−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ピリド−[1,2−a]ピリミジン−4−オン、及び精神病の治療におけるその使用は、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許第4,804,663号に述べられている。リスペリドンはJanssenから市販されている。一日用量は1mg/日から160mg/日の範囲である。リスペリドンの詳細な検討、その投与スケジュール、潜在的副作用等は、the American Society of Hospital Pharmacists(McEvoy編集)発行のAHFS,Drug Information 2000,p.2142に認められる。
【0029】
セルチンドール、1−[2−[4−[5−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−1H−インドール−3−イル]−1−ピペリジニル]エチル]イミダゾリジン−2−オンは米国特許第4,710,500号に述べられている。精神分裂病の治療におけるその使用は、米国特許第5,112,838号及び同第5,238,945号に述べられている。米国特許第4,710,500号;同第5,112,838号及び同第5,238,945号はそれらの全体が参照してここに組み込まれる。一日用量は10mg/日までの範囲である。
【0030】
ケチアピン、5−[2−(4−ジベンゾ[b,f][1,4]チアゼピン−11−イル−1−ピペラジニル)エトキシ]エタノール、及び精神分裂病の治療における有用性を明らかにするアッセイでのその作用は、その全体が参照してここに組み込まれる米国特許第4,879,288号に述べられている。ケチアピンは、典型的にはその(E)−2−ブテンジオエート(2:1)塩として投与される。Astra Zeneccaより市販されている。一日用量は25mg/日から750mg/日の範囲である。ケチアピンの詳細な検討、その投与スケジュール、潜在的副作用等は、the American Society of Hospital Pharmacists(McEvoy編集)発行のAHFS,Drug Information 2000,p.2142に認められる。
【0031】
ジプラシドン、5−[2−[4−(1,2−ベンゾイソチアゾール−3−イル)−1−ピペラジニル]エチル]−6−クロロ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンは、典型的には塩酸塩一水和物として投与される。この化合物は米国特許第4,831,031号及び同第5,312,925号に述べられている。精神分裂病の治療における有用性を明らかにするアッセイでのその作用は、それらの全体が参照してここに組み込まれる米国特許第4,831,031号及び同第5,312,925号に記述されている。一日用量は5mg/日から500mg/日の範囲である。
【0032】
ゾテピン、2−{(8−クロロジベンゾ[b,f]チエピン−10−イル)オキシ}−N,N−ジメチルエチルアミンは、Zoleptil(登録商標)の商品名でKnollから市販されている。ゾテピンは日本及びドイツにおいて抗精神病薬としての使用に関して認可されている。成人の一日用量は25mg/日から300mg/日の範囲である。
【0033】
ペロスピロンは、精神分裂病のために吉冨製薬によって日本で販売されている。一日用量は30mgから300mg/日の範囲である。この化合物に関するさらなる情報は、日本の住友製薬より入手できる。
【0034】
ブロナンセリンは、大日本製薬により日本において抗精神病薬として開発下にある。現在第III相治験中であると報告されている。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報は大日本製薬より入手できる。アリピプラゾールは、ヨーロッパ及び米国においてBristol−Myers Squibbにより抗精神病薬として開発中である。ヒト治験の第III相にあると報告されている。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報はBristol−Myers Squibbより入手できる。
【0035】
SM−13496は、Astra Zeneccaにより抗精神病薬として開発中であり、公的に入手可能な情報に基づくと第II相臨床試験中である。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報はAstra Zeneccaより入手できる。
【0036】
Org−5222ha,オランダのOrganonにより抗精神病薬として開発中であり、第II相臨床試験中であると報告されている。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報はOrganonより入手できる。
【0037】
MDL 100,907はAventisにより抗精神病薬として開発中である。第III相治験中であると報告されている。この化合物に関するさらなる情報は米国特許第6,063,793号に認められる。
【0038】
イロペリドンは、Novartisにより抗精神病薬として開発中であり、ヨーロッパにおいて第III相治験中であると報告されている。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報はNovartisより入手できる。
【0039】
エプリバンセリンは、Sanofi−Synthelaboにより抗精神病薬として開発中であった。この化合物の製造方法に関するさらなる情報及び関連投与情報はSanofiより入手できる。
【0040】
C)バルプロ酸化合物
いくつかのバルプロ酸化合物が、現在米国において市販されているか又は文献の中で記述されている。
【0041】
そのような化合物の1つがバルプロ酸である。バルプロ酸は次の構造式:
【0042】
【化1】

によって表わすことができる。
【0043】
バルプロ酸は、Abbott Park,IllinoisのAbbott Laboratoriesより市販されている。その合成の方法は、Oberreit,Ber.29,1998(1896)及びKeil,Z.Physiol.Chem.282,137(1947)の中に記述されている。抗てんかん化合物としてのその作用は、the Physician Desk Reference,第52版、p.421(1998)に述べられている。経口摂取後胃腸管内で、その酸部分が分離してカルボン酸部分(すなわちバルプロ酸イオン)を形成する。
【0044】
バルプロ酸のナトリウム塩も抗てんかん薬として当分野において知られている。バルプロ酸ナトリウムとしても知られ、The Merck Index,第12版、p.1691(1996)において詳細に説明されている。さらなる記述はthe Physician Desk Reference,第52版、p.417(1998)に認められる。
【0045】
ジバルプロックスナトリウムは抗てんかん薬として有効であり、また片頭痛及び双極性障害のためにも使用される。その製造方法は、その両方の内容が参照してここに組み込まれる、米国特許第4,988,731号及び同第5,212,326号に認められる。バルプロ酸と同様に、胃腸管内で分離してバルプロ酸イオンを形成する。ジバルプロックスナトリウムはAbbott Laboratoriesより入手しうる。
【0046】
ジバルプロックスナトリウム、バルプロ酸及びバルプロ酸ナトリウムについての用量は同様である。250mg/日から1g/日までの範囲であり、選択患者では2g/日まで、及び場合によっては5g/日までである。これら3つの化合物の詳細な検討、それらの薬理学、副作用、投与スケジュール等は、the American Society of Hospital Pharmacists(McEvoy編集)発行のAHFS,Drug Information 2000,p.2142に認められる。
【0047】
これらの特定化合物に加えて、当業者は、バルプロ酸化合物のカルボン酸部分が様々な方法で官能基化されうることを容易に認識する。これは、バルプロ酸アミド(バルプロイミド)ならびにこの酸の他の医薬適合性のアミド及びエステルなどの、インビボで容易に代謝されてバルプロ酸塩を生じる化合物(すなわちプロドラッグ)を生成することを含む。これはまた、様々な医薬適合性の塩を生成することを含む。
【0048】
適切な医薬適合性の塩基付加塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及びアルミニウム塩等のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属に基づくカチオン、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン等を含む非毒性第四アンモニア及びアミンカチオンを含むが、これらに限定されない。塩基付加塩の生成のために有用な他の代表的有機アミンは、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン等を含む。
【0049】
他の可能な化合物は、医薬適合性のアミド及びエステルを含む。「医薬適合性のエステル」は、エステル結合の加水分解時に、カルボン酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的に又はそれ以外でも有害ではないエステルを指す。プロドラッグとしての医薬適合性のエステルの説明については、参照してここに組み込まれる、Bundgaard,E.編集(1985)Design of Prodrugs,Elsevier Science Publishers,Amsterdam参照。これらのエステルは、典型的には対応するカルボン酸とアルコールから生成される。一般に、エステルの生成は従来の合成手法によって実施できる(例えば、その両方が参照してここに組み込まれる、March Advanced Organic Chemistry,第3版、John Wiley & Sons,New York,p.1157(1985)及びその中で引用される参考文献、及びMarkら、Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons,New York(1980)参照)。該エステルのアルコール成分は一般に、(i)1又はそれ以上の二重結合を含みうる又は含みえない、及び分枝カルボンを含みうる又は含みえないC−C12脂肪アルコール、あるいは(ii)C−C12芳香族又はヘテロ芳香族アルコールを含む。本発明はまた、ここで述べるようなエステルであり、及び同時に医薬適合性のその塩である組成物の使用を考慮する。
【0050】
「医薬適合性のアミド」は、アミド結合の加水分解時に、カルボン酸の生物学的有効性及び特性を保持し、生物学的に又はそれ以外でも有害ではないアミドを指す。プロドラッグとしての医薬適合性のアミドの説明については、参照してここに組み込まれる、Bundgaard,E.編集(1985)Design of Prodrugs,Elsevier Science Publishers,Amsterdam参照。これらのアミドは、典型的には対応するカルボン酸とアミンから生成される。一般に、アミドの生成は従来の合成手法によって実施できる(例えば、その両方が参照してここに組み込まれる、March Advanced Organic Chemistry,第3版、John Wiley & Sons,New York,p.1152(1985)及びMarkら、Encyclopedia of Chemical Technology,John Wiley & Sons,New York(1980)参照)。本発明はまた、ここで述べるようなアミドであり、及び同時に医薬適合性のその塩である組成物の使用を考慮する。
【0051】
本明細書において使用するとき、「バルプロ酸塩」又は「バルプロ酸化合物」への言及は、胃腸管内で又はインビトロでの溶解媒質中で分離して、バルプロ酸、バルプロ酸のナトリウム塩、ジバルプロックスナトリウム、上述したバルプロ酸の様々な塩のいずれか、及び上述したバルプロ酸のプロドラッグのいずれかを含むがこれらに限定されないバルプロ酸イオンを生じる化合物を包含すると解釈されるべきである。ジバルプロックスナトリウムは本発明の最も好ましいバルプロ酸化合物である。
【0052】
D)投与
上述したように、その必要のある患者(すなわちヒト)に非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物を同時に投与することによって精神分裂病を治療できることが発見された。この組合せは、精神分裂病の急性増悪の期間に特に有用であることが発見された。非定型抗精神病薬だけによる治療と比較したとき、バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の両方で治療された患者では精神分裂病の急性症状がより速やかな速度で沈静する。この併用療法は、精神分裂病の陽性症状(すなわち幻覚、妄想、パラノイア、敵意等)を軽減する上で特に有用である。
【0053】
本明細書において使用するとき、「同時投与」の語は、少なくとも1つの非定型抗精神病薬を処方されてきた(又は使用してきた)精神分裂病患者に、患者の症状が沈静しうるように適切な時点でバルプロ酸化合物を投与することを指す。これは、バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の同時投与、又は異なるが適切な時点での両薬剤の投与を意味しうる。そのような適切な投与スケジュールを確立することは、精神科医又は他の医師などの当業者には容易に明白である。
【0054】
非定型抗精神病薬及びバルプロ酸化合物を同時に投与する用量範囲は広く変化しうる。明細な用量は、患者の主治医により、選択する特定抗精神病薬、患者の疾病の重症度、患者が罹患している何らかの他の医学的状態又は疾患、患者が服用している他の薬剤及びそれらが相互作用又は有害事象を引き起こす潜在的可能性、これらの非定型抗精神病薬に対する患者に過去の応答等を考慮に入れて選択される。一般的な指針として、しかしながら、非定型抗精神病薬及びバルプロ酸化合物は下記に列挙する用量ガイドライン内で同時に投与される:
a)オランザピン:約0.25mgから50mg、1回/日;好ましくは、1mgから30mg、1回/日;及び最も好ましくは1mgから25mg、1回/日;
b)クロザピン:約12.5mgから900mg/日;好ましくは、約150mgから450mg/日;
c)リスペリドン:約0.25mgから16mg/日;好ましくは、約2mgから8mg/日;
d)セルチンドール:約0.0001mgから1.0mg/kg/日;
e)ケチアピン:約1.0mgから40mg/kgを1日1回又は分割用量で;
f)ジプラシドン:約5mgから500mg/日;好ましくは、約50mgから100mg/日;
g)ゾテピン:約25mgから500mg/日、より典型的には約75mgから300mg/日;
h)ジバルプロックスナトリウム:約250mgから5000mg/日、好ましくは約2500mg/日まで。
【0055】
これらのガイドラインは、医学界で一般に認められているように、これらの薬剤についての現在の用量範囲を反映している。それらは本発明をさらに説明するために提示するものであり、いかなる意味においても本発明を限定すると解釈されるべきではない。バルプロ酸化合物及び非定型抗精神病薬は、患者の精神分裂病を治療するために有効な量で同時に投与すべきである。より一般的に言えば、上記ガイドラインの基本に従って非定型抗精神病薬の用量とバルプロ酸化合物の用量を選択することによって本発明の組合せを創造する。
【0056】
本発明の抗精神病療法は、非定型抗精神病薬をバルプロ酸化合物と共に、両化合物の有効レベルを体内で同時に提供するように投与することによって実施される。バルプロ酸は経口投与により胃腸管から吸収される。上記に例示した非定型抗精神病薬はすべて胃腸管から吸収される。典型的には、上記の組合せは経口で投与される。
【0057】
しかし、本発明は経口投与に限定されない。本発明は、関与する薬剤にとって及び該患者にとって適切ないかなる投与経路もカバーすると解釈されるべきである。例えば、経皮投与は、経口薬剤を服用するのを忘れやすい又はそれについて気難しい患者のために非常に望ましいと考えられる。個々の状況において、一方の薬剤を経口のような1つの経路によって投与し、他方を、経皮(transdermal,percutaneous)、静脈内、筋肉内、鼻内又は直腸内経路によって投与してもよい。投与経路はどのようにも変化させうるが、薬剤の物理的性質及び患者と介護従事者の都合によって限定される。
【0058】
E)製剤
非定型抗精神病薬及びバルプロ酸化合物は単一医薬組成物として投与してもよく、それ故両方の薬剤を組み込んだ医薬組成物は本発明の重要な実施態様である。そのような組成物は、製薬に適したいかなる物理的形態もとりうる。経口投与に適した医薬組成物が特に好ましい。そのような医薬組成物は各々の化合物の有効量を含有し、その有効量は投与する化合物の一日用量に関係する。各々の投与単位は、すべての化合物の一日用量を含有するか、又は一日用量の3分の1のような、一日用量の分割量を含有しうる。あるいは、各々の投与単位は、一方の化合物の用量全体と他方の化合物の用量の分割量を含有しうる。そのような場合、患者は、組合せ投与単位の1つと、他方の化合物だけを含有する1又はそれ以上の単位を毎日服用する。各投与単位に含有される各々の薬剤の量は、治療のために選択される薬剤の性質(identity)、及び抗精神病療法が指示される適応症などの他の因子に依存する。
【0059】
不活性成分及び医薬組成物を製剤する方法は、本発明の組合せの存在を除いて、慣例的である。製薬科学において使用される通常の製剤方法がここで使用しうる。錠剤、噛み砕き錠剤、カプセル、溶液、非経口溶液、鼻内スプレー又は粉末、トローチ、坐薬、経皮パッチ及び懸濁液を含む、通常の型の組成物がすべて使用できる。一般に、組成物は、所望用量及び使用する組成物の型に依存して、約0.5%から約50%の化合物を含有する。化合物の量は、しかしながら、有効量、すなわち、そのような治療を必要とする患者に所望用量を提供する各々の化合物の量として最もよく定義される。抗精神病薬の組合せの活性は組成物の性質には依存せず、それ故組成物は単に便宜性と経済性のためにのみ選択され、製剤される。組み合わせのいずれもが、所望形態の組成物中に製剤されうる。種々の組成物についての多少の検討を、いくつかの典型的な製剤と共に提供する。
【0060】
カプセルは、化合物を適切な希釈剤と混合し、適切な量の該混合物をカプセルに充填することによって製造される。通常の希釈剤は、多くの異なる種類のデンプンなどの不活性粉末物質、粉末セルロース、特に結晶及び微結晶セルロース、フルクトース、マンニトール及びスクロースなどの糖類、穀粉及び同様の食用粉末を含む。
【0061】
所望する場合は、患者によって摂取される前に内容物がカプセルから取り出されるようにカプセルを製剤することができる。嚥下が困難である患者への投与を簡単にするために、薬剤を食品、ジュース等に希釈してもよい。例えば、Abbott LaboratoriesはDepakote Sprinke Capsulesとして知られる製剤を販売している。そのような投与形態を製造する方法は当業者には容易に明白である。
【0062】
薬剤はまた、当分野において既知であるように、投与を簡単にするために液体又はシロップに製剤しうる。薬剤を液体に溶解し、当分野において既知であるように香味料、抗酸化剤、安定剤等を添加する。そのような投与形態は、痴呆患者などの高齢者に特に適する。
【0063】
錠剤は、直接圧縮、湿式造粒又は乾式造粒によって製造される。それらの製剤は通常、化合物以外に希釈剤、結合剤、潤滑剤及び崩壊剤を組み込む。典型的な希釈剤、例えば、様々な種類のデンプン、ラクトース、マンニトール、カオリン、リン酸又は硫酸カルシウム、塩化ナトリウムなどの無機塩及び粉末糖を含む。粉末セルロース誘導体も有用である。典型的な錠剤結合剤は、デンプン、ゼラチン、及びラクトース、フルクトース、グルコース等のような糖類などの物質である。アカシア、アルギン酸塩、メチルセルロース、ポリビニルピロリジン等を含む、天然及び合成ゴムも好都合である。ポリエチレングリコール、エチルセルロース及びろうも結合剤として使用できる。
【0064】
錠剤の製造においては、錠剤とパンチが鋳型の中で固着するのを防ぐために潤滑剤が必要である。潤滑剤は、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びカルシウム、ステアリン酸及び硬化植物油のような滑らかな個体から選択される。
【0065】
錠剤崩壊剤は、湿潤化したとき膨張して錠剤を解体して化合物を放出させる物質である。それらは、デンプン、粘土、セルロース、アルギン及びゴムを含む。より特定すると、例えば、トウモロコシ及びジャガイモデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、ウッドセルロース、粉末天然海綿、陽イオン交換樹脂、アルギン酸、グアーガム、柑橘パルプ及びカルボキシメチルセルロース、ならびにラウリル硫酸ナトリウムが使用しうる。
【0066】
腸溶剤は、しばしば胃の強酸性内容物から有効成分を保護するために使用される。そのような製剤は、酸性環境では不溶であり、塩基性環境では可溶であるポリマー被膜で固体投与形態を被覆することによって製造される。例示的な被膜は、酢酸フタル酸セルロース、フタル酸酢酸ポリビニル、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート及びヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートである。
【0067】
錠剤はしばしば、フレーバー及び封入剤としての糖で被覆される。該化合物はまた、現在広く確立された慣例であるように、製剤中にマンニトールなどの快い味の物質を多量に使用することにより、噛み砕き錠剤としても製剤しうる。即座に溶解する錠剤様製剤も、患者が投与形態を確実に消費するように及び一部の患者にとっては厄介な固形物を嚥下することの困難さを回避するために、現在しばしば使用されている。
【0068】
該薬剤の組合せを坐薬として投与することを所望するときは、通常の基剤が使用しうる。ココアバターは伝統的な坐薬基剤であり、ろうを添加することによってその融点をわずかに上昇させるように修正しうる。特に、様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水混和性坐薬基剤も広く使用されている。
【0069】
経皮パッチは最近一般的になってきた。典型的にはそれらは、その中に薬剤が溶解する又は部分的に溶解する樹脂状組成物を含有し、組成物を保護する薄膜によって皮膚と接触した状態に保持される。最近この分野で多くの特許が発行されている。その他に、より複雑なパッチ組成物、特に無数の孔があけられた膜を有し、それを通して薬剤が浸透圧作用によって送り込まれるものも使用されている。
【0070】
F)新規包装
患者の便利さを高めるために、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物を単一投与形態に製剤してもよい。あるいは、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物は各々別個の投与形態であるが、薬剤師による配薬のために単一容器に包装されていてもよい(すなわちブリスターパック)。そのような包装は、典型的には患者が投与レジメンに従うのを助け、必要な薬剤すべてを消費するように設計される。
【0071】
そのような包装の例は製薬技術分野の当業者には周知である。例えば、PfizerはZithromax(登録商標)として知られる抗生物質を配給している。患者は、感染を根絶するために1日目には2錠、その後4日間は1錠を服用しなければならない。患者がそのような複雑なスケジュールに従うことを可能にするために、Pfizerは、一般的にZ−パックと称されるブリスターパックに薬剤を包装している。用量を漸減していかねばならないステロイドに関しても同様の包装が使用される。経口避妊薬は、便利さを高めるように薬剤を包装するもう1つの例である(すなわち工業製品、articles of manufacture)。
【0072】
患者の便宜性を高めるために、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物をそのような包装に組み込むことができる。所望する場合は、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物が単一投与形態である場合でもそのような包装を使用しうる。そのような包装の詳細は当業者には容易に明白である。
【0073】
当業者には周知のように、包装薬剤は、薬剤、それらの用量、起こりうる副作用及び適応症を記述した添付文書を含む。それ故、本発明は、非定型抗精神病薬と組み合わせた少なくとも1つのバルプロ酸化合物を含む包装を包含すると解釈されるべきである。それらは単一又は別々の投与形態でありうる。該包装は、該薬剤の組合せは精神分裂病、特に精神分裂病の急性増悪を治療するために使用すべきであることを言明した添付文書を含む。
【0074】
G)他の精神病
上述したように、非定型抗精神病薬とバルプロ酸化合物の組合せは、精神分裂病以外の他の疾病に関連する精神病においても効果を有する。そのような病気の一つは分裂病様障害である。
【0075】
分裂病様障害は、精神分裂病と同じ症状を示す状態であるが、2週間から6ヶ月で消散する急性発症を特徴とする。しばしば、分裂病様障害は患者の最初の分裂病性エピソードを表わすために使用される。その患者は精神分裂病の急性期に見られると同じ症状を呈するが、精神分裂病の既往歴がない。臨床医は分裂病様障害を「初期精神分裂病」とも称する。
【0076】
患者の症状は、A章で述べた精神分裂病の急性期に示されるものと同様である(すなわち明白な精神病性行動)。バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の併用は、この精神病性行動が消散する速度を促進する。
【0077】
上記B−F章における考察は分裂病様障害の治療にも等しく当てはまる。上述したのと同じ非定型抗精神病薬が同じ用量で使用できる。同様に、上述したのと同じバルプロ酸化合物が同じ用量で使用できる。投与様式、適切な製剤、製品の包装等も精神分裂病の場合と同じである。
【0078】
精神病性行動は痴呆も伴い得る。痴呆は、記憶、判断、抽象的思考の障害、ならびに人格の変化を含む知的能力の全般的損失によって特徴付けられる器質性精神障害である。痴呆の最も一般的な原因は、アルツハイマー病、パーキンソン病及び多発梗塞性疾患である。痴呆を有する患者が精神病性行動を示す場合、バルプロ酸化合物と非定型抗精神病薬の組合せはこの精神病が消散する速度を促進する。分裂病様障害と同様に、上記B−F章における考察が痴呆に関連する精神病の治療にも等しく該当する。
【0079】
下記の実施例は本発明をさらに説明するために提示するものである。それらは、いかなる意味においも本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0080】
H)実施例
下記の典型的製剤は薬学科学者の関心と情報のために提供するものである。
【0081】
製剤1
次の成分を使用して硬ゼラチンカプセルを製造する:
量(mg/カプセル)
オランザピン 2.5
ジバルプロックスナトリウム 500
デンプン、乾燥 150
ステアリン酸マグネシウム 10
総mg 662.5
製剤2
下記の成分を使用して錠剤を製造する:
量(mg/カプセル)
オランザピン 1.25
ジバルプロックスナトリウム 250
セルロース、微結晶 275
二酸化ケイ素、フュームド 10
ステアリン酸 5
総mg 541.25
上記成分を混合し、圧縮して各々541.25mgの錠剤を成形する。
【0082】
製剤3
下記の成分を使用して錠剤を製造する:
量(mg/カプセル)
リスペリドン 1.0
ジバルプロックスナトリウム 500
セルロース、微結晶 275
二酸化ケイ素、フュームド 10
ステアリン酸 5
総mg 800
上記成分を混合し、圧縮して各々791mgの錠剤を成形する。
【0083】
(実施例4)
無作為化二重盲検方式の本試験は、精神分裂病を伴う急性精神病のために入院した患者において、バルプロ酸誘導体であるジバルプロックスナトリウムを一般的に使用される非定型抗精神病薬と組み合わせることによって提供される潜在的恩恵の増大を検討するために(抗精神病薬単独療法と比較して)設計された。
【0084】
使用した併用治療の効果を調べるためにこの治験で用いた3つの鍵となる評価がある:陽性及び陰性症状尺度(Positive and Negative Syndrome Scale,PANSS)(Kayら、1987)、簡易精神症状評価尺度−PANSSから導かれる(Brief Psychiatric Rating Scale−derived from the PANSS,BPRS−d)、及び臨床全般印象(Clinical Global Impression、CGI)尺度(Guy,1976)。これらの評価すべてが抗精神病薬の臨床的有用性を評価するために使用しうる。PANSSは、精神分裂病を有する患者において精神病理の重症度を測定するために設計されている。PANSS陽性サブスケールは妄想及び幻覚などの陽性症状を検査し、一方PANSS陰性サブスケールは、情動的引きこもり及び感情鈍麻などの精神分裂病の陰性症状を評価する。BPRSは精神病理のもう1つの基準評価である;PANSSと重複する項目があり、それ故、今回の試験の場合に実施したようにPANSSから導くことができる。CGIは、患者の疾病の現在の状態についての臨床医の印象(CGI−重症度)と基線からの患者の改善又は悪化(CGI−改善)を評価する2部構成の尺度である。
【0085】
試験患者及び方法
試験患者
精神分裂病の急性増悪により入院した18歳から65歳までの患者を登録した。スクリーニングの際に実施したDSM−IVについての臨床構造化面接(Structured Clinical Interview)(SCID)によって確認されたように(Firstら、1999)、現在精神分裂病のDSM−IVの診断を有する患者を、次の基準に基づいて採用のために選択した:1)スクリーニングの時点で60又はそれ以上の陽性及び陰性症候群スケール(PANSS)の総合評点(1点から7点スケールに基づく)(Kayら、1987)、2)陽性症状(すなわち幻覚性行動、異常思考内容、概念解体及び疑い深さ)に対応するPANSSから誘導される、BPRS(BPRSd)(Kayら、1987)の精神病クラスターからの4項目のうちいずれか2つで合計8又はそれ以上の評点、3)及び、敵意と非協力性または興奮と緊張で合計6点又はそれ以上。適格患者は、本試験への登録前2年以内に抗精神病薬による治療に対して陽性応答を有していなければならない。
【0086】
現在深刻な激越、殺人又は自殺思考過程を有する患者と同様に、患者が分裂病様障害、薬物性精神病、躁病性エピソード又は打つ病勢エピソードの現在の診断を有する場合は試験から除外した。また、妊娠又は授乳期女性及び臨床的に重要な異常検査データ、不安定な医学的状態、又は試験結果の解釈を混乱させるであろう基礎状態を有する患者も試験から除外した。
【0087】
試験計画
試験は、休薬期間と4週間の二重盲検治療期間から成る、無作為化・二重盲検・平行群・多施設試験であった。プロトコールは各々の参加試験施設の治験審査委員会によって承認された。試験への登録前に、各患者又は患者の法的に認められた代理人から書面でのインフォームドコンセントを得た。
【0088】
書面によるインフォームドコンセントを得た後、採用基準に合致した各々の患者が試験の休薬期間に入り、この休薬期間は、各患者が服用していた抗精神病薬又は向精神薬の平均消失半減期の少なくとも3倍の期間とした。次に患者を4つの処置群の1つに無作為に割り当てた:1)オランザピン単独療法(Zyprexa(登録商標)、Eli Lilly and Company);2)リスペリドン単独療法(Risperdal(登録商標)、Janssen Pharmaceutical);3)ジバルプロックス(Depakote(登録商標)遅延放出錠剤、Abbott Laboratories)プラスオランザピン;又は4)ジバルプロックスプラスリスペリドン。試験期間中は、試験薬以外の抗精神病薬の同時使用を認めなかった。
【0089】
ジバルプロックスは、1日目に15mg/kg/日(1日2回投与)の用量で開始し、試験者が適切と考えるように、12日間にわたって最大用量30mg/kg/日まで臨床応答に合わせて用量調節した。オランザピンとリスペリドンは、それぞれ5mg/日及び2mg/日(1日1回投与)で開始し、3日目にそれぞれ10mg/日及び4mg/日に増加し、6日目にそれぞれ15mg/日及び6mg/日の目標一日用量まで増加した。ひとたびこれらの用量が達成されれば、試験の残りの期間中継続した。試験者は、オランザピン又はリスペリドンの固定目的用量を耐容できない患者の参加を中止するよう指示された。
【0090】
一定の補助薬が、効果判定の8時間前までは、休薬期間及び治療期間中も必要に応じて許可された。抱水クローラル(2mg/日まで)又は酒石酸ゾルピデム(10mg/日まで)は不眠症の管理のために使用することができた。ロラゼパム(休薬期は6mg/日まで、治療期間の第1週と第2週は4mg/日まで、及び治療期間の第3週は2mg/日まで)は、重症の動揺の管理のために許可された。第4週の間は抱水クローラル、ロラゼパム及び酒石酸ゾルピデムの使用は禁止された。塩酸プロプラノロール(試験者の裁量によって)は静座不能のための処方することができ、又はベンズトロピンメシレート(4mg/日まで)は錐体外路症状の管理のための処方することができた。
【0091】
患者は28日間入院したままであることが必要であった。しかし、患者が2週間の用量調節期を完了し、14日目以後に「大きく改善」のCGI−改善評点を有していることを条件として、7日間まで病院から離れることが認められた。病院から離れた患者は、定期的に予定された評価、採点及び処置のために試験施設に戻ることを求められた。
【0092】
臨床評価
プロトコールで規定された患者の精神医学的状態を、PANSS総合及びサブスケール及びCGI尺度(Guy,1976)を用いて評価した。評価は、1日目(基線)、3、5、7、10、14、21及び28日目に実施した。PANSSは、その前の48時間にわたる患者の状態を評点した。評価者の熟達度は、試験が開始される前にあらかじめ確立された判定基準に合致していなければならず、評価者の熟達度を保証するために治験期間中に中間評価を実施した。
【0093】
安全性評価
試験薬剤の安全性を評価するために得たデータは、理学的検査、生命徴候及び体重測定、有害事象、及び臨床検査結果を含んだ。錐体外路系副作用を、シンプソン−アンガス尺度(Simpson−Angus Scale、SAS)(Simpson and Angus,1970)、バーンズ静座不能尺度(Barnes Akathisia Scale,BAS)、ならびに異常不随意運動評価尺度(Abnormal Involuntary Movement Scale,AIMS)(1日目と28日目)(Guy,1976)を含む運動評価尺度セットを用いて二重盲検治療期間中に評価した。試験薬を開始した時点から治療の中止後30日目まで(両端の日を含む)の有害事象に関して患者を監視した。バルプロ酸塩の血漿中濃度を28日目に評価した。
【0094】
統計分析
本試験の第一の目的は、非定型抗精神病薬と組み合わせたときの精神分裂病の治療におけるジバルプロックスの効果と安全性を、一次効果エンドポイントであるPANSS総合評点での基線から最終評価までの変化と共に評価することであった。
【0095】
すべての統計試験は両側検定であり、少数第四位以下を四捨五入した後0.050のp値を統計的に有意とみなした。すべての分析はSASシステム(バージョン6.12)で実施した。
【0096】
基線の特徴と効果パラメータの比較のため、2つの併用療法群と同様に、2つの抗精神病薬単独療法群を一緒にした。0.362の効果量について80%の検出力及び0.418の効果量について90%の検出力を提供するために、併合した抗精神病薬単独療法群と併合した併用療法群について各々120名の患者の標的標本サイズを選択した。
【0097】
無作為化試験薬の少なくとも1回の投与を受け、基線時及び治療期間中に少なくとも1回PANSS総合評点が記録されたすべての患者を含む、治療意図(intent−to−treat)データセットに関して効果分析を実施した。欠測評価の取り扱いについては、「最終観測値補完(last observation carried forward)解析を実施した。効果の欠如のために早期に脱落した患者によって生じる偏りを低減するためにこの手法を使用した。
【0098】
人口統計学的特徴に関する併用療法群と抗精神病薬単独療法群の間の基線の同等性を、定量的変数(年齢、体重)については主効果として治療群による一方向分散分析(ANOVA)によって、及び定性的変数(性別、人種)についてはフィッシャーの確率検定によって評価した。統計的検定のために、人種をコーカサス人と非コーカサス人に分類した。精神医学的病歴変数については、治療群間の基線同等性を、ウイルコクソン順位和検定(第1回診断時の年齢)によって、Cochran−Mantel−Haenszel検定(生涯入院回数、自殺未遂の回数)によって、及びフィッシャーの確率検定によって(精神分裂病サブタイプ)評価した。すべての効果及び運動評価尺度評点についての治療群間での基線同等性は、治療群及び試験者についての因子に関して二方向ANOVAによって評価した。試験から早期に脱落した患者のパーセンテージにおける治療の差(併用療法対抗精神病薬単独療法)は、全体及び各々の個別項目の両方についてフィッシャーの確率検定によって評価した。
【0099】
併用療法群と単独療法群の比較は、混合効果モデル(治療群、外来診察(visit)、外来診察による治療群の相互作用(treatment group by visit interaction)、試験施設、年齢及び体重についての効果に関して)を用いて平均谷(mean trough)総バルプロ酸血漿中濃度に関して実施した。
【0100】
病院から出ることを許可された患者のパーセンテージならびに補助薬を使用している患者のパーセンテージにおける治療の差は、フィッシャーの確率検定によって評価した。各々の薬剤を処方された日数及びパーセンテージ及び各々の薬剤の平均一日用量における治療の差は、一方向ANOVAによって評価した。
【0101】
PANSS総合評点及びサブスケール、BPRSd総合評点及びサブスケール、PANSSからの補足的怒り(Supplemental Anger)の項目、及びCGI重症度評点に関する基線から各々の評価までの平均変化における治療の差は、治療及び試験者についての因子に関して二方向ANOVAによって評価した。PANSS陽性尺度評点と妄想のPANSS個別項目に関しては基線の差が存在したので、治療及び試験者についての因子及び基線を共変量とする共分散分析(ANCOVA)を実施した。予定された来院日、治療及び試験者に関する固定効果因子に関するPROC MIXED、及びAR(1)共分散構造を用いて、観察された症例データに関してポストホック反復測定ANOVAも実施した。各々の予定来院時のPANSS総合評点で基線から最終評価までに少なくとも20%及び30%の改善を有する患者のパーセンテージにおける治療の差を、試験者を層として、Cochran−Mantel−Haenszel検定によって評価した。
【0102】
PANSS総合評点で基線から最終値までの変化に関して、試験者、試験薬(ジバルプロックス対プラセボ)、抗精神病薬の種類(オランザピン対リスペリドン)、及び試験薬と抗精神病薬の相互作用についての因子に関して分散分析(ANOVA)を実施した。相互作用の試験は、効果分析に関する併用治療群の有効性の検定を提供した。
【0103】
安全性分析は、無作為化試験薬の少なくとも1回の投与を受けたすべての患者に関して実施した。オランザピンとリスペリドンの安全性プロフィールが異なるので、各々の抗精神病薬単独療法群についての安全性データを対応するジバルプロックス/抗精神病薬群のデータと比較した。フィッシャー確率検定を使用して、治療時に出現した(treatment−emergent)有害事象発生率における治療群の差を評価した。運動評価尺度(SAS、BAS、AIMS)に関する基線から最終評価までの平均変化における治療の差は、治療及び試験者についての因子に関して二方向ANOVAによって評価した。基線から最終評価までの平均変化に関する臨床検査データ及び生命徴候(体重を含む)における治療の差は一方向ANOVAによって評価した。
【0104】
結果
249名の患者を29の試験施設において無作為化し、これらの患者のうちで、65名がオランザピンを摂取し、66名がジバルプロックスとオランザピン、60名がリスペリドン、及び58名がジバルプロックスとリスペリドンを摂取した。249名の登録患者のうちで、242名の患者を効果の治療意図分析に含め、4名は治療時(on−treatment)PANSS評点がなかったために除外し、及び3名は2施設で無作為化されていたために除外した(2回目の無作為化だけを効果分析から除外した)。
【0105】
治療群は、人口統計学、精神分裂病サブタイプ、第1回診断時の年齢、過去の入院回数、及び自殺未遂の回数に基づき基線では同様であった(表1)。治療意図試験母集団の平均年齢は38.8歳(18歳から63歳までの範囲)であった。過半数が男性(76%)であり、コーカサス人(46%)と黒人(49%)に等しく分布していた。大部分の患者が妄想型精神分裂病の病歴を有しており(82%)、56%はその精神分裂病のために6回以上入院し、46%は少なくとも1回自殺未遂があった。試験への登録時に、214名の患者(88%)が抗精神病薬で治療されており、オランザピンで治療されていた78名の患者(32%)及びリスペリドンで治療されていた81名の患者(33%)が含まれた。平均基線PANSS評点は、抗精神病薬単独療法群と併用療法群の患者についてそれぞれ100と103であり、治療群間で有意差はなかった。
【0106】
合計83名(33%)の患者が試験への参加を中止した;最も一般的な理由は同意の取り下げ(抗精神病薬単独療法を受けた25名(20%)の患者及び併用療法を受けた12名(10%)の患者。p≦0.05)であった。7名の患者(抗精神病薬単独療法群の3名(2%)の患者及び併用療法群の4名(3%)の患者)は治療時に出現した有害事象のため、及び16名の患者(それぞれの治療群の6名(5%)及び10名(8%)の患者)は効果の欠如のために参加を中止した。全体的早期脱落率又は治療時に出現した有害事象又は効果の欠如による早期脱落率に関して群間で統計的な有意差は認められなかった。
【0107】
試験期間中に患者が病院から離れた頻度は治療群間で同様であった。3分の1(単独療法群では32%及び併用療法群では35%)が試験期間中に病院から離れた(病院から離れた期間の平均はそれぞれ4.2日と4.9日間)。
【0108】
試験薬及び補助薬の投与
大部分の患者がオランザピン(15mg/日)及びリスペリドン(6mg/日)の目標治療一日用量を摂取した(表2)。オランザピンについては、単独療法群の患者の96%及び併用療法群の患者の95%が6日目までに最大用量を摂取した。リスペリドンについては、単独療法群の患者の94%及び併用療法群の患者の96%が6日目までに最大用量を摂取した。
【0109】
オランザピン及びリスペリドンの併用療法群では、ジバルプロックスの平均最頻一日用量はそれぞれ2364mg(500mgから3500mgの範囲)及び2259mg(1000mgから3500mgの範囲)であり、オランザピンに関しては98.2±31.4μg/mL(n=23標本)及びリスペリドンに関しては100.2±22.1μg/mL(n=21標本)の最終(28日目)平均谷間総バルプロ酸血漿中レベルを生じた(p=ns)。
【0110】
試験期間中の補助救急薬(すなわちロラゼパム、抱水クロラール、ゾルピデム、ベンズトロピンメシレート及びプロプラノロール)の使用は、mg/日、使用日数及び救急薬を使用した患者のパーセンテージを含めて、治療群の間で同様であった。患者の3分の2以上(171/242)が試験への参加期間中にこれらの補助薬の少なくとも1つを使用し、動揺のための患者の50%によるロラゼパム(平均5.6日間)、静座不能のための患者の8%によるプロプラノロール、及び錐体外路系症状のための患者の19%によるベンズトロピンメシレートの使用(少なくとも1回)を含んだ。
【0111】
効果結果
PANSS総合評点は、併用療法及び抗精神病薬単独療法群の両方で28日の治療期間中を通じて低下した(改善した)(図1)。
【0112】
【表1】

【0113】
併用療法群を支持する基線からのPANSS総合評点の変化には統計的に有意の治療差が治療3日目から既に認められ、21日目まで持続した(3、5、14及び21日目にはp≦0.05、7及び10日目にはp<0.01)。28日目に、同じ傾向(p=0.108)が認められた(基線からの平均変化:抗精神病薬単独療法−21.2及び併用療法−25.1)。経時的な効果量及び変動性の変化を図2に示す。基線評点からの変化のポストホック反復測定ANOVAは、PANSS総合評点に関する試験の28日間を通じて、抗精神病薬単独療法に比べて併用療法を支持する統計的に有意の治療差を明らかにした(p=0.020)。
【0114】
【表2】

【0115】
ANOVAモデル(試験者、試験薬(ジバルプロックス対プラセボ)、抗精神病薬の種類(オランザピン対リスペリドン)、及び試験薬と抗精神病薬の種類の相互作用)では、相互作用の条件は統計的に有意ではなく、PANSS総合評点へのジバルプロックスの影響はどちらの抗精神病薬を付加したときも同様であることを示し、ANOVA分析のために2つの併用治療と2つの抗精神病薬治療を組み合わせることの有効性を支持した(図3)。
【0116】
【表3】

【0117】
PANSS総合評点で基線から≧20%又は≧30%低下と定義された臨床的改善は、抗精神病薬単独療法群に比べて併用療法群ではより高い比率の患者において一貫して認められた(≧20%及び≧30%閾値については3、5、7及び10日目に、及び≧20%だけについては14日目に、p≦0.05)(図4)。PANSS総合評点における20%又はそれ以上の改善は、7日目に併用療法群の患者の53%で認められたが、抗精神病薬単独療法群では14日目まで認められなかった。
【0118】
【表4】

【0119】
併用療法を支持する改善はまた、平均PANSS陽性尺度評点に関してすべての評価時点で認められ(図5)、3、5及び7日目には統計的に有意の治療差が認められた(ANOVAによる)。
【0120】
【表5】

【0121】
併用療法を支持する、平均PANSS全般的精神病理尺度(General Psychopathology Scale)評点(5、7、10及び14日目にp<0.05)及びPANSS補足的怒り(Supplemental Anger)項目(3及び7日目にp<0.05)における改善も認められた。PANSS陰性尺度はほとんど治療差をしめさなかった(10日目にp<0.05)。ポストホック反復測定ANOVAは、PANSS陽性尺度評点(p=0.002)及びPANSS補足怒り項目(p=0.02)に関する試験の28日間を通じて、抗精神病薬単独療法に比べて併用療法を支持する統計的に有意の治療差を明らかにしたが、PANSS陰性尺度は有意差を示さなかった(p=0.167)。さらに、抗精神病薬単独療法群に比べて併用療法群を支持する統計的に有意の治療差が、妄想(3、7、10及び14日目(ANCOVA))、興奮(3、7、10及び14日目)、抽象的思考困難(5、7、10及び28日目)、及び異常思考内容(すべての評価時点)を含むいくつかのPANSS個別項目について4又はそれ以上の評価時点で認められた。
【0122】
BPRSd総合及びサブスケール評点の結果はPANSSからの結果と一致した。併用療法群を支持する統計的に有意の治療差が、BPRSd総合(3、5、7、10及び14日目)、陽性症状(3、5及び7日目)、及び動揺(7及び14日目)評点に関していくつかの評価時点で認められた。28日目にも、数字上の、しかし統計的に有意ではない差が認められた。ポストホック反復測定ANOVAは、BPRSd総合(p=0.027)、陽性症状(p=0.022)及び動揺(p=0.023)評点に関して、試験の28日間を通じて抗精神病薬単独療法に比べて併用療法を支持する統計的に有意の差を明らかにした。
【0123】
CGI重症度又はCGI改善評点のいずれについても、統計的に有意の治療差は全般に認められなかった。併用及び抗精神病薬単独療法の両方に関して、平均CGI重症度評点は28日間の試験終了時に基線から約1点低下し(改善し)、「著明な精神的疾病」から「中等度の疾病」への変化を反映した。
【0124】
安全性結果
精神分裂病のための単独療法と比較した併用療法の使用は、両方の群が良好に耐容されることを示した。有害事象による中止はほぼ同じであり、併用療法に関して有意に多い有害事象は認められなかった。非定型抗精神病薬の同用量を保持しながらのDepakoteの付加はさらなる有害事象に関する問題を生じると予想されていたので、これは意外である。オランザピン及びリスペリドンに付加したDepakoteに関してより大きな体重増加(リスペリドンで有意に大きい)があり、臨床事象には結びつかなかったが血小板数の減少がより明らかであった。コレステロールの上昇は、併用では観察されなかったが、オランザピン及びリスペリドンの両方の単独療法で認められた。Depakoteの付加は、リスペリドンに付加したときのより大きな体重増加以外は臨床的に重要な安全性の問題を生じなかった。
【0125】
考察
要約すると、この4週間の治験からの効果所見は、非定型抗精神病薬、オランザピン又はリスペリドンとDepakoteの組合せが、抗精神病薬単独療法に比べて精神分裂病に関連する精神病の治療において有意に大きな改善をもたらすことを示唆する。3日目から早くも有意の治療差が認められる。精神病の陽性症状ならびにこの患者母集団において急性管理と安定化を必要とする他の症状において改善が認められる。精神病の急性エピソードの速やかな安定化は、依然として精神分裂病の治療における課題であり、検討下にある領域である。安定化への時宜を得た改善は患者の安全性、コンプライアンス及び治療結果に影響を及ぼす。これらを合わせて考えると、本試験からの所見は、精神分裂病を有する患者における急性精神病の治療のために重要な意味を持つ。
【0126】
略語のリスト及び用語の定義
AE 有害事象
AIMS 異常不随意運動評価尺度
ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ
ANOVA 分散分析
APA アメリカ精神医学会
AST アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ
BAS Barnes静座不能尺度
BPRS−d 簡易精神症状評価尺度−PANSSから導かれる
CGI 臨床全般印象尺度
CMH Cochran−Mantel Haenszel
COSTART 有害反応用語辞典のためのコード化記号
DSM−IV−TR 精神疾患の診断・統計マニュアル、第4版、改訂版
ECG 心電図
EPS 錐体外路系症状
GABA γ−アミノ酪酸
GCP 医薬品の臨床試験の実施基準
ICH 医薬品規制ハーモナイゼーション国際会議
IRB 治験審査委員会
LOCF 最終観測値補完
PANSS 陽性及び陰性症状尺度
SAE 重篤有害事象
SAS シンプソン−アンガス尺度
SCID DSM−IVに関する臨床構造化面接
VPA バルプロ酸
WBC 白血球
YMRS ヤング躁病評価尺度
【0127】
【表6】

【0128】
【表7】

【0129】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神分裂病の治療のための方法であって、その必要のある患者に、
a.有効量のバルプロ酸化合物、及び
b.有効量の非定型抗精神病薬
を同時投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
上記バルプロ酸化合物がジバルプロックス(divalproex)ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記非定型抗精神病薬が、オランザピン、リスペリドン、クロザピン、ケチアピン、ジプラシドン、セルチンドール、ゾテピン、アリピプラゾール、エプリバンセリン、MDL 100,907、イロペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、Org−5222、SM−13496及びジプラシドンから成る群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
上記抗精神病薬がリスペリドン及びオランザピンから成る群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
精神分裂病に関連する急性精神病の治療のための方法であって、その必要のある患者に、
a.有効量のバルプロ酸化合物、及び
b.有効量の非定型抗精神病薬
を同時投与することを含む、前記方法。
【請求項6】
上記バルプロ酸化合物がジバルプロックスナトリウムである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
上記非定型抗精神病薬が、オランザピン、リスペリドン、クロザピン、ケチアピン、ジプラシドン、セルチンドール、ゾテピン、アリピプラゾール、エプリバンセリン、MDL 100,907、イロペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、Org−5222、SM−13496及びジプラシドンから成る群より選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
a.有効量で存在する少なくとも1つのバルプロ酸化合物、
b.有効量で存在する少なくとも1つの非定型抗精神病薬、及び
c.上記バルプロ酸化合物及び上記非定型抗精神病薬は、少なくとも1つの医薬適合性の賦形剤と混合されていること
を含む医薬組成物。
【請求項9】
上記バルプロ酸化合物がジバルプロックスナトリウムである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
上記非定型抗精神病薬が、オランザピン、リスペリドン、クロザピン、ケチアピン、ジプラシドン、セルチンドール、ゾテピン、アリピプラゾール、エプリバンセリン、MDL 100,907、イロペリドン、ペロスピロン、ブロナンセリン、Org−5222、SM−13496及びジプラシドンから成る群より選択される、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
上記抗精神病薬がリスペリドン及びオランザピンから成る群より選択される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
工業製品であって、
a.有効量のバルプロ酸化合物を含有する少なくとも1つの医薬製剤、
b.有効量の非定型抗精神病薬を含有する少なくとも1つの第二医薬製剤、
c.上記製品は上記第一及び第二製剤形態を含むこと、及び
d.上記製品は薬剤師による患者への配給に適すること
を含む、前記工業製品。
【請求項13】
上記バルプロ酸化合物がジバルプロックスナトリウムである、請求項12に記載の工業製品。
【請求項14】
上記非定型抗精神病薬がリスペリドン及びオランザピンから成る群より選択される、請求項13に記載の工業製品。
【請求項15】
容器がブリスターパックである、請求項13に記載の工業製品。
【請求項16】
分裂病様障害の治療のための方法であって、その必要のある患者に、
a.有効量のバルプロ酸化合物、及び
b.有効量の非定型抗精神病薬
を同時投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
痴呆に関連する急性精神病の治療のための方法であって、その必要のある患者に、
a.有効量のバルプロ酸化合物、及び
b.有効量の非定型抗精神病薬
を同時投与することを含む、前記方法。

【公表番号】特表2006−505489(P2006−505489A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−565463(P2003−565463)
【出願日】平成15年1月29日(2003.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/002540
【国際公開番号】WO2003/066039
【国際公開日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】