説明

精神刺激剤として使用するためのオピオルフィン

本発明は、精神刺激薬として使用するための、ヒト塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)、特にオピオルフィンから誘導されたペプチドに関する。これらのペプチドは、重度強迫性障害(OCD)、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、注意欠陥多動性障害(ADHD)、大人と子供における注意欠陥及び/又は活動亢進、うつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害等の疾患を治療又は予防するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精神刺激剤として用いるための、Prol1遺伝子によってコードされるヒトBPLP(塩基性高プロリン涙タンパク質)タンパク質に由来するペプチド、特にオピオルフィンに関する。また、本発明は、精神刺激薬を調製するためのこのようなペプチドの使用に関する。
【0002】
精神刺激剤は、神経系の活性を促進し、意欲及び幸福感を刺激する精神刺激薬として考えられる向精神物質である。Delay及びDenikerによって確立された向精神剤の分類によれば、精神刺激剤は、特に、覚醒の刺激薬(アンフェタミン)等のヌー興奮薬(nooanaleptics)、抗うつ感情賦活薬と共に、チャット及びカフェイン等の様々な刺激薬を含む。
【0003】
精神刺激薬は、神経伝達を刺激することによって作用する。これらは、覚醒状態の低下、ナルコレプシー、肥満、子供の注意欠陥及び/又は活動亢進、重度強迫性障害(OCD)、うつ病、躁病及び双極性疾患を含む治療された様々な症状に対して用いられる。
【0004】
しかし、精神刺激薬は、依存症、耐性、急な撤回の後のうつ病及び不安等の有害作用と関連付けられることが多い。このため、有害作用を制限及び/又は最低限にした精神刺激薬のニーズがある。
【0005】
1988年に、アンドロゲンによって制御され、主に成体ラットの顎下腺及び前立腺で発現される遺伝子が同定された(Rosinski-Chupin他 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 1988; 85(22):8553-7; EP 0 394 424)。この遺伝子は前躯体である「顎下ラット1タンパク質」(SMR1)をコードする。 この前躯体はインビボでは複数の塩基性部位において開裂し、3つの構造的に似たペプチドを生じさせる(Rougeot他, Eur. J. Biochem. 1994; 219(3):765-73)。
【0006】
配列QHNPR(配列番号:6)のSMR1に由来する、シアロルフィンと呼ばれるペプチドは、細胞間情報伝達のホルモン伝達物質であることが確立された。このため、シアロルフィンは外分泌及び内分泌ペプチドホルモンであり、その発現はアンドロゲンにより制御され、環境ストレス下で起きる分泌はアドレナリン性シグナルにより媒介される(Rougeot他, Am. J. Physiol. 1997;273(4 Pt2):R1309-20)。
【0007】
成体ラットのオスでシアロルフィンが環境ストレスに応答して分泌されるという事実は、生殖に関する生理学的及び行動シグナルの統合においてこのペプチドが役割を果たしているという仮説を導く。性行動におけるシアロルフィンの役割が評価され、実験データにおいて、シアロルフィンが環境的背景に依存してオスのラットの性行動を調節する能力を有することが示された。国際特許出願WO01/00221において、性的障害を含む精神及び/又は行動障害を治療するためのSMR1の成熟生成物の使用が記載されている。
【0008】
更に、SMR1成熟生成物が器官において特定の部位を認識することが発見され、該部位はミネラルの濃縮に関与する。国際特許出願WO98/37100において、ミネラルの不均衡に関連した疾患の治療又は予防のためのSMR1成熟生成物の治療上の使用が記載されている。
【0009】
Rougeot他, Proc. Natl. Aca. Sci. USA 2003; 100(14):8549-54)は、インビボでシアロルフィンが結合する表面受容体がNEPエンドペプチダーゼ(ネプリライシン; EC 3.4.24.11 )であることを実証した。更に、シアロルフィンがリガンドであり、NEP活性の生理学的なアンタゴニストであることが証明された。このため、シアロルフィンは哺乳動物で最初に同定されたNEPエンケファリナーゼの生理学的な阻害剤であり(ヨーロッパ特許出願1 216 707)、疼痛のラットモデルにおいて強力な鎮痛効果を示した。
【0010】
ヨーロッパ特許出願1 577 320において、シアロルフィンのヒト機能相同体が記載されている。配列番号:2の配列のこのペプチドはオピオルフィンと呼ばれる。コンピューター内でのゲノム解析において、それは配列番号:5の配列のBPLPタンパク質の成熟の断片に対応することが明らかになった。BPLPタンパク質は「塩基性高プロリン涙タンパク質」、「高プロリンタンパク質1」又は「PRL1」とも呼ばれ、ヒト遺伝子であるProl1によってコードされる。オピオルフィンが生理学的NEP及びAPN基質、即ちサブスタンスP及びメチオニンエンケファリンの分解を阻害することが示された。ヨーロッパ特許出願EP1 577 320において、オピオルフィンが鎮痛作用を有し、特に疼痛の治療又は予防のために使用され得ることが示されている。
【0011】
その後、オピオルフィンの鎮痛効果はRougeot及びMessaoudiによって確認された (Med. Sci. (Paris) 2007; 23(1):37-9)。この鎮痛効果は、今日まで使用されている最も強力な鎮痛薬であるモルヒネとは異なり、逆嬬動性効果を伴わないことも示された(Rougeot C, Proceedings of the 4th International Peptide Symposium; J. Wilce (Editor) on behalf of the Australian Peptide Society, 2007)。
【0012】
本願発明者らは、驚くべきことに、オピオルフィンが鎮痛作用だけでなく、精神刺激効果も有することを発見した。更に、この精神刺激効果は、健忘症、鎮静、活動亢進又は嗜癖タイプのいかなる有害作用とも関連していない。最終的に、オピオルフィンの鎮痛効果はモルヒネと同等に強力であり、その精神刺激効果はイミプラミンと同等に強力であることが分かった。このため、オピオルフィンとそれに由来するペプチドは、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、大人と子供における注意欠陥、大人と子供における活動亢進、注意欠陥多動性障害(ADHD)、重度強迫性障害(OCD)並びにうつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害といった気分障害等の疾患を治療又は予防するための精神刺激薬として有利に用い得る。
【0013】
本発明のペプチド
本発明は、参照ペプチド又は配列と呼ばれる、配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟の生成物又は該成熟生成物の誘導体を含む又は含んで成るペプチドの治療への応用に関する。このようなペプチドは、本願の明細書において「本発明のペプチド」として指定される。
【0014】
本発明の範囲内において、「ペプチド」とは、ペプチド結合により互いに結合したアミノ酸の直鎖を含む分子を意味する。鎖は環状、即ち直鎖ペプチドの両方の末端又はアミノ酸の側鎖が化学結合により結合されていてもよい。本発明のペプチドは100個未満のアミノ酸を有する。ペプチドは4-40、4-35、4-30、4-20、4-10、5-40、5-35、5-30、5-20、5-10、5-8又は5-6アミノ酸を含んで成るのが好ましい。
【0015】
「成熟生成物」とは、成熟コンセンサス部位での、プロホルモンコンバターゼによる前駆体タンパク質の選択的タンパク質分解性開裂によって得られるペプチドを意味する。プロホルモンコンバターゼは、不活性前駆体を活性ペプチドに転換させ、例えばフューリン、PCコンバターゼ又はPACE4を含む。成熟コンセンサス部位の配列は次のコンセンサスをたどるのが好ましい: [H/R/K]-X3- [R/K]-[R/K]。ここで、[H/R/K]はアミノ酸がH、R又はKであることを意味し、X3は3個のアミノ酸の鎖を指定し、[R/K]はアミノ酸がR又はKであることを意味する。プロホルモンコンバターゼは、二塩基残基[R/K] - [R/K]間のコンセンサス単位を開裂する。プロホルモンコンバターゼは当業者によく知られており、特にScamuffa他 (2006 FASEB J. 20(12): 1954-63)に記載されている。
【0016】
配列番号5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物の1つは、配列番号2の配列のQRFSRペプチドである。プレプロタンパク質BPLPの配列は、シグナルペプチドのニックコンセンサス部位を含有し、これを開裂するとプロタンパク質QRFSRRX(n)が生成される。このプロタンパク質QRFSRRX(n)は、二塩基性部位RR及び2R間のニック部位である−4の位置に塩基性アミノ酸を含有する。QRFSRペプチドは、プロホルモンコンバターゼが作用した後に生成される。
【0017】
本発明のペプチドは、配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物を含む又は含んで成るペプチドの誘導体も含む。
【0018】
「ペプチド誘導体」とは、参照ペプチドと比較して1又は複数の変異(置換、挿入又は欠失)を含むアミノ酸配列を有するペプチドを意味する。該ペプチドは置換の変異のみを含むことが好ましい。該ペプチドは、参照ペプチドと比較して最大で1、2、3、4又は5つの変異又は置換を含むことが好ましい。「ペプチド誘導体」は、配列番号5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物を含む又は含んで成るペプチドのペプチド模倣薬も意味する(例えば、Abell, 1997, Advances in Amino Acid Mimetics and Peptidomimetics, London: JAI Press ; Gante, 1994, Peptidmimetica, massgeschneiderte Enzyminhibitoren Angew. Chem. 106: 1780-1802 ; 及び Olson他, 1993, J. Med. Chem. 36: 3039-3049を参照)。本発明に係る好ましいペプチド模倣薬は、2008年4月7日に出願された米国仮出願US61/042922及び2009年4月7日に出願された国際出願PCT/EP2009/054171に記載されたものを含む。
【0019】
好ましい実施形態において、本発明のペプチドは、保存的置換の存在のみが参照配列から異なる。保存的置換とは、非荷電側鎖のアミノ酸(アスパラギン、グルタミン、セリン、システイン、チロシン等)、塩基性側鎖のアミノ酸(リシン、アルギニン及びヒスチジン等)、酸性側鎖のアミノ酸(アスパラギン酸及びグルタミン酸等)、無極性側鎖のアミノ酸(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン及びトリプトファン等)の置換等の同じクラスのアミノ酸の置換をいう。
【0020】
本発明のペプチドは、単離ペプチドであることが好ましい。ここで、「単離」ペプチドとは、ヒトの体又は非ヒト哺乳動物の生物体から好ましくは精製された形で単離されたペプチドを意味する。しかし、単離ペプチドは、例えば、医薬組成物又はキット中に存在していてもよい。ペプチドが下記に記載する医薬組成物の1つに存在していることが好ましい。
【0021】
本発明のペプチドは、精神刺激活性を発揮する。「精神刺激活性を発揮するペプチド」とは:
−行動絶望試験(例えば、ラットの強制水泳試験)において断念に対して保護効果を発揮する;及び/又は
−NEP(ネフリシン(Nephlysin);中性エンドペプチダーゼ; EC 3.4.24.11)及び/又はAPN(アミノペプチダーゼ N; EC 3.4.11.2)等のメタロエクトペプチダーゼ(metallo-ectopeptidases)の活性を阻害するペプチドである。ペプチドは、NEP及びAPN活性の両方を阻害することが好ましい。特別な理論に限定されることなく、発明者らは、本発明のペプチドは、これら2つのメタロエクトペプチダーゼによってエンケファリンの分解を阻害することにより、作用の振幅及び作用の持続時間の観点から生理的作用に可能性を持たせ、これによりオピオイド経路、特に、エンケファリン依存性μ-及びδ-オピオイド受容体が活性化されると信じている。
【0022】
断念に対する保護効果は、ラットの強制水泳試験によって決定され得る。この試験では、ペプチドが断念に対して保護効果を発揮した場合、対照ラットの不動時間と比べ、該ペプチドを投与したラットの不動時間は短い。この試験は次の試験を含む:
−前試験セッション、このセッション中にラットは水中に決められた時間(10分から20分の間、例えば15分)置かれ、そして水から移動され、乾燥され、ケージに戻される。
−数時間後(20から25時間後、例えば24時間後)の試験セッション、このセッション中にラットは再び水中に決められた時間(5から8分、例えば5分)置かれ、そして水から移動され、乾燥され、ケージに戻される。
【0023】
試験されるペプチドは、前試験セッション後で且つ試験前に投与される。ペプチドが投与されたラットの不動時間は、対照ラットのそれと、前試験セッション中の同じラットのそれと比べられる。実施例3に、より詳細なラットの強制水泳試験のプロトコルを記載する。
【0024】
NEP及び/又はAPN等のメタロ−エクトペプチダーゼの活性の阻害は、当業者によく知られている任意の方法で測定してもよい。例えば、ヨーロッパ特許出願EP1 577 320の実施例2に記載されている1つの方法を用いてもよい。例えば、NEPの阻害活性を、LNCaP細胞の膜の調製中のサブスタンスPの分解の阻害を測定することにより測定することが可能である。このプロトコルの詳細は、Rougeot他(Proc. Natl . Acad. Sci. USA 2003; 100(14):8549-54)及び2009年1月19日に出願された国際出願PCT/EP2009/050567に記載されている。
【0025】
特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号:5の配列の断片を含み又は含んで成り、あるいは配列番号:5の該断片から由来するペプチドを含み又は含んでなる。
【0026】
好ましくは、本発明のペプチドは、配列X1-X2-Arg-Phe-Ser-Arg (配列番号:1)を含み又は含んで成り、ここで:
−X1は水素原子、チロシン又はシステインを表し;
−X1が水素原子である場合、X2はグルタミン又はピログルタミン酸を表し;
−X1がチロシン又はシステインである場合、X2はグルタミンを表し;そして
−該配列X1-X2-Arg-Phe-Ser-Argは該ペプチドのC末端である。
【0027】
本発明のペプチドは、X1-X2-Arg-Phe-Ser-Arg (配列番号:1).の配列を含んで成るのが好ましい。本発明のペプチドは、例えば、QRFSR配列(配列番号:2), YQRFSR(配列番号:3)又はCQRFSR(配列番号:4)を含んで成ってもよい。または、本発明のペプチドは、保存的置換によって配列番号:2、配列番号:3又は配列番号:4の配列と異なっていてもよい。
【0028】
他の特定の実施形態において、本発明のペプチドは、配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の対立遺伝子変異体の成熟生成物を含み又は含んで成る。明確にするために、本発明のペプチドから配列番号:6の配列のシアロルフィンが除かれることが特定される。
【0029】
本発明のペプチドは更に、安定性及び/又は生物学的利用能を改善する1以上の化学的修飾を含んでもよい。この修飾は、例えば、最初のペプチドよりも安定性が高く、より親油性であるペプチドを得ることを目的としている。安定性及び/又は生物学的利用能を改善する1以上の化学的修飾を含むペプチドは、本発明のペプチドの一部である。
【0030】
このような化学的又は酵素的修飾は、当業者によく知られている。限定するわけではないが、言及は、例えば、次の修飾からなる:
−N末端脱アミノ化又はアシル化(好ましくはアセチル化)等あるいはC末端アミド化又はエステル化等のペプチドのC末端又はN末端の修飾;
−アルファ窒素又は炭素におけるアシル化(好ましくはアセチル化)又はアルキル化等の2つのアミノ酸間のアミド結合の修飾;
−対応するD‐鏡像異性体による天然アミノ酸(L‐鏡像異性体)の置換等のキラリティーの変化。この修飾は側鎖の反転を伴い得る(C末端からN末端まで);
−アザペプチドへの変化、1つ以上のアルファ炭素が窒素原子に置き換えられる;及び/又は
−ベータペプチドへの変化、1つ以上の炭素が主鎖のN-アルファ側又はC‐アルファ側に加えられる。
【0031】
このようなものとして、ペプチドの1つ以上のアミノ酸、セリン(Ser)及び/又はスレオニン(Thr)が、特にセリン及び/又はスレオニンが、エステル基、エーテル基又はC8オクタノイル基を側鎖のOH基に導入することにより、修飾されてもよい。例えば、酢酸塩又は安息香酸塩を形成するために、簡単な操作であるエステル化を、カルボン酸、無水物を用いて、橋により、行ってもよい。例えば、メチルエーテル又はO-グリコシドを形成するために、より安定した化合物を与えるエーテル化を、アルコール、ハロゲン化物等を用いて行ってもよい。
【0032】
また、ペプチドの1つ以上のアミノ酸、リシン(Lys)も又は代わりに、次のように修飾されてもよい:
−アミド化:この修飾は簡単に達成でき、リシンの正電荷が疎水基(例えば、アセチル又はフェニルアセチル)によって置換される;
−アミノ化: 例えば、N-メチル、N-アリル又はN‐ベンジル基を形成することによって、1級アミンR=(CH2)4-NH3+から2級アミドを形成することによる;及び
−N-オキシド、N-ニトロソ、N-ジアルキルホスホリル、N‐スルフェニル又はN-グリコシド基を形成することによる。
【0033】
更に、1つ以上のアミノ酸、グルタミン(Gln)も又は代わりに、例えばアミド化、特に官能性であるかに関わらず、メチル、エチルタイプの基を用いて2級又は3級アミンを形成することにより、修飾されてもよい。
【0034】
更に、1つ以上のアミノ酸、グルタミン酸(Glu)及び/又はアスパラギン酸(Asp)も又は代わりに、例えば次のようにして修飾されてもよい。
−置換されてもされなくてもよいメチルエステル、エチルエステル、ベンジルエステル、チオール(活性化エステル)を形成するためのエステル化により;及び
−特に、N,N-ジメチル、ニトロアニリド、ピロリジニル基を形成するためのアミド化により。
【0035】
一方、ペプチドの二次構造に関与するプロリンアミノ酸を修飾しないのが好ましく、また更にアミノ酸であるGly、Ala及びMetは明らかに所望とされる修飾の可能性を一般的には提供しないことを認識すべきである。
【0036】
安定性及び/又は生物学的利用能を改善する1以上の化学的修飾を含むこのようなペプチドの例は、2008年4月7日に出願された米国仮出願US61/042922及び2009年4月7日に出願された国際出願PCT/EP2009/054171に記載されている。これらは、次の式(I)のペプチドを含む。
ζ- AA1-AA2-AA3-AA4-AA5-OH (I)
ここで:
−ζは水素原子、チロシン、Y-[リンカー]-あるいはシステイン、C-[リンカー]-、N-アセチル−システイン、N-メルカプトアセチル(HS-CH2-CO-)、ヒドロキサム酸(HO-NH-CO-)又は随意に置換されたヒドロキシキノリン等のZnキレート基であり、
−AA1はQ又はGlpであり、
−AA2はK、R又はH、好ましくはRであり、
−AA3はY、G、N、F又はF(X)、好ましくはF又はF(X)であり、
−AA4はP、S又はS(OAIk)、好ましくはS又はS(OAIk)であり、
−AA5はK又はR、好ましくはRであり、
−C-[リンカー]-はCys-[NH-(CH2)n-CO]-を意味し、nは1から20までの整数であり、
−Y-[リンカー]-はTyr-[NH-(CH2)n'-CO]-を意味し、n'は1から20までの整数であり、
−F(X)はフェニルアラニンを意味し、そのフェニル基は1つ以上のハロゲン原子によって置換されており、
−S(OAIk)はセリンを意味し、そのヒドロキシル基は1から20個の炭素原子を有する直鎖又は分岐アルキル基によって置換されており、
−該AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5は独立してL-配置又はD‐配置でもよく、 AA1、AA2、AA3、AA4及びAA5のいずれか1つは随意にbアミノ酸、アザ-アミノ酸又はb-アザ-アミノ酸でもよい;
ペプチド誘導体がシステインを含む場合、ペプチドがQRFSR、QHNPR、QRGPR、YQRFSR又はGlpRFSRでないことを前提として、該ペプチド誘導体は随意に二量体である。
【0037】
式(I)のペプチドの中で、好ましいペプチドは、NEP及びAPNの双方を阻害するものを含む。このようなペプチドは次の式(IV)を有していてもよい。
ζm - Q-R-AAm3-AAm4-R-OH (IV)
ここで:
−ζmは水素原子、あるいはシステイン、C-[リンカー]-、N-アセチル−システイン、N-メルカプトアセチル(HS-CH2-CO-)、ヒドロキサム酸(HO-NH-CO-)又は随意に置換されたヒドロキシキノリン等のZnキレート基であり、
−AAm3はF又はF(X)、好ましくはF(X)であり、
−AAm4はS又はS(OAIk)、好ましくはS又はS(OAIk)であり、
−C-[リンカー]-、F(X)及びS(OAIk)は式(I)のペプチドについて上記に定義された通りであり、
−該Q、R、AA3、AA4及びRは独立してL-配置又はD‐配置のいずれでもよく、 Q、R、AA3、AA4及びRのいずれか1つは随意にβアミノ酸、アザ-アミノ酸又はβ-アザ-アミノ酸でもよい;
ペプチド誘導体がシステインを含む場合、ペプチドがQRFSR又はYQRFSRでないことを前提として、該ペプチド誘導体は随意に二量体である。
【0038】
式(I)及び/又は(IV)のこのようなペプチドの詳細な例は次を含む:
−QRFSR-NH2;
−QR-F[4Br]-SR、ここで-F[4Br]-はフェニルアラニンであり、このフェニル基はブロモ原子によりパラ配位で置換されており;
−QRFPR;
−(アセチル)-QRFSR;
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRFSR;
−ビオチン-(-HN-(CH2)6-CO-)-QRFSR;
−dR-dS-dF-dR-dQ;
−Y-(-HN-(CH2)6-CO-)-QRFSR;
−Y-(-HN-(CH2)12-CO-)-QRFSR;
−QRF-S(O-オクタノイル)-R;
−CQRFSR;
−CQRF-S(O-オクタノイル)-R;
−CQRF-S(O-ドデカノイル)-R;
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRFSR;
−C-(-HN-(CH2)12-CO-)-QRFSR;
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRF-S(O-オクタノイル)-R;
−[Cβ2]QRF-S(O-オクタノイル)-R;
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRFS-[β3R];
−C-[dQ]-RF-S(O-オクタノイル)-[dR];
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRFS-[dR];
−[dC]-QRF-S(O-オクタノイル)-[dR];
−[Cβ2]-QRF-S(O-オクタノイル)-[β3R];
−[CQRFSR]2;
−QRYSR;
−QR-F[4F]-SR、ここで-F[4F]-はフェニルアラニンであり、このフェニル基はフルオロ原子によりパラ配位で置換されており、
−QR-F[4Br]-SR、ここで-F[4Br]-はフェニルアラニンであり、このフェニル基はブロモ原子によりパラ配位で置換されており、
−QKFSR;
−QRFSK;
−C-(-HN-(CH2)6-CO-)-QRFSR;
−C-(-HN-(CH2)6-CO-)-QRF-S(O-オクタノイル)-R;
−C(-HN-(CH2)12-CO-)QRF-S(O-オクタノイル)-R;
−C-(-HN-(CH2)12-CO-)-QRFS-dR;
−C-(-HN-(CH2)12-CO-)-QRF-S(O-オクタノイル)-β3R;
−C-(-HN-(CH2)8-CO-)-QRF-S(O-オクタノイル)β3R;
ここで:
−Cβ2はH2N(-CH2-SH)-CH2-CO-であり;
−β3Rは-NH-CH2-C[-(CH2)3-NH-C(NH)(NH2)]-COOH;
−-S(-O-オクタノイル)はセリンを意味し、このヒドロキシル基はオクタノイル基により置換されており、
−-S(-O-ドデカノイル)はセリンを意味し、このヒドロキシル基はドデカノイル基により置換されている。
【0039】
2008年4月7日に出願された米国仮出願US61/042922及び2009年4月7日に出願された国際出願PCT/EP2009/054171に記載された、安定性及び/又は生物学的利用能を改善する1以上の化学的修飾を含むペプチドは更に次を含む:
−NH2-QRFSR-CONH2;
−NH2-QRGPR-COOH;
−NH2-QHNPR-COOH;
−NH2-QR(4ブロモF)SR-COOH;
−NH2-QRFPR-COOH;
−N-(アセチル)QRFSR-COOH;
−N-(C8-ポリエチレン)QRFSR-COOH;
−N-(ビオチン-C6)QRFSR-COOH;
−NH2-dRdSdFdRdQ-COOH(D-鏡像異性体レトロ反転);
−NH2-YQRFSR-COOH;
−NH2-Y-(C6-ポリエチレン)QRFSR-COOH;
−NH2-Y-(C12-ポリエチレン)QRFSR-COOH;
−NH2-QRF[S-O-C8-ポリエチレン]R-COOH;
−NH2-CQRFSR-COOH;
−NH2-CQRF[S-O-C8-ポリエチレン]R-COOH;
−NH2-CQRF[S-O-C12-ポリエチレン] R-COOH;
−NH2-C-(C8-ポリエチレン)QRFSR-COOH;
−NH2-C-(C12-ポリエチレン)QRFSR-COOH;
−NH2-C-(C8-ポリエチレン)QRF[S-O-C8-ポリエチレン]R-COOH;
−NH2-[Cβ2]QRF[S-O-C8-ポリエチレン]R-COOH;
−NH2-C-(C8-ポリエチレン)QRFS[β3R]-COOH;
−NH2-C[dQ]RF[S-O-C8-ポリエチレン][dR]-COOH;
−NH2-C-(C8-ポリエチレン)QRFS[dR];
−NH2-[dC]QRF[S-O-C8-ポリエチレン][dR]-COOH;
−NH2-[Cβ2]QRF[S-O-C8-ポリエチレン][β3R]-COOH;及び
−[CQRFSR]2、即ち、N末端システイン及びシステイン結合(ジスルフィド架橋)のSH基の酸化の後に形成されたジペプチド;
ここで:
−Cβ2は天然システイン残基を、該システインのカルボニル基の近傍の炭素に隣接するメチル残基を含むシステイン-β2で置換し;
−β3Rは天然アルギニン残基を、該アルギニンのアミン基の近傍の炭素に隣接するメチル残基を含むアルギニン-β3で置換し;
−[S-O-C8-ポリエチレン]は[S-O-オクタノイル]であり;及び
−C6、C8又はC12ポリエチレンは、6、8又は12個の炭素のエチレン鎖からなるスペーサー基に対応する。
【0040】
ペプチドが配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物を含有するが成熟生成物からならない場合、又は該成熟生成物の誘導体を含有するが誘導体からならない場合、ペプチドはそのN又はC末端に更なるアミノ酸を含有する。これらの更なるアミノ酸は、例えば、BPLP配列の一部分又は安定性及び/又は生物学的利用能を改善するアミノ酸の配列と対応していてもよい。しかし、ペプチドの大きさは30〜40個のアミノ酸を超えないのが好ましい。
【0041】
本発明のペプチドは、当業者によく知られている任意の方法で合成されてもよい。このような方法として、特に従来の化学合成(固相中又は均質な液相中)、構成的なアミノ酸又はその誘導体からの酵素合成及び組換え宿主細胞による生物学的生産方法が挙げられる。純度、抗原特異性、所望しない副産物の非存在の理由及び生産の容易さから、化学的経路を通した合成は特に有利である。化学的経路を通した合成には、メリフィールド型合成及びFmoc固相中のペプチド合成の方法等の他の方法が含まれる(例えば、"Fmoc solid phase peptide synthesis, a practical approach", published by W. C. Chan and P. D. White, Oxford University Press, 2000を参照)。
【0042】
本発明のペプチドの治療的使用
ラットの行動絶望の分析のモデルにおいて、オピオルフィンが抗うつ効果及び精神刺激効果の両方を発揮することが分かっている。更に、オピオルフィンの抗うつ効果及び精神刺激効果は、内因性κ-オピオイド受容体の活性ではなく、内因性μ-及びδ-オピオイド受容体の活性に依存することが分かっている。
【0043】
このため、本発明は、精神刺激薬として使用するための、上記段落に記載された本発明のペプチドに関する。本発明のこのようなペプチドは、μ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化するために用いてもよい。更に、本発明のペプチドは、κ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化しない。
【0044】
これらのペプチドは特に、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、注意欠陥(大人と子供において)、活動亢進(大人と子供において)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、重度強迫性障害(OCD)、うつ状態及びうつ(「大うつ病性障害」)等の気分障害〔後者は一次性うつ病(「大うつ病性障害、単一エピソード」)及び耐性のうつ(大うつ病性障害、反復性)を含む〕、双極性疾患(I型及び/又はII型)、気分変調性障害及び気分循環性障害を治療又は予防するために用いてもよい。
【0045】
これらの疾患の1つを治療する範囲内において、本発明のペプチドは、精神刺激薬及び/又はδ-もしくはμ-オピオイド受容体に依存するオピオイド作動性経路の活性化を必要とする患者のサブグループに投与されるのが好ましい。
【0046】
本発明のペプチドは、同じ疾患を治療又は予防することを目的とする第2の活性成分と組み合わせて(即ち、同時又は連続投与により)用いてもよい。この第2の活性成分も精神刺激効果、又は抗うつ効果、あるいは更に抗不安効果を有していてもよい。ペプチドは、例えば、次の中から選ばれる少なくとも1つの第2の活性成分と組み合わせて用いてもよい:
−イマオ(imao)(イプロニアジド、モクロベミド)、イミプラニン系(imipraminic)抗うつ薬(イミプラミン、クロミプラミン、アミトリプチリン、アモキサピン、ドスレピン、ドキセピン、マプロチリン、トリミプラミン等)、セロトニンの再捕捉の選択的阻害性抗うつ薬(シタロプラム、フルボキサミン、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリン、エシタロプラム等)、又はセロトニン及びアドレナリンの再捕捉の阻害性抗うつ薬(ミルナシプラン、ベンラファキシン、ミルタザピン等)等の抗うつ薬;
−ベンゾジアゼピン(アルプラゾラム、クロバザム、ジアゼパム、ロラゼパム、プラゼパム等)、メプロバメート、ヒドロキシジン、ブスピロン、カプトジアム、エチホキシン等の抗不安薬;
−モルヒネ、モダフィニル、メチルフェニデート、デアノールの誘導体(アクチ(acti)5、クレレジル、デブルミル(debrumyl)等)、ケトグルタレート、アドラフィニル又はスルブチアミン等の精神刺激薬。
【0047】
これらの知られている活性成分の大半は、有効量で著しい有害作用を有する。知られている活性成分とは異なり、本発明のペプチドは生理的調節系に作用し、輸送系又は受容体に直接作用しない。このため、本発明のペプチドの作用は、調節系の範囲から逸脱せず、調節系を飽和状態にすることはできない。よって、有害作用を有さず、有していたとしてもわずかである。
【0048】
本発明のペプチドは、第2の活性成分の効果を増強することによって、第2の活性成分が単独で投与される場合に有効量未満の濃度で投与することができる。このため、本発明の好ましい実施形態は、少なくとも1つの第2の活性成分と組み合わせた本発明のペプチドの使用に関し、該第2の活性成分は有効量未満の濃度、特に有害作用が制限、減縮、最小化又はなくなる投与量で投与される。
【0049】
本発明のペプチド及び第2の活性成分は、同一の医薬組成物又は2つの異なる医薬組成物中に存在していてもよい。2番目の場合、医薬組成物は実質的に同時又は連続的に患者に投与され得る。
【0050】
本願明細書で言及した疾患は、疾患の任意の段階で治療され得る。「治療」とは、治療処置(少なくとも、病状の進行を和らげ、遅らせ、又は停止することに関する)を意味する。「予防」とは、予防的治療(病状の発症のリスクを軽減することに関する)を意味する。
【0051】
「精神刺激薬」及び「精神刺激剤」とは、ドーパミン作用性及びノルアドレナリン作用性の神経伝達を増大させる化合物を意味する。より詳細には、精神刺激薬は、注意力、意欲、用心深さ、集中力を制御する原因となる神経伝達物質を刺激する。ドーパミンとアドレナリンは、注意力、意欲、用心深さ、集中力を制御する原因となる主な2つの神経伝達物質である。
【0052】
「μ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路」は、当業者によく知られている。これらの経路には、特にHenriksen及びWilloch (2008 Brain. 131 (Pt 5):1171-96)に記載されているものを含む。当業者は、実施例2に記載されたものなど、化合物がμ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化させるかどうかを評価するいくつかの利用可能な試験を有する。例えば、μ-及び/又はδ-オピオイド受容体の特異的なオピオイドアンタゴニストの存在及び不存在下における化合物の効果を比較することが可能である。アンタゴニストの存在下での化合物の効果の消滅は、化合物が調べているオピオイド経路を活性化させたことを示す。
【0053】
本発明は、μ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化させるための、本発明のペプチドのインビトロでの使用及びインビボでの使用の両方に関する。
【0054】
本発明は、次のものを調製するための、本発明のペプチドの使用にも取り組む:
−精神刺激薬;
−μ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化することができる薬;
−ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、大人と子供における注意欠陥、大人と子供における活動亢進、注意欠陥多動性障害(ADHD)、重度強迫性障害(OCD)並びにうつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害等の気分障害から選ばれる疾患を予防又は治療するための薬。
【0055】
更に、本発明は:
−ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、大人と子供における注意欠陥、大人と子供における活動亢進、注意欠陥多動性障害(ADHD)、重度強迫性障害(OCD)並びにうつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害等の気分障害からなる群から選ばれる疾患を治療又は予防;及び/又は
−μ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化させる
ための方法に取り組み、本発明のペプチドを個体に投与するステップを含む。好ましくは、個体はその必要性がある個体及び/又は患者である。好ましくは、該ペプチドの有効量が投与される。個体及び/又は患者は、精神刺激薬及び/又はμ-及び/又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド作動性経路の活性化を必要としていることが好ましい。
【0056】
医薬組成物及び用量
本発明のペプチドは、活性成分として少なくとも1つの本発明のペプチド、及び1つ以上の製薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物として優先的に用いられる。
【0057】
「賦形剤」又は「製薬学的に許容される担体」とは、例えばヒト又は動物においてアレルギー反応等のいかなる有害作用を生じさせない任意の溶媒、分散媒、吸収遅延剤(absorption-delaying agent)等を意味する。
【0058】
本発明のペプチドは、上記の任意のペプチドと対応してもよい。
【0059】
例えば、本発明の医薬組成物は、医薬組成物単位用量当たり3〜100、5〜50又は10〜25mgの本発明のペプチドを含む。医薬組成物には、治療的応用(例えば上記したもの)及び用量(例えば、前の段落で言及した用量に従う)に関する説明書が附随してもよい。
【0060】
用量は、特に関連した活性成分、投与形態、治療指標、年齢、体重及び患者の容体に依存する。
【0061】
初回投与量は、一般的に、できるだけ少なくなるように選ばれる(最小有効量)。必要である場合、患者の応答に依存して用量が少しずつ増やされる。活性成分の効果が現れる前に遅延があることを想定すると、好ましくは用量を増やす前に数日から数週間待つ必要があるだろう。
【0062】
本発明のペプチドの場合、大人の初回投与量は、例えば1日に75mg以下であり、3回投与される。必要である場合、この用量は少しずつ1日につき150mgまで増やされる。1日につき200mg超の用量は避けたほうがよい。しかし、患者が重篤な容体で病院に搬送される場合、用量は1日につき250又は300mgとなり得る。高齢患者の場合、初期投与量は、例えば1日につき30mg以下であり、1日につき100mgを超えないのが好ましい。子供の場合、初期投与量は、例えば1日につき10〜25mg以下でよく、1日につき75mgを超えないのが好ましい。
【0063】
本発明による医薬組成物は更に、精神刺激薬、抗うつ剤及び/又は抗不安薬から選ばれる少なくとも1つの第2の活性成分を含有してもよい。
【0064】
本発明の医薬組成物は、単一の経路又は異なる経路を通して患者に投与されるように処方されてもよい。
【0065】
医薬組成物は、例えば経口、舌下、鼻腔、頬、経皮、静脈、皮下、筋内及び/又は直腸経路で投与されてもよい。
【0066】
経口又は舌下経路で投与される場合、本発明の組成物は、例えば、ゼラチンカプセル、発泡錠、むき出しの又はコーティングされた錠剤、小袋、糖衣錠、飲用アンプル又は溶液、微粒剤又は持続放出形態である。
【0067】
鼻腔又は頬経路で投与される場合、本発明の組成物は、例えば、スプレーとして存在する。
【0068】
経皮経路で投与される場合、本発明の組成物は、例えば、パッチとして存在する。
【0069】
非経口経路、より具体的には注射での投与が考えられる場合、活性成分を含む本発明の組成物は、緩速かん流のためアンプル又はフラスコ中にパッケージされた注射剤及び懸濁液として存在する。注射は、特に皮下、筋内又は静脈経路で行ってもよい。非経口投与の形態は、従来より、活性成分を緩衝剤、安定剤、防腐剤、可溶化剤、等張剤及び懸濁剤と混合することにより得られる。既知の技術によれば、これらの混合物は次いで殺菌され(例えば、ろ過によって)、そして静脈注射剤としてパッケージされる。
【0070】
緩衝剤として、当業者は有機リン酸塩源を基礎とした緩衝剤を用いてもよい。
【0071】
懸濁剤の例として、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アカシア及びカルボキシメチルセルロースナトリウム塩が挙げられる。更に、本発明による有用な安定剤は、亜硝酸ナトリウム及びメタ亜硫酸ナトリウムであり、一方、言及は、防腐剤としてp-ヒドロキシ安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、クレゾール、クロロクレゾールからなっていてもよい。経口液剤又は懸濁液を調製するために、活性成分は、分散剤、保湿剤、懸濁剤(例えば、ポリビニルピロリドン)、防腐剤(メチルパラベン又はプロピルパラベン等)、味矯正剤又は着色剤と共に好適な賦形剤に溶解又は懸濁される。
【0072】
マイクロカプセルを調製するために、活性成分は、好適な希釈剤、好適な安定剤、活性物質の持続放出を促進する剤又は好適なポリマー(例えば水溶性樹脂又は不水溶性樹脂)でコーティングされる中核を形成するための任意の他のタイプの添加剤と組み合わされる。当業者に知られている技術は、この目的で使用されよう。
【0073】
そして、これによって得られたマイクロカプセルは、好適な剤形に随意に処方される。
【0074】
異なる意味を有するが、用語「含む」、「含有する」、「包含する」及び「含んで成る」は、本発明の説明において同じ意味で用いられており、互いに交換してもよい。
【0075】
以下の実施例及び図面によって、本発明の範囲を制限することなく、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】図1は、前試験(n=40)及び試験(乾燥、n=8ラット/グループ)(平均±SEM)中の無動時間を測定することによって、強制水泳試験におけるオピオルフィンの精神刺激及び抗うつ効果を示す。マンホイットニー検定(対賦形剤)の試験は次の通りである:T p<0.10; * p<0.05; *** p<0.001。試験中、オピオルフィンが投与されたラットは、賦形剤が投与されたラットとは異なり、諦めなかった。これにより、オピオルフィンが抗うつ効果を有することが実証される。更に、試験中、オピオルフィンが投与されたラットの不動時間は、前試験中の同じラットの不動時間よりも短かった。これにより、オピオルフィンが精神刺激効果を有することが実証される。
【図2】図2は、テールフリック疼痛モデルにおいて、オピオルフィンが鎮痛作用を発揮することを示す。疼痛応答は、ヒトオピオルフィン又はモルヒネの投与に続く侵害性熱刺激までの時間の関数で評価された。テールフリック潜時は4つの異なる時点で評価された:モルヒネを参照としてオピオルフィン又は賦形剤投与後5、15、25及び60分後。30秒間離れた2つの連続した測定は、ベースラインテールフリック潜時を評価するために、オピオルフィン、モルヒネ又は賦形剤注射前に行った。テールフリック潜時上の賦形剤(白丸)及びモルヒネ(白三角;1mg/kg i .v)と比較したオピオルフィンの効果(黒丸;2mg/kg i.v.)。結果は、6匹のラットの平均±SEMとして表される。アスタリスクは、マンホイットニーのU検定による**P<0.01対賦形剤を示す。
【図3】図3は、テールフリック疼痛モデルにおいて、ヒトオピオルフィンが鎮痛効果を呈することを示す。疼痛応答は、ヒトオピオルフィン又はモルヒネの急性及び慢性投与に続く侵害性熱刺激の関数で評価された。テールフリック潜時は、オピオルフィン、賦形剤又はモルヒネの7日間(7日目)中の急性(1日目)又は毎日のi.v.投与後に評価された。30秒間離れた2つの連続した測定は、ベースラインテールフリック潜時を評価するために、オピオルフィン、モルヒネ又は賦形剤注射前に行った。テールフリック潜時上の賦形剤(白丸)及びモルヒネ(白四角;1mg/kg i .v)と比較したオピオルフィンの効果(白三角;2mg/kg i.v.)。結果は、6匹のラットの平均±SEMとして表される。アスタリスクは、マンホイットニーのU検定による*P<0.05、**P<0.01対賦形剤を示す。
【0077】
(配列表の配列の説明)
配列番号:1、2、3及び4は本発明のペプチドに対応する。より詳細には、配列番号:2はオピオルフィンに対応する。
【0078】
配列番号:5は、ヒト塩基性高プロリン涙タンパク質(BFLP)の配列に対応する。
【0079】
配列番号:6はシアロルフィンに対応する。
【実施例】
【0080】
実施例1:Genosphere Biotechnologies社(フランス)及びAlmac Sciences社(イギリス)によるオピオルフィン(即ち、QRFSRペプチド)の合成
Genosphere Biotechnologies社(フランス)及びAlmac Sciences社(イギリス)によって、オピオルフィンバッチが合成された。これらの合成バッチがインビトロで用量依存的に保護することが確認された:
−サブスタンスP(NEPの生理物質)及び合成蛍光物質[Abz]-dRGL-[EDDnp]、[Abz]-RGFK-[DnpOH](Thermo-Fisher Scientific)、並びに組換えヒトNEP(QRFSRの抑制濃度、5から50μMを含む)による細胞内タンパク質分解から;及び
−組換えヒトAPNによるアミノタンパク質分解からのAla-AMCの合成物質
【0081】
実施例2:侵害受容伝達経路におけるオピオルフィンの効果
オスのラットにおける急性疼痛行動応答の分析モデルにおいて、Rougeot他(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003; 100(14):8549-54)に記載された「ピン突き疼痛テスト(pin pain test)(機械刺激)」では、オピオルフィンが強力な抗侵害受容作用を1mg/kg i.v.(p= 0.0002、マンホイットニーのU検定、n=8-12ラット/グループ)で発揮することが示され、これはモルヒネの場合の6mg/kg i.p.に等しい(Rougeot及びMessaoudi, Med. Sci. (Paris). 2007; 23(1 ):37-9)。
【0082】
驚くべきことに、主な有害作用中、モルヒネの逆蠕動性効果(対照ラットと比較してモルヒネで処置されたラットにおける蠕動(peristaltism)の80〜90%の阻害)はオピオルフィンで処理したラットでは観察されなかった。
【0083】
そして、皮下慢性炎症(後足における化学的刺激)に関連した慢性疼痛行動応答の分析モデルにおいて、オピオルフィンの鎮痛作用が調査された(Rougeot他(Proc. Natl. Acad. Sci. USA. 2003; 100(14):8549-54)に記載された「ホルマリン試験」)。参照物質はモルヒネであり、1回分の投与量は2mg/kgである。
【0084】
「ホルマリン」と呼ばれる疼痛試験における2つの最も重要な変数、足を舐めている時間及びけいれん回数に基づいて、オピオルフィンは、顕著な用量依存的効果(p 0.002, クラスカル・ワリス分散分析、n=8 ラット/グループ)及び1〜2mg/kg i.v. (マンホイットニー検定p=0.036〜0.003対賦形剤)の最大抗侵害効果を有する持続性鎮痛プロフィール(60分に渡って動態中、行動応答が記録及び分析される)を呈した。
【0085】
次の段階は、オピオルフィンの抗侵害受容作用の特異性及び特に内因性オピオイド受容体の関係性を定義することにあった。次のリガンドの拮抗作用が分析された:広域スペクトルを有するオピオイドアンタゴニスト(ナロキソン、3 mg/kg)、オピオイドμ-受容体(CTOP, 0.8 mg/kg)、δ-受容体(ナルトリンドール、10 mg/kg)及びκ-受容体(ノルビナルトルフィミン、5 mg/kg)のそれぞれの選択的アンタゴニスト。
【表1】

【0086】
「ホルマリン試験」における鎮痛効果は、μ-オピオイド受容体に特異的なアンタゴニストであるナロキシン又はCTPAの存在下においてなくなった(上記表1)。この結果は、オピオルフィンの抗侵害受容作用が、オピオイド受容体に依存する内因性オピオイド経路により介在され、μ-オピオイドサブタイプの受容体の特異的活性化を要することを実証する。これらの受容体は、疼痛伝達の負のレトロ制御(エンケファリン、β-エンドルフィン及びエンドモルフィン)及びモルヒネ作用に関与する生理学的シグナルの伝達に関与する。
【0087】
このため、オピオルフィンが、ラットの疼痛行動応答の2つの分析モデルである「ピン突き疼痛テスト」(急性機械的疼痛)及び「ホルマリン試験」(慢性化学的炎症疼痛)において、内因性オピオイド経路の活性を介して強力な抗侵害受容作用を1mg/kgで発揮することが実証された。一方で、1mg/kg i.v.でのオピオルフィンが、これらの試験の両方において、ヒトにおける重篤で慢性な疼痛を治療するのに最も効能のある鎮痛分子である、2〜6mg/kg i.p.のモルヒネに誘導される最大鎮痛効果を誘導できる。
【0088】
更に、ラットにおける大腸炎症において、イブプロフェンとは異なり、1mg/kg i.v.のオピオルフィンは、TNBSの直腸内投与によって誘発される炎症から大腸壁を保護しない。このため、オピオルフィンは、この試験においていかなる顕著な腸抗炎症作用を発揮しない。よって、「ホルマリン試験」における1mg/kgのオピオルフィンの抗疼痛作用は、ペプチドの抗炎症作用とは関連していないようである。
【0089】
実施例3:感情を制御するための経路におけるオピオルフィンの効果:抗うつ効果 ・行動絶望試験(強制水泳試験)
オスの成体ラットにおける絶望又は断念行動に対するオピオルフィンの効果を調査した。試験は、15分間の前試験セッション及び24時間後の5分間の試験セッションを含む。前試験セッション中、最初の5分間においてラットの行動を記録する。前試験の終わりにラットを水から移動させ、丁寧に乾燥させ、取り扱い、そして居住ケージに戻す。試験中、ラットは再び水中に置かれ、その行動を5分間記録する。
【0090】
3種の量(0.5、1又は2mg/kg)で、前試験セッション、試験セッションの300及び15分前に静脈経路(i.v.)でオピオルフィンが投与された。参照物質は、5-HT1aアゴニスト又はセロトニンの再摂取の阻害剤であるイミプラミン(20mg/kg)である8-OH-DOAT(0.5mg/kg)である。
【表2】

【0091】
クラスカル・ワリス分散分析において、前試験中の異なるグループのラットの無動時間に有意な差はなかったが、処置後のこれらの同じグループでは有意な不均一性が観察された(上記表2)。
【0092】
マンホイットニー検定において、1及び2mg/kgのオピオルフィン及び8-OH-DPATで処置されたラットの不動時間は対照グループのラットのそれによりも有意に短かく、0.5mg/kgのオピオルフィンで処置されたグループのラットの無動時間は対照グループのラットのそれよりも短い傾向にある(図1)。
【0093】
ウィルコクソン検定において、試験対前試験セッションの両方の間で対照ラットの水中不動時間が有意に増える。実際には、水からすぐに取り出されることを知っていたことから、対照ラットは試験中に断念した。対照ラットとは異なり、1及び2mg/kgのオピオルフィンと8-OH-DPATで処置されたグループのラットの不動時間は前試験と試験の間で有意に下がる。これはオピオルフィンで処置されたラットが断念せず、このためオピオルフィンが抗断念(抗うつ)効果を有することを示す。更に、1及び2mg/kgのオピオルフィン及び8-OH-DPATで処置されたグループのラットの不動時間は、対照グループのそれと比較して有意に短い。これはオピオルフィンが抗断念効果のみならず、精神刺激効果も発揮することを示す。
【0094】
結論として、静脈投与されたオピオルフィンは保護的な用量依存的効果を断念に対して誘導し、このため、オスの成体ラットにおける行動絶望試験において1mg/kgで最大抗うつ効果を発揮する。
【0095】
処置されたラットにおける断念の不在をも説明し得る、オピオルフィンの健忘症又は活動亢進の効果の可能性を排除するため、オピオルフィンの抗うつ効果の特異性を検証するために更に2つの行動試験を行った。
【0096】
・受動回避試験
ラットの受動回避試験によって、逃れられない嫌悪刺激の適用中の動物の記憶の度合いを評価することができる。装置は開いている仕切りによって分けられた2つの小部屋からなり、ラットが小部屋から小部屋へ移動できるようになっている。試験の最初にラットが置かれる第1の小部屋には光が照らされ、電気が流れている格子を含む床がある暗い小部屋にサッシ戸で通じている。受動回避試験は、暗い小部屋に入った時に動物が電気ショック(2mA 2s)を受ける前試験セッション、及び学んだタスク(試験において暗い小部屋の格子にはもはや電気が流れていない)の長期保持のために動物の行動を分析する、24時間後の3分間試験セッションを含む。前試験のセッションの直後にオピオルフィンが投与された(1mg/kg i.v.)。この試験により、オピオルフィンの健忘症効果を評価することが可能であった。以下の表において、暗い小部屋に入るまでの潜時を示す(平均±SEM、n=8ラット/グループ)。
【表3】

【0097】
マンホイットニー検定において、2つの前試験及び試験セッション中の暗い小部屋に入るまでの、対照及びオピオルフィングループの両方のグループラットの潜時に有意な差はなかった。ウィルコクソン検定において、試験中の2つのグループのそれぞれのラットの潜時は、前試験に得られたものと比べ、有意に長かった(×6〜7)。これは、動物が長期に渡って学んだタスクを保持していることを示す。このため、1mg/kg i.v.の投与量のオピオルフィンは、受動回避試験においていかなる健忘症効果も示さない。
【0098】
・自発運動試験
装置は開いている仕切りによって分けられた2つの小部屋からなり、ラットが小部屋から小部屋へ移動できるようになっている。測定された変数は、3分間における直立運動(垂直活動)の数及び2つの小部屋の通行回数(水平活動)である。参照分子はイミプラミン(20mg/kg)である。
【表4】

【0099】
対照グループと比較すると、ラットの自発運動試験において、1mg/kg i.v.の投与量のオピオルフィンは、イミプラミン(20mg/kg i.p.)とは異なりいかなる沈静作用も、いかなる顕著な活動亢進効果も誘導しない。
【0100】
このため、行動絶望の分析モデルにおいて、オスのラットでは1mg/kg i.v.でオピオルフィンは精神刺激効果に加え、特異的な抗うつ効果を発揮することが示された。
【0101】
次の段階では、強制水泳試験における作用機序、特に内因性オピオイド受容体の関係性について試験した。以下の表において、前試験及び試験セッション中の不動時間を測定することによって、強制水泳試験における処置の効果を示す(s, n=8/group;平均±SEM)。
【表5】

【0102】
この第2シリーズのラットの行動絶望モデルにおける試験では、1mg/kg i.v.のオピオルフィンが精神刺激効果に加え、抗うつ効果を誘導することが確認された。この効果は、参照物質である20mg/kg i.p.のイミプラミンによって発揮されたものと同程度である。オピオルフィンの効果は、δ-オピオイド受容体の特異的なアンタゴニストであるナルトリンドールの存在によってなくなった(上記表5)。これは、抗うつ及び精神刺激タイプのオピオルフィンの効果が内因性オピオイド経路によって仲介され、δサブタイプのオピオイド受容体の特異的な活性を要することを示す。
【0103】
実施例4:感情を制御する経路でのオピオルフィンの効果:抗不安薬の可能性
・条件付け防御埋設(burying)試験
1mg/kgの投与量で静脈投与されるオピオルフィンの抗不安効果を、オスのウィスター系ラットの条件付け防御埋設試験において評価した。
【0104】
偽陽性を回避するために、オピオルフィンが鎮痛効果を発揮するという前提で、2つのセッションに渡って試験を行った:不安なラット選ぶセッションに続く処置下の試験セッション。実験ラットを選ぶための条件付け防御埋設試験は、ラットが最も活動的である段階である暗闇段階の最初の1時間において行う。各ラットは実験装置中の探針と反対側に置かれ、前足を最初に探針に乗せたときに低強度の単一電気ショック(2mA)を動物に流し、そして行動を3分間に渡って観察する。各ラットの通行前におがくずを変え、5cmの高さで均一にする。探針を埋設する少なくとも25秒を表した16匹のラットが選ばれた。
【0105】
次の日、ラットを試験15分前に処置し、実験装置の探針と反対側の部分に置く。このセッションにおいて、電気ショックをラットは受けず、探針の単なる視察によってラットに不安をもたらす。ラットの行動を5分間記録する。分析された変数は、探針の埋設時間、探針方向のストレッチ回数、探針に面して接近する回数及び探針に対する逃避回数である。これら異なる変数は、各ラットの全不安スコアを計算するために用いられる。以下の表は、条件付け埋設試験における全不安スコアに対するオピオルフィン(1mg/kg, i.v.)の効果に関して得られた結果を示す。
【表6】

【0106】
全不安スコアに基づくと、投与量1mg/kg i.v.のオピオルフィンは、オスのウィスター系ラットの条件付け埋設試験の対照と比較して、いかなる抗不安作用を示さなかった。直立運動に関して、オピオルフィンで処置したラットは、対照ラットに比べ直立運動が少ない傾向を示した(p=0.11対賦形剤、n=8 ラット/グループ)。
【0107】
実施例5:薬依存行動におけるオピオルフィンの効果:嗜癖タイプの効果
・条件付け場所嗜好性試験
装置は、馴化段階及び試験中開いているサッシ戸によって分けられた2つの小部屋からなり、ラットが小部屋から小部屋へ自由に移動できるようになっている。1つの小部屋は照らされ、床には金属格子が含まれる。この小部屋は非嗜好嫌悪小部屋であり、この小部屋で過ごした時間は測定した変数である。10日間の条件付け期間中(45分、閉めたサッシ戸)、嫌悪小部屋は試験する製品の投与(対照及び薬)と関連付けられ、一方、嗜好小部屋(暗い、寝床を与える材料)は対照(賦形剤)と関連付けられる。3段階に渡って試験を行う:馴化段階又は前試験段階、条件付け段階及び最終教示段階。オピオルフィンは鎮痛効果のある量である1mg/kg i.v.で投与され、モルヒネは2mg/kg i.v.の量で投与される参照物質として用いられた。
【0108】
段階1(0日目での前試験)及び段階3(11日目の試験)中のそれぞれで非優先小部屋で過ごした時間を基にして用いられるクラスカル・ワリス分散分析において、3つのグループは0日目の馴化段階後には有意に違わないことが示され(H(2df)=1.21 ; p=0.55)、一方、同じグループは条件付け処置段階後の11日目の試験中には有意に異なる(H(2df)=7.91 ; p=0.02)。後者の場合、マンホイットニー検定において、モルヒネで処置されたラットと賦形剤で処置されたラット間に有意な差があることが示された(U=1; p=0.001)。一方で、オピオルフィンで条件付けられたラットと賦形剤で条件付けられた対照の間には有意な差がなかった(U=31; p=0.92)。
【0109】
オピオルフィンの鎮痛投与量での長期的処置後、ラットは非嗜好として最初に確立された小部屋に対して有意な好みを示さなかった。実際には、これらのラットは、最初の前試験段階と同じだけ非嗜好小部屋において時間を過ごした(ウィルコクソン検定:z=1.54; p=0.12)。一方、モルヒネの鎮痛投与量での長期的処置後、ラットは前試験中に非嗜好として最初に確立された小部屋に対して有意な場所嗜好性示した(z=2.52; p=0.012)。
【0110】
よって、「ホルマリン試験」における有効鎮痛量で、オピオルフィンはモルヒネと異なり、有意な薬依存性を引き起こさない。1mg/kgの量でのオピオルフィンの繰り返し投与によって、条件付け場所嗜好性試験において、嗜癖タイプの有意な有害作用は誘導されない。
【0111】
実施例6:テールフリック試験においてオピオルフィン抗侵害受容耐性は発生しない
・材料及び方法
この試験では、実験の最初に体重が250〜280gのオスのウィスター系ラット(Harlan, フランス)を用いた。7日間の順化期間後、体重を量り、処置グループに従って12時間交互の明/暗サイクルのある、制御温度(21±1℃)及び湿度(50±5%)である部屋に無作為に入れた。餌と水は自由に提供された。実験的に1度だけ試験した。行動試験、試験動物のケア及び安楽死は、行動研究における実験動物の使用のためのヨーロッパ共同体指針86/609/EEC及びASAB倫理委員会のガイドラインに従った71:245-53。
【0112】
オピオルフィン(Genosphere Laboratory, フランス)を賦形剤溶液(55%のPBS 10OmM - 45%の酢酸 0.01 N)に溶解し、0.5〜2mg/kg体重の範囲の量で行動試験5〜15分前に全身注射した。Francopia (フランス)から購入したモルヒネHClを生理食塩水(蒸留水中の0.9% 塩化ナトリウム)に溶解し、1〜2mg/kgの量で行動試験の15分前にi.v.経路で注射した。ナロキソン(中枢性及び末梢性に作用するオピオイドアンタゴニスト)をSigma Chemical(フランス)より購入し、生理食塩水に溶解し、オピオルフィン投与15分前に3mg/kgで皮下(s.c.)投与した。ナルトリンドール(δ-オピオイドアンタゴニスト)、ノルビナトルフィミン(κ-オピオイドアンタゴニスト)及びCTAP(μ-オピオイドアンタゴニスト)をSigma Chemical(フランス)より購入し、生理食塩水に溶解し、それぞれ10mg/kg i.p., 試験20分前; 5mg/kg i.p., 試験3時間前及び0.8 mg/kg i.v.,試験25分前に投与した。全ての薬は1ml/kg体重の量で投与された。
【0113】
急性熱刺激に応答するのに要する時間を評価するテールフリック試験は、優先的に侵害受容性脊髄反射を反映する。自動テールフリックアナルゲシメーターに接続された放射熱源を有する標準テールフリック装置(Harvard Apparatus LTD, Edenbhdge, イギリス)を用いた。ラットは、試験の1日前の2つの2分間セッションに渡ってコンテンションの状況に慣れさせられた。実験日に、放射熱源の焦点がしっぽの末端背面に合わさるように、ラットを手で優しく拘束した。<2〜3秒の基本テールフリック潜時を得るために、熱刺激の前もって調節された強度は30%に設定された。これらの実験状況下でモルヒネを参照として、5秒のカットオフ時間が組織損傷を防ぐために確立された。各行動試験において、ラットはそれ自身の対照として用いられ、基本テールフリック潜時を評価するために、30秒間隔離れた2つの連続した測定をオピオルフィン、モルヒネ又は賦形剤注射の前に行った。試験日に、ラットに次の新たに調製された溶液のうち1つを静脈投与した:賦形剤溶液、1mg/kgモルヒネ又は2mg/kgオピオルフィン。耐性誘導のために、毎日7日間に渡ってラットに新たに調製された溶液を静脈投与した。結果をn=6ラットのテールフリック潜時±SEMの平均として表す。
【0114】
結果を平均±SEMとして表す。グループ間の差の有意性は、実験条件のいくつかの独立した変数間の比較のため、ランクによるクラスカル・ワリス一元配置分散分析(KWT、ノンパラメトリック法)を用いて評価された。処置中に有意な差が得られた場合、各処置グループを対照のもの(賦形剤、即ちベースライン値)と比較することによってどのグループがこの差に貢献したかを定義するために、マンホイットニー事後検定(MWT)を用いた。ノンパラメトリックウィルコクソンマッチドペア検定(WT)は、各処置グループにおいて2つの対の変数を繰り返し測定と比較するために用いられた。全ての統計的評価について、有意性のレベルはP<0.05に設定された。全ての統計分析は、コンピュータソフトウェアであるStatView(登録商標)5統計パッケージ(SAS, Institute, Inc., 米国)を用いて行った。
【0115】
・ヒトオピオルフィンは、テールフリック試験において抗侵害受容作用を呈する
テールフリック試験は、痛みを伴う放射熱刺激に対する応答に要する時間を測定する。尾退避潜時は、侵害刺激に対する疼痛応答性に機能的に関連する熱侵害受容閾値を決定した。テールフリック応答の薬物性減弱は、脊髄レベルで優先的に統合される疼痛抗侵害受容の予備的証拠を提供する。試験の目的は、ラットテールフリック試験tを用いて、モルヒネと比較した際のオピオルフィン鎮痛効果の有効性及び期間を評価することにあった。
【0116】
この試験において、ラットテールフリック試験での作用期間についての最大応答を調べるため、2mg/kgオピオルフィンの全身投与量が選ばれた。この投与量は、オピオルフィンが2mg/kgの最大効果で有意な用量依存的抗侵害受容応答を誘導することを示す予備的データに従って評価された。テールフリック潜時は4つの異なる時点で評価された:モルヒネ(1mg/kg, i.v.)と比較した際のオピオルフィン又は賦形剤投与の5、15、25及び60分後。
【0117】
図2は、オピオルフィン又はモルヒネ又は賦形剤処置条件下における平均テールフリック潜時を時間の関数で表したものである(1グループにつきn=6ラット)。前注射ベースライン値は、3つのグループで有意な差はなかった(P=O.54、クラスカル・ワリス検定)。同様に、5分後注射における3つのグループの平均テールフリック潜時に有意な差はなかった(P=0.34)。一方、一元クラスカル・ワリス分析において、15、25及び60分後注射で処置の有意な効果が明らかになった(それぞれ、P=O.005、P=O.005及びP=O.02)。オピオルフィン又はモルヒネ処置ラットと賦形剤で処置された対照ラット間のテールフリック潜時の後の個体の平均比較において、時間潜時がオピオルフィンとモルヒネの両方の投与後15分及び25分において増大したことを示した:マンホイットニー検定(MWT)による、賦形剤について2.57±0.10及び2.51 ±0.06秒から3.56±0.32秒及び3.29±0.15秒まで、 P=0.01及びP=O.008対賦形剤、それぞれモルヒネについて;及び3.12±0.07秒及び3.19±0.07秒まで, P=O.005及びP=O.004対賦形剤、それぞれオピオルフィンについて。モルヒネについて有意な60分後であり(P=O.01対賦形剤) 、一方、オピオルフィンについてはより高い傾向にあった(P=O.08 vs vehicle)。オピオルフィンで処置されたラットは、モルヒネで処置したものと比べ、応答潜時が処置後15、25及び60分においても有意に異ならなかった(MWTによるそれぞれP=O.20、P=O.34及びP=O.26対モルヒネ)。
【0118】
更に、前注射ベースライン値のそれぞれとの比較において、テールフリック潜時がモルヒネ処置の5、15及び25分後に有意に増大したことを示した(それぞれウィルコクソン検定WTによるP=0.05、P=O.03及びP=O.05)。一方、オピオルフィンによる処置では、15及び25分後注射時点で、応答潜時の有意な増大が誘導された(それぞれWTによるP = O.03及びP = O.03)。興味深いことに、対照グループの対応するベースライン応答の比較では、試験に対する繰り返し暴露に続く熱疼痛閾値の有意な時間効果、即ち尾退避の時間潜時の段階的減少が明らかになった。反復的刺激に対する疼痛閾値の減少は、これら動物における侵害受容応答の促進に導く痛みを伴う感作又は刺激の学習を反映し得る。繰り返し測定に続く、熱刺激に対する高侵害受容応答は、モルヒネと同様にオピオルフィンで処置したラットにおいて全体的に真逆となり、熱の激しい痛みに対する強力な鎮痛効力を確認した。
【0119】
ラットテールフリックパラダイムにおいて、オピオルフィン(2mg/kg i.v.)の最大鎮痛効果はi.v.投与後15から25分に起こり、モルヒネ(1mg/kg i.v.)と比較して、作用の度合いと期間について、同じ大きさの範囲であった。これは、オピオルフィンが脊髄エンケファリン作用性経路により制御される熱誘発急性疼痛行動を阻害することを実証する。
【0120】
・テールフリック試験におけるヒトオピオルフィン及びモルヒネ長期処置間の抗侵害受容耐性の発生の比較
実験の目的は、テールフリック試験を用いて、オピオルフィン性抗侵害受容耐性の潜在的な発生を調べることにあった。耐性誘導のために、ラットに毎日7日間連続でオピオルフィン(2mg/kg)、モルヒネ(1mg/kg)又は賦形剤を静脈投与した。そして、テールフリック潜時をピーク効果時間、即ち追加投与後15分及び20分に測定した。
【0121】
前注射ベースライン値を比較すると、3つのグループの平均テールフリック潜時に有意な差は観察されなかった(KWTによる1日目 P=O.54及び7日目P=O.14、 n=6 ラット/グループ)。一方で、クラスカル・ワリス分析において、3グループ中でテールフリック潜時における有意な処置効果が明らかになった(それぞれ、15及び25分後注射時点における1日目 P=O.005;7日目 P=O.003)。7日目と1日目の時間応答プロフィールを比較すると、毎日の繰り返し処置後、賦形剤で処置したグループではテールフリック潜時は安定したままであり(ウィルコクソンWTによるP>0.99)、モルヒネで処置したグループでは減少する傾向にあり(P=O.06)、及びオピオルフィンで処置したグループでは増大する傾向(WTによるP=O.06)にあった(図3)。
【0122】
賦形剤で処置したグループと比較すると、1日目のモルヒネ又はオピオルフィンの単一急性投与に続いて応答潜時に有意な増大が観察された(P=O.01又はP=O.01、それぞれ15及び25分後注射時点の両方におけるMWT事後比較による)。7日間連続で行われる長期処置の後、モルヒネとオピオルフィンは、賦形剤長期処置と比較して、テールフリック応答15及び25分後注射においてまだ有意な増大を誘導することができた(それぞれP=O.02及びP=O.004)。しかし、モルヒネが誘導した増大はオピオルフィンが誘導した応答に比べ低い傾向にあった(P=O.08、MWTによる15分後注射時点)。
【0123】
一方で、それぞれの前注射ベースライン値との比較において、7日間に渡る長期処置の後、モルヒネのチャレンジ投与15分後にテールフリック潜時は安定したままであり、投薬25分後に有意に減少し(WTによるP=O.69及びP=O.03)、このことは長期処置に続くモルヒネ抗侵害受容効力の欠損を反映することを示した。同じ実験条件中、オピオルフィンの投与は有意に15分後注射でテールフリック応答を増大させ(P=0.03、WTによる)、一方、25分後注射では有意な効果が見られない(P=0.67)。このため、オピオルフィンの鎮痛強度は長期処置後に変化せず、一方で抗侵害受容応答の期間の減少が現れると思われる。
【0124】
結論として、モルヒネとは異なり、1日1回、7日間に渡るオピオルフィンの長期全身投与(2mg/kg, i.v.)は、ラットのテールフリック試験において、最大抗侵害受容効果に対する耐性の発生を誘導しない。
【0125】
実施例7:結論
よって、上記実験データは、1mg/kg i.v.のオピオルフィンが、内因性μ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路の活性を通して、強力で強壮的な抗侵害受容作用を発揮することを実証する。この結果は、ラットの急性行動応答の3つの分析モデルである「ピン突き疼痛テスト」(急性機械疼痛)、「ホルマリン試験」(長期化学的炎症性疼痛)及び「テールフリック試験」(急性熱疼痛)で確認された。オピオルフィンは、これらの試験において、モルヒネのいかなる主な有害作用、即ち逆嬬動効果、薬依存効果および耐性効果を誘導することなく、モルヒネ(2〜6 mg/kg i.p.)により誘導される最大鎮痛効果を誘導することができる(Rougeot C, Proceedings of the 4th International Peptide Symposium; J. Wilce編 on behalf of the Australian Peptide Society, 2007)。更に、長期化学疼痛試験におけるオピオルフィンの特異的(非抗炎症性)で顕著な鎮痛効果は、重篤な神経因性疼痛におけるオピオルフィンの有力な抗侵害受容作用を支持する。
【0126】
更に、雄ラットの行動絶望の分析モデルにおいて、発明者らはオピオルフィンが、精神刺激効果に加えて、内因性δ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路の活性を通じて、1mg/kg i.v.で特異的な抗うつ効果を発揮することを示した。様々な好適な行動試験において同じもので処置されたラットが健忘症、鎮静、活動亢進タイプに対するいかなる応答も発生しなかったことから、この試験におけるオピオルフィンの効果は特異的である。
【0127】
オピオルフィンの抗疼痛、抗うつ及び精神刺激効果は、刺激(疼痛、ストレス、感情等)に応答して放出された内因性エンケファリンの作用を伝達する内因性μ-及びδ-オピオイド受容体の活性化に依存する。
【0128】
更に、1mg/kg i.v.の投与量でのオピオルフィンは、雄のラットの条件付け防御埋設試験中に抗不安作用を示さなかった。
【0129】
最後に、条件付け場所嗜好性試験及びホルマリン試験における有効鎮痛量において、オピオルフィンはいかなる有意な薬依存性を発生させなかった。1mg/kgのオピオルフィンの繰り返し投与では、モルヒネとは異なり、習慣及び/又は耐性タイプのいかなる有意な有害作用をも誘導しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精神刺激薬として用いるためのペプチドであって、前記ペプチドは:
−配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物又は前記成熟生成物の誘導体を含み;そして
−精神刺激作用を発揮する
ことを特徴とするペプチド。
【請求項2】
μ-及び又はδ-オピオイド受容体に依存するオピオイド経路を活性化させるためのペプチドであって、前記ペプチドは:
−配列番号:5の配列の塩基性高プロリン涙タンパク質(BPLP)の成熟生成物又は前記成熟生成物の誘導体を含み;そして
−精神刺激作用を発揮する
ことを特徴とするペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドが配列X1-X2-Arg-Phe-Ser-Arg (配列番号:1)を含み、
−X1は水素原子、チロシン又はシステインを表し;
−X1が水素原子である場合、X2はグルタミン又はピログルタミン酸を表し;
−X1がチロシン又はシステインである場合、X2はグルタミンを表し;そして
−前記ペプチドのC末端の先端の配列はX1-X2-Arg-Phe-Ser-Argからなる
請求項1又は2記載のペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドが配列X1-X2-Arg-Phe-Ser-Argからなる請求項3記載のペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドがQRFSR(配列番号:2)、YQRFSR(配列番号:3)及びCQRFSR(配列番号:4)の配列から選ばれる配列からなる請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項6】
前記配列が配列番号:2、配列番号:3及び配列番号:4の配列と保存的置換により異なる請求項1〜4のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項7】
前記ペプチドが安定性及び/又は生物学的利用能を改善する化学修飾を含む請求項1〜6のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項8】
強迫性障害(OCD)、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、注意欠陥多動性障害(ADHD)、大人と子供における注意欠陥及び/又は活動亢進、うつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害からなる群より選ばれる疾患を治療又は予防するための請求項1〜7のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項9】
前記疾患が、強迫性障害、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、子供における注意欠陥及び/又は活動亢進、双極性障害、気分変調性障害及び気分循環性障害からなる群より選ばれる請求項8記載のペプチド。
【請求項10】
前記疾患が、強迫性障害、ナルコレプシー、過眠症及び覚醒状態の低下からなる群より選ばれる請求項9記載のペプチド。
【請求項11】
1日につき75mg以下の量で大人に投与されることを目的とする請求項1〜10のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項12】
1日につき25mg以下の量で子供に投与されることを目的とする請求項1〜10のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項13】
毎日3回投与されることを目的とする請求項11又は12記載のペプチド。
【請求項14】
経口、経皮、鼻腔、舌下及び静脈経路から選ばれる経路を通して投与されることを目的とする請求項1〜13のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項15】
精神刺激薬、抗うつ薬及び抗不安薬からなる群より選ばれる第2の活性成分と組み合わせて投与されることを目的とする請求項1〜14のいずれか一項記載のペプチド。
【請求項16】
強迫性障害、ナルコレプシー、過眠症、覚醒状態の低下、注意欠陥多動性障害、大人と子供における注意欠陥及び/又は活動亢進、うつ、双極性疾患、気分変調性障害及び気分循環性障害からなる群より選ばれる疾患を治療又は予防する方法であって、請求項1〜15のいずれか一項記載のペプチドの有効量を、必要とする個体に投与するステップを含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−521002(P2011−521002A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510994(P2011−510994)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056390
【国際公開番号】WO2009/150040
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(591282984)アンスティテュ パストゥール (17)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT PASTEUR
【Fターム(参考)】