精神障害の診断および処置
本発明は一般に、統合失調症などの精神障害に関連する神経学的、生理学的および精神病的機能障害、またはその疾病素因の分野に関する。本発明はさらに、それらの正常な発現、それらの核酸配列またはそれらの活性が変化した場合に精神障害に関連する遺伝子およびタンパク質に関する。よって、本発明は、精神障害の診断方法ならびに予防および/または処置方法に関する。本発明はその上に、精神障害の診断に用いるための組成物および診断用キットに関する。本発明はまた、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的としたタンパク質またはポリヌクレオチドの使用、および精神障害の予防および/または処置に用いるための医薬組成物に関する。さらに本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。より詳しくは、本発明は、ヒトにおいて、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための方法、組成物およびキット、マイクロアレイならびに試薬に関する。さらに本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための医薬組成物、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子に特定の多型を有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの有効成分の使用に関する。本発明はまた、該多型を有する患者に薬剤を投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法、ならびに精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、統合失調症などの精神障害に関連する神経学的、生理学的および精神病的機能障害、またはその疾病素因の分野に関する。本発明はさらに、それらの正常な発現または活性が変化した場合に精神障害に関連する遺伝子およびタンパク質に関する。本発明はさらに、それらの核酸配列が変化した場合に前記精神障害に関連する遺伝子に関する。よって、本発明は、精神障害の診断方法ならびに予防および/または処置方法に関する。本発明はその上に、精神障害の診断に用いるための組成物および診断用キットに関する。本発明はまた、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的としたタンパク質またはポリヌクレオチドの使用、および精神障害の予防および/または処置に用いるための医薬組成物に関する。さらに本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、ヒトにおいて、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための方法、組成物およびキット、マイクロアレイならびに試薬に関する。さらに本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための医薬組成物、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子に特定の多型を有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの有効成分の使用に関する。本発明はまた、該多型を有する患者に薬剤を投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法、ならびに精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
精神障害は患者、その家族、ひいては社会全体に多大な感情的および経済的被害をもたらす。統合失調症、情動障害、パニック障害もしくは人格障害、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病などの精神障害は、世界の大きな割合のあらゆる人々を苦しめる、病因がはっきりしていない複雑で一様でない疾病である。
【0004】
例えば、統合失調症は、「陽性症状」(妄想、幻覚、思考障害、言動の錯乱)と「陰性症状」(引きこもり、会話貧困、感情鈍麻などのような認識力および社会適応力の欠如)に分類上二分される一連の症状を特徴とする内因性の精神障害である。生涯罹患率は、一般集団において0.85%である。
【0005】
神経伝達物質ドーパミンの異常な活性が統合失調症の1個の顕著な特徴である。長年にわたって、統合失調症は、古典的抗精神病薬、すなわち、例えばフェノチアジン類、ブチロフェノン類およびチオキサンテン類を含む神経抑制薬で処置されてきた。これらの薬物の、ドーパミン受容体に拮抗する能力は、それらの抗精神病薬効力と相関している。これらの神経抑制薬は統合失調症の陽性症状の処置には有効であるが、陰性症状に対してはほとんど、または全く効果はない。
【0006】
精神障害の処置の進展は、新たな非定型抗精神病薬の導入によって達成された。非定型抗精神病薬は、受容体結合特性が異なり、統合失調症の症状に対して有効性を有する異なるクラスの抗精神病薬である。非定型抗精神病薬は、D2ドーパミン受容体の他、中枢セロトニン2(5−HT2)受容体と結合する。神経抑制薬とは異なり、それらはまた、陽性症状だけでなく陰性症状もそこそこ改善する。それらが引き起こす錐体外路系症状は最小限であり、遅発性運動障害、静座不能、または急性筋失調反応を引き起こすこともまれである。統合失調症の処置に認可された最初の非定型抗精神病薬はクロザピンであった。クロザピンは、特に従来の神経抑制薬療法には応答しない対象に対する統合失調症の処置に有効である。
【0007】
抗精神病薬による精神障害の処置は何年にもわたって着々と改善されたが、統合失調症の原因はまだ理解されていない。最近、統合失調症における抗酸化物質防御の傷害と酸化損傷の増加を裏付ける証拠が増えてきている。グルタチオン(GSH)は主要な細胞内非タンパク質性チオールであり、求核性スカベンジャーおよび酵素により触媒される抗酸化剤として知られている。統合失調症ではグルタチオンが枯渇しているという報告が見られる。
【0008】
精神障害の基礎にある分子機構を確認することで、臨床上重要な多くの適用が生み出される疾病過程についての基礎的理解が得られる。従って、統合失調症の素因、発症および/または進行に関与する、またはその原因となる遺伝子および/またはタンパク質を同定する必要がある。このような遺伝子および/またはタンパク質が同定されれば、副作用が最小限の新たな治療法、診断法、および/または精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法の開発につながるであろう。
【0009】
本発明者らは、今般、統合失調症に罹患している患者では、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子の発現およびタンパク質の活性、ならびにアミノ酸の血漿レベルが摂動するということを初めて示す。統合失調症患者および対照群の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物を用いた、グルタチオン代謝に関与する12個の遺伝子に関する遺伝子発現研究で、GSH合成に直接関与する2個の遺伝子、すなわち、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)とグルタチオンシンセターゼ(GSS)に有意な低下が示された。この知見から、これら2個の遺伝子に対応するmRNAのレベルの低下がこれらの遺伝子自体の違いによるものか、あるいは後成的因子によるものかという疑問が生じる。このような疑問に答えるのに有力なアプローチは、グルタチオン関連遺伝子および統合失調症における多型の間に存在し得る関係を検出すべく関連解析を行うことである。
【0010】
しかしながら今日までに、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子における多型で、統合失調症に明白かつ有意な関連を持つものは同定レス関連遺伝子発現の調節に関与する、従って、統合失調症の素因および/または進行に関与する、またはその原因となる遺伝子の同定を確認する必要もある。このように同定が確認されれば、副作用が最小限の新たな治療法、診断法、および/または精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法の開発につながるであろう。
【0011】
さらに、本研究では上述の発現研究で用いた対象の全てに対して遺伝子型分析を行い、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子の多型に関する関連研究を行った。驚くことに、統合失調症と明確で統計学的に有意な関連を有するグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)遺伝子およびグルタチオン合成(GSS)遺伝子の特定の対立遺伝子/ハプロタイプが同定された。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法を提供する。細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子は、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、好ましくは、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、好ましくは、GPX1および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)をコードする遺伝子を含む。もう1つの態様では、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む精神障害の診断方法を提供する。本発明によれば、該タンパク質はGCL、好ましくは、GCL触媒サブユニット(GCLC)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系を含む。本発明のもう1個の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法に関する。本発明の別の態様は、細胞内GSHレベルの判定を含む、精神障害の診断方法に関する。本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法に関し、その方法は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型はその精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0013】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物を包含する。本発明の別の態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物が提供される。本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物である。本発明の別の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、精神障害の診断用キットを提供する。本発明の一態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む。さらなる態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む。さらに別の態様では、精神障害の診断用キットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む。さらなる態様では、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含むキットが提供される。
【0015】
本発明のなおさらなる態様は、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーまたはプローブを含み、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断組成物または診断用キットに関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1個以上のタンパク質の使用を対象とし、ここで、その1個以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。本発明のもう1個の態様は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用を包含する。本発明によれば、この1以上のポリヌクレオチドは、上記で定義される1以上のタンパク質をコードする配列を含み、その配列は組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、上記で定義される1以上の有効成分の使用を包含する。
【0018】
本発明のなおさらなる態様では、この有効成分は、(a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および(c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。本発明のもう1個の態様では、この有効成分は、上記で定義されるタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。さらなる態様では、この有効成分はGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である。
【0019】
本発明のさらなる態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用に関する。
【0020】
本発明のさらにもう1つの態様は、上記で定義される1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドと医薬上許容される担体とを含む、精神障害の予防および/または処置に用いるための医薬組成物である。
【0021】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0022】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのマイクロアレイに関し、そのマイクロアレイは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0023】
本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とし、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーおよび/もしくはプローブまたはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せである。
【0024】
本発明のなおさらなる態様は、有効量の1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドを、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法を提供する。一態様は、その1以上のタンパク質が、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される、このような方法を提供する。さらにもう1個の態様では、該有効量の1以上のポリヌクレオチドは、上記で定義されたタンパク質をコードし、組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている配列を含む。さらなる態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を対象とする。本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法である。本発明のさらにもう1つの態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法である。
【0025】
本発明のさらなる態様は、精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。
【0026】
さらに他の態様において、本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法を包含する。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較することを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。別の態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。なおさらなる態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;および(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された活性を比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。さらにもう1個の態様では、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、次のステップ:(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与すること;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;および(d)ステップ(c)の活性レベルを比較することを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。なおさらなる態様は、(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成するステップ;および(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定するステップを含む、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。本発明のなおさらなる態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。最後に、本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、前記精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。
【0027】
本発明の他の目的、特徴、利点および態様は、当業者には下記の説明から明らかとなる。しかし、下記の説明および具体例は本発明の好ましい実施形態を示すものであって、単に例として示されるものであると理解すべきである。下記の説明を読み、また、本開示の他の部分を読めば、当業者には、開示されている発明の精神および範囲内の種々の変更および改変が容易に分かるであろう。
【0028】
図面の簡単な説明
図1 GCLM(NP_002052.1;配列番号10)、GSS(NP_000169.1;配列番号11)、GPX1(配列番号12)およびXc−系(xCT)(配列番号13)のアミノ酸配列を示す。
図2 GCLMの核酸配列(配列番号14)を示す。
図3 GSSの核酸配列(配列番号15)を示す。
図4 GPX1の核酸配列(配列番号16)を示す。
図5 Xc−系(xCT)の核酸配列(配列番号17)を示す。
図6 GCLM:NT_028050、9380597〜9403950番の核酸配列(配列番号18)を示す。
図7 GSS:NT_028392、1352038〜1381802番の核酸配列(配列番号19)を示す。
図8 GCLM遺伝子発現の低い患者から単離された繊維芽細胞におけるGCLM mRNAレベルとGSS mRNAレベルの間の正の相関を示す図である。示されているmRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。
図9 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陽性症状の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。陽性症状スコアは、Kay et al. (Kay SR, Opler LA, Fiszbein A, 1986, Positive and negative syndrome sycale (PANSS) manual Multi-Health Systems, Inc, New York)に従って評価したものである。
図10 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN5の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図11 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN7の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図12 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと一般精神病理の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。一般精神病理スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図13 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおける血液細胞の[GSH]レベルと陽性症状の負の相関を示す図である。[GSH]レベルはμmol/mlで示す。陽性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図14 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の負の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定したGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定した[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図15 対照対象から単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図16 GCLM遺伝子発現の高い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図17 対照対象から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間の正の相関を示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
図18 患者から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間に相関がないことを示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
図19 対照対象から単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間の正の相関を示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
図20 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間に相関がないことを示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【0029】
発明の説明
本明細書に挙げられている特許出願、特許および参照文献は全て、出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0030】
本発明の実施においては、分子生物学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの常法が用いられる。これらの技術は周知のものであり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (それぞれWu and Grossman, and Wu, eds.)に解説されている。
【0031】
本発明は、統合失調症などの精神障害に罹患している対象において低レベルで発現される遺伝子の同定に関する。本発明はまた、健常な対象または対象集団と比較した場合に、精神障害に罹患している患者において活性が変化しているタンパク質の同定に関する。
【0032】
それらの低い発現および/または活性の変化によって、これらの遺伝子またはタンパク質は、診断、疾病の予防および処置、疾病または障害のモジュレーターのスクリーニング、すなわち、本発明の遺伝子またはタンパク質のアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニング、および/または、限定されるものではないが、統合失調症(統合失調症様障害または分裂情動障害など)、情動障害(大鬱病、双極性障害、気分障害、行為障害、トゥーレット障害またはチック障害など)、精神作用物質使用による障害(アルコール禁断症候群など)、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害;および衝動制御障害、精神病(薬剤性または認知症性精神病)、注意欠陥多動障害(ADHD)、ならびに躁鬱病または精神病性鬱病を含む精神障害に罹患している、または罹患するリスクのある対象の処置後追跡調査に利用可能である。
【0033】
発現パターンに変化がある本発明の遺伝子としては、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する遺伝子が挙げられ、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、好ましくは、GCL調節サブユニット(GCLM)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、好ましくは、GPX1および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)をコードする遺伝子を含む。活性に変化がある本発明のタンパク質としては、GCL、好ましくは、GCL触媒サブユニット(GCLC)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系が挙げられる。
【0034】
少なくとも1個の遺伝子またはタンパク質のいずれの選択を精神障害のマーカー/診断薬、治療薬および/または治療標的として用いてもよい。特に有用な実施形態では、これらの遺伝子および/またはタンパク質の少なくとも2個、3個、4個または5個を選択することができ、それらの発現および/または活性を逐次または同時にモニタリングして、種々の態様に用いるための発現および/または活性プロフィールを得ることができる。例えば、これら遺伝子の発現プロフィールおよび/またはタンパク質の活性プロフィールは、精神障害の素因、重篤度および/または進行を迅速に診断およびモニタリングするための有用な分子ツールを提供する。基準プロフィールからの発現および/または活性プロフィールの変化はさらに、薬物効力を評価するための指標としても使用できる。
【0035】
さらに、本発明はまた、精神障害に罹患している患者において、GSHレベルの摂動および/またはアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体の血漿レベルの変化の同定に関する。本明細書において「アミノ酸」とは、限定されるものではないが、天然アミノ酸、アミノ酸誘導体、その同族体、類似体、またはその化学等価体、例えば、ホスホトレオニン、ホスホセリン、ホモシステイン(homocsysteine)、ホモシスチン、ホモセリン、グリシルグリシン、ジメチルグリシン、N−アセチル−グルタミン酸、セレノシステイン、シスチン、アロレオニンを含み、また、2個、または3個のアミノ酸からなる分子、例えば、システイニルグリシンまたはγ−グルタミルシステイニルグリシンも含む。本発明は特に、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルの変化および/または相関の同定に関する。
【0036】
好ましくは血中のGSHレベルの判定は、単独で、あるいは、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンなどの少なくとも1個のアミノ酸またはアミノ酸誘導体の血漿レベルの各々単独の判定と組み合わせて、上記のような遺伝子発現および/またはタンパク質活性のモニタリングの逐次もしくは同時実施とともに、本発明の種々の態様において使用可能である。
【0037】
よって、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法を提供する。このような方法は、対象の疾病素因、すなわち、統合失調症などの精神障害に罹患する対象のリスクを推定することを含む。それはまた、対象において精神障害の進行をモニタリングする方法も含む。さらに、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象を予防または処置する方法も含む。さらにまた、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象の処置に有用な薬剤の同定方法、および統合失調症などの精神障害に対する特定の薬物処置の有効性をモニタリングする方法も含まれる。
【0038】
この精神障害の診断方法は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む。GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCTをコードする遺伝子から選択される少なくとも1個の遺伝子のいずれの選択を精神障害のマーカーとして用いてもよい。特に有用な実施形態では、これら遺伝子の少なくとも2個、または3個を選択し、それらの発現を逐次または同時に測定またはモニタリングすればよい。好ましくは、GCLMとGSS、GSSとGPX1、またはGCLMとGPX1の発現レベルが判定される。最も好ましくは、GCLM、GSSおよびGPX1の発現が判定される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、この方法は、ある対象に関して判定された発現レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルと比較することをさらに含み、20%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、発現レベルにおける少なくとも約22、25、30、35、40、45、50、55、60%の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。最も好ましくは、発現の低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0040】
本発明の別の態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質またはそのフラグメントの活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法が提供される。GCL、好ましくは、GCLC、GGTおよびXc−系、好ましくは、xCTから選択される少なくとも1個のタンパク質またはタンパク質フラグメントのいずれの選択を、精神障害のマーカーとして用いてもよい。特に有用な実施形態では、GCLとGGT、またはGCLとXc−系、またはGGTとXc−系の活性が測定できる。最も好ましくは、GCL、GGTおよびXc−系の活性が測定される。好ましい一実施形態では、この方法は、ある対象に関して判定されたタンパク質またはそのフラグメントの活性レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当するタンパク質の活性レベルと比較することをさらに含み、10%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、活性レベルにおける少なくとも約12、15、20、22、25、30、35、40、45、または50%の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0041】
本発明の別の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法に関する。シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルの判定が特に好ましい。もう1個の好ましい実施形態では、この方法は、ある対象のシステインおよび/またはホモシステインなどのアミノ酸の血漿レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団のレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、システインおよび/またはホモシステインの量における少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%、あるいはそれ以上の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。最も好ましくは、システインおよび/またはホモシステインの血漿レベルにおける増加が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0042】
本発明のもう1個の態様は、細胞内GSHレベルの判定を含む精神障害の診断方法に関する。脳細胞または血液細胞におけるGSHレベルの判定が特に好ましい。もう1個の好ましい実施形態では、この方法は、ある対象のGSHレベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団のGSHレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、GSHレベルにおける少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%、あるいはそれ以上の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0043】
本発明の方法はin vivo、in vitroまたはex vivoで実施可能である。細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現レベルおよび/またはタンパク質の活性レベルおよび/または少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベル、および/または細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を、診断しようとする対象から採取した生体サンプルにおいて判定することができる。このような生体サンプルとしては、血液サンプルまたは組織サンプルが挙げられる。好適な組織サンプルとしては、全血、精液、唾液、涙、尿、糞便、汗、頬側塗抹、皮膚、ならびに筋肉、脳または神経組織などの特定臓器の組織、および毛髪が挙げられる。最も好ましくは、好適な組織サンプルは血液を含む。組織サンプルはまた、このような生体サンプルから単離された細胞および細胞種を含む。最も好ましくは、好適な組織サンプルは繊維芽細胞またはニューロンを含む。本発明の最も好ましい実施形態によれば、本発明に従う遺伝子またはタンパク質の発現レベルまたは活性レベルを判定するための生体サンプルは、単離された、または好ましくは培養単離された繊維芽細胞を含み;GCLの活性など、本発明に従うタンパク質の活性を判定するため、またはGSHレベルを判定するための生体サンプルは血液細胞を含み;シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンなどのアミノ酸のレベルを判定するための、またはGGTの活性などのタンパク質の活性レベルを判定するための生体サンプルは血漿を含む。
【0044】
生体サンプルは、対象、ヒトまたは動物から、既知の外科的方法、例えば、外科的切除または穿刺生検によって得ることができる。精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られたサンプルは、その対象から得られたサンプルに対して用いるものと同じアプローチを用いて判定され、診断しようとする対象から得たサンプルと同時に得てもよいし、あるいは、予め確立した対照であってもよい。
【0045】
本発明の方法においては、精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがある対象から得られた遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルを判定した値は、精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られた遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルと統計学的に有意な量で異なっていることが好ましい。好ましい実施形態では、遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルにおける少なくとも約5%の違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、この違いは、少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。
【0046】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルは、その遺伝子の転写レベルを測定することで検出することができる。遺伝子の転写レベルを測定する方法は、mRNAのレベルを測定することを含む。RNAは例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, pp.4.1.1-4.2.9 and 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc. (1996)に記載されているような、当業者に周知の方法によりサンプルから単離することができる。転写レベルを測定する方法は当技術分野で周知のものであり、通常、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと転写産物であるmRNAとのハイブリダイゼーションを含む。このような方法としては、限定されるものではないが、ノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNアーゼ保護およびマイクロアレイ分析、ならびに他のハイブリダイゼーション法が挙げられる。
【0047】
このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、本発明の上記遺伝子の相補的転写物とのみ特異的にハイブリダイズするに十分な長さであることが好ましい。本明細書において「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」とは、一本鎖核酸をさす。一般に、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは少なくとも16〜20ヌクレオチド長であるが、少なくとも20〜25ヌクレオチド長といったより長いプローブが望ましい場合もある。このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、ハイブリダイズしたプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の検出を可能とするため、1以上の標識部分で標識することができる。標識部分は、分光的手段、生化学的手段、光化学的手段、生体電子工学的手段、免疫化学的手段、電気光学的手段、または化学的手段によって検出可能な組成物を含み得る。標識部分の例としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、例えば、32P、33P、35S、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーや色素などの分光マーカー、結合酵素、質量分析タグ、および磁気標識が挙げられる。
【0048】
複数の遺伝子から得られたmRNA転写物のレベルを検出するために特に有用な方法は、標識mRNAとオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの規則正しいアレイとのハイブリダイゼーションを含む。一般に、このハイブリダイゼーション法で用いるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは固相支持体に結合されている。固相支持体の例としては、限定されるものではないが、メンブラン、フィルター、スライド、ペーパー、ナイロン、ウエハー、ファイバー、磁性または非磁性ビーズ、ゲル、チューブ、ポリマー、ポリ塩化ビニルディッシュなどが挙げられる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、直接的または間接的のいずれか、また、共有結合的または非共有結合的のいずれかで結合させることができる固相表面はいずれのものでも使用可能である。発現のモニタリングのためのこのようなプローブアレイは、例えば、Lockhart et al., Nature Biotechnology, Vol. 14, pp. 1675-1680 (1996); McGall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 93, pp. 13555-13460 (1996);および米国特許第6,040,138号に記載されているような当業者に周知の技術に従って作製および使用できる。このような方法により、複数の遺伝子の転写レベルを同時に測定して遺伝子発現プロフィールまたはパターンを作製することができる。この対象から得られた生体サンプルから導き出された遺伝子発現プロフィールを、精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られたサンプルから導き出された遺伝子発現プロフィールと比較することができる。それにより、その対象が統合失調症などの精神障害に罹患しているかどうか、または罹患するリスクがあるかどうかを判定することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、この発現レベルは、表1に記載されているような少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを用いることで判定される。GCLM転写物のレベルは、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)の使用により、および所望により、さらに配列番号1のプローブの使用により判定され、GSS転写物のレベルは、配列番号3および/または4のプライマーの使用により、および所望により、配列番号2のプローブの使用により判定され、GPX1転写物のレベルは、配列番号6および/または7のプライマーの使用により、および所望により、配列番号5のプローブの使用により判定され、Xc−系4F2転写物のレベルは、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)の使用により、および所望により、さらに配列番号8のプローブの使用により判定され、そして、Xc−系xCT転写物のレベルは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、さらに配列番号9のプローブの使用により判定されることが好ましい。
【表1】
【0049】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、発現レベルは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子によるタンパク質レベルを測定することにより判定することができる。少なくとも1個のタンパク質またはタンパク質のフラグメント、例えば触媒ドメインの発現は、検出できるように標識されているか、またはその後に標識可能なプローブによって検出することができる。一般にこのプローブは、発現したタンパク質を認識できる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントであってもよい。本明細書において、「抗体」とは、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、およびその抗体フラグメントとタンパク質またはタンパク質フラグメントとの結合に十分なフラグメントである、生物機能のある抗体フラグメントが挙げられる。好ましくは、本発明の実施形態においては、Biodesign International (# K90097C)からのGPX1抗体およびSanta Cruz Biotechnology (# sc-15092)からのGSS抗体が使用される。
【0050】
開示されている遺伝子の1個によりコードされているタンパク質またはそのタンパク質のフラグメントに対する抗体を作製するためには、ポリペプチドまたはその一部を注射することにより種々の宿主動物を免疫化すればよい。このような宿主動物としては、限定されるものではないが、いくつか挙げれば、ウサギ、マウスおよびラットがある。限定されるものではないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、および有用な可能性のあるヒトアジュバント(例えば、BCG(カルメット−ゲラン菌、bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum))をはじめ、宿主の種に応じて免疫応答を高めるために種々のアジュバントを使用することができる。ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物などの抗原または抗原機能のあるその誘導体で免疫化した動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体を製造するためには、上記のものなどの宿主動物を、同じく上記のようなアジュバントを補ったコードタンパク質またはその一部を注射することで、免疫化すればよい。
【0051】
特定抗原に対する抗体の均質集団であるモノクローナル抗体(mAb)は、連続的な培養細胞系統による抗体分子の生産をもたらす技術により得ることができる。これらの例としては、限定されるものではないが、KohlerおよびMilsteinのハイブリドーマ技術(Nature, Vol. 256, pp. 495-497 (1975);および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., Immunology Today, Vol. 4, p. 72 (1983); Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 80, pp. 2026-2030 (1983))、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985))が挙げられる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのサブクラスを含むいずれかの免疫グロブリンクラスに属し得る。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養することができる。in vivoで高力価のmAbを生産できることから、これは現在のところ好ましい生産方法となっている。さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒に適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる「キメラ抗体」の作製のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, pp. 6851-6855 (1984); Neuberger et al., Nature, Vol. 312, pp. 604-608 (1984); Takeda et al., Nature, Vol. 314, pp. 452-454 (1985))も使用できる。キメラ抗体は、マウスmAb由来の可変または超可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものといったように、種々の部分が異なる動物種に由来する分子である。あるいは、単鎖抗体の作製に関して記載されている技術(米国特許第4,946,778号;Bird, Science, Vol. 242, pp. 423-426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 85, pp. 5879-5883 (1988);およびWard et al., Nature, Vol. 334, pp. 544-546 (1989))を、示差的発現遺伝子単鎖抗体の生産に応用することができる。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋で連結して単鎖ポリペプチドとすることにより形成される。最も好ましくは、「ヒト化抗体」の作製に有用な技術を、タンパク質、そのフラグメントまたは誘導体に対する抗体の作製に応用することができる。このような技術は、米国特許第5,932,448号;同第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;同第5,530,101号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,661,016号;および同第5,770,429号に開示されている。特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは公知の技術により作製することができる。例えば、このようなフラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作製できるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製できるFabフラグメントが挙げられる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能とするため、Fab発現ライブラリーを構築してもよい(Huse et al., Science, Vol. 246, pp. 1275-1281 (1989))。
【0052】
次に、生体サンプルにおいて発現されたタンパク質(フラグメント)のレベルを、上記の抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントを用いるイムノアッセイ法によって判定することができる。このようなイムノアッセイ法としては、限定されるものではないが、ウエスタンブロット法、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、免疫組織化学、酵素結合免疫検定法(ELISA)、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)、ドットブロット法、競合的および非競合的タンパク質結合検定法、ならびに化学文献および特許文献で一般的に用いられ、広く記載されている他の方法が挙げられ、多くのものが商業的に使用できる。
【0053】
検出の容易さに関して特に好ましいのはサンドイッチELISAであり、その多くのバリエーションが存在し、その全てが本発明に含まれるものとする。例えば、典型的な前者のアッセイでは、標識されていない抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを固相支持体上に固定化し、試験サンプルをその結合分子と接触させ、抗体−抗原の二元複合体の形成を可能とするに十分な時間インキュベートする。この時点で、次に、検出可能なシグナルを誘導し得る分子で標識した第二の抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントを加えてインキュベートし、抗体−抗原−標識抗体の三元複合体の形成に十分な時間を置く。反応していない材料を洗い流し、抗原の存在をシグナルの観測によって判定するか、または、既知量の抗原を含む対照サンプルと比較することにより定量することもできる。前者のアッセイのバリエーションとしては、結合抗体にサンプルと抗体の双方を同時に加える同時アッセイ、またはまず標識抗体と試験サンプルを合わせてインキュベートし、標識されていない表面結合抗体に加える逆アッセイがある。これらの技術は当業者に周知のものであり、軽微な変更が可能なことは容易に分かるであろう。本明細書において「サンドイッチアッセイ」は、基本となる2部位技術のあらゆるバリエーションを含むものとする。
【0054】
このタイプのアッセイにおいて抗体、抗体フラグメントまたは誘導体を標識するために最もよく用いられるリポーター分子は、酵素、蛍光団または放射性核種含有分子のいずれかである。酵素免疫検定(EIA)の場合では、酵素を、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の手段により、第二の抗体に結合させる。しかしながら、容易に分かるように、当業者に周知の多種多様な連結技術が存在する。一般に用いられる酵素としては、中でも、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼが挙げられる。特定の酵素とともに用いる基質は一般に、対応する酵素によって加水分解された際に検出可能な変色を生じるように選択する。例えば、p−ニトロフェニルホスフェートはアルカリ性ホスファターゼコンジュゲートとの併用に適しており、ペルオキシダーゼコンジュゲートには、1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般に用いられる。また、上記の発色基質の代わりに蛍光生成物を生じる蛍光基質を使用することもできる。次に、この三元複合体に適当な基質を含有する溶液を加える。この基質は、第二の抗体に結合された酵素と反応して質的に目に見えるシグナルを生じ、これをさらに、通常には分光光度的に定量して、タンパク質またはそのフラグメントの量を評価することができる。あるいは、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物を、それらの結合能を変化させずに抗体に化学的に結合させることもできる。特定波長の光を照射することで活性化すると、この蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導した後、特徴的なより長い波長で光を放射する。この放射は光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は両者とも当技術分野で極めてよく確立されたものであり、本方法に特に好ましい。しかし、放射性同位元素、化学発光分子または生物発光分子などの他のリポーター分子も使用可能である。当業者ならば、これらの手法を必要な用途に適合させるためにどのように変更すればよいかが容易に分かるであろう。
【0055】
本発明のもう1つの態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1つのタンパク質の活性レベルを判定する、精神障害の診断方法を提供する。本発明の好ましい実施形態では、GCL、GGTおよび/またはXc−系の活性レベルが判定される。GCL、GGTおよび/またはXc−系の活性を測定する方法は当業者に周知である。例えば、GCL活性は、Gegg et al. (Analytical Biochemistry, 304, 26-32, 2002)により記載されているように判定することができ、GGT活性は、例えば、GGTによって触媒されるγ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリドからの5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定することにより測定することができる。酵素活性は405nmの吸光度で測定される。Xc−系の活性は、例えば、参照文献:Bannai S and Kitamura E (Journal of Biological Chemistry 255, 2372-2376, 1980)によって記載されているように、[35S]シスチンの取り込みの測定によって判定することができる。
【0056】
本発明の他の好ましい実施形態では、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルが、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルとともに判定される。この発現レベルおよび/または活性レベルは、本発明に従って判定される。これらの遺伝子および/またはタンパク質のうち2、3、4または5個の発現および/または活性のレベルを判定することが望ましい場合がある。好ましくは、この発現レベルは、GCL、最も好ましくは、GCLM、GPX、最も好ましくは、GPX1、GSSおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTをコードする遺伝子に関して判定され、活性レベルは、好ましくは、GCL、最も好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTに関して判定される。
【0057】
本発明のさらなる態様は、精神障害の診断方法を提供し、その方法は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定すること、または細胞内GSHレベルを判定することを含む。本発明の好ましい実施形態では、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルが判定される。血漿中のアミノ酸レベルを測定する方法は当業者に周知であり、例えば、次の遊離アミノ酸は、Slocum et al. (In “Techniques in diagnostic human Biochemical Genetics”. Hommes Edt. 1991, pp87-126)に記載のようにして血漿中で定量することができる:タウリン(Tau)、アスパラギン酸(Asp)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シトルリン(Cit)、アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、シスチン(Cyt)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、オルニチン(Orn)、リシン(Lys)、1−CH3−ヒスチジン(1−CH3−His)、ヒスチジン(His)、3−CH3−ヒスチジン(3−CH3−His)、アルギニン(Arg)。チオール含有アミノ酸およびペプチドは、Jacobsen et al. (Gen Clin Chim, 873-881, 1994)に記載のようにして血漿中で定量することができる。
【0058】
本発明の方法のもう1つの好ましい実施形態は、細胞内GSHレベルの判定をさらに提供する。最も好ましくは、GCLM遺伝子の発現レベル、GCLの活性レベルおよびGSHの細胞内レベルが判定され、GCLM遺伝子の発現の低下、およびGCL活性とGSHレベルの間の負の相関が、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。最も好ましくは、このGCLM遺伝子発現は、培養繊維芽細胞をはじめとする繊維芽細胞に関して測定され、GCL活性とGSHレベルは、対象から単離された血液細胞に関して測定される。本発明のもう1個の好ましい方法によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子、好ましくは、GCLMの発現レベルと、好ましくは血液細胞におけるGSHの細胞内レベルが測定される。このGCLMの発現レベルは、最も好ましくは、対象から単離された繊維芽細胞で判定される。最も好ましくは、GCLMの発現の低下およびGSHレベルの低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0059】
本発明の方法のさらなる実施形態は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む。好ましくは、この少なくとも1個の遺伝子はGCL、最も好ましくは、GCLM、GPX、最も好ましくは、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子、最も好ましくは、xCTを含み、少なくとも1個のアミノ酸は、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む。最も好ましくは、その発現レベルが、好ましくは対象から単離され、その後、培養された繊維芽細胞におけるGCLMに関して判定され、シスチンおよびグルタミン酸の血漿レベルが判定され、シスチンレベルとグルタミン酸レベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。
【0060】
本発明の方法のなおさらなる実施形態は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む。好ましくは、この少なくとも1個のタンパク質はGCL、最も好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTを含み、少なくとも1個のアミノ酸はシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む。最も好ましくは、その活性レベルが、好ましくは血漿におけるGGTに関して判定され、システイニル−グリシンの血漿レベルが判定され、GGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。
【0061】
上記のような本発明の方法は、対象の疾病素因を推定するため、すなわち、統合失調症などの精神障害に罹患する対象のリスクを判定するために使用できる。また、これらの方法は、対象において精神障害の進行をモニタリングするためにも使用できる。あるいは、これらの方法は、統合失調症などの精神障害の処置において、対象に対する治療薬の有効性をモニタリングするために用いてもよい。好ましくは、本発明の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルが、本発明の1個を超える遺伝子またはタンパク質に関して判定される。最も好ましくは、本発明の2個、もしくは3つの異なる遺伝子の発現および/または2個、もしくは3個の異なるタンパク質の活性レベルが判定される。このような測定は同時に行っても逐次に行ってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、本発明の方法に従って遺伝子発現および/またはタンパク質活性をモニタリングするために、少なくとも1個のアミノ酸、特に、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベル、および/またはGSHの細胞内レベルを同時または逐次に判定することもできる。
【0062】
本発明のもう1つの態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法に関し、その方法は細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。本発明のもう1つの実施形態では、この方法は、上記のように、細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現レベルおよび/またはタンパク質の活性レベルおよび/または少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルの判定をさらに含む。
【0063】
本発明は、統合失調症と統計学的に有意な関連を有するグルタチオン関連遺伝子における多型/ハプロタイプを初めて開示するものである。統計学的に有意な関連は好ましくは、その障害の発生率が好ましくはp<0.05、より好ましくはp<0.01、さらにより好ましくはp<0.001、最も好ましくはp<0.0001であり、かつ/またはオッズ比(OR)が好ましくは>1.0、より好ましくは>1.5、さらにより好ましくは>3.0、最も好ましくは>8.0である多型/ハプロタイプの関連である。この有意性の判定は、十分な数、例えば、少なくとも40人、好ましくは40〜60人の統合失調症患者と、少なくとも80人、好ましくは80〜120人の正常な対照の多型/ハプロタイプ分析によって行うことができる。より好ましくは、この有意性の判定は、実施例の節に記載されているようにして行うことができる。これらの多型は好ましくは一塩基多型(SNP)である。
【0064】
好ましくは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子は、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット遺伝子(GCLM)および/またはグルタチオンシンセターゼ遺伝子(GSS)から選択される。本発明の好ましい実施形態によれば、統合失調症患者で上記遺伝子の低レベルのmRNAが見られたことから、この多型は細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の低い発現レベルと関連している。
【0065】
驚くことに、統合失調症に関連する多型は、GCLMおよび/またはGSS遺伝子のイントロン、3’領域および/または5’領域、例えば、GCLM遺伝子のイントロン1および/または6および/または3’領域、および/またはGSS遺伝子のイントロン1、3、5、8、9および/または12、3’領域および/または5’領域に見られる得る。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、精神障害またはその疾病素因の診断方法は、該遺伝子の1個の染色体コピーおよび/または該遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型、該遺伝子の1個の染色体コピーおよび/または該遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せ、および/またはGCLM遺伝子とGSS遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、この多型および/または多型の組合せは前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0067】
好ましくは、GLCM遺伝子の多型は、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875、rs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。より好ましくは、この多型はrs2235971、rs3170633、rs769211および/またはrs2301022である。最も好ましくは、この多型はrs3170633である。好ましい実施形態では、多型rs3170633の遺伝子型は、ヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される。より好ましくは、この遺伝子型はGGであり、それはGG遺伝子型を有する個体が他の個体より、およそ3倍罹患のリスクが高いためである。
【0068】
好ましくは、GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。
【0069】
好ましくは、この組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される少なくとも1個の多型、より好ましくは、少なくとも2個の多型、最も好ましくは、4個の多型を含む。
【0070】
好ましくは、rs2235971に対するヌクレオチドG、rs3170633に対するG、rs769211に対するG、およびrs2301022に対するAの存在は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0071】
好ましくは、GSS遺伝子の多型は、(a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。より好ましくは、この多型はrs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である。最も好ましくは、この多型はrs3761144である。
【0072】
好ましい実施形態では、GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。
【0073】
好ましくは、この組合せは、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144からなる群から選択される少なくとも1個の多型、より好ましくは、少なくとも3個の多型、最も好ましくは、5個の多型を含む。好ましくは、rs2236270に対するヌクレオチドC、rs2273684に対するT、rs734111に対するC、rs2025096に対するGおよびrs3761144に対するCの存在、および/またはrs2236270に対するヌクレオチドT、rs2273684に対するG、rs734111に対するA、rs2025096に対するGおよびrs3761144に対するGの存在は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0074】
好ましい実施形態では、GSS遺伝子およびGCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/または3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択されるが、これは、遺伝子GCLMおよびGSSを一緒にしてこれら9個の多型に関して、患者と対照の間でハプロタイプ頻度が有意に異なったためである(p=0.000062)。最大の効果を有するハプロタイプは、ハプロタイプGGGA(GCLM遺伝子)とCTCGC(GSS遺伝子)との組合せで見られた。
【0075】
もう1つの好ましい実施形態では、GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2つの染色体コピーにおける多型の組合せ、いわゆるハプロタイプは同型接合性である。より好ましくは、この同型接合状態にあるハプロタイプは、GCLM遺伝子のGGGAとGSS遺伝子のTGAGGのハプロタイプである。
【0076】
上記遺伝子に関する情報は全て、http://www.ncbi.nlm.govおよび/またはhttp://www-dsi-univ-paris5.fr/genatlas/databasesでアクセスできる。多型の命名法に関しては、GCLMについては、Chr 1p22.1:NT_028050 9380597〜9403950番 グルタミン酸−システインリガーゼ調節サブユニット(配列番号18)、NT#=参照配列番号、また、GSSについては、Chr 20q11.1:NT_028392 1352038〜1381802番、グルタチオンシンターゼ(配列番号19)を参照。
【0077】
上記の一塩基多型(SNP)は全て、公開データベースSNP Consortium (http:/snp.cshl.org)およびNCBI(http:/ww.ncbi.nlm.nih.gov)から選択されたものである。NCBIにより注釈されたSNP番号、それらの選択的対立遺伝子ならびにそれらの位置および遺伝子開始点からの距離を表2に示す。SNPの位置は適当なコンティグのNCBI図示に見られる情報に基づくものである。
【表2】
【0078】
統合失調症に関連する少なくとも1個の多型の存在は好ましくは、上記に示したような遺伝子型分析により判定される。例えば、判定は、1コピーもしくは2コピーの単一遺伝子または2コピーの異なる遺伝子における単一多型または複数の多型の分析を含み得る。
【0079】
この判定は、個々の遺伝子とハイブリダイズし、多型、特に所定の位置のSNPの間の識別を可能とする多型特異的プライマーの使用を含み得る。例えば、この遺伝子型分析は、実施例に記載するような多型特異的プライマーを用いたプライマー伸張反応を含み得る。個々の多型の判定は、実施例に記載するような質量分析によって行える。
【0080】
さらなる好ましい実施形態は、いくつかの多型の並行判定に特に好適なマイクロアレイ分析を含む。好適なマイクロアレイ装置が市販されている。
【0081】
対象は、限定されるものではないが、統合失調症(統合失調症様障害または分裂情動障害など)、情動障害(大鬱病、双極性障害、気分障害、行為障害、トゥーレット障害またはチック障害など)、精神作用物質(psychoaffective substance)使用による障害(アルコール禁断症候群など)、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病(薬剤性または認知症性精神病)、注意欠陥多動障害(ADHD)、ならびに躁鬱病または精神病性鬱病を含む精神障害に罹患していると疑われる哺乳類、好ましくはヒトである。
【0082】
本明細書において「精神障害」とは、病的な心理学的症状のいずれもを意味し、限定されるものではないが、次のものを含む(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordes 4th Edition (DSM-IV) Francis A editor, American Psychiatric Press, Wash, DC, 1994も参照)。
【0083】
統合失調症
亜慢性緊張型統合失調症(295.21);慢性緊張型統合失調症(295.22);急性増悪のある亜慢性緊張型統合失調症(295.23);急性増悪のある慢性緊張型統合失調症(295.24);緩解中の緊張型統合失調症(295.55);特定不能型緊張型統合失調症(295.20);亜慢性解体型統合失調症(295.11);慢性解体型統合失調症(295.12);急性増悪のある亜慢性解体型統合失調症(295.13);急性増悪のある慢性解体型統合失調症(295.14);緩解中の解体型統合失調症(295.15);特定不能型解体型統合失調症(295.10);亜慢性妄想型統合失調症(295.31);慢性妄想型統合失調症(295.32);急性増悪のある亜慢性妄想型統合失調症(295.33);急性増悪のある慢性妄想型統合失調症(295.34);緩解中の妄想型統合失調症(295.35);特定不能型妄想型統合失調症(295.30);亜慢性鑑別不能型統合失調症(295.91);慢性鑑別不能型統合失調症(295.92);急性増悪のある亜慢性鑑別不能型統合失調症(295.93);急性増悪のある慢性鑑別不能型統合失調症(295.94);緩解中の鑑別不能型統合失調症(295.95);特定不能型鑑別不能型統合失調症(295.90);亜慢性残遺型統合失調症(295.61);慢性残遺型統合失調症(295.62);急性増悪のある亜慢性残遺型統合失調症(295.63);急性増悪のある慢性残遺型統合失調症(295.94);緩解中の残遺型統合失調症(295.65);特定不能型残遺型統合失調症(295.60);妄想障害(297.10);短期持続型精神障害(298.80);統合失調症様障害(295.40);分裂情動障害(295.70);誘導型精神病(297.30);精神病NOS(非定型精神病)(298.90)。
【0084】
情動障害
精神病的特徴を伴う重度の大鬱病(296.33);単一躁病エピソードを有する、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.23);最も新しいエピソードが軽躁病である双極I型障害(296.43);最も新しいエピソード躁病である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.43);最も新しいエピソードが混合型である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.63);最も新しいエピソードが鬱病である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.53);最も新しいエピソードが特定不能型である双極I型障害(296.89);双極II型障害(296.89);気分循環性障害(301.13);双極性障害NOS(366);健康状態による気分障害(293.83);気分障害NOS(296.90);単独攻撃型行為障害(312.00);鑑別不能型行為障害(312.90);トゥーレット障害(307.23)、慢性運動性または音声チック障害(307.22);一過性チック障害(307.21);チック障害NOS(307.20)。
【0085】
精神作用物質使用による障害
アルコール離脱せん妄(291.00);アルコール幻覚症(291.30);アルコール依存症に伴うアルコール性認知症(291.20);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬中毒(305.70);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬せん妄(292.81);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬妄想障害(292.11);大麻妄想障害(292.11);コカイン中毒(305.60);コカインせん妄(292.81);コカイン妄想障害(292.11);幻覚発現物質幻覚症(305.30);幻覚発現物質妄想障害(292.11);幻覚発現物質気分障害(292.84);幻覚発現物質後認知障害(292.89);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン中毒(305.90);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミンせん妄(292.81);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン妄想障害(292.11);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン気分障害(292.84);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン器質性精神障害NOS(292.90);その他の、または特定不能型の精神活性物質中毒(305.90);その他の、または特定不能型の精神活性物質せん妄(292.81);その他の、または特定不能型の精神活性物質認知症(292.82);その他の、または特定不能型の精神活性物質妄想障害(292.11);その他、または特定不能型の精神活性物質幻覚症(292.12);その他の、または特定不能型の精神活性物質気分障害(292.84);その他の、または特定不能型の精神活性物質不安障害(292.89);その他の、または特定不能型の精神活性物質人格障害(292.89);その他の、または特定不能型の精神活性物質器質性精神障害NOS(292.90)。
【0086】
人格障害
妄想型人格障害(301.00);分裂性人格障害(301.20);精神分裂症型人格障害(301.22);反社会的人格障害(301.70);境界型人格障害(301.83)。
【0087】
せん妄(293.00);認知症(294.10);強迫神経症(300.30);間欠性爆発性障害(312.34);および衝動制御障害NOS(312.39)。
【0088】
好ましい実施形態では、精神障害は統合失調症である。統合失調症は、多様な徴候および症状を特徴とする重度の精神障害である。しかし、診断に決定的な1個の症状があるわけではない。むしろ、診断は、職業的および社会的機能不全に関連する徴候および症状のパターンを含む(DSM−IV)。本発明によれば「統合失調症」は、好ましくは、限定されるものではないが、最新版のDSM−IVのAmercian Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)から統合失調症を診断する判定基準という意味において用いられる。統合失調症を有するとして診断するためには、次の症状を呈していなければならない。
(A)特徴的な症状:次のもの:妄想、幻覚、会話の混乱(例えば、頻繁な逸脱または矛盾)、著しく混乱した、または緊張した挙動、陰性症状、すなわち、感情鈍麻(情動反応の欠如または低下)、失語症(会話の欠如または低下)または意欲消失(動機づけの欠如または低下)の2個以上が、各々、1ヶ月のうち有意な期間存在すること(処置が成功した場合には、もっと短い)。妄想がとっぴなものであるか、または幻覚が声の聞こえるものであれば、判定基準Aの症状は1個のみでもよい。
(B)社会的/職業的機能不全:障害の発生から有意な期間、仕事、対人関係または自己管理などの主な機能領域の1個以上が、発生前に到達していたレベルを著しく下回ること。
(C)持続期間:その障害の連続した徴候が少なくとも6ヶ月持続。この6ヶ月は、判定基準Aを満たす症状の少なくとも1ヶ月を含んでいなければならない(処置が成功した場合には、もっと短い)。
【0089】
このDSM−IVは、統合失調症の5個の細分類を含む。緊張型(運動特性が著しく欠如する場合)、解体型(思考障害と平坦または不適切な感情が共存する場合)、妄想型(妄想と幻覚が存在するが、思考障害、支離滅裂な挙動および感情鈍麻は存在しない場合)、残遺型(陽性症状が微弱にしか存在しない場合)および鑑別不能型(精神病的症状が存在するが、妄想型、解体型、または緊張型の判定基準を満たさなかった場合)が存在する。
【0090】
症状はまた、「陽性症状」(正常な体験および挙動につけ加わるもの)および陰性症状(正常な体験または挙動の欠如または低下)としても表される。「陽性症状」は精神病を表し、一般に、妄想、幻覚および思考障害を含む。「陰性症状」は、不適切な情動または情動の不在、会話の貧困、および動機づけの欠如を表す。
【0091】
ヒトにおける精神障害の診断は多型/ハプロタイプの判定の結果に基づいて行うことができる。被験患者は、精神障害、好ましくは統合失調症に関連する少なくとも1個のゲノムコピーに、1個、または複数の多型、および/または少なくとも1個の多型の組合せを有している場合がある。このような診断が得られれば、その患者は精神障害、好ましくは統合失調症を発症するリスクが高い。
【0092】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物を包含する。好ましくは、このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCT遺伝子の転写産物と結合し得る。もう1個の好ましい実施形態は、表1から選択される少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物を包含する。このような組成物は、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)、および所望により、GCLM遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1を含んでもよく、あるいは、配列番号3および/または4、およびまた所望により、GSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号2を含んでもよく、あるいは、この組成物は、配列番号6および/または7、および所望により、GPX1遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号5を含んでもよく、あるいはこの組成物は、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)、および所望により、Xc−系4F2遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号8を含んでもよく、あるいは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、Xc− xCT遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号9を含んでもよい。この組成物は、好ましくは、Applied Biosystemsアッセイ#Hs00157694_m1を、配列番号3および配列番号4、および所望により、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1および配列番号2とともに含む。
【0093】
本発明のもう1つの態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物が提供される。好ましくは、このような組成物は以上でさらに詳細に記載したようなモノクローナル抗体を含む。
【0094】
本発明のなおさらなる態様は、以上でさらに詳細に記載したような細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物である。本発明の好ましい実施形態によれば、これらの手段はGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系の活性を判定できる。好ましくは、GCLの活性を判定するための手段は、14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を判定できるシンチレーションアナライザーを含み、GGTの活性を判定するための手段は、5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定できる分光手段を含み、Xc−系の活性を判定するための手段は[35S]シスチン取り込みを測定することができる。
【0095】
本発明の他の態様は、精神障害の診断用キットを提供する。本発明の一態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む。本発明の好ましい実施形態では、これらの転写レベルを判定するための手段は、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1、および/またはXc−系、好ましくは、cXT遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。好ましくは、このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、表1から選択される配列を含む。もう1つの好ましい実施形態では、このキットは、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と、またはGCLMおよびGPX1遺伝子の転写産物と、またはGSSおよびGPX1の転写産物と、または最も好ましくは、GCLM、GSSおよびGPX1遺伝子の転写産物と結合し得るオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。あるいは、このキットは、GCLMおよびXc−系、GSSおよびXc−系、GPX1およびXc−系、またはGCLM、GSS、GPX1およびXc−系遺伝子の転写産物と結合し得るオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。好ましくは、このキットは、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)、および所望により、GCLM遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1、あるいは配列番号3および/または4、および所望により、GSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号2などのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せを含むか、あるいはこのキットは、配列番号6および/または7、および所望により、GPX1遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号5を含んでもよく、あるいはこのキットは、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)、および所望により、Xc−系4F2遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号8を含んでもよく、あるいはそれは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、Xc− xCT遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号9を含んでもよい。このキットは最も好ましくは、Applied Biosystemsアッセイ#Hs00157694_m1を、配列番号3および配列番号4、および所望により、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1および配列番号2とともに含む。このキットはさらにDNAサンプル回収手段を含む。
【0096】
本発明のさらなる態様において、このキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む。好ましい実施形態では、このキットは、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCTサブユニットと結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。もう1個の好ましい実施形態では、このキットは、GCLMおよびGSSと、またはGCLMおよびGPX1と、またはGSSおよびGPX1と結合し得る2個の異なる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。最も好ましくは、このキットは、GCLM、GSSおよびGPX1と結合し得る3個の異なる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。あるいは、このキットは、GCLMおよびXc−系、GSSおよびXc−系、GPX1およびXc−系、またはGCLM、GSS、GPX1およびXc−系と結合し得る抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含み得る。
【0097】
さらにもう1個の態様では、この精神障害の診断用キットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む。好ましくは、このタンパク質は、GCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含む。本発明の1個の実施形態によれば、このキットは、GCL、好ましくは、GCLCの活性を判定するための手段を含み、このような手段は、14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を判定できるシンチレーションアナライザーを含む。本発明のもう1個の実施形態によれば、このキットは、GGTの活性を判定するための手段を含む。好ましくは、このような手段は、5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定できる分光手段を含む。本発明のもう1つの実施形態は、Xc−系の活性を判定するための手段を提供し、これらの手段は、[35S]シスチンの取り込みを測定することができる。
【0098】
他の好ましい実施形態は、タンパク質サンプル回収手段をさらに含む、タンパク質レベルまたはタンパク質の活性レベルを判定するためのキットを提供する。最も好ましくは、本発明のキットは、対象の生体サンプルを回収するための手段をさらに含み、加えて、キットの使用説明書および判定された発現および/または活性のレベルの解説書を含んでもよい。好ましくは、本発明のキットは、少なくとも1個の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルを測定するために本発明により提供される方法の判定ステップにおいて使用可能である。
【0099】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルを判定するための少なくとも1個の手段を含む精神障害の診断用キットが提供される。本発明の好ましい実施形態では、これらの手段は、アミノ酸アナライザーおよび/またはHPLCを含む。本発明のもう1個の態様は、血中のGSHレベルを判定するための手段を含むキットを提供する。
【0100】
本発明のさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断用組成物または診断用キットに関し、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーまたはプローブを含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0101】
好ましくは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子はGCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子から選択される。
【0102】
このような遺伝子の1個の染色体コピーにおける、および/またはこのような遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定するためのプライマーおよび/またはプローブ、このような遺伝子の1個の染色体コピーおよび/またはこのような遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するための、および/またはGCLM遺伝子およびGSS遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せは、DNAおよびRNAなどの核酸分子、またはペプチド核酸(PNA)もしくはロックド核酸(LNA)などの核酸類似体であってもよい。プライマーおよび/またはプローブは、分析しようとする位置における多型間を識別できるように選択される。通常、これらのプライマーおよび/またはプローブは少なくとも10、好ましくは、少なくとも15〜50まで、好ましくは、30までの核酸構成ブロック、例えば、ヌクレオチドの長さを有する。好ましい実施形態では、この組成物またはキットは、例えば、温度、バッファー、強度および/または有機溶媒の濃度などの所定の条件下で上述の遺伝子とハイブリダイズし、かつ、試験しようとする多型の特異的判定を可能とする、少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブ、および/またはプライマーおよび/またはプローブの少なくとも1個の組合せを含む。マスアレイ系を用いた遺伝子型分析のための、このようなプライマーの好ましい例を表3および表4に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0103】
この診断組成物またはキットに従う、GCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける、好ましい、より好ましい、および最も好ましい(a)多型の組合せ、(b)(a)の少なくとも1個の多型と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せは、上述のものと同じものである。
【0104】
この組成物またはキットは好ましくは、DNAポリメラーゼのようなプライマー伸張のための酵素、ヌクレオチド、例えば、鎖伸張ヌクレオチド(デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)など)または鎖終結ヌクレオチド(ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)など)(表5)および/または標識基、例えば、蛍光または発色標識基をさらに含む。
【表6】
【0105】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおいて精神障害またはその疾病素因を診断するためのマイクロアレイに関し、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。好ましくは、このマイクロアレイ担体、例えば、平板担体またはマイクロチャネルディバイスは、それらが、試験しようとする多型が存在する配列を含む、例えば、RNA分子またはDNA分子、増幅産物、プライマー伸張産物などの核酸分子と結合できるように設計された、担体上の異なる領域に位置する複数の異なるプローブが固定化されている。よって、核酸サンプル分子と担体上に固定化されたプローブの部位特異的結合結果を検出することにより、分析しようとする多型の同定が達せられる。
【0106】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおいて、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とした、精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーもしくはプローブおよび/またはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せであり、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。これらのプライマーは、DNAおよびRNAなどの核酸分子、またはペプチド核酸(PNA)もしくはロックド核酸(LNA)などの核酸類似体であり得る。これらのプライマーおよび/またはプローブは、分析しようとする位置における多型間を識別できるように選択される。通常、これらのプライマーおよび/またはプローブは少なくとも10、好ましくは、少なくとも15〜50まで、好ましくは、30までの核酸構成ブロック、例えば、ヌクレオチドの長さを有する。好ましい実施形態では、このプライマーは、例えば、温度、バッファー、強度および/または有機溶媒の濃度などの所定の条件下で上述の遺伝子とハイブリダイズし、かつ、試験しようとする多型の特異的判定を可能とする。
【0107】
さらなる態様において、本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のタンパク質の使用を対象とし、その1以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。好ましくは、GCLはGCLMを含み、GPXはGPX1を含み、また、Xc−系はxCTを含む。
【0108】
本明細書において「タンパク質」とは、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチドまたは合成オリゴペプチドをさす。これらの用語は互換的な使用を意図する。このような用語はいずれも、グリコシル化またはリン酸化などの翻訳後修飾にかかわらず、ペプチド結合またはアミド結合で連結された2以上のアミノ酸の鎖をさす。このタンパク質はまた1を超えるサブユニットを含んでもよく、各サブユニットは個々のDNA配列によりコードされている。アミノ酸残基は本明細書では、それらの標準的な一文字または三文字表記で示されている:A(Ala)アラニン;C(Cys)システイン;D(Asp)アスパラギン酸;E(Glu)グルタミン酸;F(Phe)フェニルアラニン;G(Gly)グリシン;H(His)ヒスチジン;I(Ile)イソロイシン;K(Lys)リシン;L(Leu)ロイシン;M(Met)メチオニン;N(Asn)アスパラギン;P(Pro)プロリン;Q(Gln)グルタミン;R(Arg)アルギニン;S(Ser)セリン;T(Thr)トレオニン;V(Val)バリン;W(Trp)トリプトファン;Y(Tyr)チロシン。
【0109】
本明細書において「生物活性」とは、生体事象を誘起する、または生体事象に影響を及ぼす分子についていう。このような生体事象は、例えば、統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病などの精神障害に関連するものであり得る。
【0110】
ある参照配列と他の配列(すなわち、「候補」配列)の比較に関して用いる「同一性%」などは、それら2配列間の最適なアライメントにおいて、候補配列が示された%に相当するサブユニットの位置の数だけ参照配列と同一であることを意味し、ここで、サブユニットは、ポリヌクレオチド比較の場合にはヌクレオチドであり、タンパク質比較の場合にはアミノ酸である。本明細書において、比較する配列の「最適なアライメント」とは、サブユニット間の一致を最大とし、アライメントの構成に用いるギャップ数を最小とするものである。同一性%は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)(“GAP” program of Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)により記載されている市販のアルゴリズムの実施によって判定することができる。アライメントの構成および同一性%の計算または類似の他の評価のための当技術分野における他のソフトウエアパッケージとしては、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981) (Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)のアルゴリズムに基づく「BestFit」プログラムがある。同一性%はまた、WU−BLAST−2(Altschul et al., Methods in Enzymology 266: 460-480 (1996))により求めてもよい。WU−BLAST−2ではいくつかの検索パラメーターを用いたが、そのほとんどがデフォルト値に設定されている。調整可能なパラメーターは次の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。アミノ酸配列同一%値は、一致した同一残基の数をアライニングした領域の残基総数で割って求める。例えば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するタンパク質を得るためには、参照配列のアミノ酸残基の5%までを欠失または別のアミノ酸で置換してもよいか、あるいは、参照配列のアミノ酸残基総数の5%までのアミノ酸数を参照配列に挿入してもよい。参照配列におけるこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端に存在してもよいし、あるいはこれらの末端間のいずれかの位置に、参照配列内の残基間に個々に、または参照配列内に1以上の連続する群として散在していてもよい。本発明の参照配列との比較を行う上で、候補配列はより大きなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの成分またはセグメントであってよく、同一性%をコンピューターで求めるためのこのような比較は適切な成分またはセグメントに関して行われると理解される。
【0111】
本発明のタンパク質はまた、本発明のタンパク質のフラグメントも含む。このようなタンパク質フラグメントは、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の、全てではないが、一部が全く同じであるアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。このようなタンパク質フラグメントは「独立したもの」であってもよいし、あるいはこのようなタンパク質フラグメントが、最も好ましくは、単一の連続領域として、一部または一領域を形成する、より大きなタンパク質の一部であってもよい。好ましくは、このようなタンパク質またはタンパク質フラグメントは、本発明の対応するタンパク質の生物活性を保持している。
【0112】
他の種々の実施形態では、このタンパク質(フラグメント)は直鎖であっても分枝していてもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸が挿入されていてもよく、かつ/または1を超えるポリペプチド鎖の複合体へと組み立てられていてもよい。当技術分野で十分理解されているように、タンパク質は、自然に、または例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、ニトロシル化、または標識成分とのコンジュゲーションのような他のいずれかの操作または修飾といった介入により修飾を受け得る。いくつかの実施形態では、タンパク質(フラグメント)は1以上のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含む。本発明はまた、本明細書に記載されているタンパク質(フラグメント)の機能的に保存された変異体も含む。このような変異体は、例えば保存的アミノ酸置換によるなど、当技術分野で標準的な方法を用いて作製することができる。一般にこのような置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間;SerおよびThr間;酸性残渣AspおよびGlu間;AsnおよびGln間;ならびに塩基性残渣LysおよびArg間;または芳香族残渣PheおよびTyr間のものである。特に好ましいのは、数個、5〜10個、1〜5個、または2個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加されている変異体である。
【0113】
本発明のタンパク質(フラグメント)は、単離された天然タンパク質を含む。好ましくは、このような天然タンパク質は選択された集団内で少なくとも5%の、最も好ましくは少なくとも10%の頻度を有する。この選択集団は集団遺伝学の分野で認識されているいずれの研究集団であってもよい。好ましくは、この選択集団は、白色人種、黒色人種、またはアジア人種である。より好ましくは、この選択集団は、フランス人、ドイツ人、イギリス人、スペイン人、スイス人、日本人、中国人、韓国人、中国系シンガポール人、アイスランド人、北アメリカ人、イスラエル人、アラブ人、トルコ人、ギリシャ人、イタリア人、ポーランド人、太平洋諸島人、またはインド人である。
【0114】
本発明のタンパク質(フラグメント)はまた、組換え生産タンパク質、合成生産タンパク質ならびにこのような本発明のタンパク質およびフラグメントの組合せも含む。このようなタンパク質を作製する手段は当技術分野で十分理解されている。例えば、本発明のタンパク質フラグメントまたはタンパク質は、限定されるものではないが、血清、尿、腹水をはじめとする体液から単離することもできるし、あるいは化学的または生物学的方法(例えば、細胞培養、組換え遺伝子発現)によって合成することもできる。「単離された」とは、本明細書でそうではないことが明示されない限り、「ともに存在していた材料から分離された」という意味を含む。
【0115】
本発明組換えタンパク質は発現系を含む遺伝子操作宿主細胞から、当技術分野で周知のプロセスにより作製することができる。よって、本発明はまた、組換え技術によるタンパク質(フラグメント)の生産、本発明の核酸またはタンパク質をコードする核酸を含む発現系、このような発現系で遺伝子操作されている宿主細胞、およびそのポリペプチドを単離する方法に関する。
【0116】
好ましい実施形態は、本発明の1以上のタンパク質は配列番号10(GCLMのアミノ酸配列(図1))、配列番号11(GSSのアミノ酸配列(図1))、配列番号12(GPX1のアミノ酸配列(図1))および/または配列番号13(Xc−系(xCT)のアミノ酸配列(図1))を含むものを提供する。
【0117】
このタンパク質はまた、GCLM、GSS、GPX1および/またはXc−系(xCT)タンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%または80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば、95%、97%、または99%の同一性%を有するアミノ酸配列も含み得る。
【0118】
本発明のもう1個の態様は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用を包含する。本発明によれば、1以上のポリヌクレオチドは上記で詳しく定義したような本発明のタンパク質をコードする配列を含み、その配列は組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている。
【0119】
「ポリヌクレオチド」とは、天然または半合成または合成または修飾核酸分子を意味する。それは、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)および/または修飾ヌクレオチドをはじめとするヌクレオチド配列またはオリゴヌクレオチドをさす。これらの用語は互換的な使用を意図する。RNAは、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(低分子核内(small nuclear)RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、およびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、線状DNA、染色体もしくはゲノムDNA、cDNA、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。さらに、これらのDNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖であり得る。この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸主鎖の他の変異体も含む。
【0120】
好ましくは、本発明の1以上のポリヌクレオチドは、配列番号14(GCLMの核酸配列(図2))、配列番号15(GSSの核酸配列(図3))、配列番号16(GPX1の核酸配列(図4))および/または配列番号17(Xc−系(xCT)の核酸配列(図5))を含む。
【0121】
本発明の他の実施形態は、配列番号14〜配列番号19のいずれかとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェント条件」は、当業者ならば容易に決定でき、一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、長いプローブほど適切なアニーリングに高温を必要とするが、短いプローブは低温でよい。ハイブリダイゼーションは一般に、変性した核酸が、それらの融解温度付近、ただしそれらの融解温度を超えない環境に相補鎖が存在する場合に再アニーリングする能力によるものである。プローブと、ハイブリダイズ可能な配列、例えば配列番号14〜19との間の相同性が高いほど、使用できる相対的温度は高くなる。結果として、高い温度ほどより高いストリンジェントの反応条件となる傾向があり、低い温度ほどその傾向が小さくなる。さらに、ストリンジェンシーはまた、塩濃度に反比例する。「ストリンジェント条件」は、(1)低イオン強度と高い洗浄温度、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃;(2)ホルムアミドのような変性剤の使用、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファーpH6.5+750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム(42℃)を含む50%(vol/vol)ホルムアミドを特徴とする反応条件により例示される。あるいは、ストリンジェント条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸(42℃)、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミド(55℃)中、42℃での洗浄の後、EDTAを含有する0.1×SSCからなる55℃での高ストリンジェンシー洗浄であり得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに関するさらなる詳細および説明については、Ausubel et al. Protocols in Molecular Biology (1995)を参照。
【0122】
好ましい実施形態では、このポリヌクレオチドはウイルスベクターに含まれ、そこではポリヌクレオチドはウイルスゲノムのプロモーターに作動可能なように連結されている。このプロモーター配列は公開データベースを検索することにより、確認することができる。好ましくは、これらのウイルスベクターは、精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象の脳細胞などの特定の組織で選択的に複製できるが、非罹患細胞では複製しないものである。この複製は、罹患細胞において、開示されている細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子のプロモーターを活性化する正の転写因子が存在する場合に条件付けられるが、非罹患(=標準発現プロフィール)細胞では条件付けられない。それはまた、非罹患細胞に通常見られ、そのプロモーターの結果としての転写を妨げる転写阻害因子が存在しないことによって起こり得る。よって、転写が起こる場合、それは複製に必須の遺伝子へと進み、その結果、罹患細胞ではベクターの複製とその付随する機能が生じ、非罹患細胞では生じない。このベクターを用いれば、罹患細胞、例えば脳細胞を最小限の全身毒性で、選択的に処理することができる。
【0123】
一実施形態では、このウイルスベクターはアデノウイルスベクターであり、これはベクターの複製に必須の遺伝子のコード領域を含み、そのコード領域はE1a、E1b、E2およびE4コード領域からなる群から選択される。「複製に必須の遺伝子」とは、標的細胞でベクターが複製するのにその転写が必要である核酸配列をさす。好ましくは、この複製に必須の遺伝子は、E1AおよびE1bコード配列からなる群から選択される。複製に必須の遺伝子として特に好ましいのは、アデノウイルスE1A遺伝子である。このようなベクターを作製する方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているように、当業者に周知のものである。
【0124】
本発明のベクターはウイルス複製のためのヘルパー細胞系統にトランスフェクトし、感染力のあるウイルス粒子を生成することができる。あるいは、上記のような本発明のポリヌクレオチドを担持するベクターまたは他の核酸構築物の、例えば神経細胞へのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、またはプロテオリポソームを含むリポソームを介して行うことができる。
【0125】
本発明のさらなる態様は、ヒトをはじめとする哺乳類に有効量の1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドを投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。好ましくは、この1以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。好ましくは、GCLはGCLMを含み、GPXはGPX1を含み、Xc−系はxCTを含む。最も好ましくは、この1以上のタンパク質は配列番号10、配列番号11、配列番号12および/または配列番号13を含む。この1以上のポリヌクレオチドは好ましくは、上記で定義されたタンパク質をコードし、組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている配列を含む。この1以上のポリヌクレオチドは最も好ましくは、配列番号14、配列番号15、配列番号16および/または配列番号17を含む。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する、少なくとも1個の遺伝子発現を変化させ得るか、または少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る、有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を対象とする。好ましくは、この薬剤はGCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCT遺伝子の発現、および/またはGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系の活性を変化させ得る。好ましくい実施形態は、GCLCの活性を変化させる薬剤がGCLM、その機能的相同体、誘導体およびフラグメントであるものを提供する。
【0127】
もう1つの態様によれば、本発明は、GSHレベル、好ましくは、細胞内GSHレベルを正常化できる有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を提供する。最も好ましくは、血液細胞の細胞内GSHレベルが判定される。この薬剤はGSH、その前駆体、誘導体および/または化学等価物を含み得る。好ましくは、このような薬剤はN−アセチルシステイン(NAC)である。最も好ましくは、この薬剤はR(−)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(OTC)である。
【0128】
予防および/または処置目的の「哺乳類」とは、ヒト、家庭内および農場動物、ならびに動物園用、競技用、またはペット用動物、例えば、イヌ類、ウマ類、ネコ類、ヒツジ類、ブタ類、ウシ類などの哺乳類として分類される動物のいずれをもさす。好ましくは、この哺乳類はヒトである。
【0129】
本明細書において「処置」とは、治療的処置と予防的もしくは防御的手段の双方をさす。よって、本発明のこのような方法は、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象を処置する予防的方法と治療的方法の双方を含み、その障害が回避される。このような障害のリスクのある対象は上記のような診断方法およびキットによって確認することができる。本発明のタンパク質の発現または活性を変化させ得るポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤の投与は、例えば統合失調症の発症を予防またはその進行を遅延させるように、精神障害に特徴的な症状の発現前に行ってもよい。
【0130】
遺伝子の発現またはタンパク質の活性を変化させ得るポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤の「有効量」とは、これらの治療薬の1個が、統合失調症などの精神障害の発症の予防、その障害から生じる1以上の症状の軽減、その障害に罹患しているものの生活の質の向上、その障害を処置するのに必要な他の薬剤の用量の引き下げ、別の薬剤の効果の増強および/またはその障害の進行の遅延を含む有益または望ましい結果を果たすのに十分な量をさす。
【0131】
有効量の決定は、十分、当業者の能力の範囲内である。いずれの治療薬であっても、有効用量はまず、例えば新生細胞などの細胞培養アッセイか、または動物モデル、通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタのいずれかで評価することができる。また、動物モデルを用いて、適当な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。こうした情報を用いて、次に、ヒトにおける有用な量および投与経路を決定することができる。
【0132】
治療効力および毒性は、細胞培養または試験動物において標準的な薬事手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)によって決定することができる。毒性作用と治療作用の間の用量比が治療係数であり、LD50/ED50比として表すことができる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータはヒト用の用量範囲を処方する際に用いられる。このような組成物に含まれる用量は、ほとんど、または全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。用量はこの範囲内で、用いる投与形、患者の感受性、および投与経路に応じて可変である。
【0133】
厳密な用量は、医師が、処置を必要とする対象に関連する因子に照らして決定する。十分なレベルの活性部分を提供するため、または所望の作用を維持するために用量および投与は調整される。考慮できる因子としては、病態の重篤度、対象の健康状態、対象の齢、体重、および性、食餌、投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性、および治療に対する耐性/応答が挙げられる。
【0134】
通常の用量は、投与経路に応じて0.1〜100,000マイクログラム、総量約1グラムまでで様々であり得る。特定の用量および送達方法についての指針は文献に示されており、当業者ならば通常利用可能である。当業者ならば、ポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤に対して異なる処方を用いるであろう。
【0135】
有効量は1回以上の投与で投与することができ、また、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成してもよいし、組み合わせなくともよい。よって、「有効量」は、1以上の治療薬を投与するという文脈で考えることもできるし、また、単一の薬剤は、1以上の他の薬剤と組み合わせて所望の結果が達成され得る、または達成される場合に有効量で与えられるものと考えることができる。
【0136】
治療適用では、本発明のタンパク質またはポリヌクレオチド(リポソームに封入されているか、またはウイルスベクターに含まれている)または上記のような薬剤は好ましくは、1以上の医薬上許容される担体と組み合わせて治療薬を含有する医薬組成物として投与される。
【0137】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者において精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0138】
本発明によれば、医薬組成物は好ましくは、治療薬を、1以上の医薬上許容される担体と組合せて含有する。
【0139】
好ましくは、医薬組成物の有効成分は、(a)GCLMおよび/またはGSSまたはそのフラグメント;(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;(c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。「タンパク質」、「生物活性」、「フラグメント」、「変異体」または「同一性%」は、上記の定義と同義である。
【0140】
好ましい実施形態は、本発明の1以上のタンパク質が配列番号10(GCLMのアミノ酸配列(図1))および配列番号11(GSSのアミノ酸配列(図1))を含むものを提供する。このタンパク質はまた、GCLMおよび/またはGSSタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%または80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば、95%、97%、または99%の同一性%を有するアミノ酸配列を含み得る。本発明のなおさらなる好ましい態様は、有効成分が上記で定義されたようなタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、医薬組成物に関する。好ましくは、本発明の1以上のポリヌクレオチドは配列番号18(GCLMの核酸配列(図6))および配列番号19(GSSの核酸配列(図7))を含む。本発明の他の実施形態は、(GCLMの核酸配列(図6))および配列番号19(GSSの核酸配列(図7))とハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。本発明の他の実施形態は、ストリンジェント条件下で配列番号18および19とハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。好ましい実施形態では、このポリヌクレオチドはウイルスベクターに含まれ、そこではこのポリヌクレオチドはウイルスゲノムのプロモーターに作動可能なように連結されている。「ポリヌクレオチド」、「ストリンジェント条件」または「ウイルスベクター」は、上記の定義と同義である。
【0141】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、医薬組成物の有効成分はGSH、またはGSHレベル、好ましくは細胞内GSHレベルを高める化合物である。このような化合物は、GSH、その前駆体、誘導体および/または化学等価物を含み得る。好ましくは、このような薬剤はN−アセチルシステイン(NAC)である。最も好ましくは、この薬剤はR(−)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(OTC)である。好ましい実施形態では、患者は、上記で具体的に示された少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する。
【0142】
本発明の組成物は単独で投与してもよいし、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水をはじめとするいずれの無菌の生体適合性医薬担体にて投与してもよい、安定剤などの少なくとも1個の他の薬剤と組み合わせて投与してもよい。これらの組成物は患者に単独で投与してもよいし、あるいは、他の薬剤、薬物またはホルモンと組み合わせて投与してもよい。この患者は少なくとも1個のゲノムコピーの1または複数の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有し得る。
【0143】
これらの医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、舌下、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、くも膜下腔内、小脳内、頭蓋内、呼吸器系、気管内、鼻咽頭、経皮、皮内、皮下、腹膜内、鼻腔内、腸内、局所、または直腸手段、注入もしくはインプラントを介するものを含む多くの経路のいずれによって投与してもよい。好ましくは、投与経路は経口である。
【0144】
この医薬組成物は本発明の処置方法に使用できる。このような組成物は好ましくは無菌であり、患者への投与に好適な重量または容量単位で所望の応答を誘導するために有効量のタンパク質またはポリヌクレオチドを含む。
【0145】
投与する場合、本発明の医薬組成物は医薬上許容される剤形で投与する。本明細書において「医薬上許容される担体」とは、ヒトをはじめとする哺乳類への投与に好適な1以上の適合する固体または液体増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。「担体」とは、適用を助けるためにその有効成分と組み合わす有機もしくは無機の、天然または合成成分を表す。
【0146】
「医薬上許容される」とは、有効成分の生物活性の有効性を妨げない無毒の材料を意味する。このような剤形は、通常、医薬上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、補助的免疫増強薬(アジュバントおよびサイトカインなど)および所望により他の治療薬(化学療法薬など)を含み得る。
【0147】
医療で用いる場合、これらの塩は、医薬上許容されるものでなければならないが、医薬上許容されない塩も、その医薬上許容される塩を製造するために便宜に使用でき、本発明の範囲から排除されるものではない。
【0148】
これらの医薬組成物は、塩中の酢酸;塩中のクエン酸;塩中のホウ酸;塩中のリン酸をはじめとする、好適な緩衝剤を含み得る。
【0149】
これらの医薬組成物はまた、所望により、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの好適な保存剤を含み得る。
【0150】
対象に投与するタンパク質、ポリヌクレオチドまたは医薬組成物用量の用量は、種々のパラメーターに従って、特に、用いる投与様式および対象の状態に従って選択することができる。他の因子としては、所望の処置期間が挙げられる。対象の応答が最初に適用した用量では不十分な場合、患者の耐容性が許す程度までより高い用量(または異なる、より局所的な送達経路により有効により高い用量)を用いてもよい。
【0151】
医薬組成物は便宜には単位投与形で提供することができ、製薬分野で周知のいずれの方法によって製造してもよい。全ての方法が、有効成分を1以上の補助成分からなる担体と会合させるステップを含む。一般に、これらの組成物は、有効化合物を液体担体、微粉固体担体、またはその双方と均一かつ緊密に会合させた後、必要があれば、その産物を成形することによって製造される。
【0152】
経口投与に好適な組成物は、各々所定量の有効化合物を含有する、カプセル剤、錠剤、トローチ剤などの個別単位として提供してもよい。その他の組成物としては、シロップ剤、エリキシル剤またはエマルションなどの水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0153】
非経口投与に好適な組成物は便宜には、ポリペプチドまたはそのポリペプチドをコードする核酸の無菌水性または非水性製剤を含み、これはレシピエントの血液と等張であるのが好ましい。この調製物は、好適な分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用い、既知の方法に従って調剤することができる。無菌注射製剤はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌硬化油も溶媒または懸濁媒体として便宜に用いられる。この目的で、合成モノまたはジ−グリセリドを含むいずれの銘柄の硬化油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射可能物質の製造に用いてもよい。
【0154】
経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに好適な担体処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PAに見出すことができる。
【0155】
本発明のもう1個の態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者において精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、上記で定義された1以上の有効成分の使用を包含する。
【0156】
本発明のなおさらなる態様では、この有効成分は、(a)GCLMおよび/またはGSSまたはそのフラグメント、(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および(c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。「タンパク質」、「生物活性」、「フラグメント」、「変異体」または「同一性%」は、上記の定義と同義であるものとする。
【0157】
本発明のもう1個の態様では、この有効成分は、上記で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。さらなる態様において、この有効成分はGSHまたは細胞内GSHレベルを高める化合物である。好ましい実施形態では、患者は、上記で具体的に示された少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する。
【0158】
本発明のさらなる態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用に関する。
【0159】
本発明のさらなる態様は、精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。好ましくは、この薬剤は、同時、個別または逐次使用のために、(a)バルビタール酸塩およびその誘導体、ベンゾジアゼピン、カルボキサミド、ヒダントイン、スクシンイミド、バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体から選択される抗癲癇薬、ならびに他の抗癲癇薬、(b)通常の抗精神病薬、および(c)非定型抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1個の化合物(各場合において、有効成分は遊離形態または医薬上許容される塩の形態で存在する)と所望により少なくとも1個の医薬上許容される担体とを含む。
【0160】
本明細書において「バルビタール酸塩およびその誘導体」は、限定されるものではないが、フェノバルビタール、ペントバルビタール、メポバルビタールおよびプリミドンが挙げられる。本明細書において「ベンゾジアゼピン」としては、限定されるものではないが、クロナゼパム、ジアゼパムおよびロラゼパムが挙げられる。本明細書において「カルボキサミド」としては、限定されるものではないが、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンおよび式II
【化1】
(式中、R1’はC1−C3アルキルカルボニルである)
の化合物が挙げられる。本明細書において「ヒダントイン」としては、限定されるものではないが、フェニトインが挙げられる。本明細書において「スクシンイミド」としては、限定されるものではないが、エトスクシミド、フェンスクシミドおよびメスクシミドが挙げられる。本明細書において「バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体」としては、限定されるものではないが、バルプロ酸ナトリウム塩、塩酸チアガビン一水和物およびビグラバトリンが挙げられる。本明細書において「他の抗癲癇薬」としては、限定されるものではないが、レベチラセファム、ラモトリジン、ガバペンチン、スルチアム、フェルバメート、EP114347に開示されている1,2,3−1H−トリアゾールおよびWO99/28320に開示されている2−アリール−8−オキソジヒドロプリンが挙げられる。
【0161】
本明細書において「通常の抗精神病薬」としては、限定されるものではないが、ハロペリドール、フルフェナジン、チオチキセンおよびフルペンチキソールが挙げられる。
【0162】
本明細書において「非定型抗精神病薬」は、クロザジル、リスペリドン、オランザピン、ケチアピン、ジプラシドンおよびアリピプラゾールに関する。
【0163】
コード番号、一般名または商標によって識別される有効成分の構造は標準的な概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えば、Patents International (例えば、IMS World Publications)から得ることができる。その相当する内容は出典明示により本明細書の一部とされる。当業者ならば、有効成分を同定することが十分可能であり、また、これらの参照文献に基づいて、製造ならびにin vitroおよびin vivoの双方における標準的な試験モデルで医薬適応および特性を試験することができる。
【0164】
フェノバルビタールは、例えば、商標Luminal(商標)として市販されている形態で投与することができる。プリミドンは、例えば、商標Mylepsinum(商標)として市販されている形態で投与することができる。クロナゼパムは、例えば、商標Antelepsin(商標)として市販されている形態で投与することができる。ジアゼパムは、例えば、商標Diazepam Desitin(商標)として市販されている形態で投与することができる。ロラゼパムは、例えば、商標Tavor(商標)として市販されている形態で投与することができる。カルバマゼピンは、例えば、商標Tegretal(商標)またはTegretol(商標)として市販されている形態で投与することができる。オキシカルバゼピンは、例えば、商標Trileptal(商標)として市販されている形態で投与することができる。オキシカルバゼピンは、文献から周知のものである[例えば、Schuetz H. et al., Xenobiotica (GB), 16(8), 769-778 (1986)参照]。R1’がC1−C3アルキルカルボニルである式IIの化合物およびその医薬上許容される塩の製造については、例えば、米国特許第5,753,646号に記載されている。10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンは米国特許第3,637,661号に開示されているように製造することができる。10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンは、例えば、米国特許第6,316,417号に記載されているような形態で投与することができる。フェニトインは、例えば、商標Epanutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。エトスクシミドは、例えば、商標Suxinutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。メスクシミドは、例えば、商標Petinutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。バルプロ酸ナトリウム塩は、例えば、商標Leptilan(商標)として市販されている形態で投与することができる。塩酸チアガビン一水和物は、例えば、商標Gabitril(商標)として市販されている形態で投与することができる。ビガバトリンは、例えば、商標Sabril(商標)として市販されている形態で投与することができる。レベチラセタムは、例えば、商標Keppra(商標)として市販されている形態で投与することができる。ラモトリジンは、例えば、商標Lamictal(商標)として市販されている形態で投与することができる。ガバペンチンは、例えば、商標Neurontin(商標)として市販されている形態で投与することができる。スルチアムは、例えば、商標Ospolot(商標)として市販されている形態で投与することができる。フェルバメートは、例えば、商標Taloxa(商標)として市販されている形態で投与することができる。トピラメートは、例えば、商標Topamax(商標)として市販されている形態で投与することができる。EP114347に開示されている1,2,3−1H−トリアゾールは、例えば、米国特許第6,455,556号に記載されているような形態で投与することができる。WO99/28320に開示されている2−アリール−8−オキソジヒドロプリンは、例えば、WO99/28320に記載されている形態で投与することができる。ハロペリドールは、例えば、商標Haloperidol STADA(商標)として市販されている形態で投与することができる。フルフェナジンは、例えば、商標Prolixin(商標)として市販されているその二塩酸塩の形態で投与することができる。チオチキセンは、例えば、商標Navane(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば米国特許第3,310,553号に記載のように製造することができる。フルペンチキソールは、例えばその二塩酸塩の形態、例えば、商標Emergil(商標)として市販されている形態、またはそのデカン酸塩の形態、例えば、商標Depixol(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、BP925,538号に記載のように製造することができる。クロザリルは、例えば、商標Leponex(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、米国特許第3,539,573号に記載のよように製造することができる。リスペリドンは、例えば、商標Risperdal(商標)として市販されている形態で投与することができる。オランザピンは、例えば、商標Zyprexa(商標)として市販されている形態で投与することができる。ケチアピンは、例えば、商標Seroquel(商標)として市販されている形態で投与することができる。ジプラシドンは、例えば、商標Geodon(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、GB281,309号に記載のように製造することができる。アリピプラゾールは、例えば、商標Abilify(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、米国特許第5,006,528号に記載のように製造することができる。トピラメートは、例えば、商標Topamax(商標)として市販されている形態で投与することができる。
【0165】
フェノバルビタールは、成人患者には約1〜約3mg/kg体重の間の一日総量で、また、小児患者には約3〜約4mg/kg体重の間の一日総量を2個の個単位に分割して投与することができる。プリミドンは成人患者および少なくとも9歳の小児に、一日総量0.75〜1.5gで投与することができる。クロナゼパムは、成人患者には約3〜約8mgの間の一日総量で、また、小児患者には約0.5〜約3mgの一日総量を3〜4の個単位に分割して投与することができる。ジアゼパムは、成人患者には約5〜約10mgの間の一日総量で、また、小児患者にも約5〜約10mgの間の一日総量を投与することができる。ロラゼパムは、成人患者に約0.044mg/kg体重〜約0.05mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。カルバマゼピンは、成人患者には約600〜約2000mgの間の一日総量で、また、6歳を超える小児患者には、約400〜約600mgの間の一日総量で投与することができる。オキシカルバゼピンは、成人患者には約600〜約2400mgの間の一日総量で、また、小児患者には約30〜約46mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。フェニトインは、成人患者には約100〜約300mgの間の一日総量で、また、小児患者には約100〜約200mgの間の一日総量で投与することができる。エトスクシミドは、成人患者には一日総量約15mg/kg体重で、また、小児患者には一日総量約20mg/kg体重で投与することができる。バルプロ酸ナトリウム塩は、成人患者には一日総量約20mg/kg体重で、また、小児患者には一日総量約30mg/kg体重で投与することができる。塩酸チアガビン一水和物は、成人患者に、約15〜約70mgの間の一日総量で投与することができる。ビグラバトリンは、成人患者に、約2〜約3gの間の一日総量で投与することができる。レベチラセタムは、16歳を超える患者に、約1000〜約3000mgの間の一日総量で投与することができる。ラモトリジンは、12歳を超える患者に、約100〜約200mgの間の一日総量で投与することができる。ガバペンチンは、患者に、約900〜約2400mgの間の一日総量で投与することができる。スルチアムは、患者に、約5〜約10mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。フェルバメートは、14歳を超える患者に、約2400〜約3600mgの間の一日総量で投与することができる。トピラメートは、成人患者に、約250〜約500mgの間の一日総量で投与することができる。クロザリルは、成人患者に、約300〜約900mgの間の一日総量で投与することができる。ハロペリドールは、患者に、約2.5〜約30mgの間の一日総量で投与することができる。オランザピンは、患者に、約2.5〜約20mgの間の一日総量で投与することができる。ケチアピンは、患者に、約500〜約600mgの間の一日総量で投与することができる。リスペリドンは、患者に、約2〜約6mgの間の一日総量で投与することができる。
【0166】
さらに他の態様では、本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。このような方法は、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現と相互作用することができ、かつ/または細胞内GSHの調節に関与するタンパク質またはそのタンパク質あ結合相手と相互作用してそのタンパク質またはその結合相手の活性を変化させることができる化合物を同定するためのin vivoアッセイまたは細胞に基づくアッセイおよび/または無細胞アッセイを含む。このようなアッセイはまた、タンパク質と標的ペプチドなどのその結合相手との間の相互作用を調節する化合物を同定するためにも使用できる。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0167】
もう1個の態様によれば、このような方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患するリスクのない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。好ましくは、この細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子はGCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系遺伝子を含む。
【0168】
なおさらなる態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された活性を比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。さらにもう1個の態様では、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法は、次の、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の活性レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。好ましくは、この細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質はGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系タンパク質を含む。本発明の好ましい実施形態は、その候補薬剤がGCLMなどのGCLCに作用する薬剤であるものを提供する。最も好ましくは、この候補薬剤はGCLM、その機能的ホモログまたは誘導体である。
【0169】
本明細書において「候補薬剤」とは、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを高めるか、または少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを正常化することのできるいずれの分子もさす。この候補薬剤はタンパク質またはそのフラグメントなどの天然または合成分子、有機および無機化合物などであり得る。候補薬剤は1を超える分子を含んでいてもよく、候補薬剤のライブラリーを含んでいるのが好ましい。
【0170】
本発明のもう1個の態様は、(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成するステップ;および(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定するステップを含む、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。候補薬剤の不在下での相互作用と比べて候補薬剤の存在下でのタンパク質と結合相手の相互作用に著しい変化(増強または阻害)があれば、候補薬剤のタンパク質活性の潜在的アゴニスト(ミメティックまたは薬効因子)またはアンタゴニスト(阻害剤)を示す。このスクリーニング法に用いる成分は同時に合わせてもよいし、あるいは、タンパク質を候補薬剤と一定の時間接触させた後、その反応混合物に結合相手を添加してもよい。タンパク質とその結合相手との複合体形成はいずれの種の容器で行ってもよく、例えば、マイクロタイタープレート、マイクロ遠沈管、および試験管がある。候補薬剤の効力は、種々の濃度の薬剤を用いて用量応答曲線を作製することで評価することができる。また、対照アッセイは、候補薬剤の不在下でタンパク質とその結合相手との間の複合体形成を定量することで行うことができる。タンパク質とその結合相手との間の複合体形成は、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識したタンパク質などの検出可能なように標識したタンパク質またはその結合相手を用い、イムノアッセイまたはクロマトグラフィー検出により検出することができる。本発明ののタンパク質を特異的なマーカーで標識し、候補薬剤または候補薬剤のライブラリーを異なるマーカーで標識することができる。次に、候補薬剤とタンパク質またはそのフラグメントまたはタンパク質結合相手との相互作用を、インキュベーションおよび洗浄ステップ後に2個の標識のレベルを測定することにより検出できる。これらの2個の標識の存在は、相互作用の指標となる。分子間の相互作用はまた、光学的現象である表面プラズモン共鳴を検出するリアルタイムBIA(Biomolecular Interaction Analysis, Pharmacia Biosensor AB)を用いることで評価することもできる。検出は生物特異的な界面における高分子塊の質量濃度の変化によるものであり、分子を標識する必要はない。
【0171】
好ましい実施形態では、このタンパク質またはその結合相手は、複合体を形成していない形態のタンパク質とその結合相手から複合体の分離およびアッセイの自動化を容易にするために固定化することができる。マトリックス上にタンパク質を固定化する方法は、ビオチンとストレプトアビジンの使用を含む。例えば、このタンパク質を、周知の技術を用い、ビオチンNHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)を用いてビオチニル化し、ストレプトアビジンコーティングプレートのウェル内に固定化することができる。1個の有用な実施形態では、候補薬剤のライブラリーをセンサー表面、例えば、マイクロフルーセルの壁面に固定化することができる。次に、タンパク質、その機能的フラグメント、またはタンパク質結合相手を含有する溶液をそのセンサー表面に連続的に循環させる。シグナル記録で示される共鳴角の変化が相互作用の存在を示す。この技術はPharmaciaのBIAtechnology Handbookにさらに詳しく記載されている。
【0172】
上記のような無細胞スクリーニング法はまた、細胞内GSHレベルの調節に関与するタンパク質と相互作用し、そのタンパク質の活性を調節できる薬剤を同定するためにも使用できる。一実施形態では、このタンパク質を候補薬剤とともにインキュベートし、タンパク質の触媒活性を判定する。もう1個の実施形態では、タンパク質と標的分子の結合親和性を、当技術分野で公知の方法により判定することができる。
【0173】
本発明のもう1個の態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。
【0174】
本発明のさらにもう1個の態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血液細胞において、GCL活性のレベルおよびGSHのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血液細胞におけるGCL活性のレベルとGSHのレベルを比較するステップを含み、血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間に相関がないことが、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。本発明のさらなる実施形態は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、GGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血漿におけるGGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを比較するステップを含み、血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法である。本発明はまた、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤に投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、グルタミン酸およびシスチンのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血漿におけるグルタミン酸およびシスチンのレベルを比較するステップを含み、血漿におけるグルタミン酸とシスチンの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法も提供する。
【0175】
本発明のもう1個の態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、その精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。好ましくは、この少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型、および/または少なくとも1個の多型の組合せは上記のように定義される。
【0176】
このような方法は、細胞内GSHおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を妨げ得る化合物を同定するためのin vivoアッセイまたは細胞に基づくアッセイおよび/または無細胞アッセイを含む。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを試験物質と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その試験物質がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0177】
もう1個の態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に試験物質を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患するリスクのない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の試験物質を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その試験物質がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0178】
精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物は、GCLの阻害剤、例えば、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシイミン、BSO(Rougemont M, et al. (Journal of Neuroscience Research, 70, 774-783, 2002); Castagne, V et al. (Schizophrenia Research, 60, 105, 2003)、Cabungcal JH, et al. (Acta Neurobiologiae Experimentalis 63, 31, 2003))を用いて発症させている間に処置されるラットであり得る。あるいは、精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物は、GCLM遺伝子がノックアウトされているマウスであってもよい(Yang et al., J Biol Chem 277: 49446-49452, 2002)。
【0179】
本発明を下記の限定されない例によってさらに説明する。
【実施例】
【0180】
実施例1:GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現
繊維芽細胞培養
ヒト繊維芽細胞培養を患者の皮膚生検および非罹患対照から確立する。細胞は、37℃、5%CO2平衡空気中、2%Ultroser G(Biosepra)、100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(GibcoBRL)および1mMピルビン酸ナトリウム(Sigma)を含有する高グルコースDMEM(GibcoBRL)中で単層として増殖させる。2個の10cm径プレートで密集するまで増殖させた初代培養物を分析まで−150℃で冷凍維持する。
【0181】
遺伝子発現
3回の継代培養の後、調整した密度で繊維芽細胞培養において遺伝子発現を測定する。培養物が静止期に達したところで、0.2g/Lトリプシン−EDTA(GibcoBRL)を用いてそれらを回収し、PBSを2回洗浄する。これらの細胞の半分をRNA分析に用い、もう半分をタンパク質分析に用いる。
【0182】
全RNAを培養繊維芽細胞から、SV全RNA単離システム(Promega)を用いて精製する。RNA濃度を、RiboGreenシステム(Molecular Probes)を用いた蛍光測定法で測定する。各300ngのRNAサンプルを、TaqMan転写キット(AppliedBiosystems)と、プライマーとしてランダムヘキサマーを用いて、Mastercycler(Eppendorf)にて逆転写させる。増幅条件は次の通りである:25℃で10分間プライマーをインキュベーション、48℃で30分間逆転写、および95℃で5分間逆転写酵素を不活性化。
【0183】
遺伝子発現レベルを、Taq Man化学法とAB Prism 7000増幅装置を用いて測定する。逆転写された全RNA10ngに相当するcDNAを、特定のプライマー(表1)を用い、次の増幅条件で増幅する:50℃2分を1サイクル、95℃10分を1サイクル、95℃15秒を50サイクル、その後、60℃1分。次に、PCRフラグメントを標識プローブ(表1)で検出する。検出アッセイは全て、Applied Biosystems提供のFAM型であった。
【0184】
GAPDHを内部対照として用い(Applied Biosystems assay # 4333764T)、対照培養物からのRNAプールを参照サンプルとして用いる。結果を、AB Prism解析プログラムを用いて解析する。
【0185】
結果
患者(DSM IV判定基準)の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物において、対照対象に比べて患者ではGCLM、GSSおよびGPX1遺伝子のmRNA発現の低下がみられる(表6;数値は、外部標準として用いた健常対象(n≒50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。)
【表7】
【表8】
【0186】
GCLM mRNA発現から、対照と同等の発現レベルを有するもの(高いGCLM n=8、全患者プールの24%)とかなり低いレベルを有するもの(低いGCLM n=24、76%)の2個の部分集団が明らかである。
【0187】
さらに、患者から単離された繊維芽細胞では、GCLMとGSSの間に正の相関が見られ、低いGCLM発現レベルを有する患者はまた、低レベルのGSS発現も示す(r2=0.18;p≦0.05)(図8)。
【0188】
さらに、繊維芽細胞におけるGCLM遺伝子の発現レベルは患者の症状の臨床スコアと相関していることが分かる(図9〜12)。GCLMの低い発現レベルは陽性症状の臨床スコアと逆相関しており(図9、r2=0.33、p≦0.05)、陰性尺度の項目5および7と逆相関しており(図10および11、思考障害、SN5:r2=0.24、p=0.02;および常同思考、SN7:r2=0.16、p≦0.05)および一般精神病理尺度と逆相関している(図12、r2=0.17)。最も重篤な症状(高いスコア)を有する患者は最も低いGCLM mRNA発現を有しており、一方、より正常な発現を有するものは低い症状スコアを有している。
【0189】
実施例2:血中GSHレベル
血液の調製
前日の晩から活動条件を制限し、絶食下で午前7時〜8時半の間に静脈穿刺により患者から採血する。18〜20mlの血液を、EDTAでコーティングした氷冷Vacutainerチューブ(Becton Dickinson)に滴下し、ヘモグロビンを定量する。以下の調製は全て氷上または4℃で行う。全血のアリコートを採取し、グルタチオン(GSH)含量の分析まで−80℃で冷凍する。残りの血液を4℃にて3000g、5分間遠心分離し、血液細胞に相当するペレットを0.9%NaClで2回洗浄し、分析まで−80℃で保存する。血漿に相当する上清を回収し、アリコートを採取し、分析まで−80℃で維持する。
【0190】
グルタチオン(GSH)の測定
血液細胞、血漿または繊維芽細胞のGSHレベルを、診断キット(Calbiochem)を用いて測定する。この方法は、試薬とGSHの間で特異的に形成された色素体チオンの比色測定に基づくものである。
【0191】
結果
患者の血液細胞のGSHレベルは陽性症状の臨床スコアと逆相関しており(図13、r2=0.19、p=0.008)、すなわち、GSHレベルが低いほど、精神病理性が高い。
【0192】
実施例3:GSHレベルの調節に関与するタンパク質の活性
生化学アッセイのための繊維芽細胞の調製
繊維芽細胞培養物(実施例1に記載したように単離および培養したもの、10cm径プレート4個、密集細胞層)を3回の継代培養後に回収する。細胞をディッシュから、トリプシン処置により取り出し、洗浄し、4mlのリン酸バッファー(0.1M、pH7.4)に懸濁し、音波処理する。このホモジネートからのアリコートをGSHおよびタンパク質の測定のために−80℃で維持する。残りのホモジネートを4℃、5000gで10分間遠心分離する。上清、100μlアリコートを採取し、GSH関連酵素活性の測定に用いる。
【0193】
タンパク質の測定
繊維芽細胞のタンパク質レベルを、Advanced Protein Assay試薬とともにBioradキットを用いて測定する。
【0194】
繊維芽細胞のXc−系活性:[35S]シスチンの取り込み
Bannai S and Kitamura E (Journal of Biological Chemistry 255, 2372-2376, 1980)に記載のものに次のような修正を施し、Xc−系活性を[35S]シスチンの取り込みとして測定する。繊維芽細胞培養物(実施例1に記載したように単離および培養したもの、3.5cm径プレート3個、密集細胞層)を3回の継代培養後に用いる。0.01%CaCl2、0.01%MgCl2、0.1%グルコース、137mM NaClおよび3mM KClを含有する、予熱した(37℃)10mMリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4で細胞を3回すすぐ。すすいだ後、細胞を、予熱した1mlの取り込み媒体中で37℃で2時間インキュベートする。この取り込み媒体は、細胞のすすぎに用いたものと同じバッファーと標識シスチン(2μCi/ml、0.05mM、Amersham)からなった。氷冷リン酸緩衝生理食塩水でディッシュを3回手早くすすぐことでインキュベーションを終了させる。次に、0.5mlの0.5N水酸化ナトリウムを各ディッシュに加える。細胞を回収し、音波処理する。この溶液300μlを、1%のTriton X−100を含有するシンチレーション液3mlと混合し、放射能を測定する。この溶液のアリコートをタンパク質アッセイにも用いる。測定値は全て、±10%変動する三反復のサンプルの平均である。
【0195】
血液細胞におけるγ−グルタミルシステインリガーゼ(GCL)活性
血液細胞は実施例2に記載のように調製する。GCL活性は、Gegg et al. (Analytical Biochemistry, 304, 26-32, 2002)に記載のものに次のような修正を施して測定する:血液500μl由来の溶血血液細胞をTrisバッファー(100mM、pH8.2)にとり、分子カットオフ10kDaのフィルター(Millipore Ultrafree-MC 10000)を備えたマイクロコン遠心フィルターディバイスにて、4℃、14000gで15分間遠心分離する。このステップにより、反応を妨害するアミノ酸、補因子、小分子(GSH)が除去される。沈殿をTrisバッファー(100mM、pH8.2)にとり、60μlアリコートを、ATP(10mM)、α−アミノ酪酸(10mM、Fluka)、L−[U−14C]−グルタミン酸(10mM、比活性3MBq/mmol、Amersham)を含有するTrisバッファー溶液90μlで処理する。37℃で20分間インキュベーションした後、80%スルホサリチル酸12μlを加えることで反応を停止させる。変性したタンパク質を17.000g、6分の遠心分離で除去し、上清を濾過し(Millipore、HV、0.45μm)、その後、HPLC(Hewlett Packard model 1090クロマトグラフ)で分析する。放射性生成物14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸を、Hypersil(C18、5.0μm)を充填したHPLCカラム(125×4mm)にて、流速0.5ml/分として、40分間で移動相A(水中0.25%トリフルオロ酢酸)中、2〜80%移動相B(アセトニトリル中0.25%トリフルオロ酢酸/水(9/1、v/v))の直線勾配で分離する。放射性生成物を、HPLCとオンラインで接続したフローシンチレーションアナライザー(Canberra Packard Flow-one Beta 500)を用いて検出する。14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸は19分で溶出した。放射性生成物の定量は面積測定に基づくものである。このアッセイの特異性を評価するため、サンプルを、GCSの特異的阻害剤であるL−ブチオニン−SR−スルホキシイミン(BSO)500μMおよび10mM ATPとともに室温で5分間プレインキュベートした後、BSOの存在下で上記のようにアッセイする。
【0196】
血漿におけるγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性
GGT活性を、Sigma Diagnosticsから購入した診断キットを用いて測定する。GGTは37℃で、γ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリドから5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を触媒する。酵素活性は405nmの吸光度で測定する。
【0197】
結果
Xc−系
患者の繊維芽細胞におけるXc−系の活性(0.73ピコモル/μgタンパク質/分)は、対照対象のもの(0.63ピコモル/μgタンパク質/分;表7)よりも高い(+16%、p=0.05)。
【表9】
【0198】
GCL
低いGCLM遺伝子発現を有する患者の血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間の負の相関(図14;r2=0.30)は対照群の場合(図15)にも高いGCLM遺伝子発現を有する患者群の場合(図16)にも見られない。よって、低いGCLM発現を有する患者から単離された血液細胞では、GSHレベルの上昇を伴うGCL活性のフィードバック阻害の増強が見られる。
【0199】
GGT
対照対象から単離された血漿では、対照対象におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly;GSHのGGT分解の直接産物)レベルの間に正の相関があり(図17;r2=0.22)、これは患者には存在しない(図18;r2=0005)。Cys−Glyの濃度は下記実施例4に記載のようにして測定される。
【0200】
実施例4:アミノ酸分析
血漿におけるアミノ酸分析
血漿において次の遊離アミノ酸を、Slocum et al. (In “Techniques in diagnostic human Biochemical Genetics”. Hommes Edt. 1991, pp87-126)に記載のように定量する:タウリン(Tau)、アスパラギン酸(Asp)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シトルリン(Cit)、アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、シスチン(Cyt)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、オルニチン(Orn)、リシン(Lys)、1−CH3−ヒスチジン(1−CH3−His)、ヒスチジン(His)、3−CH3−ヒスチジン(3−CH3−His)、アルギニン(Arg)。要するに、内部標準として(S)−2−アミノエチル−l−システインおよびd−グルコサミン酸(1.25mM)を含有する血漿を、5−スルホサリチル酸により除蛋白し、分析まで−80℃で維持する。この溶液をアミノ酸アナライザー(Beckman、6300モデル;カラム リチウム、10cm、Beckman 338051)に注入し、アミノ酸をニヒドリンとのカラム後反応により検出する。
【0201】
血漿におけるチオール分析
血漿においてアミノ酸およびペプチドを含有する次のチオールを、Jacobsen et al. (Gen Clin Chim, 873-881, 1994)に記載のように定量する:システイン(全部、すなわち、還元型のものと酸化型のもの)、ホモシステインおよびシステイニル−グリシン。要するに、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンとの反応により、チオールを還元および/またはペプチドから解離させる。過塩素酸により除蛋白した後、チオールを7−フルオロベンゾフラザン−4−スルホン酸(SBD−F)で誘導体化する。このSBD−F誘導体を次に、HPLC、その後の蛍光検出により分析する。
【0202】
結果
システインはグルタチオンの律速前駆体であり、ホモシステインは、システインの形成をもたらす必須アミノ酸であるメチオニン代謝に関連している。分析した28個のアミノ酸のうち、システイン(Cys、全レベル)、およびホモシステイン(Hcys)の血漿レベルは、対照(n=51:マイクロモル/L Cys 252.0±44.4;Hcys:8.2±2.3)に比べて患者全群(n=37;マイクロモル/L Cys 272.0±41.5;Hcys:10.0±3.6)で高い(それぞれ、+8.0%、p=0.02、および+22.6%、p=0.01)(表8)。低いGCLM mRNAを有する患者のサブグループ(n=25)でも、システインおよびホモシステインレベルは対照よりもやはり有意に高い(それぞれ、+12%、p=0.03および+33%、p=0.02)。
【表10】
【表11】
【0203】
さらに、シスチンとグルタミン酸の血漿レベルは、対照対象では正の相関があるが(図19、r2=0.28)、低いGCLM遺伝子発現を有する患者のサブグループでは、この相関は無効になる(図20、r2=0.002)と見られる。
【0204】
実施例5:
グルタチオン関連遺伝子における多型と統合失調症との関連
緒論
統合失調症患者と対照群の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物を用いたグルタチオン代謝に関与する12個の遺伝子の遺伝子発現研究は、GSH合成に直接関与する2個の遺伝子、すなわち、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)とグルタチオンシンセターゼ(GSS)に有意な低下を示す。これら2個の遺伝子に対応するmRNAレベルのこのような低下がこれらの遺伝子自体の違いによるものか、あるいは後成的因子によるものかを調べるために、発現研究に用いた対象を全て遺伝子型分析し、これらの遺伝子に関して知られている多型について関連研究を行った。目的としては、候補遺伝子の特定の対立遺伝子/ハプロタイプと疾病の間で可能性のある関連を検出することであった。
【0205】
公開データベースSNP Consortium http://snp.cshl.orgおよびNCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov.から16個の一塩基多型(SNP)を選択した。NCBIにより注釈されたSNP番号、それらの選択的対立遺伝子ならびにそれらの位置および遺伝子開始点からの距離を表9に示す。SNPの位置は適当なコンティグのNCBI図示に見られる情報に基づくものである。
【表12】
【0206】
GCLM遺伝子に対応する7個のSNPおよびGSS遺伝子に対する9個のSNPに関して関連研究を行った。これらの遺伝子は、対照よりも患者で発現が低い。また、GCLMとヘテロ二重らせんを形成して律速酵素グルタミン酸−システインシンセターゼ(GCL)を生じるペプチド、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)に関する1個のSNPも含んだ。
【0207】
方法
遺伝子型分析
47人の患者と115人の対照から得られた末梢血から、Nucleon BACCキット(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてDNAを精製した。16個の一塩基多型(SNP)の遺伝子型分析を、MALDI−TOF質量分析を用いたMethexis Genomics(Gent, Belgium)により行った。
【0208】
鋳型増幅
ゲノム抽出の後、対象とするSNP部位を含む5ngのゲノムDNAを、384マイクロタイタープレート形式を用いて5μl量で増幅した。ホッキョクエビアルカリ性ホスファターゼをサンプルに加え、これを37℃で20分間インキュベートした。これは残っている増幅ヌクレオチドを脱リン酸化し、それらのその後の組み込み、およびプライマー伸張アッセイの妨害を防いだ。MassEXTENDプライマー、DNAポリメラーゼ、およびデオキシヌクレオチド(dNTP)とジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)のカクテル混合物を加え、hMEプライマー伸張反応を開始した。この反応は、元のMassEXTENDプライマーより通常1〜4塩基長い対立遺伝子特異的プライマー伸長産物を生成した。両対立遺伝子を認識する共通MassEXTENDプライマーはその多型部位に直接または隣接してハイブリダイズした。全ての可能性のあるMassEXTEND産物の質量差が最大となるようにヌクレオチド混合物を選択した。1個のddNTPが組み込まれるまで適当なdNTPを多型部位に組み込み、反応を終了した。
【0209】
終結点とヌクレオチド数は配列特異的であるので、生じた伸張産物の質量を用いて、誤りなく可能性のある変異体を同定することができた。この伸張反応の後、MassEXTENDクリーンレジンを反応物に加え、MALDI−TOF分析を妨害する外来の塩を除去した。次に、384マイクロタイタープレートからサンプル15μlを取り出し、384−SpectroCHIP(商標)バイオアレイのパッド上にスポットした。このSpectroCHIPをMALDI−TOFに入れ、MassARRAY RT(商標)ソフトウエアを用い、リアルタイムで質量および相関する遺伝子型を判定した。
【0210】
結果
個々のSNP分析
各遺伝子それぞれについて、個々のマーカー遺伝子型の関連を調べた。疾病条件の変数(過大な分散またはゼロ分散を有するSNP遺伝子型結果)を除いた後、発明者らは、遺伝子GCLMにおけるSNPの極めて有意な共同効果と、遺伝子GSSにおけるほぼ有意な結果を見出した(表10)。遺伝子GCLCでは、有意に近い結果は得られなかった(p>>0.05)。
【表13】
【0211】
遺伝子GSSのSNP rs3761144を除き、明らかに個々の各SNPはその固有の効果の大部分を発揮しなかったが、少なくとも遺伝子GCLMに関しては、SNPの共同効果は強く、そのSNP rs2235971、rs3170633、rs769211、およびrs2301022の共同効果は極めて有意であった(p=0.0009)。
【0212】
他の変数(年齢、性別および遺伝子発現レベル)と組み合わせたGCLM SNPに関するロジスティック回帰分析によれば、疾病結果に対するそれらの高い共同効果が示された(p=0.0006)。最大の結果(p=0.0009)はSNP rs3170633で得られた(表11)。
【表14】
7 df Chi-sq p値=0.000611
【0213】
各SNPそれぞれに関する、他の変数と組み合わせた回帰分析によれば、発現レベルとSNP遺伝子型だけが疾病結果を有意に推定することが示された。これは全てのSNPについてそうであり、p<0.05であった。ここでも、最大の効果はSNP rs3170633で見られた(表12)。
【表15】
【0214】
遺伝子GSSに関しては、発現レベルだけが、一般に十分な0.05以下のp値で、結果に対する推定効果を示したが、3個全ての変数を入力した回帰分析では、いずれのSNPについても有意性はなかった。最良の結果(p=0.0578)はSNP rs3761144で得られ、遺伝子GSSの発現レベルの効果に関してはp=0.0133であった。しかし、多重検定を補正すると、これらの結果は有意ではない。
【0215】
SNPを1個ずつ独立に分析したところ、遺伝子GCLMのSNP rs3170633で最大の効果が見られた(p=0.0037)(表13)。遺伝子型GGを他の2個の遺伝子型を合わせたものと比較したところ、GGはオッズ比(OR)2.95(95%限界1.34、6.47)とで関連していた。すなわち、GG遺伝子型を有する個体は、他の個体よりも罹患リスクがおよそ3倍高い。
【表16】
【0216】
ハプロタイプ分析
遺伝子型分析の有意または有意に近い結果に基づき、遺伝子GCLMとGSSに関してハプロタイプ分析を行った。表14に示すように、発明者らは、これら2個の遺伝子の各々について同数の一般ハプロタイプを得た。遺伝子GCLM(p=0.0228)およびGSS(p=0.0004)に関して患者と対照個体の間で、ハプロタイプ頻度の有意な違いがあった。最大の効果を持つカプロタイプは、遺伝子GCLMではGGGA(OR=2.19)であり、遺伝子GSSではTGAGG(OR=1.69)およびCTCGC(OR=1.58)であった。
【表17】
【0217】
遺伝子GCLM(p=0.0228)およびGSS(p=0.0004)に関して、最も多いハプロタイプの頻度は、患者と対照個体の間で有意に異なっていた。最大の効果を有するハプロタイプは、遺伝子GCLMではGGGA(OR=2.19)であり、遺伝子GSSではTGAGG(OR=1.69)およびCTCGC(OR=1.58)であった。
【0218】
遺伝子GCLMとGSSを合わせて、9個のSNPに関してハプロタイプを評価したところ、この2群の個体間でハプロタイプ頻度は有意に異なっていた(p=0.000062)(詳細な結果は示されていない)。最大の効果を有するハプロタイプは、GGGA−CTCGC(OR=4.04;さらに3個のハプロタイプが2を超えるORを示した)であった。この2成分ハプロタイプの独立作用に関して、推定オッズ比は2.19×1.58=3.46であり、すなわち、この合わせたハプロタイプは推定されるものより大きな効果を有している。しかし、近似分析(示されていない)では、このORの上昇は統計学的に有意でないことから、この2成分ハプロタイプは罹患リスクに独立に寄与することが示された。
【0219】
表10でOR>1.50のハプロタイプに関しては、ハプロタイプが同型接合状態で存在する場合であると確実に認識できることから、発明者らは、同型接合性である個体と他のハプロタイプを有する個体の割合を求めた(表15)。明らかに、ハプロタイプGGGAおよびTGAGGが同型接合状態にある場合(ジプロタイプと呼ばれることがある)のみに比較的大きな効果が現れたが、これらの効果は、かろうじて有意でしかない。
【表18】
最後の行は、合計または示されたORに関するp値を示す。
【0220】
推定
疾病にのみ関連するSNP遺伝子型に基づく推定はあまり十分なものではない(表16)。これはおそらく疾病に影響する他の種々の因子によるものであろう。検出力(感受性)は50%を超えず、特異性は80%そこそこか、それより低い。しかしながらやはり、補正推定の総合確率によって判断されるように、遺伝子型は、無作為推定の50%から同型接合状態のハプロタイプのいくつかについての73%まで、推定の成功を高める傾向にある。よって、これらのパラメーターは、これら2個の遺伝子に関連しない他の因子が合わさったものではあるが、疾病結果の推定に極めて有用である可能性がある。
【表19】
【0221】
本研究では、少なくとも2個の遺伝子GCLMとGSSの特定の遺伝子組合せが疾病に強く関連し、病態の推定因子として、他の判定基準と組み合わせて使用できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】GCLM(NP_002052.1;配列番号10)、GSS(NP_000169.1;配列番号11)、GPX1(配列番号12)およびXc−系(xCT)(配列番号13)のアミノ酸配列を示す。
【図2】GCLMの核酸配列(配列番号14)を示す。
【図3】GSSの核酸配列(配列番号15)を示す。
【図4】GPX1の核酸配列(配列番号16)を示す。
【図5】Xc−系(xCT)の核酸配列(配列番号17)を示す。
【図6】GCLM:NT_028050、9380597〜9403950番の核酸配列(配列番号18)を示す。
【図7】GSS:NT_028392、1352038〜1381802番の核酸配列(配列番号19)を示す。
【図8】GCLM遺伝子発現の低い患者から単離された繊維芽細胞におけるGCLM mRNAレベルとGSS mRNAレベルの間の正の相関を示す図である。示されているmRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。
【図9】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陽性症状の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。陽性症状スコアは、Kay et al. (Kay SR, Opler LA, Fiszbein A, 1986, Positive and negative syndrome sycale (PANSS) manual Multi-Health Systems, Inc, New York)に従って評価したものである。
【図10】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN5の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図11】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN7の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図12】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと一般精神病理の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。一般精神病理スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図13】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおける血液細胞の[GSH]レベルと陽性症状の負の相関を示す図である。[GSH]レベルはμmol/mlで示す。陽性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図14】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の負の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定したGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定した[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図15】対照対象から単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図16】GCLM遺伝子発現の高い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図17】対照対象から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間の正の相関を示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
【図18】患者から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間に相関がないことを示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
【図19】対照対象から単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間の正の相関を示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【図20】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間に相関がないことを示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、統合失調症などの精神障害に関連する神経学的、生理学的および精神病的機能障害、またはその疾病素因の分野に関する。本発明はさらに、それらの正常な発現または活性が変化した場合に精神障害に関連する遺伝子およびタンパク質に関する。本発明はさらに、それらの核酸配列が変化した場合に前記精神障害に関連する遺伝子に関する。よって、本発明は、精神障害の診断方法ならびに予防および/または処置方法に関する。本発明はその上に、精神障害の診断に用いるための組成物および診断用キットに関する。本発明はまた、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的としたタンパク質またはポリヌクレオチドの使用、および精神障害の予防および/または処置に用いるための医薬組成物に関する。さらに本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明は、ヒトにおいて、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための方法、組成物およびキット、マイクロアレイならびに試薬に関する。さらに本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための医薬組成物、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子に特定の多型を有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした、タンパク質またはポリヌクレオチドなどの有効成分の使用に関する。本発明はまた、該多型を有する患者に薬剤を投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法、ならびに精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0003】
精神障害は患者、その家族、ひいては社会全体に多大な感情的および経済的被害をもたらす。統合失調症、情動障害、パニック障害もしくは人格障害、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病などの精神障害は、世界の大きな割合のあらゆる人々を苦しめる、病因がはっきりしていない複雑で一様でない疾病である。
【0004】
例えば、統合失調症は、「陽性症状」(妄想、幻覚、思考障害、言動の錯乱)と「陰性症状」(引きこもり、会話貧困、感情鈍麻などのような認識力および社会適応力の欠如)に分類上二分される一連の症状を特徴とする内因性の精神障害である。生涯罹患率は、一般集団において0.85%である。
【0005】
神経伝達物質ドーパミンの異常な活性が統合失調症の1個の顕著な特徴である。長年にわたって、統合失調症は、古典的抗精神病薬、すなわち、例えばフェノチアジン類、ブチロフェノン類およびチオキサンテン類を含む神経抑制薬で処置されてきた。これらの薬物の、ドーパミン受容体に拮抗する能力は、それらの抗精神病薬効力と相関している。これらの神経抑制薬は統合失調症の陽性症状の処置には有効であるが、陰性症状に対してはほとんど、または全く効果はない。
【0006】
精神障害の処置の進展は、新たな非定型抗精神病薬の導入によって達成された。非定型抗精神病薬は、受容体結合特性が異なり、統合失調症の症状に対して有効性を有する異なるクラスの抗精神病薬である。非定型抗精神病薬は、D2ドーパミン受容体の他、中枢セロトニン2(5−HT2)受容体と結合する。神経抑制薬とは異なり、それらはまた、陽性症状だけでなく陰性症状もそこそこ改善する。それらが引き起こす錐体外路系症状は最小限であり、遅発性運動障害、静座不能、または急性筋失調反応を引き起こすこともまれである。統合失調症の処置に認可された最初の非定型抗精神病薬はクロザピンであった。クロザピンは、特に従来の神経抑制薬療法には応答しない対象に対する統合失調症の処置に有効である。
【0007】
抗精神病薬による精神障害の処置は何年にもわたって着々と改善されたが、統合失調症の原因はまだ理解されていない。最近、統合失調症における抗酸化物質防御の傷害と酸化損傷の増加を裏付ける証拠が増えてきている。グルタチオン(GSH)は主要な細胞内非タンパク質性チオールであり、求核性スカベンジャーおよび酵素により触媒される抗酸化剤として知られている。統合失調症ではグルタチオンが枯渇しているという報告が見られる。
【0008】
精神障害の基礎にある分子機構を確認することで、臨床上重要な多くの適用が生み出される疾病過程についての基礎的理解が得られる。従って、統合失調症の素因、発症および/または進行に関与する、またはその原因となる遺伝子および/またはタンパク質を同定する必要がある。このような遺伝子および/またはタンパク質が同定されれば、副作用が最小限の新たな治療法、診断法、および/または精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法の開発につながるであろう。
【0009】
本発明者らは、今般、統合失調症に罹患している患者では、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子の発現およびタンパク質の活性、ならびにアミノ酸の血漿レベルが摂動するということを初めて示す。統合失調症患者および対照群の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物を用いた、グルタチオン代謝に関与する12個の遺伝子に関する遺伝子発現研究で、GSH合成に直接関与する2個の遺伝子、すなわち、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)とグルタチオンシンセターゼ(GSS)に有意な低下が示された。この知見から、これら2個の遺伝子に対応するmRNAのレベルの低下がこれらの遺伝子自体の違いによるものか、あるいは後成的因子によるものかという疑問が生じる。このような疑問に答えるのに有力なアプローチは、グルタチオン関連遺伝子および統合失調症における多型の間に存在し得る関係を検出すべく関連解析を行うことである。
【0010】
しかしながら今日までに、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子における多型で、統合失調症に明白かつ有意な関連を持つものは同定レス関連遺伝子発現の調節に関与する、従って、統合失調症の素因および/または進行に関与する、またはその原因となる遺伝子の同定を確認する必要もある。このように同定が確認されれば、副作用が最小限の新たな治療法、診断法、および/または精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法の開発につながるであろう。
【0011】
さらに、本研究では上述の発現研究で用いた対象の全てに対して遺伝子型分析を行い、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する遺伝子の多型に関する関連研究を行った。驚くことに、統合失調症と明確で統計学的に有意な関連を有するグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)遺伝子およびグルタチオン合成(GSS)遺伝子の特定の対立遺伝子/ハプロタイプが同定された。
【発明の開示】
【0012】
発明の概要
第1の態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法を提供する。細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子は、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、好ましくは、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、好ましくは、GPX1および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)をコードする遺伝子を含む。もう1つの態様では、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む精神障害の診断方法を提供する。本発明によれば、該タンパク質はGCL、好ましくは、GCL触媒サブユニット(GCLC)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系を含む。本発明のもう1個の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法に関する。本発明の別の態様は、細胞内GSHレベルの判定を含む、精神障害の診断方法に関する。本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法に関し、その方法は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型はその精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0013】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物を包含する。本発明の別の態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物が提供される。本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物である。本発明の別の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物を提供する。
【0014】
本発明の他の態様は、精神障害の診断用キットを提供する。本発明の一態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む。さらなる態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む。さらに別の態様では、精神障害の診断用キットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む。さらなる態様では、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含むキットが提供される。
【0015】
本発明のなおさらなる態様は、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーまたはプローブを含み、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断組成物または診断用キットに関する。
【0016】
さらなる態様において、本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1個以上のタンパク質の使用を対象とし、ここで、その1個以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。本発明のもう1個の態様は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用を包含する。本発明によれば、この1以上のポリヌクレオチドは、上記で定義される1以上のタンパク質をコードする配列を含み、その配列は組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている。
【0017】
本発明のもう1つの態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、上記で定義される1以上の有効成分の使用を包含する。
【0018】
本発明のなおさらなる態様では、この有効成分は、(a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および(c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。本発明のもう1個の態様では、この有効成分は、上記で定義されるタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。さらなる態様では、この有効成分はGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である。
【0019】
本発明のさらなる態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用に関する。
【0020】
本発明のさらにもう1つの態様は、上記で定義される1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドと医薬上許容される担体とを含む、精神障害の予防および/または処置に用いるための医薬組成物である。
【0021】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0022】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのマイクロアレイに関し、そのマイクロアレイは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0023】
本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とし、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーおよび/もしくはプローブまたはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せである。
【0024】
本発明のなおさらなる態様は、有効量の1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドを、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法を提供する。一態様は、その1以上のタンパク質が、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される、このような方法を提供する。さらにもう1個の態様では、該有効量の1以上のポリヌクレオチドは、上記で定義されたタンパク質をコードし、組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている配列を含む。さらなる態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を対象とする。本発明のなおさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法である。本発明のさらにもう1つの態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法である。
【0025】
本発明のさらなる態様は、精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。
【0026】
さらに他の態様において、本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法を包含する。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較することを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。別の態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。なおさらなる態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;および(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された活性を比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。さらにもう1個の態様では、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、次のステップ:(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与すること;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;および(d)ステップ(c)の活性レベルを比較することを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す。なおさらなる態様は、(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成するステップ;および(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定するステップを含む、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。本発明のなおさらなる態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。最後に、本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、前記精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。
【0027】
本発明の他の目的、特徴、利点および態様は、当業者には下記の説明から明らかとなる。しかし、下記の説明および具体例は本発明の好ましい実施形態を示すものであって、単に例として示されるものであると理解すべきである。下記の説明を読み、また、本開示の他の部分を読めば、当業者には、開示されている発明の精神および範囲内の種々の変更および改変が容易に分かるであろう。
【0028】
図面の簡単な説明
図1 GCLM(NP_002052.1;配列番号10)、GSS(NP_000169.1;配列番号11)、GPX1(配列番号12)およびXc−系(xCT)(配列番号13)のアミノ酸配列を示す。
図2 GCLMの核酸配列(配列番号14)を示す。
図3 GSSの核酸配列(配列番号15)を示す。
図4 GPX1の核酸配列(配列番号16)を示す。
図5 Xc−系(xCT)の核酸配列(配列番号17)を示す。
図6 GCLM:NT_028050、9380597〜9403950番の核酸配列(配列番号18)を示す。
図7 GSS:NT_028392、1352038〜1381802番の核酸配列(配列番号19)を示す。
図8 GCLM遺伝子発現の低い患者から単離された繊維芽細胞におけるGCLM mRNAレベルとGSS mRNAレベルの間の正の相関を示す図である。示されているmRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。
図9 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陽性症状の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。陽性症状スコアは、Kay et al. (Kay SR, Opler LA, Fiszbein A, 1986, Positive and negative syndrome sycale (PANSS) manual Multi-Health Systems, Inc, New York)に従って評価したものである。
図10 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN5の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図11 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN7の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図12 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと一般精神病理の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。一般精神病理スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図13 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおける血液細胞の[GSH]レベルと陽性症状の負の相関を示す図である。[GSH]レベルはμmol/mlで示す。陽性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
図14 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の負の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定したGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定した[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図15 対照対象から単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図16 GCLM遺伝子発現の高い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
図17 対照対象から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間の正の相関を示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
図18 患者から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間に相関がないことを示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
図19 対照対象から単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間の正の相関を示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
図20 GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間に相関がないことを示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【0029】
発明の説明
本明細書に挙げられている特許出願、特許および参照文献は全て、出典明示によりそのまま本明細書の一部とされる。
【0030】
本発明の実施においては、分子生物学、微生物学、および組換えDNAにおける多くの常法が用いられる。これらの技術は周知のものであり、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I, II, and III, 1997 (F. M. Ausubel ed.); Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.; DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II, 1985 (D. N. Glover ed.); Oligonucleotide Synthesis, 1984 (M. L. Gait ed.); Nucleic Acid Hybridization, 1985, (Hames and Higgins); Transcription and Translation, 1984 (Hames and Higgins eds.); Animal Cell Culture, 1986 (R. I. Freshney ed.); Immobilized Cells and Enzymes, 1986 (IRL Press); Perbal, 1984, A Practical Guide to Molecular Cloning; the series, Methods in Enzymology (Academic Press, Inc.); Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells, 1987 (J. H. Miller and M. P. Calos eds., Cold Spring Harbor Laboratory);およびMethods in Enzymology Vol. 154 and Vol. 155 (それぞれWu and Grossman, and Wu, eds.)に解説されている。
【0031】
本発明は、統合失調症などの精神障害に罹患している対象において低レベルで発現される遺伝子の同定に関する。本発明はまた、健常な対象または対象集団と比較した場合に、精神障害に罹患している患者において活性が変化しているタンパク質の同定に関する。
【0032】
それらの低い発現および/または活性の変化によって、これらの遺伝子またはタンパク質は、診断、疾病の予防および処置、疾病または障害のモジュレーターのスクリーニング、すなわち、本発明の遺伝子またはタンパク質のアゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニング、および/または、限定されるものではないが、統合失調症(統合失調症様障害または分裂情動障害など)、情動障害(大鬱病、双極性障害、気分障害、行為障害、トゥーレット障害またはチック障害など)、精神作用物質使用による障害(アルコール禁断症候群など)、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害;および衝動制御障害、精神病(薬剤性または認知症性精神病)、注意欠陥多動障害(ADHD)、ならびに躁鬱病または精神病性鬱病を含む精神障害に罹患している、または罹患するリスクのある対象の処置後追跡調査に利用可能である。
【0033】
発現パターンに変化がある本発明の遺伝子としては、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する遺伝子が挙げられ、グルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、好ましくは、GCL調節サブユニット(GCLM)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、好ましくは、GPX1および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)をコードする遺伝子を含む。活性に変化がある本発明のタンパク質としては、GCL、好ましくは、GCL触媒サブユニット(GCLC)、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系が挙げられる。
【0034】
少なくとも1個の遺伝子またはタンパク質のいずれの選択を精神障害のマーカー/診断薬、治療薬および/または治療標的として用いてもよい。特に有用な実施形態では、これらの遺伝子および/またはタンパク質の少なくとも2個、3個、4個または5個を選択することができ、それらの発現および/または活性を逐次または同時にモニタリングして、種々の態様に用いるための発現および/または活性プロフィールを得ることができる。例えば、これら遺伝子の発現プロフィールおよび/またはタンパク質の活性プロフィールは、精神障害の素因、重篤度および/または進行を迅速に診断およびモニタリングするための有用な分子ツールを提供する。基準プロフィールからの発現および/または活性プロフィールの変化はさらに、薬物効力を評価するための指標としても使用できる。
【0035】
さらに、本発明はまた、精神障害に罹患している患者において、GSHレベルの摂動および/またはアミノ酸および/またはアミノ酸誘導体の血漿レベルの変化の同定に関する。本明細書において「アミノ酸」とは、限定されるものではないが、天然アミノ酸、アミノ酸誘導体、その同族体、類似体、またはその化学等価体、例えば、ホスホトレオニン、ホスホセリン、ホモシステイン(homocsysteine)、ホモシスチン、ホモセリン、グリシルグリシン、ジメチルグリシン、N−アセチル−グルタミン酸、セレノシステイン、シスチン、アロレオニンを含み、また、2個、または3個のアミノ酸からなる分子、例えば、システイニルグリシンまたはγ−グルタミルシステイニルグリシンも含む。本発明は特に、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルの変化および/または相関の同定に関する。
【0036】
好ましくは血中のGSHレベルの判定は、単独で、あるいは、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンなどの少なくとも1個のアミノ酸またはアミノ酸誘導体の血漿レベルの各々単独の判定と組み合わせて、上記のような遺伝子発現および/またはタンパク質活性のモニタリングの逐次もしくは同時実施とともに、本発明の種々の態様において使用可能である。
【0037】
よって、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法を提供する。このような方法は、対象の疾病素因、すなわち、統合失調症などの精神障害に罹患する対象のリスクを推定することを含む。それはまた、対象において精神障害の進行をモニタリングする方法も含む。さらに、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象を予防または処置する方法も含む。さらにまた、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象の処置に有用な薬剤の同定方法、および統合失調症などの精神障害に対する特定の薬物処置の有効性をモニタリングする方法も含まれる。
【0038】
この精神障害の診断方法は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む。GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCTをコードする遺伝子から選択される少なくとも1個の遺伝子のいずれの選択を精神障害のマーカーとして用いてもよい。特に有用な実施形態では、これら遺伝子の少なくとも2個、または3個を選択し、それらの発現を逐次または同時に測定またはモニタリングすればよい。好ましくは、GCLMとGSS、GSSとGPX1、またはGCLMとGPX1の発現レベルが判定される。最も好ましくは、GCLM、GSSおよびGPX1の発現が判定される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、この方法は、ある対象に関して判定された発現レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルと比較することをさらに含み、20%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、発現レベルにおける少なくとも約22、25、30、35、40、45、50、55、60%の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。最も好ましくは、発現の低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0040】
本発明の別の態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質またはそのフラグメントの活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法が提供される。GCL、好ましくは、GCLC、GGTおよびXc−系、好ましくは、xCTから選択される少なくとも1個のタンパク質またはタンパク質フラグメントのいずれの選択を、精神障害のマーカーとして用いてもよい。特に有用な実施形態では、GCLとGGT、またはGCLとXc−系、またはGGTとXc−系の活性が測定できる。最も好ましくは、GCL、GGTおよびXc−系の活性が測定される。好ましい一実施形態では、この方法は、ある対象に関して判定されたタンパク質またはそのフラグメントの活性レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当するタンパク質の活性レベルと比較することをさらに含み、10%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、活性レベルにおける少なくとも約12、15、20、22、25、30、35、40、45、または50%の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0041】
本発明の別の態様は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法に関する。シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルの判定が特に好ましい。もう1個の好ましい実施形態では、この方法は、ある対象のシステインおよび/またはホモシステインなどのアミノ酸の血漿レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団のレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、システインおよび/またはホモシステインの量における少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%、あるいはそれ以上の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。最も好ましくは、システインおよび/またはホモシステインの血漿レベルにおける増加が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0042】
本発明のもう1個の態様は、細胞内GSHレベルの判定を含む精神障害の診断方法に関する。脳細胞または血液細胞におけるGSHレベルの判定が特に好ましい。もう1個の好ましい実施形態では、この方法は、ある対象のGSHレベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団のGSHレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、GSHレベルにおける少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%、あるいはそれ以上の違いが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0043】
本発明の方法はin vivo、in vitroまたはex vivoで実施可能である。細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現レベルおよび/またはタンパク質の活性レベルおよび/または少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベル、および/または細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を、診断しようとする対象から採取した生体サンプルにおいて判定することができる。このような生体サンプルとしては、血液サンプルまたは組織サンプルが挙げられる。好適な組織サンプルとしては、全血、精液、唾液、涙、尿、糞便、汗、頬側塗抹、皮膚、ならびに筋肉、脳または神経組織などの特定臓器の組織、および毛髪が挙げられる。最も好ましくは、好適な組織サンプルは血液を含む。組織サンプルはまた、このような生体サンプルから単離された細胞および細胞種を含む。最も好ましくは、好適な組織サンプルは繊維芽細胞またはニューロンを含む。本発明の最も好ましい実施形態によれば、本発明に従う遺伝子またはタンパク質の発現レベルまたは活性レベルを判定するための生体サンプルは、単離された、または好ましくは培養単離された繊維芽細胞を含み;GCLの活性など、本発明に従うタンパク質の活性を判定するため、またはGSHレベルを判定するための生体サンプルは血液細胞を含み;シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンなどのアミノ酸のレベルを判定するための、またはGGTの活性などのタンパク質の活性レベルを判定するための生体サンプルは血漿を含む。
【0044】
生体サンプルは、対象、ヒトまたは動物から、既知の外科的方法、例えば、外科的切除または穿刺生検によって得ることができる。精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られたサンプルは、その対象から得られたサンプルに対して用いるものと同じアプローチを用いて判定され、診断しようとする対象から得たサンプルと同時に得てもよいし、あるいは、予め確立した対照であってもよい。
【0045】
本発明の方法においては、精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがある対象から得られた遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルを判定した値は、精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られた遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルと統計学的に有意な量で異なっていることが好ましい。好ましい実施形態では、遺伝子の発現レベル、タンパク質の活性、アミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルにおける少なくとも約5%の違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。好ましくは、この違いは、少なくとも約6、8、10、15、20、25、30、35、40、45または50%である。
【0046】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルは、その遺伝子の転写レベルを測定することで検出することができる。遺伝子の転写レベルを測定する方法は、mRNAのレベルを測定することを含む。RNAは例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Vol. 1, pp.4.1.1-4.2.9 and 4.5.1-4.5.3, John Wiley & Sons, Inc. (1996)に記載されているような、当業者に周知の方法によりサンプルから単離することができる。転写レベルを測定する方法は当技術分野で周知のものであり、通常、少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドと転写産物であるmRNAとのハイブリダイゼーションを含む。このような方法としては、限定されるものではないが、ノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNアーゼ保護およびマイクロアレイ分析、ならびに他のハイブリダイゼーション法が挙げられる。
【0047】
このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、本発明の上記遺伝子の相補的転写物とのみ特異的にハイブリダイズするに十分な長さであることが好ましい。本明細書において「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」とは、一本鎖核酸をさす。一般に、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは少なくとも16〜20ヌクレオチド長であるが、少なくとも20〜25ヌクレオチド長といったより長いプローブが望ましい場合もある。このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、ハイブリダイズしたプローブ/標的ポリヌクレオチド複合体の検出を可能とするため、1以上の標識部分で標識することができる。標識部分は、分光的手段、生化学的手段、光化学的手段、生体電子工学的手段、免疫化学的手段、電気光学的手段、または化学的手段によって検出可能な組成物を含み得る。標識部分の例としては、限定されるものではないが、放射性同位元素、例えば、32P、33P、35S、化学発光化合物、標識結合タンパク質、重金属原子、蛍光マーカーや色素などの分光マーカー、結合酵素、質量分析タグ、および磁気標識が挙げられる。
【0048】
複数の遺伝子から得られたmRNA転写物のレベルを検出するために特に有用な方法は、標識mRNAとオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの規則正しいアレイとのハイブリダイゼーションを含む。一般に、このハイブリダイゼーション法で用いるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは固相支持体に結合されている。固相支持体の例としては、限定されるものではないが、メンブラン、フィルター、スライド、ペーパー、ナイロン、ウエハー、ファイバー、磁性または非磁性ビーズ、ゲル、チューブ、ポリマー、ポリ塩化ビニルディッシュなどが挙げられる。オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを、直接的または間接的のいずれか、また、共有結合的または非共有結合的のいずれかで結合させることができる固相表面はいずれのものでも使用可能である。発現のモニタリングのためのこのようなプローブアレイは、例えば、Lockhart et al., Nature Biotechnology, Vol. 14, pp. 1675-1680 (1996); McGall et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 93, pp. 13555-13460 (1996);および米国特許第6,040,138号に記載されているような当業者に周知の技術に従って作製および使用できる。このような方法により、複数の遺伝子の転写レベルを同時に測定して遺伝子発現プロフィールまたはパターンを作製することができる。この対象から得られた生体サンプルから導き出された遺伝子発現プロフィールを、精神障害に罹患していない対象または対象集団から得られたサンプルから導き出された遺伝子発現プロフィールと比較することができる。それにより、その対象が統合失調症などの精神障害に罹患しているかどうか、または罹患するリスクがあるかどうかを判定することができる。本発明の好ましい実施形態によれば、この発現レベルは、表1に記載されているような少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを用いることで判定される。GCLM転写物のレベルは、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)の使用により、および所望により、さらに配列番号1のプローブの使用により判定され、GSS転写物のレベルは、配列番号3および/または4のプライマーの使用により、および所望により、配列番号2のプローブの使用により判定され、GPX1転写物のレベルは、配列番号6および/または7のプライマーの使用により、および所望により、配列番号5のプローブの使用により判定され、Xc−系4F2転写物のレベルは、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)の使用により、および所望により、さらに配列番号8のプローブの使用により判定され、そして、Xc−系xCT転写物のレベルは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、さらに配列番号9のプローブの使用により判定されることが好ましい。
【表1】
【0049】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、発現レベルは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子によるタンパク質レベルを測定することにより判定することができる。少なくとも1個のタンパク質またはタンパク質のフラグメント、例えば触媒ドメインの発現は、検出できるように標識されているか、またはその後に標識可能なプローブによって検出することができる。一般にこのプローブは、発現したタンパク質を認識できる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントであってもよい。本明細書において、「抗体」とは、限定されるものではないが、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化またはキメラ抗体、およびその抗体フラグメントとタンパク質またはタンパク質フラグメントとの結合に十分なフラグメントである、生物機能のある抗体フラグメントが挙げられる。好ましくは、本発明の実施形態においては、Biodesign International (# K90097C)からのGPX1抗体およびSanta Cruz Biotechnology (# sc-15092)からのGSS抗体が使用される。
【0050】
開示されている遺伝子の1個によりコードされているタンパク質またはそのタンパク質のフラグメントに対する抗体を作製するためには、ポリペプチドまたはその一部を注射することにより種々の宿主動物を免疫化すればよい。このような宿主動物としては、限定されるものではないが、いくつか挙げれば、ウサギ、マウスおよびラットがある。限定されるものではないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、鉱物ゲル(例えば、水酸化アルミニウム)、界面活性物質(例えば、リソレシチン)、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン、ジニトロフェノール、および有用な可能性のあるヒトアジュバント(例えば、BCG(カルメット−ゲラン菌、bacille Calmette-Guerin)およびコリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum))をはじめ、宿主の種に応じて免疫応答を高めるために種々のアジュバントを使用することができる。ポリクローナル抗体は、標的遺伝子産物などの抗原または抗原機能のあるその誘導体で免疫化した動物の血清に由来する抗体分子の異種集団である。ポリクローナル抗体を製造するためには、上記のものなどの宿主動物を、同じく上記のようなアジュバントを補ったコードタンパク質またはその一部を注射することで、免疫化すればよい。
【0051】
特定抗原に対する抗体の均質集団であるモノクローナル抗体(mAb)は、連続的な培養細胞系統による抗体分子の生産をもたらす技術により得ることができる。これらの例としては、限定されるものではないが、KohlerおよびMilsteinのハイブリドーマ技術(Nature, Vol. 256, pp. 495-497 (1975);および米国特許第4,376,110号)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., Immunology Today, Vol. 4, p. 72 (1983); Cole et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 80, pp. 2026-2030 (1983))、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96 (1985))が挙げられる。このような抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、IgDおよびそのサブクラスを含むいずれかの免疫グロブリンクラスに属し得る。本発明のmAbを生産するハイブリドーマは、in vitroまたはin vivoで培養することができる。in vivoで高力価のmAbを生産できることから、これは現在のところ好ましい生産方法となっている。さらに、適当な生物活性のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒に適当な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をスプライシングすることによる「キメラ抗体」の作製のために開発された技術(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 81, pp. 6851-6855 (1984); Neuberger et al., Nature, Vol. 312, pp. 604-608 (1984); Takeda et al., Nature, Vol. 314, pp. 452-454 (1985))も使用できる。キメラ抗体は、マウスmAb由来の可変または超可変領域とヒト免疫グロブリン定常領域を有するものといったように、種々の部分が異なる動物種に由来する分子である。あるいは、単鎖抗体の作製に関して記載されている技術(米国特許第4,946,778号;Bird, Science, Vol. 242, pp. 423-426 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 85, pp. 5879-5883 (1988);およびWard et al., Nature, Vol. 334, pp. 544-546 (1989))を、示差的発現遺伝子単鎖抗体の生産に応用することができる。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖フラグメントと軽鎖フラグメントをアミノ酸架橋で連結して単鎖ポリペプチドとすることにより形成される。最も好ましくは、「ヒト化抗体」の作製に有用な技術を、タンパク質、そのフラグメントまたは誘導体に対する抗体の作製に応用することができる。このような技術は、米国特許第5,932,448号;同第5,693,762号;同第5,693,761号;同第5,585,089号;同第5,530,101号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,789,650号;同第5,661,016号;および同第5,770,429号に開示されている。特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは公知の技術により作製することができる。例えば、このようなフラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化によって作製できるF(ab’)2フラグメント、およびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することによって作製できるFabフラグメントが挙げられる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能とするため、Fab発現ライブラリーを構築してもよい(Huse et al., Science, Vol. 246, pp. 1275-1281 (1989))。
【0052】
次に、生体サンプルにおいて発現されたタンパク質(フラグメント)のレベルを、上記の抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントを用いるイムノアッセイ法によって判定することができる。このようなイムノアッセイ法としては、限定されるものではないが、ウエスタンブロット法、蛍光活性化セルソーティング(FACS)、免疫組織化学、酵素結合免疫検定法(ELISA)、酵素結合免疫スポット検定法(ELISPOT)、ドットブロット法、競合的および非競合的タンパク質結合検定法、ならびに化学文献および特許文献で一般的に用いられ、広く記載されている他の方法が挙げられ、多くのものが商業的に使用できる。
【0053】
検出の容易さに関して特に好ましいのはサンドイッチELISAであり、その多くのバリエーションが存在し、その全てが本発明に含まれるものとする。例えば、典型的な前者のアッセイでは、標識されていない抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを固相支持体上に固定化し、試験サンプルをその結合分子と接触させ、抗体−抗原の二元複合体の形成を可能とするに十分な時間インキュベートする。この時点で、次に、検出可能なシグナルを誘導し得る分子で標識した第二の抗体、抗体誘導体、または抗体フラグメントを加えてインキュベートし、抗体−抗原−標識抗体の三元複合体の形成に十分な時間を置く。反応していない材料を洗い流し、抗原の存在をシグナルの観測によって判定するか、または、既知量の抗原を含む対照サンプルと比較することにより定量することもできる。前者のアッセイのバリエーションとしては、結合抗体にサンプルと抗体の双方を同時に加える同時アッセイ、またはまず標識抗体と試験サンプルを合わせてインキュベートし、標識されていない表面結合抗体に加える逆アッセイがある。これらの技術は当業者に周知のものであり、軽微な変更が可能なことは容易に分かるであろう。本明細書において「サンドイッチアッセイ」は、基本となる2部位技術のあらゆるバリエーションを含むものとする。
【0054】
このタイプのアッセイにおいて抗体、抗体フラグメントまたは誘導体を標識するために最もよく用いられるリポーター分子は、酵素、蛍光団または放射性核種含有分子のいずれかである。酵素免疫検定(EIA)の場合では、酵素を、通常、グルタルアルデヒドまたは過ヨウ素酸塩の手段により、第二の抗体に結合させる。しかしながら、容易に分かるように、当業者に周知の多種多様な連結技術が存在する。一般に用いられる酵素としては、中でも、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびアルカリ性ホスファターゼが挙げられる。特定の酵素とともに用いる基質は一般に、対応する酵素によって加水分解された際に検出可能な変色を生じるように選択する。例えば、p−ニトロフェニルホスフェートはアルカリ性ホスファターゼコンジュゲートとの併用に適しており、ペルオキシダーゼコンジュゲートには、1,2−フェニレンジアミンまたはトルイジンが一般に用いられる。また、上記の発色基質の代わりに蛍光生成物を生じる蛍光基質を使用することもできる。次に、この三元複合体に適当な基質を含有する溶液を加える。この基質は、第二の抗体に結合された酵素と反応して質的に目に見えるシグナルを生じ、これをさらに、通常には分光光度的に定量して、タンパク質またはそのフラグメントの量を評価することができる。あるいは、フルオレセインおよびローダミンなどの蛍光化合物を、それらの結合能を変化させずに抗体に化学的に結合させることもできる。特定波長の光を照射することで活性化すると、この蛍光色素標識抗体は光エネルギーを吸収し、分子の励起状態を誘導した後、特徴的なより長い波長で光を放射する。この放射は光学顕微鏡で視覚的に検出可能な特徴的な色として現れる。免疫蛍光およびEIA技術は両者とも当技術分野で極めてよく確立されたものであり、本方法に特に好ましい。しかし、放射性同位元素、化学発光分子または生物発光分子などの他のリポーター分子も使用可能である。当業者ならば、これらの手法を必要な用途に適合させるためにどのように変更すればよいかが容易に分かるであろう。
【0055】
本発明のもう1つの態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1つのタンパク質の活性レベルを判定する、精神障害の診断方法を提供する。本発明の好ましい実施形態では、GCL、GGTおよび/またはXc−系の活性レベルが判定される。GCL、GGTおよび/またはXc−系の活性を測定する方法は当業者に周知である。例えば、GCL活性は、Gegg et al. (Analytical Biochemistry, 304, 26-32, 2002)により記載されているように判定することができ、GGT活性は、例えば、GGTによって触媒されるγ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリドからの5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定することにより測定することができる。酵素活性は405nmの吸光度で測定される。Xc−系の活性は、例えば、参照文献:Bannai S and Kitamura E (Journal of Biological Chemistry 255, 2372-2376, 1980)によって記載されているように、[35S]シスチンの取り込みの測定によって判定することができる。
【0056】
本発明の他の好ましい実施形態では、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルが、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルとともに判定される。この発現レベルおよび/または活性レベルは、本発明に従って判定される。これらの遺伝子および/またはタンパク質のうち2、3、4または5個の発現および/または活性のレベルを判定することが望ましい場合がある。好ましくは、この発現レベルは、GCL、最も好ましくは、GCLM、GPX、最も好ましくは、GPX1、GSSおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTをコードする遺伝子に関して判定され、活性レベルは、好ましくは、GCL、最も好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTに関して判定される。
【0057】
本発明のさらなる態様は、精神障害の診断方法を提供し、その方法は、少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定すること、または細胞内GSHレベルを判定することを含む。本発明の好ましい実施形態では、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルが判定される。血漿中のアミノ酸レベルを測定する方法は当業者に周知であり、例えば、次の遊離アミノ酸は、Slocum et al. (In “Techniques in diagnostic human Biochemical Genetics”. Hommes Edt. 1991, pp87-126)に記載のようにして血漿中で定量することができる:タウリン(Tau)、アスパラギン酸(Asp)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シトルリン(Cit)、アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、シスチン(Cyt)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、オルニチン(Orn)、リシン(Lys)、1−CH3−ヒスチジン(1−CH3−His)、ヒスチジン(His)、3−CH3−ヒスチジン(3−CH3−His)、アルギニン(Arg)。チオール含有アミノ酸およびペプチドは、Jacobsen et al. (Gen Clin Chim, 873-881, 1994)に記載のようにして血漿中で定量することができる。
【0058】
本発明の方法のもう1つの好ましい実施形態は、細胞内GSHレベルの判定をさらに提供する。最も好ましくは、GCLM遺伝子の発現レベル、GCLの活性レベルおよびGSHの細胞内レベルが判定され、GCLM遺伝子の発現の低下、およびGCL活性とGSHレベルの間の負の相関が、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。最も好ましくは、このGCLM遺伝子発現は、培養繊維芽細胞をはじめとする繊維芽細胞に関して測定され、GCL活性とGSHレベルは、対象から単離された血液細胞に関して測定される。本発明のもう1個の好ましい方法によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子、好ましくは、GCLMの発現レベルと、好ましくは血液細胞におけるGSHの細胞内レベルが測定される。このGCLMの発現レベルは、最も好ましくは、対象から単離された繊維芽細胞で判定される。最も好ましくは、GCLMの発現の低下およびGSHレベルの低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す。
【0059】
本発明の方法のさらなる実施形態は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む。好ましくは、この少なくとも1個の遺伝子はGCL、最も好ましくは、GCLM、GPX、最も好ましくは、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子、最も好ましくは、xCTを含み、少なくとも1個のアミノ酸は、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む。最も好ましくは、その発現レベルが、好ましくは対象から単離され、その後、培養された繊維芽細胞におけるGCLMに関して判定され、シスチンおよびグルタミン酸の血漿レベルが判定され、シスチンレベルとグルタミン酸レベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。
【0060】
本発明の方法のなおさらなる実施形態は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む。好ましくは、この少なくとも1個のタンパク質はGCL、最も好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系、最も好ましくは、xCTを含み、少なくとも1個のアミノ酸はシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む。最も好ましくは、その活性レベルが、好ましくは血漿におけるGGTに関して判定され、システイニル−グリシンの血漿レベルが判定され、GGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す方法が提供される。
【0061】
上記のような本発明の方法は、対象の疾病素因を推定するため、すなわち、統合失調症などの精神障害に罹患する対象のリスクを判定するために使用できる。また、これらの方法は、対象において精神障害の進行をモニタリングするためにも使用できる。あるいは、これらの方法は、統合失調症などの精神障害の処置において、対象に対する治療薬の有効性をモニタリングするために用いてもよい。好ましくは、本発明の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルが、本発明の1個を超える遺伝子またはタンパク質に関して判定される。最も好ましくは、本発明の2個、もしくは3つの異なる遺伝子の発現および/または2個、もしくは3個の異なるタンパク質の活性レベルが判定される。このような測定は同時に行っても逐次に行ってもよい。その代わりに、またはそれに加えて、本発明の方法に従って遺伝子発現および/またはタンパク質活性をモニタリングするために、少なくとも1個のアミノ酸、特に、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベル、および/またはGSHの細胞内レベルを同時または逐次に判定することもできる。
【0062】
本発明のもう1つの態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法に関し、その方法は細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。本発明のもう1つの実施形態では、この方法は、上記のように、細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現レベルおよび/またはタンパク質の活性レベルおよび/または少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルおよび/またはGSHのレベルの判定をさらに含む。
【0063】
本発明は、統合失調症と統計学的に有意な関連を有するグルタチオン関連遺伝子における多型/ハプロタイプを初めて開示するものである。統計学的に有意な関連は好ましくは、その障害の発生率が好ましくはp<0.05、より好ましくはp<0.01、さらにより好ましくはp<0.001、最も好ましくはp<0.0001であり、かつ/またはオッズ比(OR)が好ましくは>1.0、より好ましくは>1.5、さらにより好ましくは>3.0、最も好ましくは>8.0である多型/ハプロタイプの関連である。この有意性の判定は、十分な数、例えば、少なくとも40人、好ましくは40〜60人の統合失調症患者と、少なくとも80人、好ましくは80〜120人の正常な対照の多型/ハプロタイプ分析によって行うことができる。より好ましくは、この有意性の判定は、実施例の節に記載されているようにして行うことができる。これらの多型は好ましくは一塩基多型(SNP)である。
【0064】
好ましくは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子は、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット遺伝子(GCLM)および/またはグルタチオンシンセターゼ遺伝子(GSS)から選択される。本発明の好ましい実施形態によれば、統合失調症患者で上記遺伝子の低レベルのmRNAが見られたことから、この多型は細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の低い発現レベルと関連している。
【0065】
驚くことに、統合失調症に関連する多型は、GCLMおよび/またはGSS遺伝子のイントロン、3’領域および/または5’領域、例えば、GCLM遺伝子のイントロン1および/または6および/または3’領域、および/またはGSS遺伝子のイントロン1、3、5、8、9および/または12、3’領域および/または5’領域に見られる得る。
【0066】
本発明の好ましい実施形態では、精神障害またはその疾病素因の診断方法は、該遺伝子の1個の染色体コピーおよび/または該遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型、該遺伝子の1個の染色体コピーおよび/または該遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せ、および/またはGCLM遺伝子とGSS遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、この多型および/または多型の組合せは前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0067】
好ましくは、GLCM遺伝子の多型は、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875、rs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。より好ましくは、この多型はrs2235971、rs3170633、rs769211および/またはrs2301022である。最も好ましくは、この多型はrs3170633である。好ましい実施形態では、多型rs3170633の遺伝子型は、ヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される。より好ましくは、この遺伝子型はGGであり、それはGG遺伝子型を有する個体が他の個体より、およそ3倍罹患のリスクが高いためである。
【0068】
好ましくは、GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。
【0069】
好ましくは、この組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される少なくとも1個の多型、より好ましくは、少なくとも2個の多型、最も好ましくは、4個の多型を含む。
【0070】
好ましくは、rs2235971に対するヌクレオチドG、rs3170633に対するG、rs769211に対するG、およびrs2301022に対するAの存在は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0071】
好ましくは、GSS遺伝子の多型は、(a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。より好ましくは、この多型はrs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である。最も好ましくは、この多型はrs3761144である。
【0072】
好ましい実施形態では、GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択される。
【0073】
好ましくは、この組合せは、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144からなる群から選択される少なくとも1個の多型、より好ましくは、少なくとも3個の多型、最も好ましくは、5個の多型を含む。好ましくは、rs2236270に対するヌクレオチドC、rs2273684に対するT、rs734111に対するC、rs2025096に対するGおよびrs3761144に対するCの存在、および/またはrs2236270に対するヌクレオチドT、rs2273684に対するG、rs734111に対するA、rs2025096に対するGおよびrs3761144に対するGの存在は前記精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0074】
好ましい実施形態では、GSS遺伝子およびGCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せは、(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/または3761144、(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せからなる群から選択されるが、これは、遺伝子GCLMおよびGSSを一緒にしてこれら9個の多型に関して、患者と対照の間でハプロタイプ頻度が有意に異なったためである(p=0.000062)。最大の効果を有するハプロタイプは、ハプロタイプGGGA(GCLM遺伝子)とCTCGC(GSS遺伝子)との組合せで見られた。
【0075】
もう1つの好ましい実施形態では、GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2つの染色体コピーにおける多型の組合せ、いわゆるハプロタイプは同型接合性である。より好ましくは、この同型接合状態にあるハプロタイプは、GCLM遺伝子のGGGAとGSS遺伝子のTGAGGのハプロタイプである。
【0076】
上記遺伝子に関する情報は全て、http://www.ncbi.nlm.govおよび/またはhttp://www-dsi-univ-paris5.fr/genatlas/databasesでアクセスできる。多型の命名法に関しては、GCLMについては、Chr 1p22.1:NT_028050 9380597〜9403950番 グルタミン酸−システインリガーゼ調節サブユニット(配列番号18)、NT#=参照配列番号、また、GSSについては、Chr 20q11.1:NT_028392 1352038〜1381802番、グルタチオンシンターゼ(配列番号19)を参照。
【0077】
上記の一塩基多型(SNP)は全て、公開データベースSNP Consortium (http:/snp.cshl.org)およびNCBI(http:/ww.ncbi.nlm.nih.gov)から選択されたものである。NCBIにより注釈されたSNP番号、それらの選択的対立遺伝子ならびにそれらの位置および遺伝子開始点からの距離を表2に示す。SNPの位置は適当なコンティグのNCBI図示に見られる情報に基づくものである。
【表2】
【0078】
統合失調症に関連する少なくとも1個の多型の存在は好ましくは、上記に示したような遺伝子型分析により判定される。例えば、判定は、1コピーもしくは2コピーの単一遺伝子または2コピーの異なる遺伝子における単一多型または複数の多型の分析を含み得る。
【0079】
この判定は、個々の遺伝子とハイブリダイズし、多型、特に所定の位置のSNPの間の識別を可能とする多型特異的プライマーの使用を含み得る。例えば、この遺伝子型分析は、実施例に記載するような多型特異的プライマーを用いたプライマー伸張反応を含み得る。個々の多型の判定は、実施例に記載するような質量分析によって行える。
【0080】
さらなる好ましい実施形態は、いくつかの多型の並行判定に特に好適なマイクロアレイ分析を含む。好適なマイクロアレイ装置が市販されている。
【0081】
対象は、限定されるものではないが、統合失調症(統合失調症様障害または分裂情動障害など)、情動障害(大鬱病、双極性障害、気分障害、行為障害、トゥーレット障害またはチック障害など)、精神作用物質(psychoaffective substance)使用による障害(アルコール禁断症候群など)、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病(薬剤性または認知症性精神病)、注意欠陥多動障害(ADHD)、ならびに躁鬱病または精神病性鬱病を含む精神障害に罹患していると疑われる哺乳類、好ましくはヒトである。
【0082】
本明細書において「精神障害」とは、病的な心理学的症状のいずれもを意味し、限定されるものではないが、次のものを含む(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disordes 4th Edition (DSM-IV) Francis A editor, American Psychiatric Press, Wash, DC, 1994も参照)。
【0083】
統合失調症
亜慢性緊張型統合失調症(295.21);慢性緊張型統合失調症(295.22);急性増悪のある亜慢性緊張型統合失調症(295.23);急性増悪のある慢性緊張型統合失調症(295.24);緩解中の緊張型統合失調症(295.55);特定不能型緊張型統合失調症(295.20);亜慢性解体型統合失調症(295.11);慢性解体型統合失調症(295.12);急性増悪のある亜慢性解体型統合失調症(295.13);急性増悪のある慢性解体型統合失調症(295.14);緩解中の解体型統合失調症(295.15);特定不能型解体型統合失調症(295.10);亜慢性妄想型統合失調症(295.31);慢性妄想型統合失調症(295.32);急性増悪のある亜慢性妄想型統合失調症(295.33);急性増悪のある慢性妄想型統合失調症(295.34);緩解中の妄想型統合失調症(295.35);特定不能型妄想型統合失調症(295.30);亜慢性鑑別不能型統合失調症(295.91);慢性鑑別不能型統合失調症(295.92);急性増悪のある亜慢性鑑別不能型統合失調症(295.93);急性増悪のある慢性鑑別不能型統合失調症(295.94);緩解中の鑑別不能型統合失調症(295.95);特定不能型鑑別不能型統合失調症(295.90);亜慢性残遺型統合失調症(295.61);慢性残遺型統合失調症(295.62);急性増悪のある亜慢性残遺型統合失調症(295.63);急性増悪のある慢性残遺型統合失調症(295.94);緩解中の残遺型統合失調症(295.65);特定不能型残遺型統合失調症(295.60);妄想障害(297.10);短期持続型精神障害(298.80);統合失調症様障害(295.40);分裂情動障害(295.70);誘導型精神病(297.30);精神病NOS(非定型精神病)(298.90)。
【0084】
情動障害
精神病的特徴を伴う重度の大鬱病(296.33);単一躁病エピソードを有する、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.23);最も新しいエピソードが軽躁病である双極I型障害(296.43);最も新しいエピソード躁病である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.43);最も新しいエピソードが混合型である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.63);最も新しいエピソードが鬱病である、精神病的特徴を伴う重度の双極I型障害(296.53);最も新しいエピソードが特定不能型である双極I型障害(296.89);双極II型障害(296.89);気分循環性障害(301.13);双極性障害NOS(366);健康状態による気分障害(293.83);気分障害NOS(296.90);単独攻撃型行為障害(312.00);鑑別不能型行為障害(312.90);トゥーレット障害(307.23)、慢性運動性または音声チック障害(307.22);一過性チック障害(307.21);チック障害NOS(307.20)。
【0085】
精神作用物質使用による障害
アルコール離脱せん妄(291.00);アルコール幻覚症(291.30);アルコール依存症に伴うアルコール性認知症(291.20);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬中毒(305.70);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬せん妄(292.81);アンフェタミンまたは同様の働きをする交感神経作用薬妄想障害(292.11);大麻妄想障害(292.11);コカイン中毒(305.60);コカインせん妄(292.81);コカイン妄想障害(292.11);幻覚発現物質幻覚症(305.30);幻覚発現物質妄想障害(292.11);幻覚発現物質気分障害(292.84);幻覚発現物質後認知障害(292.89);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン中毒(305.90);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミンせん妄(292.81);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン妄想障害(292.11);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン気分障害(292.84);フェンシクリジン(PCP)または同様の働きをするアリールシクロヘキシルアミン器質性精神障害NOS(292.90);その他の、または特定不能型の精神活性物質中毒(305.90);その他の、または特定不能型の精神活性物質せん妄(292.81);その他の、または特定不能型の精神活性物質認知症(292.82);その他の、または特定不能型の精神活性物質妄想障害(292.11);その他、または特定不能型の精神活性物質幻覚症(292.12);その他の、または特定不能型の精神活性物質気分障害(292.84);その他の、または特定不能型の精神活性物質不安障害(292.89);その他の、または特定不能型の精神活性物質人格障害(292.89);その他の、または特定不能型の精神活性物質器質性精神障害NOS(292.90)。
【0086】
人格障害
妄想型人格障害(301.00);分裂性人格障害(301.20);精神分裂症型人格障害(301.22);反社会的人格障害(301.70);境界型人格障害(301.83)。
【0087】
せん妄(293.00);認知症(294.10);強迫神経症(300.30);間欠性爆発性障害(312.34);および衝動制御障害NOS(312.39)。
【0088】
好ましい実施形態では、精神障害は統合失調症である。統合失調症は、多様な徴候および症状を特徴とする重度の精神障害である。しかし、診断に決定的な1個の症状があるわけではない。むしろ、診断は、職業的および社会的機能不全に関連する徴候および症状のパターンを含む(DSM−IV)。本発明によれば「統合失調症」は、好ましくは、限定されるものではないが、最新版のDSM−IVのAmercian Psychiatric Association’s Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders (DSM)から統合失調症を診断する判定基準という意味において用いられる。統合失調症を有するとして診断するためには、次の症状を呈していなければならない。
(A)特徴的な症状:次のもの:妄想、幻覚、会話の混乱(例えば、頻繁な逸脱または矛盾)、著しく混乱した、または緊張した挙動、陰性症状、すなわち、感情鈍麻(情動反応の欠如または低下)、失語症(会話の欠如または低下)または意欲消失(動機づけの欠如または低下)の2個以上が、各々、1ヶ月のうち有意な期間存在すること(処置が成功した場合には、もっと短い)。妄想がとっぴなものであるか、または幻覚が声の聞こえるものであれば、判定基準Aの症状は1個のみでもよい。
(B)社会的/職業的機能不全:障害の発生から有意な期間、仕事、対人関係または自己管理などの主な機能領域の1個以上が、発生前に到達していたレベルを著しく下回ること。
(C)持続期間:その障害の連続した徴候が少なくとも6ヶ月持続。この6ヶ月は、判定基準Aを満たす症状の少なくとも1ヶ月を含んでいなければならない(処置が成功した場合には、もっと短い)。
【0089】
このDSM−IVは、統合失調症の5個の細分類を含む。緊張型(運動特性が著しく欠如する場合)、解体型(思考障害と平坦または不適切な感情が共存する場合)、妄想型(妄想と幻覚が存在するが、思考障害、支離滅裂な挙動および感情鈍麻は存在しない場合)、残遺型(陽性症状が微弱にしか存在しない場合)および鑑別不能型(精神病的症状が存在するが、妄想型、解体型、または緊張型の判定基準を満たさなかった場合)が存在する。
【0090】
症状はまた、「陽性症状」(正常な体験および挙動につけ加わるもの)および陰性症状(正常な体験または挙動の欠如または低下)としても表される。「陽性症状」は精神病を表し、一般に、妄想、幻覚および思考障害を含む。「陰性症状」は、不適切な情動または情動の不在、会話の貧困、および動機づけの欠如を表す。
【0091】
ヒトにおける精神障害の診断は多型/ハプロタイプの判定の結果に基づいて行うことができる。被験患者は、精神障害、好ましくは統合失調症に関連する少なくとも1個のゲノムコピーに、1個、または複数の多型、および/または少なくとも1個の多型の組合せを有している場合がある。このような診断が得られれば、その患者は精神障害、好ましくは統合失調症を発症するリスクが高い。
【0092】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物を包含する。好ましくは、このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCT遺伝子の転写産物と結合し得る。もう1個の好ましい実施形態は、表1から選択される少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む組成物を包含する。このような組成物は、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)、および所望により、GCLM遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1を含んでもよく、あるいは、配列番号3および/または4、およびまた所望により、GSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号2を含んでもよく、あるいは、この組成物は、配列番号6および/または7、および所望により、GPX1遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号5を含んでもよく、あるいはこの組成物は、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)、および所望により、Xc−系4F2遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号8を含んでもよく、あるいは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、Xc− xCT遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号9を含んでもよい。この組成物は、好ましくは、Applied Biosystemsアッセイ#Hs00157694_m1を、配列番号3および配列番号4、および所望により、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1および配列番号2とともに含む。
【0093】
本発明のもう1つの態様によれば、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物が提供される。好ましくは、このような組成物は以上でさらに詳細に記載したようなモノクローナル抗体を含む。
【0094】
本発明のなおさらなる態様は、以上でさらに詳細に記載したような細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物である。本発明の好ましい実施形態によれば、これらの手段はGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系の活性を判定できる。好ましくは、GCLの活性を判定するための手段は、14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を判定できるシンチレーションアナライザーを含み、GGTの活性を判定するための手段は、5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定できる分光手段を含み、Xc−系の活性を判定するための手段は[35S]シスチン取り込みを測定することができる。
【0095】
本発明の他の態様は、精神障害の診断用キットを提供する。本発明の一態様では、このようなキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む。本発明の好ましい実施形態では、これらの転写レベルを判定するための手段は、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1、および/またはXc−系、好ましくは、cXT遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。好ましくは、このオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドは、表1から選択される配列を含む。もう1つの好ましい実施形態では、このキットは、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と、またはGCLMおよびGPX1遺伝子の転写産物と、またはGSSおよびGPX1の転写産物と、または最も好ましくは、GCLM、GSSおよびGPX1遺伝子の転写産物と結合し得るオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。あるいは、このキットは、GCLMおよびXc−系、GSSおよびXc−系、GPX1およびXc−系、またはGCLM、GSS、GPX1およびXc−系遺伝子の転写産物と結合し得るオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。好ましくは、このキットは、プライマー対#Hs00157694_m1(Applied Biosystems)、および所望により、GCLM遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1、あるいは配列番号3および/または4、および所望により、GSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号2などのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの組合せを含むか、あるいはこのキットは、配列番号6および/または7、および所望により、GPX1遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号5を含んでもよく、あるいはこのキットは、プライマー対#Hs00374243(Applied Biosystems)、および所望により、Xc−系4F2遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号8を含んでもよく、あるいはそれは、プライマー対#Hs00204928(Applied Biosystems)、および所望により、Xc− xCT遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号9を含んでもよい。このキットは最も好ましくは、Applied Biosystemsアッセイ#Hs00157694_m1を、配列番号3および配列番号4、および所望により、GCLMおよびGSS遺伝子の転写産物と結合し得る配列番号1および配列番号2とともに含む。このキットはさらにDNAサンプル回収手段を含む。
【0096】
本発明のさらなる態様において、このキットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む。好ましい実施形態では、このキットは、GCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCTサブユニットと結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。もう1個の好ましい実施形態では、このキットは、GCLMおよびGSSと、またはGCLMおよびGPX1と、またはGSSおよびGPX1と結合し得る2個の異なる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。最も好ましくは、このキットは、GCLM、GSSおよびGPX1と結合し得る3個の異なる抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む。あるいは、このキットは、GCLMおよびXc−系、GSSおよびXc−系、GPX1およびXc−系、またはGCLM、GSS、GPX1およびXc−系と結合し得る抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含み得る。
【0097】
さらにもう1個の態様では、この精神障害の診断用キットは、細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む。好ましくは、このタンパク質は、GCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含む。本発明の1個の実施形態によれば、このキットは、GCL、好ましくは、GCLCの活性を判定するための手段を含み、このような手段は、14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を判定できるシンチレーションアナライザーを含む。本発明のもう1個の実施形態によれば、このキットは、GGTの活性を判定するための手段を含む。好ましくは、このような手段は、5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定できる分光手段を含む。本発明のもう1つの実施形態は、Xc−系の活性を判定するための手段を提供し、これらの手段は、[35S]シスチンの取り込みを測定することができる。
【0098】
他の好ましい実施形態は、タンパク質サンプル回収手段をさらに含む、タンパク質レベルまたはタンパク質の活性レベルを判定するためのキットを提供する。最も好ましくは、本発明のキットは、対象の生体サンプルを回収するための手段をさらに含み、加えて、キットの使用説明書および判定された発現および/または活性のレベルの解説書を含んでもよい。好ましくは、本発明のキットは、少なくとも1個の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルを測定するために本発明により提供される方法の判定ステップにおいて使用可能である。
【0099】
本発明のさらなる態様において、少なくとも1個のアミノ酸、好ましくは、シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルを判定するための少なくとも1個の手段を含む精神障害の診断用キットが提供される。本発明の好ましい実施形態では、これらの手段は、アミノ酸アナライザーおよび/またはHPLCを含む。本発明のもう1個の態様は、血中のGSHレベルを判定するための手段を含むキットを提供する。
【0100】
本発明のさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断用組成物または診断用キットに関し、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーまたはプローブを含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。
【0101】
好ましくは、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子はGCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子から選択される。
【0102】
このような遺伝子の1個の染色体コピーにおける、および/またはこのような遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定するためのプライマーおよび/またはプローブ、このような遺伝子の1個の染色体コピーおよび/またはこのような遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するための、および/またはGCLM遺伝子およびGSS遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せは、DNAおよびRNAなどの核酸分子、またはペプチド核酸(PNA)もしくはロックド核酸(LNA)などの核酸類似体であってもよい。プライマーおよび/またはプローブは、分析しようとする位置における多型間を識別できるように選択される。通常、これらのプライマーおよび/またはプローブは少なくとも10、好ましくは、少なくとも15〜50まで、好ましくは、30までの核酸構成ブロック、例えば、ヌクレオチドの長さを有する。好ましい実施形態では、この組成物またはキットは、例えば、温度、バッファー、強度および/または有機溶媒の濃度などの所定の条件下で上述の遺伝子とハイブリダイズし、かつ、試験しようとする多型の特異的判定を可能とする、少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブ、および/またはプライマーおよび/またはプローブの少なくとも1個の組合せを含む。マスアレイ系を用いた遺伝子型分析のための、このようなプライマーの好ましい例を表3および表4に示す。
【表3】
【表4】
【表5】
【0103】
この診断組成物またはキットに従う、GCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける、好ましい、より好ましい、および最も好ましい(a)多型の組合せ、(b)(a)の少なくとも1個の多型と連鎖不平衡にある多型、および(c)(a)および/または(b)の多型の組合せは、上述のものと同じものである。
【0104】
この組成物またはキットは好ましくは、DNAポリメラーゼのようなプライマー伸張のための酵素、ヌクレオチド、例えば、鎖伸張ヌクレオチド(デオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)など)または鎖終結ヌクレオチド(ジデオキシヌクレオシド三リン酸(ddNTP)など)(表5)および/または標識基、例えば、蛍光または発色標識基をさらに含む。
【表6】
【0105】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおいて精神障害またはその疾病素因を診断するためのマイクロアレイに関し、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。好ましくは、このマイクロアレイ担体、例えば、平板担体またはマイクロチャネルディバイスは、それらが、試験しようとする多型が存在する配列を含む、例えば、RNA分子またはDNA分子、増幅産物、プライマー伸張産物などの核酸分子と結合できるように設計された、担体上の異なる領域に位置する複数の異なるプローブが固定化されている。よって、核酸サンプル分子と担体上に固定化されたプローブの部位特異的結合結果を検出することにより、分析しようとする多型の同定が達せられる。
【0106】
本発明のなおさらなる態様は、哺乳類、特にヒトにおいて、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とした、精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーもしくはプローブおよび/またはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せであり、その少なくとも1個の多型は精神障害またはその疾病素因と関連している。これらのプライマーは、DNAおよびRNAなどの核酸分子、またはペプチド核酸(PNA)もしくはロックド核酸(LNA)などの核酸類似体であり得る。これらのプライマーおよび/またはプローブは、分析しようとする位置における多型間を識別できるように選択される。通常、これらのプライマーおよび/またはプローブは少なくとも10、好ましくは、少なくとも15〜50まで、好ましくは、30までの核酸構成ブロック、例えば、ヌクレオチドの長さを有する。好ましい実施形態では、このプライマーは、例えば、温度、バッファー、強度および/または有機溶媒の濃度などの所定の条件下で上述の遺伝子とハイブリダイズし、かつ、試験しようとする多型の特異的判定を可能とする。
【0107】
さらなる態様において、本発明は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のタンパク質の使用を対象とし、その1以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。好ましくは、GCLはGCLMを含み、GPXはGPX1を含み、また、Xc−系はxCTを含む。
【0108】
本明細書において「タンパク質」とは、ポリペプチド、ペプチド、オリゴペプチドまたは合成オリゴペプチドをさす。これらの用語は互換的な使用を意図する。このような用語はいずれも、グリコシル化またはリン酸化などの翻訳後修飾にかかわらず、ペプチド結合またはアミド結合で連結された2以上のアミノ酸の鎖をさす。このタンパク質はまた1を超えるサブユニットを含んでもよく、各サブユニットは個々のDNA配列によりコードされている。アミノ酸残基は本明細書では、それらの標準的な一文字または三文字表記で示されている:A(Ala)アラニン;C(Cys)システイン;D(Asp)アスパラギン酸;E(Glu)グルタミン酸;F(Phe)フェニルアラニン;G(Gly)グリシン;H(His)ヒスチジン;I(Ile)イソロイシン;K(Lys)リシン;L(Leu)ロイシン;M(Met)メチオニン;N(Asn)アスパラギン;P(Pro)プロリン;Q(Gln)グルタミン;R(Arg)アルギニン;S(Ser)セリン;T(Thr)トレオニン;V(Val)バリン;W(Trp)トリプトファン;Y(Tyr)チロシン。
【0109】
本明細書において「生物活性」とは、生体事象を誘起する、または生体事象に影響を及ぼす分子についていう。このような生体事象は、例えば、統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病などの精神障害に関連するものであり得る。
【0110】
ある参照配列と他の配列(すなわち、「候補」配列)の比較に関して用いる「同一性%」などは、それら2配列間の最適なアライメントにおいて、候補配列が示された%に相当するサブユニットの位置の数だけ参照配列と同一であることを意味し、ここで、サブユニットは、ポリヌクレオチド比較の場合にはヌクレオチドであり、タンパク質比較の場合にはアミノ酸である。本明細書において、比較する配列の「最適なアライメント」とは、サブユニット間の一致を最大とし、アライメントの構成に用いるギャップ数を最小とするものである。同一性%は、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol. 48: 443-453 (1970)(“GAP” program of Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)により記載されている市販のアルゴリズムの実施によって判定することができる。アライメントの構成および同一性%の計算または類似の他の評価のための当技術分野における他のソフトウエアパッケージとしては、Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981) (Wisconsin Sequence Analysis Package, Genetics Computer Group, Madison, WI)のアルゴリズムに基づく「BestFit」プログラムがある。同一性%はまた、WU−BLAST−2(Altschul et al., Methods in Enzymology 266: 460-480 (1996))により求めてもよい。WU−BLAST−2ではいくつかの検索パラメーターを用いたが、そのほとんどがデフォルト値に設定されている。調整可能なパラメーターは次の値に設定する:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワード閾値(T)=11。アミノ酸配列同一%値は、一致した同一残基の数をアライニングした領域の残基総数で割って求める。例えば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するタンパク質を得るためには、参照配列のアミノ酸残基の5%までを欠失または別のアミノ酸で置換してもよいか、あるいは、参照配列のアミノ酸残基総数の5%までのアミノ酸数を参照配列に挿入してもよい。参照配列におけるこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端に存在してもよいし、あるいはこれらの末端間のいずれかの位置に、参照配列内の残基間に個々に、または参照配列内に1以上の連続する群として散在していてもよい。本発明の参照配列との比較を行う上で、候補配列はより大きなポリペプチドまたはポリヌクレオチドの成分またはセグメントであってよく、同一性%をコンピューターで求めるためのこのような比較は適切な成分またはセグメントに関して行われると理解される。
【0111】
本発明のタンパク質はまた、本発明のタンパク質のフラグメントも含む。このようなタンパク質フラグメントは、本発明のタンパク質のアミノ酸配列の、全てではないが、一部が全く同じであるアミノ酸配列を有するタンパク質を意味する。このようなタンパク質フラグメントは「独立したもの」であってもよいし、あるいはこのようなタンパク質フラグメントが、最も好ましくは、単一の連続領域として、一部または一領域を形成する、より大きなタンパク質の一部であってもよい。好ましくは、このようなタンパク質またはタンパク質フラグメントは、本発明の対応するタンパク質の生物活性を保持している。
【0112】
他の種々の実施形態では、このタンパク質(フラグメント)は直鎖であっても分枝していてもよく、修飾アミノ酸を含んでいてもよく、非アミノ酸が挿入されていてもよく、かつ/または1を超えるポリペプチド鎖の複合体へと組み立てられていてもよい。当技術分野で十分理解されているように、タンパク質は、自然に、または例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、ニトロシル化、または標識成分とのコンジュゲーションのような他のいずれかの操作または修飾といった介入により修飾を受け得る。いくつかの実施形態では、タンパク質(フラグメント)は1以上のアミノ酸類似体(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、ならびに当技術分野で公知の他の修飾を含む。本発明はまた、本明細書に記載されているタンパク質(フラグメント)の機能的に保存された変異体も含む。このような変異体は、例えば保存的アミノ酸置換によるなど、当技術分野で標準的な方法を用いて作製することができる。一般にこのような置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間;SerおよびThr間;酸性残渣AspおよびGlu間;AsnおよびGln間;ならびに塩基性残渣LysおよびArg間;または芳香族残渣PheおよびTyr間のものである。特に好ましいのは、数個、5〜10個、1〜5個、または2個のアミノ酸が任意の組合せで置換、欠失または付加されている変異体である。
【0113】
本発明のタンパク質(フラグメント)は、単離された天然タンパク質を含む。好ましくは、このような天然タンパク質は選択された集団内で少なくとも5%の、最も好ましくは少なくとも10%の頻度を有する。この選択集団は集団遺伝学の分野で認識されているいずれの研究集団であってもよい。好ましくは、この選択集団は、白色人種、黒色人種、またはアジア人種である。より好ましくは、この選択集団は、フランス人、ドイツ人、イギリス人、スペイン人、スイス人、日本人、中国人、韓国人、中国系シンガポール人、アイスランド人、北アメリカ人、イスラエル人、アラブ人、トルコ人、ギリシャ人、イタリア人、ポーランド人、太平洋諸島人、またはインド人である。
【0114】
本発明のタンパク質(フラグメント)はまた、組換え生産タンパク質、合成生産タンパク質ならびにこのような本発明のタンパク質およびフラグメントの組合せも含む。このようなタンパク質を作製する手段は当技術分野で十分理解されている。例えば、本発明のタンパク質フラグメントまたはタンパク質は、限定されるものではないが、血清、尿、腹水をはじめとする体液から単離することもできるし、あるいは化学的または生物学的方法(例えば、細胞培養、組換え遺伝子発現)によって合成することもできる。「単離された」とは、本明細書でそうではないことが明示されない限り、「ともに存在していた材料から分離された」という意味を含む。
【0115】
本発明組換えタンパク質は発現系を含む遺伝子操作宿主細胞から、当技術分野で周知のプロセスにより作製することができる。よって、本発明はまた、組換え技術によるタンパク質(フラグメント)の生産、本発明の核酸またはタンパク質をコードする核酸を含む発現系、このような発現系で遺伝子操作されている宿主細胞、およびそのポリペプチドを単離する方法に関する。
【0116】
好ましい実施形態は、本発明の1以上のタンパク質は配列番号10(GCLMのアミノ酸配列(図1))、配列番号11(GSSのアミノ酸配列(図1))、配列番号12(GPX1のアミノ酸配列(図1))および/または配列番号13(Xc−系(xCT)のアミノ酸配列(図1))を含むものを提供する。
【0117】
このタンパク質はまた、GCLM、GSS、GPX1および/またはXc−系(xCT)タンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%または80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば、95%、97%、または99%の同一性%を有するアミノ酸配列も含み得る。
【0118】
本発明のもう1個の態様は、精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用を包含する。本発明によれば、1以上のポリヌクレオチドは上記で詳しく定義したような本発明のタンパク質をコードする配列を含み、その配列は組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている。
【0119】
「ポリヌクレオチド」とは、天然または半合成または合成または修飾核酸分子を意味する。それは、デオキシリボ核酸(DNA)および/またはリボ核酸(RNA)および/または修飾ヌクレオチドをはじめとするヌクレオチド配列またはオリゴヌクレオチドをさす。これらの用語は互換的な使用を意図する。RNAは、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(低分子核内(small nuclear)RNA)、rRNA(リボソームRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、アンチセンスRNA、およびリボザイムの形態であり得る。DNAは、プラスミドDNA、ウイルスDNA、線状DNA、染色体もしくはゲノムDNA、cDNA、またはこれらの群の誘導体の形態であり得る。さらに、これらのDNAおよびRNAは、一本鎖、二本鎖、三本鎖または四本鎖であり得る。この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、ホスホロチオエート、および天然核酸のリン酸主鎖の他の変異体も含む。
【0120】
好ましくは、本発明の1以上のポリヌクレオチドは、配列番号14(GCLMの核酸配列(図2))、配列番号15(GSSの核酸配列(図3))、配列番号16(GPX1の核酸配列(図4))および/または配列番号17(Xc−系(xCT)の核酸配列(図5))を含む。
【0121】
本発明の他の実施形態は、配列番号14〜配列番号19のいずれかとストリンジェント条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェント条件」は、当業者ならば容易に決定でき、一般に、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的な計算である。一般に、長いプローブほど適切なアニーリングに高温を必要とするが、短いプローブは低温でよい。ハイブリダイゼーションは一般に、変性した核酸が、それらの融解温度付近、ただしそれらの融解温度を超えない環境に相補鎖が存在する場合に再アニーリングする能力によるものである。プローブと、ハイブリダイズ可能な配列、例えば配列番号14〜19との間の相同性が高いほど、使用できる相対的温度は高くなる。結果として、高い温度ほどより高いストリンジェントの反応条件となる傾向があり、低い温度ほどその傾向が小さくなる。さらに、ストリンジェンシーはまた、塩濃度に反比例する。「ストリンジェント条件」は、(1)低イオン強度と高い洗浄温度、例えば、0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウム、50℃;(2)ホルムアミドのような変性剤の使用、例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウムバッファーpH6.5+750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウム(42℃)を含む50%(vol/vol)ホルムアミドを特徴とする反応条件により例示される。あるいは、ストリンジェント条件は、50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハート液、音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%デキストラン硫酸(42℃)、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および50%ホルムアミド(55℃)中、42℃での洗浄の後、EDTAを含有する0.1×SSCからなる55℃での高ストリンジェンシー洗浄であり得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに関するさらなる詳細および説明については、Ausubel et al. Protocols in Molecular Biology (1995)を参照。
【0122】
好ましい実施形態では、このポリヌクレオチドはウイルスベクターに含まれ、そこではポリヌクレオチドはウイルスゲノムのプロモーターに作動可能なように連結されている。このプロモーター配列は公開データベースを検索することにより、確認することができる。好ましくは、これらのウイルスベクターは、精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象の脳細胞などの特定の組織で選択的に複製できるが、非罹患細胞では複製しないものである。この複製は、罹患細胞において、開示されている細胞内GSHレベルの調節に関与する遺伝子のプロモーターを活性化する正の転写因子が存在する場合に条件付けられるが、非罹患(=標準発現プロフィール)細胞では条件付けられない。それはまた、非罹患細胞に通常見られ、そのプロモーターの結果としての転写を妨げる転写阻害因子が存在しないことによって起こり得る。よって、転写が起こる場合、それは複製に必須の遺伝子へと進み、その結果、罹患細胞ではベクターの複製とその付随する機能が生じ、非罹患細胞では生じない。このベクターを用いれば、罹患細胞、例えば脳細胞を最小限の全身毒性で、選択的に処理することができる。
【0123】
一実施形態では、このウイルスベクターはアデノウイルスベクターであり、これはベクターの複製に必須の遺伝子のコード領域を含み、そのコード領域はE1a、E1b、E2およびE4コード領域からなる群から選択される。「複製に必須の遺伝子」とは、標的細胞でベクターが複製するのにその転写が必要である核酸配列をさす。好ましくは、この複製に必須の遺伝子は、E1AおよびE1bコード配列からなる群から選択される。複製に必須の遺伝子として特に好ましいのは、アデノウイルスE1A遺伝子である。このようなベクターを作製する方法は、例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, New York, 1989に記載されているように、当業者に周知のものである。
【0124】
本発明のベクターはウイルス複製のためのヘルパー細胞系統にトランスフェクトし、感染力のあるウイルス粒子を生成することができる。あるいは、上記のような本発明のポリヌクレオチドを担持するベクターまたは他の核酸構築物の、例えば神経細胞へのトランスフェクションは、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、またはプロテオリポソームを含むリポソームを介して行うことができる。
【0125】
本発明のさらなる態様は、ヒトをはじめとする哺乳類に有効量の1以上のタンパク質または1以上のポリヌクレオチドを投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。好ましくは、この1以上のタンパク質は、a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;b)(a)群のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;またはc)(a)または(b)群のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択される。好ましくは、GCLはGCLMを含み、GPXはGPX1を含み、Xc−系はxCTを含む。最も好ましくは、この1以上のタンパク質は配列番号10、配列番号11、配列番号12および/または配列番号13を含む。この1以上のポリヌクレオチドは好ましくは、上記で定義されたタンパク質をコードし、組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている配列を含む。この1以上のポリヌクレオチドは最も好ましくは、配列番号14、配列番号15、配列番号16および/または配列番号17を含む。
【0126】
さらなる態様において、本発明は、細胞内GSHレベルの調節に関与する、少なくとも1個の遺伝子発現を変化させ得るか、または少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る、有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を対象とする。好ましくは、この薬剤はGCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系、好ましくは、xCT遺伝子の発現、および/またはGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系の活性を変化させ得る。好ましくい実施形態は、GCLCの活性を変化させる薬剤がGCLM、その機能的相同体、誘導体およびフラグメントであるものを提供する。
【0127】
もう1つの態様によれば、本発明は、GSHレベル、好ましくは、細胞内GSHレベルを正常化できる有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法を提供する。最も好ましくは、血液細胞の細胞内GSHレベルが判定される。この薬剤はGSH、その前駆体、誘導体および/または化学等価物を含み得る。好ましくは、このような薬剤はN−アセチルシステイン(NAC)である。最も好ましくは、この薬剤はR(−)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(OTC)である。
【0128】
予防および/または処置目的の「哺乳類」とは、ヒト、家庭内および農場動物、ならびに動物園用、競技用、またはペット用動物、例えば、イヌ類、ウマ類、ネコ類、ヒツジ類、ブタ類、ウシ類などの哺乳類として分類される動物のいずれをもさす。好ましくは、この哺乳類はヒトである。
【0129】
本明細書において「処置」とは、治療的処置と予防的もしくは防御的手段の双方をさす。よって、本発明のこのような方法は、統合失調症などの精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクのある対象を処置する予防的方法と治療的方法の双方を含み、その障害が回避される。このような障害のリスクのある対象は上記のような診断方法およびキットによって確認することができる。本発明のタンパク質の発現または活性を変化させ得るポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤の投与は、例えば統合失調症の発症を予防またはその進行を遅延させるように、精神障害に特徴的な症状の発現前に行ってもよい。
【0130】
遺伝子の発現またはタンパク質の活性を変化させ得るポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤の「有効量」とは、これらの治療薬の1個が、統合失調症などの精神障害の発症の予防、その障害から生じる1以上の症状の軽減、その障害に罹患しているものの生活の質の向上、その障害を処置するのに必要な他の薬剤の用量の引き下げ、別の薬剤の効果の増強および/またはその障害の進行の遅延を含む有益または望ましい結果を果たすのに十分な量をさす。
【0131】
有効量の決定は、十分、当業者の能力の範囲内である。いずれの治療薬であっても、有効用量はまず、例えば新生細胞などの細胞培養アッセイか、または動物モデル、通常、マウス、ウサギ、イヌまたはブタのいずれかで評価することができる。また、動物モデルを用いて、適当な濃度範囲および投与経路を決定することもできる。こうした情報を用いて、次に、ヒトにおける有用な量および投与経路を決定することができる。
【0132】
治療効力および毒性は、細胞培養または試験動物において標準的な薬事手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)およびLD50(集団の50%に致死的な用量)によって決定することができる。毒性作用と治療作用の間の用量比が治療係数であり、LD50/ED50比として表すことができる。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られたデータはヒト用の用量範囲を処方する際に用いられる。このような組成物に含まれる用量は、ほとんど、または全く毒性のないED50を含む循環濃度の範囲内であることが好ましい。用量はこの範囲内で、用いる投与形、患者の感受性、および投与経路に応じて可変である。
【0133】
厳密な用量は、医師が、処置を必要とする対象に関連する因子に照らして決定する。十分なレベルの活性部分を提供するため、または所望の作用を維持するために用量および投与は調整される。考慮できる因子としては、病態の重篤度、対象の健康状態、対象の齢、体重、および性、食餌、投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性、および治療に対する耐性/応答が挙げられる。
【0134】
通常の用量は、投与経路に応じて0.1〜100,000マイクログラム、総量約1グラムまでで様々であり得る。特定の用量および送達方法についての指針は文献に示されており、当業者ならば通常利用可能である。当業者ならば、ポリヌクレオチド、タンパク質または薬剤に対して異なる処方を用いるであろう。
【0135】
有効量は1回以上の投与で投与することができ、また、別の薬物、化合物、または医薬組成物と組み合わせて達成してもよいし、組み合わせなくともよい。よって、「有効量」は、1以上の治療薬を投与するという文脈で考えることもできるし、また、単一の薬剤は、1以上の他の薬剤と組み合わせて所望の結果が達成され得る、または達成される場合に有効量で与えられるものと考えることができる。
【0136】
治療適用では、本発明のタンパク質またはポリヌクレオチド(リポソームに封入されているか、またはウイルスベクターに含まれている)または上記のような薬剤は好ましくは、1以上の医薬上許容される担体と組み合わせて治療薬を含有する医薬組成物として投与される。
【0137】
本発明のさらなる態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者において精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む医薬組成物を包含する。
【0138】
本発明によれば、医薬組成物は好ましくは、治療薬を、1以上の医薬上許容される担体と組合せて含有する。
【0139】
好ましくは、医薬組成物の有効成分は、(a)GCLMおよび/またはGSSまたはそのフラグメント;(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;(c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。「タンパク質」、「生物活性」、「フラグメント」、「変異体」または「同一性%」は、上記の定義と同義である。
【0140】
好ましい実施形態は、本発明の1以上のタンパク質が配列番号10(GCLMのアミノ酸配列(図1))および配列番号11(GSSのアミノ酸配列(図1))を含むものを提供する。このタンパク質はまた、GCLMおよび/またはGSSタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%または80%、最も好ましくは少なくとも90%、例えば、95%、97%、または99%の同一性%を有するアミノ酸配列を含み得る。本発明のなおさらなる好ましい態様は、有効成分が上記で定義されたようなタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、医薬組成物に関する。好ましくは、本発明の1以上のポリヌクレオチドは配列番号18(GCLMの核酸配列(図6))および配列番号19(GSSの核酸配列(図7))を含む。本発明の他の実施形態は、(GCLMの核酸配列(図6))および配列番号19(GSSの核酸配列(図7))とハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。本発明の他の実施形態は、ストリンジェント条件下で配列番号18および19とハイブリダイズするポリヌクレオチドを提供する。好ましい実施形態では、このポリヌクレオチドはウイルスベクターに含まれ、そこではこのポリヌクレオチドはウイルスゲノムのプロモーターに作動可能なように連結されている。「ポリヌクレオチド」、「ストリンジェント条件」または「ウイルスベクター」は、上記の定義と同義である。
【0141】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、医薬組成物の有効成分はGSH、またはGSHレベル、好ましくは細胞内GSHレベルを高める化合物である。このような化合物は、GSH、その前駆体、誘導体および/または化学等価物を含み得る。好ましくは、このような薬剤はN−アセチルシステイン(NAC)である。最も好ましくは、この薬剤はR(−)−2−オキソチアゾリジン−4−カルボン酸(OTC)である。好ましい実施形態では、患者は、上記で具体的に示された少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する。
【0142】
本発明の組成物は単独で投与してもよいし、限定されるものではないが、生理食塩水、緩衝生理食塩水、デキストロースおよび水をはじめとするいずれの無菌の生体適合性医薬担体にて投与してもよい、安定剤などの少なくとも1個の他の薬剤と組み合わせて投与してもよい。これらの組成物は患者に単独で投与してもよいし、あるいは、他の薬剤、薬物またはホルモンと組み合わせて投与してもよい。この患者は少なくとも1個のゲノムコピーの1または複数の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有し得る。
【0143】
これらの医薬組成物は、限定されるものではないが、経口、舌下、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、くも膜下腔内、小脳内、頭蓋内、呼吸器系、気管内、鼻咽頭、経皮、皮内、皮下、腹膜内、鼻腔内、腸内、局所、または直腸手段、注入もしくはインプラントを介するものを含む多くの経路のいずれによって投与してもよい。好ましくは、投与経路は経口である。
【0144】
この医薬組成物は本発明の処置方法に使用できる。このような組成物は好ましくは無菌であり、患者への投与に好適な重量または容量単位で所望の応答を誘導するために有効量のタンパク質またはポリヌクレオチドを含む。
【0145】
投与する場合、本発明の医薬組成物は医薬上許容される剤形で投与する。本明細書において「医薬上許容される担体」とは、ヒトをはじめとする哺乳類への投与に好適な1以上の適合する固体または液体増量剤、希釈剤またはカプセル化物質を意味する。「担体」とは、適用を助けるためにその有効成分と組み合わす有機もしくは無機の、天然または合成成分を表す。
【0146】
「医薬上許容される」とは、有効成分の生物活性の有効性を妨げない無毒の材料を意味する。このような剤形は、通常、医薬上許容される濃度の塩、緩衝剤、保存剤、適合担体、補助的免疫増強薬(アジュバントおよびサイトカインなど)および所望により他の治療薬(化学療法薬など)を含み得る。
【0147】
医療で用いる場合、これらの塩は、医薬上許容されるものでなければならないが、医薬上許容されない塩も、その医薬上許容される塩を製造するために便宜に使用でき、本発明の範囲から排除されるものではない。
【0148】
これらの医薬組成物は、塩中の酢酸;塩中のクエン酸;塩中のホウ酸;塩中のリン酸をはじめとする、好適な緩衝剤を含み得る。
【0149】
これらの医薬組成物はまた、所望により、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールなどの好適な保存剤を含み得る。
【0150】
対象に投与するタンパク質、ポリヌクレオチドまたは医薬組成物用量の用量は、種々のパラメーターに従って、特に、用いる投与様式および対象の状態に従って選択することができる。他の因子としては、所望の処置期間が挙げられる。対象の応答が最初に適用した用量では不十分な場合、患者の耐容性が許す程度までより高い用量(または異なる、より局所的な送達経路により有効により高い用量)を用いてもよい。
【0151】
医薬組成物は便宜には単位投与形で提供することができ、製薬分野で周知のいずれの方法によって製造してもよい。全ての方法が、有効成分を1以上の補助成分からなる担体と会合させるステップを含む。一般に、これらの組成物は、有効化合物を液体担体、微粉固体担体、またはその双方と均一かつ緊密に会合させた後、必要があれば、その産物を成形することによって製造される。
【0152】
経口投与に好適な組成物は、各々所定量の有効化合物を含有する、カプセル剤、錠剤、トローチ剤などの個別単位として提供してもよい。その他の組成物としては、シロップ剤、エリキシル剤またはエマルションなどの水性液体または非水性液体中の懸濁液が挙げられる。
【0153】
非経口投与に好適な組成物は便宜には、ポリペプチドまたはそのポリペプチドをコードする核酸の無菌水性または非水性製剤を含み、これはレシピエントの血液と等張であるのが好ましい。この調製物は、好適な分散剤または湿潤剤および沈殿防止剤を用い、既知の方法に従って調剤することができる。無菌注射製剤はまた、無毒の非経口的に許容される希釈剤または溶媒、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液としての無菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用可能な許容されるビヒクルおよび溶媒としては、水、リンゲル液、および等張塩化ナトリウム溶液がある。さらに、無菌硬化油も溶媒または懸濁媒体として便宜に用いられる。この目的で、合成モノまたはジ−グリセリドを含むいずれの銘柄の硬化油を用いてもよい。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射可能物質の製造に用いてもよい。
【0154】
経口、皮下、静脈内、筋肉内投与などに好適な担体処方物は、Remington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PAに見出すことができる。
【0155】
本発明のもう1個の態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者において精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、上記で定義された1以上の有効成分の使用を包含する。
【0156】
本発明のなおさらなる態様では、この有効成分は、(a)GCLMおよび/またはGSSまたはそのフラグメント、(b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および(c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体からなる群から選択されるタンパク質である。「タンパク質」、「生物活性」、「フラグメント」、「変異体」または「同一性%」は、上記の定義と同義であるものとする。
【0157】
本発明のもう1個の態様では、この有効成分は、上記で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである。さらなる態様において、この有効成分はGSHまたは細胞内GSHレベルを高める化合物である。好ましい実施形態では、患者は、上記で具体的に示された少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する。
【0158】
本発明のさらなる態様は、細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用に関する。
【0159】
本発明のさらなる態様は、精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、統合失調症などの精神障害の予防および/または処置方法を提供する。好ましくは、この薬剤は、同時、個別または逐次使用のために、(a)バルビタール酸塩およびその誘導体、ベンゾジアゼピン、カルボキサミド、ヒダントイン、スクシンイミド、バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体から選択される抗癲癇薬、ならびに他の抗癲癇薬、(b)通常の抗精神病薬、および(c)非定型抗精神病薬からなる群から選択される少なくとも1個の化合物(各場合において、有効成分は遊離形態または医薬上許容される塩の形態で存在する)と所望により少なくとも1個の医薬上許容される担体とを含む。
【0160】
本明細書において「バルビタール酸塩およびその誘導体」は、限定されるものではないが、フェノバルビタール、ペントバルビタール、メポバルビタールおよびプリミドンが挙げられる。本明細書において「ベンゾジアゼピン」としては、限定されるものではないが、クロナゼパム、ジアゼパムおよびロラゼパムが挙げられる。本明細書において「カルボキサミド」としては、限定されるものではないが、カルバマゼピン、オキシカルバゼピン、10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンおよび式II
【化1】
(式中、R1’はC1−C3アルキルカルボニルである)
の化合物が挙げられる。本明細書において「ヒダントイン」としては、限定されるものではないが、フェニトインが挙げられる。本明細書において「スクシンイミド」としては、限定されるものではないが、エトスクシミド、フェンスクシミドおよびメスクシミドが挙げられる。本明細書において「バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体」としては、限定されるものではないが、バルプロ酸ナトリウム塩、塩酸チアガビン一水和物およびビグラバトリンが挙げられる。本明細書において「他の抗癲癇薬」としては、限定されるものではないが、レベチラセファム、ラモトリジン、ガバペンチン、スルチアム、フェルバメート、EP114347に開示されている1,2,3−1H−トリアゾールおよびWO99/28320に開示されている2−アリール−8−オキソジヒドロプリンが挙げられる。
【0161】
本明細書において「通常の抗精神病薬」としては、限定されるものではないが、ハロペリドール、フルフェナジン、チオチキセンおよびフルペンチキソールが挙げられる。
【0162】
本明細書において「非定型抗精神病薬」は、クロザジル、リスペリドン、オランザピン、ケチアピン、ジプラシドンおよびアリピプラゾールに関する。
【0163】
コード番号、一般名または商標によって識別される有効成分の構造は標準的な概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えば、Patents International (例えば、IMS World Publications)から得ることができる。その相当する内容は出典明示により本明細書の一部とされる。当業者ならば、有効成分を同定することが十分可能であり、また、これらの参照文献に基づいて、製造ならびにin vitroおよびin vivoの双方における標準的な試験モデルで医薬適応および特性を試験することができる。
【0164】
フェノバルビタールは、例えば、商標Luminal(商標)として市販されている形態で投与することができる。プリミドンは、例えば、商標Mylepsinum(商標)として市販されている形態で投与することができる。クロナゼパムは、例えば、商標Antelepsin(商標)として市販されている形態で投与することができる。ジアゼパムは、例えば、商標Diazepam Desitin(商標)として市販されている形態で投与することができる。ロラゼパムは、例えば、商標Tavor(商標)として市販されている形態で投与することができる。カルバマゼピンは、例えば、商標Tegretal(商標)またはTegretol(商標)として市販されている形態で投与することができる。オキシカルバゼピンは、例えば、商標Trileptal(商標)として市販されている形態で投与することができる。オキシカルバゼピンは、文献から周知のものである[例えば、Schuetz H. et al., Xenobiotica (GB), 16(8), 769-778 (1986)参照]。R1’がC1−C3アルキルカルボニルである式IIの化合物およびその医薬上許容される塩の製造については、例えば、米国特許第5,753,646号に記載されている。10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンは米国特許第3,637,661号に開示されているように製造することができる。10−ヒドロキシ−10,11−ジヒドロカルバマゼピンは、例えば、米国特許第6,316,417号に記載されているような形態で投与することができる。フェニトインは、例えば、商標Epanutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。エトスクシミドは、例えば、商標Suxinutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。メスクシミドは、例えば、商標Petinutin(商標)として市販されている形態で投与することができる。バルプロ酸ナトリウム塩は、例えば、商標Leptilan(商標)として市販されている形態で投与することができる。塩酸チアガビン一水和物は、例えば、商標Gabitril(商標)として市販されている形態で投与することができる。ビガバトリンは、例えば、商標Sabril(商標)として市販されている形態で投与することができる。レベチラセタムは、例えば、商標Keppra(商標)として市販されている形態で投与することができる。ラモトリジンは、例えば、商標Lamictal(商標)として市販されている形態で投与することができる。ガバペンチンは、例えば、商標Neurontin(商標)として市販されている形態で投与することができる。スルチアムは、例えば、商標Ospolot(商標)として市販されている形態で投与することができる。フェルバメートは、例えば、商標Taloxa(商標)として市販されている形態で投与することができる。トピラメートは、例えば、商標Topamax(商標)として市販されている形態で投与することができる。EP114347に開示されている1,2,3−1H−トリアゾールは、例えば、米国特許第6,455,556号に記載されているような形態で投与することができる。WO99/28320に開示されている2−アリール−8−オキソジヒドロプリンは、例えば、WO99/28320に記載されている形態で投与することができる。ハロペリドールは、例えば、商標Haloperidol STADA(商標)として市販されている形態で投与することができる。フルフェナジンは、例えば、商標Prolixin(商標)として市販されているその二塩酸塩の形態で投与することができる。チオチキセンは、例えば、商標Navane(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば米国特許第3,310,553号に記載のように製造することができる。フルペンチキソールは、例えばその二塩酸塩の形態、例えば、商標Emergil(商標)として市販されている形態、またはそのデカン酸塩の形態、例えば、商標Depixol(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、BP925,538号に記載のように製造することができる。クロザリルは、例えば、商標Leponex(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、米国特許第3,539,573号に記載のよように製造することができる。リスペリドンは、例えば、商標Risperdal(商標)として市販されている形態で投与することができる。オランザピンは、例えば、商標Zyprexa(商標)として市販されている形態で投与することができる。ケチアピンは、例えば、商標Seroquel(商標)として市販されている形態で投与することができる。ジプラシドンは、例えば、商標Geodon(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、GB281,309号に記載のように製造することができる。アリピプラゾールは、例えば、商標Abilify(商標)として市販されている形態で投与することができる。それは、例えば、米国特許第5,006,528号に記載のように製造することができる。トピラメートは、例えば、商標Topamax(商標)として市販されている形態で投与することができる。
【0165】
フェノバルビタールは、成人患者には約1〜約3mg/kg体重の間の一日総量で、また、小児患者には約3〜約4mg/kg体重の間の一日総量を2個の個単位に分割して投与することができる。プリミドンは成人患者および少なくとも9歳の小児に、一日総量0.75〜1.5gで投与することができる。クロナゼパムは、成人患者には約3〜約8mgの間の一日総量で、また、小児患者には約0.5〜約3mgの一日総量を3〜4の個単位に分割して投与することができる。ジアゼパムは、成人患者には約5〜約10mgの間の一日総量で、また、小児患者にも約5〜約10mgの間の一日総量を投与することができる。ロラゼパムは、成人患者に約0.044mg/kg体重〜約0.05mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。カルバマゼピンは、成人患者には約600〜約2000mgの間の一日総量で、また、6歳を超える小児患者には、約400〜約600mgの間の一日総量で投与することができる。オキシカルバゼピンは、成人患者には約600〜約2400mgの間の一日総量で、また、小児患者には約30〜約46mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。フェニトインは、成人患者には約100〜約300mgの間の一日総量で、また、小児患者には約100〜約200mgの間の一日総量で投与することができる。エトスクシミドは、成人患者には一日総量約15mg/kg体重で、また、小児患者には一日総量約20mg/kg体重で投与することができる。バルプロ酸ナトリウム塩は、成人患者には一日総量約20mg/kg体重で、また、小児患者には一日総量約30mg/kg体重で投与することができる。塩酸チアガビン一水和物は、成人患者に、約15〜約70mgの間の一日総量で投与することができる。ビグラバトリンは、成人患者に、約2〜約3gの間の一日総量で投与することができる。レベチラセタムは、16歳を超える患者に、約1000〜約3000mgの間の一日総量で投与することができる。ラモトリジンは、12歳を超える患者に、約100〜約200mgの間の一日総量で投与することができる。ガバペンチンは、患者に、約900〜約2400mgの間の一日総量で投与することができる。スルチアムは、患者に、約5〜約10mg/kg体重の間の一日総量で投与することができる。フェルバメートは、14歳を超える患者に、約2400〜約3600mgの間の一日総量で投与することができる。トピラメートは、成人患者に、約250〜約500mgの間の一日総量で投与することができる。クロザリルは、成人患者に、約300〜約900mgの間の一日総量で投与することができる。ハロペリドールは、患者に、約2.5〜約30mgの間の一日総量で投与することができる。オランザピンは、患者に、約2.5〜約20mgの間の一日総量で投与することができる。ケチアピンは、患者に、約500〜約600mgの間の一日総量で投与することができる。リスペリドンは、患者に、約2〜約6mgの間の一日総量で投与することができる。
【0166】
さらに他の態様では、本発明は、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法に関する。このような方法は、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現と相互作用することができ、かつ/または細胞内GSHの調節に関与するタンパク質またはそのタンパク質あ結合相手と相互作用してそのタンパク質またはその結合相手の活性を変化させることができる化合物を同定するためのin vivoアッセイまたは細胞に基づくアッセイおよび/または無細胞アッセイを含む。このようなアッセイはまた、タンパク質と標的ペプチドなどのその結合相手との間の相互作用を調節する化合物を同定するためにも使用できる。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0167】
もう1個の態様によれば、このような方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患するリスクのない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。好ましくは、この細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子はGCL、好ましくは、GCLM、GSS、GPX、好ましくは、GPX1および/またはXc−系遺伝子を含む。
【0168】
なおさらなる態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された活性を比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。さらにもう1個の態様では、精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法は、次の、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の活性レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す。好ましくは、この細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質はGCL、好ましくは、GCLC、GGTおよび/またはXc−系タンパク質を含む。本発明の好ましい実施形態は、その候補薬剤がGCLMなどのGCLCに作用する薬剤であるものを提供する。最も好ましくは、この候補薬剤はGCLM、その機能的ホモログまたは誘導体である。
【0169】
本明細書において「候補薬剤」とは、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを高めるか、または少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを正常化することのできるいずれの分子もさす。この候補薬剤はタンパク質またはそのフラグメントなどの天然または合成分子、有機および無機化合物などであり得る。候補薬剤は1を超える分子を含んでいてもよく、候補薬剤のライブラリーを含んでいるのが好ましい。
【0170】
本発明のもう1個の態様は、(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成するステップ;および(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定するステップを含む、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。候補薬剤の不在下での相互作用と比べて候補薬剤の存在下でのタンパク質と結合相手の相互作用に著しい変化(増強または阻害)があれば、候補薬剤のタンパク質活性の潜在的アゴニスト(ミメティックまたは薬効因子)またはアンタゴニスト(阻害剤)を示す。このスクリーニング法に用いる成分は同時に合わせてもよいし、あるいは、タンパク質を候補薬剤と一定の時間接触させた後、その反応混合物に結合相手を添加してもよい。タンパク質とその結合相手との複合体形成はいずれの種の容器で行ってもよく、例えば、マイクロタイタープレート、マイクロ遠沈管、および試験管がある。候補薬剤の効力は、種々の濃度の薬剤を用いて用量応答曲線を作製することで評価することができる。また、対照アッセイは、候補薬剤の不在下でタンパク質とその結合相手との間の複合体形成を定量することで行うことができる。タンパク質とその結合相手との間の複合体形成は、放射性標識、蛍光標識、または酵素標識したタンパク質などの検出可能なように標識したタンパク質またはその結合相手を用い、イムノアッセイまたはクロマトグラフィー検出により検出することができる。本発明ののタンパク質を特異的なマーカーで標識し、候補薬剤または候補薬剤のライブラリーを異なるマーカーで標識することができる。次に、候補薬剤とタンパク質またはそのフラグメントまたはタンパク質結合相手との相互作用を、インキュベーションおよび洗浄ステップ後に2個の標識のレベルを測定することにより検出できる。これらの2個の標識の存在は、相互作用の指標となる。分子間の相互作用はまた、光学的現象である表面プラズモン共鳴を検出するリアルタイムBIA(Biomolecular Interaction Analysis, Pharmacia Biosensor AB)を用いることで評価することもできる。検出は生物特異的な界面における高分子塊の質量濃度の変化によるものであり、分子を標識する必要はない。
【0171】
好ましい実施形態では、このタンパク質またはその結合相手は、複合体を形成していない形態のタンパク質とその結合相手から複合体の分離およびアッセイの自動化を容易にするために固定化することができる。マトリックス上にタンパク質を固定化する方法は、ビオチンとストレプトアビジンの使用を含む。例えば、このタンパク質を、周知の技術を用い、ビオチンNHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)を用いてビオチニル化し、ストレプトアビジンコーティングプレートのウェル内に固定化することができる。1個の有用な実施形態では、候補薬剤のライブラリーをセンサー表面、例えば、マイクロフルーセルの壁面に固定化することができる。次に、タンパク質、その機能的フラグメント、またはタンパク質結合相手を含有する溶液をそのセンサー表面に連続的に循環させる。シグナル記録で示される共鳴角の変化が相互作用の存在を示す。この技術はPharmaciaのBIAtechnology Handbookにさらに詳しく記載されている。
【0172】
上記のような無細胞スクリーニング法はまた、細胞内GSHレベルの調節に関与するタンパク質と相互作用し、そのタンパク質の活性を調節できる薬剤を同定するためにも使用できる。一実施形態では、このタンパク質を候補薬剤とともにインキュベートし、タンパク質の触媒活性を判定する。もう1個の実施形態では、タンパク質と標的分子の結合親和性を、当技術分野で公知の方法により判定することができる。
【0173】
本発明のもう1個の態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。
【0174】
本発明のさらにもう1個の態様は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血液細胞において、GCL活性のレベルおよびGSHのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血液細胞におけるGCL活性のレベルとGSHのレベルを比較するステップを含み、血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間に相関がないことが、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法を提供する。本発明のさらなる実施形態は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、GGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血漿におけるGGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを比較するステップを含み、血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法である。本発明はまた、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤に投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、グルタミン酸およびシスチンのレベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の血漿におけるグルタミン酸およびシスチンのレベルを比較するステップを含み、血漿におけるグルタミン酸とシスチンの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法も提供する。
【0175】
本発明のもう1個の態様は、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、その精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法に関する。好ましくは、この少なくとも1個の多型、少なくとも1個の遺伝子型、および/または少なくとも1個の多型の組合せは上記のように定義される。
【0176】
このような方法は、細胞内GSHおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を妨げ得る化合物を同定するためのin vivoアッセイまたは細胞に基づくアッセイおよび/または無細胞アッセイを含む。本発明の一態様によれば、このような方法は、(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;(b)その細胞サンプルを試験物質と接触させるステップ;(c)ステップ(b)の細胞サンプルに関して、ステップ(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(a)と(c)で判定された発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その試験物質がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0177】
もう1個の態様によれば、このような精神障害のモジュレーターのスクリーニング方法は、(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に試験物質を投与するステップ;(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患するリスクのない、対応する対照非ヒト動物にステップ(a)の試験物質を投与するステップ;(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定するステップ;および(d)ステップ(c)の発現レベルを比較するステップを含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その試験物質がその精神障害のモジュレーターであることを示す。
【0178】
精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物は、GCLの阻害剤、例えば、L−ブチオニン−(S,R)−スルホキシイミン、BSO(Rougemont M, et al. (Journal of Neuroscience Research, 70, 774-783, 2002); Castagne, V et al. (Schizophrenia Research, 60, 105, 2003)、Cabungcal JH, et al. (Acta Neurobiologiae Experimentalis 63, 31, 2003))を用いて発症させている間に処置されるラットであり得る。あるいは、精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物は、GCLM遺伝子がノックアウトされているマウスであってもよい(Yang et al., J Biol Chem 277: 49446-49452, 2002)。
【0179】
本発明を下記の限定されない例によってさらに説明する。
【実施例】
【0180】
実施例1:GSHレベルの調節に関与する遺伝子の発現
繊維芽細胞培養
ヒト繊維芽細胞培養を患者の皮膚生検および非罹患対照から確立する。細胞は、37℃、5%CO2平衡空気中、2%Ultroser G(Biosepra)、100U/mlペニシリン/ストレプトマイシン(GibcoBRL)および1mMピルビン酸ナトリウム(Sigma)を含有する高グルコースDMEM(GibcoBRL)中で単層として増殖させる。2個の10cm径プレートで密集するまで増殖させた初代培養物を分析まで−150℃で冷凍維持する。
【0181】
遺伝子発現
3回の継代培養の後、調整した密度で繊維芽細胞培養において遺伝子発現を測定する。培養物が静止期に達したところで、0.2g/Lトリプシン−EDTA(GibcoBRL)を用いてそれらを回収し、PBSを2回洗浄する。これらの細胞の半分をRNA分析に用い、もう半分をタンパク質分析に用いる。
【0182】
全RNAを培養繊維芽細胞から、SV全RNA単離システム(Promega)を用いて精製する。RNA濃度を、RiboGreenシステム(Molecular Probes)を用いた蛍光測定法で測定する。各300ngのRNAサンプルを、TaqMan転写キット(AppliedBiosystems)と、プライマーとしてランダムヘキサマーを用いて、Mastercycler(Eppendorf)にて逆転写させる。増幅条件は次の通りである:25℃で10分間プライマーをインキュベーション、48℃で30分間逆転写、および95℃で5分間逆転写酵素を不活性化。
【0183】
遺伝子発現レベルを、Taq Man化学法とAB Prism 7000増幅装置を用いて測定する。逆転写された全RNA10ngに相当するcDNAを、特定のプライマー(表1)を用い、次の増幅条件で増幅する:50℃2分を1サイクル、95℃10分を1サイクル、95℃15秒を50サイクル、その後、60℃1分。次に、PCRフラグメントを標識プローブ(表1)で検出する。検出アッセイは全て、Applied Biosystems提供のFAM型であった。
【0184】
GAPDHを内部対照として用い(Applied Biosystems assay # 4333764T)、対照培養物からのRNAプールを参照サンプルとして用いる。結果を、AB Prism解析プログラムを用いて解析する。
【0185】
結果
患者(DSM IV判定基準)の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物において、対照対象に比べて患者ではGCLM、GSSおよびGPX1遺伝子のmRNA発現の低下がみられる(表6;数値は、外部標準として用いた健常対象(n≒50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。)
【表7】
【表8】
【0186】
GCLM mRNA発現から、対照と同等の発現レベルを有するもの(高いGCLM n=8、全患者プールの24%)とかなり低いレベルを有するもの(低いGCLM n=24、76%)の2個の部分集団が明らかである。
【0187】
さらに、患者から単離された繊維芽細胞では、GCLMとGSSの間に正の相関が見られ、低いGCLM発現レベルを有する患者はまた、低レベルのGSS発現も示す(r2=0.18;p≦0.05)(図8)。
【0188】
さらに、繊維芽細胞におけるGCLM遺伝子の発現レベルは患者の症状の臨床スコアと相関していることが分かる(図9〜12)。GCLMの低い発現レベルは陽性症状の臨床スコアと逆相関しており(図9、r2=0.33、p≦0.05)、陰性尺度の項目5および7と逆相関しており(図10および11、思考障害、SN5:r2=0.24、p=0.02;および常同思考、SN7:r2=0.16、p≦0.05)および一般精神病理尺度と逆相関している(図12、r2=0.17)。最も重篤な症状(高いスコア)を有する患者は最も低いGCLM mRNA発現を有しており、一方、より正常な発現を有するものは低い症状スコアを有している。
【0189】
実施例2:血中GSHレベル
血液の調製
前日の晩から活動条件を制限し、絶食下で午前7時〜8時半の間に静脈穿刺により患者から採血する。18〜20mlの血液を、EDTAでコーティングした氷冷Vacutainerチューブ(Becton Dickinson)に滴下し、ヘモグロビンを定量する。以下の調製は全て氷上または4℃で行う。全血のアリコートを採取し、グルタチオン(GSH)含量の分析まで−80℃で冷凍する。残りの血液を4℃にて3000g、5分間遠心分離し、血液細胞に相当するペレットを0.9%NaClで2回洗浄し、分析まで−80℃で保存する。血漿に相当する上清を回収し、アリコートを採取し、分析まで−80℃で維持する。
【0190】
グルタチオン(GSH)の測定
血液細胞、血漿または繊維芽細胞のGSHレベルを、診断キット(Calbiochem)を用いて測定する。この方法は、試薬とGSHの間で特異的に形成された色素体チオンの比色測定に基づくものである。
【0191】
結果
患者の血液細胞のGSHレベルは陽性症状の臨床スコアと逆相関しており(図13、r2=0.19、p=0.008)、すなわち、GSHレベルが低いほど、精神病理性が高い。
【0192】
実施例3:GSHレベルの調節に関与するタンパク質の活性
生化学アッセイのための繊維芽細胞の調製
繊維芽細胞培養物(実施例1に記載したように単離および培養したもの、10cm径プレート4個、密集細胞層)を3回の継代培養後に回収する。細胞をディッシュから、トリプシン処置により取り出し、洗浄し、4mlのリン酸バッファー(0.1M、pH7.4)に懸濁し、音波処理する。このホモジネートからのアリコートをGSHおよびタンパク質の測定のために−80℃で維持する。残りのホモジネートを4℃、5000gで10分間遠心分離する。上清、100μlアリコートを採取し、GSH関連酵素活性の測定に用いる。
【0193】
タンパク質の測定
繊維芽細胞のタンパク質レベルを、Advanced Protein Assay試薬とともにBioradキットを用いて測定する。
【0194】
繊維芽細胞のXc−系活性:[35S]シスチンの取り込み
Bannai S and Kitamura E (Journal of Biological Chemistry 255, 2372-2376, 1980)に記載のものに次のような修正を施し、Xc−系活性を[35S]シスチンの取り込みとして測定する。繊維芽細胞培養物(実施例1に記載したように単離および培養したもの、3.5cm径プレート3個、密集細胞層)を3回の継代培養後に用いる。0.01%CaCl2、0.01%MgCl2、0.1%グルコース、137mM NaClおよび3mM KClを含有する、予熱した(37℃)10mMリン酸緩衝生理食塩水、pH7.4で細胞を3回すすぐ。すすいだ後、細胞を、予熱した1mlの取り込み媒体中で37℃で2時間インキュベートする。この取り込み媒体は、細胞のすすぎに用いたものと同じバッファーと標識シスチン(2μCi/ml、0.05mM、Amersham)からなった。氷冷リン酸緩衝生理食塩水でディッシュを3回手早くすすぐことでインキュベーションを終了させる。次に、0.5mlの0.5N水酸化ナトリウムを各ディッシュに加える。細胞を回収し、音波処理する。この溶液300μlを、1%のTriton X−100を含有するシンチレーション液3mlと混合し、放射能を測定する。この溶液のアリコートをタンパク質アッセイにも用いる。測定値は全て、±10%変動する三反復のサンプルの平均である。
【0195】
血液細胞におけるγ−グルタミルシステインリガーゼ(GCL)活性
血液細胞は実施例2に記載のように調製する。GCL活性は、Gegg et al. (Analytical Biochemistry, 304, 26-32, 2002)に記載のものに次のような修正を施して測定する:血液500μl由来の溶血血液細胞をTrisバッファー(100mM、pH8.2)にとり、分子カットオフ10kDaのフィルター(Millipore Ultrafree-MC 10000)を備えたマイクロコン遠心フィルターディバイスにて、4℃、14000gで15分間遠心分離する。このステップにより、反応を妨害するアミノ酸、補因子、小分子(GSH)が除去される。沈殿をTrisバッファー(100mM、pH8.2)にとり、60μlアリコートを、ATP(10mM)、α−アミノ酪酸(10mM、Fluka)、L−[U−14C]−グルタミン酸(10mM、比活性3MBq/mmol、Amersham)を含有するTrisバッファー溶液90μlで処理する。37℃で20分間インキュベーションした後、80%スルホサリチル酸12μlを加えることで反応を停止させる。変性したタンパク質を17.000g、6分の遠心分離で除去し、上清を濾過し(Millipore、HV、0.45μm)、その後、HPLC(Hewlett Packard model 1090クロマトグラフ)で分析する。放射性生成物14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸を、Hypersil(C18、5.0μm)を充填したHPLCカラム(125×4mm)にて、流速0.5ml/分として、40分間で移動相A(水中0.25%トリフルオロ酢酸)中、2〜80%移動相B(アセトニトリル中0.25%トリフルオロ酢酸/水(9/1、v/v))の直線勾配で分離する。放射性生成物を、HPLCとオンラインで接続したフローシンチレーションアナライザー(Canberra Packard Flow-one Beta 500)を用いて検出する。14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸は19分で溶出した。放射性生成物の定量は面積測定に基づくものである。このアッセイの特異性を評価するため、サンプルを、GCSの特異的阻害剤であるL−ブチオニン−SR−スルホキシイミン(BSO)500μMおよび10mM ATPとともに室温で5分間プレインキュベートした後、BSOの存在下で上記のようにアッセイする。
【0196】
血漿におけるγ−グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)活性
GGT活性を、Sigma Diagnosticsから購入した診断キットを用いて測定する。GGTは37℃で、γ−グルタミル−3−カルボキシ−4−ニトロアニリドから5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を触媒する。酵素活性は405nmの吸光度で測定する。
【0197】
結果
Xc−系
患者の繊維芽細胞におけるXc−系の活性(0.73ピコモル/μgタンパク質/分)は、対照対象のもの(0.63ピコモル/μgタンパク質/分;表7)よりも高い(+16%、p=0.05)。
【表9】
【0198】
GCL
低いGCLM遺伝子発現を有する患者の血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間の負の相関(図14;r2=0.30)は対照群の場合(図15)にも高いGCLM遺伝子発現を有する患者群の場合(図16)にも見られない。よって、低いGCLM発現を有する患者から単離された血液細胞では、GSHレベルの上昇を伴うGCL活性のフィードバック阻害の増強が見られる。
【0199】
GGT
対照対象から単離された血漿では、対照対象におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly;GSHのGGT分解の直接産物)レベルの間に正の相関があり(図17;r2=0.22)、これは患者には存在しない(図18;r2=0005)。Cys−Glyの濃度は下記実施例4に記載のようにして測定される。
【0200】
実施例4:アミノ酸分析
血漿におけるアミノ酸分析
血漿において次の遊離アミノ酸を、Slocum et al. (In “Techniques in diagnostic human Biochemical Genetics”. Hommes Edt. 1991, pp87-126)に記載のように定量する:タウリン(Tau)、アスパラギン酸(Asp)、ヒドロキシプロリン(Hyp)、トレオニン(Thr)、セリン(Ser)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、プロリン(Pro)、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、シトルリン(Cit)、アミノ酪酸(Abu)、バリン(Val)、シスチン(Cyt)、メチオニン(Met)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、オルニチン(Orn)、リシン(Lys)、1−CH3−ヒスチジン(1−CH3−His)、ヒスチジン(His)、3−CH3−ヒスチジン(3−CH3−His)、アルギニン(Arg)。要するに、内部標準として(S)−2−アミノエチル−l−システインおよびd−グルコサミン酸(1.25mM)を含有する血漿を、5−スルホサリチル酸により除蛋白し、分析まで−80℃で維持する。この溶液をアミノ酸アナライザー(Beckman、6300モデル;カラム リチウム、10cm、Beckman 338051)に注入し、アミノ酸をニヒドリンとのカラム後反応により検出する。
【0201】
血漿におけるチオール分析
血漿においてアミノ酸およびペプチドを含有する次のチオールを、Jacobsen et al. (Gen Clin Chim, 873-881, 1994)に記載のように定量する:システイン(全部、すなわち、還元型のものと酸化型のもの)、ホモシステインおよびシステイニル−グリシン。要するに、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンとの反応により、チオールを還元および/またはペプチドから解離させる。過塩素酸により除蛋白した後、チオールを7−フルオロベンゾフラザン−4−スルホン酸(SBD−F)で誘導体化する。このSBD−F誘導体を次に、HPLC、その後の蛍光検出により分析する。
【0202】
結果
システインはグルタチオンの律速前駆体であり、ホモシステインは、システインの形成をもたらす必須アミノ酸であるメチオニン代謝に関連している。分析した28個のアミノ酸のうち、システイン(Cys、全レベル)、およびホモシステイン(Hcys)の血漿レベルは、対照(n=51:マイクロモル/L Cys 252.0±44.4;Hcys:8.2±2.3)に比べて患者全群(n=37;マイクロモル/L Cys 272.0±41.5;Hcys:10.0±3.6)で高い(それぞれ、+8.0%、p=0.02、および+22.6%、p=0.01)(表8)。低いGCLM mRNAを有する患者のサブグループ(n=25)でも、システインおよびホモシステインレベルは対照よりもやはり有意に高い(それぞれ、+12%、p=0.03および+33%、p=0.02)。
【表10】
【表11】
【0203】
さらに、シスチンとグルタミン酸の血漿レベルは、対照対象では正の相関があるが(図19、r2=0.28)、低いGCLM遺伝子発現を有する患者のサブグループでは、この相関は無効になる(図20、r2=0.002)と見られる。
【0204】
実施例5:
グルタチオン関連遺伝子における多型と統合失調症との関連
緒論
統合失調症患者と対照群の皮膚生検から得られた繊維芽細胞培養物を用いたグルタチオン代謝に関与する12個の遺伝子の遺伝子発現研究は、GSH合成に直接関与する2個の遺伝子、すなわち、グルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)とグルタチオンシンセターゼ(GSS)に有意な低下を示す。これら2個の遺伝子に対応するmRNAレベルのこのような低下がこれらの遺伝子自体の違いによるものか、あるいは後成的因子によるものかを調べるために、発現研究に用いた対象を全て遺伝子型分析し、これらの遺伝子に関して知られている多型について関連研究を行った。目的としては、候補遺伝子の特定の対立遺伝子/ハプロタイプと疾病の間で可能性のある関連を検出することであった。
【0205】
公開データベースSNP Consortium http://snp.cshl.orgおよびNCBI http://www.ncbi.nlm.nih.gov.から16個の一塩基多型(SNP)を選択した。NCBIにより注釈されたSNP番号、それらの選択的対立遺伝子ならびにそれらの位置および遺伝子開始点からの距離を表9に示す。SNPの位置は適当なコンティグのNCBI図示に見られる情報に基づくものである。
【表12】
【0206】
GCLM遺伝子に対応する7個のSNPおよびGSS遺伝子に対する9個のSNPに関して関連研究を行った。これらの遺伝子は、対照よりも患者で発現が低い。また、GCLMとヘテロ二重らせんを形成して律速酵素グルタミン酸−システインシンセターゼ(GCL)を生じるペプチド、グルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)に関する1個のSNPも含んだ。
【0207】
方法
遺伝子型分析
47人の患者と115人の対照から得られた末梢血から、Nucleon BACCキット(Amersham Pharmacia Biotech)を用いてDNAを精製した。16個の一塩基多型(SNP)の遺伝子型分析を、MALDI−TOF質量分析を用いたMethexis Genomics(Gent, Belgium)により行った。
【0208】
鋳型増幅
ゲノム抽出の後、対象とするSNP部位を含む5ngのゲノムDNAを、384マイクロタイタープレート形式を用いて5μl量で増幅した。ホッキョクエビアルカリ性ホスファターゼをサンプルに加え、これを37℃で20分間インキュベートした。これは残っている増幅ヌクレオチドを脱リン酸化し、それらのその後の組み込み、およびプライマー伸張アッセイの妨害を防いだ。MassEXTENDプライマー、DNAポリメラーゼ、およびデオキシヌクレオチド(dNTP)とジデオキシヌクレオチド三リン酸(ddNTP)のカクテル混合物を加え、hMEプライマー伸張反応を開始した。この反応は、元のMassEXTENDプライマーより通常1〜4塩基長い対立遺伝子特異的プライマー伸長産物を生成した。両対立遺伝子を認識する共通MassEXTENDプライマーはその多型部位に直接または隣接してハイブリダイズした。全ての可能性のあるMassEXTEND産物の質量差が最大となるようにヌクレオチド混合物を選択した。1個のddNTPが組み込まれるまで適当なdNTPを多型部位に組み込み、反応を終了した。
【0209】
終結点とヌクレオチド数は配列特異的であるので、生じた伸張産物の質量を用いて、誤りなく可能性のある変異体を同定することができた。この伸張反応の後、MassEXTENDクリーンレジンを反応物に加え、MALDI−TOF分析を妨害する外来の塩を除去した。次に、384マイクロタイタープレートからサンプル15μlを取り出し、384−SpectroCHIP(商標)バイオアレイのパッド上にスポットした。このSpectroCHIPをMALDI−TOFに入れ、MassARRAY RT(商標)ソフトウエアを用い、リアルタイムで質量および相関する遺伝子型を判定した。
【0210】
結果
個々のSNP分析
各遺伝子それぞれについて、個々のマーカー遺伝子型の関連を調べた。疾病条件の変数(過大な分散またはゼロ分散を有するSNP遺伝子型結果)を除いた後、発明者らは、遺伝子GCLMにおけるSNPの極めて有意な共同効果と、遺伝子GSSにおけるほぼ有意な結果を見出した(表10)。遺伝子GCLCでは、有意に近い結果は得られなかった(p>>0.05)。
【表13】
【0211】
遺伝子GSSのSNP rs3761144を除き、明らかに個々の各SNPはその固有の効果の大部分を発揮しなかったが、少なくとも遺伝子GCLMに関しては、SNPの共同効果は強く、そのSNP rs2235971、rs3170633、rs769211、およびrs2301022の共同効果は極めて有意であった(p=0.0009)。
【0212】
他の変数(年齢、性別および遺伝子発現レベル)と組み合わせたGCLM SNPに関するロジスティック回帰分析によれば、疾病結果に対するそれらの高い共同効果が示された(p=0.0006)。最大の結果(p=0.0009)はSNP rs3170633で得られた(表11)。
【表14】
7 df Chi-sq p値=0.000611
【0213】
各SNPそれぞれに関する、他の変数と組み合わせた回帰分析によれば、発現レベルとSNP遺伝子型だけが疾病結果を有意に推定することが示された。これは全てのSNPについてそうであり、p<0.05であった。ここでも、最大の効果はSNP rs3170633で見られた(表12)。
【表15】
【0214】
遺伝子GSSに関しては、発現レベルだけが、一般に十分な0.05以下のp値で、結果に対する推定効果を示したが、3個全ての変数を入力した回帰分析では、いずれのSNPについても有意性はなかった。最良の結果(p=0.0578)はSNP rs3761144で得られ、遺伝子GSSの発現レベルの効果に関してはp=0.0133であった。しかし、多重検定を補正すると、これらの結果は有意ではない。
【0215】
SNPを1個ずつ独立に分析したところ、遺伝子GCLMのSNP rs3170633で最大の効果が見られた(p=0.0037)(表13)。遺伝子型GGを他の2個の遺伝子型を合わせたものと比較したところ、GGはオッズ比(OR)2.95(95%限界1.34、6.47)とで関連していた。すなわち、GG遺伝子型を有する個体は、他の個体よりも罹患リスクがおよそ3倍高い。
【表16】
【0216】
ハプロタイプ分析
遺伝子型分析の有意または有意に近い結果に基づき、遺伝子GCLMとGSSに関してハプロタイプ分析を行った。表14に示すように、発明者らは、これら2個の遺伝子の各々について同数の一般ハプロタイプを得た。遺伝子GCLM(p=0.0228)およびGSS(p=0.0004)に関して患者と対照個体の間で、ハプロタイプ頻度の有意な違いがあった。最大の効果を持つカプロタイプは、遺伝子GCLMではGGGA(OR=2.19)であり、遺伝子GSSではTGAGG(OR=1.69)およびCTCGC(OR=1.58)であった。
【表17】
【0217】
遺伝子GCLM(p=0.0228)およびGSS(p=0.0004)に関して、最も多いハプロタイプの頻度は、患者と対照個体の間で有意に異なっていた。最大の効果を有するハプロタイプは、遺伝子GCLMではGGGA(OR=2.19)であり、遺伝子GSSではTGAGG(OR=1.69)およびCTCGC(OR=1.58)であった。
【0218】
遺伝子GCLMとGSSを合わせて、9個のSNPに関してハプロタイプを評価したところ、この2群の個体間でハプロタイプ頻度は有意に異なっていた(p=0.000062)(詳細な結果は示されていない)。最大の効果を有するハプロタイプは、GGGA−CTCGC(OR=4.04;さらに3個のハプロタイプが2を超えるORを示した)であった。この2成分ハプロタイプの独立作用に関して、推定オッズ比は2.19×1.58=3.46であり、すなわち、この合わせたハプロタイプは推定されるものより大きな効果を有している。しかし、近似分析(示されていない)では、このORの上昇は統計学的に有意でないことから、この2成分ハプロタイプは罹患リスクに独立に寄与することが示された。
【0219】
表10でOR>1.50のハプロタイプに関しては、ハプロタイプが同型接合状態で存在する場合であると確実に認識できることから、発明者らは、同型接合性である個体と他のハプロタイプを有する個体の割合を求めた(表15)。明らかに、ハプロタイプGGGAおよびTGAGGが同型接合状態にある場合(ジプロタイプと呼ばれることがある)のみに比較的大きな効果が現れたが、これらの効果は、かろうじて有意でしかない。
【表18】
最後の行は、合計または示されたORに関するp値を示す。
【0220】
推定
疾病にのみ関連するSNP遺伝子型に基づく推定はあまり十分なものではない(表16)。これはおそらく疾病に影響する他の種々の因子によるものであろう。検出力(感受性)は50%を超えず、特異性は80%そこそこか、それより低い。しかしながらやはり、補正推定の総合確率によって判断されるように、遺伝子型は、無作為推定の50%から同型接合状態のハプロタイプのいくつかについての73%まで、推定の成功を高める傾向にある。よって、これらのパラメーターは、これら2個の遺伝子に関連しない他の因子が合わさったものではあるが、疾病結果の推定に極めて有用である可能性がある。
【表19】
【0221】
本研究では、少なくとも2個の遺伝子GCLMとGSSの特定の遺伝子組合せが疾病に強く関連し、病態の推定因子として、他の判定基準と組み合わせて使用できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0222】
【図1】GCLM(NP_002052.1;配列番号10)、GSS(NP_000169.1;配列番号11)、GPX1(配列番号12)およびXc−系(xCT)(配列番号13)のアミノ酸配列を示す。
【図2】GCLMの核酸配列(配列番号14)を示す。
【図3】GSSの核酸配列(配列番号15)を示す。
【図4】GPX1の核酸配列(配列番号16)を示す。
【図5】Xc−系(xCT)の核酸配列(配列番号17)を示す。
【図6】GCLM:NT_028050、9380597〜9403950番の核酸配列(配列番号18)を示す。
【図7】GSS:NT_028392、1352038〜1381802番の核酸配列(配列番号19)を示す。
【図8】GCLM遺伝子発現の低い患者から単離された繊維芽細胞におけるGCLM mRNAレベルとGSS mRNAレベルの間の正の相関を示す図である。示されているmRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。
【図9】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陽性症状の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の相対的転写レベルを表す。陽性症状スコアは、Kay et al. (Kay SR, Opler LA, Fiszbein A, 1986, Positive and negative syndrome sycale (PANSS) manual Multi-Health Systems, Inc, New York)に従って評価したものである。
【図10】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN5の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図11】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと陰性症状SN7の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。陰性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図12】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおけるGCLM mRNAレベルと一般精神病理の負の相関を示す図である。示されているGCLM mRNA量は、健常対象(n=50)のプールと比較した場合の転写の相対的レベルを表す。一般精神病理スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図13】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループにおける血液細胞の[GSH]レベルと陽性症状の負の相関を示す図である。[GSH]レベルはμmol/mlで示す。陽性症状スコアは、Kay et al. 1986同書に従って評価したものである。
【図14】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の負の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定したGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定した[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図15】対照対象から単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図16】GCLM遺伝子発現の高い患者のサブグループから単離された血液細胞におけるGCL活性と[GSH]レベルの間の相関を示す図である。血液細胞(RBC)において測定されたGCL活性はμmol/分/gヘモグロビンで示し、血液細胞(RBC)において測定された[GSH]レベルはμmol/ml血液で示す。
【図17】対照対象から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間の正の相関を示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
【図18】患者から単離された血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシン(Cys−Gly)レベルの間に相関がないことを示す図である。測定されたGGT活性は単位/リットルで示し、Cys−Glyレベルはμmol/リットルで示す。
【図19】対照対象から単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間の正の相関を示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【図20】GCLM遺伝子発現の低い患者のサブグループから単離された血漿におけるグルタミン酸レベルとシスチンレベルの間に相関がないことを示す図である。グルタミン酸レベルおよびシスチンレベルはμmol/リットルで示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項2】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がグルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GCLがグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
GPXがGPX1を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ある対象に関して判定された発現レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルと比較することをさらに含み、20%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発現レベルがその少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを測定することのより判定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記転写レベルがその少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにより判定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記転写レベルがノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNアーゼ保護およびマイクロアレイ分析からなる群から選択される技術により判定される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記発現レベルがその少なくとも1個の遺伝子によって発現されるタンパク質のレベルを測定することにより判定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質レベルが抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントにより判定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質レベルが、抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを用いるウエスタンブロット法、FACS、免疫組織化学、ELISA、ELISPOTにより判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項13】
前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
GCLがグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
ある対象に関して判定された活性レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルと比較することをさらに含み、10%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Xc−系の活性レベルが[35S]シスチン取り込みを測定することにより判定される、請求項12、13または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項18】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GCLM、GPX、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子を含み、前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞内GSHレベルのレベルを判定することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
GCLMの発現レベル、GCLの活性レベル、およびGSHの細胞内レベルが判定される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
GCLMの発現の低下およびGCL活性とGSHレベルの間の負の相関が、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
GCLの活性レベルが14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を測定することにより判定される、請求項12〜15または19〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項24】
シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルが判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ある対象のシステインおよび/またはホモシステインの血漿レベルを精神障害に罹患していない対象または対象集団のレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項27】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GCLM、GPX、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子を含み、少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
GCLMの発現レベルが判定され、シスチンおよびグルタミン酸の血漿レベルが判定される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
GCLMの発現の低下およびシスチンレベルとグルタミン酸レベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項31】
少なくとも1個のタンパク質がGCL、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含み、少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
GGTの活性レベルが判定され、システイニル−グリシンの血漿レベルが判定される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
GGT活性とシステイニル−グリシンレベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
GGTの活性レベルが5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定することにより判定される、請求項12、13、15または30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
アミノ酸のレベルがアミノ酸アナライザーにより判定される、請求項23〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1個のアミノ酸のレベルがHPLCにより判定される、請求項23〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および血中GSHレベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項38】
GCLMの発現レベルが判定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
GCLMの発現の低下およびGSHレベルの低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ex vivoで行われる、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記精神障害が統合失調症である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項44】
少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドがGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子の転写産物と結合し得る、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
GCLがGCLMを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
GPXがGPX1を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、配列番号1〜9からなる群から選択される少なくとも1個の配列を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
GSS転写物と結合し得る、配列番号3および/または配列番号4、および場合によっては配列番号2のオリゴヌクレオチドを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項49】
GPX転写物と結合し得る、配列番号6および/または配列番号7、および場合によっては配列番号5のオリゴヌクレオチドを含む、請求項44または46に記載の組成物。
【請求項50】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項51】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項53】
前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項55】
前記少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記手段がアミノ酸アナライザーを含む、請求項54または55に記載の組成物。
【請求項57】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病の診断に用いるための請求項43〜56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
統合失調症の診断に用いるための請求項43〜57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項60】
転写レベルを判定するための手段が、GCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
GCLがGCLMを含む、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
GPXがGPX1を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが配列番号1〜9からなる群から選択される少なくとも1個の配列を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項64】
DNAサンプル回収手段をさらに含む、請求項59〜63のいずれか一項に記載のキット。
【請求項65】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項66】
前記タンパク質レベルを判定するための手段が、GCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項68】
前記タンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
タンパク質サンプル回収手段をさらに含む、請求項65〜68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定するための少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項71】
少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記手段がアミノ酸アナライザーを含む、請求項70または71に記載のキット。
【請求項73】
生体サンプルを回収するための手段をさらに含む、請求項59〜72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
キットの使用説明書および判定された発現および/または活性レベルの解説書をさらに含む、請求項59〜73のいずれか一項に記載のキット。
【請求項75】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病の診断のための、請求項59〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項76】
統合失調症の診断のための請求項59〜75のいずれか一項に記載のキット。
【請求項77】
少なくとも1個の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルを測定するための判定ステップが、請求項59〜76のいずれか一項に記載のキットの使用を含む、請求項1〜22および26〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のタンパク質の使用であって、その1以上のタンパク質が、
a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;
b)(a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;
c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択される、使用。
【請求項79】
GCLがGCLMを含む、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
GPXがGPX1を含む、請求項78に記載の使用。
【請求項81】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その1以上のポリヌクレオチドが請求項78〜80のいずれか一項で定義されたタンパク質をコードする配列を含み、その配列が組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている、使用。
【請求項82】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした請求項78〜80のいずれか一項に記載の1以上のタンパク質または請求項81に記載の1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、使用。
【請求項83】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした請求項78〜80のいずれか一項に記載の1以上のタンパク質および/または請求項81に記載の1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その精神障害が統合失調症である、使用。
【請求項84】
請求項78〜80のいずれか一項で定義された1以上のタンパク質および/または請求項81で定義された1以上のポリヌクレオチドと医薬上許容される担体とを含む、精神障害の予防および/または処置に用いる医薬組成物。
【請求項85】
有効量の1以上のタンパク質を、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置のための方法であって、その1以上のタンパク質が、
a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;
b)(a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;
c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択される、方法。
【請求項86】
GCLがGCLMを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
GPXがGPX1を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
有効量の1以上のポリヌクレオチドを、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置のための方法であって、その1以上のポリヌクレオチドが請求項85〜87のいずれか一項で定義されたタンパク質をコードする配列を含み、その配列が組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている、方法。
【請求項89】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項90】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
GCLがGCLMを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
GPXがGPX1を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項94】
前記細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
GCLがGCLCを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
GCLがGCLMを含む、請求項に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項98】
前記少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記有効量のタンパク質および/またはポリヌクレオチドおよび/または薬剤が経口、舌下、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、くも膜下腔内、小脳内、頭蓋内、呼吸器系、気管内、鼻咽頭、経皮、皮内、皮下、腹膜内、鼻腔内、腸内、もしくは局所、または直腸手段、注入もしくはインプラントを介して投与される、請求項85〜98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項85〜99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記精神障害が統合失調症である、請求項85〜102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;
(c)(b)の細胞サンプルに関して、(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(d)(a)と(c)で判定された発現レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項103】
前記細胞サンプルが精神障害に罹患している対象由来の生体サンプルを含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の発現レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項105】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子を含む、請求項102〜104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
GCLがGCLMを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
GPXがGPX1を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;
(c)(b)の細胞サンプルに関して、(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(d)(a)と(c)で判定された活性を比較すること
を含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項109】
前記細胞サンプルが精神障害に罹患している対象に由来する生体サンプルを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の活性レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項111】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成すること;および
(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定すること
を含む、方法。
【請求項112】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系タンパク質を含む、請求項108〜111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
GCLがGCLCを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項115】
ステップ(c)におけるシステインおよび/またはホモシステインのレベルが判定される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血液細胞において、GCL活性のレベルおよびGSHのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血液細胞におけるGCL活性のレベルとGSHのレベルを比較すること
を含み、血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間に相関がないことが、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項117】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、GGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血漿におけるGGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを比較すること
を含み、血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項118】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤に投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、グルタミン酸およびシスチンのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血漿におけるグルタミン酸およびシスチンのレベルを比較すること
を含み、血漿におけるグルタミン酸とシスチンの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項119】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項102〜118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記精神障害が統合失調症である、請求項102〜119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法であって、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型がその精神障害またはその疾病素因と関連している、方法。
【請求項122】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子が、グルタミン酸システインリガーゼ、調節サブユニット遺伝子(GCLM)および/またはグルタチオンシンセターゼ遺伝子(GSS)から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記多型が、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の低発現レベルと関連している、請求項121および122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記多型が前記少なくとも1個の遺伝子のイントロン、3’領域および/または5’領域内に存在している、請求項121〜123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける単一多型を判定することを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定することを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因に関連している、請求項121〜125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因に関連している、請求項121〜126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
GCLM遺伝子の多型が
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875、rs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項131】
前記多型が、
(a)rs2235971、rs3170633、rs769211および/またはrs2301022である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記多型が、
(a)rs3170633である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項131に記載の方法。
【請求項133】
多型rs3170633の遺伝子型がヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される、請求項121〜129および132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記遺伝子型がGGである、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
GSS遺伝子の多型が、
a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記多型が、
(a)rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記多型が、
(a)rs3761144である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項137に記載の方法。
【請求項139】
GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
GSS遺伝子とGCLM遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/または3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せが同型接合性である、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
多型が遺伝子型分析により判定される、請求項121〜141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
遺伝子型分析が多型特異的プライマーの使用を含む、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
遺伝子型分析が質量分析を含む、請求項142または143に記載の方法。
【請求項145】
遺伝子型分析がマイクロアレイ分析を含む、請求項142または143に記載の方法。
【請求項146】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質(psychoaffective substance)使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項121〜145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記精神障害が統合失調症である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断組成物または診断用キット。
【請求項149】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子から選択される、請求項148に記載の組成物またはキット。
【請求項150】
GCLMおよび/またはGSS遺伝子とハイブリダイズし、かつ、前記多型または多型の組合せの特異的判定を可能とする少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含む、請求項148に記載の組成物またはキット。
【請求項151】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける単一多型を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜150のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項152】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜151のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項153】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜152のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項154】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜153のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項155】
遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜154のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項156】
GCLM遺伝子の多型が、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875および/またはrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項157】
多型が、
(a)rs2235971、rs3170633、rs2301022および/またはrs769211である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項156に記載の組成物またはキット。
【請求項158】
多型が、
(a)rs3170633である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡である、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項157に記載の組成物またはキット。
【請求項159】
多型rs3170633の遺伝子型がヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される、請求項148〜155および158のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項160】
遺伝子型がGGである、請求項159に記載の組成物またはキット。
【請求項161】
GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項162】
GSS遺伝子の多型が、
(a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項163】
多型が、
(a)rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項162に記載の組成物またはキット。
【請求項164】
多型が、
(a)rs3761144である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項163に記載の組成物またはキット。
【請求項165】
GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項166】
GSS遺伝子およびGCLM遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項167】
GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せが同型接合性である、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項168】
プライマー伸張のための酵素、ヌクレオチドおよび/または標識基をさらに含む、請求項148〜167のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項169】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病の診断のための、請求項148〜168のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項170】
前記精神障害が統合失調症である、請求項169に記載の組成物またはキット。
【請求項171】
哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのマイクロアレイであって、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型、多型の組合せおよび/または遺伝子型が精神障害またはその疾病素因と関連している、マイクロアレイ。
【請求項172】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とし、その少なくとも1個の多型、多型の組合せおよび/または遺伝子型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーおよび/もしくはプローブまたはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せ。
【請求項173】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む、医薬組成物。
【請求項174】
有効成分が、
a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、
b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および
c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択されるタンパク質である、請求項173に記載の組成物。
【請求項175】
有効成分が請求項174で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、請求項173に記載の組成物。
【請求項176】
有効成分がGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である、請求項173に記載の組成物。
【請求項177】
患者が、請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型、請求項133、134および141のいずれか一項で定義された少なくとも1個の遺伝子型および/または請求項135、139および140のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型の組合せを有する、請求項173〜176のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項178】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、請求項173〜176のいずれか一項で定義された1以上の有効成分の使用。
【請求項179】
有効成分が、
a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、
b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および
c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択されるタンパク質である、請求項178に記載の使用。
【請求項180】
有効成分が請求項179で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、請求項178に記載の使用。
【請求項181】
有効成分がGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である、請求項178に記載の使用。
【請求項182】
患者が、請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型、請求項133、134および141のいずれか一項で定義された少なくとも1個の遺伝子型および/または請求項135、139および140のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型の組合せを有する、請求項178〜181のいずれか一項に記載の使用。
【請求項183】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用。
【請求項184】
精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法。
【請求項185】
精神障害に対して有効な薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法。
【請求項186】
薬剤が、同時、個別または逐次使用のために、
(a)バルビタール酸塩およびその誘導体、ベンゾジアゼピン、カルボキサミド、ヒダントイン、スクシンイミド、バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体から選択される抗癲癇薬、ならびに他の抗癲癇薬、
(b)通常の抗精神病薬、および
(c)非定型抗精神病薬
からなる群から選択される少なくとも1個の化合物(各場合において、有効成分は遊離形態または医薬上許容される塩の形態で存在する)と所望により少なくとも1個の医薬上許容される担体とを含む、請求項184または185に記載の方法。
【請求項187】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、その精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、方法。
【請求項188】
少なくとも1個の多型が請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義され、少なくとも1個の遺伝子型が請求項133、134および141のいずれか一項で定義され、かつ/または少なくとも1個の多型の組合せが請求項135、139および140のいずれか一項で定義されている、請求項186に記載の方法。
【請求項1】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項2】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がグルタミン酸システインリガーゼ(GCL)、グルタチオンシンセターゼ(GSS)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)および/またはグルタミン酸/システイン交換輸送体(Xc−系)遺伝子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
GCLがグルタミン酸システインリガーゼ調節サブユニット(GCLM)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
GPXがGPX1を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
ある対象に関して判定された発現レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルと比較することをさらに含み、20%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記発現レベルがその少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを測定することのより判定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記転写レベルがその少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドにより判定される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記転写レベルがノーザンブロット分析、逆転写酵素PCR、リアルタイムPCR、RNアーゼ保護およびマイクロアレイ分析からなる群から選択される技術により判定される、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記発現レベルがその少なくとも1個の遺伝子によって発現されるタンパク質のレベルを測定することにより判定される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記タンパク質レベルが抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントにより判定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質レベルが、抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを用いるウエスタンブロット法、FACS、免疫組織化学、ELISA、ELISPOTにより判定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項13】
前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、γ−グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)および/またはXc−系を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
GCLがグルタミン酸システインリガーゼ触媒サブユニット(GCLC)を含む、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
ある対象に関して判定された活性レベルを、精神障害に罹患していない対象または対象集団の相当する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルと比較することをさらに含み、10%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
Xc−系の活性レベルが[35S]シスチン取り込みを測定することにより判定される、請求項12、13または15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項18】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GCLM、GPX、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子を含み、前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
細胞内GSHレベルのレベルを判定することをさらに含む、請求項17または18に記載の方法。
【請求項20】
GCLMの発現レベル、GCLの活性レベル、およびGSHの細胞内レベルが判定される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
GCLMの発現の低下およびGCL活性とGSHレベルの間の負の相関が、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
GCLの活性レベルが14C−γ−グルタミル−アミノ酪酸の量を測定することにより判定される、請求項12〜15または19〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項24】
シスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンの血漿レベルが判定される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ある対象のシステインおよび/またはホモシステインの血漿レベルを精神障害に罹患していない対象または対象集団のレベルと比較することをさらに含み、5%を超える違いが、その対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項27】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GCLM、GPX、GPX1、GSSおよび/またはXc−系遺伝子を含み、少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
GCLMの発現レベルが判定され、シスチンおよびグルタミン酸の血漿レベルが判定される、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
GCLMの発現の低下およびシスチンレベルとグルタミン酸レベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること、および少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項31】
少なくとも1個のタンパク質がGCL、GCLC、GGTおよび/またはXc−系を含み、少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
GGTの活性レベルが判定され、システイニル−グリシンの血漿レベルが判定される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
GGT活性とシステイニル−グリシンレベルの間に相関がないことが、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
GGTの活性レベルが5−アミノ−2−ニトロベンゾエートの形成を測定することにより判定される、請求項12、13、15または30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
アミノ酸のレベルがアミノ酸アナライザーにより判定される、請求項23〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1個のアミノ酸のレベルがHPLCにより判定される、請求項23〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること、および血中GSHレベルを判定することを含む、精神障害の診断方法。
【請求項38】
GCLMの発現レベルが判定される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
GCLMの発現の低下およびGSHレベルの低下が、対象が精神障害に罹患しているか、または罹患するリスクがあることを示す、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ex vivoで行われる、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項1〜40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記精神障害が統合失調症である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項44】
少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドがGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子の転写産物と結合し得る、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
GCLがGCLMを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
GPXがGPX1を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項47】
前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが、配列番号1〜9からなる群から選択される少なくとも1個の配列を含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項48】
GSS転写物と結合し得る、配列番号3および/または配列番号4、および場合によっては配列番号2のオリゴヌクレオチドを含む、請求項44に記載の組成物。
【請求項49】
GPX転写物と結合し得る、配列番号6および/または配列番号7、および場合によっては配列番号5のオリゴヌクレオチドを含む、請求項44または46に記載の組成物。
【請求項50】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項51】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項50に記載の組成物。
【請求項52】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項53】
前記少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項51に記載の組成物。
【請求項54】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定できる少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断に用いるための組成物。
【請求項55】
前記少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項54に記載の組成物。
【請求項56】
前記手段がアミノ酸アナライザーを含む、請求項54または55に記載の組成物。
【請求項57】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病の診断に用いるための請求項43〜56のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項58】
統合失調症の診断に用いるための請求項43〜57のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項59】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の転写レベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項60】
転写レベルを判定するための手段が、GCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子の転写産物と結合し得る少なくとも1個のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
GCLがGCLMを含む、請求項60に記載のキット。
【請求項62】
GPXがGPX1を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項63】
前記オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドが配列番号1〜9からなる群から選択される少なくとも1個の配列を含む、請求項60に記載のキット。
【請求項64】
DNAサンプル回収手段をさらに含む、請求項59〜63のいずれか一項に記載のキット。
【請求項65】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質のレベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項66】
前記タンパク質レベルを判定するための手段が、GCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系と結合し得る少なくとも1個の抗体、抗体誘導体または抗体フラグメントを含む、請求項65に記載のキット。
【請求項67】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子により発現されるタンパク質の活性レベルを判定するための手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項68】
前記タンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項67に記載のキット。
【請求項69】
タンパク質サンプル回収手段をさらに含む、請求項65〜68のいずれか一項に記載のキット。
【請求項70】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを判定するための少なくとも1個の手段を含む、精神障害の診断用キット。
【請求項71】
少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項70に記載のキット。
【請求項72】
前記手段がアミノ酸アナライザーを含む、請求項70または71に記載のキット。
【請求項73】
生体サンプルを回収するための手段をさらに含む、請求項59〜72のいずれか一項に記載のキット。
【請求項74】
キットの使用説明書および判定された発現および/または活性レベルの解説書をさらに含む、請求項59〜73のいずれか一項に記載のキット。
【請求項75】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、または躁鬱病もしくは精神病性鬱病の診断のための、請求項59〜74のいずれか一項に記載のキット。
【請求項76】
統合失調症の診断のための請求項59〜75のいずれか一項に記載のキット。
【請求項77】
少なくとも1個の遺伝子および/またはタンパク質の発現レベルおよび/または活性レベルを測定するための判定ステップが、請求項59〜76のいずれか一項に記載のキットの使用を含む、請求項1〜22および26〜42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のタンパク質の使用であって、その1以上のタンパク質が、
a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;
b)(a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;
c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択される、使用。
【請求項79】
GCLがGCLMを含む、請求項78に記載の使用。
【請求項80】
GPXがGPX1を含む、請求項78に記載の使用。
【請求項81】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その1以上のポリヌクレオチドが請求項78〜80のいずれか一項で定義されたタンパク質をコードする配列を含み、その配列が組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている、使用。
【請求項82】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした請求項78〜80のいずれか一項に記載の1以上のタンパク質または請求項81に記載の1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、使用。
【請求項83】
精神障害の処置および/または予防に用いるための薬剤の製造を目的とした請求項78〜80のいずれか一項に記載の1以上のタンパク質および/または請求項81に記載の1以上のポリヌクレオチドの使用であって、その精神障害が統合失調症である、使用。
【請求項84】
請求項78〜80のいずれか一項で定義された1以上のタンパク質および/または請求項81で定義された1以上のポリヌクレオチドと医薬上許容される担体とを含む、精神障害の予防および/または処置に用いる医薬組成物。
【請求項85】
有効量の1以上のタンパク質を、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置のための方法であって、その1以上のタンパク質が、
a)GCL、GSS、GPXおよびXc−系またはそのフラグメント;
b)(a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質;
c)(a)または(b)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択される、方法。
【請求項86】
GCLがGCLMを含む、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
GPXがGPX1を含む、請求項85に記載の方法。
【請求項88】
有効量の1以上のポリヌクレオチドを、ヒトをはじめとする哺乳類に投与することを含む精神障害の予防および/または処置のための方法であって、その1以上のポリヌクレオチドが請求項85〜87のいずれか一項で定義されたタンパク質をコードする配列を含み、その配列が組織特異的プロモーターまたは構成的プロモーターと作動可能なように連結されている、方法。
【請求項89】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項90】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子を含む、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
GCLがGCLMを含む、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
GPXがGPX1を含む、請求項90に記載の方法。
【請求項93】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性を変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項94】
前記細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系を含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
GCLがGCLCを含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
GCLがGCLMを含む、請求項に記載の方法。
【請求項97】
少なくとも1個のアミノ酸の血漿レベルを変化させ得る有効量の薬剤を投与することを含む、精神障害の予防および/または処置のための方法。
【請求項98】
前記少なくとも1個のアミノ酸がシスチン、グルタミン酸、システイン、ホモシステインおよび/またはシステイニル−グリシンを含む、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記有効量のタンパク質および/またはポリヌクレオチドおよび/または薬剤が経口、舌下、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、髄内、くも膜下腔内、脳室内、眼内、くも膜下腔内、小脳内、頭蓋内、呼吸器系、気管内、鼻咽頭、経皮、皮内、皮下、腹膜内、鼻腔内、腸内、もしくは局所、または直腸手段、注入もしくはインプラントを介して投与される、請求項85〜98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項85〜99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
前記精神障害が統合失調症である、請求項85〜102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;
(c)(b)の細胞サンプルに関して、(a)の少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(d)(a)と(c)で判定された発現レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項103】
前記細胞サンプルが精神障害に罹患している対象由来の生体サンプルを含む、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の発現レベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の発現レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個の遺伝子の発現レベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項105】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCL、GSS、GPXおよび/またはXc−系遺伝子を含む、請求項102〜104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
GCLがGCLMを含む、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
GPXがGPX1を含む、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞サンプルにおいて、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(b)その細胞サンプルを候補薬剤と接触させること;
(c)(b)の細胞サンプルに関して、(a)の少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(d)(a)と(c)で判定された活性を比較すること
を含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性の変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項109】
前記細胞サンプルが精神障害に罹患している対象に由来する生体サンプルを含む、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された生体サンプルにおいて、in vivoまたはin vitroで、細胞内GSHの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質の活性レベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の活性レベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個のタンパク質の活性レベルの変化が、その候補薬剤がその精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項111】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質、タンパク質結合相手、および候補薬剤を合わせて反応混合物を形成すること;および
(b)候補薬剤の存在下および不在下でタンパク質とタンパク質結合相手の相互作用を判定すること
を含む、方法。
【請求項112】
細胞内GSHレベルの調節に関与する少なくとも1個のタンパク質がGCL、GGTおよび/またはXc−系タンパク質を含む、請求項108〜111のいずれか一項に記載の方法。
【請求項113】
GCLがGCLCを含む、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿サンプルにおいて、少なくとも1個のアミノ酸のレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の少なくとも1個のアミノ酸のレベルを比較すること
を含み、その少なくとも1個のアミノ酸のレベルの変化が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項115】
ステップ(c)におけるシステインおよび/またはホモシステインのレベルが判定される、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血液細胞において、GCL活性のレベルおよびGSHのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血液細胞におけるGCL活性のレベルとGSHのレベルを比較すること
を含み、血液細胞におけるGCL活性とGSHレベルの間に相関がないことが、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項117】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤を投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、GGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血漿におけるGGT活性のレベルおよびシステイニル−グリシンのレベルを比較すること
を含み、血漿におけるGGT活性とシステイニル−グリシンのレベルの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項118】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、
(a)精神疾患に罹患する素因があるか、または罹患している非ヒト試験動物に候補薬剤に投与すること;
(b)精神疾患に罹患する素因がないか、または罹患していない、対応する対照非ヒト動物に(a)の候補薬剤を投与すること;
(c)ステップ(a)および(b)の動物から単離された血漿において、グルタミン酸およびシスチンのレベルを判定すること;
(d)ステップ(c)の血漿におけるグルタミン酸およびシスチンのレベルを比較すること
を含み、血漿におけるグルタミン酸とシスチンの間の正の相関が、その候補薬剤が精神障害のモジュレーターであることを示す、方法。
【請求項119】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項102〜118のいずれか一項に記載の方法。
【請求項120】
前記精神障害が統合失調症である、請求項102〜119のいずれか一項に記載の方法。
【請求項121】
哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断方法であって、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定することを含み、その少なくとも1個の多型がその精神障害またはその疾病素因と関連している、方法。
【請求項122】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子が、グルタミン酸システインリガーゼ、調節サブユニット遺伝子(GCLM)および/またはグルタチオンシンセターゼ遺伝子(GSS)から選択される、請求項121に記載の方法。
【請求項123】
前記多型が、細胞内グルタチオンレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の低発現レベルと関連している、請求項121および122のいずれか一項に記載の方法。
【請求項124】
前記多型が前記少なくとも1個の遺伝子のイントロン、3’領域および/または5’領域内に存在している、請求項121〜123のいずれか一項に記載の方法。
【請求項125】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける単一多型を判定することを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜124のいずれか一項に記載の方法。
【請求項126】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定することを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因に関連している、請求項121〜125のいずれか一項に記載の方法。
【請求項127】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因に関連している、請求項121〜126のいずれか一項に記載の方法。
【請求項128】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜127のいずれか一項に記載の方法。
【請求項129】
遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定することを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項121〜128のいずれか一項に記載の方法。
【請求項130】
GCLM遺伝子の多型が
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875、rs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載に記載の方法。
【請求項131】
前記多型が、
(a)rs2235971、rs3170633、rs769211および/またはrs2301022である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項130に記載の方法。
【請求項132】
前記多型が、
(a)rs3170633である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項131に記載の方法。
【請求項133】
多型rs3170633の遺伝子型がヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される、請求項121〜129および132のいずれか一項に記載の方法。
【請求項134】
前記遺伝子型がGGである、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項136】
GSS遺伝子の多型が、
a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項137】
前記多型が、
(a)rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項136に記載の方法。
【請求項138】
前記多型が、
(a)rs3761144である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項137に記載の方法。
【請求項139】
GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項140】
GSS遺伝子とGCLM遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/または3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項141】
GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せが同型接合性である、請求項121〜129のいずれか一項に記載の方法。
【請求項142】
多型が遺伝子型分析により判定される、請求項121〜141のいずれか一項に記載の方法。
【請求項143】
遺伝子型分析が多型特異的プライマーの使用を含む、請求項142に記載の方法。
【請求項144】
遺伝子型分析が質量分析を含む、請求項142または143に記載の方法。
【請求項145】
遺伝子型分析がマイクロアレイ分析を含む、請求項142または143に記載の方法。
【請求項146】
前記精神障害が統合失調症、情動障害、精神作用物質(psychoaffective substance)使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病からなる群から選択される、請求項121〜145のいずれか一項に記載の方法。
【請求項147】
前記精神障害が統合失調症である、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子の少なくとも1個の多型の存在を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その少なくとも1個の多型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断組成物または診断用キット。
【請求項149】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する少なくとも1個の遺伝子がGCLM遺伝子および/またはGSS遺伝子から選択される、請求項148に記載の組成物またはキット。
【請求項150】
GCLMおよび/またはGSS遺伝子とハイブリダイズし、かつ、前記多型または多型の組合せの特異的判定を可能とする少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含む、請求項148に記載の組成物またはキット。
【請求項151】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける単一多型を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜150のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項152】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける単一多型を判定するための少なくとも1個のプライマーおよび/またはプローブを含み、その多型が前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜151のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項153】
遺伝子の1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜152のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項154】
遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜153のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項155】
遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せを判定するためのプライマーおよび/またはプローブの組合せを含み、その多型の組合せが前記精神障害またはその疾病素因と関連している、請求項148〜154のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項156】
GCLM遺伝子の多型が、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs2064764、rs769211、rs718873、rs718875および/またはrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項157】
多型が、
(a)rs2235971、rs3170633、rs2301022および/またはrs769211である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および、
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項156に記載の組成物またはキット。
【請求項158】
多型が、
(a)rs3170633である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡である、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項157に記載の組成物またはキット。
【請求項159】
多型rs3170633の遺伝子型がヌクレオチドAA、AGおよび/またはGGからなる群から選択される、請求項148〜155および158のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項160】
遺伝子型がGGである、請求項159に記載の組成物またはキット。
【請求項161】
GCLM遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211およびrs2301022、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項162】
GSS遺伝子の多型が、
(a)多型rs3746450、rs725521、rs1801310、rs2236270、rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096、rs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項163】
多型が、
(a)rs2236271、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144である、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項162に記載の組成物またはキット。
【請求項164】
多型が、
(a)rs3761144である、
(b)(a)の多型と連鎖不平衡にある、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せから選択される、
請求項163に記載の組成物またはキット。
【請求項165】
GSS遺伝子の少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096およびrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項166】
GSS遺伝子およびGCLM遺伝子の組合せの少なくとも1個の染色体コピーにおける多型の組合せが、
(a)多型rs2235971、rs3170633、rs769211、rs2301022、rs2236270、rs2273684、rs734111、rs2025096および/またはrs3761144、
(b)(a)の多型の少なくとも1個と連鎖不平衡にある多型、および
(c)(a)および/または(b)の多型の組合せ
からなる群から選択される、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項167】
GCLM遺伝子またはGSS遺伝子の2個の染色体コピーにおける多型の組合せが同型接合性である、請求項148〜155のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項168】
プライマー伸張のための酵素、ヌクレオチドおよび/または標識基をさらに含む、請求項148〜167のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項169】
統合失調症、情動障害、精神作用物質使用による障害、人格障害、せん妄、認知症、癲癇、パニック障害、強迫神経症、間欠性爆発性障害、衝動制御障害、精神病、注意欠陥多動障害(ADHD)、および躁鬱病または精神病性鬱病の診断のための、請求項148〜168のいずれか一項に記載の組成物またはキット。
【請求項170】
前記精神障害が統合失調症である、請求項169に記載の組成物またはキット。
【請求項171】
哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのマイクロアレイであって、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定するための少なくとも1個のプローブがそれに固定されている担体を含み、その少なくとも1個の多型、多型の組合せおよび/または遺伝子型が精神障害またはその疾病素因と関連している、マイクロアレイ。
【請求項172】
細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せの存在を判定することを目的とし、その少なくとも1個の多型、多型の組合せおよび/または遺伝子型が精神障害またはその疾病素因と関連している、哺乳類、特にヒトにおける精神障害またはその疾病素因の診断のためのプライマーおよび/もしくはプローブまたはプライマーおよび/もしくはプローブの組合せ。
【請求項173】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める1以上の有効成分と、所望により、医薬上許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントとを含む、医薬組成物。
【請求項174】
有効成分が、
a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、
b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および
c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択されるタンパク質である、請求項173に記載の組成物。
【請求項175】
有効成分が請求項174で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、請求項173に記載の組成物。
【請求項176】
有効成分がGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である、請求項173に記載の組成物。
【請求項177】
患者が、請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型、請求項133、134および141のいずれか一項で定義された少なくとも1個の遺伝子型および/または請求項135、139および140のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型の組合せを有する、請求項173〜176のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項178】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者における精神障害の処置および/または予防に用いるための、細胞内GSHレベルを高める薬剤の製造を目的とした、請求項173〜176のいずれか一項で定義された1以上の有効成分の使用。
【請求項179】
有効成分が、
a)GCLMおよび/もしくはGSSまたはそのフラグメント、
b)a)のタンパク質のいずれか1個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性%を有する生物活性タンパク質、および
c)a)またはb)のタンパク質のいずれか1個の生物活性変異体
からなる群から選択されるタンパク質である、請求項178に記載の使用。
【請求項180】
有効成分が請求項179で定義されたタンパク質をコードする配列を含むポリヌクレオチドである、請求項178に記載の使用。
【請求項181】
有効成分がGSH、または細胞内GSHレベルを高める化合物である、請求項178に記載の使用。
【請求項182】
患者が、請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型、請求項133、134および141のいずれか一項で定義された少なくとも1個の遺伝子型および/または請求項135、139および140のいずれか一項で定義された少なくとも1個の多型の組合せを有する、請求項178〜181のいずれか一項に記載の使用。
【請求項183】
細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与するための薬剤の製造を目的とした、精神障害に対して有効な化合物の使用。
【請求項184】
精神障害に対して有効であり、かつ/または細胞内GSHレベルを高める薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む精神障害の予防および/または処置方法。
【請求項185】
精神障害に対して有効な薬剤を、細胞内グルタチオン(GSH)レベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する患者に投与することを含む、精神障害の予防および/または処置方法。
【請求項186】
薬剤が、同時、個別または逐次使用のために、
(a)バルビタール酸塩およびその誘導体、ベンゾジアゼピン、カルボキサミド、ヒダントイン、スクシンイミド、バルプロ酸および他の脂肪酸誘導体から選択される抗癲癇薬、ならびに他の抗癲癇薬、
(b)通常の抗精神病薬、および
(c)非定型抗精神病薬
からなる群から選択される少なくとも1個の化合物(各場合において、有効成分は遊離形態または医薬上許容される塩の形態で存在する)と所望により少なくとも1個の医薬上許容される担体とを含む、請求項184または185に記載の方法。
【請求項187】
精神障害のモジュレーターをスクリーニングする方法であって、細胞内GSHレベルおよび/またはGSH酸化ストレス関連遺伝子発現の調節に関与する、少なくとも1コピーの遺伝子の活性に対する試験物質の効果を判定することを含み、その少なくとも1コピーの遺伝子が、その精神障害またはその疾病素因と関連している少なくとも1個の多型および/または少なくとも1個の多型の組合せを有する、方法。
【請求項188】
少なくとも1個の多型が請求項130〜132および136〜138のいずれか一項で定義され、少なくとも1個の遺伝子型が請求項133、134および141のいずれか一項で定義され、かつ/または少なくとも1個の多型の組合せが請求項135、139および140のいずれか一項で定義されている、請求項186に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図6−4】
【図6−5】
【図6−6】
【図6−7】
【図6−8】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【図7−4】
【図7−5】
【図7−6】
【図7−7】
【図7−8】
【図7−9】
【図7−10】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6−1】
【図6−2】
【図6−3】
【図6−4】
【図6−5】
【図6−6】
【図6−7】
【図6−8】
【図7−1】
【図7−2】
【図7−3】
【図7−4】
【図7−5】
【図7−6】
【図7−7】
【図7−8】
【図7−9】
【図7−10】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公表番号】特表2007−524408(P2007−524408A)
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548276(P2006−548276)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000337
【国際公開番号】WO2005/068649
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506242946)
【氏名又は名称原語表記】NOVARTIS FORSCHUNGSSTIFTUNG
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2005/000337
【国際公開番号】WO2005/068649
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506242946)
【氏名又は名称原語表記】NOVARTIS FORSCHUNGSSTIFTUNG
【Fターム(参考)】
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