説明

精米の糠量判定方法及びその装置

【課題】精米を加熱した際に、精米に亀裂や膨張などの損傷発生を防止し、残留糠量の判定を正確に行う方法及びその装置を提供する。
【解決手段】
加熱する前の精米(元試料)の品位を予め検査し、この検査結果(品位情報)に基づいて加熱条件を設定して加熱を行うので、加熱作用によって精米に亀裂が生じたり精米が膨張したりするなどの損傷を生じることなく、残留糠部分を変色させることができる。よって、変色した糠部分を判定する際に、前記損傷が生じていないので誤判定が生じることがなく、残留糠量の判定が正確に行え、判定方法の再現性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米工場等において搗精した精白米やこれを更に無洗米処理した無洗米などの精米表面に残留した糠(ぬか)の量を判定する方法及びその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の精米表面における残留糠量判定方法としては、前記精米の表面を肉眼で観察して判定する肉眼判定方法や、白度計を使って精米の白度(白さ)を測定して判定する白度判定方法が知られている。また、このほか、前記精米をNMG試薬液に浸漬させることにより、精米表面の糠層(糊粉層)が濃い青色に染色し、胚乳部がピンク色に染色することを利用して、その染色の度合いによって判定する試薬判定方法も知られている。
【0003】
しかし、これら三つの判定方法には以下の問題点があった。すなわち、上記肉眼判定方法には、判定に熟練経験を要し、判定結果が判定者によってばらつく問題があり、また、前記白度判定方法については、精米表面に残留した微量な糠の検出ができないという問題があった。さらに、前記試薬判定方法については、前記NMG試薬液に精米を浸漬した際に糠が精米表面から剥がれ落ち、このため正確な糠の残留量の判定ができない等の問題があった。
【0004】
一方、上記問題点にかんがみて成された残留糠量判定方法が知られている(特許文献1)。特許文献1による方法は、精米の表面を加熱(150℃〜200℃で5分間〜20分間加熱)して精米表面に残留している糠を変色させ、この精米表面を撮像して前記変色部分の面積を判定し、この面積に基づいて残留糠量を判定するものであり、この方法によれば、上記問題点は解決される。

【0005】
【特許文献1】特開2005−221235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1による方法においては、以下のような問題点が見つかった。すなわち、精米を加熱した際に、精米に亀裂が発生するという懸念点である。この方法によれば、精米の加熱条件を、加熱温度は150℃〜200℃の範囲内で、また、加熱時間は5分間〜20分間の範囲内で行う定温定時条件としてあるが、加熱前の精米のそれぞれは、水分値や、精米内外における亀裂(胴割)の有無など、精米の状態が異なっており、このため、精米の加熱を上記定温定時条件で行った場合には、その加熱作用によって精米に亀裂が生じたり精米が膨張したりして損傷が生じることが懸念される。このように精米に損傷が生じてしまうと、当該精米表面の撮像画像から残留糠量を判定する際に、亀裂部分が暗く又は明るく検出されるなどして、変色した糠部分を判定する際に誤判定が生じてしまい、残留糠量の判定が正確に行えないという問題点が懸念される。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点にかんがみ、精米を加熱した際に、精米に亀裂や膨張などの損傷発生を防止し、残留糠量の判定を正確に行う方法及びその装置を提供することを技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
精米の糠量判定方法としては、
加熱によって精米表面の糠を変色させる加熱工程(加熱作用によって胚乳部よりも脂質を多く含む糠部分が変色する。)と、
該加熱変色工程で得られた精米を撮像する加熱試料撮像工程と、
該撮像工程で得られた撮像データに基づいて、精米表面において変色した部分を特定して残留糠量を判定する残留糠量判定工程と、
を有する方法において、
前記加熱工程の前工程には、加熱前の精米における品位を検査する品位検査工程を備えるとともに、前記加熱工程は、前記品位検査工程で得た品位情報に基づいて加熱条件を設定するという技術的手段を講じる。また、前記品位検査工程は、例えば、精米における亀裂の有無及び/又は精米における水分について検査し、これらの検査結果を精米の品位情報とすることができる。
【0009】
上記技術的手段によると、精米の前記加熱により、被判定精米(精米)の表面において、胚乳部よりも脂質を多く含む糠成分が変色する。次いで、この加熱した精米を撮像し、該撮像データを基にして前記変色部分を特定して残留糠部分と判定するというものである。
【0010】
一方、精米の糠量判定装置としては、
試料板(試料整列保持手段)に載せた精米の表面を加熱して該精米表面に残留した糠を変色させる加熱部と、
前記試料板に載せた加熱後の精米の表面を撮像する撮像部と、
該撮像装置による精米の撮像データに基づいて精米表面において変色した糠部分を特定し、この特定した糠部分に基づいて残留糠量を判定する判定部と、
該判定部で判定した判定結果等を表示する表示部と、
を備えた装置において、
前記加熱部によって加熱される前の精米の品位を検査する品位検査部を備えるとともに、該品位検査部で得た品位情報に基づいて前記加熱部の加熱条件を設定する制御部を備えるという技術的手段を講じる。
【0011】
また、前記品位検査部は、精米における亀裂の有無を判定する亀裂判定部及び/又は、精米の水分を判定する水分判定部とから構成するという技術的手段を講じる。
前記亀裂判定部は、前記撮像部を兼用して撮像した精米の撮像データに基づいて亀裂の有無を判定するものとする。
前記水分判定部は、前記加熱部を兼用して精米を加熱(40℃〜60℃の温度で5分間〜20分間)し、このとき精米の単位時間当たりの重量の減少量を、例えば、ロードセルを使って検出し、この減少量に基づいて水分値を予測的に判定するものとする。
【0012】
前記加熱部及び撮像部は、それぞれ閉鎖空間内に設けるようにして、外気の温度等の影響を受けることなく精米に前記加熱条件による加熱作用を正確に与え、また、外の光の影響を受けることなく精米の撮像データを正確に取得できるようにするとよい。
【0013】
前記加熱部を設けた閉鎖空間には、該閉鎖空間内の温度を低下させる冷却手段を設ける。該冷却手段は、例えば、排気ファンとする。加熱が終了した精米は高温であり、高温状態の精米を撮像すると撮像データ等に支障がでるため、撮像に先立って予め精米温度を低下させるために、室内空気を閉鎖空間外に排出するとよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、精米を加熱することによって胚乳部よりも脂質を多く含む糠部分を変色させ、この精米を撮像して変色した部分を特定して残留した糠の量を判定する方法及びその装置において、加熱する前の精米(元試料)の品位を予め検査し、この検査結果(品位情報)に基づいて加熱条件を設定して加熱を行うので、加熱作用によって、精米に亀裂が生じたり精米が膨張したりするなどの損傷が生じることなく、残留糠部分を変色させることができる。よって、変色した糠部分を判定する際に、前記損傷が生じていないので誤判定が生じることがなく、残留糠量の判定が正確に行える。このため、精米工場などにおける搗精管理の品質がより向上する。
また、本発明によると、判定する際に都度(判定する精米が替わるたびに都度)、精米(元試料)の品位情報を検査取得して前記のように加熱条件を設定して加熱するので、加熱の際に、精米に前記損傷を生じさせることなく糠部分だけを変色させることができるので、判定方法において再現性を有するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明における精米の糠量判定装置1の構成図である。本発明において、糠量判定する対象の精米は、精白米及び無洗米(無洗米処理したもの。)(以下、「精米」という。)である。
【0016】
前記糠量判定装置1は、前記精米Kを加熱する加熱部2と、前記精米を撮像する撮像部3と、該撮像部3による撮像データ等を基に精米の残留糠量を演算して判定する演算部4と、該演算部4で求めた残留糠量の結果を表示する表示部5とを有する。また、本装置で判定する際には、試料整列保持手段として、例えば、試料板6を用いる。この試料板6は、平板状をなし、複数の精米Kを整列載置できるように、一粒の精米Kが入る大きさの溝6aが複数個配設してある。前記溝6aは透明に構成する。
【0017】
加熱部2:
前記加熱部2は、前記試料板6を載置するロードセル(重量測定手段)2aと、前記試料板6上の精米に対して上方から放射熱を照射する放射式加熱器2b(赤外線ランプや遠赤外線ヒータなど)のほか、加熱後の前記試料板6(精米)を冷却する冷却手段(冷却ファンなど)2dをそれぞれ閉鎖空間内に設けて構成するようにし、これにより、外気の温度等の影響を受けることなく精米に後述の加熱条件による加熱作用を正確に与えることができるようにしてある。また、前記放射式加熱器2bと試料板6との間には、放射式加熱器2bの放射熱の温度を測定する温度センサ2cを配設する。前記ロードセル2a、放射式加熱器2b、温度センサ2c及び冷却ファン2dは、前記演算部4と電気的にしている。
【0018】
撮像部3:
前記撮像部3は、前記試料板6を保持する任意の保持手段(図示せず。)を設けるとともに、前記試料板6の精米に対して上方から撮像用の光を照射する照射部3a,3aを配設する。該照射部3a,3aは、可視光を照射するものを使用し、例えば、白色の蛍光灯やハロゲンランプ等を使用する。また、この外、前記試料板6の上方に配設して、試料板6上の精米の投影画像を撮像する投影画像撮像手段3b及び、前記試料板6の下方に配設して、前記精米の透過画像を撮像する透過画像撮像手段3cも構成する。
【0019】
前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cは、CCDエリアセンサやCMOSエリアセンサ、走査型のCCDラインセンサなどの使用が可能である。これらの各センサにおけるピクセル(画素)Pの大きさ(縦横の各長さ)は、10ミクロンメートル〜150ミクロンメートルの範囲のものがよい(図6参照)。上記CCDエリアセンサ等の撮像手段は熱に弱く、高温の撮像対象物に接近し過ぎると正確な撮像データが取得できないことが懸念される。このため、このことを考慮して前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cは、前記試料板6から十分な距離をとった位置に配設するのがよい。前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cは前記演算部4と電気的に接続し、取得した投影画像及び透過画像が演算部4に出力されるようになっている。
【0020】
なお、前記撮像部3も、前記加熱部2と同様に、前記照射部3a,3aや前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3c等を閉鎖空間内に設けるようにして、外の光の影響を受けることなく精米の撮像データを正確に取得できるようにするとよい。閉鎖空間の内壁は、照射光の反射を防止する観点から、アルマイト加工などを施した艶消しの黒色とするのが好ましい。
【0021】
演算部4:
前記演算部4は、前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cからの各撮像データを取得して画像処理を行う画像処理部7を備えるとともに、該画像処理部7で作成した画像データ等を入手して、残留糠量を判定や加熱前の精米の品位の判定等を行う判定制御部8を備える。画像処理部7と判定制御部8とは入出力回路(I/O)9を介して接続する。前記判定制御部8は、前述のように、前記ロードセル2a、温度センサ2c及び放射式加熱器2bのぞれぞれと接続している。このため、前記判定制御部8は、前記ロードセル2aの重量検出値に基づいて精米の水分値の予測や、前記加熱前の精米の品位の判定結果と前記予測水分値とに基づく精米の加熱条件の設定、この外、前記温度センサ2cの検出温度に基づいて、前記加熱条件になるように前記放射式加熱器2bの放射熱出力のコントロールも行う。
【0022】
前記判定制御部(判定部)8は、例えば、中央演算処理部をなす演算処理部(CPU)7a、読み出し専用記憶部(ROM)7b及び読み出し・書き込み用記憶部(RAM)7cから構成するとよい。なお、前記ROM7bには、残留糠量を判別する際に使用する糠部分か否かを判別するしきい値や、前記精米の予測水分値を判定するために使う判定用データの外、精米の前記加熱条件等が予め設定記憶してある。
【0023】
表示部:
前記表示部5は、判定された残留糠量等を表示するためのものであり、前記演算部5のI/O9に接続してある。
【0024】
このほか、精米の糠量判定装置1には、図1に示したように、前記撮像部3と加熱部2との間において、前記試料板6を移送する移送手段(例えば、ベルトコンベア等)10を設けてもよい。なお、前記移送手段10を設けない場合には、前記試料板6の前記双方間の移動はオペレータの手作業によって行う。
【0025】
作用:
以下、上記精米の糠量判定装置1の作用について、図2に示した残留糠量判定フローを参照しながら説明する。
【0026】
STEP1(試料セット工程):
始めに、本発明でいう元試料(被判定用)の精米を前記試料板6の各溝6aにセットする。
【0027】
STEP2(元試料撮像工程):
次に、前記STEP1で精米をセットした前記試料板6を前記撮像部3の保持手段(図示せず。)に保持する。この後、前記試料板6上の精米は、前記照射部3a,3aからそれぞれ撮像用の光(可視光)が照射され、前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cによって投影画像と透過画像とが撮像される。この投影画像及び透過画像は、前記判定制御部8に送られる。
【0028】
STEP3(元試料亀裂判定工程<品位検査工程>):
前記判定制御部8は、前記試料板6上の各精米の内外における亀裂の有無を判定するために、前記投影画像及び透過画像を基にしてこれを行う。亀裂判定は、各精米画像において、投影画像及び透過画像の画素情報(光量値)と亀裂判定用しきい値(前記ROM7bに予め記憶)との比較により行われる。このとき、前記光量値が亀裂判定用しきい値以下であるとその画素は亀裂画素と判定され、この亀裂画素が一粒の精米画像内に連続して複数個(任意に設定する)検出された場合には当該精米を「胴割粒」として判定し、これ以外は「正常粒」として判定する。以上の判定結果に基づいて、試料板6上の全精米における「胴割粒」と「正常粒」の比率を演算し、この演算値を元試料亀裂情報(品位情報1)とする。
【0029】
なお、前記「胴割粒」を判定する際に、亀裂の大小(亀裂画素の数)によって例えば重胴割粒や軽胴割粒のように二段階に判別してこの各粒数の割合を求め、これを上記品位情報に加味すれば、前記品位情報が更に詳細なものとなり、後述する亀裂等を発生させない加熱条件の設定に更に役立つ。
【0030】
STEP4(試料移動工程):
次に、前工程において品位情報の取得を終えた試料板6を、前記移送手段10又はオペレータの手作業によって、ゆっくりとそのまま撮像部3から加熱部2におけるロードセル2a上に移送する。
【0031】
STEP5(元試料水分値予測工程<品位検査工程>):
次に、まず、前記判定制御部8は前記試料板6を載せたロードセル2aから重量信号を検出し、試料板6上の精米の総重量を判定する。次に、前記判定制御部8は前記放射式加熱器2bをON(始動)にして試料板6上の精米Kを加熱する。このときの加熱条件は、加熱温度を40℃〜60℃でかつ加熱時間を5分間〜20分間の範囲において適宜定める。加熱条件の実行は、前記判定制御部8によって温度センサ2cの検出温度を基に前記放射式加熱器2bの放射熱出力を制御するとともに、加熱時間も管理する。この加熱作用を受けた精米は、加熱温度が比較的低温であるため、水分が蒸発して重量が下がるだけで表面に残留した糠が変色することはない。
【0032】
上記加熱が終了すると再度、前記判定制御部8はロードセル2aから重量信号を検出して試料板6上の精米の総重量を判定する。そして、前記加熱作用によって減少した精米の重量減少量(値)を演算して求めた後、この重量減少量(値)を前記加熱時間で除算した値(以下、この値を「重量微分値」という。)を求める。この重量微分値は、単位時間当たりの精米水分の減少割合(減少の傾き)を意味する。そして、前記で求めた重量微分値に基づいて、予め前記ROM7bに設定した図3のような重量微分値と予測水分値の関係データを参照して、試料板6上の全精米(元試料)における元試料予測水分値(品位情報2)を判定する。
【0033】
STEP6(加熱工程):
加熱条件の選択(設定)
次に、前記判定制御部8は、前記「元試料亀裂情報(品位情報1)」(胴割粒と正常粒の比率)(前記STEP3)と「予測水分値(品位情報2)」(STEP5)とに基づいて、予め前記ROM7bに設定した、元試料亀裂情報(品位情報1)と元試料予測水分値(品位情報2)の各品位情報の関係から加熱条件(加熱パターン)を選択する(図4参照)。
【0034】
前記加熱条件は、例えば、図4に示したように、加熱条件A,B,C,D,E,F,G,H,I、の九つの条件を設定するとよい。これらの九つの加熱条件は例えば図5に示した各グラフ線で示す。これら各加熱条件の理論は、元試料予測水分値(品位情報2)については、元試料予測水分値が高水分のものほど、加熱温度を比較的急激に上昇させても精米に亀裂や膨張は発生しない。
【0035】
また、元試料亀裂情報(品位情報1)については、元試料において胴割粒が多い(劣)ものほど、最高加熱温度を比較的低くすることにより、精米に亀裂や膨張の発生はない。なお、図4において示す元試料亀裂情報の「優」は、胴割粒が少ないもの意味する。
【0036】
さらに、加熱時間については、図5に示した加熱条件A,B,C,D,E,F,G,H,Iにおいて、加熱開始後、各グラフ線の終端部の時点をもって加熱終了とする。この加熱時間は、加熱条件A,B,C,D,E,F,G,H,Iのいずれについても、精米に与える熱エネルギーの積算値を同一にすることにより、精米に亀裂や膨張は発生しない。前記熱エネルギーの積算値は、図5の(a)において加熱条件Aを例にとって示している斜線部の面積を演算することによって定まる。したがって、加熱条件B,C,D,E,F,G,H,Iについても、各前記面積が加熱条件Aの面積と同一になるように加熱時間(加熱を終了させる時点)を定めるとよい。
【0037】
前記加熱条件の実行:
前記判定制御部8は、上記のようにして加熱条件を選択設定した後、前記放射式加熱器2bを再度ON(始動)にして前記試料板6上の精米Kの加熱を開始する。このとき、前記加熱条件の実行については、前記判定制御部8が、温度センサ2cの検出温度を基にして前記放射式加熱器2bの放射熱出力を制御するとともに、加熱時間も管理する。上記加熱条件の実行により、残留糠は褐色に変色し、米粒に損傷(亀裂や膨張)は生じない。
【0038】
前記試料板(精米)の冷却:
上記加熱が終了すると、前記判定制御部8は前記試料板6(精米K)の温度を低下させるために、前記冷却ファン2dをON(始動)にして閉鎖空間内にこもった熱風を閉鎖空間の外に排風する。この前記冷却ファン2dによる排風運転は、前記温度センサ2cの検出温度が5℃〜30℃の範囲になるまで継続する。
【0039】
STEP7(試料移動工程):
前記試料板6の冷却が終了すると、前記試料板6を再度、撮像部3における閉鎖空間内に移送して戻し、前記保持手段(図示せず。)に保持させる。
【0040】
STEP8(加熱試料撮像工程):
次に、前記試料板6上の精米Kは閉鎖空間内において、前記照射部3a,3aから撮像用の光(可視光)が照射され、前記投影画像撮像手段3b及び透過画像撮像手段3cは、当該精米Kの投影画像と透過画像を撮像する。このとき、前記試料板6及ぶ精米Kは冷却されているので、投影画像及び透過画像は高温による異常は発生せず正確な画像が得られ、後の残留糠部分を判定する際に支障がなく正確な判定ができる。これらの投影画像及び透過画像は前記画像処理部7に入る。
【0041】
STEP9(粒形判定工程):
前記画像処理部7は、前記投影画像の各画素情報(光量値)と外形判定用しきい値(前記ROM7bに予め記憶)を比較して精米一粒ごとの外形画素を二値化して特定し、図6のように精米の外形Gを特定し一粒を認識する。この外形データは前記判定制御部8に送られる。
【0042】
STEP10(変色部判定工程):
次に、前記判定制御部8は、精米一粒ごとに、その各画素情報(光量値)と残留糠判定用しきい値(前記ROM7bに予め記憶)とを比較して残留糠部分と判定される画素Nを二値化して特定する(図6参照)。
【0043】
STEP11(残留糠量の判定工程):
次に、前記判定制御部(判定部)8は、精米一粒ごとに、残留糠部分(変色部分)と判定された前記画素Nの数をカウントし、これを精米一粒の全画素数で除算する。この除算値を、残留糠量として判定する。
【0044】
STEP12(判定結果表示工程):
次に、前記判定制御部8は、精米一粒ごとに判定した残留糠量を前記表示部5に表示する。該表示部5への残留糠量の表示形態については、精米一粒ごとに表示したり、前記試料板6上にセットしていた全精米の平均残留糠量を表示したり、適宜行うものとする。また、残留糠量の表示とともに、元試料の撮像画像や加熱終了後の精米の撮像画像も表示するようにしてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、加熱条件を選択する際に元試料(精米)の品位情報として、亀裂情報と予測水分の両方を用いたが、この品質情報は、前記亀裂情報または予測水分のいずれか一方を使用選択してもよく、また、これ以外の品位項目を使用してもよい。
【0046】
なお、本発明によれば上記加熱(STEP6)によって、胚芽部分も糠と同様に焦げて黒っぽく変色させることができるので、加熱後の精米の撮像データから変色した胚芽部分を適宜画像解析して特定し、残存した胚芽の割合を判定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の精米の糠量判定装置を示す。
【図2】本発明における精米の残留糠量の判定フローを示す。
【図3】重量微分値と予測水分値の関係を示したグラフ図を示す。
【図4】図2のSTEP6における加熱条件(パターン)の選択図を示す。
【図5】図4における各加熱条件(加熱温度と加熱時間)のグラフ図を示す。
【図6】加熱した精米を撮像し、精米の粒形状及び変色部分を画素で示した画像を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 糠量判定装置
2 加熱部
2a ロードセル(重量測定手段)
2b 放射式加熱器
2c 温度センサ
2d 冷却ファン(冷却手段)
3 撮像部
3a 照射部
3b 投影画像撮像手段
3c 透過画像撮像手段
4 演算部
5 表示部
6 試料板(試料整列保持手段)
6a 溝
7 画像処理部
7a 演算処理部(CPU)
7b 読み出し専用記憶部(ROM)
7c 読み出し・書き込み用記憶部(RAM)
8 判定制御部(制御手段)
9 入出力回路(I/O)
G 精米の外形を示す画素
N 精米の変色部分(残留糠部分)を示す画素
K 精米

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱によって精米試料表面の糠を変色させる加熱工程と、
該加熱変色工程で得られた精米を撮像する加熱試料撮像工程と、
該撮像工程で得られた撮像データに基づいて、精米表面において変色した部分を特定して残留糠量を判定する残留糠量判定工程と、
を有する精米の糠量判定方法において、
前記加熱工程の前工程には、加熱前の精米における品位を検査する品位検査工程を備えるとともに、前記加熱工程は、前記品位検査工程で得た品位情報に基づいた条件で加熱することを特徴とする精米の糠量判定方法。
【請求項2】
前記品位検査工程は、精米における亀裂の有無及び/又は精米における水分について検査することを特徴とする請求項1に記載の精米の糠量判定方法。
【請求項3】
試料整列保持手段に載せた精米の表面を加熱して該精米表面に残留した糠を変色させる加熱部と、
該加熱部によって加熱した精米の表面を撮像する撮像部と、
該撮像部が撮像した精米の撮像データに基づいて糠部分に相当する変色部分を特定し、この特定した糠部分に基づいて残留糠量を判定する判定部と、
該判定部で判定した判定結果等を表示する表示部と、
を備えた精米の糠量判定装置において、
前記加熱部によって加熱される前の精米の品位を検査する品位検査部を備えるとともに、該品位検査部で得た品位情報に基づいて前記加熱部の加熱条件を設定してこれを実行させる制御部を備えることを特徴とする精米の糠量判定装置。
【請求項4】
前記品位検査部は、精米における亀裂の有無を判定する亀裂判定部及び/又は、精米の水分を判定する水分判定部とからなることを特徴とする請求項3に記載の精米の糠量判定装置。
【請求項5】
前記亀裂判定部は、前記撮像部を兼用して撮像した精米の撮像データに基づいて亀裂の有無を判定するものであることを特徴とする請求項4に記載の精米の糠量判定装置。
【請求項6】
前記水分判定部は、前記加熱部を兼用して精米を加熱しながら精米の重量の減少量を検出し、この減少量に基づいて水分を予測判定するものであることを特徴とする請求項4に記載の精米の糠量判定装置。
【請求項7】
前記水分判定部は、ロードセルによって検出した精米の重量に基づいて水分を判定することを特徴とする請求項6に記載の精米の糠量判定装置。
【請求項8】
前記加熱部及び撮像部は、それぞれ閉鎖空間内に設けるとともに、前記前記加熱部を設けた閉鎖空間には、該閉鎖空間内の温度を低下させる冷却手段を設けたことを特徴とする請求項7に記載の精米の糠量判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−292350(P2008−292350A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−139049(P2007−139049)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】