説明

精米工場におけるコンテナの搬送方法

【課題】精米工場においてスタッカークレーンの稼動効率を向上させるコンテナの搬送方法を提供する。
【解決手段】
監視制御部8は、コンテナ投入部3fにおいてコンテナKへの米粒の充填が完了した時点において、多段待機ラック4から空状態のコンテナKをコンテナ投入部3fに搬入し、この後に、米粒の充填が完了した充填コンテナを多段待機ラック4に搬出するように搬送部(スタッカークレーン)5に搬送指示信号を出力するため、スタッカークレーン5の往路及び復路の稼動において空運転状態を生じることなく、常にコンテナKを搬送するのでスタッカークレーン5の稼動効率が向上する。このため、精米工場1においては、スタッカークレーン5の稼動効率が向上するので、各載置部(S1,S2,S3,S4)において、次に充填する空のコンテナKが搬送されるまで精米処理ラインを一時的に停止させるようなことがなくなり、精米工場の生産性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精米工場において、多段棚の上方から下方にライン配設した精米処理ラインによって精白処理した精白米をコンテナに収容し、該コンテナをスタッカークレーン(搬送手段)によって多段待機ラック(多段棚)の任意ラックに移送して保管することに係り、特に、前記コンテナを多段待機ラックに搬送する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の精米工場においては、精米処理ラインを多段ラックにおいて上段から下段にわたって複数の処理装置を順次配設してライン構成したものが知られている(特許文献1)。この精米処理ラインは、多段待機ラックに、上段から下段に向って、例えば、原料供給部、計量部、精米部、無洗米製造部、を各段に順次配設し、最下段には無洗米処理した米粒をコンテナに供給するコンテナ投入部が配設されている。前記精米処理ラインは複数のラインを構成し、該各精米処理ラインのコンテナ投入部には、無洗米処理した米粒を供給・充填するための空状態のコンテナが設置され、精米工場の中央監視制御装置の指示によって、多段待機ラックに載置してある空コンテナをスタッカークレーンによって搬送・載置される。そして、例えば、精米処理ラインAと精米処理ラインBとがある場合において、精米処理ラインAのコンテナに米粒が満タンに充填された場合にはスタッカークレーンによってこれを多段待機ラックに搬出した後に、空コンテナが替わりに搬入される。このコンテナの搬入出は精米処理ラインBにおいても同様に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3969441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記精米工場においては、上記多段待機ラックとコンテナ投入部との間をスタッカークレーンがコンテナ搬送する際、スタッカークレーンの稼動効率に問題点があった。すなわち、上記精米工場においては、精米処理ラインA(コンテナ投入部)において米粒の充填を終えた場合、当該コンテナはスタッカークレーンによって多段待機ラックに搬送(搬送1)し、次いで空状態のコンテナを多段待機ラックから精米処理ラインAのコンテナ投入部に搬送(搬送2)している。このため、前記搬送1及び搬送2のいずれにおいても、往復の片方の搬送時にスタッカークレーンは、コンテナを搬送しない、いわゆる「空運転」の稼動状態になる。この稼動状況は、精米処理ラインBにおいても同様である。このため、スタッカークレーンの稼動において前記空運転が生じることは、スタッカークレーンの稼動効率を低下する要因となっていた。
そこで、本願発明は、上記問題点にかんがみ、スタッカークレーンを空運転することなく稼動効率が向上した精米工場におけるコンテナの搬送方法を提供することを技術的課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、請求項1により、
搬入された玄米を荷受して精選を行う荷受・精選部(2)と、
該荷受・精選部で処理した玄米を供給して精米を行う精米部(3)と、
該精米部で処理した精米をコンテナに投入・充填するコンテナ投入部(3f)と、
該コンテナ投入部(3f)で精米を投入・充填したコンテナK及び空状態のコンテナKを載置して待機させる多段待機ラック(4)と、
該多段待機ラック(4)と前記コンテナ投入部(3f)との間においてコンテナKを上下方向に昇降させるリフト部(5a)及び左右方向に移動させるクレーン部(5b)を有してコンテナの搬入出を行う搬送部(5)と、
前記荷受・精選部(2)、精米部(3)、コンテナ投入部(3f)、多段待機ラック(4)及び搬送部(5)の各工程の稼動状況を監視しながら各工程を制御する監視制御部(8)と、を備えた精米工場(1)において、
前記監視制御部(8)は、コンテナ投入部(3f)においてコンテナKへの米粒の充填が完了した時点において、前記多段待機ラック(4)から空状態のコンテナKをコンテナ投入部(3f)に搬入し、この後に、米粒の充填が完了した充填コンテナKを多段待機ラック(4)に搬出するように前記搬送部(5)に搬送指示信号を出力する、という技術的手段を講じるものである。
【0006】
また、請求項2により、
前記コンテナ投入部(3f)はコンテナKを載置する載置部(S1,S2,S3,S4)を複数備えるとともに、上部に、該載置部(S1,S2,S3,S4)のいずれか一方に載置したコンテナKへの充填切換弁(3e,3e)を配設した構成にし、前記監視制御部(8)が前記充填切換弁(3e,3e)を適宜切換えてコンテナKに精米を充填するようにするのがよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、監視制御部は、コンテナ投入部においてコンテナへの米粒の充填が完了した時点において、多段待機ラックから空状態のコンテナをコンテナ投入部に搬入し、この後に、米粒の充填が完了した充填コンテナを多段待機ラックに搬出するように搬送部(スタッカークレーン)に搬送指示信号を出力するため、スタッカークレーンの往路及び復路の稼動において空運転状態を生じることなく、常にコンテナを搬送するのでスタッカークレーンの稼動効率が向上する。このため、精米工場においては、スタッカークレーンの稼動効率が向上するので、各載置部において、次に充填する空のコンテナKが搬送されるまで精米処理ラインを一時的に停止させるようなことがなくなり、精米工場の生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の精米工場の全体構成図
【図2】本発明の精米工場におけるコンテナの搬送方法を説明する概念図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態における精米工場1の全体構成を図1に示す。
【0010】
前記精米工場1は、荷受・精選部2、精米部3、多段待機ラック4、搬送部(スタッカークレーン)5及び精米ブレンド・選別・包装部6を構成するほか、前記荷受・精選部2と精米部3との間には玄米を搬送供給する空気搬送手段7が配設してある。また、前記荷受・精選部2、精米部3、多段待機ラック4、スタッカークレーン5、精米ブレンド・選別・包装部6及び空気搬送手段7の各稼動状況を監視しながらその各工程を制御する監視制御部8も構成してある(図1)。
【0011】
前記荷受・精選部2は、搬入した原料玄米を荷受する荷受ホッパーからなる荷受部2aを備えるとともに、多段棚の上段から下段に向って粗選機2b、金属検出器2c、光学石抜機2d、計量機2e、加温・加湿装置2fを順次配設してライン構成されている。また、前記荷受部2aで荷受した玄米は昇降機2gによって粗選機2bに搬送供給されるようにしてある。
【0012】
前記精米部3は、上下方向の多段棚を有し、その上段から下段に向って原料供給タンク3a、計量機3b、精米機3c、シフター3d、充填切換弁3e及びコンテナ投入部3fを順次配設してなる精米処理ラインAと、これに併設した同様構成の精米処理ラインBとからなる。前記精米処理ラインAにおけるコンテナ投入部3fは、精米処理した精米をコンテナに供給・充填する載置部(S1,S2)を二つ併設して構成してある。同じく、前記精米処理ラインBにおけるコンテナ投入部3fも、精米処理した精米をコンテナに供給・充填するための載置部(S3,S4)が二つ併設して構成してある。また、前記載置部(S1,S2)と載置部(S3,S4)の各上方における精米の搬送経路にはそれぞれ、充填切換弁3e,3eを配設し、コンテナに供給する精米の排出流路の切換えが行なえるようにしてある。前記充填切換弁3e,3eの切換え制御は、前記監視制御部8によって行われるようにしてある。
【0013】
前記荷受・精選部2(加温・加湿装置2f)と精米部3(原料供給タンク3a)とは、空気搬送手段7(エアー搬送手段)によって接続し、精選玄米が精米部3に搬送供給されるようにしてある。空気搬送手段7は、被搬送物の玄米の供給ホッパー7cと、該供給ホッパーと接続し、かつ、搬送先の原料供給タンク3aと接続する搬送管7aと、該搬送管7aの搬送始端側と接続した搬送空気供給装置7dとを有してなる。前記搬送管7aの経路の途中には二方向切換弁7bを配設する。該二方向切換弁7bに延設されて各原料供給タンク3a,3aに接続する搬送管7e,7fは、経路中の各終端近傍に、搬送空気から玄米を分離する分離装置7g,7hが配設してある。前記二方向切換弁7bの切換え制御は、前記監視制御部8によって行われるようにしてある。
【0014】
前記多段待機ラック4は、前記コンテナKを載置できる棚を上下に複数段構成したものである。各棚には、複数のコンテナKを並べて載置することができるようになっている。
【0015】
前記搬送部(スタッカークレーン)5は、コンテナKを上下方向に昇降させるリフト部5a及び左右方向に移動させるクレーン部5bを有し、前記監視制御部8からの駆動信号によってコンテナKの搬入出を行う構成になっている。そして、前記スタッカークレーン5は、前記多段待機ラック4と載置部(S1,S2)及び載置部(S3,S4)との間において、コンテナKを搬入出するように構成してある。
なお、図1において、前記搬送部5は、左右に二つ記載してあるがこれは説明の便宜上のためであり、実際には一つである。また、同じく図1において、前記多段待機ラック4も左右に二つ記載してあるがこれも説明の便宜上のためであり、実際には一つである。
【0016】
前記精米ブレンド・選別・包装部6は、上下方向の多段棚を有し、その上段から下段に向って、コンテナ載置部6a、ブレンド計量機6b、光選別機6c、静電選別機6d、比重選別機6e及び包装装置6fを順次配設してライン構成してある。
【0017】
次に、上記精米工場の作用を説明する。
【0018】
前記精米工場1に搬入された原料は、荷受・精選部2において、荷受部2aに投入された後に昇降機2gを介して粗選機2bに搬送されて粗選作用を受け、この後、光学石抜機2d、計量機2e及び加温・加湿装置2fに順次供給され各処理が行われる。前記加温・加湿装置2fにおいて加温・加湿処理された玄米は、前記空気搬送手段7の供給ホッパー7cに供給され、搬送空気供給装置7dからの搬送エアーによって搬送管7aの中を通って前記精米部3に搬送される。前記玄米は、前記二方向切換弁7bの適宜切換えによって、切換えた側の搬送管7f(又は搬送管7e)を通って分離装置7h(又は分離装置7g)に入り、搬送空気から分離されて前記精米処理ラインA(又は精米処理ラインB)に供給される。
【0019】
前記精米部3の精米処理ラインAに供給された玄米は、原料供給タンク3aから順次、計量機3b、精米機3c及びシフター3dに流下してそれぞれの処理を受ける。前記シフター3dから排出された精米は、前記監視制御部8によって切換えた充填切換弁3eを介して、前記載置部(S1,S2)に予め載置したコンテナK内に充填される。また、前記監視制御部8による二方向切換弁7bの切換制御により、玄米は前記精米処理ラインBにも供給され、この場合も玄米は前記精米処理ラインAと同様な処理を受けて、前記載置部(S3,S4)に予め載置したコンテナK内に供給・充填されることとなる。
【0020】
本発明の特徴的作用を説明する(図2)。
前記載置部(S1,S2)は、精米処理ラインAの稼動開始前(玄米供給前)に、載置部S1又は載置部S2の一方側だけに空状態のコンテナKを予め載置し、他方側はコンテナKを置かない状態にしておく。一方、前記載置部(S3,S4)においても同様に、精米処理ラインBの稼動開始前に、載置部S3又は載置部S4の一方側だけに空状態のコンテナKを予め載置し、他方側はコンテナKを置かない状態にしておく。
【0021】
図2に示すように、精米処理ラインAにおいては、精白処理を終えた精米は載置部S1のコンテナKに充填され、一方、精米処理ラインBにおいても、精白処理を終えた精米は載置部S3のコンテナKに充填される。前記監視制御部8は、前記各コンテナKへの充填状況を前記計量機3b(及び/又は各載置部に設けた重量検出センサー等)からの測定データに基づいて監視し、精米の充填が満了になる時点を判断して前記スタッカークレーン5に搬送指示信号を出す。該搬送指示信号を受けたスタッカークレーン5は、前記多段待機ラック4から空状態のコンテナKを適宜選択して載置部S2に搬入(搬送1)し、この後、スタッカークレーン5は、精米の充填が満タンになったコンテナK(載置部S1)を多段待機ラック4に搬出(搬送2)する。
【0022】
一方、前記監視制御部8は、精米処理ラインBの載置部S3におけるコンテナKへの精米充填状況も監視し、精米の充填が満了になる時点を判断して前記スタッカークレーン5に搬送指示信号を出す。該搬送指示信号を受けたスタッカークレーン5は、前記多段待機ラック4から空状態のコンテナKを適宜選択して載置部S4に搬入(搬送3)し、この後、スタッカークレーン5は、精米の充填が満タンになったコンテナK(載置部S3)を多段待機ラック4に搬出(搬送4)する。
【0023】
以下同様に、前記監視制御部8は、前記載置部(S1,S2)及び載置部(S3,S4)におけるコンテナKの精米充填の満タン状況を監視しながら、スタッカークレーン5に搬送指示信号を出し、図2に示した搬送5及び搬送6、搬送7及び搬送8・・・を行いコンテナKの搬送を行わせる。なお、前記監視制御部8は、空状態のコンテナKの搬入(搬送1、搬送3・・・)が完了してことを受けて、前記充填切換弁3eを他方の載置部側に切換えて空コンテナKへの精米充填を再開させる。
【0024】
このように本発明によれば、前記監視制御部8によるスタッカークレーン5の搬送指示を、載置部において満タンのコンテナKが生じた時点において、空状態のコンテナKを多段待機ラック4から搬入(往路)し、多段待機ラック4への復路において満タンのコンテナKを搬出する搬送方法をとるため、スタッカークレーン5の往路及び復路の稼動において空運転状態を生じることなく、常にコンテナKを搬送するのでスタッカークレーン5の稼動効率が向上する。このため、精米工場1においては、スタッカークレーン5の稼動効率が向上するので、各載置部(S1,S2,S3,S4)において、次に充填する空のコンテナKが搬送されるまで精米処理ラインを一時的に停止させるようなことがなくなり、精米工場の生産性が向上する。
【0025】
上記スタッカークレーン5は、上述のように多段待機ラック4と各載置部の間においてコンテナKを搬送するために使用されるほか、多段待機ラック4に載置した精米が入ったコンテナKを前記精米ブレンド・選別・包装部6に搬入する際にも使用するようにしてある。
上記実施の形態では、精米処理ラインA及び精米処理ラインBの2ラインの構成としたが、本発明は3ライン、4ライン・・・、又は1ラインにも適用可能なものである。
【符号の説明】
【0026】
1 精米工場
2 荷受・精選部
2a 荷受部
2b 粗選機
2c 金属検出器
2d 光学石抜機
2e 計量機
2f 加温・加湿装置
2g 昇降機
3 精米部
3a 原料供給タンク
3b 計量機
3c 精米機
3d シフター
3e 充填切換弁
3f コンテナ投入部
4 多段待機ラック
5 搬送部(スタッカークレーン)
5a リフト部
5b クレーン部
6 精米ブレンド・選別・包装部
6a コンテナ載置部
6b ブレンド計量機
6c 光選別機
6d 静電選別機
6e 比重選別機
6f 包装装置
7 空気搬送手段
7a 搬送管
7b 二方向切換弁
7c 供給ホッパー
7d 搬送空気供給装置
7e 搬送管
7f 搬送管
7g 分離装置
7h 分離装置
8 監視制御部
A 精米処理ライン
B 精米処理ライン
K コンテナ
S1 載置部
S2 載置部
S3 載置部
S4 載置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬入された玄米を荷受して精選を行う荷受・精選部(2)と、
該荷受・精選部で処理した玄米を供給して精米を行う精米部(3)と、
該精米部で処理した精米をコンテナに投入・充填するコンテナ投入部(3f)と、
該コンテナ投入部(3f)で精米を投入・充填したコンテナK及び空状態のコンテナKを載置して待機させる多段待機ラック(4)と、
該多段待機ラック(4)と前記コンテナ投入部(3f)との間においてコンテナKを上下方向に昇降させるリフト部(5a)及び左右方向に移動させるクレーン部(5b)を有してコンテナの搬入出を行う搬送部(5)と、
前記荷受・精選部(2)、精米部(3)、コンテナ投入部(3f)、多段待機ラック(4)及び搬送部(5)の各工程の稼動状況を監視しながら各工程を制御する監視制御部(8)と、を備えた精米工場(1)において、
前記監視制御部(8)は、コンテナ投入部(3f)においてコンテナKへの米粒の充填が完了した時点において、前記多段待機ラック(4)から空状態のコンテナKをコンテナ投入部(3f)に搬入し、この後に、米粒の充填が完了した充填コンテナKを多段待機ラック(4)に搬出するように前記搬送部(5)に搬送指示信号を出力することを特徴とする精米工場におけるコンテナの搬送方法。
【請求項2】
前記コンテナ投入部(3f)はコンテナKを載置する載置部(S1,S2,S3,S4)を複数備えるとともに、上部に、該載置部(S1,S2,S3,S4)のいずれか一方に載置したコンテナKへの充填切換弁(3e,3e)を配設した構成にし、前記監視制御部(8)が前記充填切換弁(3e,3e)を適宜切換えてコンテナKに精米を充填する請求項1に記載の精米工場におけるコンテナの搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−269267(P2010−269267A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−124397(P2009−124397)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】