説明

精紡機の圧縮空気供給用の多角形管のための閉鎖装置

本発明は、圧縮空気供給用の多角形管のための閉鎖装置(1)に関し、閉鎖装置は弾性的なシール部材(3)を備えていて多角形管(8)の端部内に密に装着されるようになっていて、次のように形成されており、即ち閉鎖装置は、装着された状態でシール部材(3)を軸線方向で負荷しており、該シール部材は閉鎖装置(1)を多角形管(8)に対して密閉しかつ固定している。この種の閉鎖装置は、空気力式に負荷可能な上側ローラ支持アーム及び負荷アームを備えた精紡機の支持アームのシールに用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気供給用の多角形管のための請求項1の上位概念に記載の形式の閉鎖装置に関する。
【0002】
精紡機のドラフト装置には、空気力式に負荷可能な上側ローラ支持及び荷重アームを用いてあり、上側ローラ支持及び荷重アームは支え部材を用いて精紡機の支持ロッドに固定されている。支持ロッドは中空であって、圧縮空気管路としても役立っている。この種のドラフト装置は、例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19829403A1号明細書に記載してある。
【0003】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第19830048A1号明細書には、多角形管片によって形成された支持ロッドを記載してあり、この場合に管片はそれぞれ端部に閉鎖装置を備えている。個別の管片をつなげてなる1つの支持ロッドによって、種々の長さの精紡機のための支持ロッド及び圧縮空気供給部のモジュール構造が可能である。閉鎖部材は多角形管片の端部内に密に差し込まれている。多角形管片間の圧縮空気供給は、閉鎖装置間の接続管片によって行われている。
【0004】
非円形の中空成形体を断面円形のOリングのような弾性的なシール部材若しくは成形リングを用いて密閉することは困難であり、それというのはシール部材の形状の不均一性に基づきシール部材内の内部応力補償しか行われず、中空成形体のすべての区域をシール部材によって一様にかつ密接に満たすことができないからである。多角形管(異形管)において適当な粘性のペースト状のシール材料を用いることも行われており、該シール材料は中空成形体と差し込まれたシール片とによって形成されたシール溝内に満たされねばならない。大量生産過程でシール材料をシール溝内に均一にかつ完全に満たすことは困難であり、高い製造及び検査費用を必要とする。シール作用は、時間の経過に伴ってシール材料の劣化及び作業応力、例えば交番負荷に基づき低下する。長時間の確実な密閉は保証されていない。運転時に漏れが生じると、シール部材は不都合に分解され、再使用不可能になる。しばしば成形管片全体を交換しなければならない。該シール材料は、シール機能のほかに成形管内の内部圧力に抗してシール片を所定の位置に保つことができない。従って、シール片の軸線方向の移動をロックするための付加的な手段、例えばロックピンが必要である。
【0005】
多角形管の端部の所定の位置でのシール片の保持力を高めるために、シール材料として接着剤を用いると、閉鎖部材の分解は困難で手間を必要とする。この場合に閉鎖装置並びに多角形管は、直ちに再使用するためには適していない。
【0006】
多角形管の端部は、打ち抜き片とも称される支え部材の切欠き内に受容され、ねじ結合部によって固定される。さらに該成形管は、それぞれ閉鎖装置を挿入されている端部領域で固定ねじによって貫通される。固定ねじの締め込みは多角形成形管を弾性変形若しくは塑性変形させて、ひいては閉鎖装置のシール機能を妨げることになる。
【0007】
従って本発明の課題は、前記公知技術から出発して、公知の閉鎖装置を改善することである。
【0008】
前記課題は本発明に基づき、請求項1の特徴を有する閉鎖装置によって解決される。
【0009】
本発明に基づく閉鎖装置は、多角形管を確実にかつ長時間にわたって安定して密閉している。多角形管の内部に生ぜしめられた空気圧による移動に対する付加的な固定手段、例えば形状結合式(形状による束縛を伴う固定形式)の固定ピンは不要であり、それというのは本発明に基づく閉鎖装置はシール機能に際して所定の位置で摩擦力によって十分に堅く固定されるからである。本発明に基づく閉鎖装置の組立及び分解は、公知技術の閉鎖装置に比べて容易である。本発明に基づく閉鎖装置及び多角形管は、付加的な手間をかけることなしに、例えば清掃を行うことなしに再利用可能である。
【0010】
請求項2に記載の閉鎖装置によって、シール部材を軸線方向の圧力で負荷すると同時に、確実なシール作用を達成することができる。
【0011】
請求項3に記載の閉鎖装置によって、該閉鎖装置を多角形管内への装着に伴ってシールと固定を同時に行うことができる。閉鎖装置の固定の解除及び多角形管からの取り外しは、簡単かつ容易に行われる。
【0012】
請求項4に記載の閉鎖装置によって、圧縮空気の必要な流過を保証する圧縮空気通路のための十分なスペースを得ることができ、ねじを対向片の中央に係合させることに基づき、ねじの締め込みの際の対向片の傾きを防止することができる。圧縮空気通路の領域に端部片及び対向片を設けてあることによって、閉鎖装置の構成部分の相互位置の不正確な組立を防止することができる。
【0013】
閉鎖装置の圧縮空気通路の端部側の開口内に接続管を差し込んであることによって、2つの多角形管間の圧縮空気搬送を簡単な形式で保証している。
【0014】
請求項6若しくは7に記載の閉鎖装置は、確実かつ十分なシール作用を保証している。請求項8に記載の閉鎖装置は、支え部材の種々の構造に適合している。
【0015】
閉鎖装置の切欠き部の両側に形成された支持成形部は、固定ねじの過度な締め込みに際しても中空成形体の変形を阻止するように機能するものである。
【0016】
閉鎖装置は、多角形管の内室を切欠きに対して密閉するように形成されている。多角形管片の固定箇所は閉鎖装置の、圧縮空気を導くことのない領域に配置されている。多角形管と機械との間のねじ結合部の固定ねじを貫通させるために多角形管に設けられている開口部は、密閉されなくてよい。切欠きの形状と位置に基づき、多角形管の端部の十分な剛性を保証してある。
【0017】
本発明に基づく閉鎖装置は、多角形管の内部を長時間にわたって安定して確実に密閉するものである。該閉鎖装置はシール作用を生ぜしめると共に、付加的な補助手段なしに、多角形管の内部に作用する空気圧に抗して所定の位置に固定される。支持ロッドを形成する1つの多角形管において必要な修理は、該多角形管が支持ロッドの一部分として別の多角形管間に組み込まれている場合にも、わずかな分解及び組立作業で簡単に可能である。
【0018】
本発明の詳細は、実施例の図面に示してある。図面において、
図1は、閉鎖装置の個別の構成部分を組立前の状態で示す斜視図であり、
図2は、図1の閉鎖装置の構成部分を部分的に破断して示す図であり、
図3は、それぞれ1つの閉鎖装置と共通の1つの接続管片を備える2つの多角形管の端部領域を、図1のA−A線に沿って示す断面図である。
【0019】
閉鎖装置1は端部片2、シール部材3、対向片4、ねじ5及びシールプレート6を備えている。端部片2は案内区分7を有しており、案内区分の外形は、図1に破線で示す多角形管8の内形に適合されている。多角形管8は四角形に形成されている。案内区分7に続けて形の同じシール区分9を設けてあり、該シール区分の外形の幅及び高さは、案内区分7の幅及び高さよりも小さくなっている。端部片2の、シール区分9と逆の側の端部にストッパ10を形成してあり、ストッパは多角形管8の端面と協働して、閉鎖装置1が所定の位置を越えて多角形管8内へ入り込むこと若しくは押し込まれることを防止している。案内区分7は切欠き12を有している。図面の煩雑を避けるために図示を省略してある固定ねじが、切欠き12及び孔13を貫通して、多角形管8を支え部材に固定するようになっている。切欠き12の両側に支持成形部14,15を形成してあり、支持成形部は中空の多角形管8の変形に抗して作用する。端部片2の、固定ねじのための切欠き12は、支え部材の構造に依存した種々のねじ大きさ及び位置に適合して固定ねじを貫通可能にするために十分に大きく形成されている。ストッパ10は中央にねじ5の通し通路16のための開口を有しており、かつ中央の外側に圧縮空気案内のための接続通路17の開口を有している。
【0020】
シール部材3の形状は多角形管8及びシール区分9に対応しており、この場合にシール部材の内形はシール区分9の外形に適合しており、かつシール部材3の外形は多角形管8の内形に適合している。シール部材3はゴムから成っている。シール部材3の壁厚さTは、多角形管8内へシール装置1を差し込んだ状態で多角形管8の内面と案内区分7の外面との間の間隔よりもわずかに小さくなっている。シール部材3の長さLは壁厚さTの複数倍であり、シール部材3が対向片4によって軸線方向の圧力で十分に負荷されるようになっている。
【0021】
対向片4は、シール部材3の形状と同じ形状の中空成形体18であり、1つの端部を図2に見える背壁19によって閉じられている。背壁19は内部へ向かって延びる支持部分20及び通路部分21を有している。中空成形体18の縁部は支持部分20を越えて突出している。通路部分21はさらに縁部22を越えて突出している。対向片4は、通路部分21が所定の位置を占めている状態で端部片2内に嵌合されて結合される。
【0022】
通路部分21の所定の位置は、図1に示す実施例において対向片4内の上方左側である。これによって、圧縮空気の貫流が保証される。背壁19及び支持部分20の中央に孔23を形成してあり、該孔23内にねじ山を設けてある。端部片2も対向片4も亜鉛ダイカストから成っている。
【0023】
図2の断面図に、閉鎖装置1の構造の詳細を見て取れる。通し通路16は端部片2の内部で小さい直径に移行しており、この場合に通し通路16の小さい直径への移行部は支持面24として形成されている。接続通路17は圧縮空気通路25内へ移行しており、圧縮空気通路は接続通路17よりも小さい有効な横断面を有している。
【0024】
対向片4に、圧縮空気のための貫通開口26を設けてある。通路部分21は圧縮空気通路25の延長部の一部分を形成している。
【0025】
閉鎖装置1の組立に際して、まずシール部材3が端部片2のシール区分9上に案内区分7まで被せはめられる。次いでねじ5がシールプレート6と一緒に通し通路16内に挿入され、この場合にシールプレート6は支持面24に当て付けられる。ねじの端部は対向片4の孔23内へ、対向片4がまだ軸線方向の圧力をシール部材3に生ぜしめない程度にねじ込まれる。
【0026】
前述のように予め組み立てられた閉鎖装置1は、多角形管8の端部内に押し込まれ、ストッパ10が端部に当接する。次いで、頭部に六角凹部27を備えたねじ5が締め込まれ、その結果、端部片2が縁部22と一緒に軸線方向でシール部材3に圧力を生ぜしめる。これによって、シール部材3は多角形管8の内面に接触して、閉鎖装置1の位置を、多角形管8の内部に作用する空気圧に抗して固定し、かつ多角形管8と端部片2との間を気密に密閉する。
【0027】
前述の状態の閉鎖装置1は図3に示してある。圧縮空気は閉鎖装置1内を、貫通開口26から圧縮空気通路25を経て接続通路17内へ若しくは逆の方向へ貫流するようになっている。多角形管8に、わずかな間隔で隣接して別の多角形管28を接続してある。多角形28内に挿入された閉鎖装置29は、閉鎖装置1に対して鏡面対称的に形成されている。閉鎖装置1と閉鎖装置29とは接続管30によって互いに結合されており、接続管は該接続管の端部を接続通路17及び接続通路31内に差し込まれている。従って、多角形管8と多角形管28との間の圧縮空気の妨げのない流れが、圧縮空気通路25,33を介して可能である。接続管30の密閉はOリング・シール32を用いて行われており、Oリング・シールは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第19830048A1号明細書により公知である。
【0028】
本発明は図示の実施例に限定されるものではない。特に端部片及び対向片の種々の構成が本発明の枠を逸脱することなく可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】閉鎖装置の個別の構成部分を組立前の状態で示す斜視図
【図2】図1の閉鎖装置の構成部分を部分的に破断して示す図
【図3】2つの多角形管の端部領域を、図1のA−A線に沿って示す断面図
【符号の説明】
【0030】
1 閉鎖装置、 2 端部片、 3 シール部材、 4 対向片、 5 ねじ、 6 シールプレート、 7 案内区分、 8 多角形管、 9 シール区分、 10 ストッパ、 11 端面、 12 切欠き、 13 孔、 14,15 支持成形部、 16 通し通路、 17 接続通路、 18 中空成形体、 19 背壁、 20 支持部分、 21 通路部分、 22 縁部、 23 孔、 24 支持面、 25 圧縮空気通路、 26 貫通開口、 27 六角凹部、 28 多角形管、 29 閉鎖装置、 30 接続管、 31 接続通路、 32 Oリング・シール、 33 圧縮空気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機の圧縮空気供給用の多角形管のための閉鎖装置であって、該閉鎖装置は弾性的なシール部材を備えていて多角形管の端部内に密に装着されている形式のものにおいて、閉鎖装置(1,29)は、装着された状態でシール部材(3)を軸線方向で負荷しているように形成されており、前記シール部材は軸線方向の負荷によって変形されて、閉鎖装置(1,29)を多角形管(8,28)に対して密閉していることを特徴とする、精紡機の圧縮空気供給用の多角形管のための閉鎖装置。
【請求項2】
閉鎖装置(1,29)は次のように形成されており、即ち、圧縮空気は1つの多角形管(8;28)から閉鎖装置(1,29)を経て、前記多角形管に隣接して配置された別の多角形管(28;8)内へ流入するようになっている請求項1に記載の閉鎖装置。
【請求項3】
閉鎖装置(1,29)はシール部材(3)のほかに、端部片(2)及び対向片(4)を備えており、この場合にシール部材(3)は、端部片(2)と対向片(4)との間に配置されていて、端部片(2)と対向片(4)との相互の接近によって半径方向に膨張されるようになっている請求項1又は2に記載の閉鎖装置。
【請求項4】
端部片(2)と対向片(4)とは、シール部材(3)を貫通するねじ(5)によって互いに結合されていて、ねじ(5)の締め込みに基づきシール部材(3)に軸線方向の圧力を負荷するようになっている請求項3に記載の閉鎖装置。
【請求項5】
端部片(2)と対向片(4)とは一緒に、閉鎖装置(1,29)を中央より外側で貫通する1つの圧縮空気通路(25,33)を形成している請求項3又は4に記載の閉鎖装置。
【請求項6】
閉鎖装置(1,29)の圧縮空気通路(25,33)の端部の開口内に接続管(30)を差し込むようになっている請求項5に記載の閉鎖装置。
【請求項7】
シール部材(3)の長さ(L)はシール部材の壁厚さ(T)の少なくとも1.5倍である請求項1から6のいずれか1項に記載の閉鎖装置。
【請求項8】
シール部材(3)はゴムから成っている請求項1から7のいずれか1項に記載の閉鎖装置。
【請求項9】
端部片(2)は切欠き(12)を有しており、該切欠きは種々の固定ねじを貫通させるように形成されている請求項1から8のいずれか1項に記載の閉鎖装置。
【請求項10】
切欠き(12)の両側に支持成形部(44,45)を形成してある請求項9に記載の閉鎖装置。
【請求項11】
多角形管(8,28)は、精紡機のドラフト装置の空気力負荷可能な上側ローラ支持アーム及び荷重アームのための支持ロッドとして形成されている請求項1から10のいずれか1項に記載の閉鎖装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−513336(P2006−513336A)
【公表日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−567297(P2004−567297)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/EP2003/013263
【国際公開番号】WO2004/067821
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505009715)テクスパーツ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)
【Fターム(参考)】