説明

精紡機

【課題】歳差運動時に生じる半径方向力がスピンドル軸受けから離隔され、しかも当該スピンドル装置が経済的に製造可能でかつその組付けが簡単となるようなスピンドル装置を備えた精紡機を提供する。
【解決手段】スピンドル上側部分10と、個別駆動装置とを備えたスピンドル30が設けられており、個別駆動装置が、スピンドル軸部2に装着結合されたロータ4と、軸受けハウジング11に結合されたステータ5とを備えた電動モータから成っており、スピンドル軸部が、軸受けハウジングに取り付けられた軸受け6,7を介して支承されており、スピンドル30が、電動モータの上方で取付け手段3によって機械フレーム15に可動に取り付けられており、該取付け手段3が、円錐面73を描いて回転するスピンドル歳差運動を可能にするように形成されており、ただし、円錐先端を形成する歳差回転点9がスピンドル取付け部の高さに位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドル装置であって、それぞれ1つの、紡糸巻き管のための支持体として働くスピンドル上側部分と、該スピンドル上側部分の下方に配置された個別駆動装置とを備えた少なくとも1つのスピンドルが設けられており、個別駆動装置が、軸受けハウジング内に配置された、ロータとステータとを備えた電動モータから成っており、ロータが、スピンドル軸部に相対回動不能に装着結合されており、ステータが、軸受けハウジングに相対回動不能に結合されており、スピンドル軸部が、軸受けハウジング内部に設けられたか、または軸受けハウジングに取り付けられた上側の軸受けと下側の軸受けとを介して支承されており、スピンドルが、直接にまたは間接的に機械フレームに、特にスピンドル支承台として働くスピンドルレール(Spindelbank)または該スピンドルレールに取り付けられた保持装置に取り付けられている形式のスピンドル装置を備えた精紡機に関する。
【背景技術】
【0002】
ベルト駆動装置に対する択一的な手段として個別スピンドル駆動装置を備えているリング精紡機は既に久しく以前より知られているが、しかし今日まで現場においては種々の理由から慣用のベルト駆動装置に比べてまだ普及するには至っていない。
【0003】
これに相応して、この分野では、とりわけ駆動装置コンセプトの問題または個別駆動装置を備えたこのようなスピンドルユニットの、機械フレーム、つまりスピンドルレールにおける取付けの問題を扱っている多数の刊行物が存在している。
【0004】
しかし、個別駆動装置を備えたスピンドルをスピンドルレールに取り付けるための公知のコンセプトのうちの多数は、スピンドルの回転時に発生するコマ力(独楽力;Kreiselkraefte)を全く顧慮していないか、または極めて僅かにしか顧慮していない。このようなコマ力は、アンバランス発生時にコマ軸線の歳差運動を引き起こす。しかし、アンバランスならびに半径方向の糸巻上げ力は、スピンドル巻き管への巻成体形成時には避けられない。すなわち、紡糸中では、常に僅かな不均一性が生ぜしめられ、このような不均一性はとりわけ、巻き取りたい糸に帰因し得る。このような不均一性はその場合、紡糸時に、相応する半径方向力を生ぜしめる。このような半径方向力は、スピンドル取付け部の構造が不都合である場合にはスピンドル軸部の軸受けにおける相応する摩擦を招く結果となる。このことは高められた所要エネルギ量および軸受け摩耗に現れる。このことは特に、高い回転数領域、たとえば25000〜30000r.p.m.およびファンネル紡糸法(Trichterspinnverfahren)の場合にはそれどころか最大60000r.p.m.の回転数領域において作動させられるスピンドルに云える。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10027089号明細書には、たとえば、軸受けハウジング内に支承された電動モータ式の個別駆動装置を備えた、スピンドルレールにより支持されたスピンドルが記載されている。この場合、スピンドルの軸受けハウジングは、可撓性に形成された軸方向支持部を介してスピンドルレールに可動に支承されている。しかし、この解決手段は、スピンドルベースに配置された回転点により生ぜしめられる、上側のスピンドル区分におけるスピンドルの高い側方変位が、ある程度の量を超過しないようにするために、上側のスピンドル区分における運動制限を必要とする。
【0006】
欧州特許出願公開第0406720号明細書には、軸受けハウジング内の電動モータ式の個別駆動装置を備えた精紡機のスピンドルが記載されている。この軸受けハウジングは鉛直方向で互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの減衰エレメントを挟んでスピンドルレールに取り付けられている。前記構造は保持装置におけるスピンドルの懸吊に基づいたコマ力を、スピンドル軸部の転がり軸受けによって満足な程度で受け止めることができないので、この場合にも、冒頭で述べた問題が発生する。
【0007】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第10351971号明細書には、モータハウジング内の電動モータを備えた個別モータ式の駆動装置を備えたスピンドルが記載されている。この場合、モータハウジングは互いに遠ざけられた少なくとも2つの個所で弾性的にかつ減衰式に、外側のハウジング内に保持される。スピンドルの減衰式の保持にもかかわらず、相変わらず軸受けには半径方向力が作用しており、このような半径方向力は軸受けの寿命を低減させる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10027089号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0406720号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10351971号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の根底を成す課題は、冒頭で述べた形式のスピンドル装置を改良して、歳差運動時に生じる半径方向力がスピンドル軸受けから離隔され、しかも当該スピンドル装置が経済的に製造可能でかつその組付けが簡単となるようなスピンドル装置を備えた精紡機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決するために本発明の構成では、スピンドルが、電動モータの上方で取付け手段によって直接にまたは間接的に機械フレームに可動に取り付けられており、該取付け部もしくは結合部が、スピンドルの、円錐面を描いて回転する、有利には自由な歳差運動を可能にするように形成されており、ただし、円錐先端を形成する歳差回転点がスピンドル取付け部の高さに位置しているようにした。
【発明の効果】
【0010】
慣用的なコマとは異なり、スピンドルもしくはスピンドル装置は軸受けハウジング内でのその支承形式に基づき、互いに異なる高さに配置されている2つの質量体重心を有している。第1の質量体重心はこの場合、回転質量体重心と呼ばれ、この回転質量体重心は、紡糸プロセス時にスピンドル軸線を中心にして回転するスピンドル質量体の質量体重心である。スピンドル回転質量体は高速の回転、つまりたとえば25000r.p.m.のスピンドル回転数を有する回転を実施する。スピンドル回転質量体は、スピンドル軸部に相対回動不能に取り付けられた全ての質量体、たとえば巻き管を備えたコップおよび電動モータのロータを包含しているが、ただしステータおよび軸受けハウジングは包含していない。
【0011】
歳差質量体重心と呼ばれる第2の質量体重心は、歳差運動するスピンドル質量体の質量体重心である。この歳差運動は歳差回転点を中心とした低速の回転を実施する。この歳差質量体は、前記弾性的な取付け手段を介して直接にまたは間接的に機械フレームに固定されている全ての質量体を包含している。この回転質量体はとりわけ回転するスピンドル質量体ならびに電動モータのステータ部分、完全な軸受け部ならびに軸受けハウジングをも包含している。すなわち、歳差質量体の質量はスピンドル回転質量体の質量よりも大きい。
【0012】
スピンドル回転質量体に対して付加的な歳差質量体は下側のスピンドル区分において電動モータの範囲に配置されているので、歳差質量体重心はスピンドル回転質量体重心よりも低く位置している。したがって、スピンドル回転のための質量慣性モーメントJは、歳差運動の回転のための質量慣性モーメントJよりも小さい。
【0013】
歳差回転点は満管のコップにおいて歳差質量体重心と同じ高さまたは歳差質量体重心よりも上方に位置していると有利である。歳差回転点は満管のコップにおいて歳差質量体重心の上方で全スピンドル長さの好ましは11%未満に相当する高さに、有利には7%未満に相当する高さに、特に3%未満に相当する高さに位置している。全スピンドル長さはスピンドル軸部の上端部と下端部との間の長手方向延在長さより規定される。
【0014】
しかし、歳差回転点は満管のコップにおいて歳差質量体重心の下方に配置されていてもよい。歳差回転点はこの場合には、満管のコップにおいて歳差質量体重心の下方で全スピンドル長さの好ましくは11%未満に相当する高さに、有利には7%未満に相当する高さに、特に3%未満に相当する高さに位置している。
【0015】
必要に応じて、スピンドル、特にスピンドルの下側の区分において、歳差質量体重心の高さの位置固定の目的で、たとえば軸受けハウジングに取り付けられたウェイトによって歳差質量体を意図的に付け加えることができる。
【0016】
スピンドルはその鉛直方向の延在長さにわたって、水平方向の1つの平面でのみ弾性的な取付け手段もしくは結合手段によって取り付けられている。その下に位置する軸受けハウジングは機械フレームの構成部分または機械フレーム自体との別の接触点を有していない。
【0017】
第1の歳差質量体を形成するモータの上方でかつ第2の歳差質量体を形成するコップを備えたスピンドル上側部分の下方における取付け部の配置に基づき、歳差回転点を中心とした最適な質量分配が達成される。
【0018】
軸受けは駆動装置と共に有利には1つの構成ユニット内に収納されている。この構成ユニットは、有利には円筒状の軸受けハウジングによって外部に対して閉鎖されている。電動モータに対するスピンドル軸受けの位置に関しては、可能となる3つの実施態様が考えられる:
第1の実施態様では、上側の軸受けが電動モータもしくはロータの上方に、たとえば軸受けハウジングの上端部に配置されており、下側の軸受けが電動モータもしくはロータの下方に、たとえば軸受けハウジングの下端部に配置されている。こうして、電動モータの運動させられる質量体は理想的には2つの軸受けの間に配置されている。上側の軸受けは有利には軸受けハウジングの上側のカバーエレメントに位置固定されているか、もしくはこの上側のカバーエレメントに組み込まれており、特に外部に対して露出しているので直接に手を加えられるようになっている。下側の軸受けは有利には下側のカバーエレメントに位置固定されているか、もしくはこの下側のカバーエレメントに組み込まれており、特に外部に対して露出しているので直接に手を加えられるようになっている。損傷された軸受けの交換の目的で、この軸受けをカバーエレメントと一緒にユニット単位で交換するか、または軸受けが外部に対して露出している場合には外部から直接にカバーエレメントから取り外すことができる。
【0019】
第2の実施態様では、上側の軸受けと下側の軸受けとが、電動モータもしくはロータの下方に配置されている。両軸受けはこの実施態様では、それ自体閉じた1つの軸受けアッセンブリの形で配置されていてよい。その場合、この軸受けアッセンブリはユニットとして着脱自在にスピンドルに位置固定されかつ取り外され得る。こうして、損傷された軸受けの簡単な交換が可能となる。このことは、相応して制限された寿命を有する無給油潤滑を有する軸受けの場合に重要となる。
【0020】
第3の実施態様では、上側の軸受けと下側の軸受けとが、電動モータもしくはロータの上方に配置されている。この場合には、電動モータもしくはロータが片持ち式に懸吊されている。第2の実施態様と同様に、両軸受けはこの実施態様においても、それ自体閉じた1つの軸受けアッセンブリの形で配置されていてよい。
【0021】
上側の軸受けは、特に第1の実施態様および第3の実施態様の場合、スピンドル取付け部と同じ高さまたはスピンドル取付け部よりも下方に配置されていると有利である。
【0022】
モータは三相交流モータであってよいが、しかし直流モータ、特にホールセンサを備えたBLDC(ブラシレス直流モータ)であると有利である。軸受けハウジングは同時にモータハウジングに相当していると有利である。しかし、電動モータが別個のモータハウジング内に収納されていることも可能である。その場合、このモータハウジングは軸受けハウジングに組み込まれており、スピンドル軸部はモータハウジングに設けられた、一貫して延びる、有利には円筒状の開口を貫いて貫通案内されていて、このモータハウジングに相対回動不能に固定されている。すなわち、ステータは直接的にも間接的にも軸受けハウジングに相対回動不能に結合されていてよい。
【0023】
スピンドルは直接にまたは間接的に機械フレームに取り付けられている。取付けは、軸受けハウジングもしくは該軸受けハウジングの上側のカバーエレメントを介して行われ得る。
【0024】
「機械フレーム」とは広義には、スピンドルを保持するために設計されている精紡機の構成部分、たとえばスピンドル支承台もしくはスピンドルレールを意味する。「間接的」とは、一方ではスピンドルを可動に保持し、他方では機械フレームに不動に固定されている保持装置のような中間構成部分に関連している。中間構成部分は、該中間構成部分ならびに機械フレームの構成要素が、スピンドルのアンバランスから生ぜしめられるか、もしくは糸引張力により生ぜしめられる歳差力もしくは半径方向力によって運動させられないように設計されていることが望ましい。しかし、中間構成部分は相応する減衰エレメントを介しても十分に機械フレームに位置固定され得る。しかし、減衰エレメントはコマ力(独楽力)を吸収するのではなく、振動を減衰するために働くに過ぎない。
【0025】
取付け手段は弾性的な、特にゴム弾性的および/またはばね弾性的な結合エレメントを有している。取付け手段は永久的な戻し能力を有しているので、スピンドル中心および鉛直方向のスピンドル位置は時間との関係において変化しない。取付け手段はゴムエレメントもしくはエラストマエレメントまたはばねエレメントを有していてよい。材料弾性的なエレメントとばね弾性的なエレメントとの組合せも考えられる。これらのエレメントは環状に形成されていると有利である。該エレメントはリングセグメントの形で存在していてもよい。結合エレメントは、たとえば結合パートナに材料接続的に、たとえば加硫によって結合されていてよい。
【0026】
スピンドルは特に有利な実施態様では、外側ハウジングもしくはアウタハウジングとして形成された保持装置を介してスピンドルレールに結合されている。この場合、スピンドルの軸受けハウジングは有利にはアウタハウジング内に同心的に嵌め込まれていて、取付け手段を介してアウタハウジングに対して旋回可能に結合されている。アウタハウジングと軸受けハウジングとの間には間隙が形成されており、この間隙はスピンドルの、支障のない自由な歳差運動の実行を可能にする。この環状の間隙は1〜5mm、特に1.5〜3mmの幅を有していてよい。軸受けならびにアウタハウジングは円筒状に形成されていると有利である。アウタハウジングはスピンドルレールまたは機械フレームの別の構成部分に剛性的でかつ不動に結合されていると有利である。
【0027】
アウタハウジングは、その下側の区分ではハウジング底部を介して、その上側の区分ではスピンドル軸部を取り囲むハウジングカバーを介してそれぞれ閉鎖されて、1つの閉じられた室を形成していると有利である。アウタハウジングはハウジング底部だけを備えていて、上方に対して開いたポット状の収容部を形成していてもよい。
【0028】
軸受けハウジングとアウタハウジングとの間の間隙の少なくとも下側の区分は減衰媒体で満たされていてよい。減衰媒体は軸受けハウジングの歳差運動を減衰するために役立つ。減衰媒体は流体、特に低粘稠性〜高粘稠性の液体、たとえば減衰オイルまたはペースト状の液体であってよい。前記間隙は、減衰媒体の循環もしくは運動を減速させ、こうして減衰作用を増幅させる手段を有していてよい。このような手段は、たとえば螺旋状のインサートの形またはラビリンス状のコーム(櫛)構造を備えたインサートまたは開放気孔型の発泡材料の形で存在していてよい。さらに、軸受けハウジングとアウタハウジングとの間に配置されている開放気孔型および/または独立気孔型の発泡材料、たとえばポリウレタン発泡材料の形の減衰手段も挙げられる。
【0029】
軸受けハウジングを備えたスピンドルとアウタハウジングとは、取付け手段と共に、予め組み立てられた1つの構成ユニット、つまり「スピンドル装置」を形成していると有利である。このスピンドル装置は僅かな手間をかけるだけで機械フレームに組付け可能であり、この場合、アウタハウジングは、該アウタハウジングを機械フレームに不動に取り付けるための結合点を有している。アウタハウジングの下端部はスピンドルレールに装着されていて、該スピンドルレールに、たとえばねじ締結されているか、または溶接されていてよい。しかし、スピンドル装置はリングレールに対してセンタリング可能に機械フレームに位置固定可能であることが望ましい。前記構成ユニットはスピンドル懸吊部を含めてアウタハウジングを介してダスト密に閉鎖されていると有利である。
【0030】
アウタハウジングはスピンドルと共に、特に完全に閉じられた1つの構成ユニットを形成することができるが、しかしコマ力によっては運動させられないアウタハウジングは第1に保持装置もしくは中間構成部分の機能を果たすものであって、コマ力により変位可能となるスピンドルの一部ではないことを忘れてはならない。
【0031】
スピンドルがカプセル封入部を有していない場合には、スピンドルの軸受けハウジングまたはアウタハウジングが、スピンドルレールに設けられた円形の開口内に嵌め込まれていてもよい。
【0032】
弾性的な取付け手段は軸方向の引張力および押圧力を、制限された規模でしか吸収することができないので、本発明の有利な改良形では、軸受けハウジングとアウタハウジングとの間に、たとえばストッパの形の制限装置が設けられている。このストッパには、過剰の軸方向引張負荷または軸方向押圧負荷が生じた際に軸受けハウジングを備えたスピンドルが当接し、こうして弾性的な取付けエレメントに引き続き軸方向負荷が加えられることを阻止する。このような軸方向力は、たとえばドッフィング過程において生じる。スピンドルはドッフィング時に、軸方向にたとえば1mmよりも多く運動しないことが望ましい。
【0033】
しかし、本発明の別の有利な改良形では、回転するスピンドルによる空気搬送を低減させる目的で、スピンドル装置がカプセル封入部を有している。このカプセル封入部はその都度、目下のコップ糸巻取り個所(Kops-Fadenablage)の下方でスピンドル装置を取り囲んでいる。カプセル封入部はリング精紡機の場合には、たとえばリングレールの下面に取り付けられている。カプセル封入部は円筒形または下方へ向かって増大する直径を有する円錐形に形成されていてよい。円錐形の構成の代わりに、カプセル封入部はその下側の端区分にホッパ状の拡開部を備えた円筒状のベースボディを有していてもよい。
【0034】
上側のスピンドル軸受けは転がり軸受けであると有利である。下側のスピンドル軸受けはやはり転がり軸受けであると有利あり、この場合には、軸受けは組み合わされたラジアル/スラスト軸受けである。下側の軸受けと上側の軸受けとは、同一のタイプの転がり軸受けまたは互いに異なるタイプの転がり軸受けであってよい。
【0035】
前記転がり軸受けはボール軸受け、ダブルボール軸受け、ニードル軸受け、球面ころ軸受け(Tonnenlager)または円錐軸受けであってよい。さらに、前記転がり軸受けは非導電性の転動体を備えたハイブリッド軸受けであってよい。このような転動体は、たとえば非金属材料、たとえばセラミックスまたはプラスチックから成っていてよい。セラミックスは酸化物セラミックスまたは非酸化物セラミックス、たとえば窒化ケイ素であってよい。ハイブリッド軸受けはボール軸受けであると有利である。軸受けのアウタレースおよび/またはインナレースは、たとえば非導電性の被覆体によって電気的に絶縁されていてよい。ハイブリッド軸受けには次のような利点がある。すなわち、隣接した電動モータによる誘導的な影響に基づいて生じる恐れのある軸受け電流が発生しない。軸受けはオイル潤滑またはグリース潤滑を有していてよい。このオイル潤滑またはグリース潤滑はオイルレス潤滑を有していると有利である。このことは、たとえば市販のダブルV形またはダブルZ形の軸受けであってよい。軸受けに存在する軸受け遊びはできるだけ小さく設定されると望ましい。
【0036】
本発明はさらに、前で述べた形式の精紡機に用いられるスピンドルユニットであって、それぞれ1つの、糸巻き管または撚糸巻き管のための支持体として働くスピンドル上側部分と、該スピンドル上側部分の下方に配置された個別駆動装置とを備えたスピンドルが設けられており、個別駆動装置が、軸受けハウジング内に配置された、ロータとステータとを備えた電動モータから成っており、ロータが、スピンドル軸部に相対回動不能に装着結合されており、ステータが、直接にまたは間接的に軸受けハウジングに相対回動不能に結合されており、スピンドル軸部が、軸受けハウジング内部に設けられたか、または軸受けハウジングに取り付けられた上側の軸受けと下側の軸受けとを介して支承されている形式のものに関する。
【0037】
本発明によるスピンドルユニットは、当該スピンドルユニットが、保持装置を有していて、該保持装置に電動モータの上方で取付け手段によって可動に結合されており、該取付け手段もしくは結合部が、保持装置の内部に配置された、または保持装置に取り付けられたスピンドルの、所定の円錐面を描いて回転する歳差運動を可能にするように形成されており、ただし、円錐先端を形成する歳差回転点がスピンドル取付け部の高さに位置していることを特徴としている。当該スピンドルユニットは同じく本明細書中で精紡機に関連して記載されているスピンドルもしくはその保持装置の特徴、変化形および実施態様を包含することができる。
【0038】
スピンドルが弾性的な取付け手段によって肩部を介して機械フレームに載着されているような公知の解決手段とは異なり、本発明によればスピンドルは有利には取付け手段を介して下方からまたは側方から中間構成部分もしくは保持装置に懸吊されているか、または直接に機械フレームに懸吊されている。側方の取付け時では、スピンドルが、機械フレームまたは中間構成部分に設けられた開口もしくは通過部を通って案内されており、この場合、両構成部分の間には、環状のギャップが形成され、このギャップ内には弾性的な取付け手段が配置されている。
【0039】
スピンドルを懸吊させるための取付け手段は、できるだけ水平方向の1つの平面に配置されていることが望ましい。こうして、スピンドルは作動時に実質的に、自由な懸吊部を有するコマのように挙動する。理想的には準カルダン式の懸吊部に相当していることが望ましいこのような懸吊部は、共振回転数や軸撓みが生じないという利点を提供する。
【0040】
スピンドルはその鉛直方向の延在長さにわたって、懸吊個所に相当する1つの個所でしか機械フレームに接触していない。この個所はそれと同時にスピンドルの歳差運動の回転点でもある。スピンドルはこの回転点以外では機械フレームもしくは中間構成部分または保持装置に別の個所では接触してはならないか、あるいは機械フレームに結合されていてはならず、またゴム弾性的またはばね弾性的なダンパを介しても結合されていてはならない。1つの例外は場合によっては、粘稠性の減衰媒体により形成される。この場合、この粘稠性の減衰媒体は軸受けハウジングとアウタハウジングとの間に配置されていてよい。
【0041】
軸受けハウジングの可動の支承形式に基づき、スピンドル軸部は発生した半径方向力に従動することができるので、スピンドルは前で述べた歳差の意味では「自由なコマ」として所定の円錐面を描くように運動することができ、これによってさもないと軸受けに生じる恐れのある摩擦力は十分に回避される。アンバランスは歳差運動によって力補償されるので、付加的な支承力は生じない。このことは相応して減じられた軸受け摩耗ならびに電動モータの駆動のために必要となる所要エネルギの低減に現れる。軸受けハウジングの可動性は弾性的な取付けにより達成される。この弾性的な取付けはその従動性もしくはフレキシブル性に基づいてスピンドル軸部に、相応する半径方向の待避可能性を付与して、変位運動を可能にする。スピンドルに作用する半径方向力は実質的に摩擦なしにスピンドル軸部から転がり軸受け部を介して軸受けハウジングへ伝達される。したがって、この軸受けハウジングはスピンドル軸部の歳差運動を相応して一緒に支持する。
【0042】
ステータは歳差質量体の一部としてロータと共に歳差運動を実施するので、ロータとステータとの間のエアギャップは作動時にほぼ一定のままとなる。相応して、ロータとステータとの間の小さなエアギャップを持って電動モータをコンパクトに構成することができる。
【0043】
個別スピンドル駆動装置の従来公知のシステムは、約25000〜30000r.p.m.の最大回転数を可能にする。ファンネル紡糸の場合には、60000r.p.m.またはそれよりも大きな回転数が予想される。本発明によるスピンドル装置はこのような高い回転数範囲に対応する。すなわち、軸受けハウジングの本発明による支承形式を用いて、決定的な摩擦低減、ひいては所要エネルギおよび摩耗の低減ならびに当該精紡機の生産速度の著しい増大が得られる。本発明による個別スピンドル駆動装置は、スピンドルを用いて作動させられる全ての精紡機、たとえばリング精紡機、ファンネル精紡機(Trichterspinnmaschinen)またはループ精紡機(Schlaufenspinnmaschinen)のために適している。さらに、本発明による個別スピンドル駆動装置は撚糸機およびダブルツイスタもしくはトゥフォアワン撚糸機(Doppeldrahtzwirnmaschinen)のためにも適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0045】
図1に概略的に図示されている、可動の、特に弾性的な懸吊部79を備えたスピンドル装置70は、作用原理の点では、自己支持力を有しない、いわばカルダン式の懸吊部を備えた「コマ(独楽)」に相当する。スピンドルは自由に支承された回転軸線71を有しており、この回転軸線71はスピンドル軸部に相当する。このスピンドル軸部は、軸受けハウジング内に収納された電動モータ78によって駆動される。この電動モータ78の上方および下方には、ただし懸吊部の下方において、スピンドルの上側の軸受け部76および下側の軸受け部77が設けられている。コップ、電動モータを備えた軸受けハウジングおよび軸受け部を含めてスピンドルは、歳差回転点75よりも少しだけ下方に位置する歳差質量体重心83を有する歳差回転質量体72を形成している。スピンドルは懸吊部79、たとえばゴム弾性的なエレメントを介して機械フレーム74、たとえばスピンドル支承台もしくはスピンドルレールに取り付けられているか、またはスピンドルレールに固定された保持装置を介して取り付けられている。この懸吊部79の高さには、定位置の歳差回転点75が位置しており、この歳差回転点75を中心にして、回転しているスピンドルはアンバランス時に「コマ(独楽)」のように円錐面73を描くように回転する。歳差回転点75は円錐先端を形成する。歳差回転点75はスピンドルの先端部またはベースに位置しているのではなく、両端点の間の間に位置しているので、歳差運動するスピンドルはそれぞれ1つの上側の円錐面82と、この上側の円錐面82とは反対の側の下側の円錐面73とを形成する。両円錐面82,73の円錐先端は歳差回転点75において合致する。スピンドルの首振りの振れは角度81により表されていて、歳差運動の強さもしくはアンバランスの強さに関連している。スピンドルの下端点の最大変位はこの場合、約1〜2mmである。
【0046】
スピンドル配置は、自由なコマの配置にできるだけ近似していることが望ましい。「自由なコマ」とはとりわけ、その歳差回転点が歳差質量体重心に位置することにより特徴付けられる。コマの弾性的な懸吊部がこの歳差質量体重心に位置していると、このコマは、重力による力のモーメントを受けなくなる(kraeftefrei)。しかし、スピンドル装置の歳差質量体重心の鉛直方向位置は紡糸プロセスにわたりコップ形成中にコップ質量増大に基づいて上方へ向かって移動する。したがって、満管コップの際に歳差質量体重心が歳差回転点よりも少しだけ下方に位置するように歳差回転点を配置することが有利であることが判っている。すなわち、機械フレームにおけるスピンドルの弾性的な回転点取付け部は、理想的な「重力による力のモーメントを受けないコマ(kraeftefrei. Kreisel)」にできるだけ近づくためには、満管のコップの際に歳差質量体重心よりも少しだけ上に位置することが望ましい。
【0047】
図2には、リング精紡機の本発明によるスピンドル装置1の第1実施例の横断面図が示されている。リング精紡機はリングレール16を有しており、このリングレール16はリング17と、このリング17に沿って自由に回転するリングトラベラ18とを備えている。スピンドル30はスピンドル上側部分10を有しており、このスピンドル上側部分10はクランプクラウンと、コップ8を形成するための巻き管を支持するスピンドル心棒とを備えている。スピンドル上側部分10の下方には、電動モータが配置されており、この電動モータはスピンドル軸部2に相対回動不能に配置されたロータ4と、軸受けハウジング11に相対回動不能に結合されたステータ5とを備えている。ロータ4の上方でかつスピンドル上側部分10の下方には、転がり軸受けとして形成された上側の軸受け6が配置されている。ロータ4の下方には、同じく転がり軸受けとして形成された下側の軸受け7が配置されている。軸受けハウジング11は閉じた管状の中空体として形成されていて、電動モータを取り囲んでいる。軸受けハウジング11は下部では、下側の軸受け7の高さに配置された下側のカバー22を介して、上部では上側の軸受け6の高さに配置された上側のカバー23を介してそれぞれ閉鎖されている。上側の軸受け6および下側の軸受け7は、それぞれ対応するカバー22;23の外側に設けられた凹部内に嵌め込まれていて、当該カバー22;23に相対回動不能に結合されており、この場合、軸受けユニットは外部に対して露出しているので、軸受けハウジング11を開くことなしに軸受けユニットに対して直接に作業を施すことができることが保証されている。
【0048】
スピンドル30の軸受けハウジング11は、有利には円筒状のアウタハウジング21内に嵌め込まれていて、弾性的な取付け手段3を介してこのアウタハウジング21に、ほぼ上側の軸受け6の高さでアウタハウジング21に対して可動に取り付けられている。したがって、歳差運動の回転点9はほぼ上側の軸受け6の高さに位置している。軸受けハウジング11とアウタハウジング21とは、側方でも底部側でも、ギャップ形の中空室もしくは間隙12を形成しており、この間隙12は、アングル部材27によってスピンドル支承台もしくはスピンドルレール15に固く固定されたアウタハウジング21内での軸受けハウジング11の回転する歳差運動を可能にする。アウタハウジング21はやはり閉じた管状の中空体として形成されていて、上側の軸受け6および下側の軸受け7を含めて軸受けハウジング11全体を取り囲んでいる。アウタハウジング21は下側ではハウジング底部14によって、上側ではハウジングカバー24によってそれぞれ閉鎖されている。
【0049】
弾性的な取付け手段3は、軸受けハウジング11の上側のカバー23と、アウタハウジング21のハウジングカバー24との間に配置されていて、両カバーを互いに結合している。弾性的な取付け手段3は、スピンドル軸部を巡って延びるゴム弾性的な環状の環状体である。スピンドル30は下方からアウタハウジング21もしくはそのハウジングカバー24に懸吊構造式に取り付けられている。すなわち、取付け手段3と軸受けハウジング11との間の結合点は、取付け手段3とアウタハウジング21との間の結合点の下方に位置している。
【0050】
軸受けハウジング11とアウタハウジング21との間の間隙12の下側の区分は、必要に応じて減衰オイル13によって満たされていてよい。この減衰オイル13は、必要に応じて、アウタハウジング21の内部でスピンドル30により実施された歳差運動の減衰を行うことができる。
【0051】
リングレール16の下方では、紡糸法の実施時におけるコップによる空気運搬を低減する目的で、リングレール16の下側に固定された円筒状のカプセル封入部19が配置されていると有利である。このカプセル封入部19は、スピンドル30の、リングレール16の下方に位置する部分を取り囲んでいる。カプセル封入部19は、たとえばアングル部材28を介してリングレール16にねじ締結されていてよい。カプセル封入部19は縁曲げ部を有していてもよく、その場合、この縁曲げ部を介してカプセル封入部19はリングフレームに固定されている。カプセル封入部19は相応して、アウタハウジング21よりも大きな直径を有している。カプセル封入部19とアウタハウジング21との間には、エアギャップが形成されると有利である。
【0052】
カプセル封入部19はホッパ状の端区分28aを有していてもよい(破線により示す)。このジオメトリは下方へ向かう空気29aの流出を容易にする。このことは特に、カプセル封入部19のホッパ状の端区分28bがコップ形成過程の間、軸受けハウジング11の上端部の高さに位置する場合に重要となる。ホッパ形状に基づき、下方へ向かう、より大きな空気通過部が提供される。この空気通過部はコップ回転によって生ぜしめられた空気運動と共に、煙突効果に類似して下方へ向かう吸込効果29bを生ぜしめる。この吸込効果により、汚れ、特に風綿が下方へ向かってスピンドル装置から導出される。前記カプセル封入部19の構成は、当然ながらこのような1つの実施例に限定されるものではない。それどころか、前記カプセル封入部は極めて一般的にかつ個別スピンドル駆動装置を備えた精紡機のためのスピンドルモータを備えたスピンドルのこのような懸吊もしくは取付けとは切り離して使用可能である。さらに、図1〜図6に示した前記実施例は、カプセル封入部なしのスピンドル装置にも適用される。
【0053】
軸受けハウジング11ならびにこの軸受けハウジング11内に支承された電動モータは、アウタハウジング21およびスピンドル上側部分10と共に1つの構成ユニットを形成しており、この構成ユニットは相応する固定手段、たとえばねじ締結されたアングル部材27を介して、スピンドルレール15に固く結合されている。
【0054】
図3に示した環状の弾性的な取付け手段50は、波形にかつ水平方向にスピンドル軸部58を巡って延びる鋼ばね部材52を有している。たとえば線状または帯状に形成されていてよい鋼ばね部材52は、それぞれその外側の円弧区分のところで、アウタハウジング53またはこのアウタハウジング53に結合された構成部分に設けられた溝内に案内されて、軸方向に保持されている。鋼ばね部材52の内側の円弧区分はそれぞれスピンドルもしくは軸受けハウジング55またはこの軸受けハウジング55に結合された構成部分に設けられた溝内に案内されて、軸方向に保持されている。鋼ばね部材52は波形に変位しながら複数のピン状のエレメント59,60を巡って全周にわたって延びている。これらのピン状のエレメント59,60は前記溝内に配置されていて、鋼ばね部材52を半径方向で保持している。ピン状のエレメント59,60は特に鋼ばね部材52の、中心へ向かう半径方向ずれを阻止している。アウタハウジング53と軸受けハウジング55とは、間隙54を形成しており、この間隙54は歳差移動のための所要の運動自由度を保証している。しかし、鋼ばね部材52の保持部は、該鋼ばね部材52が周方向でピンを巡って移動可能となるように形成されているので、スピンドルはアウタハウジングと同心的な位置から側方へ向かって移動可能となる。この場合、周方向での鋼ばね部材52の移動下に鋼ばねは、広幅のギャップを形成する方の側において、小幅のギャップを形成する側におけるよりも大きな波振幅を形成する。鋼ばね部材52は歳差回転点61の高さに位置している。場合によっては、アウタハウジング53を取り囲むようにカプセル封入部51が配置されていてよい。
【0055】
図4aには、スピンドルの可動の取付け部の別の実施例が概略的に図示されている。スピンドル装置101のアウタハウジング104は肩部を形成しており、この肩部には、1つまたは複数の取付け手段103が載着されている。スピンドルの軸受けハウジング105はフランジを形成しており、このフランジはアウタハウジング104の肩部に上方で重なるように延びていて、前記取付け手段103に載着されている。アウタハウジング104は機械フレームに不動に結合されている。さらに、スピンドル軸部102が概略的に図示されている。図2に示したスピンドル取付け部とは異なり、この場合、スピンドルの軸受けハウジング105は弾性的な取付け手段103を介してアウタハウジング104に載着されている。すなわち、取付け手段103と軸受けハウジング105との間の結合点は、取付け手段103とアウタハウジング104との間の結合点よりも上方に位置している。
【0056】
図4bには、可動のスピンドル取付け部のさらに別の実施例が概略的に図示されている。弾性的な取付け手段203はスピンドル装置のアウタハウジング204を軸受けハウジング205に側方配置の形で結合している。すなわち、取付け手段203と軸受けハウジング205との間の結合点は、取付け手段203とアウタハウジング204との間の結合点と共に同じ高さで水平方向の1つの平面に位置している。アウタハウジング204は機械フレームに不動に結合されている。さらに、スピンドル軸部202が概略的に図示されている。
【0057】
図5には、本発明によるスピンドル装置31の第2実施例の横断面図が図示されている。このスピンドル装置31は、軸受け36,37の配置の点で、図2に示したスピンドル装置とは異なっているが、その他の点では図2に示した実施例と同一の構成を有しており、これらの構成に関しては詳しい説明を省略する。
【0058】
スピンドル42は図2に示した実施例と同様のスピンドル上側部分を有している(詳しくは図示しない)。スピンドル上側部分の下方には電動モータが配置されており、この電動モータはスピンドル軸部32に相対回動不能に配置されたロータ34と、軸受けハウジング41に相対回動不能に結合されたステータ35とを備えている。スピンドル42の軸受けハウジング41に設けられた上側の軸受け36および下側の軸受け37はロータ34もしくは電動モータの下方に位置している。スピンドル軸受け36,37は転がり軸受けとして形成されていて、内側のハウジング壁91と外側のハウジング壁92との間に配置されている。両軸受け36,37はハウジング91,92と共に1つのクイックチェンジ式(迅速交換式)の軸受けユニット97を形成している。この軸受けユニット97の上端部と下端部とはそれぞれカバーエレメントを介して閉鎖されていてよい。内側のハウジング壁91はスピンドル軸部32を収容するための円筒状の中空室を形成している。軸受けハウジング41は閉じた管状の中空体として形成されていて、電動モータならびにクイックチェンジ式の軸受けユニット97を取り囲んでいる。
【0059】
クイックチェンジ式の軸受けユニット97は形状接続式(Formschluss)および/または摩擦接続式(Kraftschluss)の結合によって相対回動不能に、ただし着脱自在にスピンドル軸部32に取り付けられていると有利である。クイックチェンジ式の軸受けユニット97は、たとえば形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により、スピンドル軸部32に被せ嵌められて、ねじ結合部93によって滑脱防止されていてよい。ねじ結合部93は、たとえばスピンドル軸部32の下端部に位置固定されたナットを有していてよい。
【0060】
迅速交換式もしくはクイックチェンジ式の軸受けユニット97を交換するためには、軸受けハウジング41がアウタハウジング21から取り外されて、たとえば下側のカバー94を取り外すことによって開放される。その後に、場合によってはねじ結合部93が緩められて、欠陥のあるクイックチェンジ式の軸受けユニット97がスピンドル軸部32から引き出される。引き続き、新しいクイックチェンジ式の軸受けユニット97を、上で説明したようにして組み付けることができる。
【0061】
図6には、本発明によるスピンドル装置131の第3実施例の横断面図が示されている。このスピンドル装置131は図2に示したスピンドル装置1および図4に示したスピンドル装置32とは、軸受け136,137の配置の点で異なっているが、ただしその他の点では図2に示した実施例と同一の構成を有しているので、これらの構成に関しては詳しい説明を省略する。
【0062】
スピンドル142はスピンドル上側部分を有している(図示しない)。このスピンドル上側部分の下方には電動モータが配置されており、この電動モータはスピンドル軸部132に相対回動不能に配置されたロータ134と、軸受けハウジング141に相対回動不能に結合されたステータ135とを備えている。スピンドル142の軸受けハウジング141に設けられた上側の軸受け136および下側の軸受け137はロータ134もしくは電動モータの上方に位置している。スピンドル軸受け136,137は転がり軸受けとして形成されていて、内側のハウジング壁191と外側のハウジング壁192との間に配置されている。両軸受け136,137はハウジング191,192と共に1つの迅速交換式もしくはクイックチェンジ式の軸受けユニット197を形成している。この軸受けユニット197の上端部と下端部とはそれぞれカバーエレメントを介して閉鎖されていてよい。内側のハウジング壁191はスピンドル軸部132を収容するための円筒状の中空室を形成している。軸受けハウジング141は閉じた管状の中空体として形成されていて、電動モータならびにクイックチェンジ式の軸受けユニット197を取り囲んでいる。
【0063】
迅速交換式もしくはクイックチェンジ式の軸受けユニット197は形状接続式(Formschluss)および/または摩擦接続式(Kraftschluss)の結合によって相対回動不能に、ただし着脱自在にスピンドル軸部132に取り付けられていると有利である。クイックチェンジ式の軸受けユニット197は、たとえば形状接続的に、つまり係合に基づいた嵌合により、スピンドル軸部132に被せ嵌められて、ねじ結合部によって滑脱防止されていてよい。
【0064】
クイックチェンジ式の軸受けユニット197を交換するためには、軸受けハウジングが開放され、欠陥のあるクイックチェンジ式の軸受けユニット197がスピンドル軸部132から引き出される。引き続き、上で説明したように、新しいクイックチェンジ式の軸受けユニット197を組み付けることができる。
【0065】
図6には、さらにアウタハウジング121に対する軸受けハウジング141の軸方向移動を制限し、ひいては取付け手段133の軸方向負荷を制限するための制限装置200が図示されている。この制限装置200は、軸受けハウジングに配置された突出部123または環状のフランジを有しており、この突出部123またはフランジはアウタハウジング121に設けられた溝状の凹部122内に案内されている。この凹部122の上側の壁もしくは下側の壁と突出部123との間の間隔は、該間隔が、支障のない歳差運動、つまり無接触の歳差運動を可能にするが、ただし軸方向では上方へ向かう方向でも下方へ向かう方向でも運動制限を確保するように調節されている。こうして、弾性的な取付け手段133が軸方向のドッフィング力により過剰負荷されることが阻止される。前記制限装置200は本実施例に限定されているわけではなく、別の実施例および変化形に対しても使用可能である。
【0066】
図2、図5および図6に示した実施例のスピンドル装置はファンネル精紡機(Trichterspinnmaschinen)またはループ精紡機においても使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】重力による力のモーメントを受けない、ほぼモーメントフリーの懸吊部を有する本発明によるスピンドルを示す概略図である。
【図2】本発明によるスピンドル装置の第1実施例を示す横断面図である。
【図3】スピンドルの弾性的な懸吊部の固有の実施例を示す横断面図である。
【図4a】スピンドル懸吊部の別の実施例を示す横断面図である。
【図4b】スピンドル懸吊部のさらに別の実施例を示す横断面図である。
【図5】本発明によるスピンドル装置の第2実施例を示す横断面図である。
【図6】本発明によるスピンドル装置の第3実施例を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1 スピンドル装置
2 スピンドル軸部
3 取付け手段
4 ロータ
5 ステータ
6,7 軸受け
8 コップ
9 回転点
10 スピンドル上側部分
11 軸受けハウジング
12 間隙
13 減衰オイル
14 ハウジング底部
15 スピンドルレール
16 リングレール
17 リング
18 リングトラベラ
19 カプセル封入部
21 アウタハウジング
22,23 カバー
24 ハウジングカバー
27,28 アングル部材
28a,28b 端区分
29a 空気
29b 吸込効果
30 スピンドル
31 スピンドル装置
32 スピンドル軸部
34 ロータ
35 ステータ
36,37 軸受け
41 軸受けハウジング
42 スピンドル
50 取付け手段
51 カプセル封入部
52 鋼ばね部材
53 アウタハウジング
54 間隙
55 軸受けハウジング
58 スピンドル軸部
59,60 ピン状のエレメント
61 歳差回転点
70 スピンドル装置
71 回転軸線
72 歳差回転質量体
73 円錐面
74 機械フレーム
75 歳差回転点
76,77 軸受け部
78 電動モータ
79 懸吊部
81 角度
83 歳差質量体重心
91,92 ハウジング壁
93 ねじ結合部
94 カバー
97 軸受けユニット
101 スピンドル装置
102 スピンドル軸部
103 取付け手段
104 アウタハウジング
105 軸受けハウジング
121 アウタハウジング
122 凹部
123 突出部
131 スピンドル装置
132 スピンドル軸部
133 取付け手段
134 ロータ
135 ステータ
136,137 軸受け
141 軸受けハウジング
142 スピンドル
191,192 ハウジング壁
197 軸受けユニット
200 制限装置
202 スピンドル軸部
203 取付け手段
204 アウタハウジング
205 軸受けハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドル装置(1)であって、それぞれ1つの、紡糸巻き管のための支持体として働くスピンドル上側部分(10)と、該スピンドル上側部分(10)の下方に配置された個別駆動装置とを備えたスピンドル(30)が設けられており、個別駆動装置が、軸受けハウジング(11)内に配置された、ロータ(4)とステータ(5)とを備えた電動モータから成っており、ロータ(4)が、スピンドル軸部(2)に相対回動不能に装着結合されており、ステータ(5)が、直接にまたは間接的に軸受けハウジング(11)に相対回動不能に結合されており、スピンドル軸部(2)が、軸受けハウジング(11)内部に設けられたか、または軸受けハウジング(11)に取り付けられた上側の軸受け(6)と下側の軸受け(7)とを介して支承されており、スピンドル(30)が、直接にまたは間接的に機械フレームに、特にスピンドルレール(15)または該スピンドルレール(15)に取り付けられた保持装置(21)に取り付けられている形式のスピンドル装置(1)を備えた精紡機において、スピンドル(30)が、電動モータの上方で取付け手段(3)によって直接にまたは間接的に機械フレーム(15)に可動に取り付けられており、該取付け部と、該取付け部に所属の取付け手段(3)とが、スピンドル(30)の、円錐面(73)を描いて回転する歳差運動を可能にするように形成されており、ただし、円錐先端を形成する歳差回転点(9,75)がスピンドル取付け部の高さに位置していることを特徴とする精紡機。
【請求項2】
歳差回転点(9,75)が、歳差質量体重心(83)と同じ高さに位置しているか、または該歳差質量体重心(83)よりも上方に位置している、請求項1記載の精紡機。
【請求項3】
上側の軸受け(6)が、電動モータもしくはロータ(4)の上方に配置されており、下側の軸受け(7)が、電動モータもしくはロータ(4)の下方に配置されている、請求項1または2記載の精紡機。
【請求項4】
上側の軸受け(136)と下側の軸受け(137)とが、電動モータもしくはロータ(134)の上方に配置されている、請求項1または2記載の精紡機。
【請求項5】
上側の軸受け(36)と下側の軸受け(37)とが、電動モータもしくはロータ(34)の下方に配置されている、請求項1または2記載の精紡機。
【請求項6】
上側の軸受け(36;136)と下側の軸受け(37;137)とが、予め組み立てられた構成アッセンブリ(97;197)として形成されており、該構成アッセンブリ(97;197)が、固定手段(93)を介してユニットとして形状接続式および/または摩擦接続式の結合によってスピンドル軸部(32;132)に着脱自在に固定されている、請求項4または5記載の精紡機。
【請求項7】
スピンドル(30)が、上側の軸受け(6)と同じ高さまたは該上側の軸受け(6)よりも上方で直接にまたは間接的に機械フレーム(15)に弾性的に取り付けられている、請求項1または6記載の精紡機。
【請求項8】
取付け手段が、弾性的な、特にゴム弾性的および/またはばね弾性的な結合エレメント(3)を有している、請求項1から7までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項9】
スピンドル(30)が、水平方向の1つの平面に位置する1つまたは複数の取付け個所を介して機械フレームに取り付けられている、請求項1から8までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項10】
取付け手段(3)が、弾性的なリングエレメントまたはリングセグメントを有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項11】
スピンドル(30)が、アウタハウジング(21)として形成された保持装置を介してスピンドルレール(15)に結合されており、該アウタハウジング(21)内にスピンドル(30)の軸受けハウジング(11)が、有利には同心的に嵌め込まれていて、取付け手段(3)を介してアウタハウジング(21)に旋回可能に結合されており、アウタハウジング(21)と軸受けハウジング(11)との間に、スピンドル(30)の歳差運動を可能にする間隙(12)が形成されている、請求項1から10までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項12】
保持装置(21)、特にアウタハウジングが、機械フレーム、特にスピンドルレール(15)に不動に結合されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項13】
スピンドル(30)が、上側の軸受け(6)と同じ高さまたは該上側の軸受け(6)よりも上方で、取付け手段(3)を介してアウタハウジング(21)に結合されている、請求項11または12記載の精紡機。
【請求項14】
アウタハウジング(21)の下側の区分が、ハウジング底部(14)によって閉鎖されて、ポット状のスピンドル収容部を形成している、請求項11から13までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項15】
軸受けハウジング(11)とアウタハウジング(21)との間の間隙(12)が、少なくとも下側の区分において減衰媒体(13)で満たされている、請求項11から14までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項16】
減衰媒体(13)が、高粘稠性の液体、たとえば減衰オイルである、請求項15記載の精紡機。
【請求項17】
スピンドル(30)とアウタハウジング(21)とが、取付け手段(3)と共に、有利には閉じた1つの構成ユニットを形成しており、アウタハウジング(21)が、該アウタハウジング(21)を機械フレーム(15)に不動に固定するための結合点(27)を有している、請求項11から16までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項18】
下側の軸受け(7)および/または上側の軸受け(6)が、転がり軸受けである、請求項1から17までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項19】
下側の軸受け(7)および/または上側の軸受け(6)が、有利にはセラミックスまたはプラスチックのような非金属材料から成る非導電性の転動体を備えたハイブリッド軸受けである、請求項18記載の精紡機。
【請求項20】
スピンドル(30)が、取付け手段(3)を介して下方から直接にまたは間接的に機械フレーム(15)に懸吊されている、請求項1から19までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項21】
スピンドル(30)が、機械フレーム(15)の不動の剛性的な構成部分(21)に取り付けられている、請求項1から20までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項22】
機械フレーム(15)にスピンドル装置(1)をリングレール(16)に対してセンタリングして位置固定するための手段が設けられている、請求項17から21までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項23】
スピンドル(142)の軸方向移動可能性を制限するための制限手段(200)が設けられている、請求項1から22までのいずれか1項記載の精紡機。
【請求項24】
スピンドルユニット(1)であって、それぞれ1つの、糸巻き管または撚糸巻き管のための支持体として働くスピンドル上側部分(10)と、該スピンドル上側部分(10)の下方に配置された個別駆動装置とを備えたスピンドル(30)が設けられており、個別駆動装置が、軸受けハウジング(11)内に配置された、ロータ(4)とステータ(5)とを備えた電動モータから成っており、ロータ(4)が、スピンドル軸部(2)に相対回動不能に装着結合されており、ステータ(5)が、直接にまたは間接的に軸受けハウジング(11)に相対回動不能に結合されており、スピンドル軸部(2)が、軸受けハウジング(11)内部に設けられたか、または軸受けハウジング(11)に取り付けられた上側の軸受け(6)と下側の軸受け(7)とを介して支承されている形式の、特に請求項1記載の精紡機に用いられるスピンドルユニット(1)において、当該スピンドルユニット(1)が、保持装置(21)を有しており、該保持装置(21)にスピンドル(30)が、電動モータの上方で取付け手段(3)によって可動に結合されており、該結合部および該結合部に所属の取付け手段(3)とが、保持装置(21)の内部に配置された、または保持装置(21)に取り付けられたスピンドル(30)の、円錐面(73)を描いて回転する歳差運動を可能にするように形成されており、ただし、円錐先端を形成する歳差回転点(9,75)がスピンドル取付け部の高さに位置していることを特徴とするスピンドルユニット。
【請求項25】
スピンドル装置(1)であって、それぞれ1つの、紡糸巻き管のための支持体として働くスピンドル上側部分(10)と、該スピンドル上側部分(10)の下方に配置された個別駆動装置とを備えたスピンドル(30)が設けられており、個別駆動装置が、軸受けハウジング(11)内に配置された、ロータ(4)とステータ(5)とを備えた電動モータから成っており、ロータ(4)が、スピンドル軸部(2)に相対回動不能に装着結合されており、ステータ(5)が、直接にまたは間接的に軸受けハウジング(11)に相対回動不能に結合されており、スピンドル軸部(2)が、軸受けハウジング(11)内部に設けられたか、または軸受けハウジング(11)に取り付けられた軸受け(6,7)を介して支承されており、スピンドル(30)が、直接にまたは間接的にスピンドルレール(15)に取り付けられた保持装置(21)に取り付けられている形式の少なくとも1つのスピンドル装置(1)を備えた、リングレール(16)とスピンドルレール(15)とを有するリング精紡機において、スピンドル装置(1)にカプセル封入部(19)が対応しており、該カプセル封入部(19)がリングレール(16)の下側に固定されていて、該カプセル封入部(19)が、目下のコップ糸巻付け個所の下方でスピンドル装置を取り囲んでいることを特徴とするリング精紡機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−138352(P2008−138352A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−306768(P2007−306768)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(590005597)マシーネンファブリク リーター アクチェンゲゼルシャフト (93)
【氏名又は名称原語表記】Maschinenfabrik Rieter AG
【住所又は居所原語表記】Klosterstrasse 20,CH−8406 Winterthur,Switzerland
【Fターム(参考)】