説明

精製された抗原特異的抗体を用いる、肺炎連鎖球菌の迅速な検出のための方法および材料

【課題】肺炎連鎖球菌を検出するための、迅速、特異的かつ高感度の免疫クロマトグラフィーアッセイ法の提供。
【解決手段】肺炎連鎖球菌からC多糖細胞壁抗原を入手し、該抗原を用いて肺炎連鎖球菌に対する抗原特異的抗体を得た。該抗体を用い免疫クロマトグラフィーアッセイ装置を作製した。該抗体の一部は、可視的色調変化を示す標識物質と結合させ、装置の第1の区域に包埋し、一部は、観察用ウィンドウを有する反応区域に結合した。患者の尿、脳脊髄液または血液などの液体試料を第1の区域に適用すると、抗体と標識物質との結合物および試料は吸収性材料の流動ストリップに沿って反応区域に移動し、試料が肺炎連鎖球菌またはその細胞壁抗原を含む場合には標識結合物、抗原および結合抗体のサンドイッチが形成されて色調変化が観察される。本アッセイ法は、肺炎連鎖球菌によって引き起こされる種々の病的状態に対して、迅速かつ信頼性のある診断をもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺炎連鎖球菌(Staphylococcus pneumoniae)によって引き起こされた感染症の臨床徴候を示している患者の尿または脳脊髄液などの体液中の肺炎連鎖球菌を検出するための、約15分以内で行うことが可能な特異的および高感度の免疫クロマトグラフィー(「ICT」)アッセイ法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺炎連鎖球菌(「S.pneumoniae」)は、肺炎型疾患、および気管支炎などの他の下気道感染症、さらには感染性中耳炎および副鼻腔炎を含む上気道感染症、ならびに菌血症および髄膜炎を含む播種性侵襲性感染症の主な原因菌の一つである。診断および治療が適切に行われないと、肺炎連鎖球菌の肺炎性感染は、心膜炎、膿胸、電撃性紫斑病、心内膜炎、または少なくとも1種類の関節炎のいずれかを招くことがあり、いずれの場合も肺炎連鎖球菌が原因菌である。このような肺炎性感染はしばしば菌血症または髄膜炎の引き金ともなる。それにもかかわらず今日まで、肺炎連鎖球菌に起因する肺炎の診断および治療はある程度経験的に行われていることが多い。
【0003】
その理由の大部分は、肺炎連鎖球菌の検出に現在用いられる検査が(1)時間がかかり、手間がかかり、しかも結果の判読に機器の助けを必要とすること、または(2)感度および/もしくは特異性に乏しいことのいずれかによる。感度および/または特異性の不足に伴う問題のために、例えば医師は、肺炎型呼吸器感染症の患者に対して、感染症を十分に治癒させると考えられる肺炎連鎖球菌に特異性のある安価な抗生物質を処方する代わりに、高価な広域抗生物質を無難と考えて処方しやすい傾向にある。当然ながら、このように広域抗生物質が数多く処方されることは、現在マスコミによく取り上げられている、多くの種類の感染性細菌が以前は非常に有効だった抗生物質に対して耐性を獲得しつつあることに起因する医療危機の主な原因である。この危機、ならびに経験的に診断および治療が行われた患者の少なくとも一部に有害な結果が生じる可能性があることは、ヒト体液中の肺炎連鎖球菌を検出するための確実かつ迅速なアッセイ法が必要とされている理由の一部である。
【0004】
肺炎連鎖球菌によって引き起こされる肺炎は重篤な疾患であり、米国だけでも1年あたり、1〜5例/1000人の頻度で発生していると推定されている。肺炎連鎖球菌による肺炎に感染した患者の年齢および健常状態(関連のない因子に基づく)によって異なるが、本疾患の死亡率は感染した患者の4〜30%の範囲である。
【0005】
肺炎連鎖球菌による疾患、特に肺炎を診断するために用いられる最も伝統的な方法には、疾患にかかった疑いのある患者の喀痰のグラム染色および培養を行い、続いて生化学的な同定法を用いることが含まれる。この手順は開始から終了までに1〜4日程度を要する。これは、(1)患者の唾液中に存在する他の細菌がしばしば喀痰培養で異常増殖する、および(2)肺炎連鎖球菌に起因する疾患の徴候が個体にみられない場合にもヒト上気道にはこの細菌が存在することが多いという理由から、診断用ツールとして十分でないことが明らかになっている。例えば、米国の小児の約30%は肺炎連鎖球菌の慢性保菌者と推定されている。成人も疾病状態とはならずに肺炎連鎖球菌が定着することがある。この細菌の保有率は小児および成人のいずれも人混みの多い環境や冬季に増加する。
【0006】
喀痰標本中の肺炎連鎖球菌の多糖莢膜抗原を検出するために凝固、ラテックス粒子凝集、および対向免疫電気泳動法が開発されており、これらは迅速であるが、信頼のおける感度および特異性を示すことは示されていない。これはおそらく、肺炎連鎖球菌には約83種の血清型があり、そのそれぞれが免疫原性および他の点で異なるためと考えられる。これらの検査のために開発されて用いられている市販の多価抗血清は、83種類の肺炎連鎖球菌血清型抗原のすべてに対する抗体を含んでいるが、それにもかかわらず、免疫原性の低い抗原血清型は検出できない可能性がある。また、この多価抗血清には他の連鎖球菌、およびインフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)などの他の一部の感染性細菌との交差反応性も示されている。このため、これらの検査を喀痰試料に用いた場合には、偽陰性および擬陽性反応の両方がランダムに起こるおそれがある。
【0007】
肺炎連鎖球菌の血清型の全てにおける肺炎球菌の細胞壁に存在することが判明している肺炎連鎖球菌C多糖抗原の検出に基づく、いくつかの酵素免疫アッセイ法(「EIA」)が開発されている。例えば、パーキンソン(Parkinson,A.J.)、ラビーゴ(Rabiego,ME.)、セプベダ(Sepulveda,C.)、デービッドソン(Davidson,M.)およびジョンソン(Johnson,C.)、30 J.Clin.Microbiol.318〜322(1992)を参照されたい。このC多糖抗原はテイコ酸に由来するホスホコリン含有多糖である。これらのEIAアッセイ法は、喀痰試料に対して行われることが最も多いにもかかわらず、許容される特異性および感度を有する。しかし、このようなアッセイはそれぞれ、実施に試料採取から2〜3時間を要するほか、通常は主として臨床検査室で利用可能な装置を用いる必要がある。さらに、これらのアッセイは、熟練者により、またはその厳重な監督下で行われる必要がある。
【0008】
肺炎連鎖球菌感染症を診断するために喀痰試料に依拠することは、肺炎連鎖球菌による肺炎の診断を行うには不十分であることが多く、それは単に、口内の他の細菌および/または上気道常在性の肺炎連鎖球菌が試料に混入するおそれがあるという理由のみにとどまらない。喀痰はしばしば採取が困難であり、さらに患者に薬物療法をいったん開始すると、喀痰中の肺炎連鎖球菌の生菌数は急速に減少する。特に、肺炎連鎖球菌の細胞壁を攻撃する抗生物質療法を用いた場合には、喀痰中のC多糖抗原の存在を検出することは急速に困難になると思われる。肺炎連鎖球菌によって感染性中耳炎、髄膜炎および前記の種々の他の感染性疾病状態が引き起こされる場合には、喀痰試料は診断の助けとはならない。
【0009】
肺炎連鎖球菌感染症が疑われる患者から血液培養試料を採取することによって、喀痰試料に付随する混入の問題は解消される。血清試料が肺炎連鎖球菌を含むことが明らかになれば、それが原因となって起こる種々の感染症を容易に診断することができる。この場合の欠点は、肺炎連鎖球菌に感染した肺炎患者全体のうち菌血症となるのは約20%に過ぎないということである。このため、肺炎連鎖球菌による肺炎を診断するために血液試料のみに依拠すれば、偽陰性の結果が得られる可能性がある。
【0010】
肺炎連鎖球菌による肺炎の検出に用いるには尿試料が最も信頼性が高く、簡便なものであることが明らかになっているが、その理由は、それらを非侵襲的に採取しうること;口内細菌叢による汚染が考えられないこと;および、患者に治療を開始した後ですら、濃度レベルがたとえ持続的に低下しても尿中に細菌が存在しつづけるため、処方された治療法の有効性を評価するために患者の尿試料を毎日モニタリングすることによって有用な情報が得られることにある。ただし、疾患の症状を呈しない肺炎連鎖球菌の保菌者は、尿中に肺炎連鎖球菌抗原が存在するほど十分には病原体を有していないことがしばしばあることには注意が必要である。
【0011】
ごく最近の論文には、脳脊髄液の被験試料に対するEIA法を用いて肺炎連鎖球菌による髄膜炎の診断に成功したことが記載されている。このEIAでは、C多糖抗原を検出するために免疫グロブリンA抗ホスホリルコリンモノクローナル抗体が用いられた。スツエルツ(Stuertz,K)、メルクス(Merx,I)、アイフェルト(Eiffert,H.)、シュムツハルト(Schmutzhard,E.)、マデール(Mader,M.)およびナウ(Nau,R.)、36 J.Clin.Microbiol.2346〜2348を参照されたい。得られた結果は、脳脊髄液中の肺炎連鎖球菌に対する2種の抗体、すなわちマイクロタイタープレートに結合させた肺炎連鎖球菌C多糖抗原に対するウマ抗体、および液相中の多糖莢膜抗原に対するウサギプール抗血清を用いるEIAで得られた、ヨルケン(Yolken,R.H.)、デービス(Davis,D.)、ウィンケルスタイン(Winkelstein,J.)、ラッセル(Russell,H.)およびシッペル(Sippel,J.E.)、20 J.Clin.Microbiol.802〜805(1984)によって報告されたものと比べて勝るとも劣らないものであった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】パーキンソン(Parkinson,A.J.)、ラビーゴ(Rabiego,ME.)、セプベダ(Sepulveda,C.)、デービッドソン(Davidson,M.)およびジョンソン(Johnson,C.)、30 J.Clin.Microbiol.318〜322(1992)
【非特許文献2】スツエルツ(Stuertz,K)、メルクス(Merx,I)、アイフェルト(Eiffert,H.)、シュムツハルト(Schmutzhard,E.)、マデール(Mader,M.)およびナウ(Nau,R.)、36 J.Clin.Microbiol.2346〜2348
【非特許文献3】ヨルケン(Yolken,R.H.)、デービス(Davis,D.)、ウィンケルスタイン(Winkelstein,J.)、ラッセル(Russell,H.)およびシッペル(Sippel,J.E.)、20 J.Clin.Microbiol.802〜805(1984)
【発明の概要】
【0013】
発明の簡単な説明
本発明によれば、ウサギに産生させた肺炎連鎖球菌のC多糖抗原に対する抗体を、約10%未満の蛋白質含有量を有する単離および精製したC多糖抗原によってアフィニティー精製する。
【0014】
これらのアフィニティー精製抗体を、被験試料由来の肺炎連鎖球菌C多糖抗原と、ニトロセルロース基質上に固定化されたもう1つのアフィニティー精製されたC多糖抗体とのサンドイッチが形成されると呈色反応を生じる物質と結合させる。
【0015】
本検査は使い捨て式の免疫クロマトグラフィー検査装置の中で行われ、結果を解釈するための計測器は必要ない。これは検査技術の訓練を全く積んでいない人も容易に首尾よく行うことができる。
【0016】
肺炎連鎖球菌による肺炎を診断するための好ましい被験試料は患者の尿であるが、本検査は血清および喀痰を含む、肺炎連鎖球菌を含む他の体液試料でも行うことができる。肺炎連鎖球菌による髄膜炎の診断は、患者の脳脊髄液を被験試料として用いて容易に行うことができる。
【0017】
本発明は、15分以内の時間で行うことができ、結果を得るのにその8〜12倍もの時間およびはるかに多大な作業を必要とするEIA検査と少なくとも同等な特異性および感度を有する、肺炎連鎖球菌に関する検査の恩典を初めて提供するものである。本検査は容易に行うことができ、特別な訓練、装置および計測器を必要とせず、肺炎連鎖球菌による肺炎の迅速診断を可能とする。これは診察室で容易に行うことができ、このため、患者に肺炎連鎖球菌に特異性のある治療処方を直ちに行うことが可能となる。当然ながら、これは臨床検査室でも行うことができるが、さらに老人施設、患者の自宅、または肺炎連鎖球菌による肺炎もしくは他の病的状態が流行していると疑われる任意の環境でも用いることができる。
【0018】
本発明の検査は、中耳炎、気管支炎または副鼻腔炎などの疾病状態が出現した時に行うことが重要であり、これは、これらのいずれかが他の感染性因子ではなく肺炎連鎖球菌に起因することが確認された時点で適切な治療法を直ちに開始することができるためである。小児は耳管の長さが短く、直径が細いので特に中耳炎にかかりやすいため、肺炎連鎖球菌が存在すれば、より重篤なまたは生命にかかわる疾病状態が発現する前にそれを早期発見することができる。ノリス(Norris)ら、J.Pediatrics、821〜827(1966)およびホンゲング(Hongeng)ら、130 J.Pediatrics、No.5(May 1997)による論文では、鎌状赤血球症の小児は肺炎連鎖球菌感染症に極めてかかりやすく、中でもこの階層では肺炎連鎖球菌による敗血症が最も頻度の高い侵襲性感染であり、いったん感染した者は再発およびその後の死亡のリスクが極めて高いことを示している。明らかに、これらの患者の尿を検査するために本発明のICT検査を常用することは、これらの論文のうち2番目のものが推奨しているペニシリン予防を絶えず行うという必要性を軽減する上で有用であると思われる。
【0019】
本検査の実施が容易であり、尿中の肺炎連鎖球菌のC多糖抗原が検出可能であることは、体調がかなり優れないと報告し、関係のある感染症の明らかな臨床徴候を呈していない患者にこの検査を行うことが賢明であると考えられることを示唆する。尿ICT検査の結果が陽性となるのに十分な程度の量の肺炎連鎖球菌が存在することが確認されたこのような患者はすべて、より重篤な感染症を発症すると予想される候補者であり、それが重篤化する前に適切な治療を施すことによって疾患の発症を妨げうることが本発明によって新たに提示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1およびこれに関連した図1A、1Bおよび1Cは、以下に詳細に述べる肺炎連鎖球菌アッセイ法を行うために適合化された、典型的なICT装置の構造を示している。
【図1A】図1およびこれに関連した図1A、1Bおよび1Cは、以下に詳細に述べる肺炎連鎖球菌アッセイ法を行うために適合化された、典型的なICT装置の構造を示している。
【図1B】図1およびこれに関連した図1A、1Bおよび1Cは、以下に詳細に述べる肺炎連鎖球菌アッセイ法を行うために適合化された、典型的なICT装置の構造を示している。
【図1C】図1およびこれに関連した図1A、1Bおよび1Cは、以下に詳細に述べる肺炎連鎖球菌アッセイ法を行うために適合化された、典型的なICT装置の構造を示している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的には、本明細書で記載される肺炎連鎖球菌に関するICTアッセイ法は、当技術分野で開示されている任意の既知の使い捨て式ICT装置で行われるように設計および構成することができる。好ましくはそれは、そのすべてがスミスクライン・ダイアグノスティクス社(Smith−Kline Diagnostics,Inc.)に譲渡され、ヒト呼吸器系疾患の診断を含む広範な分野の使用に関してビナックス社(Binax,Inc.)(これには本出願の譲渡の権利が与えられている)に独占的にライセンスされている、同時係属出願であるハワード・チャンドラー(Howard Chandler)の米国特許出願第07/706,639号、またはその一部継続出願の一つに開示された種類のICT装置を用いて実施されるように設計され、実施される。
【0022】
好ましい装置は、その一つの領域に、肺炎連鎖球菌のC多糖抗原に対する抗原特異的多価抗体を適切に含浸させる。標識化した抗原特異的抗体を装置のもう一つの領域に適用する。肺炎連鎖球菌を含む疑いのある被験試料は、まず標識化された抗原特異的抗体と接触させて、続いて標識化されていない結合型の抗原特異的抗体を含む装置の領域へと試料とともに流され、そこで試料中に肺炎連鎖球菌が存在する場合には、接触によってすでに形成されている標識抗体:C多糖抗原結合物が固定されアフィニティー精製された非標識抗体と結合し、その結果、可視的な呈色反応が生じる。標識は、標識抗体:抗原複合体と結合型非標識抗体との反応によって可視的な呈色を生じるような当技術分野で周知の任意の物質であってもよい。このような標識には、種々の微細金属と、種々の有機分子と、別の呈色分子との酵素結合物などの種々の分子の結合物とが含まれる。本発明における好ましい標識は金コロイド粒子である。
【0023】
検査装置の設計に当たって非常に重要なことは、反応が起こる検査装置の2つの部位のそれぞれに存在する抗体の濃度が、被験試料が標識抗体と接触した際に、被験試料中の抗原を標識抗体によって確実に捕捉するのに十分な程度であること、ならびに標識抗体:抗原結合物が試料捕捉ライン(sample capture line)で結合型抗体によって容易に捕捉および保持されるということである。本発明に関連して行った実験作業により、肺炎連鎖球菌のC多糖抗原に対する活性抗体は、抗原:抗体反応が起こる検査装置の各部位に7.7ナノグラム/mm表面積から385ナノグラム/mm表面積の範囲の濃度で存在する必要があることが示された。反応させようとする部位に存在する抗体の濃度が7.7ナノグラム/mm未満であれば、偽陰性の結果が得られる可能性が高くなる。
【0024】
肺炎連鎖球菌のC多糖抗原に対する抗体のアフィニティー精製の様々な方法が、知られている。本発明には以下に述べるものが好ましいが、それ以外のものを代わりに用いてもよい。しかし、本発明のアフィニティー精製抗体は、シェーグレン(Sjogren)およびホーム(Holme)、102 J.Immunol.Methods 93〜100(1987)によって記載された「アフィニティー精製抗体調製物」とは明確に区別されるべきことに注意が必要である。これらの著者は、温水フェノールによって精製した、17%の蛋白質を含む肺炎連鎖球菌のC多糖抗原を入手し、それをイオン交換ゲルDEAE−セファロースCL6Bに吸着させた。48時間インキュベートした後にこの調製物はpH7.2というほぼ中性のカラムに充填された。この抗原のゲルとの結合率は約60%とされている。抗体はこれらのカラムに入れ、30分間インキュベートした後にカラムを0.5M NaCl(PBS中)により溶出させた。イオン交換カラムから、抗原の漏出がしばしば起こることが知られている。この系では、ゲルから溶出した生成物は、本発明の精製された抗原の調製物ではなく、インサイチューで形成された抗体と抗原との免疫複合体であると仮定することが妥当である。本発明では、10%未満の蛋白質を有する精製された抗原は、BSA−ヒドラジン結合物などのスペーサー分子と共有結合し、この結果生じた標識抗原:結合リガンドを、次に、実施例4のホルミルスフェリローズ(Formyl Spherilose)などのクロマトグラフィーゲルと共有結合させ、その後にカラムに用いることに特に留意する必要がある。抗体を添加し、強酸性の緩衝液を用いて、カラムに固定された抗原から溶出させる。
【0025】
本明細書の好ましい抗体は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)からアクセッション番号ATCC 39938として入手しうる、莢膜をもたない肺炎連鎖球菌株である肺炎連鎖球菌R6株を、動物に注射する前に細胞を加熱殺菌した上でウサギに注射することによって首尾よく産生される。適切な期間の後に、所望のの抗体を含む血清を入手するために動物の採血を行い、続いてそれを精製する。本発明の範囲を逸脱することなく、肺炎連鎖球菌C多糖抗原に対する他の抗体を、本明細書で具体的に述べる抗体の代わりに使用することもできる。
【0026】
抗体を、まず、他の一般的な感染性細菌との交差反応性に関して検査する必要がある。本明細書に参照される好ましい抗体は、ELISA法を用いて、下記のそれぞれに対する交差反応性に関して検査した:シトロバクター・フレウンディ(Citrobacter freundii)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、エンテロバクター・クロカーエ(Enterobacter cloacae)、エンテロバクター・フェカーリス(Enterobacter faecalis)、B群連鎖球菌III型(Streptococcus、group B、Type III)、大腸菌、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)、サルモネラ・クバナ(Salmonella cubana)、サルモネラ・パラチフィA(Salmonella paratyphi A)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、B群連鎖球菌II型(Streptococcus、Group B、type II)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、腸炎菌(Salmonella enteritidis)、A群連鎖球菌(Streptococcus、Group A)、霊菌(Serratia marcescens)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、コリネバクテリア・クチェリ(Corynebacterium kutscheri)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)、エンテロコッカス・アビウム(Enterococcus avium)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、アシネトバクター・ルオフリ(Acinetobacter lwoffli)、緑膿菌(Pseudomonas aeroginosa)、スタフィロコッカス・サフロフィティカス(Staphylococcus saphrophyticus)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)、ウシコリネバクテリウム(Corynebacterium bovis)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、シュードモナス・ステュツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・セパチア(Pseudomonas cepacia)、チフス菌(Salmonella typhi)、F群連鎖球菌(Streptococcus、Group F)、B群連鎖球菌1a型(Streptococcus、Group B、type 1a)、カンジダ・ステラトイデス(Candida stellatoides)、ストレプトコッカス・パラサングイス(Streptococcus parasanguis)、G群連鎖球菌(Streptococcus、Group G)、C群連鎖球菌(Streptococcus、Group C)、ストレプトコッカス・ミュータンス(Streptococcus mutans)、モルガネラ・モルガニイ(Morganella morganii)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、B型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae type B)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)、D型インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae type D)、ガードネレラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)、ストレプトコッカス・ミティス(Streptococcus mitis)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)および分類不能インフルエンザ菌(H.influenzae nontypeable)。
【0027】
明らかな交差反応性が認められたのは、ストレプトコッカス・ミティスおよび黄色ブドウ球菌のみであった。第一のS.ミティス(S.mitis)は心内膜炎の原因因子であり、本症の患者の症状は明らかであるため、医師は肺炎連鎖球菌の肺感染によるものと臨床的に容易に区別することができる。S.ミティス(S.mitis) は肺炎連鎖球菌と同一のC多糖抗原を含んでおり、この2つはいずれも心内膜炎を引き起こすが、肺炎連鎖球菌がこれを引き起こすのは、通常、原発性肺炎が適切に治療されず、続いて菌血症および/または心内膜炎もしくは別の病的二次感染症を発症するような患者の場合である。これに対して、S.ミティスは肺炎の原因因子ではなく、S.ミティスに起因する心内膜炎は通常、他の感染症とは無関係に発症する。このため、S.ミティスによる原発性心内膜炎が疑われる症例を、必要な場合には、本発明のアッセイ法を用いて確認することができる。しかし、S.ミティスは肺炎連鎖球菌に比べて尿中に存在する可能性が低いため、このような場合には血清のアッセイによって確定的な情報が得られる可能性が高いと思われる。
【0028】
黄色ブドウ球菌のいくつかの菌株は、IgGと無差別に結合する、すなわちすべての抗体と結合する非特異的蛋白質であるプロテインAを分泌する。存在が疑われるこれらの黄色ブドウ球菌の有無は、当技術分野で周知の他の簡単な検査を行うことによって容易に確認または否定することができる(実施例9に示す通り、プロテインAが存在しない黄色ブドウ球菌の菌株は本発明の抗体と交差反応性を示さない)。インフルエンザ菌とはわずかな交差反応性が認められたが、これは尿試料中の肺炎連鎖球菌の検出に問題となる程度ではないと考えられる。
【0029】
以下の実施例は、抗体を精製し、これによって抗原特異的な多価抗体調製物を得るために用いる抗原の予備的分離および精製を含む、抗体のアフィニティー精製の好ましい様式を例示したものである。
【実施例】
【0030】
実施例1―細菌の増殖条件
肺炎連鎖球菌R6株(ATCC番号39938)を、20mMヘペス(Hepes)緩衝液を加えた肺炎連鎖球菌用培地中で増殖させた。培地の1リットル当たりの組成は以下の通りである:
カゼイン膵液消化物 17.0g.
グルコース 10.0g.
NaCl 5.0g.
大豆粉のパパイン消化物 3.0g.
酵母抽出物 3.0g.
HPO 2.5g.
HEPES 20mM
この培地のはじめのpHは26℃で7.2±0.2であった。これに15psiおよび121℃で15分間オートクレーブ処理を行い、取り出して冷ました。
【0031】
肺炎連鎖球菌R6株(ATCC番号39938)の凍結アリコートを5%ヒツジ血液寒天番地に接種し、増殖させた。プレートからの増殖物を播種用培地の少量のアリコート中に採取し、上記の組成の肺炎連鎖球菌用補足培地1,700mlをそれぞれ含む3つのフラスコにこの播種用培地を接種して、37℃の5%CO雰囲気下で換気は行わずに攪拌しながらさらに増殖させた。培地のpHが5.5以下に低下した時点(対数期後期)でフラスコをインキュベーターから取り出し、0.1%アジ化ナトリウムで細胞を死滅させ、自己溶菌を防ぐためにpHを7.0以上に調整した。続いてフラスコを4℃に一晩保った。翌日に各フラスコから採取した懸濁液を8,000rpmで60分間遠心処理した。続いてペレットを集めて13,000rpmで30分間遠心処理した。ペレットの湿重量を記録して−20℃で保存した。
【0032】
実施例2―10%未満の蛋白質を含む肺炎連鎖球菌C多糖抗原の単離
実施例1の通りに増殖、処理および保存を行った細胞を室温で解凍し、0.2%アジ化ナトリウムを加えたpH 7.2のリン酸緩衝生理食塩水(「PBS」)中に緩衝液1.2mlに対して湿潤細胞1gの割合で懸濁化し、室温に2日間おいた。
【0033】
続いて、湿潤細胞1g当たり11mlの0.1N NaOHを肺炎連鎖球菌懸濁液(リン酸緩衝生理食塩水中)に添加し、pH 12.34(pH計による測定)となったものを約30℃で45分間インキュベートした。続いて2N HClで懸濁液のpHを2.75(pH計による測定)に調整した後に、懸濁液を3,500rpmで25分間遠心処理した。上清を分離し、1N NaOHでpHを7.0〜7.1に調整した。この本質的に中和された上清を分子量カットオフ値12,000〜14,000の透析チューブ(Spectra/Porから入手)に入れ、水に対して4℃で2日間透析した。透析上清を真空ロータリー蒸発装置で25〜40倍に濃縮した。
【0034】
湿潤細胞1g当たり0.20mgのプロテイナーゼK(Boehringer Mannheim製)を添加し、混合物を37℃に3.5〜4時間放置した後、室温で翌日まで放置した。
【0035】
プロテイナーゼKによる消化の後に、この結果得られた上清をスペクトラ/ポー(Spectra/Por)社製の分子量カットオフ値12,000〜14,000の透析チューブに入れ、水に対して4℃で透析した。透析上清を12等分してそれぞれを30mlガラス管に入れ、当容積の90%フェノールと混合した。管を密封し、水面の高さがチューブ内の混合物の高さをわずかに上回るようにして温水浴中で68〜72℃で3分間インキュベートした。肉眼で懸濁液がほぼ均一となるように、各チューブ内の懸濁液をパスツール型ガラスピペットで時折攪拌した。このインキュベーションの後に、懸濁液を室温で30分間放置し、続いて15℃、5,000rpmで40分間遠心処理した。
【0036】
続いて、各チューブ内の上方の水相をガラス製注射筒で慎重に回収し、その容積を個々のチューブに関して慎重に測定した上で、等容積の水を代わりに加えた。懸濁液を68〜72℃でインキュベートした後に再び15℃、5,000rpmで40分間遠心処理し、さらにこれをもう1回繰り返した。
【0037】
続いて、各チューブ内の下方のフェノール相をガラス製注射筒で慎重に回収し、中間相(水−フェノール混合物)および上相(水)はチューブ内に残した。その間に、抽出したフェノール相を併せたものに対して約10:1の容積比の冷エタノールを含むフラスコを氷浴中に置いた。このフラスコにフェノール相をよく攪拌しながらゆっくりと滴下した。フェノール相の添加後も攪拌を10〜15分間続け、その後に、C多糖抗原のペレット化を促すために混合物を4℃の冷蔵室に入れ、一晩放置した。翌日に混合物を4℃、12,000rpmで20分間遠心処理した。この結果得られたC多糖抗原のペレットを湿潤細胞1g当たり約0.4mlの水にて懸濁化し、スペクトラ/ポー(Spectra/Por)社製の上記の分子量カットオフ値12,000〜14,000の透析チューブを用いて蒸留水に対して4℃で透析した。この結果得られたC多糖抗原の水溶液を凍結乾燥して秤量した。その蛋白質濃度はローリー法によって評価し、その組成はウエスタンイムノブロットアッセイ法によるSDS−PAGE(12%ゲル)で確認し、そのC多糖抗原活性はELISAによって確認した。
【0038】
この操作を何回も繰り返した。肺炎連鎖球菌C多糖抗原の全収率は肺炎連鎖球菌R6株の湿潤細胞1g当たり1.2〜1.4%であり、その蛋白質含有量は約5〜約8%の間であることが明らかになった。
【0039】
一般に、10%を上回る蛋白質含有量のC多糖抗原調製物は、蛋白質含有量が10%未満の調製物よりも本発明が首尾よく実施される可能性が低くなると考えられることに注意が必要である。
【0040】
実施例3―抗原のBSA結合物の調製
ウサギ抗肺炎連鎖球菌R6株抗体のアフィニティー精製を行うため、精製された肺炎連鎖球菌R6株C多糖抗原をクロマトグラフィーカラムにカップリングさせるために、BSA−ヒドラジン結合物を選択した。このカップリング機能を実現するために、類似の機能を有する他の既知の材料を選択して結合させてもよい。
【0041】
BSA−ヒドラジン結合物は以下の通りに調製した:
アルドリッチケミカル社(Aldrich Chemical Co.)から入手した二塩酸ヒドラジンを水に溶かして0.5M溶液を作製した。乾燥NaOHでpHを5.2に調整し、シグマケミカル社(Sigma Chemical Co.)製の乾燥ウシ血清アルブミン(「BSA」)を添加してBSAの最終濃度を25mg/mlとした。BSAを完全に溶解した後、N−(ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(Fluka Chemical Co.製)を最終濃度が2.5mg/mlとなるように添加した。この反応混合物を連続攪拌しながら室温で一晩インキュベートした。その翌日に水に対して4℃で十分に透析した。結合物の濃度はベックマン(Beckman)DU 640分光光度計を用いて280nmで測定した(BSA濃度として) 。
【0042】
この結合物を肺炎連鎖球菌R6株C多糖抗原とカップリングさせるための手順は以下の通りである:
抗原の乾燥調製物1.1mg/mlを蒸留水に溶解した。希塩酸を用いて溶液のpHを5.0〜6.0に調整した。BSA:ヒドラジン結合物の濃度23mg/mlの水溶液を希塩酸で処理し、そのpHを4.0〜5.0の範囲にし、この溶液を約1:6.65の容積比(重量比で約3:1)となるように抗原溶液にゆっくりと添加した。3分間攪拌した後、約100〜200mclの蒸留水に溶解したN−(ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩(Fluka Chemical Co.製)を、C多糖抗原に対して重量比約1〜1.92となるように、N−エチルカルボジイミド塩酸塩中の反応混合物に添加した。
【0043】
室温で2時間攪拌した後、得られた混合物のpHを希NaOHで約9.0に調整した。その後、室温で1時間、続いて4℃で一晩インキュベーションを行った。
【0044】
実施例4―アフィニティーカラムの調製および抗体の精製
実施例3で得たリガンド溶液に希塩酸を添加してpHを7.0にした。免疫吸着ゲルの基質としてはイスコ社(Isco,Inc.)製のホルミルスフェリローズ(Formyl Spherilose)を選択した。C多糖抗原のリガンドとこの基質とのカップリングは、既知の手順、例えばスフェリローズの使用(Spherilose applications)、ISCO社使用説明書(ISCO Applications Bulletin)78、28〜35ページに記載された通りに行った。他の既知の基質およびカップリング手順で代用してもよい。
【0045】
ゲルをカラムに充填し、蒸留水、pH 2.5の0.2Mグリシン−HCL溶液、pH 7.2の3倍強度のリン酸緩衝生理食塩水、およびpH 7.2の標準強度のPBSを順次、それぞれの溶液をゲル容積の5〜10倍の容積で用いて洗浄した。
【0046】
続いて、この結果得られた活性化カラムを、抗体をアフィニティー精製し、これによって抗原特異的抗体を得るために以下の通りに用いた:
肺炎連鎖球菌R6株(ATCC番号39938)の加熱殺菌細胞全体に対するウサギ抗血清を乾燥NaClを混合して最終濃度を0.5Mとした。この混合物を8,500rpmで20分間遠心処理し、上清を原綿で濾過した。この濾液をアフィニティーカラムにかけた。非結合成分はpH 7.2の3倍強度のリン酸緩衝生理食塩水およびpH 7.2の標準強度のリン酸緩衝生理食塩水を用いてカラムから洗い流した。pH 2.5の0.2Mグリシン−HCl緩衝液を用いてカラムから抗体を溶出させた。ベックマン(Beckman)分光光度計を用いて280nmで溶出液を観測し、抗体を含む画分を氷水浴に入れたフラスコにプールした。プールした画分をpH 9.0の0.5M NaHPO水溶液で中和した。
【0047】
280nmにおける分光光度計による吸光度の値から抗体の濃度を評価した。
【0048】
この抗体溶液をpH 7.2のPBSに対して透析し、アミコン(Amicon)社から入手したPM−10フィルターを用いて、抗体の濃度が0.8〜1.5mg/mlとなるまで濃縮した。
【0049】
このように処理した肺炎連鎖球菌R6株に対するウサギ抗血清25mlから、アフィニティー精製抗体が18〜20mg回収されたことが明らかになった。
【0050】
以下の実施例で述べる肺炎連鎖球菌C多糖抗原に対して特異的なICT検査には、これらのアフィニティー精製抗体を用いた。
【0051】
実施例5―ICT装置およびその調製
A.検査装置の調製:
検査結果および対照結果の両方の観察を可能にするウィンドウを備えた中折れ式の厚紙ハウジングを含む検査装置を、図1に示すように調製した。本装置は、試料を染み込ませた綿棒を右側から収容するための成形済みのプラスチック製綿棒用ウェルが内部に配置された陥凹部を有する(図中に1と記したもの)。続いて図1Aに示したオーバーラベルを装置の右側全体に被せる。このオーバーラベルには2つの穴が備わっており、下方のもの(図1AにBと表記)の中には液体が染み込んだ綿棒を挿入し、上方のもの(図1AにBと表記)は綿棒を穴Bに挿入した後にそれに向かって押し進めるためのものである。穴Aおよび穴Bを備えたオーバーラベルならびに綿棒の位置は、アッセイ中に綿棒が正しい位置に保たれ、吸収された液体の綿棒からの圧出が促されるようにうまく連携する。
【0052】
以下に述べるあらかじめ組み立てられた検査ストリップ(図1にCと表記)を陥凹部(図1に2と表記)に挿入し、その底部に塗布された接着剤によって固定する。図1Bに示すオーバーラベルは左側の最上部に配置される。これには、測定の実行のため、装置を閉じた時に右側の穴Aと嵌合する1つの穴(図1BにDと表記)が備わっている。
【0053】
組み立てられた装置は、乾燥剤を加えた密封パウチに入れて使用時まで保管する。パウチの密封および保管の前に、装置の右半分の外縁にゆるく接着テープを付ける。
【0054】
B.検査ストリップの構成および調製
図1Cは、あらかじめ組み立てられたストリップの構成を示す。これは、金粒子と上記の抗原特異的ウサギ抗肺炎連鎖球菌C多糖抗原抗体との結合物を染み込ませた吸着剤の結合物パッドを含む。結合物パッドはアールストローム1281(Ahlstrom 1281)(図示していない)のブリッジパッドにより、上記の通りに調製した抗原特異的ウサギ抗肺炎連鎖球菌C多糖抗原抗体のストリップを包埋することにより、結合物と反応させる試料のための捕捉ラインが設置されたニトロセルロースパッドと連結される。ニトロセルロースパッドには、パッドにヤギ抗ウサギ免疫グロブリン(IgG)の縞を入れることにより、下流対照ラインも設置されている。ニトロセルロースパッドに続いて、ストリップの末端には液体溜めとしての役割を果たす吸着剤パッドがある。これらのパッドはすべて接着性ストリップによって裏打ちされた上で装置内に配置される。
【0055】
この結合物パッドは通常、不織ポリエステルまたは押出酢酸セルロース製である。このパッドをアッセイ用に調製するために、上記の通りに調製したアフィニティー精製後のウサギ抗肺炎連鎖球菌C多糖抗体に直径50nmの金粒子を結合させる。この結合は、ポラック(Polak,J.M.)およびファンノーデン(Van Norden,S.)(編)、「免疫化学:最近の方法および応用(Immunochemistry:Modern MethodsおよびApplication)」(Wright、Bristol、England、1986)においてデメイ(DeMay)によって記載された方法などの既知の方法を用いて行われる。この金結合粒子を、1.0%BSA、0.1%Triton X−100、2.0%Tween 20、6.0%ショ糖および0.02%アジ化ナトリウムを含む、pH 8.0の5mM四ホウ酸ナトリウム水溶液からなる乾燥剤と混合する。水分がすべて除去される程度にパッドを加熱し、検査ストリップを組み立てるまで低湿度環境で保管する。これらのパッドおよびその処理は、パッドが乾燥結合物を保持し、後に試料によって湿潤した場合にのみそれを遊離するように特に選択されたものである。
【0056】
ニトロセルロースパッドをまず、リン酸緩衝生理食塩水の担体溶液を用いて、その第1の部分にアフィニティー精製されたウサギ抗肺炎連鎖球菌C多糖抗体の縞を包埋することによって処理する。これらの抗体は捕捉ラインとして作用する。組み立てられた検査装置で第1の部分の下流に位置するパッドの第2の部分には、パッドの表面に同一の担体溶液中のヤギ抗ウサギIgGの縞を入れることによって対照ラインを設置する。続いて、蛋白質の縞の永続的な吸着を促すためにニトロセルロースパッドを18〜25℃で乾燥させる。
【0057】
用いる吸着剤パッドはアールストローム939(Ahlstrom 939)の名称で市販されているセルロース材料によるものである。このパッドには特別な処理は必要ない。
【0058】
C.キットの調製
販売される時点では、完成した検査ストリップを含む検査装置は組み立てられる。実際に、ダクロン繊維から作られた相応の数の綿棒、および試薬Aを滴下するために適合化された上端が備えられた「試薬A」の瓶とともに、数多くの装置が包装されている。「試薬A」は、pH 6.5の0.05Mクエン酸ナトリウム−リン酸ナトリウム緩衝液中にある2.0%Tween 20、0.05%アジ化ナトリウム、および0.5%ドデシル硫酸ナトリウムの溶液である。各キットには陽性対照および陰性対照も含まれる。
【0059】
実施例6―ICTアッセイ法の実施
実際に、各装置を備えた綿棒を、綿棒の頭部を完全に浸漬するようにして液体試料に浸す。尿、血液、リンパ液などの液体生物試料中および液体環境試料中に存在する溶解していない固体、半固体およびコロイド用のフィルターとして作用させるための綿棒の使用は、1998年3月19日に出願され、ビナックス社(Binax,Inc.)に譲渡されている、ノーマン・ムーア(Norman Moore)およびビンセント・シー(Vincent Sy)による同時係属出願中の米国特許出願第09/044,677号の主題である。綿棒を装置の底部にある穴(図1Aの穴B)に挿入し、綿棒の先端が上部の穴(図1Aの穴A)から見えるように上向きにゆっくりと押す。試薬Aのバイアルを穴Bの上に垂直に置き、試薬Aを3滴ゆっくりと添加する。 続いて直ちに接着剤ライナーを装置の右縁からはがし、装置を閉じてしっかりと密閉することにより、綿棒を綿棒用ウェル内の金結合物パッドに対して押しつける。15分間後には装置のウィンドウから結果を読み取ることができる。陰性試料、すなわち、同定可能な肺炎連鎖球菌C多糖抗原を含まない試料では、ウィンドウの上半分に対照ラインのみが認められるはずである。標的抗原を含む陽性試料の場合は2本のラインが認められると考えられ、このうち下方のものが患者(または試料)ラインである。弱い試料ラインだけでも試料中に標的抗原が存在することを示す。15分後にウィンドウ内に全くラインが出現しない場合、または試料ラインのみがウィンドウの下方に出現した場合には検査は無効であり、再度行う必要がある。
【0060】
上記の手順を用い、ちょうど先に述べたICT手順を用いて、米国疾病管理センター(Centers for Disease Control)から入手した患者146例の尿試料に対して、実施例5の通りに調製した装置を試験した。肺炎連鎖球菌感染の有無に関する患者の診断は、血液培養、グラム染色、喀痰培養、自己溶解素PCRおよびニューモリジン(Pneumolysin)PCRを含むさまざまな異なる指標に基づいて行われたが、尿アッセイ法の結果は得られていないため、本発明者らの検査施設において、これらの試料のそれぞれを肺炎連鎖球菌C多糖抗原の有無に関して本明細書に述べるICTおよびELISAを用いて試験した。
【0061】
ICTおよびELISAアッセイ法を行う作業者には、患者から採取された尿試料の米国疾病管理センター分類が肺炎連鎖球菌感染に関して陽性または陰性のいずれに診断されたかを知らせなかった。ICTおよびELISAの結果は少なくとも約134の症例では感度および特異性の両面で同等であった。しかし、一部の症例ではELISAおよびICT検査はいずれも疾病管理センターから提供された患者の診断とは完全には対応しなかった。肺炎連鎖球菌感染の診断のための基盤として培養評価は十分でないことが当技術分野で認識されていること、および患者に行われた治療、または尿試料が採取された時間と治療を開始した時間との関係に関する情報がないことが、すべての結果に関する完全に意味のある比較を妨げる要因である。
【0062】
134の事例でICTおよびELISAの結果が実質的に同等であったことにより、本発明のこの15分間のICT検査が、肺炎連鎖球菌による感染症を迅速に診断し、それに続いて患者に最も有効な治療を早期に行えるようにするという大きな利点が裏づけられた。
【0063】
実施例7―臨床試験
実施例5の記載通りに調製した装置および実施例6の第1段落に記載した通りのICT手順を用い、特徴づけられた一連の検体を用いて、3つの施設で臨床試験を行った。これらには、入院患者および外来患者から採取した273件の尿検体が含まれる。273例の患者のうち35例は血液培養結果が陽性であり、238例は血液培養結果が陰性であった(培養の方法はしばしば施設によって大きく異なることに注意が必要である)。血液培養の結果が陽性であった患者の尿試料は、血液採取および抗生物質の投与開始から24時間以内に採取されたものと考えられる。血液培養検査が陰性であった患者の238件の尿試料のうち、28件は菌血症患者から、4件は膿胸の患者から、53件は肺炎の患者から、153件は尿路感染症の患者から採取されたものであった。
【0064】
加えて、感染が判明していない個人から採取した100件の尿試料を、実施例5の通りに調製した装置および実施例6に記載したICT手順を用いる本発明の検査によってアッセイした。これらの個人からの血液試料は培養検査の結果では陰性であった。
【0065】
血液培養検査が肺炎連鎖球菌に関して陽性であった患者から採取した35件の尿のうち、30件では本発明の検査で陽性の結果が得られ、5件の結果は陰性であった。血液培養検査が陰性であった患者全例、および陰性と推定される100例からの338件の尿試料のうち、本発明のICT検査で陽性であったのは21件であり、317件は陰性であった。ICT検査の感度は86%、特異性は94%、精度は93%と算出された。
【0066】
ICTによる尿検査が肺炎連鎖球菌に関して陽性であり、肺炎連鎖球菌に関する血液培養が陰性であった患者については、他の検査によって尿路感染症の5例が大腸菌感染を有し、2例がエンテロバクター・クロカーエ(Enterobacter cloacae)感染を有し、3例がラクトバシラス(lactobacillus)感染を有し、1例はプロビデンシア・スチュアーチ(Providencia Stuartii)に感染し、1例は黄色ブドウ球菌に感染し、1例は連鎖球菌(非A非B型)に感染し、1例は連鎖球菌(非D型)にも感染していたことが確認されたことに注意する必要がある。また、肺炎患者のうち2例は結核菌に感染し、1例はマイコバクテリウム・カンサシイ(Mycobacterium kansasii)に感染していた。菌血症患者1例はプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)にも感染していた。感染が判明していない患者4例の尿試料が本発明のICT検査では陽性であった。
【0067】
実施例8―臨床試験
下気道症状および敗血症症状を少なくとも1つ有するか、または別の理由で肺炎連鎖球菌肺炎であることが疑われた、入院および外来患者から採取した215件の尿試料を評価するために、7つの病院で検査を行った。そのうち6つは米国、1つはスペインの病院である。これらの検査では、実施例5に従って調製した装置を実施例6の手順で用い、その結果を、同一患者から採取した血液検体に対して行った血液培養の結果と比較した。参加施設の培養法の均一性は確認していない。
【0068】
血液培養の結果は、31例が肺炎連鎖球菌に関して陽性との評価であり、184例が陰性との評価であった。血液培養の結果が陽性であった患者31例の尿試料に対して本発明のICT検査を行ったところ、28例は陽性であり、3例は陰性であった。血液培養の結果が陰性と評価された患者184例のうち45例の尿試料は本発明のICT検査では陽性であり、139例の尿試料は陰性であった。この試験では、本発明の検査の感度は90%、特異性は76%、精度は78%であった。
【0069】
実施例7および実施例8における本発明のICT検査を用いて得られた結果は、培養検査に伴う公知の問題、および肺炎連鎖球菌肺炎に感染した患者の約80%では血液標本が肺炎連鎖球菌を含んでいないという周知の可能性を踏まえた上で考慮する必要がある。本発明のアッセイの経験をさらに重ねることにより、比較の目的に血液培養検査を用いたために、実施例7および8ではその特異性、感度および精度が低い値となったことが納得されるように示されると考えられる。
【0070】
実施例9―さらなる交差反応性試験
実施例5の通りに調製した装置、および実施例6の手順を用いて、約144種の微生物の試験を10〜10CFU/mLの濃度で行った。試験を行ったそれぞれの微生物は適切な寒天上で増殖させ、5 %CO下にて37℃で一晩インキュベートした後にプレートを純度に関して検討し、十分に分離されている各微生物のコロニーを試験のために選択した。
【0071】
144種の微生物のうち、試験結果が陽性であり、すなわち交差反応性であったのはS.ミティス、A.T.C.C.#49456のみであった。上記のように、S.ミティスは本発明の検査で検出されるように設計されるC多糖細胞壁抗原を含むことが知られているため、これは予想されたことであった。
【0072】
本発明のアッセイで陰性の結果が得られたのは以下のそれぞれであった:アシネトバクター・アニトラタス(Acinetobacter anitratus)(ATOC#49139)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumanii)(ATCC#1906−T)、アシネトバクター・カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)(ATCC番号49466)、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)(A.T.C.C.#19002)、アデノウイルス2および3(米国疾病管理センターから入手したプールされた純粋培養物)、アルカリゲネス・フェカーリス(Alcaligenes faecalis)(A.T.C.C.#6633)、百日咳菌(Bordetella pertussis)(A.T.C.C.#3467)、ブランハメラ・カタラーリス(Branhamella catarrhalis)(A.T.C.C.#25238−T)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)(米国疾病管理センターから入手した純粋培養物、菌株番号は不明)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)(A.T.C.C.#e10231、14053および60193、それぞれを別に検討)、カンジダ・ステラトイデス(Candida stellatoides)(A.T.C.C.#11006)、シトロバクター・フレウンディ(Citrobacter freundii)(A.T.C.C.#375GT)、コクシディオデス・イミティス(Coccidiodes immitis)(米国疾病管理センターから入手した純粋培養物、菌株番号は不明)、コリネバクテリウム・クチェリ(Corynehacterium kutscheri)(A.T.C.C.#15677−T)、コリネバクテリウム・マトリコティ(Corynebacteriun matruchotii)(A.T.C.C.#14266−T)、コリネバクテリウム・シュードディフェリティカム(Corynebacterium pseudodipheriticum)(A.T.C.C.#10700−T)、エンテロバクター・クロカーエ(Enterobacter cloacae)(A.T.C.C.#13047−T、23355、35030および49141、それぞれ別に検討)、エンテロコッカス・アヴィウム(Enterococcus avium)(A.T.C.C.第49462号)、エンテロコッカス・デュランス(Enterococcus durans)(A.T.C.C.#49135)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)(A.T.C.C.#19433−T、29212、49477、49478、49149および51299、それぞれを別に検討)、大腸菌(A.T.C.C.#23513、8739、23514、25922、35218、1173GT、35421および15669ならびに1つの無番号試料、それぞれを別に検討)、エシェリキア・ヘルマンニイ(Escherichia hermannii)(A.T.C.C.#33650−Tおよび4648GT、それぞれ別に検討)、フラボバクテリウム・インドロゲネス(Flavobacterium indologenes)(A.T.C.C.#49471)、フラボバクテリウム・メニンゴセプティカム(Flavobacterium meningosepticum)(A.T.C.C.#49470)、ガードネルラ・バギナリス(Gardnerella vaginalis)(A.T.C.C.#14018−T)、インフルエンザ菌a(Haemophilus influenzae、a)(A.T.C.C.#9006)、インフルエンザ菌b(Haemophilus influenzae、b)(A.T.C.C.#9795および33533、それぞれ別に検討)、インフルエンザ菌c(Haemophilus influenzae、c)(A.T.C.C.#9007)、インフルエンザ菌d(Haemophilus influenzae、d)(A.T.C.C.#9008)、インフルエンザ菌e(Haemophilus influenzae、e)(A.T.C.C.#8142)、インフルエンザ菌f(Haemophilus influenzae、f)(A.T.C.C.#9833)、インフルエンザ菌NT(Haemophilus influenzae、NT)(A.T.C.C.#49144、49247および49766、それぞれ別に検討)、パラインフルエンザ菌(Haemophilus parainfluenzae)(A.T.C.C.#3339Z−T、疾病管理センターから純培養物として入手)、ヒストプラスマ・カプスラーツム(Histoplasma capulatum)(疾病管理センター由来の2つの別の純培養物、菌株不明、それぞれ別に検討)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)(A.T.C.C.#43086および49131、それぞれ別に検討)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(A.T.C.C.#13882、13883−Tおよび49472、それぞれ別に検討)、ラクトバシラス−アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(A.T.C.C.#4356)、カセイ菌(Lactobacillus casei)(A.T.C.C.#393)、ラクトバシラス・ガッセリ(Lactobacillus gasseri)(A.T.C.C.#33323)、ラクトバシラス・イエンセンニ(Lactobacillus jensenii)(A.T.C.C.#25258)、レジオネラ・ニューモフィーラ(Legionella pneumophila)(A.T.C.C.#33152)、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)(A.T.C.C.#7644)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)(A.T.C.C.#9341および49732、それぞれを別に検討)、モラクセラ・オスレンシス(Moraxella osloensis)(A.T.C.C.#15276)、モルガン菌(Morganella morganii)(A.T.C.C.#25830−T)、マイコプラズマ・ゲニタリウム(Mycoplasma genitalium)(A.T.C.C.#33530、疾病管理センターから純培養物として入手)、マイコプラスマ・ホミニス(Mycoplasma hominis)(A.T.C.C.#27545、疾病管理センターから純培養物として入手)、マイコプラスマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumoniae)(FH2型、疾病管理センターから純培養物として入手)、ナイセリア・シネレア(Neisseria cinerea)(A.T.C.C.#14685)、淋菌(Neisseria gonorrheae)(A.T.C.C.#8660、19424−Tおよび27631、それぞれを別に検討)、ナイセリア・ラクタミカ(Neisseria lactamica)(A.T.C.C.#23970−T)、髄膜炎菌(Neisseria meningitidis)(A.T.C.C.#13077−T)、ナイセリア・サブフラバ(Neisseria subflava)(A.T.C.C.#49275)、ノカルジア・ファルシニア(Nocardia farcinia)(疾病管理センターから純培養物として入手)、パラコシディオデス・ブラシリエンシス(Paracoccidiodes brasiliensis)(菌株番号不明、疾病管理センターから純培養物として入手)、パラインフルエンザ1型(Parainfluenzae Type 1)(C39株、疾病管理センターから純培養物として入手)、パラインフルエンザ2型(Parainfluenzae Type 2)(HA 47885株、疾病管理センターから純培養物として入手)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)(A.T.C.C.#7002および12453、それぞれ別に検討)、尋常変形菌(Proteus vulgaris)(A.T.C.C.#13315−Tおよび49132、それぞれを別に検討)、プロビデンシア・スチュアーティ(Providencia stuartii)(A.T.C.C.#49809)、緑膿菌(A.T.C.C.#15442および27853、それぞれ別に検討)、シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia)(A.T.C.C.#25416−T)、シュードモナス・ピケティイ(Pseudomonas pickettii)(A.T.C.C.#49129)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)(A.T.C.C.#49128)、シュードモナス・プトレファシエンス(Pseudomonas putrefaciens)(A.T.C.C.#49138)、シュードモナス・ステュツェリ(Pseudomonas stutzeri)(A.T.C.C.#17588−T)、プールされた呼吸合包体ウイルス(A2株およびA.T.C.C.#18573のプールされた試料、それぞれ疾病管理センターから純培養物として入手した)、ライノウイルス(A.T.C.C.#088および077、それぞれ疾病管理センターから純培養物として入手し、それぞれ別に検討)、サルモネラ・キュバナ(Salmonella cubana)(A.T.C.C.#12007)、サルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)(A.T.C.C.#13076−T)、サルモネラパラチフィA(Salmonella paratyphi A)(A.T.C.C.#9150)、サルモネラ・チフィ(Salmonella typhi)(A.T.C.C.#6539)、霊菌(A.T.C.C.#13880−T)、スフィンゴバクテリウム・マルチボルム(Sphingobacterium multivorum)(A.T.C.C.#35656)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)(A.T.C.C.#12598、6538P、25923、29213、43300および49476、それぞれ別に検討)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)(A.T.C.C.#12228、14990−T、49134および49461、それぞれ別に検討)、溶血性連鎖状球菌(Staphylococcus haemolyticus)(A.T.C.C.#29970−T)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)(A.T.C.C.#15305−Tおよび49907、それぞれ別に検討)、スタフィロコッカス・キシローシス(Staphylococcus xylosis)(A.T.C.C.#49148)、ステノトロホモナス・マルトフィリア(Stenotrophomonas maltophilia)(A.T.C.C.#13637−T)、扁桃炎連鎖状球菌(Streptococcus anginosus)(A.T.C.C.#9895)、ウシ連鎖球菌(Streptococcus bovis)(A.T.C.C.#49133)、A群連鎖球菌(A.T.C.C.#1357および19615、それぞれ別に検討)、B群連鎖球菌(A.T.C.C.#13813−T、12386、12400、12401、27591、12973、12403および31475、それぞれ別に検討)、C群連鎖球菌(A.T.C.C.#12388)、F群連鎖球菌(A.T.C.C.#12392)、G群連鎖球菌(A.T.C.C.#12394)、ストレプトコッカス・
ミュータンス(Streptococcus mutans)(Shockman株)、ストレプトコッカス・パラサングイス(Streptococcus parasanguis)(A.T.C.C.#15909)、ストレプトコッカス・サングイス(Streptococcus sanguis)(A.T.C.C.#10556−T)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)(A.T.C.C.#085および520、それぞれ米国疾病管理センターから純培養物として入手し、それぞれ別に検討)。
【0073】
実施例10―健康小児および罹患小児による臨床試験
健康小児および罹患小児を対象とする現時点では終了していない臨床試験が進行中である。予備的な短い結果では、実施例6に述べた通りに調製した装置および実施例7に述べた手順を用いて、副鼻腔炎と診断された3例の小児中の2例の尿から肺炎連鎖球菌が検出されたことが示されている。検査した小児の尿が陰性であった副鼻腔炎の症例には異なる原因因子がかかわっていたと考えられる。
【0074】
同一の試験において、髄膜炎の明らかな徴候を呈した小児1例の脳脊髄液中に、本発明の装置および方法を用いて肺炎連鎖球菌が検出され、この個体に迅速かつ有効な治療を行うことが可能であった。
【0075】
実施例11―髄膜炎患者の尿における肺炎連鎖球菌抗原の検出
髄膜炎の明らかな臨床徴候を呈している患者2例が入院した。うち1例は入院前に抗菌療法を受けており、他の例は受けていなかった。この各例から脳脊髄液を採取し、培養検査を行った。検査結果は陰性であり、血液培養の結果も同様であった。
【0076】
最後の診断手段として、各患者から採取した尿試料に対して、実施例5に従って調製した装置を実施例6に記載した手順で用いた。各例とも、尿試料の検査結果は肺炎連鎖球菌C多糖細胞壁抗原に対して陽性であった。
【0077】
これらの予備的な結果により、肺炎連鎖球菌による髄膜炎の検査を行う上で、脳脊髄液の代わりに尿試料をルーチンに用いうることを強く示唆される。被験媒体として尿を脳脊髄液の代わりに用いうる可能性がさらなる臨床経験によって裏づけられれば、患者にとっての大きな恩典となり、医師にとっても同様であると考えられる。脳脊髄液を採取するために行う必要がある脊椎穿刺は、患者の痛みを伴うほか、ある程度危険でもある。医師にとって脊椎穿刺は時間がかかる上、集中して細かい注意を払う必要もある。
【0078】
一般に免疫化学の分野の当業者、特にイムノアッセイ法の分野の業者は、他の材料および成分、ならびに時には他の個々の手順を、本明細書で具体的に推奨したものの代わりに容易に用いうることを理解すると考えられる。特許および特許でないものの両方を含む極めて多くの文献で、本明細書に記載および推奨される好ましいICT装置を代用しうると考えられる信頼性の高い、1回だけ用いる使い捨て式のイムノアッセイ検査装置が考察されている。本発明は、特許請求の範囲によって制限されるものを除き、置換可能なアッセイ装置、材料、成分または工程段階の点で制限されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、肺炎連鎖球菌からの約10%以下の蛋白質を含む細胞壁C多糖抗原を入手するための方法:
(a)所望のサイズの試料を得るために必要な時間にわたって細菌を培養する段階、およびそこから湿潤細胞ペレットの形態にある細菌細胞を回収する段階;
(b)湿潤細胞ペレットをアルカリ溶液中に懸濁化する段階、および混合する段階;
(c)強酸を用いてpHを酸性pHに調整する段階、および遠心処理する段階;
(d)段階(d)により上清を分離する段階、およびpHをほぼ中性に調整する段階;
(e)残存蛋白質を破壊するために、この生成物を広域プロテアーゼ酵素調製物によって消化する段階;
(f)弱アルカリ水溶液を用いてpHをアルカリ側に調整する段階;
(g)弱アルカリ溶液で平衡化したサイズ排除カラムにより、本質的に蛋白質を含まない糖質または多糖抗原を分離除去する段階;ならびに
(h)最初のピークに溶出した物質をプールする段階、およびpHをほぼ中性に調整する段階。
【請求項2】
請求項1記載の方法によって得られる、約10%以下の蛋白質を含む細胞壁C多糖抗原。
【請求項3】
段階(b)のアルカリ溶液が湿潤細胞ペレット1g当たり約20mlの0.1M水酸化ナトリウム水溶液を含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
段階(c)においてpHが約3.0に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(f)においてpHが約10〜約11の間に調整される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
段階(h)の後に凍結乾燥段階が行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
以下の段階を含む、肺炎連鎖球菌に対する粗抗体を精製するための方法:
(a)肺炎連鎖球菌から約10%以下の蛋白質を含む細胞壁C多糖抗原を分離する段階;
(b)該抗原を2つの末端を有するスペーサー分子の一端と結合させ、該抗原とスペーサー分子との結合物を形成する段階;
(c)結合物を活性化されたクロマトグラフィーカラムとカップリングする段階;
(d)該粗抗体を段階(c)の該カラムによるアフィニティークロマトグラフィーにかけて、精製された抗原特異的抗体を入手する段階;
(e)該カラムから精製された抗原特異的抗体を溶出させる段階。
【請求項8】
請求項7記載の方法によって得られる、肺炎連鎖球菌の細胞壁C多糖に対する精製された抗原特異的抗体。
【請求項9】
約10%以下の蛋白質を含む肺炎連鎖球菌における精製されたC多糖細胞壁抗原がスペーサー分子によってカップリングされた、肺炎連鎖球菌に対する粗抗体のアフィニティー精製のためのクロマトグラフィーカラム。
【請求項10】
以下の段階を含む、液体中の肺炎連鎖球菌またはその細胞壁C多糖抗原の存在をアッセイする方法:
(a)肺炎連鎖球菌の培養物から、約10%以下の蛋白質を含む該細胞壁C多糖抗原を抽出する段階、
(b)該抗原をスペーサー分子とカップリングさせて結合物を形成させる段階、
(c)段階(b)による結合物をクロマトグラフィーアフィニティーカラムとカップリングする段階、
(d)段階(c)のクロマトグラフィーアフィニティーカラムを用いて肺炎連鎖球菌に対する粗抗体を精製し、精製された抗原特異的抗体を産生する段階、および
(e)段階(d)の精製抗体を用いて、液体中の肺炎連鎖球菌またはそのC多糖細胞壁抗原の有無を検出する段階。
【請求項11】
段階(b)のスペーサー分子が蛋白質分子である、請求項10記載の方法。
【請求項12】
段階(b)のスペーサー分子がヒドラジンとウシ血清アルブミンとの結合物である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
段階(e)の液体が哺乳動物由来の天然の液体である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
液体がヒト尿である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
液体が、肺炎型疾患の臨床徴候を呈している患者から採取される、請求項13記載の方法。
【請求項16】
段階(e)がイムノアッセイ法である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
段階(e)が免疫クロマトグラフィー(「ICT」)アッセイ法である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
段階(d)による精製された抗原特異的抗体の一部が、該抗体が対応する抗原と反応した時に可視呈色を示すことが周知の標識物質と結合している、請求項17記載の方法。
【請求項19】
標識物質が微細化された金である、請求項18記載の方法。
【請求項20】
以下の段階を含む、肺炎連鎖球菌または該細菌のC多糖細胞壁抗原の検出のためのICTアッセイ法:
(a)該細菌またはその抗原を含むことが疑われる液体試料を、吸収性材料のストリップを含むICT装置と接触させる段階であって、該ストリップが、
(i)(1)抗体がその対応する抗原性結合パートナーと反応すると可視的色調変化を示す標識物質、および
(2)肺炎連鎖球菌のC多糖細胞壁抗原に対する精製された抗原特異的抗体であって、約10%以下蛋白質を含む肺炎連鎖球菌の精製されたC多糖細胞壁抗原を結合するクロマトグラフィーアフィニティーカラムを通すことによって精製された該抗体
の結合物が包埋された第1の区域と、
(ii)色調変化を観察するためのウィンドウが備えられた区域である、非結合(unconjugated)形態にある同一の精製された抗原特異的抗体が結合した第2の区域とを有する段階;
(b)該試料を該検査ストリップに沿って該第1の区域へと水平方向に流れるようにする段階;
(c)該試料を、抗原特異的抗体と標識との該結合物とともに、該検査ストリップに沿って該第2の区域へと水平方向に流れるようにする段階;ならびに
(d)段階(a)の開始からほぼ15分以内に該ウィンドウを通して呈色ラインが該第2の区域に出現したか否かを観察し、それによって肺炎連鎖球菌またはその細胞壁C多糖抗原が試料中に存在することを示す段階。
【請求項21】
肺炎連鎖球菌またはそのC多糖細胞壁抗原を含むことが疑われる液体が、哺乳動物由来の天然の液体である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
哺乳動物由来の天然の液体がヒト尿である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物由来の天然の液体が血液または血清である、請求項21記載の方法。
【請求項24】
哺乳動物由来の天然の液体が脳脊髄液である、請求項21記載の方法。
【請求項25】
抗体が対応する抗原性結合パートナーと反応する場合に可視的色調変化を示す標識物質が微細金属である、請求項22記載の方法。
【請求項26】
標識物質が微細化された金である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
標識物質が微細化された金であり、かつ液体がヒト血液または血清である、請求項20記載の方法。
【請求項28】
標識物質が微細化された金であり、かつ液体がヒト脳脊髄液である、請求項20記載の方法。
【請求項29】
標識物質が微細化された金であり、かつ液体がヒト尿である、請求項20記載の方法。
【請求項30】
(i)(1)抗体がその対応する抗原性結合パートナーと反応する場合に可視的色調変化を示す標識物質、および(2)肺炎連鎖球菌のC多糖細胞壁抗原に対する精製された抗原特異的抗体であって、約10%以下の蛋白質を含む肺炎連鎖球菌の精製されたC多糖細胞壁抗原を結合させたクロマトグラフィーアフィニティーカラムを通すことによって精製された該抗体の結合物が包埋された第1の区域と、
(ii)色調変化を観察するためのウィンドウが備えられた区域である、非結合形態にある同一の精製された抗原特異的抗体が結合した第2の区域
とを有する吸収性材料のストリップを含む、肺炎連鎖球菌またはそのC多糖細胞壁抗原の検出のためのICT装置。

【図1】
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【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【公開番号】特開2012−6929(P2012−6929A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−151090(P2011−151090)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【分割の表示】特願2000−573764(P2000−573764)の分割
【原出願日】平成11年9月20日(1999.9.20)
【出願人】(505318846)バイナックス インコーポレイティッド (5)
【Fターム(参考)】