説明

精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法及びシステム

【課題】本発明は、精製ガスの脱酸素装置を所定期間運転後に交換を要する酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を定量的に算出することが可能な精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法及びシステムを提供することを目的とする。
【解決手段】流量計20で測定した精製ガス流量Xと硫黄濃度分析計30で測定した硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と予め求められた総硫黄量と酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量との関係より、前記所定期間経過後に交換を要する酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出工程を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥や生ごみといった有機性廃棄物や食品工場排水などの有機性排水等のバイオマスをメタン発酵させることにより得られるバイオガスが、新しいエネルギーとして注目されている。ここで「バイオガス」とは、バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるものであり、原油、天然ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除くもの)から発生するまたは由来する可燃性ガスを言う。上記メタン発酵処理され、発生したバイオガスは通常「消化ガス」と呼ばれ、この消化ガス中の成分は、メタンが約60容量%及び二酸化炭素が約40容量%である。さらに、微量の不純物として、通常100〜3000ppmの硫化水素(以下、「HS」という)等の硫黄系不純物や約0.3容量%の酸素も含まれている。
【0003】
上記消化ガスは、燃料ガスとして利用される。例えば、発電用のガスエンジン、ガスタービン、燃料電池等、温水や蒸気を製造するボイラー等の燃料である。近年では、さらにこの消化ガスを精製し、都市ガスとして供給されることが待ち望まれている。しかし、この消化ガスを精製し、都市ガスとして利用するためには、上記硫化水素等の硫黄系不純物ばかりでなく、酸素も除去しなければならない。
【0004】
このような要求に応える優れた発明として、例えば、特許文献1に記載されたようなものが知られている。
【0005】
この特許文献1に開示された発明は、消化ガスから二酸化炭素及び硫黄系不純物を分離し、メタンガスを精製する工程と、前記精製されたメタンガス(以下、「精製ガス」と称す)に水素を添加する工程と、前記水素が添加された精製ガスを触媒が充填された酸素除去触媒塔へ供給し、触媒反応により前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を水に変換し除去する工程と、前記酸素除去触媒塔内の温度若しくは前記酸素除去触媒塔を出た精製ガスの温度の内の少なくともいずれかの温度および前記水素が添加された精製ガスの温度を測定する工程と、を備えた構成である。
【0006】
このような特許文献1に開示された発明を用いることで、精製ガス中に残存する酸素を除去するのに、精製ガスに水素を添加し室温(または室温に近い温度)で触媒反応を進めるだけで十分な脱酸素が可能である。また、上記酸素除去触媒塔内の触媒の交換時期を判断することも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−235825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載された発明では、触媒の劣化を急激な温度低下として知るだけのものであるため、上記酸素除去触媒塔内の触媒の交換時期は一応判断できるものの、一定期間(例えば、半年間)経過後に脱酸素装置をメンテナンスする際に、上記酸素除去触媒塔内の触媒がどの程度劣化しているか定量的に知る由もない。したがって、定期的なメンテナンス時に、上記酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することも出来ないという問題点があった。
【0009】
本発明の目的は、精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能な触媒の寿命を予測する寿命予測方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法であって、
単位時間当たりの前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とをさらに備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めておく工程と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記(1)で求められた総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出工程と、
を有したことを特徴とする精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法である。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムであって、
単位時間当たりの前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とを備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めたデータが格納された記憶部と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記記憶部に格納された前記データとの関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出部と、
を有した触媒寿命算出手段とをさらに備えたことを特徴とする精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムである。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法によれば、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法であって、
単位時間当たりの前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とをさらに備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めておく工程と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記(1)で求められた総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出工程と、を有しているため、
精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能な触媒の寿命を予測する寿命予測方法を実現できる。このように、精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能になるため、精製ガスの脱酸素装置において、予備の酸素除去触媒塔を併設させておく必要もなくなるという作用効果を奏する。
【0013】
また、本発明に係る精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムによれば、
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムであって、
単位時間当たりの前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とを備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めたデータが格納された記憶部と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記記憶部に格納された前記データとの関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出部と、
を有した触媒寿命算出手段とをさらに備えているため、
精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能な触媒の寿命を予測する寿命予測システムを実現できる。このように、精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能になるため、精製ガスの脱酸素装置において、予備の酸素除去触媒塔を併設させておく必要もなくなるという作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態の精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムの概略構成を模式的に説明する説明図である。
【図2】図1に示す脱酸素装置を運転し、時間経過とともに積算した総硫黄量(g)と酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量(g)との関係を予め求めたデータを説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態について、添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態の精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムの概略構成を模式的に説明する説明図である。
【0016】
図1において、1は下水汚泥や生ごみといった有機性廃棄物や食品工場排水などの有機性排水等のバイオマスをメタン発酵させるための消化タンク、2は消化タンク1から発生した消化ガス中から硫黄系不純物と二酸化炭素を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置、3、4はバイオガス精製装置2で精製された精製ガスを供給するための配管、5は配管4を通る上記精製ガスの酸素濃度を測定するための酸素計{例えば、ガスクロマトグラフ(型式:GC−20B−3S、株式会社島津製作所製)}、6は配管4を通る上記精製ガスに水素を供給するための水素供給手段としての水電解式高純度水素酸素発生装置{株式会社神鋼環境ソリューション製の水電解式高純度水素酸素発生装置(商品名:HHOG)}、8はパラジウム(Pd)触媒7が充填された酸素除去触媒塔、9は酸素除去触媒塔8で酸素が除去された精製ガスを供給するための配管、10は配管9を通って供給される酸素が除去された精製ガス中の水分を除去するための除湿器である。精製ガスの脱酸素装置は、消化タンク1、バイオガス精製装置2、酸素計5、水電解式高純度水素酸素発生装置6、パラジウム(Pd)触媒7が充填された酸素除去触媒塔8と除湿器10から概略構成されている。水素供給手段は、上記水電解式高純度水素酸素発生装置6に限定されるものではなく、通常の水電解装置を用いることも可能である。また、酸素除去触媒塔8の後段にガス冷却器(図示せず)を設け、このガス冷却器で酸素が除去された精製ガスを冷却し、ガス冷却器で生成された凝縮水を排出するためのドレントラップ(図示せず)がさらに付設されているのがより好ましい。
【0017】
上述したような精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムは、単位時間当たりの上記精製ガスの量(精製ガス流量X)を測定するための酸素除去触媒塔8の入口側の配管3と配管4の間に設けられた流量計20と、上記精製ガス中に残留する硫黄系不純物に関して上記精製ガス流量X当たりの硫黄量(硫黄濃度Y)を測定するための酸素除去触媒塔8の入口側の配管4の途中に設けられた硫黄濃度分析計30(例えば、品番:TS−360、株式会社堀場製作所製)とを備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、流量計20で測定した前記精製ガス流量Xと硫黄濃度分析計30で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めたデータが格納された記憶部50と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、流量計20で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と記憶部50に格納された前記データとの関係より、前記所定期間経過後に交換を要する酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出部60と、
を有した触媒寿命算出手段40とをさらに備えているため、精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔8内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能な触媒の寿命を予測する寿命予測システムを実現できる。
【0018】
以下に、本発明の作用効果を検証するための試験を実施した結果について述べる。
【0019】
最初に、上述した脱酸素装置を運転し、流量計20で測定した精製ガス流量X(mN/h)と硫黄濃度分析計30で測定した硫黄濃度Y(g/mN)を掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間(h)の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量(単位g)と酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量(単位g)との関係を予め求め(図2参照)、この図2に示すデータを図1に示す触媒寿命算出手段40内の記憶部50へ格納した。なお、酸素除去触媒塔8の大きさは、直径27mm−長さ300mm、パラジウム触媒7の質量は、50gである。
【0020】
次に、上述した脱酸素装置を運転中に、流量計20で測定した精製ガス流量X(mN/h)と硫黄濃度分析計30で測定した硫黄濃度Y(g/mN)を掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を下記表1に示すような所定期間{例えば、半年間(試験No.1)}積算し算出された総硫黄量(単位g)と上記記憶部50に格納されたデータとの関係より、上記所定期間経過後に交換を要する酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量(単位g)を図1に示す触媒寿命算出手段40内の触媒寿命算出部60で算出した(下記表1参照)。
【0021】
【表1】

【0022】
上記表1に示すように、酸素除去触媒塔8に供給する精製ガスの流量と硫黄濃度がそれぞれ変動する場合にも所定期間積算することにより、寿命を迎えた総触媒量を算出可能である。また、算出された寿命を迎えた総触媒量は酸素除去触媒塔8内に実際に充填された触媒量より少ないため、触媒7を交換する際に酸素除去触媒塔8内の粒状または成形状の触媒の全量を交換するようなことを要せず、算出された寿命を迎えた総触媒量だけを交換すればよい。このように、精製ガスの脱酸素装置の定期的なメンテナンス時に、酸素除去触媒塔8内の劣化した触媒量に見合う分だけ交換することが可能な触媒の寿命を予測する寿命予測システムを実現できることが分かる。
【0023】
なお、本実施の形態においては、(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を積算する所定期間として、半年間の例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、任意の所定期間に対応可能である。
【0024】
また、本実施の形態においては、酸素除去触媒塔8の大きさが直径27mm−長さ300mmで、パラジウム触媒7の質量が50gを用い、バイオガス精製装置2で精製された精製ガスを供給した場合について、図2に示すような総硫黄量(単位g)と酸素除去触媒塔8内の寿命を迎えた総触媒量(単位g)との関係を予め求めた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、所定の質量を有する脱酸素用触媒が充填された所定の大きさの酸素除去触媒塔に所定の精製ガスを供給し、総硫黄量と酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めておきさえすればよい。
【0025】
また、本実施の形態においては、流量計20を酸素除去触媒塔8の入口側に設けた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、流量計20を酸素除去触媒塔8の出口側に設けることも可能である。尚、酸素除去触媒塔8の出口側に流量計20を設けた場合、酸素除去触媒塔8で酸素が除去されるため、除去された酸素量を考慮して精製ガス流量を算出する必要が有る。よって、酸素除去触媒塔8に供給する精製ガスの量を直接測定する方法である流量計20を酸素除去触媒塔8の入口側に設ける方が好ましい。
【0026】
なお、本実施例においては、硫黄濃度分析計30として、株式会社堀場製作所製TS−360を用いた例について説明したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、FPD付ガスクロマトグラフや硫化水素濃度計等の硫黄化合物の濃度を測定できる分析計を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 消化タンク
2 バイオガス精製装置
3、4、9 配管
5 酸素計
6 水電解式高純度水素酸素発生装置
7 パラジウム(Pd)触媒
8 酸素除去触媒塔
10 除湿器
20 流量計
30 硫黄濃度分析計
40 触媒寿命算出手段
50 記憶部
60 触媒寿命算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法であって、
単位時間当たりの前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とをさらに備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めておく工程と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記(1)で求められた総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出工程と、
を有したことを特徴とする精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測方法。
【請求項2】
バイオガス中から少なくとも硫黄系不純物を分離し、高濃度なメタンガスを精製するためのバイオガス精製装置と、このバイオガス精製装置で得られた精製ガスに水素を添加するための水素供給手段と、この水素供給手段により水素が添加された精製ガスを受入れ、前記水素が添加された精製ガス中に残存する酸素を触媒反応により水に変換するための触媒が充填された酸素除去触媒塔と、を備えた精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システムであって、
単位時間当たりの前記酸素除去触媒塔に供給する前記精製ガスの量(以下、「精製ガス流量X」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側または出口側に設けられた流量計と、前記精製ガス中に残留する前記硫黄系不純物に関して前記精製ガス流量X当たりの硫黄量(以下、「硫黄濃度Y」と称す)を測定するための前記酸素除去触媒塔の入口側に設けられた硫黄濃度分析計とを備え、
(1)前記脱酸素装置を運転し、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を時間の経過とともに積算することで順次算出された総硫黄量と前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量との関係を予め求めたデータが格納された記憶部と、
(2)前記脱酸素装置を運転中に、前記流量計で測定した前記精製ガス流量Xと前記硫黄濃度分析計で測定した前記硫黄濃度Yを掛算し、この掛算した(精製ガス流量X×硫黄濃度Y)を所定期間積算し算出された総硫黄量と前記記憶部に格納された前記データとの関係より、前記所定期間経過後に交換を要する前記酸素除去触媒塔内の寿命を迎えた総触媒量を算出する触媒寿命算出部と、
を有した触媒寿命算出手段とをさらに備えたことを特徴とする精製ガスの脱酸素装置における触媒の寿命を予測する寿命予測システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−107922(P2013−107922A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251376(P2011−251376)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【特許番号】特許第4934231号(P4934231)
【特許公報発行日】平成24年5月16日(2012.5.16)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】