説明

糊付け機における湿潤装置

【課題】経糸に適正な水分率をもたらすことが容易にできる糊付け機における湿潤装置を提供すること。
【解決手段】水を吐出する水吐出孔54を、水供給器51の周方向における幅が均一となるように、水供給器51の軸方向に沿って延出形成した。また、経糸を挟み込む上側の絞りローラの周面に水供給器51から水を供給するようにした。これにより、経糸に適正な水分率をもたらすことが容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経糸に糊付けを行なう前に、水で濡らされた経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から水を絞り取る糊付け機における湿潤装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
経糸に糊付けを行う前に予め経糸を水で湿潤させる糊付け工程は、糊付け効果を増して糊材の節減をもたらす。一般的には、貯水槽内に貯められた80°C〜90°Cの湯に経糸を浸した後、水で湿潤した経糸を所定の水分率まで脱水してから経糸に糊付けを行えば効果的であることが知られている。
【0003】
経糸を湿潤させるための湿潤装置としては、水を貯めた貯水槽と、貯水槽内の水に浸漬された浸漬ローラと、貯水槽内の水の水面よりも上方で、浸漬ローラの周面に巻き掛けられた経糸を介して浸漬ローラの周面に押圧された絞りローラとを備えた構成が一般的である(例えば、特許文献1参照)。経糸は、貯水槽内の水に浸されて湿潤される。
【0004】
しかし、貯水槽内の水に経糸を浸すので、絞りローラで絞っても十分に脱水できず、適正な水分率(水分量/糸重量)にならない場合がある。特許文献2に開示の装置では、経糸の上面側にノズルから水を吹きかけ、経糸を貯水槽内の水に浸さないようにしている。
【特許文献1】特開2002−309477号公報
【特許文献2】特開2002−235272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に開示の装置では、複数のノズルから霧状又は滴状の水を高速に経糸に拭きかける構成であるため、経糸の場所によっては、供給される水分量が多かったり、少なかったりする場合がある。すなわち、全ての経糸に対して均一に水を供給しにくく、経糸を適正な量の水で湿潤させることが難しいという問題があった。従って、経糸に適正な水分率をもたらすことは難しかった。
【0006】
本発明は、経糸に適正な水分率をもたらすことが容易にできる糊付け機における湿潤装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、経糸に糊付けを行なう前に、水で濡らされた経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から水を絞り取る糊付け機における湿潤装置において、前記一対の絞りローラの間に導入される前記経糸よりも上側の絞りローラの周面、又は前記一対の絞りローラよりも上流の経糸の上面側に水を供給する水分供給手段を備え、前記水分供給手段は、水を吐出する吐出孔を有し、前記吐出孔は、前記水分供給手段の軸方向に長辺を有するスリット形状に形成されることを要旨とする。
【0008】
請求項1に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記吐出孔は、前記水分供給手段の周方向における幅が均一となるように形成されることを要旨とする。
請求項1又は請求項2に記載の発明によれば、吐出孔から吐出される水は、水分供給手段の軸方向に沿って膜状となる。このため、経糸に供給される水量は、均一となる。また、経糸を挟み込む上側の絞りローラの周面又は経糸の上面側に水分供給手段から水を供給するので、適量の水を経糸に供給することが容易である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記吐出孔には、前記吐出孔の周方向における幅を一定間隔に維持するための繋ぎ目が設けられることを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、吐出孔の幅が広がることを防止できる。従って、吐出孔は、長手方向において均一に水を供給することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明において、前記水分供給手段は、複数の列の吐出孔を有しており、前記繋ぎ目は、隣接する列の吐出孔の繋ぎ目と前記水分供給手段の周方向において同じ位置に配置されないようにするために交互に配置されるように設けられることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、水分供給手段の周方向において水が吐出されない繋ぎ目が複数列の吐出孔にて同じ位置に配置されないようになるため、水分供給手段の長手方向において、水が吐出されない箇所がなくなる。従って、水を、水分供給手段から長手方向においてほぼ均一に吐出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、経糸に適正な水分率をもたらすことが容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
図1に示すように、糊付け機1は、経糸Tに糊付けを行う糊付け装置2と、経糸Tに糊付けを行う前に経糸Tを湿らす湿潤装置3から構成されている。
【0014】
糊付け装置2は、糊液Nを一旦貯留する糊液槽11を備えている。糊液槽11内には糊液加熱パイプ12が配設されており、糊液加熱パイプ12内には蒸気供給源13から所定温度の蒸気が供給されるようになっている。この糊液加熱パイプ12内に供給された蒸気により、糊液槽11内の糊液Nは、固まらないように加熱される。なお、蒸気供給源13から糊液加熱パイプ12内に供給される蒸気量及び蒸気の温度は、糊液槽11内の糊液Nの温度が所望の温度範囲(例えば、90℃〜95℃)内に入るように調整される。
【0015】
また、糊液槽11は、新たに供給する糊液Nを貯めておく糊液供給源14と接続されており、糊液供給源14は、糊液槽11内の糊液Nが一定量以下になると、糊液Nを糊液槽11へ補給するようになっている。より詳しくは、糊液供給源14は、その開閉弁15の開閉を制御するコントローラC1を備えており、コントローラC1は、糊液槽11内の糊液Nの液面N1の高さを検出するレベルセンサ16から液面レベル情報を受信し、当該液面レベル情報に基づいて開閉弁15の開閉を制御するようになっている。すなわち、コントローラC1は、糊液槽11内の糊液Nの液面N1の高さが所定高さ以下になると、開閉弁15を開くように制御する。これにより、糊液供給源14から糊液Nが糊液槽11に供給される。また、コントローラC1は、糊液槽11内の糊液Nの液面N1の高さが所定高さになると、開閉弁15を閉じるように制御する。これにより、糊液供給源14からの糊液Nの供給が停止される。このため、糊液槽11内の糊液Nの液面N1の高さが一定の範囲に保たれる。
【0016】
また、糊液槽11の底壁111には、糊液供給パイプ17が接続されている。糊液供給パイプ17は、途中から分岐パイプ171と分岐パイプ172とに分岐している。一方の分岐パイプ171には円筒形状(パイプ形状)の糊液供給器21が接続されており、他方の分岐パイプ172には円筒形状(パイプ形状)の糊液供給器22が接続されている。なお、糊液供給パイプ17の途中には糊液調整用ポンプ18が介在されている。糊液調整用ポンプ18は、糊液供給パイプ17を介して糊液槽11内の糊液Nを糊液供給器21,22の筒内へ圧送するようになっている。
【0017】
そして、前記糊液供給器21,22の周壁には、糊液Nを排出する糊液吐出孔24が貫通形成されている。糊液吐出孔24は、糊液供給器21,22の筒内とを連通しており、糊液供給器21,22の筒内へ圧送された糊液Nは、糊液吐出孔24から外部に吐出されるようになっている。
【0018】
また、前記糊液供給器21の直下には、一対の円柱形状の絞りローラ31,32が糊液供給器21の長手方向(軸線方向)に沿うように配設されている。また、前記糊液供給器22の直下には、一対の円柱形状の絞りローラ33,34が糊液供給器22の長手方向(軸線方向)に沿うように配設されている。そして、図1に示すように、前記糊液吐出孔24は、垂直方向に見て、絞りローラ31,33の上半周側の降り四半周S1,S2の範囲内に入る位置に配置されている。つまり、糊液吐出孔24は、垂直方向に見て、絞りローラ31,33の頂上312,332から絞りローラ31,33の回転方向R1に1/4周辿って上半周と下半周との境K1,K2に至る範囲(降り四半周S1,S2)内に入る位置に配置されている。
【0019】
そして、前記一対の絞りローラ31,32及び一対の絞りローラ33,34は、それぞれシート状に配列された多数本の経糸Tを挟み込んでいる。すなわち、シート状に配列された多数本の経糸Tは、一対の円柱形状の絞りローラ31,32の間及び一対の円柱形状の絞りローラ33,34の間を通されている。なお、このシート状に配列された多数本の経糸Tは、湿潤装置3から送られてきたものである。そして、前記絞りローラ31,33は、矢印R1の方向(反時計回り方向)に回転するようになっており、絞りローラ32,34は、矢印Q1の方向(時計回り方向)に回転するようになっている。
【0020】
また、経糸Tは、対となる絞りローラ31,32の把持部H1において絞りローラ31,32の周面311,321に対する接線となる経路をとっている。又、経糸Tは、対となる絞りローラ33,34の把持部H2において絞りローラ33,34の周面331,341に対する接線となる経路をとっている。
【0021】
対の絞りローラ31,32と対の絞りローラ33,34との直下には糊液受け器35が配置されている。糊液受け器35の底壁351は、下に凹む形状となっている。底壁351は、絞りローラ32,34に接触しない位置に配置されている。底壁351の最下部には糊液回収パイプ36が接続されている。前記糊液回収パイプ36は、糊液受け器35よりも下方に配設されている糊液槽11に導かれている。なお、糊液供給源14からの糊液Nの供給が停止される所定高さの液面N1は、糊液受け器35より下方に設定されている。
【0022】
次に、経糸Tに糊付けを行う前に経糸Tを湿らす湿潤装置3について説明する。
湿潤装置3は、水Wを一旦貯留する水槽41を備えている。水槽41内には水槽加熱パイプ42が配設されており、水槽加熱パイプ42内には蒸気供給源13から所定温度の蒸気が供給されるようになっている。この蒸気供給源13から水槽加熱パイプ42内に供給される蒸気量及び蒸気の温度は、水槽41内の糊液Nの温度が所望の温度範囲(例えば、90℃〜95℃)内に入るように調整される。
【0023】
また、水槽41は、新たに供給する水Wを貯めておく水供給源44と接続されており、水供給源44は、水槽41内の水Wが一定量以下になると、水を水槽41へ補給するようになっている。より詳しくは、水供給源44は、その開閉弁45の開閉を制御するコントローラC2を備えており、コントローラC2は、水槽41内の水Wの液面W1の高さを検出するレベルセンサ46から液面レベル情報を受信し、当該液面レベル情報に基づいて開閉弁45の開閉を制御するようになっている。すなわち、コントローラC2は、水槽41内の水Wの液面W1の高さが所定高さ以下になると、開閉弁45を開くように制御する。これにより、水供給源44から水が水槽41に供給される。また、コントローラC2は、水槽41内の水Wの液面W1の高さが所定高さになると、開閉弁45を閉じるように制御する。これにより、水供給源44からの水の供給が停止される。このため、水槽41内の水Wの液面W1の高さが一定の範囲に保たれる。
【0024】
また、水槽41の底壁411には、水供給パイプ47が接続されている。この水供給パイプ47の端部には、円筒形状(パイプ形状)の水供給器51が接続されている。なお、水供給パイプ47の途中には水量調節用ポンプ48が介在されている。水量調節用ポンプ48は、水供給パイプ47を介して水槽41内の水Wを水供給器51の筒内へ圧送するようになっている。
【0025】
そして、前記水供給器51の周壁には、図2及び図3に示すように、水吐出孔54が貫通形成されている。水吐出孔54は、水供給器51の筒内とを連通しており、水供給器51の筒内へ圧送された水Wは、水吐出孔54から外部に吐出されるようになっている。なお、水Wは、水供給器51の長手方向両端(図3において左右方向両端)から圧送されるようになっている。
【0026】
また、前記水供給器51の直下には、一対の円柱形状の絞りローラ61,62が水供給器51の長手方向(軸線方向)に沿うように配設されている。そして、図1及び図2(a)に示すように、前記水吐出孔54は、垂直方向に見て、絞りローラ61の上半周側の降り四半周S3の範囲内に入る位置に配置されている。つまり、水吐出孔54は、垂直方向に見て、絞りローラ61の頂上612から絞りローラ61の回転方向R3に1/4周辿って上半周と下半周との境K3に至る範囲(降り四半周S3)内に入る位置に配置されている。
【0027】
そして、前記一対の絞りローラ61,62は、それぞれシート状に配列された多数本の経糸Tを挟み込んでいる。すなわち、シート状に配列された多数本の経糸Tは、一対の円柱形状の絞りローラ61,62の間を通されている。前記絞りローラ61は、矢印R3の方向(反時計回り方向)に回転するようになっている。前記絞りローラ62は、矢印Q3の方向(時計回り方向)に回転するようになっている。また、経糸Tは、対となる絞りローラ61,62の把持部H3において絞りローラ61,62の周面611,621に対する接線となる経路をとっている。そして、絞りローラ61,62の間を通された経糸Tは、糊付け装置2に送られるようになっている。
【0028】
また、対の絞りローラ61,62の直下には水受け器65が配置されている。水受け器65の底壁651は、下に凹む形状となっている。底壁651は、絞りローラ62に接触しない位置に配置されている。底壁651の最下部には水回収パイプ66が接続されている。前記水回収パイプ66は、水受け器65よりも下方に配設されている水槽41に導かれている。なお、水供給源44からの水供給が停止される所定高さの液面は、水受け器65より下方に設定されている。
【0029】
次に、経糸Tに水が供給されてから、糊液Nが経糸Tに供給され、経糸Tが巻き取られるまでの流れについて説明する。
絞りローラ61,62が回転しているとき、水量調節用ポンプ48が作動すると、水槽41内の水Wが水量調節用ポンプ48の作動によって水供給器51の筒内へ圧送される。なお、水供給器51へ供給される水の流量調整は、例えば水量調節用ポンプ48の回転数を調整することによって容易に行える。
【0030】
水分供給手段としての水供給器51の筒内へ圧送された水は、水吐出孔54から吐出される。水吐出孔54から吐出された水は、絞りローラ61の降り四半周S3上に供給される。水Wは、絞りローラ61の降り半周S6(図1に図示)を伝い降りて把持部H3付近で経糸Tに付着する。把持部H3付近で経糸Tに付着した水の一部は、絞りローラ61,62の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。
【0031】
経糸Tから絞り取られた水は、下側の絞りローラ62の昇り半周U3(図1に示すように把持部H3から絞りローラ62の周面621の最下位622に至る範囲)を伝い降りる。絞りローラ62の昇り半周U3を伝い降りる水の一部は、絞りローラ62の回転に伴って把持部H3に移行して経糸Tに付着する。絞りローラ62の昇り半周U3を伝い降りる水の一部は、水受け器65の底壁651の内壁面652上に落下する。水受け器65の底壁651の内壁面652上に落下した水は、絞りローラ62に付着しない。つまり、絞りローラ62が水受け器65の底壁651の内壁面652に落下した水をピックアップすることはない。下側の絞りローラ62に接触しない位置にあるように水受け器65に設けられた底壁651の内壁面652は、絞りローラ61,62から落下する水を受ける受け部である。受け部としての内壁面652は、運転中常に、つまりいずれの運転条件においても常に絞りローラ62に接触しない位置にある。つまり、内壁面652は、糊付け装置2の運転速度(つまり、絞りローラ31,32の周速)に関係なく常に絞りローラ32に接触しない位置にある。水受け器65内に落下した水は、水回収パイプ66を経由して水槽41内へ回収される。
【0032】
なお、水槽41に回収された水Wは、水量調節用ポンプ48の作動によって再び水供給器51へ送られる。水槽41、水供給パイプ47及び水量調節用ポンプ48は、水受け器65によって受けられた水を水供給器51に送る還流手段を構成する。また、絞りローラ61,62間を通過した経糸Tは、次に、糊付け装置2に送られる。
【0033】
絞りローラ31〜34が回転しているとき、糊液調整用ポンプ18が作動すると、糊液槽11内の糊液Nが糊液調整用ポンプ18の作動によって糊液供給器21,22の筒内へ圧送される。なお、糊液供給器21,22へ供給される糊液の流量調整は、例えば糊液調整用ポンプ18の回転数を調整することによって容易に行える。
【0034】
糊液供給手段としての糊液供給器21,22の筒内へ圧送された糊液は、糊液吐出孔24から吐出される。糊液吐出孔24から吐出された糊液Nは、絞りローラ31,33の降り四半周S1,S2上に供給される。糊液Nは、絞りローラ31,33の降り半周S4,S5(図1に図示)を伝い降りて把持部H1,H2付近で前記湿潤装置3から送られてきた経糸Tに付着する。把持部H1付近で経糸Tに付着した糊液の一部は、絞りローラ31,32の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。把持部H2付近で経糸Tに付着した糊液の一部は、絞りローラ33,34の絞り作用によって経糸Tから絞り取られる。
【0035】
経糸Tから絞り取られた糊液は、下側の絞りローラ32,34の昇り半周U1,U2(図1に示すように把持部H1,H2から絞りローラ32,34の周面321,341の最下位322,342に至る範囲)を伝い降りる。絞りローラ32,34の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、絞りローラ32,34の回転に伴って把持部H1,H2に移行して経糸Tに付着する。絞りローラ32,34の昇り半周U1,U2を伝い降りる糊液の一部は、糊液受け器35の底壁351の内壁面352上に落下する。糊液受け器35内に落下した糊液は、糊液回収パイプ36を経由して糊液槽11内へ回収される。
【0036】
なお、糊液槽11に回収された糊液Nは、ポンプ18の作動によって再び糊液供給器21,22へ送られる。また、絞りローラ33,34間を通過した経糸Tは、図示しない乾燥装置で乾燥された後に図示しない巻き取り部で巻き取られる。
【0037】
そして、本実施形態の水供給器51に設けられる水吐出孔54は、経糸Tに対して水Wを均一に供給できるような形状に形成される。以下、水吐出孔54について詳しく説明する。
【0038】
図3に示すように、水供給器51に貫通形成される水吐出孔54は、水供給器51の長手方向(軸線方向)、すなわち、絞りローラ61,62の長手方向(軸線方向)に沿って形成される。換言すれば、水吐出孔54は、水供給器51の長手方向(軸線方向)に長辺を有するスリット形状に形成される。また、水供給器51に貫通形成される水吐出孔54は、水供給器51の周方向における幅が同じ(均一)となるように形成される。すなわち、水吐出孔54は、その平面視が水供給器51の長手方向に沿ったスリット形状(長方形状)となる。水供給器51には、この水吐出孔54がそれぞれ複数列(本実施形態では、2列)設けられる。
【0039】
また、水吐出孔54には、所定間隔(本実施形態では、25mm)毎に水吐出孔54の幅(水供給器51の周方向における幅)を繋ぐ繋ぎ目55が設けられる。この繋ぎ目55により、水吐出孔54の幅(周方向の幅)は一定間隔に維持されるようになっている。すなわち、水吐出孔54が長手方向に連続する一本のスリットで形成される場合には水供給器51の材料の物性上スリット幅を均一に保つことは困難である。しかし、本実施形態のようにすれば、繋ぎ目55が、水吐出孔54を形成したとき、水供給器51に生じる内部応力により水吐出孔54の幅が変形することを防止する。なお、水供給器51の長手方向において、繋ぎ目55の長さは、繋ぎ目55の設置間隔(本実施形態では、25mm)よりも極めて短く形成されており、本実施形態では、2mmとなっている。
【0040】
また、この繋ぎ目55は、図3に示すように、隣接する列の水吐出孔54の繋ぎ目55と交互に配置されるように設けられる。すなわち、水供給器51の周方向において、一方の列の水吐出孔54に繋ぎ目55が配置される場合には、他方の列の水吐出孔54には、繋ぎ目55が配置されないようになっている。換言すれば、水供給器51の周方向において、水Wが吐出される箇所が少なくとも一箇所配置するように繋ぎ目55は各水吐出孔54に設けられる。これにより、水供給器51の周方向において、水Wが吐出されない繋ぎ目55が2列の水吐出孔54にて同じ位置に配置されないようになるため、水供給器51の長手方向において、水Wが吐出されない箇所がなくなる。
【0041】
このような水吐出孔54が形成される水供給器51は、絞りローラ61,62に対してそれぞれ水吐出孔54が平行となるように配置される。すなわち、水吐出孔54は、その長手方向が経糸Tの進行方向に対して垂直となるように配置される。なお、水吐出孔54の長手方向の長さは、多数本の経糸Tの配列からなるシートの幅以上の長さを有している。
【0042】
次に、このような形状に形成された水吐出孔54の作用について説明する。
水供給器51の筒内へ水Wが圧送されると、水吐出孔54は、水Wを外部に吐出する。このとき、水吐出孔54の形状は、水供給器51の軸線方向に沿って延出形成されており、また、繋ぎ目55によりその幅は常に均一であるため、各水吐出孔54から吐出される水Wは均一の厚さを有する膜状に吐出される。また、繋ぎ目55は、2列の水吐出孔54において交互に配置されており、また、長手方向において水吐出孔54の長さに比べて繋ぎ目55の長さは極めて短く形成されているので、各水供給器51(2列の水吐出孔54)から吐出される水Wは、長手方向においてほぼ均一に吐出される。このため、絞りローラ61,62を介して経糸Tに対して供給する水量にムラが生じるのを防止することができる。このため、全ての経糸Tに適正な水分率をもたらすことが容易にできる。
【0043】
以上詳述したように、本実施形態は、以下の効果を有する。
(1)水Wを吐出する水吐出孔54は、水供給器51の軸線方向に沿って延出形成されるため、水吐出孔54から吐出される水Wは、水供給器51(及び絞りローラ61,62)の軸方向に沿って均一となる。このため、経糸Tに供給される水Wは、均一となる。また、経糸Tを挟み込む上側の絞りローラ61の周面611に水供給器51から水Wを供給するので、適量の水Wを経糸Tに供給することが容易である。従って、全ての経糸Tに対して、適量の水Wを均一に供給することが容易にできる。このため、全ての経糸Tに適正な水分率をもたらすことが容易にできる。
【0044】
(2)水吐出孔54には、水吐出孔54の幅を一定間隔に維持するための繋ぎ目55が設けられる。このため、水供給器51に生じる内部応力などにより、水吐出孔54の幅が変形する(広がる又は狭まる)ことを防止できる。従って、水吐出孔54は、水吐出孔54の長手方向において常に均一に水Wを供給することができる。
【0045】
(3)繋ぎ目55は、隣接する列の水吐出孔54の繋ぎ目55と交互に配置されるように設けられる。このため、水供給器51の周方向において、水Wが吐出されない繋ぎ目55が2列の水吐出孔54にて同じ位置に配置されないようになるため、水供給器51の長手方向において、水Wが吐出されない箇所がなくなる。従って、水Wを、各水供給器51(2列の水吐出孔54)から長手方向においてほぼ均一に吐出することができる。
【0046】
(4)降り四半周S3は、絞りローラ61の回転に伴って経糸T上に向けて降ってゆく範囲であり、水供給器51から吐出された水Wは、経糸T上に向けて降ってゆく降り四半周S3上に着地する。降り四半周S3上に着地した水Wは、把持部H3付近の経糸T上に確実に到達する。降り四半周S3は、水供給器51から吐出された水を経糸T上に適量導く上で好適な水供給箇所である。
【0047】
(5)経糸Tは、把持部H3において一対の絞りローラ61,62の周面611,621に対する接線となる経路をとっている。つまり、経糸Tは、屈曲しないで把持部H3を通過している。経糸Tを屈曲しないで把持部H3を通過させる構成は、経糸Tの屈曲箇所を減らし、屈曲による経糸Tの損傷を少なくすることができる。
【0048】
(6)水受け器65内に落下した水Wは、水受け器65内に溜まることなく水槽41へ移行する。水Wを貯めない水受け器65は、従来の吹槽に比べて簡素な構成にできる。又、水Wを貯めない水受け器65は、従来の水槽に比べてコンパクトにできる。
【0049】
尚、上記実施形態は、次のような別の実施形態(別例)にて具体化できる。
○上記実施形態では、絞りローラ61,62の直下に水受け器65を配設したが、水受け器65を省略し、絞りローラ61,62の直下に水槽41を配設してもよい。この場合、水供給源44からの水供給が停止される所定高さの液面を、下側の絞りローラ62よりもさらに下方に設定し、絞りローラ62が水Wをピックアップしないような構成にする必要がある。なお、この場合、液面W1が受け部となる。
【0050】
○上記実施形態では、絞りローラ61の間に導入される経糸Tよりも上側の絞りローラ61の周面611に水Wを供給したが、絞りローラ61よりも上流の経糸Tの上面側に水Wを供給しても良い。
【0051】
○蒸気実施形態において、糊付け装置2の構成を他の公知の構成に変更しても良い。例えば、糊液を貯めているサイズボックス(糊液槽)内の糊液に経糸を浸した後、一対の絞りローラ間で経糸を挟んで経糸から糊を絞り取るようにしてもよい。
【0052】
○上記実施形態では、各水供給器51に2列の水吐出孔54を設けたが、水吐出孔54の列数は任意に変更しても良い。例えば、1列でも良く、3列以上でも良い。
○上記実施形態では、水吐出孔54の幅を一定に保つために、繋ぎ目55を設けたが、水吐出孔54の幅を一定に保つことができるならば、繋ぎ目55を設けなくても良い。
【0053】
○上記実施形態では、繋ぎ目55は、隣接する列の水吐出孔54の繋ぎ目55と交互に配置されたが、水供給器51の周方向において、水Wが吐出される箇所が少なくとも1箇所あるならば、繋ぎ目55の配置を任意に変更しても良い。
【0054】
○上記実施形態において、水吐出孔54の繋ぎ目55の周方向において、繋ぎ目55の近傍に、繋ぎ目55を水吐出孔54に設けたことにより水吐出孔54から吐出されない分の水を吐出する補助孔を設けても良い。これにより、水供給器51から吐出される膜状の水Wの厚さを均一にすることができる。
【0055】
○上記実施形態では、水供給器51は、水吐出孔54の長手方向(水供給器51の軸方向)が経糸Tの進行方向に対して垂直となるように配置されていた。この別例として、多数本の経糸Tの配列からなるシートの幅方向(経糸Tの進行方向に対して垂直方向)における水吐出孔54の長さが、多数本の経糸Tの配列からなるシートの幅以上の長さを有するならば、水供給器51は、水吐出孔54の長手方向が経糸Tの進行方向に対して斜めとなる角度に配置しても良い。
【0056】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)前記一対の絞りローラから落下する水を受けるように前記一対の絞りローラの下方に配置された水受け器を備え、
前記一対の絞りローラから落下する水を受ける受け部が前記経糸よりも下側の絞りローラに接触しない位置にあるように前記水受け器に設定されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の糊付け機における湿潤装置。
【0057】
(ロ)前記水分供給手段は、前記上側の絞りローラの周面に水を供給し、前記水分供給手段による前記上側の絞りローラの周面における水供給箇所は、前記周面の頂上から前記上側の絞りローラの回転方向に1/4周辿った範囲にあることを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の糊付け機における湿潤装置。
【0058】
(ハ)前記経糸は、前記一対の絞りローラの把持部において前記一対の絞りローラの周面に対して接線となる経路をとるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の糊付け機における湿潤装置。
【0059】
(ニ)前記水受け器は、水を溜めない器であることを特徴とする技術的思想(イ)に記載の糊付け機における湿潤装置。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】糊付け機を示す模式図。
【図2】(a)は水供給器の縦断面図、(b)は水供給器の側断面図。
【図3】水供給器の平面図。
【符号の説明】
【0061】
1…糊付け機、2…糊付け装置、3…湿潤装置、11…糊液槽、12…糊液槽加熱パイプ、13…蒸気供給源、14…糊液供給源、15…開閉弁、17…糊液供給パイプ、18…糊量調整用ポンプ、21,22…糊液供給器、24…糊液吐出孔、31〜34…絞りローラ、35…糊液受け器、36…糊液回収パイプ、41…水槽、42…水槽加熱パイプ、44…水供給源、45…開閉弁、47…水供給パイプ、48…水量調整用ポンプ、51…水供給器、54…水吐出孔、61,62…絞りローラ、65…水受け器、66…水回収パイプ、T…経糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸に糊付けを行なう前に、水で濡らされた経糸を一対の絞りローラの間に通し、前記一対の絞りローラの絞り作用によって前記経糸から水を絞り取る糊付け機における湿潤装置において、
前記一対の絞りローラの間に導入される前記経糸よりも上側の絞りローラの周面、又は前記一対の絞りローラよりも上流の経糸の上面側に水を供給する水分供給手段を備え、
前記水分供給手段は、水を吐出する吐出孔を有し、前記吐出孔は、前記水分供給手段の軸方向に長辺を有するスリット形状に形成されることを特徴とする糊付け機における湿潤装置。
【請求項2】
前記吐出孔は、前記水分供給手段の周方向における幅が均一となるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の糊付け機における湿潤装置。
【請求項3】
前記吐出孔には、前記吐出孔の周方向における幅を一定間隔に維持するための繋ぎ目が設けられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の糊付け機における湿潤装置。
【請求項4】
前記水分供給手段は、複数の列の吐出孔を有しており、
前記繋ぎ目は、隣接する列の吐出孔の繋ぎ目と前記水分供給手段の周方向において同じ位置に配置されないようにするために交互に配置されるように設けられることを特徴とする請求項3に記載の糊付け機における湿潤装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−169860(P2007−169860A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372355(P2005−372355)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】