説明

糖タンパク質ホルモン組成物

【課題】卵胞刺激ホルモン又はその変異体、黄体形成ホルモン又はその変異体、又はその混合物などの糖タンパク質ホルモン又はその変異体の、安定性の高い製剤を提供する。
【解決手段】ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース又はこれらの2種又は2種以上の混合物からなる二糖と、含有量が10μg/mg組成物以上或いは100国際単位/mg組成物以上である糖タンパク質ホルモン又はその変異体を含有する固形組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛋白質精製とバイオ医薬の分野に関する。具体的には、優れた安定性を持つ糖タンパク質ホルモン及びその安定剤の組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
卵胞刺激ホルモン(Follicle-stimulating hormone、略称FSH)は下垂体から分泌される糖タンパク質ホルモンであり、α鎖とβ鎖の2つのサブユニットで構成される。FSHのαサブユニットは、黄体形成ホルモン(leuteinizing hormone、略称LH)及び絨毛性ゴナドトロピン(chorionic gonadotropin、略称CG)のαサブユニットと全く同様で、92のアミノ酸を含み、分子量は約14500 Dで、52と78番目のアミノ酸のアスパラギンはN-グリコシル化のアミノ酸である。FSHのβサブユニットは、111のアミノ酸で構成され、分子量は約18000 Dで、7と24番目のアミノ酸のアスパラギンはN-グリコシル化のアミノ酸である。LHのβサブユニットは121のアミノ酸で構成され、分子量は約14800 Dであり、CGのβサブユニットは145のアミノ酸を含み、分子量は22000-39000 Dである。
【0003】
FSHは臨床で主に不妊治療及び体外からの生殖補助に用いられる。FSHは下垂体や閉経後女性の尿から採取でき、DNA組換え技術によっても製造できる。
【0004】
第一世代のFSH含有製品は、例えばセロノ(Serono)社のパーゴナル(Pergonal)などのヒト尿性腺刺激ホルモン(HMG)であり、FSHとLHが約1:1の比率で配合された混合物である。しかし、体内に多量のLHがあって外因性LHの追加投与の必要がない患者に対しては、LHレベルが高すぎると、卵胞の正常発生に影響を与えてしまい、減数分裂抑制因子がタイミング悪く抑制されると、卵子の老化が招かれ、受精と着床の機会が低下してしまう。したがって、これらの患者にとって、純FSH製剤の投与はより適宜である。一方、多すぎるLHは多嚢胞性卵巣症候群(Polycystic Ovarian Syndrome、POOS)を招きやすく、研究によれば、多すぎるLHは生殖機能に不利な作用を及ぼし、例えば、希発月経、無排卵、不妊及び流産を起こす。そのため、POOSの患者に対しては、純FSHによる治療はHMGより安全で、卵巣過剰刺激症候群(Ovarian Hyperstimulation Syndrome、OHSS)のリスクを低下させることができる。
【0005】
セロノ社の発売しているメトロジン(Metrodin)は極めて少量のLHを含有するFSH製剤であり、その次のメトロジン-HPは高純度のFSH製剤である。
【0006】
なお、近年、例えばフェリング(Ferring)社のメノパー(Menopur)などの高純度のヒト尿性腺刺激ホルモン(pHMG)は市販されており、精製した高純度FSHと高純度LH或いは高純度hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン、human chorionic gonadotropin)とが1:1の比率で配合された製品であって、主には一般のHMG製品の代わりとして用いられ、一般のHMG製品にある多量の不純物タンパク質による人体の過敏反応という問題も克服された。
【0007】
これによって、現在の市場においては、高純度糖タンパク質ホルモンの開発と使用が注目されている。しかしながら、各種の精製手段で得られる高純度糖タンパク質ホルモンは、まず保存と検査のために一つの原料薬の様態とされ、それから製剤化される。この原料薬の様態は重要であり、通常はなるべく液体の様態ではなく、固体の様態を採取するべきである。これは、液体は保存・輸送しにくいためである。また糖タンパク質ホルモンにとっては、固体の様態を得る主要な手段は凍結乾燥であるが、高純度糖タンパク質ホルモンは凍結乾燥の過程で変性・失活しやすいため、従来技術では、液体の様態で高純度糖タンパク質ホルモンの原料薬を保存しなければならない。しかし、液体の様態では-20℃以下で保存する必要があり、そうでなければ失活しやすいという問題;液体の様態で保存されると、凍結―溶解の過程だけでなく、凍結―溶解の過程の繰り返しさえあるため、糖タンパク質ホルモンの失活がより起こされやすいという問題;液体の様態では、包装容器は低温で脆化点に近く、割れが生じやすいという問題などがある。
【0008】
したがって、本分野では、優れた安定性を持つ糖タンパク質ホルモンの原料薬の様態が切望されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Pub. Co.,N.J. 1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は原料薬として使用可能な、高純度の糖タンパク質ホルモンを含有する固形組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第一は、二糖と、糖タンパク質ホルモン又はその変異体とを含有する固形組成物を提供する。
【0012】
他の好ましい例において、前述の糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量は10μg/mg組成物以上、或いは100国際単位/mg組成物以上である。
【0013】
他の好ましい例において、前述の糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量は20μg/mg組成物以上、或いは200国際単位/mg組成物以上である。
【0014】
他の好ましい例において、前述の糖タンパク質ホルモン又はその変異体は、卵胞刺激ホルモン(FSH)又はその変異体、黄体形成ホルモン(LH)又はその変異体、又はその混合物からなる群れから選ばれる。
【0015】
他の好ましい例において、前述の二糖は、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース又はこれらの2種又は2種以上の混合物からなる群れから選ばれ、ラクトースであることが好ましい。
【0016】
他の好ましい例において、前述の卵胞刺激ホルモン又はその変異体はヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体である。
【0017】
他の好ましい例において、前述のヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体は、組換えヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体、或いはヒト尿由来の卵胞刺激ホルモン又はその変異体からなる群れから選ばれる。
【0018】
他の好ましい例において、前述の黄体形成ホルモン又はその変異体はヒト黄体形成ホルモン又はその変異体である。
【0019】
他の好ましい例において、前述のヒト黄体形成ホルモン又はその変異体は、組換えヒト黄体形成ホルモン又はその変異体、或いはヒト尿由来の黄体形成ホルモン又はその変異体からなる群れから選ばれる。
【0020】
他の好ましい例において、前述の固形組成物は冷凍乾燥粉である。
【0021】
他の好ましい例において、前述の組成物は固体であって、二糖と、含有量が10μg/mg組成物以上或いは100国際単位/mg組成物以上である糖タンパク質ホルモン又はその変異体と、からなる。
【0022】
本発明の第二は、前述の固形組成物を含有する医薬組成物を提供する。
【0023】
本発明の第三は、不妊症候群治療用の薬物の製造のための前述の固形組成物の使用を提供する。
【0024】
これによって、本発明は優れた安定性を持つ糖タンパク質ホルモンの原料薬の様態を提供した。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明者らは幅広く深く検討した結果、驚くことに、高純度の糖タンパク質ホルモンと適宜の安定剤を組み合わせて凍結乾燥することにより、安定した組成物が得られることを見出した。なかでも、安定剤は二糖であることが好ましく、ラクト−スであることが特に好ましい。
【0026】
本発明者らは、そのとき二糖は希釈剤及び賦形剤として作用するだけでなく、より重要なのは保護剤として作用し、糖タンパク質分子を凍結乾燥の過程で発生する可能性のある立体配座変化による変性・失活から保護する一方、製品の安定性も大きく高めることを見出し、この知見に基づき本発明を完成した。
【0027】
具体的には、背景技術部分で説明したように、従来技術では、高純度糖タンパク質ホルモンの中間品又は原料薬様態は液体の様態で保存されるため、保存と輸送が不便で、わずかな不注意では製品に大きな影響を与えることになる。また固体様態では、凍結乾燥の過程が糖タンパク質を失活させやすいという結果になる。
【0028】
従来技術の改良方法を探索している間に、本発明者らは、高純度糖タンパク質とラクトースが適宜に配合され、特に高純度糖タンパク質とラクトースの濃度が適宜の範囲にあると、その時ラクトースは保護剤として作用し、凍結乾燥の過程で発生する可能性のある立体配座変化による糖タンパク質分子の変性・失活を防止することを気付いた。
【0029】
本発明において、前述の二糖(disaccharide)は単糖2分子からグリコシド結合により形成され、例えば、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロースなどがあり、マルトース、ラクトース、スクロースからなる群れから選ばれる1種又は多種であることが好ましく、ラクトースであることがより好ましい。
【0030】
本発明において、前述の糖タンパク質ホルモンの変異体とは、アミノ酸が欠失した或いは組換え技術で修飾された糖タンパク質ホルモンであるが、その基本薬効はそのまま存在する又は増強された。
【0031】
本発明により提供される組成物において、二糖と糖タンパク質ホルモン又はその変異体との重量の合計は組成物の合計重量の60−100%であり、好ましくは80−99%であり、より好ましくは90−95%である。
【0032】
本発明に係る組成物において、前述の糖タンパク質ホルモン又はその変異体の生物的力価は500−30000国際単位/mgタンパク質であり、好ましくは3500−12000国際単位/mgタンパク質である。その中の糖タンパク質ホルモンはFSH又はその変異体だけであれば、FSH又はその変異体の生物的力価は500−15000国際単位/mgタンパク質であり、好ましくは7000−12000国際単位/mgタンパク質である。その中の糖タンパク質ホルモンはLH又はその変異体だけであれば、LH又はその変異体の生物的力価は500−8000国際単位/mgタンパク質であり、好ましくは2000−6000国際単位/mgタンパク質である。
【0033】
本発明に係る組成物において、前述の糖タンパク質ホルモン又はその変異体の純度は50%以上であり、好ましくは90%以上である。
【0034】
本発明により提供される組成物1mgあたりにおいて、糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量は100国際単位以上であり、好ましくは200国際単位以上である。
【0035】
本発明により提供される組成物1mgあたりにおいて、糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量は10μg以上である。その中の糖タンパク質ホルモンはFSH又はその変異体だけであれば、FSH又はその変異体の含有量は10μg/mg組成物以上であり、好ましくは20μg/mg組成物以上である。その中の糖タンパク質ホルモンはLH又はその変異体だけであれば、LH又はその変異体の含有量は10μg/mg組成物以上であり、好ましくは35μg/mg組成物以上である。
【0036】
本発明により提供される組成物において、二糖と糖タンパク質ホルモン又はその変異体との重量比は8−99:1であり、好ましくは12−60:1である。
【0037】
本発明により提供される組成物において、ラクトースと糖タンパク質ホルモン又はその変異体との重量比は8−99:1であり、好ましくは12−60:1である。その中の糖タンパク質ホルモンはFSH又はその変異体だけであれば、ラクトースとFSH又はその変異体との重量比は20−99:1であり、好ましくは30−50:1である。その中の糖タンパク質ホルモンはLH又はその変異体だけであれば、ラクトースとLH又はその変異体との重量比は8−99:1であり、好ましくは12−20:1である。
【0038】
本発明により提供される組成物は、凍結乾燥の過程で糖タンパク質ホルモンが変性・失活せず、かつ優れた安定性を持つ。
【0039】
本発明は、(a)糖タンパク質ホルモン又はその変異体と、(b)二糖と、(c)薬学的に許容される担体と、を含有する医薬組成物を提供する。
【0040】
本文で用いられるように、用語の「薬学的に許容される担体」とは、治療剤の投与のための担体であって、各種の賦形剤と希釈剤を含む。該当用語は、これら自身が必要な活性成分ではなく、かつ施用後あまり毒性がないような薬剤担体を示す。適宜な担体は本分野の当業者に良く知られている。Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co.,N.J. 1991)には、薬学的に許容される賦形剤に関する十分な検討が見つけられる。組成物において、薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセリンやエタノールのような液体を含んでもよい。なお、このような担体には、さらに崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝物質などの補助性の物質が存在してもよい。
【0041】
前述の医薬組成物は投与経路によって各種の剤型に製造されてもよい。これらの剤型は、経口投与、スプレー投与、経直腸投与、鼻腔内投与、頬側投与、局所投与、非腸内投与、皮下、静脈内、筋肉、腹膜内、鞘内、心室内、胸骨内、頭蓋内などへの注射又は輸注、或いは一種の外植式存儲器による投与などの手段の一つで施用される。なかでも、治療に際しては、皮下投与の手段が好ましい。
【0042】
なお、本発明に係る医薬組成物における有効成分の投与量と投与手段は、患者の年齢、体重、性別、自然健康状況、栄養状況、有効成分の活性強度、服用、代謝速度、病症の重篤度及び診療医師の主観的判断など多くの要因によって決められる。薦めの安全有効量は通常少なくとも約10μg/kg体重で、多くの場合は約10mg/kg体重以下であり、好ましい投与量は約10μg/kg体重―約1mg/kg体重である。もちろん、具体的な投与量の決定には、投与経路、患者の健康状況などの要因を考えるべきだ。これらは全て、熟練医師の技術の範囲に含まれる。
【0043】
本発明で述べられた上述の特徴、或は実施例で述べられる特徴は、任意に組み合わせてもよい。本明細書で開示された全ての特徴は任意の組成物の様態と併用してもよく、明細書で開示された各特徴はいずれも、同様、同等或いは類似の目的を果たす代わりの特徴により置換されてもよい。特に説明しない限り、開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的なシリーズの一例に過ぎない。
【0044】
本発明の主な利点は、以下の通りである。
【0045】
(1)保存・輸送しやすい固体の様態の糖タンパク質ホルモンの組成物を提供した、
(2)本発明の方法により得られる糖タンパク質ホルモンの組成物は優れた安定性を持ち、原料薬として相応の製剤の製造に好適に用いられる。
【0046】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの薦めの条件で行われる。特に説明しない限り、すべての百分率と部は重量基準である。
【0047】
別途に定義しない限り、文中に使用されるすべての専門・科学用語は、本分野の熟練者によく知られる意味と同じである。また、記載される内容に類似或は同等の方法及び材料はいずれも本発明に使用することができる。文中に記載の好ましい実施形態及び材料は例示だけのためである。
【実施例1】
【0048】
FSH含有組成物
本実施例において、高純度FSH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)がFSH医薬組成物の原料として用いられ、それにおけるFSHの生物的力価は9521国際単位/mgであった。
【0049】
0.01Mのリン酸二水素ナトリウム溶液(NaOHでpHを約6.5に調節)を50mL調整し、ラクトースを2g加え、攪拌し溶解させた後、0.22μmフィルターでろ過した。ろ過液を10mL取り、前述の高純度FSH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)を10.0mg加え、完全に溶解させた後、皿に置き凍結乾燥機に入れ、以下のプロセスで凍結乾燥を行った。
【0050】
1.トレーを予め−40℃で3時間冷凍し、
2.コールドトラップで−45℃にし、
3.真空ポンプを起動させ、
4.トレーを−10℃で15時間維持し、
5.トレーを+20℃で5時間維持し、
6.チャンバーから取り出し、凍結乾燥粉末を392mg得た。
【0051】
該当製品のFSHの生物的力価を測定した結果は以下の通りであった。
【表1】

対照例
【0052】
本対照例において、高純度FSHとラクトースを、FSH含有量が50国際単位/mg組成物合計量を下回るように配合し、さらにその凍結乾燥過程及び安定性を調べた。
【0053】
本対照例において、高純度FSH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)がFSH医薬組成物の原料として用いられ、それにおけるFSHの生物的力価は9521国際単位/mgであった。
【0054】
0.01Mのリン酸二水素ナトリウム溶液(NaOHでpHを約6.5に調節)を500mL調整し、ラクトースを20g加え、攪拌し溶解させた後、0.22μmフィルターでろ過した。ろ過液を100mL取り、前述の高純度FSH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)を5.0mg加え、完全に溶解させた後、皿に置き凍結乾燥機に入れ、実施例1のプロセスで凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を3.89g得た。
【表2】

【0055】
以上の二つの例の結果より明らかなように、本発明により得られたFSH組成物は凍結乾燥の過程でほとんど変性・失活しなかったのに対して、対照例では著しい失活現象があった。
安定性対比
【0056】
実施例1と対照例のサンプルの30℃における安定性を調べた結果は以下の通りであった。
【表3】

【0057】
これにより、本発明により得られたFSH組成物は対照例に比べて、優れた安定性を持つことがわかった。
【実施例2】
【0058】
LH含有組成物
本実施例において、高純度LH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)がLH医薬組成物の原料として用いられ、それにおけるLHの生物的力価は4307国際単位/mgであった。
【0059】
0.01Mのリン酸二水素ナトリウム溶液(NaOHでpHを約6.5に調節)を50mL調整し、ラクトースを2g加え、攪拌し溶解させた後、0.22μmフィルターでろ過した。ろ過液を10mL取り、前述の高純度LH(上海天偉生物製薬株式会社より購入)を25mg加え、完全に溶解させた後、皿に置き凍結乾燥機に入れ、実施例1のプロセスで凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を402mg得た。
【0060】
該当製品のLHの生物的力価及び30℃における安定性を調べた結果は以下の通りであった。
【表4】

【0061】
これにより、本発明により得られたLH組成物はほとんど変性・失活せず、かつ優れた安定性を持つことがわかった。
【実施例3】
【0062】
FSHとLHの混合物含有組成物
0.9%の塩化ナトリウム溶液(NaOH或いはHClでpHを約7.0に調節)を100mL調整し、マルトースを4g加え、攪拌し溶解させた後、0.22μmフィルターでろ過した。ろ過液を10mL取り、前述の高純度FSH(上海天偉生物製薬株式会社より購入、生物的力価は9521国際単位/mg)を10.0mg加え、さらに前述の高純度LH(上海天偉生物製薬株式会社より購入、生物的力価は4307国際単位/mg)を25mg加え、完全に溶解させた後、皿に置き凍結乾燥機に入れ、実施例1のプロセスで凍結乾燥を行い、凍結乾燥粉末を405mg得た。測定されたFSHの生物的力価は223IU/mgで、LHの生物的力価は242IU/mgであった。
【0063】
該当製品の30℃における安定性を調べた結果は以下の通りであった。
【表5】

【実施例4】
【0064】
FSH凍結乾燥粉注射剤の製造
1瓶につきFSHを75IU含有するようにFSH凍結乾燥粉注射剤を100瓶製造する例は以下の通りであった。
【0065】
実施例1で製造したFSH凍結乾燥組成物35mgを注射用パイロジェンフリー水10mLに溶解させ、0.22μmフィルターで無菌ろ過し、さらに注射用パイロジェンフリー水でフィルターを洗浄した。
【0066】
ラクトース1gを注射用パイロジェンフリー水30mLに溶解させ、必要とすればHCl或いはNaOHでpHを6.5±0.2に調節し、0.22μmフィルターで無菌ろ過した。次に、前述のFSH溶液に加え、注射用パイロジェンフリー水で75mLに定容し、均一に混合した。
【0067】
前述の溶液を1瓶につき0.75mLの量でアンプルに分注し、凍結乾燥した。
【0068】
得られたアンプルにおいては、1瓶あたりにFSHが約75IU、ラクトースが約10mg含まれた。
【0069】
以上で記述されたのは本発明の好適な実施例に過ぎないものであり、本発明に係る実質的な技術内容の範囲はこれによって限定されるものではない。本発明の実質的な技術内容は、広汎に特許請求の範囲内に定義される。他人に完成された如何なる技術実体や方法は、特許請求の範囲に定義されたものとまったく同一であり、又は同等効果の変更であれば、特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二糖と、糖タンパク質ホルモン又はその変異体とを含有することを特徴とする固形組成物。
【請求項2】
糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量が10μg/mg組成物以上、或いは100国際単位/mg組成物以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
糖タンパク質ホルモン又はその変異体の含有量が20μg/mg組成物以上、或いは200国際単位/mg組成物以上であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
該糖タンパク質ホルモン又はその変異体が、卵胞刺激ホルモン又はその変異体、黄体形成ホルモン又はその変異体、又はその混合物からなる群れから選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
該二糖が、ラクトース、スクロース、マルトース、トレハロース又はこれらの2種又は2種以上の混合物からなる群れから選ばれ、ラクトースであることが好ましいことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
該卵胞刺激ホルモン又はその変異体がヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
該ヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体が、組換えヒト卵胞刺激ホルモン又はその変異体、或いはヒト尿由来の卵胞刺激ホルモン又はその変異体からなる群れから選ばれることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
該黄体形成ホルモン又はその変異体がヒト黄体形成ホルモン又はその変異体であることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項9】
該ヒト黄体形成ホルモン又はその変異体が、組換えヒト黄体形成ホルモン又はその変異体、或いはヒト尿由来の黄体形成ホルモン又はその変異体からなる群れから選ばれることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
該固形組成物が冷凍乾燥粉であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
請求項1-10のいずれかに記載の組成物を含有することを特徴とする、医薬組成物。
【請求項12】
不妊症候群治療用の薬物を製造するための請求項1-11のいずれかに記載の組成物の使用。

【公開番号】特開2009−275045(P2009−275045A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117421(P2009−117421)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(506010046)上海天偉生物制薬有限公司 (6)
【Fターム(参考)】